JP2010283058A - 電磁アクチュエータ - Google Patents

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Abstract

【課題】可動子を安定位置に効率よく停止させることのできる、揺動型の電磁アクチュエータを得ることを目的とする。
【解決手段】円筒状を成し中心方向に向けて複数の磁極41が突設された固定子4と、固定子4の内側に配置され周方向に延び、固定子4の内周側に沿って往復回動可能に支持された可動子5と、各磁極41に巻回され可動子5を回動範囲内の所定の安定位置に移動させる複数の駆動コイル42とを備えている。そして、駆動コイル42のうち中立安定位置と対面する位置に配置された駆動コイル42E、42Fの励磁により形成される固定子4および可動子5内の磁路の一部に磁場遮蔽部としてのバルク部6A、6Bを設けている。
【選択図】図1

Description

この発明は、電磁アクチュエータに関するものであり、特に揺動駆動する電磁アクチュエータに関するものである。
近年、遮断器や開閉器等の操作機構として、現行の油圧操作機構やバネ操作機構に代わって、動作制御性に優れる電磁アクチュエータを採用することが提案されている。例えば比較的短ストロークでかつ直線的に動作する真空遮断器では、短ギャップで強い電磁吸引力を発生する直動型双安定の電磁アクチュエータが使用されることが多い。また、比較的長ストロークでかつ回転駆動する真空遮断器以外の開閉器や断路器では、揺動型の電磁アクチュエータが適している。
揺動型の電磁アクチュエータには、例えば「開位置」、「閉位置」の2箇所で安定する双安定型の電磁アクチュエータがある(例えば、特許文献1参照)。また、3箇所で安定する3安定型の電磁アクチュエータがある(例えば、特許文献2参照)。
特開2001−297912号公報(要約、図1等) 特開昭61−016504号公報(2頁、図1等)
上記特許文献1のような双安定型の電磁アクチュエータは、揺動型の電磁アクチュエータとしては比較的ストロークが短いため、低圧用の開閉器等に適するものである。上記特許文献2のような3安定型の電磁アクチュエータは、双安定型の電磁アクチュエータより長ストロークであるが、各安定位置に機械的なストッパがないため、可動子を各安定位置で停止させる為には、電磁アクチュエータの電磁力のみで停止させなければならない。従って、可動子が各安定位置で停止する際には、一旦安定位置を行き過ぎ、振動しながら安定位置に停止するという問題がある。
ところで、上記のような電磁アクチュエータが連結される開閉器の接点は、特に大型電力用の場合、通電時の接触抵抗を低減させるために、フィンガーコンタクトやスライドコンタクトを用い、接触加重を作用させることが一般的である。そのため、接点を閉するための「入り」動作では、駆動初期の負荷が小さく、接点が接触する駆動後半に負荷が大きくなる。また、接点を開するための「切り」動作では、接点を引き離すための駆動初期に負荷が大きく、接点が離れた駆動後期に負荷が小さくなる。
ここで、例えば開閉器の「入り」、「切り」、「入り」の動作に連動して可動子が3箇所で停止する3安定型の電磁アクチュエータとして、2つの固定接点と1つの可動接点から構成され、「切り」位置を中心に可動子が揺動駆動するものがある。
このような電磁アクチュエータにおいて、開閉器の接点を「入り」位置から「切り」位置に移動させる場合、上述の通り開閉器の接点を引き離すための駆動初期の負荷が大きく、接点が離れると負荷が著しく小さくなる。このため開閉器の接点が離れると同時に電磁アクチュエータの可動子の移動速度が急激に速くなり慣性力が大きくなる。可動子が「切り」位置付近で大きな慣性力を持っているため、可動子は「切り」位置を大きく行き過ぎ、「切り」位置に停止するまでに振動を繰り返すという問題が顕著である。
また、「切り」位置から少しでもずれた位置で可動子が停止してしまうと、可動子の電界が高くなり、雷インパルスのような高電界が作用すると絶縁破壊を起こしてしまうという問題もある。
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、可動子を安定位置に効率よく停止させることのできる、電磁アクチュエータを得ることを目的とする。
この発明に係る電磁アクチュエータは、円筒状を成し中心方向に向けて複数の磁極が突設された固定子と、固定子の内側に配置され周方向に延び、固定子の内周側に沿って往復回動可能に支持された可動子と、各磁極に巻回され可動子を回動範囲内の所定の安定位置に移動させる複数の駆動コイルとを備えている。そして、駆動コイルのうち安定位置と対面する位置に配置された駆動コイルの励磁により形成される固定子および可動子内の磁路の一部に磁場遮蔽部を設けている。
また、この発明に係る電磁アクチュエータは、円筒状を成し中心方向に向けて複数の磁極が突設された固定子と、固定子の内側に配置され周方向に延び、固定子の内周側に沿って往復回動可能に支持された可動子と、各磁極に巻回され可動子を回動範囲の一端側である第1の安定位置、他端側である第2の安定位置、および第1の安定位置と第2の安定位置との中間位置である中立安定位置、の各位置に移動させる複数の駆動コイルとを備えている。そして、駆動コイルのうち中立安定位置と対面する位置に配置された駆動コイルの励磁により形成される固定子および可動子内の磁路の一部に磁場遮蔽部を設けている。
この発明の電磁アクチュエータによれば、安定位置と対面する位置に配置された駆動コイルの励磁により形成される固定子および可動子内の磁路の一部に磁場遮蔽部を設けたので、可動子の慣性力が大きくなる駆動領域の電磁力を大幅に減少させることができる。このため可動子が持つ慣性力の増加を抑え、可動子が安定位置を行き過ぎることを抑制し、可動子を効率よく停止させることができる。
この発明の実施の形態1における電磁アクチュエータの構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態1における電磁アクチュエータの構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態1における電磁アクチュエータの構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態1における電磁アクチュエータに連結される一般的な開閉器の接点の負荷状態を示す図である。 この発明の実施の形態1における比較例の電磁アクチュエータの構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態1における比較例の電磁アクチュエータの可動子の動作を説明する図である。 この発明の実施の形態1における電磁アクチュエータの磁束の流れを説明するための図である。 この発明の実施の形態1における電磁アクチュエータの磁束の流れを説明するための図である。 この発明の実施の形態1における電磁アクチュエータの磁束の流れを説明するための図である。 この発明の実施の形態1における電磁アクチュエータの電磁力特性を示す図である。 この発明の実施の形態1における別例の電磁アクチュエータの構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態1における他の別例の電磁アクチュエータの構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態2における電磁アクチュエータの構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態2における電磁アクチュエータの磁束の流れを説明するための図である。 この発明の実施の形態2における電磁アクチュエータの磁束の流れを説明するための図である。 この発明の実施の形態2における電磁アクチュエータの磁束の流れを説明するための図である。 この発明の実施の形態2における電磁アクチュエータの磁束の流れを説明するための図である。 この発明の実施の形態2における電磁アクチュエータの磁束の流れを説明するための図である。 この発明の実施の形態3における電磁アクチュエータの構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態4における電磁アクチュエータの構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態4における電磁アクチュエータの磁極の一部を拡大した斜視図である。
実施の形態1.
図1〜3はこの発明の実施の形態1における電磁アクチュエータの構成を示す断面図であり、図1は可動子が中立安定位置にある場合、図2は可動子が第1の安定位置にある場合、図3は可動子が第2の安定位置にある場合を示している。
図1〜3に示すように電磁アクチュエータ1は、回転軸2の周囲に配設された磁性体からなる中心部材3と、中心部材3から所定の間隔を空けて同心円状に設けられた円筒状の固定子4と、固定子4の内側、すなわち中心部材3と固定子4の間に形成された円筒状の空間内に配置され、円周方向に沿って延び、円周方向に沿って往復回動可能に支持された可動子5とを備えている。中心部材3、固定子4および可動子5は複数枚の電磁薄鋼板を積層して形成された積層体からなる。
固定子4は、円筒状のヨーク部40とヨーク部40の内周面から中心方向に向けて突設された複数の磁極41を有し、本実施の形態1では磁極41は周方向等間隔で6個形成されている。各磁極41にはそれぞれ駆動コイル42が巻回されており、駆動コイル42を励磁することにより磁束を発生させ、上記可動子5を駆動する。隣接する磁極41の間には補助磁極43が突設されており、各駆動コイル42による磁束の磁路となる。補助磁極43のうち一の補助磁極43Aは他の補助磁極43よりも中心方向に突出しており、磁路となるとともに、可動子5の回転方向端部に当接して可動子5を押し止めるストッパとしての役割をしている。以降、補助磁極43Aを第1のストッパ43Aとする。中心部材3の外周面には、第1のストッパ43Aと対向する位置に、径方向外側に突出した第2のストッパ30が配設され、第1のストッパ43Aと共に可動子5の回動範囲の端部を形成している。
可動子5の回転方向両端部には周方向に突出した凸部50が形成され、駆動初期の磁束の磁路となり電磁力を調整する。可動子5が第1安定位置および第2安定位置に移動した際には、凸部50が第1のストッパ43Aと第2のストッパ30との隙間に嵌るように当接する。
本実施の形態1では、可動子5の安定位置は、図1に示すような中立安定位置、図2に示すような第1の安定位置、図3に示すような第2の安定位置がある。第1の安定位置は、可動子5が中立安定位置の状態から反時計回りに回動し、可動子5の回転方向の一方の端部が第1のストッパ43Aおよび第2のストッパ30と当接した状態である。また、第2の安定位置は、可動子5が中立安定位置の状態から時計回りに回動し、可動子5の回転方向の他方の端部が第1のストッパ43Aおよび第2のストッパ30と当接した状態である。
駆動コイル42は可動子5の第1の安定位置と対面する位置に配置される駆動コイル42A、42B、可動子5の第2の安定位置と対面する位置に配置される駆動コイル42C、42D、可動子5の中立安定位置と対面する位置に配置される駆動コイル42E、42Fからなる。駆動コイル42A、42Bを励磁することにより可動子5を中立安定位置から第1の安定位置へ移動させ、駆動コイル42C、42Dを励磁することにより可動子5を中立安定位置から第2の安定位置へ移動させ、駆動コイル42E、42Fを励磁することにより可動子5を第1または第2の安定位置から中立安定位置へ移動させる。
各磁極41のうち、中立安定位置と対面する位置に配置される駆動コイル42E、42Fが巻回された磁極41E、41Fは、電磁鋼板を積層して形成された積層体ではなく、塊状のバルクで形成されている。このバルクで形成された二つの磁極41E、41Fをそれぞれバルク部6A、6Bとする。後述するが、このバルク部6A、6Bは、駆動コイル42E、42Fの励磁時に発生する磁束を遮断する磁場遮蔽部としての役割をする。なお、駆動コイル42A、42B、42C、42D、が巻回された磁極41をそれぞれ41A、41B、41C、41Dとする。
このような電磁アクチュエータ1は図示しない開閉器等に連結され、開閉器の接点の「入り」「切り」動作を操作する。本実施の形態1では、電磁アクチュエータ1の可動子5が中立安定位置の時、開閉器の接点が「切り」位置となり、電磁アクチュエータ1の可動子5が第1および第2の安定位置の時、開閉器の接点が「入り」位置となる。
ここで、電磁アクチュエータ1に連結される一般的な開閉器の接点の負荷状態を図4に示す。縦軸は開閉器の接点にかかる負荷トルクを示し、横軸は開閉器の接点の回転角度を示す。開閉器の接点には接触加重が作用するため、接点が接触する「入り」位置で負荷トルクが大きくなる。例えば開閉器の接点を「切り」から「入り」にするために、図1に示す中立安定位置から図2に示す第1の安定位置または図3に示す第2の安定位置に可動子5が移動する場合は、開閉器の接点に接触加重が作用しない駆動初期の負荷トルクは小さく、接点が接触する駆動後半に負荷トルクが大きくなる。開閉器の接点を「入り」から「切り」にするために、図2に示す第1の安定位置または図3に示す第2の安定位置から図1に示す中立安定位置に可動子5が移動する場合、開閉器の接点を引き離すまでの駆動初期に負荷トルクが大きく、接点が離れた駆動後半に負荷トルクが小さくなる。
次に、電磁アクチュエータ1の動作について説明する。
図1の中立安定位置から図2の第1の安定位置に可動子5を移動させる場合には、駆動コイル42A、42Bに電流を供給する。これにより駆動コイル42A、42Bの周りに磁束が発生し、この磁束による電磁力により可動子5が反時計回りに回動し始める。可動子5が第1の安定位置まで達すると、可動子5の反時計回り方向の端部は第1のストッパ43Aと第2のストッパ30とに当接し停止する。可動子5の停止とともに駆動コイル42A、42Bの電流供給を遮断する。なお、磁束の流れについての詳細は後述する。
図2の第1の安定位置から図1の中立安定位置に可動子5を移動させる場合には、駆動コイル42E、42Fに電流を供給する。これにより駆動コイル42E、42Fの周りに磁束が発生し、この磁束による電磁力により可動子5が時計回りに回動し始める。中立安定位置では可動子5を押し止めるストッパがないため、可動子5は駆動コイル42E、42Fによる電磁力のみで停止する。可動子5の停止とともに駆動コイル42E、42Fの電流供給を遮断する。
左右対称構造であるため、図1の中立安定位置から図3の第2の安定位置への移動、また第2の安定位置から中立安定位置への移動の動作説明は省略するが、上記のように電流を供給する駆動コイル42A〜42Fを切り替えることにより、可動子5は図1の中立安定位置、図2の第1の安定位置、図3の第2の安定位置の間を往復運動することができる。
このような動作において、可動子5を中立安定位置へ移動させるための駆動コイル42E、42Fが巻回された磁極41E、41Fをバルク部6A、6Bとしたことにより生じる本実施の形態1の電磁アクチュエータ1の特徴について、磁極がバルク部でない電磁アクチュエータ(以下比較例の電磁アクチュエータとする)と比較しながら以下詳述する。
まず、比較例の電磁アクチュエータについて図5を参照して説明する。比較例の電磁アクチュエータ100は本実施の形態1の電磁アクチュエータ1とほとんど同じ構成であるが、固定子104に設けられた磁極141が全て電磁鋼板の積層体からなり、本実施の形態1のようにバルク部を含まない構成である。
このような比較例の電磁アクチュエータ100を、接点の負荷状態が図4となるような開閉器と連結し、開閉器の接点を「入り」から「切り」に動作する場合、すなわち例えば可動子105を第1の安定位置から中立安定位置に移動する場合の可動子105のストローク波形の模擬図を図6に示す。縦軸は可動子105のストローク位置を角度で示したものであり、開閉器接点が「切り」の位置である中立安定位置に可動子105がある場合を中心(0位置)とし、第1の安定位置にある場合を1、中立安定位置よりも第2の安定位置側に移動した場合をマイナスで示している。横軸は可動子105の移動開始からの時間を示している。本実施の形態1と同様、可動子105を中立安定位置へ移動させるための駆動コイル142E、142Fに電流を供給することにより電磁力を発生させ、可動子105の移動を開始する。
開閉器の接点が接触している間は負荷トルクが大きいため可動子105の速度は遅いが、接点が離れて負荷トルクが小さくなった瞬間に可動子105の速度が速くなり、可動子105の慣性力は増大する。中立安定位置まで移動した可動子105は大きな慣性力を持っているため中立安定位置を行き過ぎ、行き過ぎた可動子105は駆動コイル142E、142Fによる電磁力により中立安定位置へ戻ろうとする。図6に示すように、ストローク波形は中立安定位置を中心に振動しながら最終的に中立安定位置で停止する。
図7〜9は、本実施の形態1の電磁アクチュエータ1を第1の安定位置から中立安定位置まで移動させる場合に、駆動コイル42E、42Fを励磁した際に発生する磁束の流れを示す断面図である。図7の状態から順次図8、図9の状態へと移動する場合について説明する。
図7に示すように、可動子5が第1の安定位置にある状態で駆動コイル42E、42Fの励磁を開始すると、発生する磁束により駆動コイル42Eの周りには固定子4のヨーク部40、バルク部6A、可動子5、補助磁極43を経由する磁路Aが形成される。この磁束による電磁力により可動子5は中立安定位置方向へ移動する。
図8は可動子5の時計回り方向の端部が駆動コイル42F付近まで移動した時の磁束の様子を示している。両駆動コイル42E、42Fによる磁束により、磁路Aに加え、固定子4のヨーク部40、バルク部6B、可動子5、バルク部6Aを経由する磁路Bが形成される。これらの磁束による電磁力により可動子5はさらに中立安定位置方向へ移動する。
図9は可動子5が中立安定位置まで移動した時の磁束の様子を示している。両駆動コイル42E、42Fによる磁束により、磁路A、磁路Bに加え、固定子4のヨーク部40、補助磁極43、可動子5、バルク部6Bを経由する磁路Cが形成される。なお、各磁路を示す磁束線の本数は磁束量の大きさを示している。
一般に磁束が通過する磁路には、その磁束を打ち消すように渦電流が発生する。そして、磁束が打ち消されることにより電磁力が減少する。
このような渦電流の発生を抑制する方法として磁路を積層体で形成することが知られている。渦電流は渦電流が流れる通路の抵抗に大きく依存する。従って、磁路を磁束の流れる方向に積層した積層体(図21参照)で形成すると、積層間に接触抵抗が発生し渦電流が流れる通路の抵抗が大きくなり、渦電流が小さくなる。そして渦電流を抑制することにより効率よく電磁力を発生させることができる。
これに対し、渦電流が流れる通路を塊状のバルクで形成すると、積層体で形成した場合に比べ通路の抵抗が小さく、渦電流は大きくなる。渦電流によりバルクの表皮深さ以上に磁束が入ることができず、電磁力の発生が減少する。
本実施の形態1では、可動子5が中立安定位置方向へ移動する場合、可動子5がどの位置にある時でも、駆動コイル42E、42Fによる磁束は、塊状のバルクで形成されたバルク部6A、または6Bを通過する。これにより、バルク部6A、6Bで渦電流の発生を増加させ、渦電流の増加に伴い電磁力が減少する。
次に、渦電流と可動子5の移動速度との関係について説明する。
渦電流は磁束の時間変化で生じるため次式で表される。
Figure 2010283058
ここで、Ieddyは渦電流、Eは渦電流の起電力、Rは渦電流が流れる経路の抵抗、ωは駆動コイルに流れる電流の周波数、Lは渦電流が流れる経路のインダクタンスである。渦電流の起電力Eは、電流による磁場変動(右辺第1項)と、可動子の動きに伴う磁場変動(右辺第2項)により発生する。可動子の動きに伴う磁場変動は可動子の移動速度が速くなるほど大きくなる。可動子の移動速度が速くなるほど起電力Eも大きくなり、このため渦電流Ieddyも大きくなる。なお、電流による磁場変動はDC通電であれば生じないが、AC通電やコンデンサ通電にすることで生じる。
本実施の形態1においては、図7から図8への駆動初期は負荷トルク(図4参照)が大きいとともに可動子5が静止状態から動き出すため移動速度は遅く、図8から図9への駆動後半は負荷トルクが小さくなるとともに可動子5が慣性力を持つため移動速度が速くなる。従って駆動初期の渦電流は小さく、駆動後半になるにつれ渦電流が大きくなる。渦電流の増加に伴い電磁力は減少する。
このように、本実施の形態1では、バルク部6A、6Bを設けたことによる渦電流の増加と、可動子5の移動速度に伴う渦電流の増加により、駆動後半の電磁力が大幅に減少する。
電磁アクチュエータ1の可動子5が図7から図9へ移動する際の電磁力特性を図10に示す。また可動子5の移動速度を左右する負荷トルクについても図中に示す。さらに、本実施の形態1の電磁アクチュエータ1と比較するため、磁極がバルク部でない比較例の電磁アクチュエータ100の電磁力特性を併せて示す。縦軸は電磁力、負荷力を示し、横軸は可動子5の移動距離を示し、可動子の位置が第1安定位置にある場合を0とし、図9の中立安定位置まで移動した場合を1としている。
まず本実施の形態1の電磁アクチュエータ1の電磁力の推移(図中▲印で結ぶ線が示す)について説明する。負荷トルクの高い駆動初期は可動子5の移動による磁場変動が小さく渦電流の発生も少ない。渦電流の発生が少ない駆動初期は渦電流による影響をほとんど受けないため、可動子5が駆動コイル42E、42Fに近づくことなどにより電磁力が増加している。負荷トルクの小さい駆動後半になると、可動子5の速度が速くなるため磁場変動が大きくなり、渦電流が大きくなる。また、磁束がバルク部6A、6Bを経由することによりバルク部6A、6Bに発生する渦電流が増加する。このため、駆動後半は中立安定位置に可動子5が近づくにつれて電磁力が大幅に減少している。
これに対し、比較例の電磁アクチュエータ100では、磁路が積層体で形成されているため渦電流の発生を抑制し、渦電流の影響をほとんど受けない。従って図中■印で結ぶ線が示すように、本実施の形態1と比較して高い電磁力を保っている。磁場変動が小さい駆動初期は比較例に対する本実施の形態1の電磁力の低減率は小さく、磁場変動が大きい駆動後半の低減率は大きくなる。
このように、本実施の形態1の電磁アクチュエータ1では磁極41E、41Fをバルク部6A、6Bとしたため、磁極が積層体からなる比較例の電磁アクチュエータ100と比して、特に駆動後半の電磁力を大幅に減少させることができる。
以上のように、本実施の形態1の電磁アクチュエータ1では、中立安定位置と対面する位置に配置された駆動コイル42E、42Fの励磁により形成される磁路の一部にバルク部を設けたため、可動子5の慣性力が大きくなる駆動領域である駆動後半に電磁力が大幅に減少し、可動子5を駆動する力を低減する。これにより可動子5が持つ慣性力の増加を抑え、可動子5が中立安定位置を行き過ぎることを抑制することができる。
上述の図6で説明したように、比較例の電磁アクチュエータ100の可動子105は、中立安定位置を行き過ぎ振動を繰り返しながら中立安定位置に停止する。これに対し、本実施の形態1の電磁アクチュエータ1では、可動子5の行き過ぎを十分抑制できるため、比較的速やかに中立安定位置に可動子5を停止させることができ、停止に要する時間も大幅に短縮できる。これにより、余分なエネルギーの使用を抑制することができる。また、エネルギー消費量の減少に伴い、電磁アクチュエータの小型化を図ることができる。
また、可動子5の行き過ぎ量が小さいため、停止位置が中立安定位置よりずれた位置で停止してしまうことを防止することができる。
なお、本実施の形態1では中立安定位置と対面する位置に配置された駆動コイル42E、42Fが巻回された磁極41E、41Fをバルク部6A、6Bとしたが、バルク部を設ける位置はこれに限られるものではない。その別例を以下に示す。
図11は本実施の形態1の別例の電磁アクチュエータ1Aであり、駆動コイル42E、42Fが巻回された磁極41E、41Fの間に突設された補助磁極43をバルクで形成しバルク部6Cとしている。
図12は本実施の形態1の他の別例の電磁アクチュエータ1Bであり、駆動コイル42E、42Fが巻回された磁極41E、41Fの間のヨーク部40をバルクで形成しバルク部6Dとしている。
このような電磁アクチュエータ1A、1Bにおいても、可動子5の位置に対応して、駆動コイル42E、42Fによる磁束が、バルク部6C、6Dを経由する磁路を形成する。これにより上記実施の形態1と同様に特に可動子の慣性力が大きくなる駆動領域である駆動後半の電磁力を減少させることができる。
実施の形態2.
図13はこの発明の実施の形態2における電磁アクチュエータ1Cの構成を示す断面図である。上記実施の形態1では駆動コイル42E、42Fによる磁路のうち固定子4の一部分をバルク部としたが、本実施の形態2では可動子5にバルク部を設けている。なお、本実施の形態1と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図13に示すように、可動子5は周方向中央部分をバルクで形成したバルク部6Eを備えている。バルク部6Eを挟んで両側は電磁鋼板等の積層体から形成されておりこれを積層部50とする。このような構成の可動子5を第1の安定位置から中立安定位置に移動する場合の磁束の流れを図14〜図18を参照して説明する。
図14に示すように、可動子5が第1の安定位置にある状態で駆動コイル42E、42Fに電流を供給すると、駆動コイル42Eの周りにはヨーク部40、磁極41E、可動子5の積層部50、補助磁極43を経由する磁路Dが形成される。この磁束による電磁力により可動子5は中立安定位置方向へ移動する。図15〜図18は中立安定位置まで移動する際の可動子5の各位置に対応した磁束の流れ(磁路D〜磁路G)を示している。
図に示すように、可動子5の位置が負荷トルクの大きい駆動初期の位置(図14、図15参照)にある場合には、磁路内にバルク部6Eをほとんど含まず、可動子5の位置が負荷トルクの小さい駆動後半にある場合には(図16〜図18参照)、磁路内にバルク部6Eを含むような構成となっている。
以上のように、本実施の形態2の電磁アクチュエータは、可動子5の周方向中央部にバルク部6Eを設けたため、可動子5の慣性力が増大する領域でのみ磁束がバルク部6Eを経由する。このため、可動子5の慣性力が小さい駆動領域である駆動初期には電磁力を減少させることなく可動子5の移動を効率よく行い、慣性力が増大する駆動後半には電磁力を大幅に減少させることができる。
なお、バルク部6Eの位置は必ずしも周方向中央部にする必要はなく、例えば周方向端部に配置しても、慣性力が大きい駆動後半の電磁力を減少させるという効果は得られる。
実施の形態3.
図19はこの発明の実施の形態3における電磁アクチュエータ1Dの構成を示す断面図である。本実施の形態3は上記実施の形態1の駆動コイル42A、42Dに換えて、第2の駆動コイル44A、44Bを配置している。それ以外の部分については実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態3では、第2の駆動コイル44A、44Bは、可動子5の回動範囲の両端部に配置されており、可動子5が第1の安定位置または第2の安定位置にあるとき、可動子5を径方向に囲むように巻装されている。中心部材3の外周面には第2の駆動コイル44A、44Bの配置位置に対応する位置に凹部が形成され、第2の駆動コイル44A、44Bを巻装するための空間を設けている。
例えば図19が示すように可動子5が第1の安定位置にある場合には、第2の駆動コイル44Aにより発生する磁束は可動子5の外周側と内周側の両方を通過する磁路Hを形成する。このため、第2の駆動コイル44Aによる電磁力を効率よく回転エネルギーに換えることができ、可動子5の回動を効率的に行える。
なお、第2の駆動コイル44A、44Bの配置はこれに限られるものではない。可動子5の回動範囲のうち中立安定位置以外の位置に配置すればよく、例えば第1および第2の安定位置用の駆動コイル42B、42Cに換えて配置してもよい。
また、本実施の形態3は上記実施の形態1の電磁アクチュエータ1に駆動コイル44A、44Bを配置したが、この構成は例えば上記実施の形態1の別例の電磁アクチュエータ1A、他の別例の電磁アクチュエータ1B、実施の形態2の電磁アクチュエータ1C等に適用できることは当然である。
実施の形態4.
図20はこの発明の実施の形態4における電磁アクチュエータの構成を示す断面図である。上記実施の形態1では磁場遮蔽部として駆動コイル42E、42Fが巻回された磁極41をバルクで形成したが、本実施の形態4の磁場遮蔽部は積層体からなる磁極41E、41Fに遮蔽板が配設されている。なお、本実施の形態1と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図に示すように、磁極41E、41Fは、他の磁極41A〜41Dと同様電磁鋼板の積層体である。磁極41E、41Fには、駆動コイル42E、42Fによる磁束の磁路A〜Cに対して直交する方向に遮蔽板7が配設されている。本実施の形態4では遮蔽板7は磁路の方向に沿って4枚配設されている。
図21は遮蔽板7を含む磁極41Eの一部を拡大した斜視図である。磁束Φが流れる方向を遮断するように遮蔽板7が配設されている。図中のZ方向は積層体の積層方向である。このように遮蔽板7を配置することにより、渦電流が流れる経路の抵抗を低下させ渦電流を大きくする効果がある。
以上のように本実施の形態4では、中立安定位置と対面する位置に配置される駆動コイル42E、42Fの励磁により形成される磁路の一部である磁極41E、41Fに遮蔽板7を設けたため、上記実施の形態1のようにバルク部を設けた場合と同様、渦電流を増加させることができる。このため上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、遮蔽板7の配設位置は磁極41E、41Fに限られず、駆動コイル42E、42Fの励磁により形成される磁路の一部であればどこに配置してもよい。例えば上記実施の形態1の別例や他の別例で示したバルク部6C、6Dが配置される位置に配置してもよく、また実施の形態2で示したバルク部6Eが配置される位置に配置してもよい。ただし、配設方向は駆動コイル42E、42Fによる磁束の磁路に対して直交する方向である必要がある。
また、遮蔽板7の厚みや配設枚数は、減少させる電磁力の量等に合わせて必要に応じて設定すればよい。ただし、遮蔽板7の厚みは遮蔽板の材料の表皮厚以上の厚みで構成する必要がある。
また、遮蔽板7を備える構成は上記実施の形態3の電磁アクチュエータ1Dにも適用できることは当然である。
1,1A〜1E 電磁アクチュエータ、4 固定子、5 可動子、
6A〜6E バルク部(磁場遮蔽部)、7 遮蔽板(磁場遮蔽部)、
41,41A〜41F 磁極、42,42A〜42F 駆動コイル、
44A,44B 第2の駆動コイル。

Claims (5)

  1. 円筒状を成し中心方向に向けて複数の磁極が突設された固定子と、上記固定子の内側に配置され周方向に延び、上記固定子の内周側に沿って往復回動可能に支持された可動子と、上記各磁極に巻回され上記可動子を回動範囲内の所定の安定位置に移動させる複数の駆動コイルとを備え、
    上記駆動コイルのうち上記安定位置と対面する位置に配置された駆動コイルの励磁により形成される上記固定子および可動子内の磁路の一部に磁場遮蔽部を設けたことを特徴とする電磁アクチュエータ。
  2. 円筒状を成し中心方向に向けて複数の磁極が突設された固定子と、上記固定子の内側に配置され周方向に延び、上記固定子の内周側に沿って往復回動可能に支持された可動子と、上記各磁極に巻回され上記可動子を回動範囲の一端側である第1の安定位置、他端側である第2の安定位置、および上記第1の安定位置と第2の安定位置との中間位置である中立安定位置、の各位置に移動させる複数の駆動コイルとを備え、
    上記駆動コイルのうち上記中立安定位置と対面する位置に配置された駆動コイルの励磁により形成される上記固定子および可動子内の磁路の一部に磁場遮蔽部を設けたことを特徴とする電磁アクチュエータ。
  3. 上記磁場遮蔽部はバルクにより形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁アクチュエータ。
  4. 上記磁場遮蔽部は遮蔽板により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁アクチュエータ。
  5. 上記可動子の回動範囲のうち上記安定位置以外の位置に、上記可動子を径方向に囲むように巻装され上記可動子を駆動する第2の駆動コイルを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁アクチュエータ。
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