JP2010283058A - 電磁アクチュエータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】円筒状を成し中心方向に向けて複数の磁極41が突設された固定子4と、固定子4の内側に配置され周方向に延び、固定子4の内周側に沿って往復回動可能に支持された可動子5と、各磁極41に巻回され可動子5を回動範囲内の所定の安定位置に移動させる複数の駆動コイル42とを備えている。そして、駆動コイル42のうち中立安定位置と対面する位置に配置された駆動コイル42E、42Fの励磁により形成される固定子4および可動子5内の磁路の一部に磁場遮蔽部としてのバルク部6A、6Bを設けている。
【選択図】図1
Description
揺動型の電磁アクチュエータには、例えば「開位置」、「閉位置」の2箇所で安定する双安定型の電磁アクチュエータがある(例えば、特許文献1参照)。また、3箇所で安定する3安定型の電磁アクチュエータがある(例えば、特許文献2参照)。
このような電磁アクチュエータにおいて、開閉器の接点を「入り」位置から「切り」位置に移動させる場合、上述の通り開閉器の接点を引き離すための駆動初期の負荷が大きく、接点が離れると負荷が著しく小さくなる。このため開閉器の接点が離れると同時に電磁アクチュエータの可動子の移動速度が急激に速くなり慣性力が大きくなる。可動子が「切り」位置付近で大きな慣性力を持っているため、可動子は「切り」位置を大きく行き過ぎ、「切り」位置に停止するまでに振動を繰り返すという問題が顕著である。
また、「切り」位置から少しでもずれた位置で可動子が停止してしまうと、可動子の電界が高くなり、雷インパルスのような高電界が作用すると絶縁破壊を起こしてしまうという問題もある。
図1〜3はこの発明の実施の形態1における電磁アクチュエータの構成を示す断面図であり、図1は可動子が中立安定位置にある場合、図2は可動子が第1の安定位置にある場合、図3は可動子が第2の安定位置にある場合を示している。
図1〜3に示すように電磁アクチュエータ1は、回転軸2の周囲に配設された磁性体からなる中心部材3と、中心部材3から所定の間隔を空けて同心円状に設けられた円筒状の固定子4と、固定子4の内側、すなわち中心部材3と固定子4の間に形成された円筒状の空間内に配置され、円周方向に沿って延び、円周方向に沿って往復回動可能に支持された可動子5とを備えている。中心部材3、固定子4および可動子5は複数枚の電磁薄鋼板を積層して形成された積層体からなる。
可動子5の回転方向両端部には周方向に突出した凸部50が形成され、駆動初期の磁束の磁路となり電磁力を調整する。可動子5が第1安定位置および第2安定位置に移動した際には、凸部50が第1のストッパ43Aと第2のストッパ30との隙間に嵌るように当接する。
ここで、電磁アクチュエータ1に連結される一般的な開閉器の接点の負荷状態を図4に示す。縦軸は開閉器の接点にかかる負荷トルクを示し、横軸は開閉器の接点の回転角度を示す。開閉器の接点には接触加重が作用するため、接点が接触する「入り」位置で負荷トルクが大きくなる。例えば開閉器の接点を「切り」から「入り」にするために、図1に示す中立安定位置から図2に示す第1の安定位置または図3に示す第2の安定位置に可動子5が移動する場合は、開閉器の接点に接触加重が作用しない駆動初期の負荷トルクは小さく、接点が接触する駆動後半に負荷トルクが大きくなる。開閉器の接点を「入り」から「切り」にするために、図2に示す第1の安定位置または図3に示す第2の安定位置から図1に示す中立安定位置に可動子5が移動する場合、開閉器の接点を引き離すまでの駆動初期に負荷トルクが大きく、接点が離れた駆動後半に負荷トルクが小さくなる。
図1の中立安定位置から図2の第1の安定位置に可動子5を移動させる場合には、駆動コイル42A、42Bに電流を供給する。これにより駆動コイル42A、42Bの周りに磁束が発生し、この磁束による電磁力により可動子5が反時計回りに回動し始める。可動子5が第1の安定位置まで達すると、可動子5の反時計回り方向の端部は第1のストッパ43Aと第2のストッパ30とに当接し停止する。可動子5の停止とともに駆動コイル42A、42Bの電流供給を遮断する。なお、磁束の流れについての詳細は後述する。
このような比較例の電磁アクチュエータ100を、接点の負荷状態が図4となるような開閉器と連結し、開閉器の接点を「入り」から「切り」に動作する場合、すなわち例えば可動子105を第1の安定位置から中立安定位置に移動する場合の可動子105のストローク波形の模擬図を図6に示す。縦軸は可動子105のストローク位置を角度で示したものであり、開閉器接点が「切り」の位置である中立安定位置に可動子105がある場合を中心(0位置)とし、第1の安定位置にある場合を1、中立安定位置よりも第2の安定位置側に移動した場合をマイナスで示している。横軸は可動子105の移動開始からの時間を示している。本実施の形態1と同様、可動子105を中立安定位置へ移動させるための駆動コイル142E、142Fに電流を供給することにより電磁力を発生させ、可動子105の移動を開始する。
開閉器の接点が接触している間は負荷トルクが大きいため可動子105の速度は遅いが、接点が離れて負荷トルクが小さくなった瞬間に可動子105の速度が速くなり、可動子105の慣性力は増大する。中立安定位置まで移動した可動子105は大きな慣性力を持っているため中立安定位置を行き過ぎ、行き過ぎた可動子105は駆動コイル142E、142Fによる電磁力により中立安定位置へ戻ろうとする。図6に示すように、ストローク波形は中立安定位置を中心に振動しながら最終的に中立安定位置で停止する。
図7に示すように、可動子5が第1の安定位置にある状態で駆動コイル42E、42Fの励磁を開始すると、発生する磁束により駆動コイル42Eの周りには固定子4のヨーク部40、バルク部6A、可動子5、補助磁極43を経由する磁路Aが形成される。この磁束による電磁力により可動子5は中立安定位置方向へ移動する。
図8は可動子5の時計回り方向の端部が駆動コイル42F付近まで移動した時の磁束の様子を示している。両駆動コイル42E、42Fによる磁束により、磁路Aに加え、固定子4のヨーク部40、バルク部6B、可動子5、バルク部6Aを経由する磁路Bが形成される。これらの磁束による電磁力により可動子5はさらに中立安定位置方向へ移動する。
図9は可動子5が中立安定位置まで移動した時の磁束の様子を示している。両駆動コイル42E、42Fによる磁束により、磁路A、磁路Bに加え、固定子4のヨーク部40、補助磁極43、可動子5、バルク部6Bを経由する磁路Cが形成される。なお、各磁路を示す磁束線の本数は磁束量の大きさを示している。
このような渦電流の発生を抑制する方法として磁路を積層体で形成することが知られている。渦電流は渦電流が流れる通路の抵抗に大きく依存する。従って、磁路を磁束の流れる方向に積層した積層体(図21参照)で形成すると、積層間に接触抵抗が発生し渦電流が流れる通路の抵抗が大きくなり、渦電流が小さくなる。そして渦電流を抑制することにより効率よく電磁力を発生させることができる。
これに対し、渦電流が流れる通路を塊状のバルクで形成すると、積層体で形成した場合に比べ通路の抵抗が小さく、渦電流は大きくなる。渦電流によりバルクの表皮深さ以上に磁束が入ることができず、電磁力の発生が減少する。
渦電流は磁束の時間変化で生じるため次式で表される。
このように、本実施の形態1では、バルク部6A、6Bを設けたことによる渦電流の増加と、可動子5の移動速度に伴う渦電流の増加により、駆動後半の電磁力が大幅に減少する。
まず本実施の形態1の電磁アクチュエータ1の電磁力の推移(図中▲印で結ぶ線が示す)について説明する。負荷トルクの高い駆動初期は可動子5の移動による磁場変動が小さく渦電流の発生も少ない。渦電流の発生が少ない駆動初期は渦電流による影響をほとんど受けないため、可動子5が駆動コイル42E、42Fに近づくことなどにより電磁力が増加している。負荷トルクの小さい駆動後半になると、可動子5の速度が速くなるため磁場変動が大きくなり、渦電流が大きくなる。また、磁束がバルク部6A、6Bを経由することによりバルク部6A、6Bに発生する渦電流が増加する。このため、駆動後半は中立安定位置に可動子5が近づくにつれて電磁力が大幅に減少している。
これに対し、比較例の電磁アクチュエータ100では、磁路が積層体で形成されているため渦電流の発生を抑制し、渦電流の影響をほとんど受けない。従って図中■印で結ぶ線が示すように、本実施の形態1と比較して高い電磁力を保っている。磁場変動が小さい駆動初期は比較例に対する本実施の形態1の電磁力の低減率は小さく、磁場変動が大きい駆動後半の低減率は大きくなる。
このように、本実施の形態1の電磁アクチュエータ1では磁極41E、41Fをバルク部6A、6Bとしたため、磁極が積層体からなる比較例の電磁アクチュエータ100と比して、特に駆動後半の電磁力を大幅に減少させることができる。
上述の図6で説明したように、比較例の電磁アクチュエータ100の可動子105は、中立安定位置を行き過ぎ振動を繰り返しながら中立安定位置に停止する。これに対し、本実施の形態1の電磁アクチュエータ1では、可動子5の行き過ぎを十分抑制できるため、比較的速やかに中立安定位置に可動子5を停止させることができ、停止に要する時間も大幅に短縮できる。これにより、余分なエネルギーの使用を抑制することができる。また、エネルギー消費量の減少に伴い、電磁アクチュエータの小型化を図ることができる。
また、可動子5の行き過ぎ量が小さいため、停止位置が中立安定位置よりずれた位置で停止してしまうことを防止することができる。
図12は本実施の形態1の他の別例の電磁アクチュエータ1Bであり、駆動コイル42E、42Fが巻回された磁極41E、41Fの間のヨーク部40をバルクで形成しバルク部6Dとしている。
このような電磁アクチュエータ1A、1Bにおいても、可動子5の位置に対応して、駆動コイル42E、42Fによる磁束が、バルク部6C、6Dを経由する磁路を形成する。これにより上記実施の形態1と同様に特に可動子の慣性力が大きくなる駆動領域である駆動後半の電磁力を減少させることができる。
図13はこの発明の実施の形態2における電磁アクチュエータ1Cの構成を示す断面図である。上記実施の形態1では駆動コイル42E、42Fによる磁路のうち固定子4の一部分をバルク部としたが、本実施の形態2では可動子5にバルク部を設けている。なお、本実施の形態1と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図14に示すように、可動子5が第1の安定位置にある状態で駆動コイル42E、42Fに電流を供給すると、駆動コイル42Eの周りにはヨーク部40、磁極41E、可動子5の積層部50、補助磁極43を経由する磁路Dが形成される。この磁束による電磁力により可動子5は中立安定位置方向へ移動する。図15〜図18は中立安定位置まで移動する際の可動子5の各位置に対応した磁束の流れ(磁路D〜磁路G)を示している。
図に示すように、可動子5の位置が負荷トルクの大きい駆動初期の位置(図14、図15参照)にある場合には、磁路内にバルク部6Eをほとんど含まず、可動子5の位置が負荷トルクの小さい駆動後半にある場合には(図16〜図18参照)、磁路内にバルク部6Eを含むような構成となっている。
なお、バルク部6Eの位置は必ずしも周方向中央部にする必要はなく、例えば周方向端部に配置しても、慣性力が大きい駆動後半の電磁力を減少させるという効果は得られる。
図19はこの発明の実施の形態3における電磁アクチュエータ1Dの構成を示す断面図である。本実施の形態3は上記実施の形態1の駆動コイル42A、42Dに換えて、第2の駆動コイル44A、44Bを配置している。それ以外の部分については実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態3では、第2の駆動コイル44A、44Bは、可動子5の回動範囲の両端部に配置されており、可動子5が第1の安定位置または第2の安定位置にあるとき、可動子5を径方向に囲むように巻装されている。中心部材3の外周面には第2の駆動コイル44A、44Bの配置位置に対応する位置に凹部が形成され、第2の駆動コイル44A、44Bを巻装するための空間を設けている。
なお、第2の駆動コイル44A、44Bの配置はこれに限られるものではない。可動子5の回動範囲のうち中立安定位置以外の位置に配置すればよく、例えば第1および第2の安定位置用の駆動コイル42B、42Cに換えて配置してもよい。
また、本実施の形態3は上記実施の形態1の電磁アクチュエータ1に駆動コイル44A、44Bを配置したが、この構成は例えば上記実施の形態1の別例の電磁アクチュエータ1A、他の別例の電磁アクチュエータ1B、実施の形態2の電磁アクチュエータ1C等に適用できることは当然である。
図20はこの発明の実施の形態4における電磁アクチュエータの構成を示す断面図である。上記実施の形態1では磁場遮蔽部として駆動コイル42E、42Fが巻回された磁極41をバルクで形成したが、本実施の形態4の磁場遮蔽部は積層体からなる磁極41E、41Fに遮蔽板が配設されている。なお、本実施の形態1と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図21は遮蔽板7を含む磁極41Eの一部を拡大した斜視図である。磁束Φが流れる方向を遮断するように遮蔽板7が配設されている。図中のZ方向は積層体の積層方向である。このように遮蔽板7を配置することにより、渦電流が流れる経路の抵抗を低下させ渦電流を大きくする効果がある。
なお、遮蔽板7の配設位置は磁極41E、41Fに限られず、駆動コイル42E、42Fの励磁により形成される磁路の一部であればどこに配置してもよい。例えば上記実施の形態1の別例や他の別例で示したバルク部6C、6Dが配置される位置に配置してもよく、また実施の形態2で示したバルク部6Eが配置される位置に配置してもよい。ただし、配設方向は駆動コイル42E、42Fによる磁束の磁路に対して直交する方向である必要がある。
また、遮蔽板7の厚みや配設枚数は、減少させる電磁力の量等に合わせて必要に応じて設定すればよい。ただし、遮蔽板7の厚みは遮蔽板の材料の表皮厚以上の厚みで構成する必要がある。
また、遮蔽板7を備える構成は上記実施の形態3の電磁アクチュエータ1Dにも適用できることは当然である。
6A〜6E バルク部(磁場遮蔽部)、7 遮蔽板(磁場遮蔽部)、
41,41A〜41F 磁極、42,42A〜42F 駆動コイル、
44A,44B 第2の駆動コイル。
Claims (5)
- 円筒状を成し中心方向に向けて複数の磁極が突設された固定子と、上記固定子の内側に配置され周方向に延び、上記固定子の内周側に沿って往復回動可能に支持された可動子と、上記各磁極に巻回され上記可動子を回動範囲内の所定の安定位置に移動させる複数の駆動コイルとを備え、
上記駆動コイルのうち上記安定位置と対面する位置に配置された駆動コイルの励磁により形成される上記固定子および可動子内の磁路の一部に磁場遮蔽部を設けたことを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 円筒状を成し中心方向に向けて複数の磁極が突設された固定子と、上記固定子の内側に配置され周方向に延び、上記固定子の内周側に沿って往復回動可能に支持された可動子と、上記各磁極に巻回され上記可動子を回動範囲の一端側である第1の安定位置、他端側である第2の安定位置、および上記第1の安定位置と第2の安定位置との中間位置である中立安定位置、の各位置に移動させる複数の駆動コイルとを備え、
上記駆動コイルのうち上記中立安定位置と対面する位置に配置された駆動コイルの励磁により形成される上記固定子および可動子内の磁路の一部に磁場遮蔽部を設けたことを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 上記磁場遮蔽部はバルクにより形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁アクチュエータ。
- 上記磁場遮蔽部は遮蔽板により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁アクチュエータ。
- 上記可動子の回動範囲のうち上記安定位置以外の位置に、上記可動子を径方向に囲むように巻装され上記可動子を駆動する第2の駆動コイルを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁アクチュエータ。
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