JP2010281279A - 風力発電風車ブレードの異常判定方法、異常判定装置、及び、異常判定プログラム - Google Patents

風力発電風車ブレードの異常判定方法、異常判定装置、及び、異常判定プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】
作業者の熟練を必要とせず、低コストで早期に、そして確実に、風力発電風車で発生するブレードの異常を検出する。
【解決手段】
風力発電風車ブレードの破損、レセプターの取付不備などの異常を判定する方法であって、ブレード13下方にて音響信号を収音し、収音した音響信号を周波数軸および時間軸にわたって解析し、音響信号の解析結果中に、時間推移とともに尖鋭度が高い周波数成分が推移するドップラーシフト成分の存在を検出することで、ブレード13の異常を判定することを特徴とする。
【選択図】図7

Description

本発明は、風力発電風車において風を受けて回転するブレードの異常判定方法、異常判定装置、並びに異常判定プログラムに関するものである。
風力発電用の風車は、見通しのよい立地に60m〜100m程度の高さで建設されるため、落雷によるブレードの破損に対するリスクが大きい。落雷を誘導するための方法として、風車のブレード先端にレセプターと呼ばれる小さな金属板を取り付け、雷電流を安全に大地へ流す方法が行われている。
しかしながら、このレセプターで対応できるのはある程度までの落雷に留まるものであって、まれに起きる大きな落雷あるいは小規模な落雷の繰り返しにより、ブレードの損傷、あるいは、レセプター自身が溶融する障害が発生している。レセプター自身が溶融した場合には、以後に発生する落雷に対応することができない場合があり、ブレードに直接落雷することでブレードの損傷につながる。
一般に落雷によるブレードの損傷が、即時に致命的な損傷となることは少ないが、落雷による小さな損傷(開き)が、ブレードの回転によって働く空気抵抗などの力で破断が進行しブレードの致命的な損傷となる。致命的なブレードの損傷は、ブレードの交換、並びに交換期間における売電機会逸失により多大な金額の被害が生じる。
風車への落雷は避けることができないが、落雷によって生じたブレードの損傷を早期・小規模な段階で発見することは、風力発電におけるリスク回避として事業者からの要望が高い。現状では、双眼鏡を使った定期的な目視検査で損傷を発見する対応が取られているが、熟練を要する作業であって誰でも簡単にできる方法ではない。
特許文献1には、翼回転機構と発電機を収納したナセル部と、ナセル部を指示するタワー部とで構成される風力発電装置において、風車の各風車翼に振動を検出する振動センサを取付け、これら振動センサから得られる振動パターンを比較判定する判定手段を備えた風車翼破損検知装置が開示されており、この風車翼破損検知装置により風車翼(ブレード)の破損を初期段階に検知し翼の折損飛散を防止することが提案されている。
特開2001−349775号公報
しかしながら、この特許文献1に開示される風車翼破損検知装置では、各風車翼(ブレード)に対して振動センサを設ける必要があり、その導入コストは高額となる。また、風車翼の微少振動検出による破損検出には限界があり、ごく初期段階における異常を検出することができない。
このように風力発電用風車を稼働、運用する現場においては、ブレードの異常を検出する方法として、作業者の熟練を必要とせず、低コストで早期に、そして確実に検出できる方法が望まれている。
そのため、本発明の風力発電風車ブレードの異常判定方法は、ブレード下方にて音響信号を収音し、収音した音響信号を周波数軸および時間軸にわたって解析し、音響信号の解析結果中に、時間推移とともに尖鋭度が高い周波数成分が推移するドップラーシフト成分の存在を検出することで、ブレードの異常を判定することを特徴としている。
さらに、本発明の風力発電風車ブレードの異常判定方法において、尖鋭度が高い周波数成分の時間推移が所定の傾きを有する場合を、ブレードの異常として判定することとしている。
さらに、本発明の風力発電風車ブレードの異常判定方法において、ドップラーシフト成分の存在を検出するための所定の傾きは、風車の回転数によって変更されることとしている。
また、本発明の風力発電風車ブレードの異常判定装置は、ブレード下方にて収音された音響信号を、周波数軸および時間軸にわたって解析する周波数−時間解析部と、周波数−時間解析部での解析結果中に、時間推移とともに尖鋭度が高い周波数成分が推移するドップラーシフト成分の存在を検出することで、ブレードの異常を判定する判定部を備えたことを特徴としている。
また、本発明の風力発電風車ブレードの異常判定プログラムは、ブレード下方にて収音された音響信号を、周波数軸および時間軸にわたって解析する周波数−時間数解析処理と、周波数−時間解析処理での解析結果中に、時間推移とともに尖鋭度が高い周波数成分が推移するドップラーシフト成分の存在を検出することで、ブレードの損傷を判定する判定処理を実行することを特徴としている。
本発明の実施形態において測定対象とした風力発電風車を示す図。 ブレードからの風切音発生の様子を示す図。 本発明の実施形態に係る異常判定方法に利用する測定装置の構成を示す図。 本発明の実施形態に係る異常判定方法における収音範囲を示す図。 本発明の実施形態に係る異常判定方法におけるブレードに対するマイクロホンの指向特性を示す図。 本発明の実施形態に係る周波数−時間分析結果を示す図。 本発明の実施形態に係る周波数−時間分析結果を示す図。 本発明の実施形態に係るドップラー成分の検出を説明するための図。 本発明の実施形態に係る風力発電風車ブレードの異常判定装置を示す図。 本発明の他の実施形態に係る風力発電風車ブレードの異常判定装置を示す図。
図1は、本発明の実施形態で計測対象とした風力発電風車について、その側面図と正面図を示した図である。この風力発電風車10は、タワー11、ナセル12、3枚のブレード13a〜13c、ヘッド14、各ブレードに取り付けられたレセプター15a〜15cを備えて構成されたプロペラ型のものであり、その高さを68[m]、ブレード14が回転することで描かれる円の直径を61.4[m]としており、国内でも大型のクラスに属するものである。
ブレード13a〜13cには、軽量で強度が高いGFRP(Glass Fiber Reinforced P
lastic:ガラス繊維強化プラスチック)が用いられているが、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic:カーボン繊維強化プラスチック)を用いることも可能である。これ
ら3枚のブレード13a〜13cは、ヘッド14に接続されている。
タワー11の上部には、風向きに従って回動可能なナセル12が設置されている。このナセル12内部には、ヘッド14の回転により発電を行う発電機などが設置されている。また、ヘッド14と発電機間には、ヘッド14の回転数を増加させる増速機(増速ギア)を設けることとしても良い。本実施形態の計測対象とした風力発電風車10は、風上側にブレード13a〜13c、風下側にナセル12が配置されたアップウィンド形式を採用しているが、これとは逆の配置関係を有するダウンウィンド形式であってもよい。また、ナセル12上部には落雷から風向風速計を保護するための避雷針が設置されており、落雷時、それに接続された避雷導線を介して大地に電流を流す。
風力発電風車は、その発電方式によって定回転型と可変速回転型の2つのタイプに分けられる。定回転型は、風速に拠らず風車が一定速度で回転を行うことで発電する方式である。一方、可変速回転型は、風速に応じて最大の出力が得られる任意の回転数で回転する方式である。本実施形態においても同タイプが採用されている。
この定回転型の風力発電風車では、メーカーや機種によってその数値は若干異なるものの、概ね3[m/s]〜25[m/s]程度で発電を行うように設計されている。発電が可能となる最低風速をカットイン風速、最大風速をカットアウト風速と呼ぶ。定回転型においては、このカットイン風速〜カットアウト風速間の回転数は一定であり、概ね20[回転/分]程度となっている。機種によっては回転数を複数段階で可変させるものもある。
実際の運転では、このカットイン風速となった場合、いきなり風車が回転を開始するのではなく、カットイン風速以下でもある程度の風量があれば、電力の供給を受けて風車を回転させて発電のための待機状態とさせている。一方、カットアウト風速を超えた場合には、発電機などの許容能力を超えた状態となるため風車の回転を停止させる。
各ブレード13a〜13cの先端付近には、落雷による被害を防ぐためのレセプター15a〜15cが設けられている。このレセプター15は、直径20[mm]程度の金属板である。レセプター15に避雷した場合、電流はレセプター15に接続されている避雷導線、ヘッド14の固定部、タワー11の金属部、タワー11下部からの接地導線を介して大地に流され、落雷によるブレード13の損傷を防ぐ。
図2は、ブレード13で発生する風切音発生の様子を示した図である。風切音の周波数特性は広い帯域にわたったものとして観測される。
また、風力発電風車の下方などの定位置にマイクロホンを設置して計測を行った場合、風切音の発生源となるブレード13は、その回転により計測位置に近づいた後、遠ざかっていく行程を繰り返し、音の発生源の移動に伴う速度ベクトルの計測位置に対する速度成分が大きくなっていく行程では周波数が上昇し、同速度成分が小さくなっていく行程では周波数が下降する、いわゆるドップラー効果を伴って計測されると考えられる。
一方、本発明者等は、度重なる計測を行うとともにその計測結果をブレード13の状態と付き合わせることで、ブレード13自身の破損、ブレード13に取り付けられたレセプター14の破損、あるいは、取付不具合などブレード13に異常が生じている場合、その異常部位から通常の風切音とは異なる特有の風切音が発生することを確認した。
この異常部位からの風切音は、ブレード13全体からの風切音と同様、その指向特性を
ブレード13の移動方向後方に持つことが考えられ、ブレード13全体から発せられる風切音と比較した場合、レベルはより高く、周波数特性は尖鋭度が高いものとして計測される。そして、この異常部位からの風切音は、風車の下方位置で計測した場合には、ブレード13の回転に伴う音源位置の移動によりドップラー効果を伴って計測される。
本発明は、この異常部位から発せられる風切音の特徴に着目したものであり、風車下方にて収音した音響信号を周波数軸および時間軸にわたって解析し、この異常部位からの風切音を判別容易なものに加工した上で、表示装置上での目視、あるいは、判定部や、判定処理にて自動診断することで、熟練者による作業を必要とせず、低コストで簡易に、そして確実に早期段階におけるブレード13の異常を検知できるものである。
図3は、本発明の実施形態の異常判定方法において使用する測定装置の構成を示した図である。測定装置は、マイクロホン、情報処理装置20にて構成される。マイクロホンは、無指向性や単一指向性など適宜タイプのものが利用できる。情報処理装置20には、専用の計測器を用いてもよく、また市販されるパーソナルコンピュータ上でプログラムを実行することで実現することもできる。情報処理装置20にノートパソコンを採用するなど、測定装置は簡易に持ち運びできる大きさで実現可能である。
この情報処理装置20は、周波数−時間解析部21と表示部22を主な構成要素として備えている。周波数−時間解析部21は、マイクロホンにて収音された音響信号に対し、時間毎に周波数軸変換を実行し、周波数軸および時間軸上でのレベル分布を示す解析結果を出力する。周波数軸変換にはフーリエ変換を利用することで簡易な処理とすることもできるが、周波数−時間数分解能の高いウェーブレット変換を利用することで、より明確に現象を把握することができる。
表示部22は、この解析結果を測定者に対して表示する手段であって、例えば、横軸に時間軸、縦軸に周波数軸をとり、レベル分布を色や輝度の違いで表示する。表示の形態は他にも3次元グラフにて表示するなど各種形態を採用することができる。測定者は、この表示部22に表示される解析結果を目視し、異常部位からの風切音の特徴を判別することでブレード13の異常を判定する。
図4は、本発明の実施形態の異常判定方法において好ましい収音範囲、すなわち、マイクロホンの設置可能位置を示した図である。マイクロホンによる収音はブレード13の下方にて行われることになるが、本発明において、音響信号のドップラー効果による周波数の変化を顕著に検出できるようにするため、収音範囲を図示する範囲としている。
具体的には、複数のブレード13の中心に位置するヘッド14の鉛直下方に対する角度αが30[°]以内となる範囲内であって、タワー11後方の所定範囲を除く範囲としている。このような収音範囲とすることで、収音位置に対するブレード13の位置変化を大きくし、風切音のドップラーシフト成分を鮮明にとらえることが可能となる。また、収音範囲からタワー11後方の所定範囲を除くことで、風切音がタワー11により遮られる心配もない。本実施形態の風力発電風車10はアップウィンド形式であるため、タワー11後方の所定範囲としたが、ダウンウィンド形式の場合にはタワー11前方の所定範囲が収音範囲から除外される。
ドップラーシフト成分を効率よく収音するための好ましい収音位置(収音最適位置)は、図に示すように、ブレード13a〜13cの回転中心の鉛直下方である。また、ブレード13への接触による危険性、事情から簡易に収音できることを考慮すると、収音位置の高さを地表面から1〜2m程度とするとよい。
図5は、本発明の異常判定方法において好ましいマイクロホンの指向特性を示した図である。回転運動をする発音体のドップラー効果として知られているように、マイクロホンが設置される観測位置とブレード13の回転中心を結ぶ直線とブレード13が描く円弧が交差する点A、Cにおいては、音源が発する本来の周波数f0が観測される。また、D点
に音源があるときにドップラー効果による最高周波数が、そして、B点にあるときにドップラー効果による最低周波数が観測される。
また、ブレード13が描く円弧に対して観測点から引いた接線との接点をB、Dとした場合、ブレード13がDからAを経てBを通過する間では、ドップラー効果により観測される周波数は低下していく。一方、ブレード13がBからCを経てDを通過する間では、観測される周波数は上昇していく。しかしながら、実際の計測では、観測位置からの距離が遠いため周波数の上昇成分(B点〜C点〜D点間にて発生)は他の音に埋もれてしまい、周波数の下降成分(下降ドップラーシフト成分)が顕著に計測されることとなる。
このような関係から、マイクロホンの指向特性は、この下降ドップラーシフト成分の発生範囲を含んだものとすることが望ましい。また、図4に示したように収音最適位置をブレード13の回転中心の鉛直下方とするのは、このような関係上、ドップラー効果による周波数遷移が最も大きくなる位置であることを理由とするものである。
マイクロホンには無指向性のものを採用することもできるが、このような指向性マイクロホンとブレード13の位置関係を採用することで、周囲で発生する雑音を抑え、ブレード13がマイクロホンから遠ざかることで発生するドップラーシフト成分を確実に収音することが可能となる。
図3を用いて説明した測定装置、図4、図5を用いて説明した測定位置にて実際に収音した音響信号の周波数−時間分析結果を図6、図7に示す。この周波数−時間分析結果では、横軸に時間、縦軸に周波数をとり、レベルの大きさが輝度の違いで示されている。図中、色が白い箇所(輝度が高い)がレベルの高い箇所を、色が黒い箇所(輝度が低い)がレベルの低い箇所を指し示している。
図6の概観から、約4.5秒毎に3つの大きな縞の繰り返しを確認することができる。この3つの大きな縞は、3枚のブレード13a〜13cによって発生した音響信号によるものであり、ちょうどこの測定時、風車10が13[回転/分]する待機状態であることを
示している。この本実施形態で計測対象とした風力発電風車は定回転型であって、発電時には20[回転/分]程度で定速回転が行われる。
図7は、図6と同じ周波数−時間分析結果を示した図であるが、さらに説明を加え、その一部を拡大した図を添付した図となっている。図6で説明した大きな縞は、大別して2つの成分に分けることができる。1つ目の成分は、図中Aの枠で囲まれた12〜17[kHz]にかけて0.5秒程度の発生時間を有する成分Aであり、これはブレード13がタワー
11近傍を通過する際、その相互作用によって発生する音の成分である。なお、図中A1〜A3の添字は、3枚の異なるブレード13a〜13cによるものであることを示している。
2つめの成分は、図中Bの枠で囲まれた9〜13[kHz]にかけて1.5秒程度の発生時
間を有する成分である。この成分はブレード13全体から発生するドップラー効果を伴った風切音の成分であって、時間の進行に伴い右肩下がり、すなわち、周波数を低下させながら推移する成分となっている。また、前述の成分Aに対し所定時間遅れて発生する成分となっている。添字で示す数字は同一のブレード13から発生した成分であることを示している。このブレード13全体から発生する風切音の成分は、広い周波数範囲で比較的長
い時間にわたって比較的低いレベルでゆっくりと変化する成分として現れている。
このように異常のないブレード13では、このブレード13とタワー11の相互作用による成分Aと、ブレード13全体から発生する風切音による成分Bにより構成されたものとなる。一方、異常が発生しているブレード13においては、これら2つの成分に加えて異なる成分が確認できる。図中、B2枠の左下に際立った輝線として現れる成分が、このブレード13の異常によって発生する成分である。
この輝線、すなわち、時間推移と共に尖鋭度が高い周波数成分が推移する現象によって生ずる成分(本発明でいう「ドップラーシフト成分」)は、ブレード13自体、あるいはレセプター15の異常によって生じている成分であり、通常、人間の聴覚で確認することは困難であるが、このように周波数−時間解析することで視覚的に視認容易な現象として顕在化することができる。本計測では、当該成分を発生しているブレード13においてレセプター15の取付不良が確認された。このように、本実施形態における異常判定方法は、ブレード下方にて収音した音響信号を、周波数軸および時間軸にわたって解析し、尖鋭度が高い周波数成分の時間推移の存在を検出することで、容易にブレードの異常を判定することが可能となる。本実施形態のように、信号レベルを画像の輝度で表現した解析結果では、ドップラーシフト成分は輝線として確認することができたが、3次元グラフで表現した場合においては、その急峻な起伏により目視にてその存在を確認することができる。
なお、このブレード13の異常によるドップラーシフト成分は、異常の種類、状態によって、その周波数帯域が異なった状態で現れることとなるが、時間推移に伴う尖鋭度が高い周波数成分の推移について、その時間に対する周波数変化(傾き)を用いることで、さらに精度よくドップラーシフト成分の有無を判別することが可能となる。
ドップラーシフト成分の傾きは、ブレード13の移動速度と音響信号の収音位置に依存するため、ブレード13が一定速度で移動を続ける発電中の定回転型風力発電風車の場合、ドップラーシフト成分は所定の傾きを有するものとなる。
図8は、ドップラーシフト成分の検出を説明するための模式図であって、尖鋭度が高い周波数成分を時間軸上に配列した様子が示されている。この図に示すように、例えばその尖鋭度が高い周波数成分のピーク値の射影についての傾き、すなわち、時間変化Aに対す周波数変化B(傾き:B/A)が、ブレード13の速度に依存した所定範囲内にあるか否かを判断することで、当該尖鋭度が高い周波数成分の時間推移がブレード13の異常によって発生しているドップラーシフト成分か否かを容易にかつ厳密に判定することが可能となる。
一方、可変速回転型の風力発電風車や、定回転型の風力発電風車においても待機状態の場合のように、風車の回転数が可変する場合には、当該回転数に応じてドップラーシフト成分の傾きは変化することとなる。よって、このような風車の回転数に応じて検出対象とする傾きを可変することで、さらに正確にドップラーシフト成分の有無を検出することが可能となる。風車の回転数は、風車のヘッド14に接続された主軸から検出してもよいが、時間−周波数解析の結果から、例えば、図7に示される成分Aの周期性を割り出すことで検出することもできる。
なお、このドップラーシフト成分の傾きは収音位置、すなわち、マイクロホンの設置位置も関係するため、収音位置を変更する場合には、この収音位置を考慮して検出対象とする傾きを変更することとしてもよい。マイクロホンの設置位置を予め決められた箇所とすることや、検出対象とする傾きの検出範囲に余裕を持たせるなどすることで、風車の回転数のみによってもドップラーシフト成分の検出を行うことはできるが、風車の回転数と収
音位置を考慮することで更に正確な検出を行うことが可能となる。
また、時間推移とともに尖鋭度が高い周波数成分が推移するドップラーシフト成分か否かを判断する基準として、同じブレード13上で繰り返しが生じているか否かを用いることとしてもよい。複数のブレード13上で異常が同時に発生する確率は低いと考えられる。したがって、同じブレード13で、尖鋭度が高い周波数成分の時間推移が繰り返し生じていることを判断の条件に加えることで、簡易に判断の精度を高めることができる。図7のドップラーシフト成分についても、複数の領域B2内にて同じ尖鋭度が高い周波数成分の時間推移が繰り返し発生していることが確認できる。
図9は、本発明の実施形態に係る異常判定装置を示した図である。この異常判定装置は、これまで説明してきた異常判定方法を装置として実現したものであって、本実施形態では、情報処理装置20にて構成される。より具体的には、周波数−時間解析部21、判定部23、表示部22、通信部24などを備えて構成される。また、この情報処理装置20を汎用のパーソナルコンピュータなどを用いた場合には、当該情報処理装置20で実行されるプログラムとして実現することができる。
図3の測定装置では、周波数−時間解析結果を表示部22に表示し、測定者の目視によってブレード13の以上を判定したのに対し、この異常判定装置では判定部23において自動判定が行われる点で異なったものとなっている。判定部23における判定は、異常判定方法と同様の各種手法によって実行される。このように、判定部23によって自動診断を行う異常判定装置によれば、人間の判断を介在させることなくブレード13の異常判定を行うことが可能となる。
判定部23における判定結果は、情報処理装置20の表示部22に表示して告知してもよいが、情報処理装置20に備えられた通信部20から通信網を介して、管理者が所持する情報処理端末装置にメール、あるいは、音声メッセージで告知するようにしてもよい。このように、自動診断に通信手段を組み合わせることで遠隔管理を行うことも可能となり風力発電風車の維持管理コストを削減を図ることができる。
図10は、他の実施形態に係る風力発電風車ブレードの異常判定装置を示す図である。図9で説明した異常判定装置とは、複数の風力発電風車10a〜10cを1つの情報処理管理装置20にて管理する点、通信網を介して音響信号を送信している点において相違したものとなっている。各マイクロホンM1〜M3で収音された音響信号A1〜A3は、通信網を介して情報処理装置20に送信される。情報処理装置20では、周波数−時間解析部21にて各音響信号毎に解析が行われ、判定部23にて各風力発電風車10a〜10c毎の異常が判断される。なお、各風力発電風車10、あるいは、複数の風力発電風車10を撮影する撮影部を設け、音響信号A1〜A3のみならず、動画あるいは静止画といった画像情報を同時に送信することとしてもよい。
このように複数の風力発電風車10a〜10cを管理する場合には、各音響信号A1〜A3に対し、風力発電風車10を示す識別子を付随させておくことで、情報処理装置20側では、どの風力発電風車10a〜10cのブレード13に異常が生じているかを確認することが可能となる。風力発電風車10を示す識別子としては、識別番号のような情報の他、音響信号に所定の周波数成分を混入することで識別できることも考えられる。このような構成によれば、送信された音響信号を周波数分析する際、同時にどの風力発電風車10a〜10cに異常が生じているかを確認することができる。
さらに、複数枚のブレード13のうち、どのブレード13に異常が生じているかを確認できる構成を採用することとしてもよい。この構成は、マイクロホンで収音した音響信号
にブレード13が所定位置を通過したことを示す同期信号を付随させておくことにより容易に実現することができる。また、風力発電風車10の複数枚のブレード13のうち、少なくとも何れか1枚に笛のような吹鳴部を設け、ブレード13の回転によって所定周波数成分を有する音を発するようにすることで、収音した音響信号からどのブレード13に異常が生じているかを遠隔地においても容易に確認することが可能となる。また、この吹鳴部の所定周波数を、各風力発電風車10で異なったものとすることで、風力発電風車10a〜10cを判別することもできる。
以上、本発明によれば、風力発電風車におけるブレードの異常を、作業者の熟練を必要とせず、低コストで早期に、そして確実に検出することが可能となる。
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
10…風力発電風車、11…タワー、12…ナセル、13…ブレード、14…ヘッド、15…レセプター、20…情報処理装置、21…周波数−時間解析部、22…表示部、23…判定部、24…通信部

Claims (5)

  1. ブレード下方にて音響信号を収音し、
    収音した音響信号を周波数軸および時間軸にわたって解析し、
    音響信号の解析結果中に、時間推移とともに尖鋭度が高い周波数成分が推移するドップラーシフト成分の存在を検出することで、ブレードの異常を判定することを特徴とする
    風力発電風車ブレードの異常判定方法。
  2. 尖鋭度が高い周波数成分の推移が所定の傾きを有する場合を、ブレードの異常として判定する
    請求項1に記載の風力発電風車ブレードの異常判定方法。
  3. ドップラーシフト成分の存在を検出するための所定の傾きは、風車の回転数によって変更される
    請求項2に記載の風力発電風車ブレードの異常判定方法。
  4. ブレード下方にて収音された音響信号を、周波数軸および時間軸にわたって解析する周波数−時間解析部と、
    周波数−時間解析部での解析結果中に、時間推移とともに尖鋭度が高い周波数成分が推移するドップラーシフト成分の存在を検出することで、ブレードの異常を判定する判定部を備えたことを特徴とする
    風力発電風車ブレードの異常判定装置。
  5. ブレード下方にて収音された音響信号を、周波数軸および時間軸にわたって解析する周波数−時間解析処理と、
    周波数−時間解析処理での解析結果中に、時間推移とともに尖鋭度が高い周波数成分が推移するドップラーシフト成分の存在を検出することで、ブレードの損傷を判定する判定処理を実行することを特徴とする
    風力発電風車ブレードの異常判定プログラム。
JP2009136083A 2009-06-05 2009-06-05 風力発電風車ブレードの異常判定方法、異常判定装置、及び、異常判定プログラム Active JP5207074B2 (ja)

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