JP2010271561A - エレクトロクロミック表示デバイス - Google Patents

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武 翁
Tetsuya Higuchi
徹也 樋口
Masao Suzuki
雅雄 鈴木
Toshimi Fukuoka
敏美 福岡
Yusuke Yamauchi
悠輔 山内
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National Institute for Materials Science
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Abstract

【課題】パッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、隔壁を備えることなく、高品質な画像の高速表示を実現する。
【解決手段】第1基板10と、第1基板10の上面に設けられた第1電極20と、第2基板30と、第2基板30の下面に設けられた第2電極40と、第1基板10と第2基板30との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50と、を備え、第1電極20と第2電極40との間の通電によって表示を実施するとともに、第1電極20と第2電極40との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するパッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイス100において、第2電極40とエレクトロクロミック組成物層50との間に、第1基板10及び第2基板30に対して略垂直方向に貫通する細孔60aを有する多孔質層60を備えることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、エレクトロクロミック表示デバイスに関する。
電子情報ネットワークの普及に伴い、従来の印刷技術による書籍に代わり、電子書籍の形での出版、すなわち電子出版が盛んに行われるようになってきた。こうしたネットワークで配信される電子情報を表示する装置として、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイやバックライト型液晶ディスプレイが一般的に用いられている。しかしながら、これらのディスプレイを用いた表示は、紙に印刷した慣用の表示に比べ、読む場所が制限され、取り扱いの面においても重量、大きさ、形状、携帯性の点で劣る。また、これらのディスプレイは消費電力が大きいため、電池による駆動であれば表示時間にも制限が生じてしまう。さらに、これらのディスプレイは、何れも発光型のディスプレイであり、長時間凝視すると高度の疲労を招くことがあるという問題もある。
したがって、上記のような問題を解決できる表示デバイス、さらには、書き換え可能な表示デバイスが望まれている。このような表示デバイスとして、ペーパーライクディスプレイ或いは電子ペーパーと称するものが提案されている。具体的には、例えば、反射型液晶方式の表示デバイス、電気泳動方式の表示デバイス、二色性の粒子を電場で回転させる方式の表示デバイス、エレクトロクロミック方式の表示デバイス(例えば、特許文献1及び2参照)等がこれまでに提案されている。
ところで、エレクトロクロミック方式の表示デバイス(エレクトロクロミック表示デバイス)においては、画像の表示は、例えば、選択された画素(選択画素)を発色させるための通電(具体的には、選択画素を形成するライン電極(第1電極)に負電圧、当該選択画素を形成するデータ電極(第2電極)に正電圧を印加すること)によって実施され、表示した画像の消去は、例えば、選択画素を発色させるための通電とは逆方向の通電(具体的には、当該第1電極に正電圧、当該第2電極に負電圧を印加すること)によって実施されるようになっている。
特開2003−270670号公報 特開2003−089257号公報
しかしながら、電極間は電解質溶液で満たされているため、選択画素を発色させるための通電によって、当該選択画素を形成する電極間は、分極して、電解コンデンサや電池のような状態となる。すなわち、選択画素を発色させるための通電の後は、当該選択画素を形成する電極間に電荷が残存する。この電荷は、電解質溶液を介して周辺へと移動し、非選択画素を形成する電極間へも移動する。したがって、例えば、高速スキャンを行って、一の画像を繰り返し表示すると、残存する電荷が消滅する前に次の通電が行われるため、非選択画素を形成する電極間に電荷が蓄積して、当該非選択画素が発色してしまい、選択画素が滲んだような不鮮明な画像が表示されてしまうという問題がある。そこで、残存する電荷の移動(電流の回り込み)を防止するために、画素同士の間に画素間を分離するための隔壁を形成することが考えられるが、隔壁の形成には、位置合わせ等の正確性や緻密性が要求され、作製にかかる負担が大きい。
本発明の課題は、パッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、隔壁を備えることなく、高品質な画像の高速表示を実現することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、前記第1電極と前記第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するパッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明表示電極であり、
前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成され、
前記第2電極と前記エレクトロクロミック組成物層との間に、前記第1基板及び前記第2基板に対して略垂直方向に貫通する、前記画素のサイズよりも小さい細孔を有する多孔質層を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記多孔質層の厚さは、30nm〜2μmであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記多孔質層は、二酸化チタン、シリカ及びアルミナのうちの少なくとも何れか1つで形成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、ロイコ染料と、支持電解質と、極性溶剤と、前記消去のための通電時に前記ロイコ染料を吸着する酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムと、を含むエレクトロクロミック組成物を備えることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、
請求項1〜3の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物は、ロイコ染料と、支持電解質と、極性溶剤と、を含むエレクトロクロミック組成物を備え、
前記第1電極と前記エレクトロクロミック組成物層との間に、前記消去のための通電時に前記ロイコ染料を吸着する酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムを含む吸着層を備えることを特徴とする。
本発明によれば、第2電極とエレクトロクロミック組成物層との間に多孔質層を備えるだけで、電流の回り込みを抑えることができるため、緻密で煩雑な工程を経て形成される隔壁を備えなくても、電流の回り込みの影響で非選択画素が発色してしまうことがない。したがって、隔壁を備えることなく、高品質な画像の高速表示を実現することができる。
本発明のエレクトロクロミック表示デバイスの一例を模式的に示す平面図(a)及び断面図(b)である。 本発明のエレクトロクロミック表示デバイスの他の一例を模式的に示す平面図(a)及び断面図(b)である。 画素のサイズと、多孔質層の細孔のサイズと、の関係を説明するための図である。 エレクトロクロミック組成物の発色を説明するための図である。 変形例1のエレクトロクロミック表示デバイスの一例を模式的に示す平面図(a)及び断面図(b)である。
以下、図を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
<エレクトロクロミック表示デバイスの構成>
本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100は、例えば、第1基板10と、第1基板10の上面に設けられた第1電極20…と、第1基板10の上方に第1基板10に対向して設けられた第2基板30と、第2基板30の下面に設けられた第2電極40…と、第1基板10と第2基板30との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50と、第2電極40…とエレクトロクロミック組成物層50との間に設けられた多孔質層60と、を備えて構成される。
エレクトロクロミック表示デバイス100は、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって表示を実施するとともに、第1電極20…と第2電極40…との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって、或いは、当該表示のための通電を遮断することによって、当該表示の消去を実施するパッシブマトリクス駆動の表示デバイスである。
第1電極20…は、並行して延びる複数の電極である。第2電極40…は、第1電極20…と直交する方向に並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極である。そして、第1電極20…と第2電極40…とが立体交差する領域に画素70…が形成されている。
第1基板10は、例えば、平面状に形成されており、エレクトロクロミック表示デバイス100の基体としての機能を有する。
第1基板10の材質は、電気的に絶縁性であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラスやプラスチックを用いることができる。ガラスとしては、例えば、ソーダライム系ガラス、低アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・アミノケイ酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素ポリマー類、ポリエーテル類、ポリスチレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン類、ポリイミド類等が挙げられる。
第1基板10は、白色に見えるのが好ましい。したがって、第1基板10の材質をガラスやプラスチックとした場合、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、カオリン等の白色顔料を配合することによって、白色に見える第1基板10を形成することができる。また、透明基板の下面に、前記白色顔料を塗布したり、白色紙や白色PETシートなどの白色シートを配置したりすることによって、白色に見える第1基板10を形成することができる。
第1電極20…は、例えば、幅を有するライン状に形成されており、互いに平行な等間隔の縞状に設けられている。
第1電極20…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第2電極40…に対向してエレクトロクロミック組成物層50及び多孔質層60を挟むように、第1基板10の上面に設けられている。
第1電極20…は、第2電極40…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第1電極20…は、第2電極40…と立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素70を形成している。
第1電極20は、透明電極であっても、不透明電極であってもよく、特に限定されるものではない。具体的には、第1電極20としては、例えば、ITO薄膜、SnO薄膜、InO薄膜、SnOやInOなどの酸化被膜をコーティングした薄膜、ITO薄膜にSnやSbをドーピングしたもの、SnOやInOなどの酸化被膜をコーティングした薄膜にSnやSbをドーピングしたもの、酸化亜鉛薄膜、酸化マグネシウム薄膜、酸化アルミニウム薄膜、酸化クロム薄膜、酸化ニッケル薄膜、酸化チタン薄膜等を挙げることができる。また、ITOや酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化チタンなどの酸化被膜をコーティングした薄膜等であっても良い。
なお、第1電極20は、例えば、図2に示すエレクトロクロミック表示デバイス100Aの第1電極20Aのように、ライン状に形成された金属電極部21Aと、金属電極部21Aを覆う幅を有するライン状に形成された透明電極部22Aと、により構成されていても良い。この場合、第1電極の抵抗を低減することができ、通電時における、縞状に形成した幅を有する第1電極20Aの長手方向への電圧降下を防ぐことができるため、均一な表示を得ることができる。
金属電極部21A…の材質は、特に限定されるものではなく、金属電極を構成する材料を用いることができる。金属電極を構成する材質としては、例えば、金、白金、銀、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム、銅、ニッケル、それらの合金等が挙げられる。
透明電極部22A…の材質は、特に限定されるものではなく、透明電極を構成する材質を用いることができる。透明電極を構成する材質としては、例えば、ITO薄膜、SnOやInOなどの酸化被膜をコーティングした薄膜、ITO薄膜にSnやSbをドーピングしたもの、SnOやInOなどの酸化被膜をコーティングした薄膜にSnやSbをドーピングしたもの、酸化亜鉛薄膜、酸化マグネシウム薄膜等を挙げることができる。また、ITOや酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化チタンなどの酸化被膜をコーティングした薄膜等であっても良い。さらに、透明電極部22A…は、例えば、その材質が金や白金などであっても薄膜であれば、その機能を果たすことができる。
第2基板30は、例えば、平面状に形成された透明基板であり、第2電極40…の支持体としての機能を有する。
第2基板30の材質は、電気的に絶縁性の透明基板であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラスやプラスチックを用いることができる。ガラスとしては、例えば、ソーダライム系ガラス、低アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・アミノケイ酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素ポリマー類、ポリエーテル類、ポリスチレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン類、ポリイミド類等が挙げられる。
第2電極40…は、例えば、幅を有するライン状に形成された透明電極であり、互いに平行な等間隔の縞状に設けられている。
第2電極40…は、多孔質層60に接するように、且つ、第1電極20…に対向してエレクトロクロミック組成物層50及び多孔質層60を挟むように、第2基板30の下面に設けられている。
第2電極40…は、第1電極20…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第2電極40…は、第1電極20…と立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素70を形成している。
第2電極40は、透明電極であれば、特に限定されるものではない。具体的には、第2電極40としては、例えば、ITO薄膜、SnOやInOなどの酸化被膜をコーティングした薄膜、ITO薄膜にSnやSbをドーピングしたもの、SnOやInOなどの酸化被膜をコーティングした薄膜にSnやSbをドーピングしたもの、酸化亜鉛薄膜、酸化マグネシウム薄膜等を挙げることができる。また、ITOや酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化チタンなどの酸化被膜をコーティングした薄膜等であっても良い。
エレクトロクロミック組成物層50は、例えば、スペーサ51と、スペーサ51に保持されたエレクトロクロミック組成物52と、等を備えて構成される。
エレクトロクロミック組成物層50の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm〜500μm、より好ましくは30μm〜200μmに設定することによって、エレクトロクロミック組成物52の表示機能を効果的に発現させることができる。
スペーサ51は、第1基板10と第2基板30との間に、一定の体積で、エレクトロクロミック組成物52を保持する役割を有する。すなわち、スペーサ51は、エレクトロクロミック組成物52を含むことによって、エレクトロクロミック組成物52を第1基板10と第2基板30との間で支えるとともに、スペーサ51の厚みによって、エレクトロクロミック組成物52の量を均一に制御する役割を有する。
スペーサ51としては、上述した役割を果たすものであれば任意であり、例えば、多孔性の板状体やシート状体、粒状体(多孔性であっても非多孔性であっても良い)等が挙げられる。
スペーサ51が多孔性の板状体やシート状体である場合、例えば、スペーサ51の細孔内にエレクトロクロミック組成物52を導入することによって、エレクトロクロミック組成物層50を形成する。この場合、第1電極20…(第1電極20…が設置された第1基板10)と多孔質層60(多孔質層60及び第2電極40…が設置された第2基板30)とでスペーサ51を挟んだ後に、当該スペーサ51の細孔内にエレクトロクロミック組成物52を導入してエレクトロクロミック組成物層50を形成しても良いし、スペーサ51の細孔内にエレクトロクロミック組成物52を導入してエレクトロクロミック組成物層50を形成した後に、当該エレクトロクロミック組成物層50を、第1電極20…と多孔質層60とで挟んでも良い。
ここで、多孔性の板状体やシート状体としては、エレクトロクロミック表示デバイス100の表示性能向上等の観点から、第1基板10及び第2基板30に対して略垂直方向に貫通する細孔を有するものが好ましく、具体的には、例えば、陽極酸化アルミナやメッシュ(ネット)状シート材などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、スペーサ51が粒状体である場合、例えば、第1電極20…と多孔質層60とでスペーサ51を挟んだ後に、当該スペーサ51の細孔内にエレクトロクロミック組成物52を導入してエレクトロクロミック組成物層50を形成しても良いし、スペーサ51とエレクトロクロミック組成物52とを混ぜ合わせて、スペーサ51の細孔内にエレクトロクロミック組成物52を導入したものを、第1電極20…と多孔質層60とで挟むことによって、エレクトロクロミック組成物層50を形成しても良い。
エレクトロクロミック組成物52は、支持電解質と、極性溶剤と、ロイコ染料52aと、を含んでいる。
そして、エレクトロクロミック組成物52には、エレクトロクロミック表示デバイス100の表示品質の劣化を抑制するための表示品質劣化抑制剤や、消去のための通電時にロイコ染料52aを吸着する吸着剤53が、添加されているのが好ましい。
また、エレクトロクロミック組成物52に添加可能な成分としては、例えば、エレクトロクロミック組成物52の物性(例えば、増粘など)を調整するためのポリマー化合物や、エレクトロクロミック組成物層50の白度を向上させるための白色顔料などが挙げられる。
エレクトロクロミック組成物52は、エレクトロクロミック表示デバイス100の表示にかかる発色及び消色の機能を有する。
具体的には、エレクトロクロミック組成物52は、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって発色し、発色(表示)のための通電とは逆方向の通電によって、或いは、表示のための通電を遮断することによって消色する。
エレクトロクロミック組成物52は、流動性があれば良く、例えば、低粘度の液体状であっても良いし、高粘度のペースト状であっても良いし、流動性の小さいゲル状であっても良い。
エレクトロクロミック組成物52の構成成分である支持電解質は、エレクトロクロミック組成物52内を電流が流れ易くするための機能を有する。支持電解質は、一般に溶融塩と称する化合物を含む。支持電解質は、各化合物を単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。
支持電解質は、エレクトロクロミック組成物52全体の重量に対して、0.01〜20重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、0.1〜20重量%となるように添加することがより好ましい。
具体的には、支持電解質は、前記機能を有する化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、一般式が下記の式(1)で表される化合物及び/又は下記の式(2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2010271561
(式中Mは、Li、Na、K、Rb、Cs又はNHを表す。式中Xは、ClO、BF、CFSO又はPFを表す。)
Figure 2010271561
(式中Rは、アルキル基又はアリール基を表す。式中Rは、アルキル基を表す。式中Nは、窒素原子を表す。式中Xは、Cl、Br、I、ClO、BF、CFSO又はPFを表す。式中nは、0、1又は2を表し、式中mは、4−nを表す。)
以下に、一般式が上記の式(1)で表される化合物と、上記の式(2)で表される化合物と、の例を示すが、これらは例示であり、支持電解質を限定するものではない。
一般式が上記の式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、NaClO、LiClO、KClO、RbClO、CsClO、NHClO、LiBF、LiPF等が挙げられる。
また、一般式が上記の式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、(CHNClO、(CNClO、(n−CNClO、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CHNCl、(CNCl、(CHNBr、(CNBr、(n−CNBr、(n−CNI、C(CHNClO、C(CNClO、C17(CHNClO、(CNPF、(n−CNPF、(CHNCFSO、(CNCFSO等が挙げられる。
エレクトロクロミック組成物52の構成成分である極性溶剤は、支持電解質を用い通電性を示す有機溶媒の少なくとも1種であり、ロイコ染料52aの消色を電圧及び/又は電流の遮断により促進する機能を有する。また、極性溶剤は、エレクトロクロミック組成物52にポリマー化合物を添加する場合に、そのポリマー化合物の溶剤としての機能も果たす。極性溶剤は、各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
以下に、好適な極性溶剤の例を示すが、これらは例示であり、極性溶剤を限定するものではない。
極性溶剤の具体例としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルフォキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等が挙げられる。例示した極性溶剤は、何れもエレクトロクロミック組成物52の構成成分として用いる極性溶剤として好ましいものであるが、特に好ましいものとしてはN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
エレクトロクロミック組成物52の構成成分であるロイコ染料52aは、無色又は淡色の電子供与性染料前駆体であり、フェノール性化合物などの顕色剤、酸性物質、電子受容性物質によって発色する化合物である。
ロイコ染料52aとしては、例えば、部分骨格にラクトン、ラクタム、スルトン、スピロピラン、エステル又はアミド構造を有する実用上無色となりうる化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、トリアリルメタン化合物、ビスフェニルメタン化合物、キサンテン化合物、フルオラン化合物、チアジン化合物、スピロピラン化合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
ロイコ染料52aは、前記化合物の中から適宜選択することによって、各種カラーの発色を行うことができる。したがって、ロイコ染料52aを用いたエレクトロクロミック表示デバイス100の表示色は、ロイコ染料52aによって適宜選択することができる。具体的には、例えば、ブラックに発色するロイコ染料52aを用いる場合は、白黒及びグレー表示が可能となる。
ロイコ染料52aの配合量は、ロイコ染料52aの溶解度に依存するため、一概に表すことは難しいが、ロイコ染料52aは、発色のために充分な量が配合されている必要がある。溶解度が小さいロイコ染料52aの場合は、必要な量が含まれるように、例えば、各画素70に対応するエレクトロクロミック組成物層50(スペーサ51)の体積を大きくする等して、ロイコ染料52aの配合量を調節すると良い。
以下に、ロイコ染料52aの例を、その発色によって分類して示すが、これらは例示であり、ロイコ染料52aを限定するものではない。
下記の式(3)及び式(4)は、イエローに発色するロイコ染料52aである。
Figure 2010271561
下記の式(5)〜式(7)は、マゼンダに発色するロイコ染料52aである。
Figure 2010271561
下記の式(8)〜式(11)は、シアンに発色するロイコ染料52aである。
Figure 2010271561
下記の式(12)及び式(13)は、レッドに発色するロイコ染料52aである。
Figure 2010271561
下記の式(14)は、ブルーに発色するロイコ染料52aである。
Figure 2010271561
下記の式(15)及び式(16)は、ブラックに発色するロイコ染料52aである。
Figure 2010271561
エレクトロクロミック組成物52に添加される表示品質劣化抑制剤は、ロイコ染料52aの発色、消色の繰り返し動作に伴うエレクトロクロミック表示デバイス100の表示品質の劣化を抑制する機能を有する化合物である。
表示品質劣化抑制剤の添加量は、ロイコ染料52aの含有量に対して、1〜20重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、5〜20重量%となるように添加することが好ましい。
具体的には、表示品質劣化抑制剤は、例えば、第1の表示品質劣化抑制化合物(下記の一般式(17)で表される化合物(ハイドロキノン誘導体)及び/又は下記の一般式(18)で表される化合物(カテコール誘導体))と、第2の表示品質劣化抑制化合物(下記の一般式(34)で表される化合物(フェロセン誘導体))と、第3の表示品質劣化抑制化合物(カルボニル基を有する化合物)と、の混合物である。
ハイドロキノン誘導体は、下記の一般式(17)で表される化合物であり、カテコール誘導体は、下記の一般式(18)で表される化合物である。エレクトロクロミック組成物52には、ハイドロキノン誘導体及びカテコール誘導体のうちの何れか1つが含まれていれば良い。すなわち、エレクトロクロミック組成物52には、ハイドロキノン誘導体のみ含まれていても良いし、カテコール誘導体のみ含まれていても良いし、ハイドロキノン誘導体とカテコール誘導体との両方が含まれていても良い。
Figure 2010271561
(式中R1、R2、R3、R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。或いは、式中R1とR2及び/又は式中R3とR4は、互いに縮合して5員又は6員の縮合環を形成していても良い。)
Figure 2010271561
(式中R5、R6、R7、R8は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。或いは、式中R5とR6、式中R6とR7及び/又は式中R7とR8は、互いに縮合して5員又は6員の縮合環を形成していても良い。)
下記の式(19)〜式(26)に、ハイドロキノン誘導体の例を示すが、これらは例示であり、この化合物を限定するものではない。
Figure 2010271561
Figure 2010271561
下記の式(27)〜式(33)に、カテコール誘導体の例を示すが、これらは例示であり、この化合物を限定するものではない。
Figure 2010271561
Figure 2010271561
フェロセン誘導体は、下記の一般式(34)で表される化合物である。
Figure 2010271561
(式中R9、R10は、水素原子、臭素原子、直鎖又は分岐したアルキル基、メチロール基、1又は2エチロール基、フェニル基、シクロペンテニル基、ジフェニルフォスフィノ基、アミノ基、アルキル置換アミノ基を表す。式中Feは、鉄原子を表す。)
下記の式(35)〜式(43)に、フェロセン誘導体の例を示すが、これらは例示であり、この化合物を限定するものではない。
Figure 2010271561
Figure 2010271561
カルボニル基を有する化合物は、例えば、アセトフェノン誘導体、ジベンゾイル誘導体及び/又はベンゾキノン誘導体である。エレクトロクロミック組成物52には、アセトフェノン誘導体、ジベンゾイル誘導体及びベンゾキノン誘導体のうちの少なくとも何れか1つが含まれていれば良いが、表示の背景(地色)をより白色にする等の観点から、アセトフェノン誘導体及び/又はジベンゾイル誘導体が含まれているのが好ましい。
下記の式(44)〜式(56)に、アセトフェノン誘導体の例を示すが、これらは例示であり、この化合物を限定するものではない。
Figure 2010271561
Figure 2010271561
下記の式(57)〜式(60)に、ジベンゾイル誘導体の例を示すが、これらは例示であり、この化合物を限定するものではない。
Figure 2010271561
ベンゾキノン誘導体は、下記の一般式(61)及び(62)で表される化合物である。
Figure 2010271561
(式中のR11、R12、R13及びR14は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基及びアルコキシカルボニル基の中から選択される基を表す。ただし、R11、R12、R13及びR14は、すべてが同時に水素原子であることはない。或いは、式中R11とR12及び/又は式中R13とR14は、互いに縮合して5員又は6員の縮合環を形成していても良い。)
Figure 2010271561
(式中のR15、R16、R17及びR18は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基及びアルコキシカルボニル基の中から選択される基を表す。ただし、R15、R16、R17及びR18は、すべてが同時に水素原子であることはない。或いは、式中R15とR16、式中R16とR17及び/又は式中R17とR18は、互いに縮合して5員又は6員の縮合環を形成していても良い。)
下記の式(63)〜式(68)に、一般式が上記の式(61)で表される化合物の例を示すが、これらは例示であり、この化合物を限定するものではない。
Figure 2010271561
下記の式(69)〜式(73)に、一般式が上記の式(62)で表される化合物の例を示すが、これらは例示であり、この化合物を限定するものではない。
Figure 2010271561
エレクトロクロミック組成物52には、ロイコ染料52aの発色、消色の繰り返し動作に伴うエレクトロクロミック表示デバイス100の表示品質の劣化を抑制する機能を有する化合物として、さらに一般式が上記の式(74)で表される化合物を添加しても良い。
Figure 2010271561
(式中のMは、窒素原子を除く周期律表15族原子を表す。式中のR19、R20及びR21は、置換基を有するアリール基又は置換基を有さないアリール基であって、互いに同一でも異なっていても良い。)
下記の式(75)〜式(81)に、一般式が上記の式(74)で表される化合物の例を示すが、これらは例示であり、この化合物を限定するものではない。
Figure 2010271561
Figure 2010271561
一般式が上記の式(74)で表される化合物の添加量は、ロイコ染料52aの含有量に対して、1〜50重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、10〜50重量%となるように添加することがより好ましい。
エレクトロクロミック組成物52に添加される吸着剤53は、例えば、酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムである。
吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)の添加の態様は、特に限定されるものではないが、エレクトロクロミック組成物52中に粉末で添加し、超音波やボールミル、ホモミキサーなどのホモジナイザーを用いて均一に分散し、エレクトロクロミック組成物52溶液の分散液として用いることが好ましい。
吸着剤53の添加量は、用いる酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムの活性度、粒径等により異なる。
αアルミナのように表面積の小さい酸化アルミニウム、10μm以上の粒径を有する大きな酸化アルミニウム、表面積の小さい水酸化アルミニウム、10μm以上の粒径を有する水酸化アルミニウムは、ロイコ染料52aの吸着効果が小さく、十分な吸着動作を発現するためには、1グラムのロイコ染料52aに対して、0.5グラム〜5グラム、好ましくは1グラム〜3グラムの添加が好ましい。
また、γアルミナのように表面積の大きい酸化アルミニウム、1μm以下の粒径を有する小さい酸化アルミニウム、表面積の大きい水酸化アルミニウム、1μm以下の粒径を有する小さい酸化アルミニウムは、ロイコ染料52aの吸着効果が大きいため、1グラムのロイコ染料52aに対して、0.1グラム〜0.5グラムの添加で、十分な吸着動作を発現する。
また、薄層クロマトグラフィなどに用いられる活性アルミナの類は、数10μmの粒径を有する大粒子であっても、1グラムのロイコ染料52aに対して、0.1グラム〜0.5グラムの添加で、十分な吸着動作を発現する。
ロイコ染料52aを吸着する吸着剤53は、化成品にて容易に入手できる。
以下に、好適な市販の吸着剤53の例を示すが、これらは例示であり、吸着剤53を限定するものではない。
市販の吸着剤53の具体例としては、例えば、メルク社製薄層クロマト用酸化アルミニウム60GNeutral(粒径4μm〜50μm)、日本軽金属製ローソーダアルミナLS235(粒径0.47μm),活性アルミナC200(粒径4.4μm),水酸化アルミニウムB1403(粒径1.5μm)、住友化学製γアルミナKC501(粒径1μm)等が挙げられる。
エレクトロクロミック組成物52に添加されるポリマー化合物は、エレクトロクロミック組成物52の粘度を高め、その取り扱いを容易にする機能を有する。ポリマー化合物は各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
ポリマー化合物は、エレクトロクロミック組成物52の粘度を高めるために用いるが、この場合のエレクトロクロミック組成物52の性状は、低粘度の液体状、高粘度のペースト状、流動性の小さいゲル状、とすることができる。
ポリマー化合物の好ましい配合量は、エレクトロクロミック組成物52全体の重量に対して、0.1〜80重量%とすることが好ましい。
以下に、好適なポリマー化合物の例を示すが、これらは例示であり、ポリマー化合物を限定するものではない。
ポリマー化合物の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド、又は、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンスルフィドの繰返し単位を有する高分子、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリビニルブチラールのごときポリビニルホルマール等が挙げられる。特に好ましいものとしては、ポリビニルブチラール、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
エレクトロクロミック組成物52に添加される白色顔料は、エレクトロクロミック組成物層50の白度を向上させて、地色(非表示部)をより白色に見せる機能を有する。白色顔料は各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
白色顔料としては、エレクトロクロミック組成物層50の白度を向上させることができるものであれば、特に限定されるものではないが、化成品にて容易に入手できる二酸化チタン粉末等を好ましく用いることができる。
白色顔料の添加の態様は、特に限定されるものではないが、エレクトロクロミック組成物52中に粉末で添加し、超音波やボールミル、ホモミキサーなどのホモジナイザーを用いて均一に分散し、エレクトロクロミック組成物52溶液の分散液として用いることが好ましい。
以上に説明したエレクトロクロミック組成物52は、一例であり、その他にも電気化学的な発色が可能な組成物であれば、これをスペーサ51に含ませたものをエレクトロクロミック組成物層50として用いることが可能である。
多孔質層60は、第1基板10及び第2基板30に対して略垂直方向に貫通する細孔60aを有しており、電流の回り込みを抑制する役割を有する。
多孔質層60の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは30nm〜2μm、より好ましくは100nm〜1μmである。
ここで、多孔質層60の厚みの下限値を30nmとしたのは、厚みが30nm未満であると、電流の回り込みを十分に抑制することができず、画素が滲んだような不鮮明な画像が表示されてしまうためである。
一方、多孔質層60の厚みの上限値を2μmとしたのは、厚みが増加すると表示濃度が低下していくが、厚みが2μmよりも大きくなると、十分な表示濃度が得られなくなるためである。
多孔質層60の細孔60aのサイズは、特に限定されるものではないが、例えば、図3に示すように、画素70のサイズよりも小さいものが好ましい。すなわち、例えば、図3に示すように、細孔60aの形状が円形であるとともに、画素70の形状(図3においては一点鎖線で示す)が正方形である場合は、多孔質層60の細孔60aの直径(孔径)は、画素70の幅(すなわち、第1電極20の幅や第2電極40の幅)よりも小さいものが好ましい。
無論、細孔60aの形状は、円形に限ることはなく、矩形などの多角形であっても良い。また、画素70の形状は正方形に限ることはなく、その他の多角形であっても良いし、円形であっても良い。
具体的には、多孔質層60の細孔60aのサイズとしては、例えば、1nm〜300nmが好ましく、5nm〜50nmがより好ましい。
多孔質層60の材質は、上述した厚みや形状を有するものとすることができるのであれば、特に限定されるものではなく、無機材料及び有機材料の何れも用いることができる。
好ましい材質としては、例えば、電気的に絶縁性の無機材料としてアルミナ(特に陽極酸化アルミナ)、シリカ、酸化ジルコニウム、SiC、ガラス等、電気的に絶縁性の有機材料及び高分子物質としてテフロン(米国デュポン社の登録商標)、ナイロン、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート等、半導体を含む金属酸化物材料としてTiO、SrTiO、ZnO、SnO、InSnO、Nb、WO、CuO、CoO、MnO、V等、化合物半導体を含む金属カルコゲナイド及び他元素複合化合物としてCdS、ZnS、GaP、GaAs、InP、FeS、PbS、CuInS、CuInSe等に代表される化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物や複合化合物等、金属及び半金属材料として金、白金、銀、銅、クロム、亜鉛、錫、チタン、タングステン、アルミニウム、ニッケル、鉄、シリコン、ゲルマニウム等、炭素材料としてグラファイト、グラシーカーボン、ダイヤモンド等、などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
多孔質層60は、単一の材料から構成されていても良く、複数の材料から構成されていても良い。複数の材料から構成される場合は、細孔60a…の壁部分とその他の部分、細孔60a…の上部と下部、といったように部分毎に材料を変えて構成しても良い。
多孔質層60の細孔60a…の内部の少なくとも一部(多孔質層60の細孔60a…の壁)を構成している材料は、絶縁体材料又は半導体材料が好ましい。
多孔質層60の作製方法は、上述した厚みや形状を有するものとすることができるのであれば、特に限定されるものではない。
好ましい作製方法の一例としては、例えば、第2電極40…の下面上及び第2電極40同士の間(第2基板30)に、界面活性剤及び無機種を含む前駆溶液を均一にコーティングして、外場、構造転移、基板改質等の下記の公知の技術と融合させることにより、基板(第1基板10及び第2基板30)に対して略垂直方向に配向されたメソ細孔(細孔60a)を有する多孔質層60を作製する方法が挙げられる。
無機種としては、それら対応する金属アルコキシドを用いることができる。例えば、二酸化チタンの場合は、チタンテトライソプロポキシドが挙げられ、シリカの場合は、テトラエトキシシランやテトラメトキシシランが挙げられる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤や、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム等のイオン性界面活性剤などを用いることができる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、オクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、C16EO、C16EO、アルドリッチ社製のBrij56(C1633(OCHCHOH、nは10を主とする)、Brij78(C1837(OCHCH)nOH、nは20を主とする)、Brij76(C1837(OCHCH)nOH、nは10を主とする)またはBrij58(C1633(OCHCH)nOH、nは20を主とする)(Brijは登録商標)等を用いることができる。さらに、L121((PEO)−(PPO)68−(PEO))、P123((PEO)20−(PPO)69−(PEO)20)、F127((PEO)97−(PPO)68)等も用いることができるが、これらに限定されるものではない。
公知の技術としては、例えば、(1)界面活性剤の磁気異方性を利用し、それを駆動力にして、メソ細孔が基板に対して垂直に配向された多孔質層60を、第2電極40…及び第2電極40同士の間(第2基板30)に作製する技術(Chem. Asian J. 2007, 2, 1505.)が挙げられる。この場合、基板(第2基板30)表面の親水性・疎水性のコントロールも有効的である。また、(2)細孔壁がチタニアの場合、上記ブロックコポリマー系の界面活性剤を用いて、3次元構造のチタニアメソ構造体薄膜を作製し、その後、熱処理により構造転移させ、垂直配向性TiOナノピラー薄膜を第2電極40…及び第2電極40同士の間(第2基板30)に作製する技術(J. Am. Chem. Soc., 128, 4544 (2006).)や、(3)予め第2電極40…及び第2電極40同士の間(第2基板30)に数百nm程度のマクロホールを作製し、その内部で制限空間の効果によりメソチャネルを垂直に配向させ、それを足場に連続膜部分のメソ細孔の垂直配向を誘起させる技術(J. Am. Chem. Soc., 130, 10165 (2008).)などが挙げられるが、これら((1)、(2)、(3))に限定されるものではない。
なお、上記の多孔質層60の作製方法は、一例であって、これらに限定されるものではなく、多孔質層60は、細孔60a(第1基板10及び第2基板30に対して略垂直方向に貫通する細孔であり、かつ、画素70のサイズよりも小さい細孔)を有する多孔性の板状体やシート状体であれば任意である。
<エレクトロクロミック表示デバイスの製造方法>
エレクトロクロミック表示デバイス100の製造方法は、以下の[1]〜[4]の工程を含む。
[1]第1の蒸着工程
第1の蒸着工程は、第1基板10の片方の面に第1電極20…を設ける工程である。第1電極20…は、公知の蒸着法、メッキ法、スパッタ法などによって成膜され、次いで、フォトリソグラフィー法によってパターニングされ、次いで、エッチング法によって縞状に形成される。
[2]第2の蒸着工程
第2の蒸着工程は、第2基板30の片方の面に第2電極40…を設ける工程である。第2電極40…は、公知の蒸着法、メッキ法、スパッタ法などによって成膜され、次いで、フォトリソグラフィー法によってパターニングされ、次いで、エッチング法によって縞状に形成される。
[3]多孔質層設置工程
多孔質層設置工程は、第2基板30の片方の面に形成された第2電極40…上に、多孔質層60を設置する工程である。
具体的には、例えば、第2電極40…の下面上及び第2電極40同士の間(第2基板30)に、界面活性剤及び無機種を含む前駆溶液をコーティングして、外場、構造転移、基板改質等の技術と融合させることにより、多孔質層60を形成する。
[4]貼りあわせ工程
貼りあわせ工程は、第1基板10の片面に形成された第1電極20…と、第2基板30の片面に形成された第2電極40…上に形成された多孔質層60と、を内側にして第1基板10と第2基板30とを貼りあわせ、所定の添加物(表示品質劣化抑制剤、吸着剤53、ポリマー化合物、白色顔料等)が添加されたエレクトロクロミック組成物52を封入する工程である。
具体的には、例えば、一方の基板(例えば、第1電極20…が形成された第1基板10)に設置されたスペーサ51に所定の添加物が添加されたエレクトロクロミック組成物52を浸み込ませてエレクトロクロミック組成物層50を形成させ、このエレクトロクロミック組成物層50に他方の基板(例えば、多孔質層60及び第2電極40…が形成された第2基板30)を貼りあわせる。
なお、上記のエレクトロクロミック表示デバイス100の製造方法は、一例であって、これらに限定されるものではない。
<エレクトロクロミック表示デバイスの駆動方法>
エレクトロクロミック表示デバイス100は、例えば、パッシブマトリックス駆動によって、以下のように駆動される。
エレクトロクロミック表示デバイス100の各画素70は、第1電極20…と第2電極40…とによって挟まれたエレクトロクロミック組成物層50によって構成される。
エレクトロクロミック表示デバイス100の発色は、第1電極20…と第2電極40…との間に通電することによってエレクトロクロミック組成物52に通電すると、エレクトロクロミック組成物層50と第2電極40との間(多孔質層60)にてエレクトロクロミック組成物52が電気化学的な変化を起こすことによって行われる。また、エレクトロクロミック表示デバイス100の消色は、表示のための通電とは逆方向の通電によって、或いは、表示のための通電を遮断して放置することによって行われるが、表示のための通電とは逆方向の通電の方が、速やかに消去動作を実施することができる。
具体的には、例えば、図4に示すように、発色(表示)のための通電を行うと、エレクトロクロミック組成物52中のロイコ染料52aは、エレクトロクロミック組成物層50からエレクトロクロミック組成物層50と第2電極40との間(多孔質層60の細孔60a内)へと移動して発色する。そして、表示のための通電とは逆方向の通電が行われると、或いは、表示のための通電が遮断されると、細孔60a内のロイコ染料52aは、細孔60a内からエレクトロクロミック組成物層50へと移動して消色する。
ここで、吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)が添加されていないエレクトロクロミック組成物52を使用する従来の表示デバイスでは、消去のための通電の通電量を厳密に制御する必要があった。これは、消去のための通電によって、ロイコ染料52aがエレクトロクロミック組成物層50と第1電極20との間(第1電極20の表面)へと移動して発色してしまい、結果として表示が消去されないことがあるからである。
これに対して、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100においては、従来の表示デバイスのように消去のための通電の通電量を厳密に制御しなくても、消去のための通電時には、ロイコ染料52aは吸着剤53に吸着されるため、ロイコ染料52aがエレクトロクロミック組成物層50と第1電極20との間(第1電極20の表面)へと移動して発色してしまうことを防止することができる。
具体的には、ロイコ染料52aは溶液中で分極している。吸着剤53は、比表面積が大きく吸着能力が高いという特徴を有するとともに、表面が分極している。発色表示のための通電においては、第2電極40は正帯電することから、電子供与性であるロイコ染料52aは、電子を第2電極40に供与して発色し、表示を行う。一方、消去のための通電では、表示と反対方向に通電を行うため、第2電極40は負帯電する。ロイコ染料52aは、その負帯電した第2電極40から電子を受容して消色し、発色は消去される。そして、無色となったロイコ染料52aは、第1電極20の方向へ移動するが、高い吸着能力を有するとともに表面が分極した吸着剤53の存在によって、第1電極20へは到達せずに、吸着剤53へと移動して、捕捉吸着される。これにより、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100においては、消去のための通電時に、ロイコ染料52aが、エレクトロクロミック組成物層50と第1電極20の間(第1電極20の表面)に移動して発色することを防止することができる。
<実施例>
以下に、具体的な実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(エレクトロクロミック表示デバイスの作製)
第1基板10として、0.7mm厚の矩形状の無アルカリガラス基板を用い、その一方の面(上面)に、銅をスパッタして、金属膜を形成した。形成された金属膜を、フォトリソグラフィー法を用いて、ストライプ幅0.3mm、ピッチ0.45mm、厚さ0.1mmのストライプ状にパターン形成した。
次いで、パターン形成された金属膜を厚み300nmのITO膜で覆い、フォトリソグラフィー法を用いて、金属膜をITO膜で被覆した状態で、ストライプ幅0.42mm、ピッチ0.45mmとして、ストライプ状にパターン形成することにより、第1電極20…を形成した。
第2基板30として、0.7mm厚の矩形状の無アルカリガラス基板を用い、その一方の面(下面)に、ITO膜をスパッタ形成した。スパッタ形成されたITO膜は、膜厚200nm、表面抵抗10Ω/□であった。スパッタ形成されたITO膜を、フォトリソグラフィー法を用いて、ストライプ幅0.42mm、ピッチ0.45mmとして、ストライプ状にパターン形成することにより、第2電極40…を形成した。
そして、形成された第2電極40…の表面を、エタノールとアセトンで洗浄して、乾燥させた。
次いで、35.5%の濃塩酸(0.74g)とチタンテトライソプロポキシド(1.05g)との混合溶液を10分間攪拌し、その後、P123(0.2g)を含むエタノール溶液(3.0g)にゆっくりと滴下し、さらに15分間攪拌することで、前駆溶液を作製した。
そして、作製した前駆溶液を、第2電極40…上へ滴下して、スピンコート法を用いて、500rpmで5秒回転させた後、1000rpm〜6000rpmで30秒間回転させた。成膜後、すぐに冷凍庫(−5℃)に入れて24時間放置し、その後、電気炉を用いて1℃/分で加熱して400℃で4時間焼成することにより、多孔質層60を形成した。
回転数を3000rpmとしたものの膜厚を測定したところ、約300nmであった。
次いで、第1電極20…と多孔質層60との間にスペーサ51(粒状体(積水ファインケミカル製ミクロパール(粒径50μm)))を挟み、第1電極20…が第2電極40…に対して直交し、かつ、その直交部が画素70…となるように調整して、第1電極20…が形成された第1電極10と、多孔質層60及び第2電極40…が形成された第2基板30と、重ね合わせた。そして、4つの側面(厚さ方向に平行する面)のうちの2つを接着剤(例えば、熱硬化性のエポキシ)で接着封止した。
次いで、接着剤未接着部分の一方から、所定の添加物(表示品質劣化抑制剤、吸着剤53、ポリマー化合物、白色顔料等)が添加されたエレクトロクロミック組成物52(以下、「エレクトロクロミック組成物A」と呼ぶ)を、ピペットを用いて注入した。そして、4つの側面(厚さ方向に平行する面)のうちの接着剤未接着部分を接着剤で接着封止し、エレクトロクロミック表示デバイス100(以下、「表示デバイスA」と呼ぶ)を作製した。
エレクトロクロミック組成物Aの組成は、
ロイコ染料(上記の式(16))300mg、
ハイドロキノン誘導体(上記の式(19);ハイドロキノン)56mg、
フェロセン誘導体(上記の式(35);フェロセン)15mg、
カルボニル基を有する化合物(ジベンゾイル誘導体(上記の式(57);ジベンゾイル))106mg、
支持電解質(一般式が上記の式(2)で表される化合物(テトラnブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(n−CNBF))100mg、
極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド)1.0g、
ポリマー化合物(ポリビニルブチラール;積水化学製エスレックBH3)25mg、
吸着剤53(酸化アルミニウム;日本軽金属製活性アルミナC200)75mg、
白色顔料(二酸化チタン;堺化学製二酸化チタンA190)200mgである。
(表示動作)
表示デバイスAの、ライン電極(第1電極20)60ライン及びデータ電極(第2電極40)60ラインの部分にパターン作製回路を接続した。
次いで、パッシブマトリクス駆動法を用いて、表示のための通電を行った。具体的には、選択された画素70(選択画素)を形成する第1電極20を負電極、選択画素を形成する第2電極40を正電極として、1ライン当たり10m秒、1m秒及び0.5m秒の各速度で、電極間に4Vの電圧を印加することにより、表示パターン(市松模様のパターン)を形成した。
(保持動作)
次いで、選択画素を形成する第1電極20を負電極、選択画素を形成する第2電極40を正電極として、1ライン当たり10m秒、1m秒及び0.5m秒の各速度で、電極間に2.5Vの電圧を印加することにより、表示パターンを10秒間保持した。
(消去動作)
次いで、表示と反対方向に通電(消去のための通電)を行った。具体的には、選択画素を形成する第1電極20を正電極、選択画素を形成する第2電極40を負電極として、1ライン当たり1m秒の速度で、電極間に3Vの電圧を印加し、0.5秒間通電することにより、表示パターンを消去した。
(実施例1の視覚による評価)
上記表示動作によって、1ライン当たり10m秒、1m秒及び0.5m秒の何れのドライブ速度においても、解像度の高い市松模様のパターンを表示させることができた。
また、上記保持動作によって、1ライン当たり10m秒、1m秒及び0.5m秒の何れの速度においても、表示された解像度の高い市松模様のパターンを保持することができた。
また、上記消去動作によって、表示された市松模様のパターンを確実に消去することができた。
(実施例1の反射率による評価)
次に、表示デバイスAに表示された市松模様のパターンの白色部分の反射率を求めた。
具体的には、(A)表示保持された市松模様のパターンをデジタルカメラで撮影し、256階調データを取得した。(B)既知の反射率のステップウエッジを(A)と同時にデジタルカメラで撮影し、各ステップの256階調データを取得して、反射率と256階調データとの関係を示す特性曲線を作成した。(C)(A)で取得した256階調データを、(B)で作成した特性曲線を用いて反射率に変換することにより、反射率を求めた。その結果を表1に示す。
また、比較のために、比較例1として、多孔質層60を備えていない点以外は表示デバイスAと同一の構成の表示デバイスBを作製し、表示デバイスAと同様の方法で、反射率を求めた。その結果も表1に示す。
Figure 2010271561
表1に示すように、実施例1では、ドライブ速度が速くなるにつれて、反射率が低下したが、1ライン当たり10m秒、1m秒及び0.5m秒の何れのドライブ速度においても、高い反射率が得られることが分かった。
一方、比較例1では、ドライブ速度が速くなるにつれて、反射率が低下し、1ライン当たり1m秒のドライブ速度の場合と、1ライン当たり0.5m秒のドライブ速度の場合と、では反射率が著しく低いことが分かった。
以上の結果から、多孔質層60を備えていないと、電流の回り込みの影響で、画素70が滲んだような不鮮明な画像が表示されてしまうのに対し、多孔質層60を備えると、電流の回り込みを抑制されて、高解像度の鮮明な画像を表示できることが分かった。
すなわち、エレクトロクロミック表示デバイス100は、高速で駆動させても、解像度の高い画像を表示させることができ、高速かつ高品質の表示を実現することができた。
以上説明した本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100(或いは、エレクトロクロミック表示デバイス100A)によれば、第1基板10と、第1基板10の上面に設けられた第1電極20…(或いは、第1電極20A…)と、第1基板10の上方に当該第1基板10に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板30と、第2基板30の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極40…と、第1基板10と第2基板30との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50と、を備え、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって表示を実施するとともに、第1電極20…と第2電極40…との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するパッシブマトリクス駆動の表示デバイスであり、第1電極20…は、並行して延びる複数の電極であり、第2電極40…は、第1電極20…と直交する方向に並行して延びる複数の透明表示電極であり、第1電極20…と第2電極40…とが立体交差する領域に画素70…が形成され、第2電極40…とエレクトロクロミック組成物層50との間に、第1基板10及び第2基板30に対して略垂直方向に貫通する、画素70のサイズよりも小さい細孔60aを有する多孔質層60を備えている。
すなわち、第2電極40…とエレクトロクロミック組成物層50との間に多孔質層60を備えるだけで、電流の回り込みを抑えることができるため、緻密で煩雑な工程を経て形成される隔壁を備えなくても、電流の回り込みの影響で非選択画素が発色してしまうことがない。したがって、隔壁を備えることなく、高品質な画像の高速表示を実現することができる。
また、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100によれば、多孔質層60の厚さは、30nm〜2μmである。
したがって、確実に電流の回り込みを抑えることができるとともに、十分な表示濃度を有するため、好適である。
また、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100によれば、多孔質層60は、二酸化チタン、シリカ及びアルミナのうちの少なくとも何れか1つで形成されている。
したがって、第1基板10及び第2基板30に対して略垂直方向に貫通する細孔60aを有する多孔質層60を確実に形成することができるため、好適である。
また、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100によれば、エレクトロクロミック組成物層50は、ロイコ染料52aと、支持電解質と、極性溶剤と、消去のための通電時にロイコ染料52aを吸着する吸着剤(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)と、を含むエレクトロクロミック組成物52を備えている。
すなわち、消去のための通電時には、ロイコ染料52aは吸着剤53に吸着されるため、ロイコ染料52aが表示電極(第2電極40)と反対側の電極(第1電極20)に移動して発色表示を形成してしまうことを防止することができる。したがって、表示のための通電とは逆方向に通電することによって表示を消去する際、通電量を厳密に制御しなくても、確実に表示を消去することができる。
なお、本発明は、上記した実施の形態のものに限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
<変形例1>
本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100において、吸着剤53は、エレクトロクロミック組成物層50を構成するエレクトロクロミック組成物52に添加(分散)されていなくても良く、例えば、図5に示すエレクトロクロミック表示デバイス100Bのように、第1電極20…とエレクトロクロミック組成物層50との間に備えられていても良い。
エレクトロクロミック表示デバイス100Bは、例えば、第1基板10と、第1電極20…と、第2基板30と、第2電極40…と、エレクトロクロミック組成物層50と、多孔質層60と、第1電極20…とエレクトロクロミック組成物層50との間に設けられた吸着層80と、を備えて構成される。
エレクトロクロミック組成物層50は、例えば、スペーサ51と、スペーサ51に保持されたエレクトロクロミック組成物52と、等を備えて構成される。
ここで、変形例1のエレクトロクロミック表示デバイス100Bのエレクトロクロミック組成物層50が備えるエレクトロクロミック組成物52は、表示品質劣化抑制剤、ポリマー化合物、白色顔料等は添加されているが、吸着剤53は添加されていないこととする。
吸着層80は、例えば、第1電極20…と第2電極40…との間の消去のための通電時にロイコ染料52aを吸着する機能を有する。
吸着層80は、例えば、第1電極20…上に堆積されて、エレクトロクロミック組成物層50と接している。
吸着層80は、例えば、吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)と、水溶性バインダーと、などにより構成されている。
具体的には、吸着層80は、例えば、吸着剤53や水溶性バインダーなどを水等の媒体中に均一に分散させて分散液を作製し、その分散液を第1電極20…上に塗布して乾燥させることによって形成される。
なお、吸着層80の白度を向上させるために、二酸化チタン粉末等の白色顔料を、吸着剤53や水溶性バインダーなどとともに媒体中に均一に分散させて分散液を作製し、それを第1電極20…上に塗布して乾燥させることによって、吸着層80を形成しても良い。
吸着剤53は、特に限定されるものではないが、吸着効果等の観点から、γアルミナのように表面積の大きい酸化アルミニウム、1μm以下の粒径を有する小さい酸化アルミニウム、表面積の大きな水酸化アルミニウム、1μm以下の粒径を有する小さい水酸化アルミニウムを好ましく用いることができる。
また、バインダーとして用いられる水溶性バインダーは、特に限定されるものではなく、例えば、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)やメチルセルロース(MC)などのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンオキシド(PEO)等を用いることができる。中でもポリビニルアルコールを好ましく用いることができる。
水溶性バインダーの添加量は、特に限定されるものではないが、吸着剤53に対して、0.1〜30重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。水溶性バインダーの添加量が少なすぎると、塗布、形成された吸着層80が、接触等で剥がれやすくなる等の物理的損傷を受けやすい。一方、水溶性バインダーの添加量が多すぎると、吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)の吸着効果を阻害する。また、水溶性バインダーの添加量が多すぎると、電気抵抗を高める原因となり、通電量の低下等、エレクトロクロミック表示デバイス100Bの発色表示動作及び消去動作に、不都合な影響を与える。
酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムは、化成品にて容易に入手できる。
以下に、好適な市販の酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムの例を示すが、これらは例示であり、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムを限定するものではない。
市販の吸着剤53の具体例としては、例えば、メルク社製薄層クロマト用酸化アルミニウム60GNeutral(粒径4μm〜50μm)、日本軽金属製ローソーダアルミナLS235(粒径0.47μm),活性アルミナC200(粒径4.4μm),水酸化アルミニウムB1403(粒径1.5μm)、住友化学製γアルミナKC501(粒径1μm)等が挙げられる。
<エレクトロクロミック表示デバイスの駆動方法>
エレクトロクロミック表示デバイス100Bは、例えば、パッシブマトリックス駆動によって駆動される。
変形例1のエレクトロクロミック表示デバイス100Bの駆動は、実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100の駆動と略同一であるため、詳細な説明は省略する。
ここで、変形例1のエレクトロクロミック表示デバイス100Bにおいては、従来の表示デバイスのように消去のための通電の通電量を厳密に制御しなくても、消去のための通電時には、ロイコ染料52aは吸着層80に含まれる吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)に吸着されるため、ロイコ染料52aが第1電極20の表面へと移動して発色してしまうことを防止することができる。
具体的には、ロイコ染料52aは溶液中で分極している。吸着剤53は、比表面積が大きく吸着能力が高いという特徴を有するとともに、表面が分極している。発色表示のための通電においては、第2電極40は正帯電することから、電子供与性であるロイコ染料52aは、電子を第2電極40に供与して発色し、表示を行う。一方、消去のための通電では、表示と反対方向に通電を行うため、第2電極40は負帯電する。ロイコ染料52aは、その負帯電した第2電極40から電子を受容して消色し、発色は消去される。そして、無色となったロイコ染料52aは、第1電極20の方向へ移動するが、高い吸着能力を有するとともに表面が分極した吸着剤53の存在によって、吸着層80へと移動して、捕捉吸着される。これにより、変形例1のエレクトロクロミック表示デバイス100Bにおいては、消去のための通電時に、ロイコ染料52aが、第1電極20の表面に移動して発色することを防止することができる。
以上説明した変形例1のエレクトロクロミック表示デバイス100Bによれば、第1電極20…とエレクトロクロミック組成物層50との間に、消去のための通電時にロイコ染料52aを吸着する吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)を含む吸着層80を備えている。
すなわち、消去のための通電時には、ロイコ染料52aは吸着剤53に吸着されるため、ロイコ染料52aが表示電極と反対側の電極に移動して発色表示を形成してしまうことを防止することができる。したがって、表示のための通電とは逆方向に通電することによって表示を消去する際、通電量を厳密に制御しなくても、確実に表示を消去することができる。
なお、変形例1において、第1電極20の構造は、第1電極20が第1基板10の上面に設けられているのであれば任意であり、また、第2電極40の構造は、第2電極40が第2基板30の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成されているのであれば任意である。
具体的には、例えば、第1電極20は、金属電極部21Aと透明電極部22Aとにより構成される第1電極20Aであっても良い。
10 第1基板
20,20A 第1電極
30 第2基板
40 第2電極
50 エレクトロクロミック組成物層
52 エレクトロクロミック組成物
52a ロイコ染料
53 吸着剤(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)
60 多孔質層
60a 細孔
70 画素
80 吸着層
100,100A,100B エレクトロクロミック表示デバイス

Claims (5)

  1. 第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、前記第1電極と前記第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するパッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
    前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
    前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明表示電極であり、
    前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成され、
    前記第2電極と前記エレクトロクロミック組成物層との間に、前記第1基板及び前記第2基板に対して略垂直方向に貫通する、前記画素のサイズよりも小さい細孔を有する多孔質層を備えることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
  2. 請求項1に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
    前記多孔質層の厚さは、30nm〜2μmであることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
  3. 請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
    前記多孔質層は、二酸化チタン、シリカ及びアルミナのうちの少なくとも何れか1つで形成されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
    前記エレクトロクロミック組成物層は、ロイコ染料と、支持電解質と、極性溶剤と、前記消去のための通電時に前記ロイコ染料を吸着する酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムと、を含むエレクトロクロミック組成物を備えることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
  5. 請求項1〜3の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
    前記エレクトロクロミック組成物は、ロイコ染料と、支持電解質と、極性溶剤と、を含むエレクトロクロミック組成物を備え、
    前記第1電極と前記エレクトロクロミック組成物層との間に、前記消去のための通電時に前記ロイコ染料を吸着する酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムを含む吸着層を備えることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016541020A (ja) * 2013-11-20 2016-12-28 アシュウィン−ウシャス・コーポレイション・インコーポレイテッドAshwin−Ushas Corporation,Inc. エレクトロクロミックデバイスの制御のための方法及び装置
US9829762B2 (en) 2014-05-13 2017-11-28 Ricoh Company, Ltd. Electrochromic display element, display device, information system, and electrochromic dimming lens

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