JP2010271502A - コンバーターレンズ及びこのコンバーターレンズを有する光学装置 - Google Patents

コンバーターレンズ及びこのコンバーターレンズを有する光学装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 ゴーストやフレアをより低減させることができる、高い光学性能を備えたコンバーターレンズ及びこのコンバーターレンズを有する光学装置を提供する。
【解決手段】 撮影レンズB1の物体側(もしくは像面側)に装着して用いられるコンバーターレンズA1において、前記コンバーターレンズA1を構成するレンズ成分(図1ではレンズL1,L2)における光学面のうち少なくとも1面(図1では面番号2,3)は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含んだ反射防止膜が施されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、コンバーターレンズ及びこのコンバーターレンズを有する光学装置に関する。
従来から、撮影レンズの物体側に取り付けて用いるワイドコンバーターレンズ、テレコンバーターレンズなどに代表されるフロントコンバーターレンズや、撮影レンズの像面側に取り付けて用いるテレコンバーターレンズに代表されるリアコンバーターレンズが数多く提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。また近年、上記のようなコンバーターレンズに対しては、収差性能だけではなく、光学性能を損なう要因の一つであるゴーストやフレアに関する要求も厳しさを増しており、そのためレンズ面に施される反射防止膜にもより高い性能が要求され、要求に応えるべく多層膜設計技術や多層膜成膜技術も進歩を続けている(例えば、特許文献3参照)。
特許第4147615号公報 特開平5−142473号公報 特開2000−356704号公報
しかしながら、従来のコンバーターレンズでは、光学面から、光学性能に影響を与えるゴーストやフレアとなる反射光が発生しやすいという問題があった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、ゴーストやフレアをより低減させることができる、高い光学性能を備えたコンバーターレンズ及びこのコンバーターレンズを有する光学装置を提供することを目的とする。
このような目的を達成するため、本発明は、撮影レンズの物体側もしくは像面側に装着して用いられるコンバーターレンズにおいて、前記コンバーターレンズを構成するレンズ成分における光学面のうち少なくとも1面は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含んだ反射防止膜が施されている。
なお、本発明において、前記反射防止膜は多層膜であり、前記多層膜の最表面層は、前記ウェットプロセスを用いて形成された層であることが好ましい。
また、本発明において、前記反射防止膜が設けられた光学面は、前記撮影レンズの内部に配置された開口絞りから見て凹面であることが好ましい。
また、本発明において、前記反射防止膜が設けられた光学面は、像面から見て凹面であることが好ましい。
また、本発明において、前記ウェットプロセスを用いて形成された層のd線における屈折率をndとしたとき、次式 nd≦1.30 の条件を満足することが好ましい。
また、本発明に係る光学装置は、上記いずれかのコンバーターレンズを有する。
本発明によれば、ゴーストやフレアをより低減させることができる、高い光学性能を備えたコンバーターレンズ及びこのコンバーターレンズを有する光学装置を提供することができる。
第1実施例に係るワイドコンバーターレンズと撮影レンズとの構成を示す断面図である。 第1実施例に係るワイドコンバーターレンズと撮影レンズとを組み合わせた場合の諸収差図を示す。 第1実施例に係るワイドコンバーターレンズと撮影レンズとの組み合わせにおいて、入射光線が第1番目のゴースト発生面と第2番目のゴースト発生面で反射する様子を説明する図である。 第2実施例に係るテレコンバーターレンズと撮影レンズとの構成を示す断面図である。 第2実施例に係るテレコンバーターレンズと撮影レンズとを組み合わせた場合の諸収差図を示す。 第2実施例に係るテレコンバーターレンズと撮影レンズとの組み合わせにおいて、入射光線が第1番目のゴースト発生面と第2番目のゴースト発生面で反射する様子を説明する図である。 本実施形態に係るコンバーターレンズを有する光学装置(カメラ)の構成を示す図である。 本実施例に係る反射防止膜の構造を示す説明図である。 本実施例に係る反射防止膜の分光特性を示すグラフである。 変形例に係る反射防止膜の分光特性を示すグラフである。 変形例に係る反射防止膜の分光特性を示すグラフである。 従来技術で作成した反射防止膜の分光特性を示すグラフである。 従来技術で作成した反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係るコンバーターレンズは、撮影レンズの物体側もしくは像面側に取り付けて、全系の焦点距離を短くもしくは長くし、撮影画角を広げるもしくは狭めるものであり、構成するレンズ成分における光学面のうち少なくとも1面は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含んだ反射防止膜が施されている。なお、前記反射防止膜は多層膜であり、前記多層膜の最表面層は、前記ウェットプロセスを用いて形成された層であることが好ましい。この構成によれば、空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
また、本実施形態において、前記反射防止膜が設けられた光学面は、撮影レンズの内部に配置された開口絞りから見て凹面であることが好ましい。開口絞りに対して凹面にゴーストが発生し易いため、この構成にすれば、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
また、本実施形態において、前記反射防止膜が設けられた光学面は、像面から見て凹面であることが好ましい。像面に対して凹面にゴーストが発生し易いため、この構成にすれば、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
また、本実施形態において、前記ウェットプロセスを用いて形成された層のd線(波長587.6nm)における屈折率をndとしたとき、次式nd≦1.30の条件を満足することが好ましい。この条件を満足することで、空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
なお、本実施形態において、反射防止膜は、ウェットプロセスに限らず、(ドライプロセス等により)屈折率が1.30以下となる層を少なくとも1層含むようにしてもよい。このように構成しても、ウェットプロセスを用いた場合と同様の効果を得ることができる。なお、このとき、屈折率が1.30以下になる層は、多層膜を構成する層のうち最表面層であることが望ましい。
図7に、上記構成のコンバーターレンズ8を、撮影レンズ2と組み合わせて備えたデジタル一眼レフカメラ1(光学装置)の略断面図を示す。この図7に示すように、デジタル一眼レフカメラ1(光学装置)において、不図示の物体(被写体)からの光は、コンバーターレンズ8と撮影レンズ2で集光されて、クイックリターンミラー3を介して焦点板4に結像される。そして、焦点板4に結像された光は、ペンタプリズム5中で複数回反射されて接眼レンズ6へと導かれる。これにより、撮影者は、物体(被写体)像を接眼レンズ6を介して正立像として観察することができる。
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、クイックリターンミラー3が光路外へ退避し、コンバーターレンズ8と撮影レンズ2で集光された不図示の物体(被写体)の光は撮像素子7上に被写体像を形成する。これにより、物体(被写体)からの光は、当該撮像素子7により撮像され、物体(被写体)画像として不図示のメモリに記録される。このようにして、撮影者は本カメラ1による物体(被写体)の撮影を行うことができる。なお、図7に記載のカメラ1は、撮影レンズ2を着脱可能に保持するものでもよく、撮影レンズ2と一体に成形されるものでもよい。
以下、各実施例について図面に基づき説明する。以下に、表1及び表2を示すが、これらは第1実施例及び第2実施例における各諸元の表である。[面データ]において、面番号は光線の進行する方向に沿った物体側からのレンズ面の順序を、rは各レンズ面の曲率半径を、dは各光学面から次の光学面(又は像面)までの光軸上の距離である面間隔を、ndはd線(波長587.6nm)に対する屈折率を、νdはd線に対するアッベ数を示す。なお、レンズ面が非球面である場合には、面番号に*印を付し、曲率半径rの欄には近軸曲率半径を示す。また、曲率半径の「∞」は平面又は開口を示す。また、空気の屈折率「1.00000」の記載は省略している。
[非球面データ]においては、[面データ]に示した非球面について、その形状を次式(a)で示す。すなわち、光軸に垂直な方向の高さをyとし、高さyにおける各非球面の頂点の接平面から各非球面までの光軸に沿った距離(サグ量)をS(y)とし、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をrとし、円錐係数をκとし、n次の非球面係数をAnとしたとき、以下の式(a)で示している。なお、各実施例において、2次の非球面係数A2は0であり、その記載を省略している。また、「E-n」は、「×10-n」を表す。例えば、1.234E-05=1.234×10-5である。
S(y)=(y2/r)/{1+(1−κ・y2/r21/2
+A4×y4+A6×y6+A8×y8+A10×y10+A12×y12 …(a)
[各種データ]においては、mは倍率を、fは全系の焦点距離を、FNOはFナンバーを、2ωは画角(単位:度)を示す。
なお、以下の全ての諸元値において、掲載されている焦点距離f、曲率半径r、面間隔d、その他の長さの単位は、特記がない場合、一般に「mm」が使われている。但し、光学系は、比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることなく、他の適当な単位を用いることが可能である。
以上の説明は、他の実施例においても同様とし、その説明を省略する。
(第1実施例)
第1実施例に係るワイドコンバーターレンズA1について、図1〜図3及び表1を用いて説明する。図1は、第1実施例に係るワイドコンバーターレンズA1と、これと組み合わせて用いる撮影レンズB1との構成を示す断面図である。第1実施例に係るワイドコンバーターレンズA1は、図1に示すように、物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズL1と、正の屈折力を有する第2レンズL2とを有し、全体としてアフォーカル系を構成され、内部に開口絞りSを有する撮影レンズB1の物体側に装着して用いる。
表1に、第1実施例における各諸元を示す。なお、表1における面番号1〜27は、図1に示す面1〜27に対応している。また、面番号1〜4まではワイドコンバーターレンズA1を、面番号5以降は撮影レンズB1を示す。
(表1)
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞ ∞
1 76.116 2.00 1.80400 46.58
2 21.332 18.00 1.00000
3 72.246 4.00 1.64769 33.80
4 -72.246 0.50 1.00000
5 0.000 1.00 1.51680 64.10
6 0.000 4.20 1.00000
7 22.212 1.10 1.80610 33.27
8 8.699 2.85 1.00000
9 -40.915 1.00 1.51680 64.20
10 8.301 3.00 1.84666 23.78
11 20.029 19.83 1.00000
12 0.000 1.00 1.00000 (開口絞りS)
13 32.029 1.80 1.80610 33.27
14 -179.443 0.10 1.00000
15 9.456 5.00 1.67003 47.19
16 -12.702 3.95 1.84666 23.78
17 7.798 1.20 1.00000
18 -1708.382 1.75 1.80518 25.46
19 -31.076 0.80 1.00000
20 12.058 2.30 1.83500 42.97
21 63.577 3.00 1.00000
22 111.291 1.90 1.66547 55.18
23* -22.017 0.61 1.00000
24 0.000 3.50 1.54437 70.51
25 0.000 1.58 1.00000
26 0.000 0.75 1.51680 64.10
27 0.000 1.29 1.00000
像面 ∞

[非球面データ]
第23面
κ = 1.0000
A4 = 2.9906E-04
A6 = -3.2206E-06
A8 = 2.7902E-07
A10= -7.9353E-09

[各種データ]
[ワイドコンバーターレンズA1]
倍率m = 0.665
撮影画角2ω = 91.8
[撮影レンズB1]
f = 5.93
FNO = 2.39
2ω = 64.3
図2は、第1実施例に係るワイドコンバーターレンズA1と、撮影レンズB1とを組み合わせた場合の諸収差図である。各収差図において、FNOはFナンバーを、Yは像高を、ωは半画角(単位:度)を、dはd線(波長587.6nm)に対する諸収差を、gはg線(波長435.8nm)に対する諸収差を示す。なお、球面収差図では最大口径に対応するFナンバーの値を、非点収差図及び歪曲収差図では像高の最大値を、コマ収差図では各半画角の値を示す。また、非点収差図において、実線はサジタル像面を、破線はメリジオナル像面を示す。
以上の収差図の説明は、他の実施例においても同様とし、その説明を省略する。
各収差図から明らかなように、第1実施例では、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有することが分かる。
図3は、ワイドコンバーターレンズA1に入射した光線BMが、撮影レンズB1を通過して像面Iに到達し、ゴーストやフレアとなる様子を示したものである。物体側からの光線BMが上記ワイドコンバーターレンズA1に入射すると、その光は両凸レンズL2における物体側のレンズ面(第1番目のゴースト発生面であり、面番号3に該当)で反射した後に、その反射光は負メニスカスレンズL1における像側のレンズ面(第2番目のゴースト発生面であり、面番号2に該当)で再度反射して像面Iに到達し、ゴーストを発生させてしまう。なお、第1番目のゴースト発生面(面番号3)と第2番目のゴースト発生面(面番号2)は、開口絞りSに対して凹面であり、像面Iに対しても凹面である。このような面に、より広い波長範囲で広入射角に対応した反射防止膜を形成することで、ゴーストを効果的に低減させることができる。なお、反射防止膜について詳細は後述するが、各実施例に係る反射防止膜は7層からなる多層構造であり、最表面層の第7層はウェットプロセスを用いて形成され、d線に対する屈折率は1.26(以下に示す、表3参照)である。
(第2実施例)
第2実施例に係るテレコンバーターレンズについて、図4〜図6及び表2を用いて説明する。図4は、第2実施例に係るテレコンバーターレンズA2と、撮影レンズB2とを組み合わせた構成を示す断面図である。第2実施例に係るテレコンバーターレンズA2は、図4に示すように、撮影レンズB2側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を持つ第3レンズ群G3とを有する。
第1レンズ群G1は、撮影レンズB2側から順に並んだ、両凸レンズL1と、両凹レンズL2と、両凸レンズL3とから構成される。第2レンズ群G2は、撮影レンズB2側から順に並んだ、両凹レンズと両凸レンズとの貼り合わせからなる接合レンズL4から構成される。第3レンズ群G3は、撮影レンズB2側から順に並んだ、両凸レンズL5と、両凹レンズL6とから構成される。
このような構成を有する本実施例に係るテレコンバーターレンズA2は、内部に開口絞りSを有する撮影レンズB2の像側に装着して用いる。
表2に、第2実施例における各諸元を示す。なお、表2における面番号1〜38は、図4に示す面1〜38に対応している。また、面番号1〜25までは撮影レンズB2を、面番号26以降はテレコンバーターレンズA2を示す。
(表2)
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞ ∞
1 0.000 4.0 1.51680 64.1
2 0.000 0.6 1.00000
3 117.215 14.4 1.49782 82.5
4 9900.139 0.3 1.00000
5 121.682 16.8 1.49782 82.5
6 -409.936 4.1 1.00000
7 -335.168 4.7 1.74950 35.2
8 478.702 34.7 1.00000
9 105.785 3.5 1.69680 55.6
10 35.547 14.4 1.59319 67.9
11 180.466 15.9 1.00000
12 -13034.117 6.6 1.80384 33.9
13 -80.574 2.3 1.58913 61.1
14 119.999 5.1 1.00000
15 -174.189 2.3 1.67025 57.5
16 65.069 5.0 1.00000
17 147.298 7.6 1.49782 82.5
18 -71.751 2.5 1.00000
19 -54.416 2.3 1.80458 25.5
20 -175.616 9.4 1.00000
21 -269.771 5.4 1.74000 28.2
22 -66.843 14.4 1.00000
23 0.000 19.2 1.00000 (開口絞りS)
24 0.000 2.0 1.51680 64.1
25 0.000 29.7 1.00000
26 171.637 3.0 1.60342 38.0
27 -77.128 2.0 1.00000
28 -84.398 2.0 1.79500 45.3
29 22.496 1.5 1.00000
30 26.726 5.1 1.59255 35.3
31 -57.482 7.8 1.00000
32 -39.425 2.0 1.83481 42.7
33 24.931 6.0 1.57501 41.5
34 -105.605 3.9 1.00000
35 84.045 10.0 1.48749 70.5
36 -25.848 0.2 1.00000
37 -139.993 2.5 1.74810 52.3
38 94.200 57.8 1.00000
像面 ∞

[各種データ]
[テレコンバーターレンズA2]
倍率m = 2.0
撮影画角2ω = 4.1
[撮影レンズB2]
f = 294
FNO = 2.9
2ω = 8.2
図5は、第2実施例に係るテレコンバーターレンズA2と、撮影レンズB2とを組み合わせた場合の諸収差図である。
各収差図から明らかなように、第2実施例では、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有することが分かる。
図6は、光線BMが撮影レンズB2とテレコンバーターレンズA2に入射し、テレコンバーターレンズA2内の光学面で反射して像面Iに到達し、ゴーストやフレアとなる様子を示したものである。物体側からの光線BMが上記撮影レンズB2を透過してテレコンバーターレンズA2に入射すると、その光は両凸レンズL3における物体側のレンズ面(第1番目のゴースト発生面であり、面番号30に該当)で反射した後に、その反射光は両凹レンズL2における像側のレンズ面(第2番目のゴースト発生面であり、面番号29に該当)で再度反射して像面Iに到達し、ゴーストを発生させてしまう。なお、第1番目のゴースト発生面(面番号30)と第2番目のゴースト発生面(面番号29)は、像面Iに対して凹面である。このような面に、より広い波長範囲で広入射角に対応した反射防止膜を形成することで、ゴーストを効果的に低減させることができる。なお、反射防止膜について詳細は後述するが、各実施例に係る反射防止膜は7層からなる多層構造であり、最表面層の第7層はウェットプロセスを用いて形成され、d線に対する屈折率は1.26(以下に示す、表3参照)である。
ここで、第1及び第2実施例のコンバーターレンズに用いられる反射防止膜について説明する。本実施形態に係る反射防止膜101は、図8に示すように、7層(第1層101a〜第7層101g)からなり、本コンバーターレンズの光学部材102の光学面に形成されている。
第1層101aは真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムで形成されている。この第1層101aの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第2層101bが形成される。続いて、第2層101bの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第3層101cが形成され、第3層101cの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第4層101dが形成される。さらに、第4層101dの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第5層101eが形成され、第5層101eの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第6層101fが形成される。そして、第6層101fの上にウェットプロセスによりシリカとフッ化マグネシウムの混合物からなる第7層101gが形成される。このようにして本実施形態の反射防止膜101が形成される。
なお、第7層101gの形成には、ウェットプロセスの一種であるゾル−ゲル法を用いている。ゾル−ゲル法とは、光学部材の光学面上に光学薄膜材料であるゾルを塗布し、ゲル膜を堆積後、液体に浸漬し、この液体の温度及び圧力を臨界状態以上にしてその液体を気化・乾燥させることにより、膜を生成する製法である。但し、ウェットプロセスとして、ゾル−ゲル法に限らず、ゲル状態を経ることなしに固体膜を得る方法を用いてもよい。
以上のように、反射防止膜101は、第1層101a〜第6層101fまではドライプロセスである電子ビーム蒸着により形成され、最表面層(最上層)である第7層101gはフッ酸/酢酸マグネシウム法で調製したゾル液を用いるウェットプロセスにより形成されている。
続いて、上記構成の反射防止膜101を形成する手順を説明する。まず、予めレンズ成膜面(上述の光学部材102の光学面)に真空蒸着装置を用いて、第1層101aとなる酸化アルミニウム層、第2層101bとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第3層101cとなる酸化アルミニウム層、第4層101dとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第5層101eとなる酸化アルミニウム層、第6層101fとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層を順に形成する。そして、真空蒸着装置より光学部材102を取り出した後、フッ酸/酢酸マグネシウム法により調製したゾル液にバインダー成分を添加したものをスピンコート法により塗布して、第7層101gとなるシリカとフッ化マグネシウムの混合物からなる層を形成する。ここで、フッ酸/酢酸マグネシウム法によって調製される際の反応式を以下の式(b)に示す。
2HF+Mg(CH3COO)2 → MgF2+2CH3COOH …(b)
この成膜に用いたゾル液は、原料混合後、オートクレーブで140℃、24時間高温加圧熟成処理を施した後、成膜に用いられる。光学部材102は、第7層101gの成膜終了後、大気中で160℃、1時間加熱処理して完成される。より具体的には、上記のゾル−ゲル法を用いることにより、大きさが数nmから数十nmのMgF2粒子ができ、さらに、それらの粒子が数個集まって二次粒子が形成され、それら二次粒子が堆積することにより第7層101gが形成される。
上記のようにして形成された反射防止膜101の光学的性能について、図9に示す分光特性を用いて説明する。なお、図9は、基準波長λを550nmとしたときに、以下の表3で示される条件で反射防止膜101を設計した場合、光線が垂直入射するときの分光特性を表している。また、表3では、酸化アルミニウムをAl23、酸化チタン−酸化ジルコニウム混合物をZrO2+TiO2、シリカとフッ化マグネシウムの混合物をSiO2+MgF2と示しており、基準波長λを550nmとしたときに、基板の屈折率が1.46、1.62、1.74及び1.85の4種類であるときの各々の設計値を示している。
(表3)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1.00
第7層 SiO2+MgF2 1.26 0.275λ 0.268λ 0.271λ 0.269λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.045λ 0.057λ 0.054λ 0.059λ
第5層 Al2O3 1.65 0.212λ 0.171λ 0.178λ 0.162λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.077λ 0.127λ 0.13λ 0.158λ
第3層 Al2O3 1.65 0.288λ 0.122λ 0.107λ 0.08λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0 0.059λ 0.075λ 0.105λ
第1層 Al2O3 1.65 0 0.257λ 0.03λ 0.03λ
基板の屈折率 1.46 1.62 1.74 1.85
図9より、波長が420nm〜720nmの全域で、反射率が0.2%以下に抑えられていることが分かる。
なお、第1実施例のワイドコンバーターレンズA1において、負メニスカスレンズL1の屈折率は1.80400であり、前記負メニスカスレンズL1における像側のレンズ面に、基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜を用いることが可能である。また、両凸レンズL2の屈折率は1.64769であるため、前記両凸レンズL2の物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.62に対応する反射防止膜を用いることが可能である。
また、第2実施例のテレコンバーターレンズA2において、両凹レンズL2の屈折率は1.79500であり、前記両凹レンズL2における像側のレンズ面に、基板の屈折率が1.74もしくは1.85に対応する反射防止膜を用いることが可能である。また、両凸レンズL3の屈折率は1.59255であるため、前記両凸レンズL3の物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.62に対応する反射防止膜を用いることが可能である。
このように、本実施形態の反射防止膜101を、第1及び第2実施例のコンバーターレンズ(A1,A2)にそれぞれ適用することで、ゴーストやフレアをより低減させた、高い光学性能を持つコンバーターレンズ及びこのコンバーターレンズを有する光学装置を提供することができる。
なお、上記の反射防止膜101は、平行平面板の光学面に設けた光学素子として利用することも可能であるし、曲面状に形成されたレンズの光学面に設けて利用することも可能である。
次に、上記反射防止膜101の変形例について説明する。この変形例の反射防止膜は5層からなり、以下の表4で示される条件で構成される。なお、第5層の形成に、前述のゾル−ゲル法を用いている。また、表4では、基準波長λを550nmとしたときに、基板の屈折率が1.52であるときの設計値を示している。
(表4)
物質 屈折率 光学膜厚
媒質 空気 1.00
第5層 シリカとフッ化マグネシウムの混合物 1.26 0.269λ
第4層 酸化チタン−酸化ジルコニウム混合物 2.12 0.043λ
第3層 酸化アルミニウム 1.65 0.217λ
第2層 酸化チタン−酸化ジルコニウム混合物 2.12 0.066λ
第1層 酸化アルミニウム 1.65 0.290λ
基板 BK7 1.52
図10に、変形例の反射防止膜に光が垂直入射するときの分光特性を示す。図10により、波長が420nm〜720nmの全域で、反射率が0.2%以下に抑えられていることが分かる。なお、図11に、入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性を示す。
比較のため、図12に、従来の真空蒸着法などのドライプロセスのみで成膜し、以下の表5で示される条件で構成される多層広帯域反射防止膜の垂直入射時の分光特性を示す。なお、図13に、入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性を示す。
(表5)
物質 屈折率 光学膜厚
媒質 空気 1.00
第7層 MgF 1.39 0.243λ
第6層 酸化チタン−酸化ジルコニウム混合物 2.12 0.119λ
第5層 酸化アルミニウム 1.65 0.057λ
第4層 酸化チタン−酸化ジルコニウム混合物 2.12 0.220λ
第3層 酸化アルミニウム 1.65 0.064λ
第2層 酸化チタン−酸化ジルコニウム混合物 2.12 0.057λ
第1層 酸化アルミニウム 1.65 0.193λ
基板 BK7 1.52
図10及び図11で示す変形例の分光特性を、図12及び図13で示す従来例の分光特性と比較すると、変形例に係る反射防止膜の反射率の低さが良く分かる。
以上の各実施例によれば、ゴーストやフレアをより低減させ、高い光学性能を持つ、一眼レフレックスカメラやデジタルカメラ、シネマトグラフィー用カメラ等に好適な、コンバーターレンズを提供することができる。
なお、本実施形態に係るコンバーターレンズの数値実施例として、フロントワイドコンバーターレンズの例と、リアテレコンバーターレンズの例を挙げたが、コンバーターレンズの構成はこれに限られず、フロントテレコンバーターレンズや、画面サイズの縦横比を変化させる、フロントアナモフィックコンバーターレンズ、リアアナモフィックコンバーターレンズ等の他のコンバーターにも適用可能である。
また、各コンバーターレンズのレンズ面を非球面としても良い。非球面は、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に形成したガラスモールド非球面、ガラスの表面に樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれの非球面でも構わない。
また、各コンバーターレンズに回折格子構造を持つレンズを用いても良い。
なお、本実施形態に係る発明を分かりやすくするために、上記実施形態の構成要件を付して説明したが、本発明がこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
A1,A2 コンバーターレンズ
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
B1,B2 撮影レンズ
S 開口絞り
I 像面
1 カメラ(光学装置)
2 撮影レンズ
3 クイックリターンミラー
4 焦点板
5 ペンタプリズム
6 接眼レンズ
7 撮像素子
8 コンバーターレンズ
101 反射防止膜
101a 第1層
101b 第2層
101c 第3層
101d 第4層
101e 第5層
101f 第6層
101g 第7層
102 光学部材

Claims (6)

  1. 撮影レンズの物体側もしくは像面側に装着して用いられるコンバーターレンズにおいて、
    前記コンバーターレンズを構成するレンズ成分における光学面のうち少なくとも1面は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含んだ反射防止膜が施されていることを特徴とするコンバーターレンズ。
  2. 前記反射防止膜は多層膜であり、
    前記多層膜の最表面層は、前記ウェットプロセスを用いて形成された層であることを特徴とする請求項1に記載のコンバーターレンズ。
  3. 前記反射防止膜が設けられた光学面は、前記撮影レンズの内部に配置された開口絞りから見て凹面であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバーターレンズ。
  4. 前記反射防止膜が設けられた光学面は、像面から見て凹面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンバーターレンズ。
  5. 前記ウェットプロセスを用いて形成された層のd線における屈折率をndとしたとき、次式
    nd≦1.30
    の条件を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンバーターレンズ。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンバーターレンズを有することを特徴とする光学装置。
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