ICカードを用いた就業管理システムにおいて、就業者が、打刻をするために、就業端末に設けられたICカード読取器にICカードを接触または接近させると、ICカードに内蔵されたメモリに記憶された当該就業者の識別情報等がICカード読取器により読み取られる。
しかしながら、ICカード読取器に対するICカードの接触または接近の態様(例えば接触または接近の動作が速すぎる場合)、ICカードとICカード読取器との間の通信環境(例えば両者間の通信を妨害する物が存在する場合)等、種々の原因により、ICカードからの識別情報等の読取にエラーが発生する場合がある。
このような読取エラーが発生したとき、例えば特定の室のドアの施錠・解錠を管理する入室管理システムの場合には、ドアが解錠されず、ドアを実際に開けることができない。この結果、入室しようとした者は、その行動が即座に阻まれるため、読取エラーの発生にほぼ確実に気付く。ところが、就業管理システムの場合には、ICカードの読取エラーが発生しても、これにより就業者の行動が即座に阻まれることがないため、就業者は読取エラーの発生に気付かずに素通りしてしまう。
この点、従来の就業管理システムには、ICカードの読取エラー発生時に、就業端末に設けられた赤色のLED(発光ダイオード)を点滅させ、ブザーを鳴らし、または液晶表示器にエラーコードを表示させ、就業者に読取エラーの発生を気付かせるようにしたものがある。しかしながら、単にLEDを点滅させたり、単にブザーを鳴らしたり、単にエラーコードを表示する程度では、読取エラーの発生を就業者にその場で確実に気付かせることは困難である。例えば、あわただしい出勤時における就業者はLEDの点滅やエラーコードの表示を見逃してしまうことが多い。また、周囲が騒がしい場合には、就業者はブザー音を聞き逃してしまう場合がある。
就業者が打刻時にその場で読取エラーの発生に気付かないと、打刻情報(出勤時刻、退勤時刻等を示す情報)が欠損するため、勤務評価や給与計算に支障が生じ、就業管理が不徹底となり、また就業管理に大きな手間が生じてしまうおそれがある。
また、従来の就業管理システムでは、打刻情報の欠損が生じた場合、それが読取エラーの発生によるものなのか、就業者が単に打刻をし忘れたことによるものなのか、システムの欠陥によるものなのか、原因が掴めず、システムの運用を混乱に貶めることになりかねず、システム管理者の負担を増大させるおそれがある。
一方、指紋入力に代表される生体認証システムと就業管理システムとを組み合わせれば、打刻時に就業者の注意が生体認証センサに向くため、読取エラーの発生を見逃すことによる打刻情報の欠損を減らすことができると考えられる。しかしながら、この場合、就業端末に生体認証センサを組み込むことにより、就業端末ないしシステム全体が高価で複雑なものとなり、また、生体情報の照合を行うために大きなサイズのデータを用いるため処理時間が長くなり、さらには、生体認証の認識率を高めるために多くの条件を満足しなければならない等、新たな問題が生じる。
また、たとえICカードからの識別情報等の読取が正常に行われたとしても、その読み取った識別情報等と共に打刻情報を就業端末のメモリ(記憶部)に記憶する処理等にエラーが発生した場合にも、上述したようなICカードからの読取エラーが発生した場合と同様の問題が生じ得る。
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の第1の課題は、ICカードの読取処理、打刻情報等の記憶処理等を含む打刻処理において発生したエラーを、打刻を行う就業者に確実に気付かせ、打刻情報の欠損を減らすことができる就業管理装置を提供することにある。
また、本発明の第2の課題は、打刻を行う就業者に打刻処理において発生したエラーを確実に気付かせることができる構成を安価かつ容易に実現することができる就業管理装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の第1の就業管理装置は、就業者の就業を管理する就業管理装置であって、時計と、記憶部と、就業者の識別情報が記憶されたICカードから当該識別情報を読み取るICカード読取部と、出勤および退勤を含む複数の勤務行為の区分のうちのいずれか1つの区分を就業者に選択させるための複数の選択スイッチと、前記就業者による前記選択スイッチの選択操作により、または前記記憶部に予め記憶されたプログラムにより、前記複数の勤務行為の区分のうちのいずれか1つの区分を選択する区分選択部と、前記ICカード読取部により前記識別情報が読み取られたとき、前記時計が示す時刻を、前記区分選択部により選択された区分に係る勤務行為が行われた時刻を示す打刻情報として、前記ICカード読取部により読み取られた前記識別情報と共に前記記憶部に記憶する記憶制御部と、前記時計が示す時刻を表示する表示部と、前記表示部のバックライトとして複数色の光を発することが可能なバックライトユニットと、前記ICカード読取部による前記識別情報の前記ICカードからの読取から前記記憶制御部による前記打刻情報および識別情報の前記記憶部への記憶に至る打刻処理においてエラーが発生したか否かを判断するエラー判断部と、前記エラー判断部による判断結果に基づき、前記打刻処理においてエラーが発生しなかった場合と前記打刻処理においてエラーが発生した場合とで前記バックライトユニットにより発せられる光の色を変化させるバックライト制御部とを備えている。
これにより、打刻処理においてエラーが発生したことを、打刻を行う就業者に確実に気付かせることができる。特に、表示部のバックライトは光を発する領域が広いため、バックライトの色の変化は極めて目立ち、打刻を行う就業者の視覚に強く訴えかける。これにより、あわただしい出勤時等に打刻を行う就業者が就業管理装置をしっかりと目視確認する余裕がなくても、当該就業者にエラーの発生を確実に気付かせることができる。
上記課題を解決するために、本発明の第2の就業管理装置は、上述した本発明の第1の就業管理装置において、前記バックライト制御部は、前記エラー判断部による判断結果に基づき、前記ICカード読取部による前記識別情報の前記ICカードからの読取にエラーが発生した場合と、前記記憶制御部による前記打刻情報および識別情報の前記記憶部への記憶にエラーが発生した場合とで前記バックライトユニットにより発せられる光の色を変化させる。
このように、発生したエラーの内容または種類に応じてバックライトの色を変化させることにより、打刻を行う就業者に、発生したエラーの内容または種類を認識させることができる。
上記課題を解決するために、本発明の第3の就業管理装置は、上述した本発明の第1または第2の就業管理装置において、音を発する音響発生部と、前記音響発生部により発せられる音を可変に制御する音響制御部とを備え、前記音響制御部は、前記記憶制御部により前記打刻情報および識別情報が前記記憶部に記憶されたときに、前記打刻情報および識別情報が前記記憶部に記憶されたことを示す正常動作通知音を前記音響発生部により発生させ、前記区分選択部により選択された区分に応じて前記正常動作通知音を変化させる。
このように、正常動作通知音を発することにより、ICカードの読取、または打刻情報および識別情報の記憶を含む打刻処理が正常に行われたことを、打刻を行う就業者に知らせることができる。さらに、区分選択部により選択された勤務行為の区分ごとに正常動作通知音を異ならせることにより、勤務行為区分の選択に誤りがなかったかどうかを、打刻を行う就業者に容易に確認させることができる。
上記課題を解決するために、本発明の第4の就業管理装置は、上述した本発明の第3の就業管理装置において、前記音響制御部は、前記エラー判断部による判断結果に基づき、前記打刻処理においてエラーが発生した場合には、前記正常動作通知音と異なるエラー発生通知音を前記音響発生部により発生させる。
このように、打刻処理においてエラーが発生したときには、バックライトの色を正常時のバックライトの色に対して変化させるだけでなく、通常時に発生することのない特別な音を発生させることにより、打刻を行う就業者にエラーの発生をより一層確実に気付かせることができる。
上記課題を解決するために、本発明の第5の就業管理装置は、上述した本発明の第4の就業管理装置において、前記音響制御部は、前記エラー判断部による判断結果に基づき、前記ICカード読取部による前記識別情報の前記ICカードからの読取にエラーが発生した場合と、前記記憶制御部による前記打刻情報および識別情報の前記記憶部への記憶にエラーが発生した場合とで相互に異なるエラー発生通知音を発生させる。
このように、発生したエラーの内容または種類に応じてエラー発生通知音を異ならせることにより、打刻を行う就業者に、発生したエラーの内容または種類を認識させることができる。
上記課題を解決するために、本発明の第6の就業管理装置は、上述した本発明の第3ないし第5のいずれかの就業管理装置において、前記音響制御部は、前記選択スイッチにより前記区分が選択されたときに、前記選択スイッチにより前記区分が選択されたことを示す選択通知音を前記音響発生部により発生させ、前記選択スイッチにより選択された区分に応じて前記選択通知音を変化させる。
これにより、選択スイッチによる区分の選択に誤りがなかったかどうかを、打刻を行う就業者に容易に確認させることができる。
上記課題を解決するために、本発明の第7の就業管理装置は、上述した本発明の第1ないし第6のいずれかの就業管理装置において、前記表示部の表示を制御する表示制御部を備え、前記表示制御部は、前記エラー判断部による判断結果に基づき、前記打刻処理においてエラーが発生した場合にはエラーメッセージを前記表示部に表示し、その後、前記選択スイッチが選択操作され、または前記ICカード読取部によりICカードから識別情報が読み取られるまで前記エラーメッセージの表示を継続する。
これにより、万一、打刻を行う就業者Aがエラーの発生に気付かなかったとしても、その次に打刻を行う他の就業者Bが、継続表示されているエラーメッセージを認識することにより、就業者Aに関するエラーの発生に気付く。そして、就業者Bが就業者Aにエラーの発生を告げることにより、就業者Aについての打刻情報の欠損を防ぐことができる。
上記課題を解決するために、本発明の第8の就業管理装置は、上述した本発明の第1ないし第7のいずれかの就業管理装置において、前記記憶制御部は、前記エラー判断部による判断結果に基づき、前記打刻処理においてエラーが発生した場合には、当該エラーが発生したことを示すエラー発生情報を、当該エラーが発生した時刻を示すエラー時刻情報と共に前記記憶部に記憶する。
これにより、万一、打刻情報の欠損が生じた場合でも、エラー発生情報およびエラー時刻情報を参照することにより、欠損した打刻情報を回復することが可能になる。
上記課題を解決するために、本発明の第9の就業管理装置は、上述した本発明の第8の就業管理装置において、サーバ装置と通信を行い、前記記憶部に記憶された打刻情報、識別情報、エラー発生情報およびエラー時刻情報を前記サーバ装置に送信する通信部を備えている。
これにより、就業管理、打刻情報の欠損の回復処理等をサーバ装置において集中的にまたは一括的に行うことが可能になる。
本発明によれば、ICカードの読取処理、打刻情報等の記憶処理等を含む打刻処理において発生したエラーを、打刻を行う就業者に確実に気付かせ、打刻情報の欠損を減らすことができる。
また、本発明によれば、打刻を行う就業者に打刻処理において発生したエラーを確実に気付かせることができる構成を、例えば生体認証センサ等の高価で複雑な構成を追加することなく、安価かつ容易に実現することができる。
以下、本発明の就業管理装置の実施形態を添付図面に従って説明する。
図1(a)は本発明の就業管理装置の実施形態である縦型のタイムレコーダの外観を示している。図1において、タイムレコーダ1は、非接触型ICカードの個人認証を用いて就業者を特定すると共に、当該就業者の出勤時刻、退勤時刻等を記憶することによって、就業者の就業を管理する装置であり、サーバ装置50(図2参照)と共に就業管理システムを構成している。ここで、就業管理システムは、例えば、企業の本社に設置されたサーバコンピュータであるサーバ装置50と、全国に点在する当該企業の各事業所(店舗、研究所、工場等)に設置されたタイムレコーダ1とを備えている。そして、サーバ装置50と各タイムレコーダ1とは通信回線を介して相互に接続されている。
タイムレコーダ1は、フロントパネル2Aを有する箱状のケーシング2を備え、例えば室内の壁に設置されている。フロントパネル2Aには、液晶ディスプレイユニット3、複数の出退選択スイッチ4A,4B,4C,4D、複数の選択ランプ5A,5B,5C,5DおよびICカード読取器6が設けられている。
液晶ディスプレイユニット3は、日付、時刻、社員番号、各種のメッセージ等を表示する液晶画面である表示部3Aと、表示部3Aの裏側に設けられ、表示部3A全体に光を照射することにより表示部3Aのバックライトを生成するバックライトユニット3Bを備えている。
バックライトユニット3Bは、例えば、緑色の複数のLEDおよび赤色の複数のLEDを表示部3Aの裏側においてフロントパネル2Aと平行に配列することにより構成されている。これら緑色のLEDおよび赤色のLEDは、縦、横それぞれの方向において、例えば緑色、赤色、緑色、赤色というように1つずつ交互に配列され、バックライト制御部24(図2参照)から供給される制御信号に従って発光制御される。これにより、バックライトユニット3Bは、複数色のバックライトを生成することができる。
具体的には、緑色のLEDのみを発光させることにより、緑色のバックライトを生成することができる。また、赤色のLEDのみを発光させることにより、赤色のバックライトを生成することができる。さらに、緑色のLEDと赤色のLEDとを同時に発光させることにより、橙色のバックライトを生成することができる。そして、緑色のLEDおよび赤色のLEDのそれぞれについて点灯、点滅および消灯を制御し、言い換えれば、これらのLEDのそれぞれについて発光タイミング、発光周期、発光パターン等を変化させることにより、様々な態様のバックライトを生成することができる。
ここで、バックライトユニット3Bは、バックライト制御部24に制御されることにより、タイムレコーダ1の状態または動作に応じてバックライトの態様を次のように変化させる。
・通常の待機時:緑色バックライト点灯
・ICカードの読取正常時:緑色バックライト点灯
・読取エラー発生時:緑色バックライトと橙色バックライトとを例えば0.1秒ないし1秒程度の間隔で交互に点灯
・不許可カードエラー発生時:橙色バックライト点灯
・メモリ満杯エラー発生時:緑色バックライト点滅
・システム障害発生時:赤色バックライト点灯
このようにタイムレコーダ1の状態または動作に応じてバックライトの態様を変化させることにより、各エラーの発生を、打刻を行う就業者に確実に気付かせることができる。なお、タイムレコーダ1の状態または動作とバックライトの態様との対応関係は設定変更可能である。また、読取エラー、不許可カードエラー、メモリ満杯エラー等については後述する。
出退選択スイッチ4A,4B,4C,4Dは、勤務行為の区分である勤務区分を就業者に選択させるためのスイッチであり、表示部3Aの下側に配置されている。すなわち、タイムレコーダ1には、例えば、出勤、外出、戻りおよび退勤の4個の勤務行為にそれぞれ対応する4個の勤務区分が設定されている。フロントパネル2Aには、これら4個の勤務区分にそれぞれ対応するように、「出勤」、「外出」、「戻り」、「退勤」の4個の出退選択スイッチ4A,4B,4C,4Dが設けられている。就業者は、打刻時に、これら出退選択スイッチ4A,4B,4C,4Dのいずれか1個を押すことにより、4個の勤務区分のうちのいずれか1個の勤務区分を選択することができる。
選択ランプ5A,5B,5C,5Dは、選択された勤務区分を示すランプであり、LEDによりそれぞれ構成されている。選択ランプ5A,5B,5C,5Dは4個の勤務区分にそれぞれ対応するように4個設けられ、4個の出退選択スイッチ4A,4B,4C,4Dにそれぞれ対応するように配置されている。就業者が出退選択スイッチ4A,4B,4C,4Dうちのいずれか1個を押すことにより勤務区分を選択したとき、または後述する勤務区分自動選択プログラムにより勤務区分が自動的に選択されたときに、選択ランプ5A,5B,5C,5Dのうち、当該選択された勤務区分に対応する選択ランプが点灯する。
ICカード読取器6は、非接触型ICカードの読取を行う装置であり、出退選択スイッチ4A,4B,4C,4Dの下側に配置されている。例えば、就業者は社員証を所持しており、この社員証は非接触型ICカードにより構成されている。非接触型ICカードは、小型かつ薄型のアンテナと、無線通信回路およびメモリを組み込んだICチップとを備えている。このICチップに組み込まれたメモリには識別情報が記憶されており、この識別情報には、カードを識別するためのカードIDと、就業者が属する職場のコードおよび社員番号等を示す社員情報と、就業者個人を認証するための個人認証情報とが含まれている。一方、ICカード読取器6は、アンテナおよび無線通信回路を備えた非接触型ICカードリーダであり、ICカードの読取時にICカードを翳す領域であるカード配置領域6Aを有している。就業者が非接触型ICカードをICカード読取器6のカード配置領域6Aに翳し、非接触型ICカードとICカード読取器6とを所定の通信可能距離範囲内に接近させたとき、ICカード読取器6は、非接触型ICカードのメモリに記憶された識別情報を読み取る。
また、表示部3Aとカード配置領域6Aとは、人間の視野範囲に同時に収まるように隣接して配置されている。さらに、表示部3Aの画面は、人間の視野範囲に収まる程度の小さい面積を有するものの、カード配置領域6Aの面積と同等以上の面積を有する。これにより、就業者がICカードをカード配置領域6Aに翳したときに表示部3Aを目視し易い構成を実現している。
なお、図1(a)に示す縦型のタイムレコーダ1では、表示部3Aとカード配置領域6Aとがそれぞれ上側、下側に配置されるように、液晶ディスプレイユニット3およびICカード読取器6が配設されているが、図1(b)に示す横型のタイムレコーダ30のように、表示部3Aとカード配置領域6Aとがそれぞれ右側、左側に配置されるように、液晶ディスプレイユニット3およびICカード読取器6を配設してもよい。
図2はタイムレコーダ1の電気的構成を示している。タイムレコーダ1のケーシング2内には、図2に示すように、CPU(中央演算処理装置)11、記憶部としてのメモリ12、バス13、インターフェイス回路14、時計回路15、音響発生部としてのブザー16、ブザー制御回路17および外部通信回路18が設けられている。CPU11はバス13を介してメモリ12と接続されている。メモリ12はROM(読出専用メモリ)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)を備えている。さらに、CPU11およびメモリ12はバス13を介してインターフェイス回路14と接続されている。インターフェイス回路14には、時計回路15、ブザー16、ブザー制御回路17および外部通信回路18が接続されている。さらに、インターフェイス回路14には、図1に示す液晶ディスプレイユニット3の表示部3A、バックライトユニット3B、出退選択スイッチ4A,4B,4C,4D、選択ランプ5A,5B,5C,5DおよびICカード読取器6が接続されている。
時計回路15は日付および時刻を示す回路である。ICカード読取器6によりICカードから識別情報が読み取られたとき、時計回路15が示す日付および時刻が、この時点で選択されている勤務区分に係る勤務行為が行われた時刻を示す打刻情報として、ICカードから読み取られた識別情報と共にメモリ12のRAMに記憶される。
ブザー16は複数種類の電子音を発する装置である。また、ブザー制御回路17は、電子音制御部25から供給される制御信号に従って、ブザー16から発せられる電子音の高低、音量、発音タイミング等を可変に制御する回路であり、例えばパルス信号発生回路、分周回路等を有する。
すなわち、ブザー制御回路17は、パルス信号発生回路によりパルス信号を発生させ、このパルス信号を分周回路に供給し、分周回路によりパルス信号の周波数を変化させる。そして、ブザー制御回路17は、分周回路から出力されたパルス信号をブザー16に供給する。ブザー16はこのパルス信号を音に変換する。
より具体的に説明すると、ブザー制御回路17内に設けられた分周回路は、電子音制御部25から供給される周波数制御信号に従って、パルス信号の周波数を変化させることができ、これによりブザー16から発せられる電子音の高低を容易に変化させることができる。例えば、パルス信号の周波数を3kHzにすることによりブザー16から発せられる電子音を高音にすることができ、また、パルス信号の周波数を2.7kHzにすることによりブザー16から発せられる電子音を低音にすることができる。さらに、3kHzのパルス信号をブザー16に供給し、その直後に2.7kHzのパルス信号をブザー16に供給することにより、「ピポッ」といった音を発生させることができる。また、2.7kHzのパルス信号をブザー16に供給し、その直後に3kHzのパルス信号をブザー16に供給することにより、「ポピッ」といった音を発生させることができる。このようにパルス信号の周波数を短時間で連続的に変化させることにより、ブザー16から発せられる電子音の音色を変えることができる。
また、ブザー制御回路17内に設けられたパルス信号発生回路は、電子音制御部25から供給されるタイミング制御信号に従ってパルス信号の発生タイミングを変化させることができ、これにより、ブザー16から発せられる電子音の発生タイミングを変化させることができる。例えば、パルス信号を50m秒間発生させた後、パルス信号の発生を50m秒間停止し、このようなパルス信号の発生・停止を繰り返すことにより、「ピコピコピコ…」といった短い間隔を有する間欠音をつくり出すことができる。また、パルス信号を200m秒間発生させた後、パルス信号の発生を200m秒間停止し、このようなパルス信号の発生・停止を繰り返すことにより、「ピー、ピー、ピー、…」といった長い間隔を有する間欠音をつくり出すことができる。
ここで、タイムレコーダ1には、電子音制御部25およびブザー制御回路17でブザー16を制御することにより発生可能な選択通知用または正常動作通知用の電子音として、無音も含めて次のような音が予め用意されている(具体的には、次のような電子音を発生させるための制御プログラムまたはデータがメモリ12のROMに記憶されている)。
a.低音「ポッ」
b.低音連続「ポポッ」
c.高音「ピッ」
d.高音連続「ピピッ」
e.高低音「ピポッ」
f.低高音「ポピッ」
g.無音
無音も含めてこれら7種類の電子音を選択通知音として出退選択スイッチ4A,4B,4C,4Dにそれぞれ任意に選択して割り当てることができる。電子音を割り当てるときには、出退選択スイッチ4A,4B,4C,4Dにそれぞれ異なる電子音を割り当てるようにする。これにより、出退選択スイッチ4A,4B,4C,4Dのうちのいずれかが押された時には、押された出退選択スイッチに割り当てられた電子音(選択通知音)がブザー16から発せられる。よって、打刻を行う就業者は、当該電子音が耳に入ることで、出退選択スイッチの押下により勤務区分が選択されたことを知ることができ、かつ選択された勤務区分を確認することができる。
また、無音も含めてこれら7種類の電子音のいずれかをICカードの読取が正常に行われ、打刻情報および識別情報がメモリ12に記憶された時に発生させることもでき、さらに、ICカードの読取が行われた時点で選択されている勤務区分に応じて当該電子音を異ならせることができる。すなわち、無音も含めて上記7種類の電子音を正常動作通知音として出勤、外出、戻り、退勤の4個の勤務区分にそれぞれ任意に選択して割り当てることができる。電子音を割り当てるときには、4個の勤務区分にそれぞれ異なる電子音を割り当てるようにする。これにより、ICカードの読取が正常に行われた場合には、就業者がICカードをICカード読取器6に翳した直後に、打刻情報および識別情報がメモリ12に記憶されると同時に、その時選択されている勤務区分に割り当てられた電子音(正常動作通知音)がブザー16から発せられる。よって、当該就業者は、勤務区分の選択に誤りがなかったかどうかを容易に確認することができる。
さらに、タイムレコーダ1には、電子音制御部25およびブザー制御回路17でブザー16を制御することにより発生可能なエラー発生通知用の電子音(エラー発生通知音)として、次のような音が予め用意されている。
h.短い間隔の間欠音「ピコピコピコ…」
i.長い間隔の間欠音「ピー、ピー、ピー、…」
例えば、ICカードの読取エラー発生時には長い間隔の間欠音がブザー16から発せられるように設定されている。また、不許可カードエラー発生時、メモリ満杯エラー発生時、およびシステム障害発生時には、短い間隔の間欠音がブザー16から発せられるように設定されている。なお、これらの間欠音の発生に用いられるパルス信号の周波数はいずれも例えば2.7kHzである。
さらに、ブザー制御回路17内に設けられたパルス信号発生回路は、電子音制御部25から供給されるパルスデューティ比制御信号に従ってパルス信号のパルスデューティ比を変化させることができ、これにより、ブザー16から発せられる電子音の音量を変更することができる。すなわち、パルス信号のパルスデューティ比を50:50にすることにより、ブザー16から発せられる電子音の音量を最大にすることができ、パルス信号のパルスデューティ比を25:75にすることにより、当該電子音を小さくすることができる。さらに、パルスデューティ比を20:80または5:95にすることにより、当該電子音をより小さくすることができる。
これにより、タイムレコーダ1の設置する場所の環境に合わせて、オフィス街等の静かな環境の場所では、全体的に小さな音量に設定して、周囲に迷惑をかけないようにできる。また、工場等の周りに大きな音が出ている場合には、大きな音に設定して、周囲の雑音に負けないようにできる。さらに、時間帯により音量を切り換える設定をしておけば、深夜の時間帯は音量を無音または最小に設定することにより周囲への迷惑を減少させ、出退勤のピークの時間帯は人のざわつきに負けないように大きな音量とすることも可能である。また、遅刻、早退の時間帯は殊更大きな音量で、注意を促すようにしてもよい。音色のバリエーションと組み合わせれば、さらに多種類のパターンを演出することができる。
一方、外部通信回路18は、タイムレコーダ1とサーバ装置50との間の通信を制御する回路である。
また、CPU11はメモリ12のROMに記憶された制御プログラムを読み取り、これを実行することにより、区分選択部21、読取判断部としてのエラー判断部22、表示制御部23、バックライト制御部24、音響制御部としての電子音制御部25、記憶制御部26、通信制御部27および総合制御部28として機能する。
区分選択部21は、就業者による出退選択スイッチの選択操作(押下)により、またはメモリ12に予め記憶された勤務区分自動選択プログラムにより、複数の勤務区分のうちのいずれか1つの勤務区分を選択する。エラー判断部22は、読取エラー、不許可カードエラー、メモリ満杯エラーの発生を判断する。表示制御部23は表示部3Aの表示を制御する。バックライト制御部24はバックライトユニット3Bにより生成されるバックライトを可変に制御する。電子音制御部25はブザー16により発せられる電子音を可変に制御する。記憶制御部26は、打刻情報、識別情報、エラー発生情報およびエラー時刻情報をメモリ12のRAMに記憶する処理を行う。通信制御部27は、外部通信回路18を制御することによりサーバ装置50と通信を行う。総合制御部28は、タイムレコーダ1の総合的な制御およびその他の制御を行う。これらの構成要素21ないし28については、以下、図3および図4を参照しながら詳細に説明する。
図3はタイムレコーダ1における打刻処理を示しており、図4は打刻処理中のいくつかの場面における液晶ディスプレイユニット3、選択ランプ5A,5B,5C,5Dの状態を示している。
図3において、タイムレコーダ1は、電源が投入されると、初期処理を実行した後、待機状態となる(ステップS1)。待機状態では、打刻が許可されたICカードのカードID並びに当該カードIDと関連付けられた職場コードおよび社員番号のリストデータがサーバ装置50からタイムレコーダ1に送信される。通信制御部27は、このリストデータを受信し、メモリ12のRAMに記憶する。また、待機状態において、バックライト制御部24は、バックライトユニット3Bを制御し、緑色のバックライトを点灯させる。さらに、待機状態において、区分選択部21は、メモリ12のROMまたはRAMに記憶された勤務区分自動選択プログラムに従って、時計回路15が示す時刻を参照し、この時刻に基づいて現在の時間帯を認識し、この時間帯に応じて勤務区分を自動的に選択する。例えば、区分選択部21は、時計回路15が示す時刻が午前8時の場合には、出勤の時間帯であることを認識し、出勤の勤務区分を自動的に選択する。さらに、区分選択部21は、選択ランプ5A,5B,5C,5Dのうち、自動選択した勤務区分に対応する選択ランプを選択し、点灯させる。例えば、図4(a)に示すように、出勤の勤務区分が自動選択された場合には、選択ランプ5Aを点灯させる。
なお、待機状態における勤務区分の自動選択は解除することができる。この場合には、待機状態において、いずれの勤務区分も選択されず、選択ランプ5A,5B,5C,5Dはいずれも点灯しない。
待機状態において、就業者が、出退選択スイッチ4A,4B,4C,4Dのうちのいずれかを押したとき、区分選択部21は、就業者に押された出退選択スイッチに対応する勤務区分を選択する(ステップS2)。そして、区分選択部21は、選択ランプ5A,5B,5C,5Dのうち、出退選択スイッチにより選択された勤務区分に対応する選択ランプを点灯させる。これと同時に、電子音制御部25は、ブザー制御回路17を制御し、就業者に押された出退選択スイッチに割り当てられた電子音をブザー16から発生させる。就業者は、選択ランプの点灯および電子音により、出退選択スイッチの押し間違いや勤務区分の選択の誤りを視覚および聴覚により認識することができる。特に、就業者が選択ランプの点灯を見逃したとしても、電子音が就業者の耳に自然に入ることにより、あわただしい最中でも、出退選択スイッチの押し間違いや勤務区分の選択の誤りを確実に認識することができる。
なお、待機状態において勤務区分が自動選択されている場合であって、就業者が選択を希望する勤務区分が自動選択されている勤務区分と一致する場合には、就業者は、出退選択スイッチを押すことを省略することができる。この場合には、ステップS2は実行されず、処理はステップS1からステップS3に移る。
続いて、当該就業者がICカードをICカード読取器6のカード配置領域6Aに翳したとき、ICカード読取器6は、このICカードに記憶された識別情報を読み取る(ステップS3)。読み取られた識別情報は、メモリ12のRAM内の一時記憶領域に一時的に記憶される。
続いて、エラー判断部22は、読み取られた識別情報のデータサイズ、各種のチェックコード、ICカード独自のセキュリティ機能等を駆使して識別情報の検証を行い、ICカード読取器6による識別情報のICカードからの読取が正常に行われたか否か、すなわち読取エラーが発生していないか否かを判断する(ステップS4)。例えば、ICカード読取器6に対するICカードの接近の態様が悪い場合(接近の動作が速すぎた場合等)、あるいは、ICカードとICカード読取器6との間の通信環境が悪い場合(他の電磁波を発する他のICカードが、識別情報の読取を行うべきICカードと重なっており、他の電磁波により、ICカード読取器6への識別情報の送信が妨害された場合等)には、ICカードから読み取られた識別情報の一部が欠落しまたは破壊されている場合がある。このような場合、エラー判断部22は読取エラーが発生したと判断する。また、就業者が翳したICカードが規格外のICカードであった場合には、解読不能な識別情報が読み取られる場合がある。このような場合にも、エラー判断部22は読取エラーが発生したと判断する。
エラー判断部22の判断の結果、読取エラーが発生した場合には(ステップS4:NO)、読取エラー処理が実行される(ステップS5)。読取エラー処理において、図4(b)に示すように、表示制御部23は読取エラーを意味するエラーメッセージ「E−01」を表示部3Aに表示する。そして、バックライト制御部24はバックライトユニット3Bを制御し、緑色のバックライトと橙色のバックライトとを短い間隔で交互に点灯させる。これと同時に、電子音制御部25は、ブザー制御回路17を制御し、「ピー、ピー、ピー、…」といった長い間隔の間欠音をブザー16から発生させる。打刻を行う就業者は、表示部3Aにエラーメッセージが表示され、今まで緑色だったバックライトの色が緑色と橙色との交互点灯に変化し、通常時には耳に入ることのない長い間隔の間欠音が耳に入ることにより、読取エラーの発生を視覚および聴覚により認識することができる。特に、当該就業者がエラーメッセージを見逃したとしても、タイムレコーダ1のフロントパネル2Aが当該就業者の視界の範囲に入っている限り、当該就業者はバックライトの色の変化を見逃すことはない。万一、タイムレコーダ1のフロントパネル2Aが当該就業者の視界の範囲に入ってなかった場合でも、異常な電子音が就業者の耳に自然に入る。これにより、当該就業者は読取エラーの発生を確実に認識することができる。さらに、当該就業者は、読取エラーの発生を示す長い間隔の間欠音と、不許可カードエラーの発生やメモリ満杯エラーの発生を示す短い間隔の間欠音とを聞き分けることができるので、発生したエラーが読取エラーであることを認識することができ、再びICカードをしっかりとカード配置領域6Aに接近させるなどして、打刻のやり直しをその場で行うことができる。
また、読取エラー処理において、記憶制御部26は、読取エラーが発生したことを示すエラー発生情報(例えばエラーコード「E−01」)を生成すると共に、時計回路15が示す時刻を参照して当該読取エラーが発生した時刻を示すエラー時刻情報を生成し、エラー発生情報をエラー時刻情報と共にメモリ12のRAMに記憶する。このとき、エラー発生情報とエラー時刻情報とは関連付けられた状態でRAMに記憶される。
上述したようなエラーメッセージの表示、バックライトの緑色・橙色の交互点灯および長い間隔の間欠音の発生は、例えばおよそ2秒間継続される。ステップS5の読取エラー処理が開始されてから2秒間経過した後、タイムレコーダ1はステップS1の待機状態に戻る。なお、ステップS5の読取エラー処理が開始されてから2秒間経過する前に、出退選択スイッチ4A,4B,4C,4D等の操作があった場合には、エラーメッセージの表示、バックライトの緑色・橙色の交互点灯および長い間隔の間欠音の発生は中止され、当該操作により指定された処理に移行する。
一方、ステップS4において、エラー判断部22の判断の結果、読取エラーが発生していない場合には(ステップS4:YES)、続いて、エラー判断部22は、打刻が許可されたICカードの読取が行われたか否か、すなわち不許可カードエラーが発生していないか否かを判断する(ステップS6)。すなわち、メモリ12のRAMには、打刻が許可されたICカードのカードID並びに当該カードIDに関連付けられた職場コードおよび社員番号のリストデータが記憶されている。エラー判断部22は、このリストデータを検索し、ICカードから読み取った識別情報に含まれるカードID、職場コードまたは社員番号がリストデータ中に存在するかどうか調べる。ICカードから読み取った識別情報に含まれるカードID、職場コードまたは社員番号がリストデータ中に存在しない場合には、エラー判断部22は、打刻不許可のICカードの読取が行われた、すなわち不許可カードエラーが発生したと判断する。一方、ICカードから読み取った識別情報に含まれるカードID、職場コードまたは社員番号がリストデータ中に存在する場合には、エラー判断部22は、打刻が許可されたICカードの読取が行われた、すなわち不許可カードエラーは発生しなかったと判断する。なお、不許可カードエラーは、後述のメモリ満杯エラーと共に、打刻情報および識別情報のメモリ12への記憶に係るエラーに当たる。
エラー判断部22による判断の結果、不許可カードエラーが発生した場合には(ステップS6:NO)、不許可カードエラー処理が実行される(ステップS7)。不許可カードエラー処理において、図4(c)に示すように、表示制御部23は不許可カードエラーを意味するエラーメッセージ「E−02」を表示部3Aに表示する。そして、バックライト制御部24はバックライトユニット3Bを制御し、橙色のバックライトを点灯させる。これと同時に、電子音制御部25は、ブザー制御回路17を制御し、「ピコピコピコ…」といった短い間隔の間欠音をブザー16から発生させる。打刻を行う就業者は、表示部3Aにエラーメッセージが表示され、今まで緑色だったバックライトの色が橙色に変化し、通常時には耳に入ることのない短い間隔の間欠音が耳に入ることにより、不許可カードエラーの発生を視覚および聴覚により認識することができる。特に、当該就業者がエラーメッセージを見逃したとしても、タイムレコーダ1のフロントパネル2Aが当該就業者の視界の範囲に入っている限り、当該就業者はバックライトの色の変化を見逃すことはない。万一、タイムレコーダ1のフロントパネル2Aが当該就業者の視界の範囲に入ってなかった場合でも、異常な電子音が就業者の耳に自然に入る。これにより、当該就業者は不許可カードエラーの発生を確実に知ることができる。
また、不許可カードエラー処理において、記憶制御部26は、不許可カードエラーが発生したことを示すエラー発生情報(例えばエラーコード「E−02」)を生成すると共に、時計回路15が示す時刻を参照して当該不許可カードエラーが発生した時刻を示すエラー時刻情報を生成し、エラー発生情報をエラー時刻情報と共にメモリ12のRAMに記憶する。このとき、エラー発生情報とエラー時刻情報とは関連付けられた状態でRAMに記憶される。
上述したようなエラーメッセージの表示、橙色のバックライトの点灯および短い間隔の間欠音の発生は、例えばおよそ2秒間継続される。ステップS7の不許可カードエラー処理が開始されてから2秒間経過した後、タイムレコーダ1はステップS1の待機状態に戻る。なお、ステップS7の不許可カードエラー処理が開始されてから2秒間経過する前に、出退選択スイッチ4A,4B,4C,4D等の操作があった場合には、エラーメッセージの表示、橙色のバックライト点灯および短い間隔の間欠音の発生は中止され、当該操作により指定された処理に移行する。
一方、ステップS6において、エラー判断部22による判断の結果、不許可カードエラーが発生していない場合には(ステップS6:YES)、続いて、エラー判断部22は、メモリ12のRAM内において、打刻情報および識別情報を記憶すべき情報記憶領域が満杯でないか否か、すなわちメモリ満杯エラーが発生していないか否かを判断する(ステップS8)。ここで、打刻が許可されたICカードからの識別情報の読取が正常に行われた場合には、後述するように、打刻情報および識別情報がメモリ12のRAM内の情報記憶領域に記憶される。この情報記憶領域に記憶された打刻情報および識別情報は、定期的に(例えば1日に1回程度の周期で)またはサーバ装置50からの要求により、この情報記憶領域から読み取られ、サーバ装置50に送信される。そして、この送信が完了した後、この情報記憶領域に記載された打刻情報および識別情報は消去される。情報記録領域は、例えば1日に蓄積される打刻情報および識別情報の合計データ量を超える記憶容量を有しているため、この情報記憶領域が満杯になることは通常はない。しかし、通信異常の発生により、タイムレコーダ1とサーバ装置50との間の通信が長期間遮断されている場合には、情報記録領域が満杯になることも考えられる。そこで、エラー判断部22は、ステップS8が実行される直前において情報記憶領域に実際に記憶されている打刻情報または識別情報の件数と、情報記憶領域に記憶可能な打刻情報または識別情報の最大件数とを調べ、両者を比較し、情報記憶領域に実際に記憶されている打刻情報または識別情報の件数が、情報記憶領域に記憶可能な打刻情報または識別情報の最大件数に達している場合には、情報記憶領域が満杯である(メモリ満杯エラーが発生した)と判断する。一方、そうでない場合には、エラー判断部22は、情報記憶領域が満杯でない(メモリ満杯エラーが発生していない)と判断する。なお、情報記憶領域に実際に記憶されている打刻情報または識別情報の件数はメモリ12のRAMにカウント値データとして記憶されており、情報記憶領域に記憶可能な打刻情報または識別情報の最大件数はROMに記憶されている。
エラー判断部22による判断の結果、メモリ満杯エラーが発生した場合には(ステップS8:YES)、メモリ満杯エラー処理が実行される(ステップS9)。メモリ満杯エラー処理において、図4(d)に示すように、表示制御部23はメモリ満杯エラーを意味するエラーメッセージ「E−05」を表示部3Aに表示する。そして、バックライト制御部24はバックライトユニット3Bを制御し、緑色のバックライトを点滅させる。これと同時に、電子音制御部25は、ブザー制御回路17を制御し、「ピコピコピコ…」といった短い間隔の間欠音をブザー16から発生させる。打刻を行う就業者は、表示部3Aにエラーメッセージが表示され、今まで継続的に緑色に点灯していたバックライトが点滅に変わり、通常時には耳に入ることのない短い間隔の間欠音が耳に入ることにより、メモリ満杯エラーの発生を視覚および聴覚により認識することができる。特に、当該就業者がエラーメッセージを見逃したとしても、タイムレコーダ1のフロントパネル2Aが当該就業者の視界の範囲に入っている限り、当該就業者はバックライトの態様の変化を見逃すことはない。万一、タイムレコーダ1のフロントパネル2Aが当該就業者の視界の範囲に入ってなかった場合でも、異常な電子音が就業者の耳に自然に入る。これにより、当該就業者はメモリ満杯エラーの発生を確実に認識することができる。
また、メモリ満杯エラー処理において、記憶制御部26は、メモリ満杯エラーが発生したことを示すエラー発生情報(例えばエラーコード「E−05」)を生成すると共に、時計回路15が示す時刻を参照して当該メモリ満杯エラーが発生した時刻を示すエラー時刻情報を生成し、エラー発生情報をエラー時刻情報と共にメモリ12のRAM(例えば情報記憶領域とは別の領域)に記憶する。このとき、エラー発生情報とエラー時刻情報とは関連付けられた状態でRAMに記憶される。
上述したようなエラーメッセージの表示、緑色のバックライトの点滅および短い間隔の間欠音の発生は、例えばおよそ2秒間継続される。ステップS9のメモリ満杯エラー処理が開始されてから2秒間経過した後、タイムレコーダ1はステップS1の待機状態に戻る。なお、ステップS9のメモリ満杯エラー処理が開始されてから2秒間経過する前に、出退選択スイッチ4A,4B,4C,4D等の操作があった場合には、エラーメッセージの表示、緑色のバックライトの点滅および短い間隔の間欠音の発生は中止され、当該操作により指定された処理に移行する。
一方、ステップS8において、エラー判断部22による判断の結果、メモリ満杯エラーが発生していない場合には(ステップS8:NO)、打刻情報および識別情報をメモリ12に記憶する処理である情報記憶処理が実行される(ステップS10)。この情報記憶処理において、記憶制御部26は、この時点で時計回路15が示す日付および時刻を参照し、この日付および時刻を、区分選択部21により選択された区分に係る勤務行為が行われた時刻を示す打刻情報として、ICカードから読み取られた識別情報と共にメモリ12のRAM内の情報記憶領域に記憶する。このとき、打刻情報と識別情報とは関連付けられた状態でRAMに記憶される。これにより、読取エラー、不許可カードエラーおよびメモリ満杯エラーがいずれも発生しなかった場合には、実質的に、ICカード読取器6によりICカードから識別情報が読み取られた日付および時刻を示す打刻情報がメモリ12のRAM内の情報記録領域に記憶されることになる。
さらに、情報記憶処理において、表示制御部23は、ICカードから読み取られた識別情報に含まれるカードID、社員番号の下8桁、あるいは「good」等のメッセージを表示部3Aに表示する。また、バックライト制御部24は、待機状態におけるバックライトユニット3Bの制御を継続し、緑色のバックライトの点灯を維持する。さらに、電子音制御部25は、ブザー制御回路17を制御し、この時点で選択されている勤務区分に割り当てられた電子音をブザー16から発生させる。これにより、就業者は、打刻が正常に行われたこと、および勤務区分の選択に誤りがなかったことを認識することができる。さらに、記憶制御部26は情報記憶領域に記憶された打刻情報または識別情報の件数を示すカウント値データをRAMから読み出し、このカウント値データの値を1増加させ、値を1増加させたカウント値データをRAMに書き込むことによりカウント値データを更新する。
以上のような打刻処理により、タイムレコーダ1のメモリ12のRAMには、当該タイムレコーダ1が設置された事業所に勤務する各就業者の各勤務区分における打刻情報および識別情報が蓄積される。また、エラーが発生した場合には、エラー発生情報およびエラー時刻情報がエラーログという形でメモリ12のRAMに蓄積される。RAMに蓄積された打刻情報、識別情報、エラー発生情報およびエラー時刻情報は、通信制御部27により、定期的に(例えば1日に1回)、サーバ装置50に送信される。そして、このような送信処理は、全国に点在する各事業所に設置されたタイムレコーダ1において行われるため、企業に勤務するほぼすべての就業者の打刻情報、識別情報、エラー発生情報およびエラー時刻情報がサーバ装置50に収集される。就業管理システムの管理者等は、サーバ装置50を操作することにより、各就業者の打刻情報および識別情報に基づいて、各就業者の勤務評定および給与計算を集中的かつ一括的に行うことができる。また、就業管理システムの管理者等は、エラー発生情報およびエラー時刻情報等に基づいて、エラーにより欠損した打刻情報を回復させることにより、打刻情報の欠損を減らすことができると共に、エラー原因を特定することができ、システムの不具合を迅速に解消することができる。
なお、上述した実施形態では、原則として各エラー発生時から2秒間経過した後、待機状態に戻り、表示部3Aにおけるエラーメッセージの表示を時刻表示に切り換える(図4参照)。しかし、各エラーが一旦発生したら、その時点から2秒経過した後であっても、出退選択スイッチ4A,4B,4C,4Dのいずれかが選択操作され、またはICカード読取器6により識別情報が読み取られるまでエラーメッセージの表示を継続させてもよい。朝晩の出退勤時間帯では多くの就業者があまり時間を置かずに打刻を行う。ある就業者が打刻エラー発生を気付かずに通り過ぎても、エラー表示がそのまま継続されていれば、次に打刻する就業者がエラーに気付くため、即時の対応が可能となる。毎日のことなので、打刻の時間もそれ程大きく異ならないし、それ程大きくない職場で決まった就業者らが打刻をしていれば、打刻エラーを発生させた就業者が誰かも見つけ易い。すれば、直ぐに再打刻を促すことができることになり、打刻データ抜けの発生を減らすことにつながる。
また、上述した実施形態では、各エラー発生時に、エラー発生情報およびエラー時刻情報をメモリ12のRAMに記憶し、定期的に、これらの情報をタイムレコーダ1からサーバ装置50に送信する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。エラー発生時に、ICカードから読み取られてメモリ12のRAM内の一時記憶領域に記憶されている識別情報を可能な限りRAMの別の領域に記憶保持し、エラー発生情報およびエラー時刻情報と共にこの識別情報をもサーバ装置50に送信する構成としてもよい。エラー発生時の識別情報を用いることにより、誰の打刻情報が欠損したのかを容易に特定することができ、打刻情報の回復をより一層確実に行うことが可能になる。
また、上述した実施形態では、各エラー発生時に記憶したエラー発生情報およびエラー時刻情報をタイムレコーダ1からサーバ装置50に送信し、サーバ装置50において欠損した打刻情報の回復に役立てる場合を説明したが、エラー発生情報およびエラー時刻情報を、例えば出退選択スイッチ4A,4B,4C,4D等の操作に従ってタイムレコーダ1の表示部3Aに表示できるようにしてもよい。これにより欠損した打刻情報の回復を、当該タイムレコーダ1が設置された事業所で即座に行うことが可能になる。
また、上述した実施形態で説明したバックライト、電子音、エラーメッセージの態様は一例であり、他の態様を採用してもよい。例えば、青色のバックライトを採用してもよいし、電子音としてメロディや音声合成音を採用してもよいし、エラーメッセージを「読取がうまくいきませんでした」などとしてもよい。
さらに、上述した実施形態では、本発明の就業管理装置として打刻処理専用のタイムレコーダ1を例にあげたが、本発明はこれに限らない。本発明の就業管理装置をパーソナルコンピュータ等により実現させることもできる。