JP2010265136A - 水素化物複合体、イミド材料及び水素ガスの製造方法 - Google Patents

水素化物複合体、イミド材料及び水素ガスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】100℃以下の温度においても水素を取り出すことが可能な水素化物複合体、水素化物複合体から水素を放出することにより得られるイミド化合物、及び水素化物複合体を用いた水素ガスの製造方法を提供すること。
【解決手段】LiAlHx(NH2)4-x(x=0又は1)と、LiAlH4とを含む水素化物複合体。水素化物複合体に含まれる水素の全部又は一部を放出させることにより得られるイミド材料。水素化物複合体から水素を放出させる水素放出工程を備えた水素ガスの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、水素化物複合体、イミド材料及び水素ガスの製造方法に関し、さらに詳しくは、100℃以下の温度において水素ガスを発生させることが可能な水素化物複合体、このような水素化物複合体から水素を放出することにより得られるイミド材料、及び、このような水素化物複合体を用いた水素ガスの製造方法に関する。
近年、二酸化炭素の排出による地球の温暖化等の環境問題や、石油資源の枯渇等のエネルギー問題から、クリーンな代替エネルギーとして水素エネルギーが注目されている。水素エネルギーの実用化に向けて、水素を安全、かつ、効率的に貯蔵、輸送する技術の開発が重要となる。水素の貯蔵方法にはいくつかの候補があるが、中でも可逆的に水素を貯蔵・放出することのできる水素貯蔵材料を用いる方法は、最も安全に水素を貯蔵・輸送する手段と考えられており、燃料電池車に搭載する水素貯蔵媒体として期待されている。
水素貯蔵材料としては、活性炭、フラーレン、ナノチューブ等の炭素材料や、LaNi、TiFe等の水素吸蔵合金が知られている。これらの内、水素吸蔵合金は、炭素材料に比べて単位体積当たりの水素密度が高いので、水素を貯蔵・輸送するための水素貯蔵材料として有望視されている。
しかしながら、LaNi5、TiFe等の水素吸蔵合金は、La、Ni、Ti等の希少金属を含んでいるため、その資源確保が困難であり、コストも高いという問題がある。また、従来の水素吸蔵合金は、合金自体の重量が大きいために、単位重量当たりの水素密度が小さい、すなわち、大量の水素を貯蔵するためには極めて重い合金を必要とするという問題がある。
そこでこの問題を解決するために、軽元素を含む水素貯蔵材料の開発が試みられている。これまでに開発されている軽元素を含む水素貯蔵材料としては、
(1) LiNH2、LiBH4等のリチウム(Li)を含む錯体水素化物(例えば、特許文献1、非特許文献1等参照)、
(2) NaAlH4等のナトリウム(Na)を含む錯体水素化物、
(3) Mg(NH2)2等のマグネシウム(Mg)を含む錯体水素化物、
などが知られている。
また、単相の金属間化合物ではなく、複数の相を複合化させることによって、水素吸蔵量を増大させたり、あるいは、水素の吸蔵・放出温度を低下させる試みがなされている。軽元素を含み、かつ、複数の相の複合体からなる水素貯蔵材料としては、LiNH2+LiH、LiBH4+MgH2などが知られている。
また、非特許文献2には、LiNH2+0.5LiAlH4からなる水素貯蔵材料が開示されている。同文献には、この材料の水素放出温度は100℃であり、水素量は4mass%である点が記載されている。
さらに、非特許文献3には、LiAl(NH2)4+4LiHからなる水素貯蔵材料が開示されている。同文献には、この材料の水素放出温度は130℃であり、水素量は6mass%である点が記載されている。
軽元素を含む錯体水素化物は、相対的に重量が軽く、資源確保も比較的容易であり、相対的に低コストである。しかしながら、従来の錯体水素化物は、いずれも水素を放出させるためには、100℃以上の加熱が必要であるという問題があった。
特表2002−526658号公報
P.Chen、他4名、"Interaction of hydrogen with metal nitrides and imides"、「Nature」、2002年、vol.420/21、p.302-304 J.Phys.Chem.C111(2007)2335-2340 J.Power Source 155(2006)447-455
本発明が解決しようとする課題は、100℃以下の温度においても水素を取り出すことが可能な水素化物複合体、このような水素化物複合体から水素を放出することにより得られるイミド化合物、及びこのような水素化物複合体を用いた水素ガスの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る水素化物複合体は、LiAlHx(NH2)4-x(x=0又は1)と、LiAlH4とを含むことを要旨とする。
本発明に係るイミド材料は、本発明に係る水素化物複合体に含まれる水素の全部又は一部を放出させることにより得られるものからなる。
さらに、本発明に係る水素ガスの製造方法は、本発明に係る水素化物複合体から水素を放出させる水素放出工程を備えていることを要旨とする。
LiAlHx(NH2)4-xとLiAlH4とを複合化させると、室温におけるミリング処理のみで水素放出が可能となる。これは、両化合物を複合化させることにより、新たな水素放出反応が誘起されるためと考えられる。さらに、この複合体は、資源量が豊富で安価なAlを主構成元素としているため、大量供給と低コスト化が期待できる。
LiAlH4、LiAl(NH2)4、及びLiAl(NH2)4+LiAlH4をミリング処理することにより得られる水素化物複合体のX線回折パターンである。 LiAl(NH2)4のアンモニアに関する昇温脱離スペクトルである。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 水素化物複合体]
本発明に係る水素化物複合体は、LiAlHx(NH2)4-x(x=0又は1)と、LiAlH4とを含む。
[1.1 組成]
LiAlHx(NH2)4-xとLiAlH4の比率は、特に限定されるものではなく、xの値に応じて最適な比率を選択するのが好ましい。
LiAlHx(NH2)4-xが単独で分解すると、アンモニアなどの非水素ガスが発生する。一方、LiAlH4は、放出された非水素ガスをトラップし、水素に分解する作用を持つ。従って、両者の比率は、非水素ガスが効率よく水素に分解され、未分解のまま放出される非水素ガスが少なくなるように定めるのが好ましい。
例えば、x=0である場合(すなわち、LiAl(NH2)4の場合)、水素化物複合体は、次の(1)式で表される組成を有するものが好ましい。
LiAl(NH2)4+yLiAlH4(1≦y≦2) ・・・(1)
x=0の場合において、y=1であるときには、理想的には、次の(1a)式に従って水素放出反応が進行すると考えられている。(1a)式の理論水素量は、6mass%である。
LiAl(NH2)4+LiAlH4 → 2LiAl(NH)2+4H2 ・・・(1a)
この場合、yが1未満になると、過剰のLiAl(NH2)4が単独で分解し、非水素ガスが放出されるので好ましくない。従って、yは、1以上が好ましい。yは、さらに好ましくは、1.1以上である。
yが1より大きくなるほど、非水素ガスの放出を抑制することができる。しかしながら、yが過剰になると、100℃以下において取り出すことが可能な水素量が減少する。従って、yは、2以下が好ましい。yは、さらに好ましくは、1.5以下である。
また、例えば、x=1である場合(すなわち、LiAlH(NH2)3の場合)、水素化物複合体は、次の(2)式で表される組成を有するものが好ましい。
LiAlH(NH2)3+zLiAlH4(0.5≦z≦1) ・・・(2)
x=1の場合において、z=0.5であるときには、理想的には、次の(2a)式に従って水素放出反応が進行すると考えられている。(2a)式の理論水素量は、6mass%である。
LiAlH(NH2)3+0.5LiAlH4
→ 1.5LiAl(NH)2+3H2 ・・・(2a)
この場合、zが0.5未満になると、過剰のLiAlH(NH2)3が単独で分解し、非水素ガスが放出されるので好ましくない。従って、zは、0.5以上が好ましい。zは、さらに好ましくは、0.55以上である。
zが0.5より大きくなるほど、非水素ガスの放出を抑制することができる。しかしながら、zが過剰になると、100℃以下において取り出すことが可能な水素量が減少する。従って、zは、1以下が好ましい。zは、さらに好ましくは、0.75以下である。
さらに、水素化物複合体は、LiAl(NH2)4、LiAlH(NH2)3及びLiAlH4の混合物であっても良い。この場合、非水素ガスの放出が抑制され、かつ、取り出すことが可能な水素量がより多くなるように、各成分の比率を定めるのが好ましい。
[1.2 不純物]
水素化物複合体は、LiAlHx(NH2)4-x及びLiAlH4のみを含むものが好ましいが、不可避的不純物がさらに含まれていても良い。非水素ガスの放出を促し、あるいは、100℃以下の温度における水素放出量を低下させる不純物は、少ないほど良い。
[1.3 粒径]
LiAlHx(NH2)4-x及びLiAlH4の粒径は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。
本発明に係る水素化物複合体は、室温におけるミリング処理によって容易に水素を放出するので、粒径は、相対的に大きくても良い。しかしならが、ミリング処理の負荷を軽減するためには、LiAlHx(NH2)4-x及びLiAlH4の粒径は、相対的に小さい方が好ましい。
[2. LiAlHx(NH2)4-xの製造方法]
本発明に係る水素化物複合体を構成するLiAlH4は、市販されている。
また、LiAlHx(NH2)4-xは、LiAlH4を所定の温度、圧力でアンモニアガスと反応させることにより製造することができる。
[3. イミド材料]
本発明に係るイミド材料は、本発明に係る水素化物複合体に含まれる水素の全部又は一部を放出させることにより得られる。得られたイミド材料と水素とを接触させる場合において、条件を最適化すると、イミド材料と水素とが反応する。
[4. 水素ガスの製造方法]
本発明に係る水素ガスの製造方法は、本発明に係る水素化物複合体から水素を放出させる水素放出工程を備えている。
水素化物複合体から水素を放出させる方法としては、具体的には、
(1)水素化物複合体を加熱する方法、
(2)水素化物複合体をミリング処理する方法、
などがある。
加熱条件又はミリング条件は、特に限定されるものではなく、水素化物複合体の組成に応じて最適な条件を選択するのが好ましい。本発明に係る水素化物複合体は、極めて反応性が高いので、室温におけるミリング処理のみでも水素を発生させることができる。
[5. 水素化物複合体、イミド材料、及び水素ガスの製造方法の作用]
LiAlHx(NH2)4-xとLiAlH4とを複合化させると、室温におけるミリング処理のみで水素放出が可能となる。これは、両化合物を複合化させることにより、新たな水素放出反応が誘起されるためと考えられる。さらに、この複合体は、資源量が豊富で安価なAlを主構成元素としているため、大量供給と低コスト化が期待できる。
(実施例1)
[1. 試料の作製]
純化したArで満たされたグローブボックス中で、LiAl(NH2)4とLiAlH4とをモル比で1:1となるように混合した。その後、室温、0.9MPaの水素圧力下で遊星ボールミル装置を用いて1時間ミリング処理した。
[2. 評価]
ミリング処理後、容器内の圧力が1.4MPaまで上昇した。容器内ガスをフーリエ変換赤外分光装置により評価したが、アンモニアは検出されなかった。
グローブボックス中でミリング処理後の試料を容器から取り出し、粉末X線回折測定を行った。ミリング前に観測されたLiAl(NH2)4、とLiAlH4の回折ピークが消失し、他の明瞭なピークも観測されなかった(図1)。
ミリング処理により、上述した(1a)式の反応が起きたと考えられる。また、ミリング処理後の試料に明瞭なピークが観測されなかったのは、反応生成物であるLiAl(NH)2が非晶質になっているためと考えられる。
(実施例2)
[1. 試料の作製]
純化したArで満たされたグローブボックス中で、LiAlH(NH2)3とLiAlH4とをモル比で1:0.5となるように混合した。その後、室温、1MPaの水素圧力下で遊星ボールミル装置を用いて1時間ミリング処理した。
[2. 評価]
ミリング処理後、容器内の圧力が上昇した。容器内ガスをフーリエ変換赤外分光装置により評価したが、アンモニアは検出されなかった。
(比較例1)
Heガス気流下でLiAl(NH2)4の昇温脱離スペクトル測定を行ったところ、約80℃からアンモニアの放出が確認された(図2)。
(比較例2)
Heガス気流下でLiAlH(NH2)3の昇温脱離スペクトル測定を行ったところ、約80℃からアンモニアの放出が確認された。
(比較例3)
Heガス気流下でLiAlH4の昇温脱離スペクトル測定を行ったところ、約120℃から水素の放出が確認された。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る水素化物複合体は、燃料電池システム用の水素貯蔵手段、超高純度水素製造装置、ケミカル式ヒートポンプ、アクチュエータ、金属−水素蓄電池用の水素貯蔵体等に用いられる水素貯蔵媒体として使用することができる。

Claims (5)

  1. LiAlHx(NH2)4-x(x=0又は1)と、LiAlH4とを含む水素化物複合体。
  2. LiAl(NH2)4+yLiAlH4(1≦y≦2)で表される組成を有する請求項1に記載の水素化物複合体。
  3. LiAlH(NH2)3+zLiAlH4(0.5≦z≦1)で表される組成を有する請求項1に記載の水素化物複合体。
  4. 請求項1から3までのいずれかに記載の水素化物複合体に含まれる水素の全部又は一部を放出させることにより得られるイミド材料。
  5. 請求項1から3までのいずれかに記載の水素化物複合体から水素を放出させる水素放出工程を備えた水素ガスの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014181152A (ja) * 2013-03-19 2014-09-29 Taiheiyo Cement Corp アルカリ土類金属イミドの製造方法

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