1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
〔1〕本発明の代表的な実施の形態による増幅器は、バイアス部(1)と、増幅部(2)と、電流検出部(3)を具備する。
前記増幅部(2)は増幅トランジスタ(QN2)を含み、前記増幅トランジスタ(QN2)の共通電極は交流的に接地され、前記増幅トランジスタ(QN2)の入力電極に入力信号(Pin)が供給され、前記増幅トランジスタ(QN2)の出力電極から増幅出力信号(Pout)が生成可能とされている。
前記バイアス部(1)は、各共通電極が交流的に接地された参照トランジスタ(QN11)とレプリカ増幅トランジスタ(QN12)とを含む。
前記増幅トランジスタ(QN2)の前記入力電極は、前記バイアス部(1)の前記参照トランジスタ(QN11)の入力電極と前記レプリカ増幅トランジスタ(QN12)の入力電極とのいずれかと電気的に接続されている。
前記参照トランジスタ(QN11)の出力電極に流れる第1バイアス電流(I11)と前記レプリカ増幅トランジスタ(QN12)の出力電極に流れる第2バイアス電流(I12)とが前記電流検出部(3)の第1入力端子と第2入力端子とそれぞれ供給されることによって、前記電流検出部(3)は前記第2バイアス電流(I12)と前記第1バイアス電流(I11)との差電流(I12−I11)に対応する検出電流(IDIFF)を生成するものである。
前記検出電流(IDIFF)が参照電流(IREF、IREF/n)と一致するように、前記レプリカ増幅トランジスタ(QN12)の前記第2バイアス電流(I12)が前記電流検出部(3)から生成される前記検出電流(IDIFF)に基づいて制御されるものである(図1、図4、図5、図6、図7参照)。
前記実施の形態によれば、半導体製造プロセスのばらつきもしくは温度変動による増幅器の利得の変動を軽減することができる。
好適な実施の形態は、電流比較部(5)を更に具備する。
前記電流比較部(5)の第1入力端子と第2入力端子には、前記検出電流(IDIFF)と前記参照電流(IREF)とがそれぞれ供給され、前記電流比較部(5)の出力信号に応答して前記第2バイアス電流(I12)が制御される(図1、図4、図6、図7参照)。
他の好適な実施の形態では、前記バイアス部(1)はバイアス制御部(1C)を更に含む。
前記バイアス制御部(1C)の一端と他端の間に、バイアス電圧(ΔVG)が生成される。
前記バイアス制御部(1C)の前記一端は前記参照トランジスタ(QN11)の前記入力電極と電気的に接続され、前記バイアス制御部(1C)の前記他端は前記レプリカ増幅トランジスタ(QN12)の前記入力電極と電気的に接続されている(図1参照)。
別の好適な実施の形態では、前記バイアス部(1)はバイアス制御部(1C)を更に含む。
前記バイアス制御部(1C)は、フィードバックトランジスタ(QP4、QP1)とレベルシフト素子(R2)とを含み、前記フィードバックトランジスタ(QP4、QP1)は前記電流比較部(5)の前記出力信号に応答するフィードバック電流(IFB)を前記レベルシフト素子(R2)に流すものである。
前記参照トランジスタは、第1参照トランジスタ(QN11A)と第2参照トランジスタ(QN11B)を含む。
前記第1参照トランジスタ(QN11A)の出力電極および入力電極は前記レベルシフト素子(R2)の一端に接続され、前記レベルシフト素子(R2)の他端は前記フィードバックトランジスタ(QP4、QP1)の出力電極と前記第2参照トランジスタ(QN11B)の入力電極とに接続され、前記参照トランジスタ(QN11)の前記第1バイアス電流(I11)は前記第2参照トランジスタ(QN11B)の出力電極に流れるものである(図4、図6、図7参照)。
更に別の好適な実施の形態は、電流比較部(5)を更に具備して、前記電流比較部(5)は第1電圧比較器(OPA3)と第2電圧比較器(OPA2)とを含む。
前記第1電圧比較器(OPA3)の第1入力端子と第2入力端子に前記参照トランジスタ(QN11)の前記入力電極の第1バイアス電圧(VG11)と前記レプリカ増幅トランジスタ(QN12)の前記入力電極の第2バイアス電圧(VG12)とがそれぞれ供給されることにより、前記第1電圧比較器(OPA3)は前記第2バイアス電圧(VG12)と前記第1バイアス電圧(VG11)との差電圧(VG 12−VG 11)に対応する検出電圧(VDIFF)を生成するものである。
前記第2電圧比較器(OPA2)の第1入力端子と第2入力端子に参照電圧(VREF1)と前記検出電圧(VDIFF)とがそれぞれ供給されることによって、前記第2電圧比較器(OPA2)の出力信号は前記第2バイアス電流(I12)と前記第1バイアス電流(I11)とを制御するものである(図5参照)。
具体的な一つの実施の形態では、前記増幅トランジスタ(QN2)と前記参照トランジスタ(QN11)と前記レプリカ増幅トランジスタ(QN12)とは、それぞれ所定のデバイス・サイズを持つものである(図1、図4、図6、図7参照)。
より具体的な一つの実施の形態では、前記増幅トランジスタ(QN2)の前記入力電極に供給される前記入力信号(Pin)はRF入力信号であり、前記増幅トランジスタ(QN2)の前記出力電極から生成される前記増幅出力信号(Pout)は通信システムのアンテナから送信されるRF出力信号であり、前記増幅器は前記RF入力信号を増幅して前記RF出力信号を生成するRF電力増幅器である。
他のより具体的な一つの実施の形態は、電力制御電圧・電流変換部(7)を更に具備する。
前記電力制御電圧・電流変換部(7)は、前記通信システムと基地局の通信距離に略比例する出力電力制御電圧(Vapc)に応答して出力電力制御電流(Iapc)を生成して、前記出力電力制御電流(Iapc)に基づいて前記電流比較部(5)の前記第2入力端子に供給される前記参照電流(IREF)の電流値が設定される(図7、図8参照)。
最も具体的な一つの実施の形態では、前記参照トランジスタ(QN11)と前記レプリカ増幅トランジスタ(QN12)と前記増幅トランジスタ(QN2)とは、電界効果トランジスタである。
他の最も具体的な一つの実施の形態では、前記参照トランジスタ(QN11)と前記レプリカ増幅トランジスタ(QN12)と前記増幅トランジスタ(QN2)とは、バイポーラトランジスタである。
〔2〕本発明の別の観点の代表的な実施の形態によるRFパワーモジュールは、第1の周波数帯域のRF送信入力信号(Pin_GSM)を増幅する第1のRF電力増幅器(911)と、第2の周波数帯域のRF送信入力信号(Pin_DCS)を増幅する第2のRF電力増幅器(921)と、出力電力制御部(930、915)とを具備する。
前記出力電力制御部(930、915)は、第1の電力検波器(932)と、第2の電力検波器(933)と、誤差増幅器(934)とを含むものである。
前記第1の電力検波器(932)は、前記第1のRF電力増幅器(911)の出力端子から生成される第1のRF送信信号のレベルを検出する。
前記第2の電力検波器(933)は、前記第2のRF電力増幅器(921)の出力端子から生成される第2のRF送信信号のレベルを検出する。
前記誤差増幅器(934)は、外部制御電圧(Vramp)と前記第1の電力検波器(932)および前記第2の電力検波器(933)の検波出力電圧(Vdet)との差に応答して電力制御電圧(Vapc)を生成する(図9参照)。
前記第1のRF電力増幅器(911)と前記第2のRF電力増幅器(921)の各RF電力増幅器は、バイアス部(1)と、増幅部(2)と、電流検出部(3)を具備する。
前記増幅部(2)は増幅トランジスタ(QN2)を含み、前記増幅トランジスタ(QN2)の共通電極は交流的に接地され、前記増幅トランジスタ(QN2)の入力電極に入力信号(Pin)が供給され、前記増幅トランジスタ(QN2)の出力電極から増幅出力信号(Pout)が生成可能とされている。
前記バイアス部(1)は、各共通電極が交流的に接地された参照トランジスタ(QN11)とレプリカ増幅トランジスタ(QN12)とを含む。
前記増幅トランジスタ(QN2)の前記入力電極は、前記バイアス部(1)の前記参照トランジスタ(QN11)の入力電極と前記レプリカ増幅トランジスタ(QN12)の入力電極とのいずれかと電気的に接続されている。
前記参照トランジスタ(QN11)の出力電極に流れる第1バイアス電流(I11)と前記レプリカ増幅トランジスタ(QN12)の出力電極に流れる第2バイアス電流(I12)とが前記電流検出部(3)の第1入力端子と第2入力端子とそれぞれ供給されることによって、前記電流検出部(3)は前記第2バイアス電流(I12)と前記第1バイアス電流(I11)との差電流(I12−I11)に対応する検出電流(IDIFF)を生成するものである。
前記検出電流(IDIFF)が参照電流(IREF、IREF/n)と一致するように、前記レプリカ増幅トランジスタ(QN12)の前記第2バイアス電流(I12)が前記電流検出部(3)から生成される前記検出電流(IDIFF)に基づいて制御されるものである(図1、図4、図5、図6、図7参照)。
前記実施の形態によれば、半導体製造プロセスのばらつきもしくは温度変動による増幅器の利得の変動を軽減することができる。
2.実施の形態の詳細
次に、実施の形態について更に詳述する。尚、発明を実施するための最良の形態を説明するための全図において、前記の図と同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
[実施の形態1]
《実施の形態1のRF電力増幅器の構成》
図1は、本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器の構成を示す図である。
図1に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器は、バイアス部1と、増幅部2と、電流検出部3と、参照電流生成部4と、電流比較部5とを具備する。
図1に示す本発明の実施の形態1も含め、以下に説明する本発明の種々の実施の形態によるRF電力増幅器はモノリシックCMOS集積回路によって構成されている。従って、特に言及がない限り、トランジスタであるNチャンネルMOSトランジスタは全て同一のトランジスタ製造プロセスによって集積化され、抵抗も全て同一の抵抗製造プロセスによって集積化されている。
バイアス部1は、参照バイアス部1Aとレプリカ増幅部1Bとバイアス制御部1Cを含んでいる。バイアス部1の参照バイアス部1Aは参照トランジスタQN11を含み、バイアス部1のレプリカ増幅部1Bはレプリカ増幅トランジスタQN12を含み、増幅部2は増幅トランジスタQN2と抵抗Rinと入力容量Cinを含んでいる。尚、参照トランジスタQN11とレプリカ増幅トランジスタQN12と増幅トランジスタQN2とは、各ソースが接地電位に接続されたNチャンネルMOSトランジスタである。増幅部2では、RF入力信号Pinは入力容量Cinを介して増幅トランジスタQN2のゲートに供給され、RF増幅出力信号Poutは増幅トランジスタQN2のドレインから生成される。また、参照トランジスタQN11とレプリカ増幅トランジスタQN12とのデバイスサイズレシオ(チャンネル幅W/チャンネル長Lの比)は1:n(n≧1)に設定され、参照トランジスタQN11と増幅トランジスタQN2とのデバイスサイズレシオ(チャンネル幅W/チャンネル長Lの比)も1:n(n≧1)に設定されている。
バイアス部1のレプリカ増幅部1Bの参照トランジスタQN11のゲートとレプリカ増幅トランジスタQN12のゲートとの間にバイアス制御部1Cの一定のレベルシフト制御電圧+ΔVGが挿入されることによって、両トランジスタのゲート電位差が常に一定に維持される。このようにレベルシフト制御電圧+ΔVGが一定に維持されたバイアス制御部1Cの出力電圧VG2は、レプリカ増幅部1Bのレプリカ増幅トランジスタQN12のゲートと増幅部2は増幅トランジスタQN2のゲートとに供給される。
参照トランジスタQN11のドレイン電流I11とレプリカ増幅トランジスタQN12のドレイン電流I12とが電流検出部3の第1入力端子と第2入力端子とにそれぞれ供給されることによって、電流検出部3の出力端子から差電流I12−I11である出力差電流IDIFFが生成される。電流検出部3の出力端子から生成される出力差電流IDIFFと参照電流生成部4の出力端子から生成される参照電流IRFFとは電流比較部5の反転入力端子と非反転入力端子とにそれぞれ供給され、電流比較部5の出力信号がレプリカ増幅部1Bの参照トランジスタQN11のゲートに供給される。
《実施の形態1のRF電力増幅器の動作》
次に、図1に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器の動作を、下記に説明する。
電流検出部3から電流比較部5に供給される出力差電流IDIFF(=I12−I11)の値が参照電流生成部4から電流比較部5に供給される参照電流IRFFの値と一致するように、電流比較部5の出力信号はレプリカ増幅部1Bの参照トランジスタQN11のゲート電圧を調整する。
図2は、図1に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器の動作を説明する図である。
図2の横軸は参照トランジスタQN11のゲート・ソース間電圧VG1、バイアス制御部1Cのレベルシフト制御電圧+ΔVG、レプリカ増幅トランジスタQN12と増幅トランジスタQN2のゲート・ソース間電圧VG2を示し、図2の縦軸は参照トランジスタQN11のドレイン電流I11、レプリカ増幅トランジスタQN12のドレイン電流I12、電流検出部3の出力差電流IDIFF、参照電流生成部4の参照電流IRFFを示している。
電流検出部3の出力差電流IDIFFが参照電流生成部4の参照電流IRFFよりも小さければ、電流比較部5の出力信号はレプリカ増幅部1Bの参照トランジスタQN11のゲート電圧を増加させるので、電流検出部3の出力差電流IDIFF(=I12−I11)が参照電流生成部4の参照電流IRFFと等しくなるまで増加される。逆に、電流検出部3の出力差電流IDIFFが参照電流生成部4の参照電流IRFFよりも大きければ、電流比較部5の出力信号はレプリカ増幅部1Bの参照トランジスタQN11のゲート電圧を減少させるので、電流検出部3の出力差電流IDIFF(=I12−I11)が参照電流生成部4の参照電流IRFFと等しくなるまで減少される。
この電流比較部5による負帰還制御によって、レプリカ増幅トランジスタQN12のドレイン電流I12と参照トランジスタQN11のドレイン電流I11との差電流IDIFF(=I12−I11)が参照電流生成部4の参照電流IRFFと等しくなるようにレプリカ増幅部1Bの参照トランジスタQN11のゲート電圧が調整される。
参照トランジスタQN11のドレイン電流I11は参照トランジスタQN11のゲート・ソース間電圧VG1に応答しており、レプリカ増幅トランジスタQN12のドレイン電流I12はレプリカ増幅トランジスタQN12のゲート・ソース間電圧VG2に応答している。一方、レプリカ増幅トランジスタQN12のゲート・ソース間電圧VG2と参照トランジスタQN11のゲート・ソース間電圧VG1との差電圧VG2−VG1によって差電流IDIFF(=I12−I11)を除算した値gmが、レプリカ増幅トランジスタQN12の相互コンダクタンスの値となる。一方、バイアス部1のレプリカ増幅トランジスタQN12のドレイン電流I12と増幅部2の増幅トランジスタQN2のドレイン電流とは等しいので、増幅部2の増幅トランジスタQN2の相互コンダクタンスの値も上記の除算値gmとなる。このようにして、半導体製造プロセスのばらつきもしくは温度変動によるRF電力増幅器の利得の変動を軽減することができる。
[実施の形態2]
《実施の形態2のRF電力増幅器の構成》
図4は、本発明の実施の形態2によるRF電力増幅器の構成を示す図である。
図4に示した本発明の実施の形態2によるRF電力増幅器は、図1に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器と同様に、バイアス部1、増幅部2、電流検出部3、参照電流生成部4、電流比較部5とを具備する。また、図4に示した本発明の実施の形態2によるRF電力増幅器は、参照電圧・電流変換部6を更に具備している。
図4に示した本発明の実施の形態2によるRF電力増幅器のバイアス部1は、参照バイアス部1Aとレプリカ増幅部1Bとバイアス制御部1Cとを含んでいる。
またバイアス部1の参照バイアス部1Aは、第1参照トランジスタQN11Aと第2参照トランジスタQN11Bと含み、バイアス部1のレプリカ増幅部1Bはレプリカ増幅トランジスタQN12を含み、バイアス部1のバイアス制御部1CはPチャンネルMOSトランジスタMP4と抵抗R2と第1参照トランジスタQN11Aとを含み、増幅部2は増幅トランジスタQN2と抵抗Rinと入力容量Cinを含んでいる。尚、第1参照トランジスタQN11Aと第2参照トランジスタQN11Bとレプリカ増幅トランジスタQN12と増幅トランジスタQN2とは、各ソースが接地電位に接続されたNチャンネルMOSトランジスタである。
増幅部2では、RF入力信号Pinは入力容量Cinを介して増幅トランジスタQN2のゲートに供給され、RF増幅出力信号Poutは増幅トランジスタQN2のドレインから生成される。第1参照トランジスタQN11Aと第2参照トランジスタQN11Bとのデバイスサイズレシオ(チャンネル幅W/チャンネル長Lの比)は1:n(n≧1)に設定され、第1参照トランジスタQN11Aとレプリカ増幅トランジスタQN12とのデバイスサイズレシオ(チャンネル幅W/チャンネル長Lの比)は1:n(n≧1)に設定され、第1参照トランジスタQN11Aと増幅トランジスタQN2とのデバイスサイズレシオ(チャンネル幅W/チャンネル長Lの比)も1:n(n≧1)に設定されている。
バイアス部1の参照バイアス部1Aの第1参照トランジスタQN11Aのゲートとドレインとが接続されることによって、第1参照トランジスタQN11Aはダイオード接続され、第1参照トランジスタQN11Aのゲート・ソース間電圧VG1は第2参照トランジスタQN11Bのゲートとバイアス制御部1Cの抵抗R2の一端とに供給される。抵抗R2の一端はバイアス制御部1Cに含まれるNチャンネルMOSトランジスタMN2のドレインに接続され、抵抗R2の他端はバイアス制御部1Cに含まれるPチャンネルMOSトランジスタMP3のドレインに接続されている。
電流検出部3は第1のカレントミラーのPチャンネルMOSペアトランジスタQP5、QP6と第2のカレントミラーのPチャンネルMOSペアトランジスタQP7、QP8とを含み、参照電流生成部4は参照電流IRFFを流し、電流比較部5は電圧比較器としての演算増幅器OPA2と、抵抗R3、R4とを含んでいる。
参照電圧・電流変換部6は、演算増幅器OPA1とPチャンネルMOSトランジスタMP1と抵抗R1とを含んでいる。演算増幅器OPA1の反転入力端子には温度変動や電源電圧変動と略無関係に略1.2ボルトの安定なバンドギャップ基準電圧VREFが供給され、PチャンネルMOSトランジスタMP1のゲートは演算増幅器OPA1の出力電圧によって駆動され、PチャンネルMOSトランジスタMP1のドレイン電流IVREFによる抵抗R1の電圧降下と基準電圧VREFとは同一レベルとされる。従って、ゲートが演算増幅器OPA1の出力電圧によって駆動される3個のPチャンネルMOSトランジスタMP1、PチャンネルMOSトランジスタMP2、PチャンネルMOSトランジスタMP3のドレイン電流は全て安定なIVREFの値に設定される。その結果、バイアス部1のカレントミラーのNチャンネルMOSペアトランジスタQN1、QN2のドレイン電流も、全て安定なIVREFの値に設定される。従って、抵抗R2の他端にはバイアス部1のPチャンネルMOSトランジスタMP3のドレインから安定な電流IVREFが流入する一方、抵抗R2の一端からバイアス部1のNチャンネルMOSトランジスタQN2のドレインへ安定な電流IVREFが流出するものとなる。
従って、参照電圧・電流変換部6では、IVREF=VREF/R1の関係が成立しているので、バイアス制御部1Cの抵抗R2の両端の電圧降下ΔVGは、次式で与えられる。
従って、バイアス制御部1Cの抵抗R2の他端からレプリカ増幅トランジスタQN12のゲートと増幅トランジスタQN2のゲートに供給されるバイアス電圧VG2は、次式で与えられる。
バイアス部1では、第2参照トランジスタQN11Bのドレイン電流I11は第1参照トランジスタQN11Aのゲート・ソース間電圧VG1によって決定される一方、レプリカ増幅トランジスタQN12のドレイン電流I12は抵抗R2の他端からバイアス電圧VG2によって決定される。
バイアス部1の第2参照トランジスタQN11Bのドレイン電流I11は、電流検出部3に含まれるPチャンネルMOSペアトランジスタQP5、QP6のカレントミラーを介して、バイアス部1のレプリカ増幅トランジスタQN12のドレインに供給される。バイアス部1のレプリカ増幅トランジスタQN12のドレイン電流はI12の値であるので、電流検出部3の他のカレントミラーの入力側のダイオード接続のPチャンネルMOSトランジスタQP7には差電流IDIFF(=I12−I11)が流入して、出力側のPチャンネルMOSトランジスタQP8から差電流IDIFF(=I12−I11)が流出する。
電流比較部5は、電圧比較器としての演算増幅器OPA2と、抵抗R3、R4とを含んでいる。電圧比較器としての演算増幅器OPA2の反転入力端子と接地電位の間に接続された抵抗R3には参照電流生成部4の参照電流IRFFが供給され、演算増幅器OPA2の非反転入力端子と接地電位の間に接続された抵抗R4には電流検出部3のPチャンネルMOSペアトランジスタQP8から差電流IDIFF(=I12−I11)が供給される。電流比較部5の演算増幅器OPA2の出力信号はバイアス部1のPチャンネルMOSトランジスタQP4のゲートに供給され、PチャンネルMOSトランジスタQP4のドレインのフィードバック電流IFBが決定され、このフィードバック電流IFBにより第1参照トランジスタQN11Aのゲート・ソース間電圧VG1が決定される。
《実施の形態2のRF電力増幅器の動作》
次に、図4に示した本発明の実施の形態2によるRF電力増幅器の動作を、下記に説明する。
電流検出部3から電流比較部5に供給される出力差電流IDIFF(=I12−I11)の値が参照電流生成部4から電流比較部5に供給される参照電流IRFFの値と一致するように、電流比較部5の出力信号はバイアス制御部1Cのバイアス電圧VG2(=ΔVG+VG1)を調整するものである。
今、電流比較部5の抵抗R3、R4の抵抗値が互いに等しいとすると、電流検出部3の出力差電流IDIFF(=I12−I11)の値が参照電流生成部4の参照電流IRFFの値よりも低下すると、電流比較部5の演算増幅器OPA2の出力電圧が低下する。従って、バイアス部1のPチャンネルMOSトランジスタQP4のドレインのフィードバック電流IFBが増加して、第1参照トランジスタQN11Aのゲート・ソース間電圧VG1が増加してバイアス部1の第2参照トランジスタQN11Bのドレイン電流I11も増加する。一方、バイアス制御部1Cのバイアス電圧VG2(=ΔVG+VG1)も増大するので、レプリカ増幅トランジスタQN12のドレイン電流I12も第2参照トランジスタQN11Bのドレイン電流I11の増加以上に増大する。従って、電流検出部3のカレントミラーのPチャンネルMOSペアトランジスタQP7、QP8に流れる差電流IDIFF(=I12−I11)が参照電流生成部4の参照電流IRFFの値と等しくなるまで、バイアス部1のバイアス制御部1Cのバイアス電圧VG2(=ΔVG+VG1)が調整される。またバイアス部1のレプリカ増幅トランジスタQN12のドレイン電流I12と増幅部2の増幅トランジスタQN2のドレイン電流とは等しいので、半導体製造プロセスのばらつきもしくは温度変動によるRF電力増幅器の利得の変動を軽減することができる。
また更に、図4に示した本発明の実施の形態2によるRF電力増幅器の定量的な動作を、下記に詳細に説明する。
バイアス部1の第2参照トランジスタQN11Bのドレイン電流I11の値とレプリカ増幅トランジスタQN12のドレイン電流はI12の値とは、それぞれ次式で与えられる。
一方、バイアス部1のPチャンネルMOSトランジスタQP4のフィードバック電流IFBと第1参照トランジスタQN11Aのゲート・ソース間電圧VG1との間には、次式の関係が成立する。
一方、電流検出部3のカレントミラーのPチャンネルMOSペアトランジスタQP7、QP8に流れる差電流IDIFF(=I12−I11)は、上記(7)式と上記(8)式とを利用すると、次式が得られる。
一方、上述したように電流検出部3の差電流IDIFF(=I12−I11)は参照電流生成部4の参照電流IRFFの値と等しく制御されるので、上記(11)式を利用すると、次式が得られる。
上記(12)式を変形すると、次式が得られる。
一方、第2参照トランジスタQN11Bの相互コンダクタンスGm1は、上記(7)式と上記(13)式と上記(5)式とから次式のように求められる。
このように、図4に示した本発明の実施の形態2によるRF電力増幅器においても、図1に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器と略同様に、参照トランジスタQN11Bの相互コンダクタンスGm1が、参照電流IRFFに正比例する一方、レベルシフト電圧ΔVGに反比例することが理解できる。
更に、図4に示した本発明の実施の形態2によるRF電力増幅器では、レプリカ増幅トランジスタQN12と増幅トランジスタQN2の相互コンダクタンスも、参照トランジスタQN11Bの相互コンダクタンスGm1と同様に、参照電流IRFFに正比例する一方、レベルシフト電圧ΔVGに反比例する傾向となる。従って図4に示した本発明の実施の形態2によるRF電力増幅器でも、半導体製造プロセスのばらつきもしくは温度変動によるRF電力増幅器の利得の変動を軽減することができる。
[実施の形態3]
《実施の形態3のRF電力増幅器の構成》
図5は、本発明の実施の形態3によるRF電力増幅器の構成を示す図である。
図5に示した本発明の実施の形態3によるRF電力増幅器は、図1に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器と同様に、バイアス部1、増幅部2、電流検出部3、参照電流生成部4、電流比較部5とを具備する。
図5に示した本発明の実施の形態3によるRF電力増幅器のバイアス部1は、参照バイアス部1Aとレプリカ増幅部1Bとを含んでいる。
またバイアス部1の参照バイアス部1Aは、参照トランジスタQN11を含み、バイアス部1のレプリカ増幅部1Bはレプリカ増幅トランジスタQN12を含み、増幅部2は増幅トランジスタQN2と抵抗Rinと入力容量Cinを含んでいる。尚、参照トランジスタQN11とレプリカ増幅トランジスタQN12と増幅トランジスタQN2とは、各ソースが接地電位に接続されたNチャンネルMOSトランジスタである。増幅部2では、RF入力信号Pinは入力容量Cinを介して増幅トランジスタQN2のゲートに供給され、RF増幅出力信号Poutは増幅トランジスタQN2のドレインから生成される。また更に、参照トランジスタQN11とレプリカ増幅トランジスタQN12とのデバイスサイズレシオ(チャンネル幅W/チャンネル長Lの比)は1:1に設定され、参照トランジスタQN11と増幅トランジスタQN2とのデバイスサイズレシオ(チャンネル幅W/チャンネル長Lの比)も1:1に設定されている。
バイアス部1のレプリカ増幅部1Bの参照トランジスタQN11のゲートとドレインとが接続されることによって、参照トランジスタQN11はダイオード接続され、参照トランジスタQN11のゲート・ソース間電圧VG1は電流比較部5のバッファ増幅器Buff1を介して演算増幅器OPA3の反転入力端子に供給される。バイアス部1のレプリカ増幅部1Bはレプリカ増幅トランジスタQN12のゲートとドレインが接続されることによって、レプリカ増幅トランジスタQN12はダイオード接続され、レプリカ増幅トランジスタQN12のゲート・ソース間電圧VG2は電流比較部5のバッファ増幅器Buff2を介して演算増幅器OPA3の非反転入力端子に供給される。演算増幅器OPA3は非反転入力端子の入力電圧VG2と反転入力端子の入力電圧VG1との入力差電圧(VG2−VG1)を電圧利得nで増幅して差出力電圧VDIFFを生成する。算増幅器OPA3の電圧利得nは、参照電流生成部4のPチャンネルMOSトランジスタQP1の基準電流IREFと電流検出部3の差電流IDIFF(=I12−I11)とのレシオn:1に対応している。また、演算増幅器OPA3の出力端子から生成される差出力電圧VDIFFは他の演算増幅器OPA2の非反転入力端子に供給される一方、参照基準電圧VREFは他の演算増幅器OPA2の反転入力端子に供給される。
電流比較部5の他の演算増幅器OPA2の出力電圧はNチャンネルMOSトランジスタQN3のゲートに供給され、NチャンネルMOSトランジスタQN3のドレイン電流I11は、ダイオード接続されたPチャンネルMOSトランジスタQP2に供給される。このダイオード接続されたPチャンネルMOSトランジスタQP2と電流検出部3に含まれるPチャンネルMOSトランジスタQP3、QP4とは、カレントミラーを構成している。従って、電流検出部3のPチャンネルMOSトランジスタQP3からバイアス部1の参照バイアス部1Aの参照トランジスタQN11にドレイン電流I11が流入する一方、電流検出部3のPチャンネルMOSトランジスタQP4からバイアス部1のレプリカ増幅トランジスタQN12のドレインにドレイン電流I11が流入しようとする。しかしながら、レプリカ増幅トランジスタQN12にはゲート・ソース間電圧VG2に応答してドレイン電流I12が流入している。従って、電流検出部3の他のPチャンネルMOSトランジスタQP5から、差電流IDIFF(=I12−I11)が流出するものである。
参照電流生成部4は演算増幅器OPA1とPチャンネルMOSトランジスタQP1と抵抗R1を含み、演算増幅器OPA1の反転入力端子に参照基準電圧VREFが供給される。ここで、PチャンネルMOSトランジスタQP5とPチャンネルMOSトランジスタQP1とのデバイスサイズレシオ(チャンネル幅W/チャンネル長Lの比)も1:n(n≧1)に設定されている。従って、演算増幅器OPA1の出力電圧によりゲートが駆動されるPチャンネルMOSトランジスタQP1には基準電流IREFが流れる一方、演算増幅器OPA1の出力電圧によりゲートが駆動されるPチャンネルMOSトランジスタQP5には基準電流IREFをレシオnで除算した定電流値IREF/nが流れるものとなる。その結果、電流検出部3のPチャンネルMOSトランジスタQP5に流れる差電流IDIFF(=I12−I11)の値は、レシオnによる除算値IREF/nの定電流値と等しく制御されるものである。尚、参照電流生成部4の抵抗R1は、温度依存性が極めて小さな半導体チップ外部のディスクリート部品で構成されることが望ましい。
《実施の形態3のRF電力増幅器の動作》
次に、図5に示した本発明の実施の形態3によるRF電力増幅器の動作を、下記に説明する。
今、他の演算増幅器OPA2の出力電圧に応答するNチャンネルMOSトランジスタQN3のドレイン電流I11が減少すると、カレントミラーを構成するPチャンネルMOSトランジスタQP2、QP3、QP4のドレイン電流I11も減少する。その結果、PチャンネルMOSトランジスタQP3からドレイン電流I11が供給される参照トランジスタQN11のゲート・ソース間電圧VG1も減少する。
一方、PチャンネルMOSトランジスタQP4のドレイン電流I11の減少にもかかわらずPチャンネルMOSトランジスタQP5の差電流IDIFF(=I12−I11)の値は定電流値IREF/nに制御されているので、レプリカ増幅トランジスタQN12に流入するドレイン電流I12の電流値が増加してレプリカ増幅トランジスタQN12のゲート・ソース間電圧VG2も増加する。
非反転入力端子の増加した入力電圧VG2と反転入力端子の減少した入力電圧VG1に応答して演算増幅器OPA3の差出力電圧VDIFF(=n(VG2−VG1))のレベルが増大するので、他の演算増幅器OPA2の出力電圧も増大する。従って、他の演算増幅器OPA2の出力電圧に応答するNチャンネルMOSトランジスタQN3のドレイン電流I11が増加するので、最初のNチャンネルMOSトランジスタQN3のドレイン電流I11の減少が補償されることができる。
また更に、図5に示した本発明の実施の形態3によるRF電力増幅器の定量的な動作を、下記に詳細に説明する。
参照電流生成部4のPチャンネルMOSトランジスタQP1の基準電流IREFと電流検出部3のPチャンネルMOSトランジスタQP5の差電流IDIFF(=I12−I11)とに関して、次式の関係が成立する。
また演算増幅器OPA3の差出力電圧VDIFF(=n(VG2−VG1))と他の演算増幅器OPA2の反転入力端子に供給される参照基準電圧VREFとの関係から、次式の関係が成立する。
一方、レプリカ増幅トランジスタQN12の相互コンダクタンスGm2は、上記(16)式と上記(17)式とから次式のように求められる。
このように、図5に示した本発明の実施の形態3によるRF電力増幅器では、レプリカ増幅トランジスタQN12の相互コンダクタンスGm2の値を参照電流生成部4で温度依存性が極めて小さな抵抗R1に反比例の関係とすることが理解できる。
更に、図5に示した本発明の実施の形態3によるRF電力増幅器では、増幅トランジスタQN2の相互コンダクタンスも、レプリカ増幅トランジスタQN12の相互コンダクタンスGm2と同様に、参温度依存性が極めて小さな抵抗R1に反比例の関係となる。従って図5に示した本発明の実施の形態3によるRF電力増幅器でも、半導体製造プロセスのばらつきもしくは温度変動によるRF電力増幅器の利得の変動を軽減することができる。
[実施の形態4]
《実施の形態4のRF電力増幅器の構成》
図6は、本発明の実施の形態4によるRF電力増幅器の構成を示す図である。
図6に示した本発明の実施の形態4によるRF電力増幅器は、図1に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器と同様に、バイアス部1、増幅部2、電流検出部3、参照電流生成部4、電流比較部5とを具備する。
図6に示した本発明の実施の形態4によるRF電力増幅器のバイアス部1は、参照バイアス部1Aとレプリカ増幅部1Bとバイアス制御部1Cとを含んでいる。
またバイアス部1の参照バイアス部1Aは、第1参照トランジスタQN11Aと第2参照トランジスタQN11Bと含み、バイアス部1のレプリカ増幅部1Bはレプリカ増幅トランジスタQN12を含み、バイアス部1のバイアス制御部1CはPチャンネルMOSトランジスタQP1と抵抗R2と第1参照トランジスタQN11Aとを含み、増幅部2は増幅トランジスタQN2と抵抗Rinと入力容量Cinを含んでいる。尚、第1参照トランジスタQN11Aと第2参照トランジスタQN11Bとレプリカ増幅トランジスタQN12と増幅トランジスタQN2とは、各ソースが接地電位に接続されたNチャンネルMOSトランジスタである。増幅部2では、RF入力信号Pinは入力容量Cinを介して増幅トランジスタQN2のゲートに供給され、RF増幅出力信号Poutは増幅トランジスタQN2のドレインから生成される。第1参照トランジスタQN11Aと第2参照トランジスタQN11Bとのデバイスサイズレシオ(チャンネル幅W/チャンネル長Lの比)は1:n(n≧1)に設定され、第1参照トランジスタQN11Aとレプリカ増幅トランジスタQN12とのデバイスサイズレシオ(チャンネル幅W/チャンネル長Lの比)は1:n(n≧1)に設定され、第1参照トランジスタQN11Aと増幅トランジスタQN2とのデバイスサイズレシオ(チャンネル幅W/チャンネル長Lの比)も1:n(n≧1)に設定されている。
バイアス部1の参照バイアス部1Aの第1参照トランジスタQN11Aのゲートとドレインとが接続されることによって、第1参照トランジスタQN11Aはダイオード接続され、第1参照トランジスタQN11Aのゲート・ソース間電圧VG1は第2参照トランジスタQN11Bのゲートとバイアス制御部1Cの抵抗R2の一端とに供給される。抵抗R2の一端はバイアス部1の第1参照トランジスタQN11Aに接続され、抵抗R2の他端はバイアス制御部1CのPチャンネルMOSトランジスタMP1のドレインに接続されている。
電流検出部3は第1のカレントミラーのPチャンネルMOSペアトランジスタQP2、QP3と第2のカレントミラーのPチャンネルMOSペアトランジスタQP4、QP5とを含み、参照電流生成部4は演算増幅器OPA1とNチャンネルMOSトランジスタQN1と抵抗R1とを含むことで参照電流IRFFを流し、電流比較部5は電圧比較器としての演算増幅器OPA2と抵抗R3、R4とを含んでいる。
参照電流生成部4は演算増幅器OPA1の非反転入力端子には例えばバンドギャップ電圧等の電源電圧や温度の変動に対して安定化された基準電圧VREF0が供給され、NチャンネルMOSトランジスタQN1は演算増幅器OPA1の出力電圧に応答することで参照電流IRFFを流し、抵抗R1の電圧降下は演算増幅器OPA1の反転入力端子に供給される。抵抗R1の電圧降下は基準電圧VREF0と等しく制御されることによって、参照電流IRFFの電流値が設定される。
参照電流生成部4の参照電流IRFFは、カレントミラーのPチャンネルMOSペアトランジスタQP7、QP6を介して電流比較部5の抵抗R3に供給され、抵抗R3の両端間に発生する参照電圧VREF1は演算増幅器OPA2の反転入力端子に供給される。電流比較部5の抵抗R4には電流検出部3のPチャンネルMOSトランジスタQP5から差電流IDIFF(=I12−I11)が供給され、抵抗R4の両端間に発生する差電圧VDIFFは演算増幅器OPA2の非反転入力端子に供給される。
電流比較部5の演算増幅器OPA2の出力信号はPチャンネルMOSトランジスタQP1のゲートに供給され、PチャンネルMOSトランジスタQP1のドレインのフィードバック電流IFBが決定される。更にこのフィードバック電流IFBによって、抵抗R2のレベルシフト制御電圧+ΔVGとバイアス部1の第1参照トランジスタQN11Aのゲート・ソース間電圧VG1が決定される。抵抗R2の一端には第1参照トランジスタQN11Aのゲート・ソース間電圧VG1が供給され、抵抗R2の他端の電圧+ΔVG+VG1はレプリカ増幅トランジスタQN12と増幅トランジスタQN2の両ゲートにゲート・ソース間電圧VG2として供給される。
ゲート・ソース間電圧VG1に応答した第2参照トランジスタQN11Bのドレイン電流I11とゲート・ソース間電圧VG2に応答したレプリカ増幅トランジスタQN12のドレイン電流I12とは、電流検出部3の第1のカレントミラーのPチャンネルMOSペアトランジスタQP2、QP3に供給される。従って、電流検出部3の第2のカレントミラーのPチャンネルMOSペアトランジスタQP4、QP5には差電流IDIFF(=I12−I11)が流れ、抵抗R4の両端間に発生する差電圧VDIFFの電圧値が決定される。
電流比較部5とPチャンネルMOSトランジスタQP1によるフィードバック作用によって、参照電流IRFFと差電流IDIFF(=I12−I11)とは等しい電流レベルに制御され、参照電圧VREF1と差電圧VDIFFとは等しい電圧レベルに制御される。参照電流IRFFよりも差電流IDIFF(=I12−I11)が低下して、参照電圧VREF1よりも差電圧VDIFFが低下すると、電流比較部5の演算増幅器OPA2の出力電圧は低下して、PチャンネルMOSトランジスタQP1のドレインのフィードバック電流IFBが増加する。フィードバック電流IFBの増加に応答して第1参照トランジスタQN11Aのゲート・ソース間電圧VG1が増加して、バイアス部1の第2参照トランジスタQN11Bのドレイン電流I11が増加する。レプリカ増幅トランジスタQN12のドレイン電流I12も増加するが、ドレイン電流I11の増加量よりも、ドレイン電流I12の増加量が大きくなる。従って、差電流IDIFF(=I12−I11)は参照電流IRFFと等しいレベルまで増加するので、最初の差電流IDIFF(=I12−I11)の減少が補償されることができる。
また更に、図6に示した本発明の実施の形態4によるRF電力増幅器の定量的な動作を、下記に詳細に説明する。
まず、参照電流生成部4の演算増幅器OPA1の非反転入力端子に供給される基準電圧VREF0と電流比較部5の演算増幅器OPA2の反転入力端子に供給される参照電圧VREF1との間に、次式の関係が得られる。
バイアス部1の第2参照トランジスタQN11Bのドレイン電流I11の値とレプリカ増幅トランジスタQN12のドレイン電流はI12の値とは、それぞれ次式で与えられる。
一方、PチャンネルMOSトランジスタQP1のフィードバック電流IFBと第1参照トランジスタQN11Aのゲート・ソース間電圧VG1およびレプリカ増幅トランジスタQN12のゲート・ソース間電圧VG2との間には、次式の関係が成立する。
上記(19)、(20)、(21)、(22)、(23)、(24)式から、差電流IDIFF(=I12−I11)は次式のように求められる。
一方、上記(25)式を利用すると、参照電圧VREF1と差電圧VDIFFとは等しい電圧レベルに制御されるので、次式の関係が得られる。
上記(23)式と上記(28)式とから、次式が得られる。
一方、第2参照トランジスタQN11Bの相互コンダクタンスGm1は、上記(19)式と上記(29)式とから、次式のように求められる。
上記(30)式より、MOSトランジスタのチャンネルコンダクタンスβの変動による相互コンダクタンスGm1への影響は、上記(3)式の場合の1/2乗よりも低い1/3乗に抑圧されることが理解される。
また更に上記(30)式より、抵抗の変動による相互コンダクタンスGm1への影響は、上記(3)式の場合の電流(抵抗値に逆比例)の1/2乗よりも低い1/3乗に同様に抑圧されることが理解される。
[実施の形態5]
《実施の形態5のRF電力増幅器の構成》
図7は、本発明の実施の形態5によるRF電力増幅器の構成を示す図である。
図7に示した本発明の実施の形態5によるRF電力増幅器は、図4に示した本発明の実施の形態2と同様に、バイアス部1、増幅部2、電流検出部3、電流比較部5、参照電圧・電流変換部6を具備する。また図7に示した本発明の実施の形態5によるRF電力増幅器は、電力制御電圧・電流変換部7と電流2乗回路8とを更に具備している。更に、図7に示した本発明の実施の形態5によるRF電力増幅器に含まれるバイアス部1、増幅部2、電流検出部3、電流比較部5、参照電圧・電流変換部6は、図4に示したRF電力増幅器に含まれたそれらと全く同一の構成とされている。
図7に示す本発明の実施の形態5によるRF電力増幅器では、増幅部2はRF電力増幅器を構成する多段RF増幅回路の後段増幅回路である。図7のRF電力増幅器の低パワー時および中間パワー時での電力付加効率(PAE:Power Added Efficiency)を改善するために、特に電流2乗回路8が配置されている。
携帯電話端末と基地局の通信距離に略比例した出力電力制御電圧VapcがRFIC等のRF信号処理ユニットから電力制御電圧・電流変換部7の入力端子に供給されることによって、電力制御電圧・電流変換部7の出力端子から出力電力制御電流Iapcが生成される。
電力制御電圧・電流変換部7から生成される出力電力制御電流Iapcは電流2乗回路8の入力端子702に供給されることによって、出力電力制御電流Iapcの2乗に比例した出力電流Ioutが電流2乗回路8の出力端子703から生成される。この出力電流Ioutは、電流比較部5へ参照電流IRFFのとして電流比較部5の抵抗R3に供給される。
出力電力制御電流Iapcの正比例した出力電流Ioutが電流比較部5の抵抗R3に供給される場合と比較して、出力電力制御電流Iapcの2乗に比例した出力電流Ioutが供給されることにより低パワー時および中間パワー時での電力付加効率(PAE)を著しく改善することができる。
以下に、図7に示す本発明の実施の形態5によるRF電力増幅器の構成と動作とを詳細に説明する。
電力制御電圧・電流変換部7は、演算増幅器OPA3と抵抗R5とPチャンネルMOSペアトランジスタQP9、QP10とから構成されている。演算増幅器OPA3の反転入力端子には出力電力制御電圧Vapcが供給され、PチャンネルMOSペアトランジスタQP9、QP10のゲートは演算増幅器OPA3の出力電圧によって駆動され、PチャンネルMOSペアトランジスタQP9、QP10には出力電力制御電流Iapcが流れる。出力電力制御電流Iapcによる抵抗R5の電圧降下は演算増幅器OPA3の非反転入力端子に供給されるので、次の関係が成立する。
図7に示す電流2乗回路8は、電流2乗基本回路710によって構成されている。電流2乗回路8は、入力端子702から供給される出力電力制御電流Iapcの2乗に比例する出力電流Ioutを出力端子703から生成する機能を有している。
電流2乗基本回路710は、略等しいチャンネル長Lpと略等しいチャンネル幅Wpとを持つ5個のPチャネルMOSトランジスタ713、714、715、716、717と略等しいチャンネル長Lnを持つ2個のNチャンネルMOSトランジスタ711、712で構成されている。NチャンネルMOSトランジスタ712のチャンネル幅Wn712は、NチャンネルMOSトランジスタ711のチャンネル幅Wn711の略2倍に設定されている。
従って、バイアス供給端子701に供給されるバイアス電圧Vbiasに応答して、バイアス電流I0とその2倍のバイアス電流2I0とがNチャンネルMOSトランジスタ711とNチャンネルMOSトランジスタ712とにそれぞれ流れるものである。更に、カレントミラー接続された2個のPチャネルMOSトランジスタ716、717には等しい電流I1が流れ、またゲートとドレインとがダイオード接続されたPチャネルMOSトランジスタ716に接続されたPチャネルMOSトランジスタ718には電流入力端子702に供給される出力電力制御電流Iapcに応答して電流I2が流れるものである。
ダイオード接続のPチャネルMOSトランジスタ716の両端間電圧をV1として、PチャネルMOSトランジスタ718のソース・ドレイン間電圧をV2として、PチャネルMOSトランジスタ717のソース・ドレイン間電圧をV3として、5個のPチャネルMOSトランジスタ713〜717と2個のNチャンネルMOSトランジスタ711、712のしきい値電圧とチャンネル・コンダクタンスとをそれぞれVTHとβとして、電流2乗回路8の電流2乗基本回路710の出力電流をISQRとすると、次の関係が得られる。
式(34)と式(36)とから、電流2乗回路8の電流2乗基本回路710の出力電流ISQRは次式(37)のように求められる。
式(33)と式(34)とから、電流I1と電流I2との和は次式(38)のように求められる。
式(34)と式(38)とから、電流I1と電流I2との和は次式(39)のように求められる。
式(33)と式(34)とから、電流I2と電流I1との差である入力端子702の出力電力制御電流Iapcは、次式(40)のように求められる。
式(35)と式(40)とから、次式(41)が求められる。
式(41)から、次式(42)が求められる。
式(32)から、次式(43)が求められる。
式(42)と式(43)とを式(39)に代入することによって、次式(44)が求められる。
式(36)と式(44)から、電流2乗回路8の電流2乗基本回路710の出力電流ISQRは次式(45)のように求められる。
この式(45)から、電流2乗基本回路710の出力電流ISQRの値はバイアス電流I0の値に反比例する一方、電流入力端子702の入力出力電力制御電流Iapcの値の2乗に比例して連続的に変化するものであることが理解される。
上記の式(45)に従った値を持つ電流2乗基本回路710の出力電流ISQRはカレントミラーのNチャンネルMOSトランジスタ731、733と2個のPチャネルMOSトランジスタによって構成されたカレントミラー735とを介して電流2乗回路8の出力端子703から電流2乗回路8の出力電流Ioutとして出力される。
図7に示す本発明の実施の形態5によるRF電力増幅器の増幅部2がRF電力増幅器を構成する多段RF増幅回路の前段増幅回路として使用される場合は、電流2乗回路8が省略されるものとなる。
この場合には、電力制御電圧・電流変換部7から生成される出力電力制御電流Iapcは、電流比較部5へ参照電流IRFFのとして電流比較部5の抵抗R3に直接供給される。従って、出力電力制御電流Iapcの正比例した出力電流Ioutが電流比較部5の抵抗R3に供給されるので、前段増幅回路としての増幅部2の増幅利得が増大して比較的大振幅のRF増幅信号を後段増幅回路の入力に注入することができる。
尚、下記参考文献1には、アナログCMOS回路を使用して上記の式(45)に従って入力電流の値の2乗に比例する出力電流を生成することが記載されている。
[参考文献1] KLAAS. BULT et al,“A CLASS of Analog CMOS Circuits Based on the Square−Law Characteristic of an MOS Transistor in Saturation”, IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS, VOL.SC−22, NO.3, JUNE 1987, PP.357−365.
[実施の形態6]
《実施の形態6のRF電力増幅器の構成》
図8は、本発明の実施の形態6によるRF電力増幅器の構成を示す図である。
図8に示すRF電力増幅器では、図7の実施の形態5で説明したように、多段増幅器の前段増幅回路のバイアス電流は出力電力制御電圧Vapcの正比例した特性とされ、後段増幅回路のバイアス電流は出力電力制御電圧Vapcの2乗に比例したものとされる。
すなわち、RF電力増幅器640の初段の第1段増幅器の増幅トランジスタ641のバイアス電流は出力電力制御電圧Vapcの1次(1乗)の連続関数となり、中間段の第2段増幅器の増幅トランジスタ642のバイアス電流は出力電力制御電圧Vapcの1次(1乗)の連続関数となり、最終段の第3段増幅器の増幅トランジスタ643のバイアス電流は出力電力制御電圧Vapcの2乗の連続関数となるものである。最終段の第3段増幅器の増幅トランジスタ643のバイアス電流を出力電力制御電圧Vapcの2乗の連続関数とする際には、図7の実施の形態5で説明した電流2乗基本回路710を含む電流2乗回路8が利用される。
[実施の形態7]
《RFパワーモジュールの構成》
図9は、本発明の実施の形態7によるRFパワーモジュールの構成を示す図である。
図9に示すRFパワーモジュールは、GSM方式のローバンドとハイバンドとの2つの周波数帯域(GSM900:880MHz〜915MHzとDCS1800:1710MHz〜1785MHz)に対応するものである。従って、図9に示すRFパワーモジュールは、ローバンドのGSM900の周波数帯域に対応するRF電力送信回路910と、ハイバンドのDCS1800の周波数帯域に対応するRF電力送信回路920と、送信出力電力フィードバック回路930と、信号経路切換回路940と、出力電力制御回路915とによって構成されている。このRFパワーモジュールには、例えば、送信信号入力端子900、904にRF送信信号Pin_GSM、Pin_DCSを供給する変調回路が接続され、受信信号出力端子905、907のRF受信信号Rx_DCS、Rx_GSMを復調する復調回路が接続され、制御端子901、902、903に制御信号を生成するベースバンド信号処理半導体集積回路が接続されて、アンテナ端子906に送受信アンテナが接続されることによって、携帯電話端末が構成されるものである。
ローバンドのGSM900の周波数帯域に対応するRF電力送信回路910はRF電力増幅器911と出力整合回路912と電力結合器913と低域通過フィルタ914と出力電力制御回路915とによって構成される一方、ハイバンドのDCS1800の周波数帯域に対応するRF電力送信回路920はRF電力増幅器921と出力整合回路922と電力結合器923と低域通過フィルタ924と出力電力制御回路915とによって構成されている。
また、ローバンド対応のRF電力送信回路910とハイバンド対応のRF電力送信回路920とに接続された送信出力電力フィードバック回路930は、電力検波回路932、933と誤差増幅器934と回路切換器931とによって構成されている。更に、ローバンド対応のRF電力送信回路910とハイバンド対応のRF電力送信回路920とに接続された信号経路切換回路940は、アンテナスイッチ941と静電放電フィルタ942、943、944とによって構成されている。
図9に示したRFパワーモジュールでは、GSM900の周波数帯域に対応するRF電力送信回路910に含まれるRF電力増幅器911の送信出力電力レベルとDCS1800の周波数帯域に対応するRF電力送信回路920に含まれるRF電力増幅器921の送信出力電力レベルとは、送信出力電力フィードバック回路930の誤差増幅器934に接続された出力電力制御回路915により制御される。すなわち、送信出力電力フィードバック回路930の誤差増幅器934の出力端子916の出力電力制御電圧Vapcが出力電力制御回路915の制御入力端子に供給されることにより、ローバンド対応のRF電力増幅器911およびハイバンド対応のRF電力増幅器921の送信出力電力レベルが制御されるものである。
ローバンド対応のRF電力増幅器911およびハイバンド対応のRF電力増幅器921の各RF電力増幅器は、図1に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器、または図4に示した本発明の実施の形態2によるRF電力増幅器、または図5に示した本発明の実施の形態3によるRF電力増幅器、または図6に示した本発明の実施の形態4、または図7に示した本発明の実施の形態5、または図8に示した本発明の実施の形態6によるRF電力増幅器のいずれかによって構成されることが可能である。送信出力電力フィードバック回路930と出力電力制御回路915とは、ローバンド対応のRF電力送信回路910とハイバンド対応のRF電力送信回路920によって共用されることが可能であるので、RFパワーモジュールの小型化が可能となるものである。
RF電力増幅器911、921の出力端子に接続された出力整合回路912、922は、送受信アンテナにおける負荷インピーダンス不整合によるRF送信信号の反射損失を最小化する機能を有している。電力結合器913、923は、出力整合回路912、922から供給されるRF送信信号の一部を送信出力電力フィードバック回路930へ供給する一方、残りの大部分のRF送信信号を低域通過フィルタ914、924へ供給する機能を有している。低域通過フィルタ914、924は、RF電力増幅器911、921によるRF送信信号の増幅の際に生じる高調波信号を減衰する機能を有している。電力検波回路932、933は、電力結合器913、923から供給されるRF信号電力に対応する検波出力電圧Vdetを誤差増幅器934へ供給する機能を有している。誤差増幅器934は、制御端子903から供給される外部制御電圧Vrampと電力検波回路932、933の検波出力電圧Vdetとの差を増幅して、その差が最小化されるような出力電力制御電圧Vapcを生成する機能を有している。更に、静電放電フィルタ942、943、944は、外部端子907、906、905の静電気によるRFパワーモジュールの破壊を防止して不要信号の減衰を行う機能を有している。アンテナスイッチ941は、送信動作と受信動作とを行い、更にGSM900周波数帯域の送受信動作とDCS1800周波数帯域の送受信動作とに応答してアンテナ端子906から生成あるいは供給されるRF信号の信号伝達経路を切り換える機能を有している。すなわち、GSM900周波数帯域の送信時にはRF電力送信回路910から出力されるRF信号がアンテナ端子906へ伝達され、GSM900周波数帯域の受信時にはアンテナ端子906から供給されるRF信号が受信信号出力端子907へ伝達され、DCS1800周波数帯域の送信時にはRF電力送信回路920の出力から生成されるRF信号がアンテナ端子906へ伝達され、DCS1800周波数帯域の受信時はアンテナ端子906から供給される信号が受信信号出力端子905へ伝達される機能を有している。回路切換器931は、制御端子901、902に供給される送受信動作切換信号とローバンド/ハイバンド送信周波数帯選択信号とに応答して、出力電力制御回路915と電力検波回路932、933と誤差増幅器934とアンテナスイッチ941のそれぞれの動作を切り換える機能を有している。
この実施の形態によるRFパワーモジュールは、送信動作時には、送信信号入力端子900、904から供給されるローバンド/ハイバンドの周波数帯域のRF送信信号をRF電力送信回路910、920にて所望の出力電力レベルまで電力増幅した後に、信号経路切換回路940を介して、アンテナ端子906からRF送信信号を生成する。また送信動作時の出力電力のレベル制御は、制御端子903から供給される外部制御電圧Vrampによって誤差増幅器934の出力端子916の出力電力制御電圧Vapcを間接的に変化させることによって実行される。更に、受信動作時には、アンテナ端子906から供給されるローバンド/ハイバンドの周波数帯域のRF受信信号は、受信信号出力端子907、905へ伝達される。
ローバンド側のGSM900の周波数帯域のRF送信信号の送信動作時には、ローバンド対応のRF電力送信回路910と送信出力電力フィードバック回路930と出力電力制御回路915とはフィードバックループを構成する。従って、制御端子903の外部制御電圧Vrampと電力検波回路932の検波出力電圧Vdetとの差が最小化されるように、出力電力制御電圧Vapcに応答して出力電力制御回路915はローバンド対応のRF電力送信回路910に含まれるRF電力増幅器911の送信出力電力レベルが制御される。その結果、電源電圧や温度変動や送受信アンテナの負荷の変動等の外部環境の変化によるローバンド対応のRF電力送信回路910の送信出力レベルの変動が軽減されることが可能となる。
ハイバンド側DCS1800の周波数帯域のRF送信信号の送信動作時には、ハイバンド対応のRF電力送信回路920と送信出力電力フィードバック回路930と出力電力制御回路915とはフィードバックループを構成する。従って、制御端子903の外部制御電圧Vrampと電力検波回路933の検波出力電圧Vdetとの差が最小化されるように、出力電力制御電圧Vapcに応答して出力電力制御回路915はハイバンド対応のRF電力送信回路920に含まれるRF電力増幅器921の送信出力電力レベルが制御される。その結果、電源電圧や温度変動や送受信アンテナの負荷の変動等の外部環境の変化によるハイバンド対応のRF電力送信回路920の送信出力レベルの変動が軽減されることが可能となる。
尚、図9に示したRFパワーモジュールのRF電力送信回路910、920に含まれる出力整合回路912、922と電力結合器913、923と低域通過フィルタ914、924と、送信出力電力フィードバック回路930と、信号経路切換回路940の具体的な回路構成は多種多様な構成を採用することが可能であるので、ここでは説明を省略する。
以上、本発明者によってなされた発明を種々の実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば以上の実施の形態では、増幅部2の増幅トランジスタQN2のゲートはレプリカ増幅部1Bのレプリカ増幅トランジスタQN12のゲートと抵抗Rinを介して接続されていた。しかし、これに限定されるものではなく、増幅部2の増幅トランジスタQN2のゲートは、バイアス部1の参照バイアス部1Aの参照トランジスタQN11、第1参照トランジスタQN11A、第2参照トランジスタQN11Bのいずれかのゲートと抵抗Rinを介して接続されることもできる。
以上の実施の形態では主としてローバンドのGSM900、ハイバンドのDCS1800の周波数帯域に関して適用した例を説明したが、本発明はこれらに限定して適用した場合に効果が得られるものではない。すなわち、ローバンド側のGSM850やハイバンド側のPCS1900などのGSMの別の周波数帯域に、本発明を適用することが可能である。
例えば、RF電力増幅器としてCMOSFET(Complementally MOSFET)を使用したモノリシック集積回路で構成されることが可能であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、上述の実施の形態ではRF電力増幅器の増幅トランジスタとバイアス用トランジスタはMOSトランジスタ(MOSFET)を使用したが、シリコンプロセスでは高周波特性に優れたLDMOSFET(Laterally Diffused MOSFET)を使用することが望ましい。また、シリコン以外の化合物半導体としては、MESFET(Metal Semiconductor Field Effect Transistor)、HEMT(High Electron Mobility Transistor)等の電界効果トランジスタを使用することが可能である。このように化合物半導体の電界効果トランジスタを使用する際には、RF電力増幅器の増幅トランジスタ、バイアス用トランジスタをGaAs等の化合物半導体チップに構成する一方、出力電力制御回路をCMOSシリコン半導体チップに構成することによってRFパワーモジュールが形成されることが可能である。
また、RF電力増幅器の増幅トランジスタとバイアス用トランジスタとしては、上述のような種々の電界効果トランジスタだけではなく、シリコンバイポーラトランジスタとSiGe、GaAs、InGaP等のヘテロ接合のバイポーラトランジスタを使用することができる。これらのバイポーラトランジスタの製造プロセスで、ベース・エミッタ不純物濃度のばらつきによってベースやエミッタの直列抵抗成分がばらつきを示して、バイポーラトランジスタのコンダクタンスがばらつく場合にも、本発明を適用することが可能である。尚、バイポーラトランジスタが使用される場合には、デバイスサイズレシオはトランジスタのバイポーラエミッタ面積AEで設定されるものである。
また、本発明は、GSMやWCDMA(Wide-band Code Division Multiple Access) 以外にも、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(long Term Evolution)等の他の通信方式や他の周波数帯域に使用されるRF電力増幅器に広く採用することが可能である。
更に本発明の増幅器は、携帯端末機器等の通信機器の送信システムのRF電力増幅器に限定されるのではなく、通信機器の受信システムの初段低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)や受信システムの後段の可変増幅器(VGA:Variable Gain Amplifier)等にも広く適用することも可能である。