JP2010261193A - 耐震診断システム - Google Patents

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JP2010261193A JP2009112144A JP2009112144A JP2010261193A JP 2010261193 A JP2010261193 A JP 2010261193A JP 2009112144 A JP2009112144 A JP 2009112144A JP 2009112144 A JP2009112144 A JP 2009112144A JP 2010261193 A JP2010261193 A JP 2010261193A
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Abstract

【課題】 建物の耐震性能を簡単に取得できるような耐震診断システムを提供する。
【解決手段】 建物1の2階に配置されてそこに伝わる常時微動に起因する振動の加速度を検出して検出信号を出力するための振動検出器21、22と、これらの振動検出器からの検出信号を受けて予め定められた解析処理を行う解析器15を含む。解析器は、解析処理として、各検出信号について加速度値と振動の周波数に関する解析を行って前記加速度値がピーク加速度値を示す時の前記振動の周波数を建物の動的共振周波数fとして検出する。解析器は次に、検出した前記動的共振周波数fと予め与えられている重力の加速度g(=980cm/sec)を用い、予め定められた以下の式、Hd=(2πf/gを用いて建物の動的評点Hdを算出する。解析器は更に、動的評点Hdを、南北方向及び東西方向について算出した後、建物の東西南北のそれぞれの壁について算出する。
【選択図】 図1

Description

本発明は建物、特に住宅家屋の耐震性能を診断する耐震診断システムに関する。
通常、建物の建築に際しては耐震設計が採用される。一般住宅家屋でも耐震構造に加えて、免震構造や減震構造を採用した建築が増えつつあるが、免震構造や減震構造は高価であることから、その増加率は新築住宅の増加率に比べれば低い。
想定される震度を考慮した耐震構造を採用する場合であっても、住宅が構築される地盤には一種、二種、三種の種別があり、その種別に応じた設計が必要である。しかしながら、このようにして設計された値はあくまでも一般式に基づく設計値であり、設計値が基準を満足していれば安全かと言えば、必ずしもそうであるとは言えない。
このような現状から、新築住宅の購買者には、購入した住宅が実際にどの程度の耐震性能を持つのかを知りたいという欲求がある。つまり、これまでの一般式に基づいて求められる耐震性能は、実際の住宅構造や地盤状況を考慮したものではないので、あくまでも目安程度のものに過ぎないという心配があるからである。
一方、耐震性能数値の取得欲求は新築住宅の購買者に限らず、現在住んでいる住宅、いわば中古住宅の所有者も同様であるが、設計値をそのまま一般式に当てはめて計算することは難しい。
「耐震・免震・制震のはなし」第78−79頁、斉藤大樹著、2005年7月26日、日刊工業新聞社発行 「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」第6頁、国土交通省住宅局住宅生産課監修
建物の耐震性能を示す数値として、例えば耐震強度がある。耐震強度は、建物に対して様々な計測を行い、その計測結果を用いて計算で算出することができる。しかしながら、計測作業は煩雑であり、耐震強度計算も1つの計算式で与えられるものではなく、複雑である。
このような問題点に鑑み、本発明は、建物の耐震性能を簡単に取得できるような耐震診断システムを提供しようとするものである。
本発明はまた、新築の建物のみならず、中古の建物にも適用可能な耐震診断システムを提供することにある。
本発明は更に、建物の耐震性能が不足する場合に補強の目安を簡単に知ることのできる耐震性能診断システムを提供することにある。
本発明の第1の態様による耐震診断システムは、建物の2階に配置されてそこに伝わる常時微動に起因する振動の加速度を検出して第1の検出信号を出力するための第1の振動検出器と、前記第1の検出信号を受けて予め定められた解析処理を行う解析器を含み、前記解析器は、前記解析処理として、前記第1の検出信号についてフーリエ変換を行なってから加速度値と振動の周波数に関する解析を行って前記加速度値がピーク加速度値を示す時の前記振動の周波数を建物の動的共振周波数fとして検出し、前記解析器は更に、検出した前記動的共振周波数fと予め与えられている重力の加速度g(=980cm/sec)を用い、予め定められた以下の式、
Hd=(2πf/g
を用いて建物の動的評点Hdを算出することを特徴とする。
本発明の第2の態様による耐震診断システムは、建物の2階に配置されてそこに伝わる常時微動に起因する振動の加速度を検出して第1の検出信号を出力するための第1の振動検出器と、2階より下の当該建物内あるいは建物外に配置されてそこに伝わる常時微動に起因する振動の加速度を検出して第2の検出信号を出力するための第2の振動検出器と、前記第1、第2の検出信号を受けて予め定められた解析処理を行う解析器を含み、前記解析器は、前記第1、第2の検出信号のそれぞれについてフーリエ変換を行なってから振動の周波数に関する解析を行って第1、第2の解析結果を得ると共に、前記第2の解析結果に対する前記第1の解析結果の比がピーク加速度値を示す時の前記振動の周波数を建物の動的共振周波数fとして検出し、前記解析器は更に、検出した前記動的共振周波数fと予め与えられている重力の加速度g(=980cm/sec)を用い、予め定められた以下の式、
Hd=(2πf/g
を用いて建物の動的評点Hdを算出することを特徴とする。
上記第1、第2の態様による耐震診断システムのいずれにおいても、前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hdを用い、予め定められた以下の式、
Md=2Hd−1
を用いて建物の動的壁率Mdを算出する。
上記第1、第2の態様による耐震診断システムのいずれにおいても、前記解析器は更に、算出した前記動的壁率Mdと、予め与えられている建物の単位面積あたりの壁量R(m/m)、建物の1階の面積S(m)、及び建物基礎の上面から2階床面までの階高h(m)を用い、予め定められた以下の式、
Kd=(240×R×Md×S)/h
を用いて建物の動的剛性Kdを算出する。
上記第1、第2の態様による耐震診断システムのいずれにおいても、前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hd及び算出した前記動的剛性Kdと、予め与えられている建物の1m当たりの上部荷重Wu(kN/m)及び前記面積Sを用い、予め定められた以下の式、
τ=(Hd×Wu×S)/Kd
あるいは、算出した前記動的評点Hd及び算出した前記動的壁率Mdと、前記壁量R及び前記階高hを用い、予め定められた以下の式、
τ’=(Hd×Wu×h)/(240×R×Md)
を用いて建物の動的振動増幅率τ’を算出する。
第1の態様による耐震診断システムにおいては、前記建物の2階床面において南北方向として規定される線分上の北寄り、南寄り、それらの中間のうちの少なくとも北寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記解析器による解析が行われることで北側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdXが検出されると共に、前記南北方向として規定される線分上北寄り、南寄り、それらの中間のうちの少なくともの南寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記解析器による解析が行われることで南側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdXが検出される一方、前記建物の2階床面において東西方向として規定される線分上の東寄り、西寄り、それらの中間のうちの少なくとも東寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記解析器による解析が行われることで東側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdYが検出されると共に、前記東西方向として規定される線分上の東寄り、西寄り、それらの中間のうちの少なくとも西寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記解析器による解析が行われることで西側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdYが検出され、前記解析器は、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdXを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)として算出すると共に、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdYを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdY、加速度の大きさαdY(h/120)として算出し、前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)に対し、前記検出された北側のピーク加速度値α及び南側のピーク加速度値αを用いて北側及び南側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出すると共に、前記検出された東側のピーク加速度値α及び西側のピーク加速度値αを用いて東側及び西側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出することができる。
第1の態様による耐震診断システムにおいてはまた、前記建物の2階床面において南北方向として規定される線分上の北寄り、南寄り、それらの中間のうちの少なくとも北寄り及び南寄りの一方に前記第1の振動検出器、他方に第2の振動検出器がそれぞれ配置されて前記第1の検出信号及び前記第2の振動検出器からの第2の検出信号に対して前記解析器による解析が行われることで北側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdXが検出されると共に、南側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdXが検出される一方、前記建物の2階床面において東西方向として規定される線分上の東寄り、西寄り、それらの中間のうちの少なくとも東寄り及び西寄りの一方に前記第1の振動検出器、他方に前記第2の振動検出器がそれぞれ配置されて前記第1の検出信号及び前記第2の検出信号に対して前記解析器による解析が行われることで東側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdYが検出されると共に、西側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdYが検出され、前記解析器は、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdXを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)として算出すると共に、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdYを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdY、加速度の大きさαdY(h/120)として算出し、前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)に対し、前記検出された北側のピーク加速度値α及び南側のピーク加速度値αを用いて北側及び南側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出すると共に、前記検出された東側のピーク加速度値α及び西側のピーク加速度値αを用いて東側及び西側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出することが望ましい。
一方、第2の態様による耐震診断システムにおいては、前記建物の2階床面において南北方向として規定される線分上の北寄り、南寄り、それらの中間のうちの少なくとも北寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記第1、第2の検出信号に対する前記解析器による解析が行われることで北側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdXが検出されると共に、前記南北方向として規定される線分上の北寄り、南寄り、それらの中間のうちの少なくとも南寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記第1、第2の検出信号に対する前記解析器による解析が行われることで南側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdXが検出される一方、前記建物の2階床面において東西方向として規定される線分上の東寄り、西寄り、それらの中間のうちの少なくとも東寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記第1、第2の検出信号に対する前記解析器による解析が行われることで東側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdYが検出されると共に、前記東西方向として規定される線分上の東寄り、西寄り、それらの中間のうちの少なくとも西寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記第1、第2の検出信号に対する前記解析器による解析が行われることで西側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdYが検出され、前記解析器は、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdXを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)として算出すると共に、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdYを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdY、加速度の大きさαdY(h/120)として算出し、前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)に対し、前記検出された北側のピーク加速度値α及び南側のピーク加速度値αを用いて北側及び南側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出すると共に、前記検出された東側のピーク加速度値α及び西側のピーク加速度値αを用いて東側及び西側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出することができる。
第2の態様による耐震診断システムにおいてはまた、前記建物の2階床面において南北方向として規定される線分上の北寄り、南寄り、それらの中間のうちの少なくとも北寄り及び南寄りの一方に前記第1の振動検出器、他方に第3の振動検出器がそれぞれ配置されて前記第1、第2の検出信号に対する前記解析器による解析と前記第2の検出信号、前記第3の振動検出器からの第3の検出信号に対する前記解析器による解析が行われることで北側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdXが検出されると共に、南側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdXが検出される一方、前記建物の2階床面において東西方向として規定される線分上の東寄り、西寄り、それらの中間のうちの少なくとも東寄り及び西寄りの一方に前記第1の振動検出器、他方に前記第3の振動検出器がそれぞれ配置されて前記第1、第2の検出信号に対する前記解析器による解析と前記第2、第3の検出信号に対する前記解析器による解析が行われることで東側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdYが検出されると共に、西側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdYが検出され、
前記解析器は、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdXを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)として算出すると共に、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdYを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdY、加速度の大きさαdY(h/120)として算出し、前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdXに対し、前記検出された北側のピーク加速度値α及び南側のピーク加速度値αを用いて北側及び南側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出すると共に、前記検出された東側のピーク加速度値α及び西側のピーク加速度値αを用いて東側及び西側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出することが望ましい。
本発明によれば、建物自体の持つ耐震性能を計測し、より効果的で安価に耐震補強のできる手法が提供される。すなわち、本発明による耐震診断システムは、まず、その建物の持つ固有の共振周波数、評点、壁率、剛性、振動増幅率を解析器を使用して正確に算出、表示できる。これにより、顧客は自身の建物の周りで発生する近い将来の地震に対し建物が倒壊しないだけの十分安心できる補強を考えることができる。補強は、壁の補強、筋交の補強、梁の補強、床板の補強、重い屋根を軽い屋根に代える間接的な補強方法のいずれも事前に評価し、実施することが可能である。
本発明による耐震診断システムの第1の実施形態の構成を示すブロック図である。 2階建て住宅の場合の第1の実施形態における振動検出器の設置形態及び建物上部荷重の定義を説明するための図である。 2階建て住宅の場合の第1の実施形態における振動検出器の設置形態を説明するための平面図である。 第1の実施形態において検出される加速度と動的共振周波数の関係を示した図である。 本発明による耐震診断システムの第2の実施形態の構成を示すブロック図である。 2階建て住宅の場合の第2の実施形態における振動検出器の設置形態を説明するための平面図である。 第2の実施形態における解析処理について説明するための図である。 本発明による耐震診断システムの第3の実施形態の構成を示すブロック図である。 2階建て住宅の場合の第3の実施形態における振動検出器及び加振機の設置形態を説明するための図である。 2階建て住宅の場合の第3の実施形態における振動検出器の設置形態を説明するための平面図である。
(第1の実施形態)
はじめに、地盤中を伝搬する振動について雑音の比較的少ない地域、すなわち交通量の激しい道路や、鉄道線路、あるいは振動発生を伴う工場等に隣接していない地域の戸建住宅について耐震性能診断を行なうのに適した第1の実施形態について説明する。
第1の実施形態は、地盤中で常時発生、伝達されている常時微動と呼ばれる振動成分を利用して戸建住宅の共振周波数を検出する。簡単に言えば、地盤中を伝わる微弱な振動について周波数分析を行い、どの周波数の振動に対して戸建住宅が共振するかを計測する。なお、戸建住宅の共振周波数は、計測によらずに、設計図面を参照して周知の計算方法で算出することもできる。そこで、計測により得られる共振周波数と、計算により算出される共振周波数を区別するために、以下では、計測により得られる共振周波数を動的共振周波数と呼び、計算により算出される共振周波数を設計共振周波数と呼ぶ。
さて、上記の動的共振周波数、設計共振周波数を使用して予め定められた演算処理を行なって、耐震性能判断に必要な評点、壁率、剛性、振動増幅率等を算出する。評点、壁率、剛性、振動増幅率については後述するが、共振周波数と同様、動的共振周波数に基づいて算出される場合には動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率と呼び、設計共振周波数に基づいて算出される場合には設計評点、設計壁率、設計剛性、設計振動増幅率と呼ぶ。
図1を参照して、第1の実施形態による耐震診断システムは、加速度を検出することのできる第1、第2の振動検出器21、22、これらの出力信号である第1、第2の検出信号を増幅するための第1、第2の増幅器13、24、アナログ信号である検出信号をディジタルの加速度信号に変換する第1、第2のA/D変換器14、25、ディジタルの加速度信号に対して解析を行う解析器15、計算に際して必要な既知の数値を入力するためのパラメータ入力部19を含む。振動検出器は加速度や速度を検出する手段として用いられており、以下では加速度を検出する場合について説明するが、速度を検出するようにしても良い。また、ここでは、本発明を2階建ての戸建住宅に適用する場合について説明するが、1階建てや3階建て以上の建物にも適用可能であることは言うまでもなく、以下では建物と呼ぶこととする。また、新築、中古の別は問わない。
2階建ての建物の場合、図2に示すように、第1、第2の振動検出器21、22は2階の床に設置される。ここで、建物基礎101の上面から2階の床までの高さを階高hと呼ぶものとし、3.00(m)を採用するものとする。
図3は、図2に示された第1、第2の振動検出器21、22の設置形態を平面図で示す。
図3では、2階床面において南北方向として規定することのできる線分上の北方向端部、南方向端部にそれぞれ、第1、第2の振動検出器21、22を設置している。すなわち、第1、第2の振動検出器21、22をY方向(南北方向)に並設している。この場合、第1、第2の振動検出器21、22は、南北方向に直角な方向、つまり東西方向に揺れる、常時微動に起因する振動の加速度を検出する。
一方、南北方向に揺れる、常時微動に起因する振動の加速度を検出する場合には、第1、第2の振動検出器21、22を、図3中、一点鎖線で示すように、東西方向の線分上の東方向端部、西方向端部にそれぞれ設置する。すなわち、第1、第2の振動検出器21、22をX方向(東西方向)に並設する。
次に、本耐震診断システムによる耐震性能診断について説明する。以下の耐震性能診断は、解析器15の記憶装置にインストールされている耐震性能診断のための解析処理プログラム(耐震診断プログラム)に基づいて行われる。従って、解析器15は、パーソナルコンピュータ、特にポータブルタイプのパーソナルコンピュータによって実現され、耐震診断に際しては記憶装置から解析処理プログラムを読み出して解析処理を実行する。この場合、パラメータ入力部19はキーボードで実現される。また、増幅器、A/D変換器は解析器に内蔵されていても良い。
1.建物の動的評点(耐震強度)の算出
本明細書で使用される評点というのは、耐震強度のランクとして国の定める「評点」に対応する値であると考えて良い。
図3に示すように、建物2階の北側端部に設置された第1の振動検出器21、建物2階の南側端部に設置された第2の振動検出器22は、東西方向に揺れる常時微動に起因する振動成分の加速度を検出する。第1、第2の振動検出器21、22からの加速度検出信号は、様々な周波数成分の加速度を持つ。第1、第2の振動検出器21、22で検出された加速度検出信号は、第1、第2の増幅器13、24で増幅され第1、第2のA/D変換器14、25でディジタル信号に変換されて解析器15に与えられる。解析器15は、前述のように解析処理プログラムに基づいて信号処理及び解析処理を行う。
解析器15は、第1、第2のA/D変換器14、25の出力信号をそれぞれA(t),B(t)とした場合、信号処理として以下の数1によるフーリエ変換を行なう。
Figure 2010261193
解析器15はまた、解析処理として、処理された信号S(f)、S(f)に対してここでは周波数分析を行い、加速度検出信号における周波数成分と加速度値との関係を分析する。すると、図4に示すように、ある特定の周波数において加速度値がピーク値を示す。この時の周波数は共振周波数と呼ばれ、解析器15はこの共振周波数を動的共振周波数として検出すると共に、加速度のピーク値をピーク加速度値として検出する。
ここで、図3で説明したように、東西方向に揺れる微弱振動について計測した場合には、第1、第2の振動検出器21、22の出力である第1、第2の検出信号からは同じ動的共振周波数が検出されることとなる。以下では、これをX方向(東西方向)の動的共振周波数fdXと呼ぶ。また、第1、第2の検出信号からはピーク加速度値が検出され、第1の振動検出器21で検出されるピーク加速度値をα、第2の振動検出器22で検出されるピーク加速度値をαと呼ぶ。これらの検出値は記憶装置に保存される。
東西方向に揺れる微弱振動について計測が終了すると、第1、第2の振動検出器21、22をそれぞれ、東側端部、西側端部に移し替える。建物2階の東側端部に設置された第1の振動検出器21、建物2階の西側端部に設置された第2の振動検出器22は、南北方向に揺れる常時微動に起因する振動成分の加速度を検出する。その結果、上記と同様の信号処理及び解析処理により、解析器15は、南北方向に揺れる微弱振動に対し、第1、第2の振動検出器21、22からY方向(南北方向)の動的共振周波数fdYを検出すると共に、第1の振動検出器21からピーク加速度値α、第2の振動検出器22からはピーク加速度値αをそれぞれ検出し、これらを記憶装置に保存する。
続いて、解析器15は、以下の2つの式(1)に基づいて建物のX方向に関する動的評点Hd、Y方向に関する動的評点Hdを算出する。以下では、特に断りがなくても算出された値は記憶装置に保存されるものとする。
dX=(2πfdX/g
dY=(2πfdY/g (1)
式(1)において、gは重力の加速度980(cm/sec)である。
上記式(1)は以下のようにして導かれたものである。
一般的に、建物の強さ(剛性)は建物のばね定数Kで表され、非特許文献1によると、固有円振動数ω(=2πf)とばね定数Kとの間に、2π/ω=2π(m/K)1/2(但し、mは質量)の関係があるとされている。この式からK=m×ωとなり、質量mはW/gで与えられることから、
K=[(2πf×W×S]/g (2)
が得られる。なお、fは設計共振周波数(設計値として周知の計算方法で計算される値)、Wは建物1の上部荷重であり、2階建住宅の場合、図2に示すように、建物基礎101の上面から所定の高さh(m)、ここでは1.35(m)の高さより上方の建物1の重量が建物1の1m当たりの上部荷重W(kN/m)として扱われる。上部荷重Wは設計図面から計算されるが、一例を挙げると、軽量材による軽い屋根の場合3.42(kN/m)、重量材による重い屋根の場合4.20(kN/m)という値が採用されている。
ここで、本発明者は、上記式(2)を以下の式(3)のように変形することで、上記式(1)による動的評点Hdを得ることができるようにした。
Hd=
K/W×S=[(2πf×W×S]/(g×W×S) (3)
=(2πf/g
なお、動的評点をX方向、Y方向について算出するのは、通常、戸建住宅のような建物は南向きに建てられ、その場合の建物の壁は、主に南北方向と東西方向に延びているからである。勿論、戸建住宅が南向きでない場合もあり、このような場合、外壁の延在方向で規定することができる。これは、戸建住宅の場合、通常、1つの外壁に着目するとこの外壁に対してほぼ直角に交差する外壁が存在し、上記のX方向、Y方向に対応付けることができるからである。
次に、解析器15は、以下の4つの式(4)により、ピーク加速度値α、αを用いてX方向に関する動的評点HdXを北側の動的評点HdXNと南側の動的評点HdXSに分け、ピーク加速度値α、αを用いてY方向に関する動的評点HdYを東側の動的評点HdYEと西側の動的評点HdYWに分ける計算を行なう。
dXN=[HdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
dXS=[HdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
dYE=[HdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
dYW=[HdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
(4)
以上のように、解析器15は、解析処理プログラムに基づいて、第1、第2の振動検出器21、22をそれぞれ建物2階の北側端部、南側端部に配置して得られた動的共振周波数fdXとピーク加速度値α、α、第1、第2の振動検出器21、22をそれぞれ建物2階の東側端部、西側端部に配置して得られた動的共振周波数fdYとピーク加速度値α、α、重力の加速度gを用いて上記式(1)、(4)により、北側、南側、東側、西側の動的評点HdXN、HdXS、HdYE、HdYWを自動的に算出して結果を記憶装置に保存すると共に、ディスプレイにて表示したり、プリントアウトしたりする。
以上のようにして、本耐震診断システムによれば、耐震強度のランクとして国の定める「評点」に対応する動的評点を得ることができる。
なお、上記の形態では、振動検出器を2個用いているが、第1の実施形態は1個の振動検出器でも実現可能である。この場合、はじめに振動検出器を建物2階の北側寄りに配置して動的共振周波数とピーク加速度値αとを検出する。次に、振動検出器を建物2階の南側寄りに配置して動的共振周波数とピーク加速度値αとを検出する。この場合、振動検出器が北側寄り、南側寄りのいずれに配置されても同じ動的共振周波数fdXが検出される。同様にして、振動検出器を建物2階の東側寄りに配置して動的共振周波数fdYとピーク加速度値αとを検出する。次に、振動検出器を建物2階の西側寄りに配置して動的共振周波数fdYとピーク加速度値αとを検出する。この場合も、振動検出器が東側寄り、西側寄りのいずれに配置されても同じ動的共振周波数fdYが検出される。北側、南側、東側、西側の動的評点HdXN、HdXS、HdYE、HdYWの算出方法は上記とまったく同じである。
なお、動的評点は、建物1の2階の中央における値も算出されることが望ましい。この場合、第1、第2の振動検出器21、22の中間部に中央部用の振動検出器を配置して上記と同様の計測、計算を行うことで建物のX方向、Y方向の両方について中央部用の振動検出器でピーク加速度値αXc、αYcを検出し、続いてX方向に関する動的評点HdX、Y方向に関する動的評点HdYを算出した後、中央部の動的評点HdXc、HdYcを算出する。但し、算出式は、上記式(4)と少し異なる、以下の6つの式(4−1)のようになる。
dXN
[HdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)+(1/αXc)]/3}
dXS
[HdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)+(1/αXc)]/3}
dXC
[HdX×(1/αXC)]/{[(1/α)+(1/α)+(1/αXc)]/3}
dYE
[HdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)+(1/αYc)]/3}
dYW
[HdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)+(1/αYc)]/3}
dYC
[HdY×(1/αYC)]/{[(1/α)+(1/α)+(1/αYc)]/3}
(4−1)
これは、以降で説明される動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率についてもまったく同じである。それゆえ、以降の説明では、建物2階の中央における動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率の計算式や算出方法については説明を省略する。
2.建物の動的壁率の算出
壁率というのは、建物1の壁率の倍数(壁倍率)であり、解析器15でこれを算出することで、建物1の壁に対する補強の必要性の有無を判定するために用いる。
動的壁率は、以下の式(5)で表される。
動的壁率Md=2×(動的評点Hd)−1 (5)
この式(5)は、非特許文献2に開示されている耐震等級、評点、及び壁率の以下の関係から直線近似により導かれたものである。
耐震等級 壁率 評点
1 1.0 1.00
2 1.5 1.25
3 2.0 1.50
解析器15は、動的壁率についても、以下の2つの式(6)により、X方向に関する動的評点HdXを用いてX方向に関する動的壁率MdXを算出すると共に、Y方向に関する動的評点HdYを用いてY方向に関する動的壁率MdYを算出する。
dX=2×(HdX)−1
dY=2×(HdY)−1 (6)
解析器15は続いて、以下の4つの式(7)により、ピーク加速度値α、αを用いて動的壁率MdXを北側の動的壁率MdXNと、南側の動的壁率MdXSに分けて算出する一方、ピーク加速度値α、αを用いて動的壁率MdYを東側の動的壁率MdYEと、西側の動的壁率MdYWに分けて算出する。
dXN=[MdX×(1/α)]/[(1/α)+(1/α)]
dXS=[MdX×(1/α)]/[(1/α)+(1/α)]
dYE=[MdY×(1/α)]/[(1/α)+(1/α)]
dYW=[MdY×(1/α)]/[(1/α)+(1/α)] (7)
ところで、現行建築基準法によると、新築住宅では、耐震等級1の場合、地震力に対する所要壁量は、軽量材による軽い屋根では0.29(m/m)、重量材による重い屋根の場合0.33(m/m)と規定されている。中古住宅の場合、動的評点(建築基準法による評点)1.00がこれに相当する。解析器15は、北側、南側、東側、西側の壁のそれぞれについて動的壁率MdXN、MdXS、MdYE、MdYWを算出した後、算出値に建物の1階の面積S(m)を乗算して壁量(動的壁量)を算出し、必要とされる壁量と比較して補強の必要性の有無について判別するようにしても良い。補強を行なう場合、1枚当たりの壁量は通常0.91(m)(壁率1の壁)とされていることから、[不足壁量(m)/0.91]により追加補強すべき壁の枚数を算出する。なお、壁率2の壁が用いられる場合には、壁量は半分で済むことは言うまでも無い。
3.建物の動的剛性(ばね定数)の算出
建物1の南北方向あるいは東西方向の動的剛性Kdは、以下の式(8)で表される。
Kd=(2πf×S×W/(g×τ) (8)
τは振動増幅率であり、以下のようにして導出される。
建物の設計上の剛性(必要耐力)Kは、以下の式(9)で算出される。
=[2/(h/120)]×S×R×Md (9)
式(9)において、[2/(h/120)]は壁率が1の壁の剛性を意味する。Rは建築基準法で定められた必要壁率であり、一例を挙げると、前述したように、軽量材による軽い屋根の場合0.29(m/m)、重量材による重い屋根の場合0.33(m/m)という値が定められている。また、Mdは前述したように壁率である。
一方、計測により求められる剛性は、上記式(8)で表される。
ここで、Ks=Kdとおき、上記式(3)を代入して振動増幅率τを求める。
[2/(h/120)]×S×R×M=
(2πf×S×W/(g×τ)=
(Hd)×S×W/τ
振動増幅率τは、以下の式(10)で表される。
τ=
{(Hd)×W×h}/(240×R×Md) (10)
上記式(8)は更に、上記式(3)、(10)を利用して、以下の式(12)のように変形することができる。
Kd=(2πf×S×W/(g×τ)
={[(2πf/g]×S×W}/{[(Hd)×W×h)]/
(240×R×M)}
=[(Hd)×W×S×240×R×Md]/[(Hd)×W×h]
=(240×R×Md×S)/h (12)
解析器15は、以上のようにして得られた変形式(12)を用いて、動的剛性についても、以下の2つの式(13)により、X方向に関する動的壁率MdXを用いてX方向に関する動的剛性KdXを算出すると共に、Y方向に関する動的壁率MdYを用いてY方向に関する動的剛性KdYを算出する。
dX==(240×R×MdX×S)/h
dY==(240×R×MdY×S)/h (13)
解析器15は続いて、以下の4つの式(14)により、ピーク加速度値α、αを用いて動的剛性KdXを北側の動的剛性KdXNと、南側の動的剛性KdXSに分けて算出する一方、ピーク加速度値α、αを用いて動的剛性KdYを東側の動的剛性KdYEと、西側の動的剛性KdYWに分けて算出する。
dXN=[KdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
dXS=[KdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
dYE=[KdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
dYW=[KdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
(14)
以上のようにして北側、南側の動的剛性KdXN、KdXSが得られたら、これらの2つの値が実質上等しくなるように補強を行なうことが望ましい。補強は、壁、梁、床板等で行なわれるのが好ましい。特に、中央部について動的剛性が算出される場合には、補強は床板に適用される。
同様にして、東側、西側の動的剛性KdYE、KdYWについても、これらの2つの値が実質上等しくなるように補強を行なうことが望ましい。
4.建物の動的振動増幅率τの算出
建物の動的振動増幅率τは、以下の式(15)又は式(16)で表される。
τ=(Hd×Wu×S)/Kd (15)
τ’={(Hd)×W×h}/(240×R×Md) (16)
以下では、式(15)を用いる場合について説明する。
解析器15は、動的振動増幅率についても、以下の2つの式(17)により、X方向に関する動的評点HdX及び動的剛性KdXを用いてX方向に関する動的振動増幅率τdXを算出すると共に、Y方向に関する動的評点HdY及び動的剛性KdYを用いてY方向に関する動的振動増幅率τdYを算出する。
τdX=(HdX×Wu×S)/KdX
τdY=(HdY×Wu×S)/KdY (17)
解析器15は続いて、以下の4つの式(18)により、ピーク加速度値α、αを用いて動的振動増幅率τdXを北側の動的振動増幅率τdXNと、南側の動的振動増幅率τdXSに分けて算出する一方、ピーク加速度値α、αを用いて動的振動増幅率τdYを東側の動的振動増幅率τdYEと、西側の動的振動増幅率τdYWに分けて算出する。
τdXN=[τdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
τdXS=[τdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
τdYE=[τdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
τdYW=[τdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
(18)
上記式(16)を用いる場合もまったく同様である。
5.地震発生時、建物の階高hで1/120(rad)変形する時の動的加速度αd(h/120)(ガル)の算出
建物1は、その耐力のほとんどが壁によって得られるように構成されている。そして、この壁は壁の強さ(剛性)に関係なく(h/120)(rad)(階高h=3mで2.5cmの揺れ)までの変形に対しては弾性体として働き、それ以上の例えば(h/60)(rad)、(h/30)(rad)では塑性域に入る。従って、(h/120)(rad)までの変形では無傷の領域と言えるので、地震等により(h/120)(rad)まで揺れる時の加速度(地震力)(ガル)を知ることで、地震等により建物が被害を受けることの無い最大の地震力がわかる。
解析器15は、地震発生時に建物の階高hのところで1/120(rad)変形する時の加速度の大きさαd(h/120)を、動的共振周波数f、動的振動増幅率τ又はτ’を用い、あらかじめ定められた以下の2つの式(19−1)、(19−2)のいずれかを用いて算出する。
αd(h/120)=[(2πf×(h/120)]/τ (19−1)
αd(h/120)=[(2πf×(h/120)]/τ’ (19−2)
以下では、式(19−1)を用いる場合について説明する。
解析器15は、加速度の大きさについても、以下の2つの式(20)により、X方向に関する動的振動増幅率τdXを用いてX方向に関する加速度の大きさαdX(h/120)を算出すると共に、Y方向に関する動的振動増幅率τdYを用いてY方向に関する加速度の大きさαdY(h/120)を算出する。
αdX(h/120)=[(2πfdX×(h/120)]/τdX
αdY(h/120)=[(2πfdY×(h/120)]/τdY (20)
解析器15は続いて、以下の4つの式(21)により、ピーク加速度値α、αを用いてX方向に関する加速度の大きさαdX(h/120)を北側の加速度の大きさαdXN(h/120)と南側の加速度の大きさαdXS(h/120)に分け、ピーク加速度値α、αを用いてY方向に関する加速度の大きさαdY(h/120)を東側の加速度の大きさαdYE(h/120)と西側の加速度の大きさαdYW(h/120)に分ける計算を行なう。
αdXN(h/120)
=[αdX(h/120)×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
αdXS(h/120)
=[αdX(h/120)×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
αdYE(h/120)
=[αdY(h/120)×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
αdYW(h/120)
=[αdY(h/120)×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
(21)
なお、解析器15は、建物の階高hにおいて(h/120)(rad)の変形を伴う加速度の大きさα(h/120)、(h/60)(rad)の変形を伴う加速度の大きさα(h/60)、(h/30)(rad)の変形を伴う加速度の大きさα(h/30)、(h/30)(rad)超の変形を伴う加速度の大きさα(<h/30)をそれぞれ以下の4つの式(22)からなる簡易式を用いて算出することもできる。
α(h/120)=400×Hd−200
α(h/60)=400×Hd−120
α(h/30)=400×Hd
α(<h/30)=400×Hd (22)
そして、動的評点Hdとして、上述した演算により算出した北側、南側、東側、西側の動的評点HdXN、HdXS、HdYE、HdYWをそれぞれ代入することで北側、南側、東側、西側のそれぞれについて加速度の大きさα(h/120)、α(h/60)、α(h/30)、α(<h/30)を算出することができる。
以上の動的共振周波数、動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさは、新築の建物に適用して耐震診断を行なうようにしても良いが、新築よりはむしろ、中古の建物に適用して将来の大地震に備えるための耐震診断とするのに適している。これは、新築の建物の場合、設計図より得られるパラメータを用い、本発明により提供される式に基づいて、設計共振周波数、設計評点、設計壁率、設計剛性、設計振動増幅率を算出して耐震診断用のデータとすることができるからである。
このことから、第1の実施形態による解析器15は、以下に説明する計算式に基づいて設計共振周波数、設計評点、設計壁率、設計剛性、設計振動増幅率を算出する機能を有する。これは、後述される第2の実施形態においても同様であり、後述する第2の実施形態においては説明を省略する。
1a.建物の設計共振周波数の算出
解析器15は、建物の設計図面に基づいて予め計算されたX方向の設計壁率MsXとY方向の設計壁率MsYと重力の加速度gを用い、以下の2つの式(23)に基づいて建物のX方向の設計共振周波数fsX、Y方向の設計共振周波数fsYを算出する。設計壁率MsX、MsYの計算方法については周知であるので、説明は省略する。
sX=(1/2π)×{[(MsX+1)×g]/2}1/2
sY=(1/2π)×{[(MsY+1)×g]/2}1/2 (23)
2a.建物の設計評点の算出
解析器15は、予め計算されたX方向の設計壁率MsXとY方向の設計壁率MsYを用い、以下の2つの式(24)に基づいて建物のX方向の設計評点HsX、Y方向の設計評点HsYを算出する。
sX=(MsX+1)/2
sY=(MsY+1)/2 (24)
3a.建物の設計剛性の算出
解析器15は、予め計算されたX方向の設計壁率MsXとY方向の設計壁率MsYと、壁量R、面積S、及び階高hを用い、予め定められた以下の2つの式(25)に基づいて建物のX方向の設計剛性KsX、Y方向の設計剛性KsYを算出する。
sX=(240×R×MsX×S)/h
sY=(240×R×MsY×S)/h (25)
4a.建物の設計振動増幅率の算出
解析器15は、算出したX方向の設計評点HsX及び算出した設計剛性KsXと、算出したY方向の設計評点HsY及び算出した設計剛性KsYと、上部荷重Wu及び面積Sを用い、予め定められた以下の2つの式(26)に基づいて建物のX方向の設計振動増幅率τsX、Y方向の設計振動増幅率τsYを算出する。
τsX=(HsX×Wu×S)/KsX
τsY=(HsY×Wu×S)/KsY (26)
5a.地震発生時、建物の階高hで1/120(rad)変形する時の設計加速度αS(h/120)(ガル)の算出
解析器15は、算出したX方向の設計共振周波数fsX、設計振動増幅率τsXと、算出したY方向の設計共振周波数fsY、設計振動増幅率τsYを用い、地震発生時に建物の階高hのところで1/120(rad)変形する時のX方向の設計加速度の大きさαSX(h/120)、Y方向の設計加速度の大きさαSY(h/120)をそれぞれ、あらかじめ定められた以下の2つの式(27)を用いて算出する。
αSX(h/120)=[(2πfsX×(h/120)]/τsX
αdY(h/120)=[(2πfsY×(h/120)]/τsY (27)
なお、解析器15は、算出したX方向の設計共振周波数fsX、Y方向の設計共振周波数fsY、算出したX方向の設計振動増幅率τsX、算出したY方向の設計振動増幅率τsYと、上部荷重Wu、面積S、重力の加速度gを用い、以下の2つの式(28)に基づいて、建物のX方向の設計剛性KsfX、Y方向の設計剛性KsfYを算出しても良い。
sfX=[(2πfsX×Wu×S]/[g×τsX
sfY=[(2πfsY×Wu×S]/[g×τsY] (28)
(第2の実施形態)
次に、地盤中を伝搬する振動について雑音の比較的多い地域、すなわち交通量の激しい道路や、鉄道線路、あるいは振動発生を伴う工場等に隣接している地域の戸建住宅について耐震性能診断を行なうのに適した第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態は、地盤中を伝搬する振動について雑音が多いと、その影響を受け易い。そこで、第2の実施形態は、雑音の影響を受けにくくしている。
第2の実施形態も、地盤中で常時発生、伝達されている常時微動と呼ばれる振動成分を利用して戸建住宅の共振周波数を検出する。つまり、地盤中を伝わる微弱な振動について周波数分析を行い、どの周波数の振動に対して戸建住宅が共振するかを計測する点においては第1の実施形態と同じである。
図5を参照して、第2の実施形態による耐震診断システムは、加速度を検出することのできる第1、第2、第3の振動検出器21、22、23、これらの出力信号である第1、第2、第3の検出信号を増幅するための第1、第2、第3の増幅器13、24、17、アナログ信号である検出信号をディジタルの加速度信号に変換する第1、第2、第3のA/D変換器14、25、18、ディジタルの加速度信号に対して解析を行う解析器15、計算に際して必要な既知の数値を入力するためのパラメータ入力部19を含む。なお、特許請求の範囲の請求項には、第2の振動検出器22は第3の振動検出器と記載され、第3の振動検出器23が第2の振動検出器と記載されている。第1の実施形態と同様、振動検出器は加速度や速度を検出する手段として用いられており、以下では加速度を検出する場合について説明するが、速度を検出するようにしても良い。また、2階建ての戸建住宅に適用する場合について説明するが、1階建てや3階建て以上の建物にも適用可能であることは言うまでもなく、以下では建物と呼ぶこととする。また、新築、中古の別は問わない。
2階建ての建物の場合、図5に示すように、第1、第2の振動検出器21、22は2階の床に設置され、第3の振動検出器23は2階より下の建物内あるいは建物外の地面に設置される。
図6は、図5に示された第1、第2、第3の振動検出器21、22、23の設置形態を平面図で示す。
図6では、2階床面において南北方向として規定することのできる線分上の北方向端部、南方向端部にそれぞれ、第1、第2の振動検出器21、22を設置している。すなわち、第1、第2の振動検出器21、22をY方向(南北方向)に並設している。この場合、第1、第2の振動検出器21、22は、南北方向に直角な方向、つまり東西方向に揺れる、常時微動に起因する振動の加速度を検出する。
一方、南北方向に揺れる、常時微動に起因する振動の加速度を検出する場合には、第1、第2の振動検出器21、22を、図6中、一点鎖線で示すように、東西方向の線分上の東方向端部、西方向端部にそれぞれ設置する。すなわち、第1、第2の振動検出器21、22をX方向(東西方向)に並設する。
第1の実施形態と同様、以下の耐震性能診断は、解析器15の記憶装置にインストールされている耐震性能診断のための解析処理プログラム(耐震診断プログラム)に基づいて行われる。従って、解析器15は、パーソナルコンピュータ、特にポータブルタイプのパーソナルコンピュータによって実現され、耐震診断に際しては記憶装置から解析処理プログラムを読み出して解析処理を実行する。
2−1.建物の動的評点の算出
図6に示すように、建物2階の北側端部に設置された第1の振動検出器21、建物2階の南側端部に設置された第2の振動検出器22、建物外の地面に設置された第3の振動検出器23は、東西方向に揺れる常時微動に起因する振動成分の加速度を検出する。第1、第2、第3の振動検出器21、22、23からの加速度検出信号は、様々な周波数成分の加速度を持つ。第1、第2、第3の振動検出器21、22、23で検出された加速度検出信号は、第1、第2、第3の増幅器13、24、17で増幅され第1、第2、第3のA/D変換器14、25、18でディジタル信号に変換されて解析器15に与えられる。解析器15は、前述のように解析処理プログラムに基づいて信号処理及び解析処理を行う。
解析器15は、信号処理として、第1、第2、第3のA/D変換器14、25、18の出力信号について第1の実施形態と同様のフーリエ変換を行なう。解析器15はまた、解析処理として周波数分析、具体的には処理された第3の加速度検出信号に対する処理された第1の加速度検出信号の比を演算する。すると、図7に示すように、ある特定の周波数において比のレベルがピーク値を示す。解析器15は、この時の周波数を動的共振周波数fとして検出すると共に、この時の第1、第2の振動検出器21、22の検出信号で示される加速度をピーク加速度値として検出する。簡単に言えば、第3の振動検出器23は、常時微動に起因する微弱な振動成分に混在した雑音成分による影響を小さくするためのものである。
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、主に、上記のような振動検出器の配置形態と解析処理である。言い換えれば、動的共振周波数、ピーク加速度値が検出された後の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率の計算は、第1の実施形態とまったく同じである。
従って、図6において、第1の実施形態と同様、東西方向に揺れる微弱振動について計測した場合には、第1、第2の振動検出器21、22の出力である第1、第2の検出信号からは同じ動的共振周波数、つまり、X方向(東西方向)の動的共振周波数fdXが検出される。また、第1、第2の検出信号からはそれぞれ、ピーク加速度値α、ピーク加速度値αが検出される。
東西方向に揺れる微弱振動について計測が終了すると、第1、第2の振動検出器21、22をそれぞれ、東側端部、西側端部に移し替える。第3の振動検出器23については同じ場所に向きを変えて設置することが望ましい。建物2階の東側端部に設置された第1の振動検出器21、建物2階の西側端部に設置された第2の振動検出器22は、南北方向に揺れる常時微動に起因する振動成分の加速度を検出する。その結果、解析器15は、南北方向に揺れる微弱振動に対し、第1、第2の振動検出器21、22からY方向(南北方向)の動的共振周波数fdYを検出すると共に、第1の振動検出器21からピーク加速度値α、第2の振動検出器22からはピーク加速度値αをそれぞれ検出する。
続いて、解析器15は、以下の2つの式(1)に基づいて建物のX方向に関する動的評点Hd、Y方向に関する動的評点Hdを算出する。
dX=(2πfdX/g
dY=(2πfdY/g (1)
次に、解析器15は、以下の4つの式(4)により、ピーク加速度値α、αを用いてX方向に関する動的評点HdXを北側の動的評点HdXNと南側の動的評点HdXSに分け、ピーク加速度値α、αを用いてY方向に関する動的評点HdYを東側の動的評点HdYEと西側の動的評点HdYWに分ける計算を行なう。
dXN=[HdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
dXS=[HdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
dYE=[HdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
dYW=[HdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
(4)
以上のように、第2の実施形態においても、解析器15は、解析処理プログラムに基づいて、第1、第2の振動検出器21、22をそれぞれ建物2階の北側端部、南側端部に配置して得られた動的共振周波数fdXとピーク加速度値α、α、第1、第2の振動検出器21、22をそれぞれ建物2階の東側端部、西側端部に配置して得られた動的共振周波数fdYとピーク加速度値α、α、重力の加速度gを用いて上記式(1)、(4)により、北側、南側、東側、西側の動的評点HdXN、HdXS、HdYE、HdYWを自動的に算出して結果を記憶装置に保存すると共に、ディスプレイにて表示したり、プリントアウトしたりする。
なお、第2の実施形態では、振動検出器を3個用いているが、振動検出器は建物2階に設置する振動検出器(便宜上、この説明でのみ第1の振動検出器と呼ぶ)と、2階より下の建物内あるいは建物外の地面に設置する振動検出器(便宜上、この説明でのみ第2の振動検出器と呼ぶ)の2個でも良い。この場合、第2の振動検出器は2階より下の建物内あるいは建物外の地面に設置したままとし、はじめに第1の振動検出器を建物2階の北側寄りに配置して動的共振周波数とピーク加速度値αとを検出する。次に、第1の振動検出器を建物2階の南側寄りに配置して動的共振周波数とピーク加速度値αとを検出する。この場合、振動検出器が北側寄り、南側寄りのいずれに配置されても同じ動的共振周波数fdXが検出される。同様にして、第1の振動検出器を建物2階の東側寄りに配置して動的共振周波数fdYとピーク加速度値αとを検出する。次に、第1の振動検出器を建物2階の西側寄りに配置して動的共振周波数fdYとピーク加速度値αとを検出する。この場合も、振動検出器が東側寄り、西側寄りのいずれに配置されても同じ動的共振周波数fdYが検出される。北側、南側、東側、西側の動的評点HdXN、HdXS、HdYE、HdYWの算出方法は上記とまったく同じである。
第2の実施形態においても、動的評点は、建物1の2階の中央における値も算出されることが望ましい。この場合、第1、第2の振動検出器21、22の中間部に中央部用の振動検出器(第4の振動検出器)を配置して上記と同様の計測、計算を行うことで建物のX方向、Y方向の両方について中央部用の振動検出器でピーク加速度値αXc、αYcを検出し、続いてX方向に関する動的評点HdX、Y方向に関する動的評点HdYを算出した後、中央部の動的評点HdXc、HdYcを算出する。算出式は、以下の6つの式(4−1)のようになる。
dXN
[HdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)+(1/αXc)]/3}
dXS
[HdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)+(1/αXc)]/3}
dXC
[HdX×(1/αXC)]/{[(1/α)+(1/α)+(1/αXc)]/3}
dYE
[HdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)+(1/αYc)]/3}
dYW
[HdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)+(1/αYc)]/3}
dYC
[HdY×(1/αYC)]/{[(1/α)+(1/α)+(1/αYc)]/3}
(4−1)
これは、以降で説明される動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率についてもまったく同じである。それゆえ、以降の説明では、建物2階の中央における動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率の計算式や算出方法については説明を省略する。
2.建物の動的壁率の算出
第1の実施形態と同様、解析器15は、動的壁率についても、以下の2つの式(6)により、X方向に関する動的評点HdXを用いてX方向に関する動的壁率MdXを算出すると共に、Y方向に関する動的評点HdYを用いてY方向に関する動的壁率MdYを算出する。
dX=2×(HdX)−1
dY=2×(HdY)−1 (6)
解析器15は続いて、以下の4つの式(7)により、ピーク加速度値α、αを用いて動的壁率MdXを北側の動的壁率MdXNと、南側の動的壁率MdXSに分けて算出する一方、ピーク加速度値α、αを用いて動的壁率MdYを東側の動的壁率MdYEと、西側の動的壁率MdYWに分けて算出する。
dXN=[MdX×(1/α)]/[(1/α)+(1/α)]
dXS=[MdX×(1/α)]/[(1/α)+(1/α)]
dYE=[MdY×(1/α)]/[(1/α)+(1/α)]
dYW=[MdY×(1/α)]/[(1/α)+(1/α)] (7)
3.建物の動的剛性(ばね定数)の算出
解析器15は、動的剛性についても、以下の2つの式(13)により、X方向に関する動的壁率MdXを用いてX方向に関する動的剛性KdXを算出すると共に、Y方向に関する動的壁率MdYを用いてY方向に関する動的剛性KdYを算出する。
dX==(240×R×MdX×S)/h
dY==(240×R×MdY×S)/h (13)
解析器15は続いて、以下の4つの式(14)により、ピーク加速度値α、αを用いて動的剛性KdXを北側の動的剛性KdXNと、南側の動的剛性KdXSに分けて算出する一方、ピーク加速度値α、αを用いて動的剛性KdYを東側の動的剛性KdYEと、西側の動的剛性KdYWに分けて算出する。
dXN=[KdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
dXS=[KdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
dYE=[KdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
dYW=[KdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
(14)
以上のようにして北側、南側の動的剛性KdXN、KdXSが得られたら、これらの2つの値が実質上等しくなるように補強を行なうことが望ましい。補強は、壁、梁、床板等で行なわれるのが好ましい。本実施形態でも、中央部について動的剛性が算出される場合には、補強は床板に適用される。
同様にして、東側、西側の動的剛性KdYE、KdYWについても、これらの2つの値が実質上等しくなるように補強を行なうことが望ましい。
4.建物の動的振動増幅率τの算出
解析器15は、建物の動的振動増幅率τを、以下の式(15)又は式(16)で算出する。
τ=(Hd×Wu×S)/Kd (15)
τ’={(Hd)×W×h}/(240×R×Md) (16)
以下では、式(15)を用いる場合について説明する。
解析器15は、動的振動増幅率についても、以下の2つの式(17)により、X方向に関する動的評点HdX及び動的剛性KdXを用いてX方向に関する動的振動増幅率τdXを算出すると共に、Y方向に関する動的評点HdY及び動的剛性KdYを用いてY方向に関する動的振動増幅率τdYを算出する。
τdX=(HdX×Wu×S)/KdX
τdY=(HdY×Wu×S)/KdY (17)
解析器15は続いて、以下の4つの式(18)により、ピーク加速度値α、αを用いて動的振動増幅率τdXを北側の動的振動増幅率τdXNと、南側の動的振動増幅率τdXSに分けて算出する一方、ピーク加速度値α、αを用いて動的振動増幅率τdYを東側の動的振動増幅率τdYEと、西側の動的振動増幅率τdYWに分けて算出する。
τdXN=[τdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
τdXS=[τdX×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
τdYE=[τdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
τdYW=[τdY×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
(18)
上記式(16)を用いる場合もまったく同様である。
5−1.地震発生時、建物の階高hで1/120(rad)変形する時の動的加速度αd(h/120)(ガル)の算出
第2の実施形態においても、解析器15は、地震発生時に建物の階高hのところで1/120(rad)変形する時の加速度の大きさαd(h/120)を、動的共振周波数f、動的振動増幅率τ又はτ’を用い、あらかじめ定められた以下の2つの式(19−1)、(19−2)のいずれかを用いて算出する。
αd(h/120)=[(2πf×(h/120)]/τ (19−1)
αd(h/120)=[(2πf×(h/120)]/τ’ (19−2)
以下では、式(19−1)を用いる場合について説明する。
解析器15は、加速度の大きさについても、以下の2つの式(20)により、X方向に関する動的振動増幅率τdXを用いてX方向に関する加速度の大きさαdX(h/120)を算出すると共に、Y方向に関する動的振動増幅率τdYを用いてY方向に関する加速度の大きさαdY(h/120)を算出する。
αdX(h/120)=[(2πfdX×(h/120)]/τdX
αdY(h/120)=[(2πfdY×(h/120)]/τdY (20)
解析器15は続いて、以下の4つの式(21)により、ピーク加速度値α、αを用いてX方向に関する加速度の大きさαdX(h/120)を北側の加速度の大きさαdXN(h/120)と南側の加速度の大きさαdXS(h/120)に分け、ピーク加速度値α、αを用いてY方向に関する加速度の大きさαdY(h/120)を東側の加速度の大きさαdYE(h/120)と西側の加速度の大きさαdYW(h/120)に分ける計算を行なう。
αdXN(h/120)
=[αdX(h/120)×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
αdXS(h/120)
=[αdX(h/120)×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
αdYE(h/120)
=[αdY(h/120)×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
αdYW(h/120)
=[αdY(h/120)×(1/α)]/{[(1/α)+(1/α)]/2}
(21)
なお、第2の実施形態においても、解析器15は、建物の階高hにおいて(h/120)(rad)の変形を伴う加速度の大きさα(h/120)、(h/60)(rad)の変形を伴う加速度の大きさα(h/60)、(h/30)(rad)の変形を伴う加速度の大きさα(h/30)、(h/30)(rad)超の変形を伴う加速度の大きさα(<h/30)をそれぞれ以下の4つの式(22)からなる簡易式を用いて算出することもできる。
α(h/120)=400×Hd−200
α(h/60)=400×Hd−120
α(h/30)=400×Hd
α(<h/30)=400×Hd (22)
そして、第1の実施形態と同様、動的評点Hdとして、上述した演算により算出した北側、南側、東側、西側の動的評点HdXN、HdXS、HdYE、HdYWをそれぞれ代入することで北側、南側、東側、西側のそれぞれについて加速度の大きさα(h/120)、α(h/60)、α(h/30)、α(<h/30)を算出することができる。
(第3の実施形態)
図8を参照して、本発明による耐震診断システムの第3の実施形態について説明する。本システムは、第2の実施形態による耐震診断システムに加振機を導入して、建物に対して積極的に振動を与えるようにしたものである。従って、後述されるように、加振機により、X方向の揺れを発生させるような振動を与えつつ北側端部及び南側端部に設置した第1、第2の振動検出器による計測を行う一方、Y方向の揺れを発生させるような振動を与えつつ東側端部及び西側端部に設置した第1、第2の振動検出器による計測を行う点を除いて第2の実施形態とほぼ同じである。
図8において、本耐震診断システムは、周波数可変の加振信号を発生する任意波発振器11、加振信号を増幅する電力増幅器12、電力増幅器12からの増幅された加振信号で建物に対して加振を行なう加振機20、加振機20で加振されている間の加速度を検出する第1、第2、第3の振動検出器21、22、23、これらの検出信号を増幅するための第1、第2、第3の増幅器13、17、24、アナログ信号である検出信号をディジタルの加速度信号に変換する第1、第2、第3のA/D変換器14、18、25、解析器15、パラメータ入力部19を含む。
2階建ての場合、図9に示すように、加振機20、第1〜第3の振動検出器21〜23は2階の床に設置され、特に第3の振動検出器23は建物1の重心対応位置またはその近傍に設置された加振機20に近い位置に設置される。
図10は、図9に示された加振機20、第1〜第3の振動検出器21〜23の設置形態を平面図で示す。図10は、加振機20でX方向について起振する場合について示している。この場合、2階床の北側端部、南側端部にそれぞれ、第1、第2の振動検出器21、22が設置され、建物1の重心対応位置またはその近傍に設置された加振機20に近い中央位置に第3の振動検出器23が設置される。すなわち、第1〜第3の振動検出器21〜23はY方向(南北方向)に並設される。一方、加振機20でY方向について起振する場合、2階床の東側端部、西側端部にそれぞれ、第1、第2の振動検出器21、22が設置され、加振機20に近い中央位置に第3の振動検出器23が設置される。すなわち、第1〜第3の振動検出器21〜23はX方向に並設される。
図8において、任意波発振器11に対して波形を指定することにより、任意波発振器11から、ここでは正弦波が発生され、電力増幅器12で増幅されて加振機20に与えられる。加振機20は増幅された正弦波に基づいて建物1を水平方向に振動させる。その時の建物1の加速度が第1〜第3の振動検出器21〜23で検出される。第1〜第3の振動検出器21〜23で検出された加速度信号は、第1〜第3の増幅器13、17、24で増幅され第1〜第3のA/D変換器14、18、25でディジタル信号に変換されて解析器15に与えられる。解析器15は、前述のように解析処理プログラムに基づいて信号処理及び解析処理を行うものである。解析器15にはまた、任意波発振器11からの正弦波信号が周波数信号として与えられる。
なお、任意波発振器11は周波数の異なる複数種類の正弦波信号を発生することができるほか、ランダム波信号としてマルチサイン信号、スウェプトサイン信号を発生することができる。マルチサイン信号というのは、異なる周波数f〜fの正弦波信号を様々な振幅を持つように合成した信号である。一方、スウェプトサイン信号というのは、異なる周波数f〜fの正弦波信号を振幅が一定の状態になるように合成した信号で、いわば周波数変調波である。
第1〜第3の振動検出器のうち、第3の振動検出器23で検出される加速度をUとすると、加速度Uと加振機20による加振周波数f(任意波発振器11からの信号周波数)との関係は図4で説明した特性と同様になる。つまり、加速度Uは加振周波数fがある値になるとピーク値を示す。この周波数が動的共振周波数fとして解析器15で検出される。ここで、これまでの実施形態と同様に、X方向について起振した場合に第3の振動検出器23について検出された動的共振周波数をfdXとし、Y方向について起振した場合に第3の振動検出器23について検出された動的共振周波数をfdYとする。また、X方向について起振した場合、第3の振動検出器23について動的共振周波数fdXを検出した時に第1、第2、第3の振動検出器(北側、南側、中央の振動検出器)21、22、23で検出された加速度をα、α、αXCとする。同様に、Y方向について起振した場合、第3の振動検出器23について動的共振周波数fdYを検出した時に第1、第2、第3の振動検出器(東側、西側、中央の振動検出器)21、22、23で検出された加速度をα、α、αYCとする。
X方向の起振、Y方向の起振の結果、解析器15は、任意波発振器11からの周波数信号と第3のA/D変換器25からの加速度検出信号により、上記動的共振周波数fdX、fdYを検出すると共に、加速度α、α、αXCと加速度α、α、αYCを検出する。
以後、解析器15は、第2の実施形態で説明したのと同じ動作で北側、南側、東側、西側のそれぞれについて動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率の算出を行なう。算出方法は、第2の実施形態とまったく同じであるので、説明は省略する。
以上説明した本発明の実施形態による耐震診断システムによれば、建物自体の持つ耐震性能を計測し、より効果的で安価に耐震補強のできる手法が提供される。すなわち、本発明による耐震診断システムは、まず、その建物の持つ固有の動的評点(耐震強度)を目視でなく計測器及び解析器を使用して正確に表示できるほか、補強の目安となる剛性、壁率等を容易に算出できる。これにより、顧客は自身の建物の周りで発生する近い将来の地震に対し建物が倒壊しないだけの十分安心できる補強を考えることができる。補強は、壁の補強、筋交の補強、梁の補強、床板の補強、重い屋根を軽い屋根に代える間接的な補強方法のいずれも事前に評価し、実施することが可能である。
また、本発明による耐震診断システムによって建物の東西南北に関して上記各数値の算出が容易に正しく行なわれることにより、地震対策として地震発生時に建物がねじれによって倒壊することがない様、建物の地震に対する脆弱部分の改修も可能となることから、有効な耐震性能診断並びに補強の補助手段として威力を発揮することが期待される。
1 建物
20 加振機
21 第1の振動検出器
22 第2の振動検出器
23 第3の振動検出器

Claims (21)

  1. 建物の2階に配置されてそこに伝わる常時微動に起因する振動の加速度を検出して第1の検出信号を出力するための第1の振動検出器と、前記第1の検出信号を受けて予め定められた解析処理を行う解析器を含み、
    前記解析器は、前記解析処理として、前記第1の検出信号についてフーリエ変換を行なってから加速度値と振動の周波数に関する解析を行って前記加速度値がピーク加速度値を示す時の前記振動の周波数を建物の動的共振周波数fとして検出し、
    前記解析器は更に、検出した前記動的共振周波数fと予め与えられている重力の加速度g(=980cm/sec)を用い、予め定められた以下の式、
    Hd=(2πf/g
    を用いて建物の動的評点Hdを算出することを特徴とする耐震診断システム。
  2. 前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hdを用い、予め定められた以下の式、
    Md=2Hd−1
    を用いて建物の動的壁率Mdを算出することを特徴とする請求項1に記載の耐震診断システム。
  3. 前記解析器は更に、算出した前記動的壁率Mdと、予め与えられている建物の単位面積あたりの壁量R(m/m)、建物の1階の面積S(m)、及び建物基礎の上面から2階床面までの階高h(m)を用い、予め定められた以下の式、
    Kd=(240×R×Md×S)/h
    を用いて建物の動的剛性Kdを算出することを特徴とする請求項2に記載の耐震診断システム。
  4. 前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hd及び算出した前記動的剛性Kdと、予め与えられている建物の1m当たりの上部荷重Wu(kN/m)及び前記面積Sを用い、予め定められた以下の式、
    τ=(Hd×Wu×S)/Kd
    あるいは、算出した前記動的評点Hd及び算出した前記動的壁率Mdと、前記壁量R及び前記階高hを用い、予め定められた以下の式、
    τ’=(Hd×Wu×h)/(240×R×Md)
    を用いて建物の動的振動増幅率τ’を算出することを特徴とする請求項3に記載の耐震診断システム。
  5. 前記解析器は更に、地震発生時に建物の前記階高hのところで1/120(rad)変形する時の加速度の大きさαd(h/120)を、あらかじめ定められた以下の式、
    αd(h/120)=[(2πf×(h/120)]/τ
    または、
    αd(h/120)=[(2πf×(h/120)]/τ
    を用いて算出することを特徴とする請求項4に記載の耐震診断システム。
  6. 前記建物の2階床面において南北方向として規定される線分上の北寄り、南寄り、それらの中間のうちの少なくとも北寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記解析器による解析が行われることで北側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdXが検出されると共に、前記南北方向として規定される線分上の北寄り、南寄り、それらの中間のうちの少なくとも南寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記解析器による解析が行われることで南側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdXが検出される一方、前記建物の2階床面において東西方向として規定される線分上の東寄り、西寄り、それらの中間のうちの少なくとも東寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記解析器による解析が行われることで東側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdYが検出されると共に、前記東西方向として規定される線分上の東寄り、西寄り、それらの中間のうちの少なくとも西寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記解析器による解析が行われることで西側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdYが検出され、
    前記解析器は、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdXを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)として算出すると共に、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdYを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdY、加速度の大きさαdY(h/120)として算出し、
    前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)に対し、前記検出された北側のピーク加速度値α及び南側のピーク加速度値αを用いて北側及び南側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出すると共に、前記検出された東側のピーク加速度値α及び西側のピーク加速度値αを用いて東側及び西側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出することを特徴とする請求項5に記載の耐震診断システム。
  7. 前記建物の2階床面において南北方向として規定される線分上の北寄り、南寄り、それらの中間のうちの少なくとも北寄り及び南寄りの一方に前記第1の振動検出器、他方に第2の振動検出器がそれぞれ配置されて前記第1の検出信号及び前記第2の振動検出器からの第2の検出信号に対して前記解析器による解析が行われることで北側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdXが検出されると共に、南側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdXが検出される一方、前記建物の2階床面において東西方向として規定される線分上の東寄り、西寄り、それらの中間のうちの少なくとも東寄り及び西寄りの一方に前記第1の振動検出器、他方に前記第2の振動検出器がそれぞれ配置されて前記第1の検出信号及び前記第2の検出信号に対して前記解析器による解析が行われることで東側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdYが検出されると共に、西側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdYが検出され、
    前記解析器は、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdXを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)として算出すると共に、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdYを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdY、加速度の大きさαdY(h/120)として算出し、
    前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)に対し、前記検出された北側のピーク加速度値α及び南側のピーク加速度値αを用いて北側及び南側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出すると共に、前記検出された東側のピーク加速度値α及び西側のピーク加速度値αを用いて東側及び西側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出することを特徴とする請求項5に記載の耐震診断システム。
  8. 建物の2階に配置されてそこに伝わる常時微動に起因する振動の加速度を検出して第1の検出信号を出力するための第1の振動検出器と、2階より下の当該建物内あるいは建物外に配置されてそこに伝わる常時微動に起因する振動の加速度を検出して第2の検出信号を出力するための第2の振動検出器と、前記第1、第2の検出信号を受けて予め定められた解析処理を行う解析器を含み、
    前記解析器は、前記第1、第2の検出信号のそれぞれについてフーリエ変換を行なってから振動の周波数に関する解析を行って第1、第2の解析結果を得ると共に、前記第2の解析結果に対する前記第1の解析結果の比がピーク加速度値を示す時の前記振動の周波数を建物の動的共振周波数fとして検出し、
    前記解析器は更に、検出した前記動的共振周波数fと予め与えられている重力の加速度g(=980cm/sec)を用い、予め定められた以下の式、
    Hd=(2πf/g
    を用いて建物の動的評点Hdを算出することを特徴とする耐震診断システム。
  9. 前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hdを用い、予め定められた以下の式、
    Md=2Hd−1
    を用いて建物の動的壁率Mdを算出することを特徴とする請求項8に記載の耐震診断システム。
  10. 前記解析器は更に、算出した前記動的壁率Mdと、予め与えられている建物の単位面積あたりの壁量R(m/m)、建物の1階の面積S(m)、及び建物基礎の上面から2階床面までの階高h(m)を用い、予め定められた以下の式、
    Kd=(240×R×Md×S)/h
    を用いて建物の動的剛性Kdを算出することを特徴とする請求項9に記載の耐震診断システム。
  11. 前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hd及び算出した前記動的剛性Kdと、予め与えられている建物の1m当たりの上部荷重Wu(kN/m)及び前記面積Sを用い、予め定められた以下の式、
    τ=(Hd×Wu×S)/Kd
    あるいは、算出した前記動的評点Hd及び算出した前記動的壁率Mdと、前記壁量R及び前記階高Hを用い、予め定められた以下の式、
    τ’=(Hd×Wu×h)/(240×R×Md)
    を用いて建物の動的振動増幅率τ’を算出することを特徴とする請求項10に記載の耐震診断システム。
  12. 前記解析器は更に、地震発生時に建物の前記階高hのところで1/120(rad)変形する時の加速度の大きさαd(h/120)を、あらかじめ定められた以下の式、
    αd(h/120)=[(2πf×(h/120)]/τ
    または、
    αd(h/120)=[(2πf×(h/120)]/τ
    を用いて算出することを特徴とする請求項11に記載の耐震診断システム。
  13. 前記建物の2階床面において南北方向として規定される線分上の北寄り、南寄り、それらの中間のうちの少なくとも北寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記第1、第2の検出信号に対する前記解析器による解析が行われることで北側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdXが検出されると共に、前記南北方向として規定される線分上の北寄り、南寄り、それらの中間のうちの少なくとも南寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記第1、第2の検出信号に対する前記解析器による解析が行われることで南側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdXが検出される一方、前記建物の2階床面において東西方向として規定される線分上の東寄り、西寄り、それらの中間のうちの少なくとも東寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記第1、第2の検出信号に対する前記解析器による解析が行われることで東側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdYが検出されると共に、前記東西方向として規定される線分上の東寄り、西寄り、それらの中間のうちの少なくとも西寄りに前記第1の振動検出器が配置されて前記第1、第2の検出信号に対する前記解析器による解析が行われることで西側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdYが検出され、
    前記解析器は、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdXを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)として算出すると共に、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdYを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdY、加速度の大きさαdY(h/120)として算出し、
    前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)に対し、前記検出された北側のピーク加速度値α及び南側のピーク加速度値αを用いて北側及び南側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出すると共に、前記検出された東側のピーク加速度値α及び西側のピーク加速度値αを用いて東側及び西側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出することを特徴とする請求項12に記載の耐震診断システム。
  14. 前記建物の2階床面において南北方向として規定される線分上の北寄り、南寄り、それらの中間のうちの少なくとも北寄り及び南寄りの一方に前記第1の振動検出器、他方に第3の振動検出器がそれぞれ配置されて前記第1、第2の検出信号に対する前記解析器による解析と前記第2の検出信号、前記第3の振動検出器からの第3の検出信号に対する前記解析器による解析が行われることで北側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdXが検出されると共に、南側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdXが検出される一方、前記建物の2階床面において東西方向として規定される線分上の東寄り、西寄り、それらの中間のうちの少なくとも東寄り及び西寄りの一方に前記第1の振動検出器、他方に前記第3の振動検出器がそれぞれ配置されて前記第1、第2の検出信号に対する前記解析器による解析と前記第2、第3の検出信号に対する前記解析器による解析が行われることで東側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして動的共振周波数fdYが検出されると共に、西側のピーク加速度値αと前記動的共振周波数fとして前記動的共振周波数fdYが検出され、
    前記解析器は、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdXを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdX、加速度の大きさαdX(h/120)として算出すると共に、前記動的共振周波数fに代えて、検出された前記動的共振周波数fdYを用いて前記建物の動的評点Hd、前記動的壁率Md、前記動的剛性Kd、前記動的振動増幅率τ又はτ’、前記加速度の大きさαd(h/120)をそれぞれ、動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdY、加速度の大きさαdY(h/120)として算出し、
    前記解析器は更に、算出した前記動的評点Hd、動的壁率Md、動的剛性Kd、動的振動増幅率τdXに対し、前記検出された北側のピーク加速度値α及び南側のピーク加速度値αを用いて北側及び南側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出すると共に、前記検出された東側のピーク加速度値α及び西側のピーク加速度値αを用いて東側及び西側の動的評点、動的壁率、動的剛性、動的振動増幅率、加速度の大きさをそれぞれ算出することを特徴とする請求項12に記載の耐震診断システム。
  15. 前記解析器は更に、建物の設計図面に基づいて予め計算された設計壁率Msと重力の加速度gを用い、予め定められた以下の式、
    =(1/2π)×[(Ms+1)×g/2]1/2
    を用いて建物の設計共振周波数fを算出することを特徴とする請求項6、7、13、14のいずれか1項に記載の耐震診断システム。
  16. 前記解析器は更に、前記計算された設計壁率Msを用い、予め定められた以下の式、
    Hs=(Ms+1)/2
    を用いて建物の設計評点Hsを算出することを特徴とする請求項15に記載の耐震診断システム。
  17. 前記解析器は更に、前記計算された設計壁率Msと、前記壁量R、前記面積S、及び前記階高hを用い、予め定められた以下の式、
    Ks=(240×R×Ms×S)/h
    を用いて建物の設計剛性Ksを算出することを特徴とする請求項16に記載の耐震診断システム。
  18. 前記解析器は更に、算出した前記設計評点Hs及び算出した前記設計剛性Ksと、予め与えられている前記上部荷重Wu及び前記面積Sを用い、予め定められた以下の式、
    τ=(Hs×Wu×S)/Ks
    を用いて建物の設計振動増幅率τを算出することを特徴とする請求項17に記載の耐震診断システム。
  19. 前記解析器は更に、算出した前記設計共振周波数f、算出した前記設計振動増幅率τと、予め与えられている前記上部荷重Wu、前記面積S、前記重力の加速度gを用い、予め定められた以下の式、
    Ksf=[(2πf×Wu×S]/[g×τ
    を用いて建物の設計剛性Ksfを算出することを特徴とする請求項18に記載の耐震診断システム。
  20. 前記解析器は、前記建物の設計共振周波数として、東西方向の揺れに対する設計共振周波数fsXと、南北方向の揺れに対する設計共振周波数fsYを算出し、
    前記解析器は更に、前記設計共振周波数fに代えて、算出された前記設計共振周波数fsXを用いて前記建物の設計評点Hs、前記設計壁率Ms、前記設計剛性Ks、前記設計振動増幅率τをそれぞれ、設計評点Hs、設計壁率Ms、設計剛性Ks、設計振動増幅率τsXとして算出すると共に、前記設計共振周波数fに代えて、算出された前記設計共振周波数fsYを用いて前記建物の設計評点Hs、前記設計壁率Ms、前記設計剛性Ks、前記設計振動増幅率τをそれぞれ、設計評点Hs、設計壁率Ms、設計剛性Ks、設計振動増幅率τsYとして算出することを特徴とする請求項19に記載の耐震診断システム。
  21. 前記常時微動に起因する振動に代えて建物に強制的に振動を与えるために当該建物の2階に配置された加振機であって、加振周波数を変化させながら加振を行なう加振機を更に含み、前記解析器は、前記建物の動的共振周波数fを検出する際には前記振動の周波数として前記加振周波数を用いることを特徴とする請求項6、7、13、14のいずれか1項に記載の耐震診断システム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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