JP2010258236A - FePd/Feナノコンポジット磁石の製造方法およびそれにより製造されたナノコンポジット磁石 - Google Patents

FePd/Feナノコンポジット磁石の製造方法およびそれにより製造されたナノコンポジット磁石 Download PDF

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紀次 佐久間
Akira Kato
晃 加藤
Tetsuya Shoji
哲也 庄司
Toshiji Teranishi
利治 寺西
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Abstract

【課題】FeCの生成を防止して所望のαFe体積分率を確保し、高い残留磁化および飽和磁化を確保したFePd/Feナノコンポジット磁石の製造方法およびそれにより製造されたFePd/Feナノコンポジット磁石を提供する。
【解決手段】FePdをコアとしFeをシェルとするFePd/Feナノコンポジット磁石の製造方法であって、下記の工程:
Pdナノ粒子をコアとしγFeナノ粒子をシェルとするγFe/Pd複合ナノ粒子をオゾン雰囲気中で加熱するオゾン処理工程、および
上記オゾン処理したγFe/Pd複合ナノ粒子を水素雰囲気中で加熱する水素還元処理工程
を含む製造方法。
【選択図】図4

Description

本発明は、FePdナノ粒子をコアとし、FeをシェルとするFePd/Feナノコンポジット磁石の製造方法およびそれにより製造されたナノコンポジット磁石に関する。
ナノコンポジット磁石は、ナノ粒子の硬磁性相をコアとし、ナノ粒子の軟磁性相をシェルとする硬/軟2相複合構造を備え、特にシェルの軟磁性相を数nm(5nm以下と言われる)の極微細粒とすることにより、コア/シェルの硬軟磁性相間に交換結合が働き、残留磁化および飽和磁化を大幅に増大できるという特性が注目されている。
本出願人は、特許文献1に開示したように、PdをコアとしFeをシェルとするFe/Pd複合ナノ粒子を水素雰囲気下で熱処理する水素還元処理を行なうことにより、FePdをコアとしFeをシェルとするFePd/Feナノコンポジット磁石を製造する際に、生成過程で有機溶媒(エタノール)で洗浄することにより、余分な有機物を除去することを提案した。
しかし、本出願人が上記方法を更に検討したところ、表面の有機配位子は有機溶媒での洗浄では除去しきれないため、水素還元処理中に残留有機配位子が炭化してFeCとなる結果、所望のαFeの体積分率を確保できず、最終生成物であるFePd/Feナノコンポジット磁石の残留磁化および飽和磁化が低下してしまう、という問題があることを新規に見出した。
特許文献2〜5には、金属表面の有機物質をオゾン処理によって除去することが開示されている。すなわち、金属粒子の表面に化学吸着している有機分子をオゾンにより金属粒子と有機分子とに分離させることが、特許文献3には、金属ナノ粒子から有機物を除去するためにオゾン処理を行なうことが、特許文献4には、粉末射出成形体から有機バインダを除去するためにオゾン処理を行なうことが、特許文献5には、ナノ銅微粒子ペースト塗膜の有機物をオゾンで分解処理することが、それぞれ開示されている。
しかし、特許文献2〜5には、FePd/Feナノコンポジット磁石の製造において、Feナノ粒子に付着した有機物が水素還元時の熱処理で炭化されてFeCとなる結果、所望のαFe体積分率を確保できないため、最終生成物であるFePd/Feナノコンポジット磁石の残留磁化および飽和磁化が低下してしまうという問題については何ら配慮がない。
特開2008−138238号公報 再公表特許WO01/070435 特開2004−353040号公報 特開平6−263548号公報 特開平10−308119号公報
本発明は、上記従来の問題を解消し、FeCの生成を防止して所望のαFe体積分率を確保し、高い残留磁化および飽和磁化を実現したFePd/Feナノコンポジット磁石の製造方法およびそれにより製造されたFePd/Feナノコンポジット磁石を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明により、FePdをコアとしFeをシェルとするFePd/Feナノコンポジット磁石の製造方法であって、下記の工程:
Pdナノ粒子をコアとしγFeナノ粒子をシェルとするγFe/Pd複合ナノ粒子をオゾン雰囲気中で加熱するオゾン処理工程、および
上記オゾン処理したγFe/Pd複合ナノ粒子を水素雰囲気中で加熱する水素還元処理工程
を含む製造方法が提供される。
本発明によれば、FeCの原料となる残留有機物を予めオゾン処理により酸化分解して除去するので、水素還元処理時にFeCが生成することがなく、最終生成物であるFePd/Feナノコンポジット磁石においてαFeを所望量確保し、高い残留磁化および飽和磁化を得ることができる。
図1は、γFe2O3/Pdをオゾン処理せずに直接に水素還元処理する従来方法(図の上側のルート)と、オゾン処理してから水素還元処理する本発明の方法(図の下側のルート)とを対比して示す模式図である。 図2は、本発明によるオゾン処理を行なった場合とオゾン処理無しの場合について、オゾン処理後にTGA測定を行なったときの(1)TGA測定チャートおよび(2)TGA測定による試料の重量減少を示す。 図3は、本発明によるオゾン処理を行なった場合とオゾン処理無しの場合について、水素還元処理後の試料のXRDチャートの一例である。 図4は、本発明によるオゾン処理を行なった場合とオゾン処理無しの場合について、磁化測定におけるヒステリシス曲線を示すグラフである。
図1を参照して、本発明の方法を従来法と対比して説明する。
図の左端に示すように、γFe/Pd複合ナノ粒子は、コアであるPdナノ粒子およびシェルであるγFeナノ粒子の表面に、化学的な生成過程に起因する残留有機物が付着している。
そのため、従来のようにこの状態から直接に水素還元処理すると、図の右上に示したように、シェルが完全にαFeとはならずに残留有機物由来のCとFeとの反応性生物であるFeCが混在する状態になる。FeCはほぼ非磁性であり、磁性体であるFeの体積分率が低下して、コア/シェルの硬軟磁性相間の交換結合による残留磁化、飽和磁化の増大が著しく損ねられる。
本発明の方法では、図の下側のルートで示したように、加熱下でオゾンと接触させるオゾン処理を行なって、残留有機物を酸化・分解して除去する。その後、水素還元処理することにより、図の右下に示すように、FeCの生成を伴わずに、γFeの還元により所望量のαFeをシェルとして生成させることができる。
本発明のオゾン処理は下記の条件で行なうことが望ましい。
オゾン処理のためのオゾン濃度は、1000ppm以上であることが望ましく、反応を効率的に進めるためには3000ppm以上であることがより望ましい。
オゾン処理のための熱処理温度は、100℃〜300℃が望ましく、150℃〜250℃がより望ましい。温度が低すぎると反応が促進されず、逆に高すぎると(300℃以上)オゾンが分解(O→O)してしまう。
オゾン処理のための熱処理時間は、熱処理するナノ粒子の量にもよるが、0.5〜5時間程度が望ましい。長時間であっても悪影響はないので、短時間でオゾン処理の効果が不十分になるよりは、長時間行ってオゾン処理の効果が十分に得られるようにする方が望ましい。ただし、粗大化が進行しない範囲とする必要がある。
また、ナノ粒子表面の有機物をオゾンと十分接触させるために、オゾン処理中にナノ粒子粉末を攪拌することが望ましい。
本発明は、ナノ粒子表面の残留有機物をオゾン処理で除去してから水素還元処理を行なうことによりαFeの炭化を防止する。その結果、αFeの体積率が増加して、残留磁化および飽和磁化が増加し、かつ、シェルのαFeナノ粒子とコアのFePdナノ粒子間の交換相互作用が働き易くなることで残留磁化が増加する。
本発明により、下記の条件および手順でFePd/Feナノコンポジット磁石を製造した。
常法により、Fe:Pd=8:2(原子比)であるγFe/Pdナノ粒子(γFeの平均粒径は7nm、Pdの平均粒径は5nm(透過型電子顕微鏡観察により測定))を調製した。
得られたγFe/Pdナノ粒子を石英管内に投入し、3000ppmのオゾンを流量1.5ml/minで流した。
リボンヒーターで石英管を加熱して200℃に設定した。
温度を200℃一定に保持し、3時間保持してオゾン処理を行なった。保持中に、15minに1回程度ナノ粒子粉末を攪拌した。
試料を石英管から取り出し、TGAにより残留有機物を測定した。
オゾン処理した試料を、水素還元雰囲気(H:4%、Ar:96%)中で450℃に10時間保持する熱処理を行なった。得られた試料のVSMにより磁気特性評価およびXRDによる結晶構造解析を行った。
比較材として、オゾン処理を行なわない以外は上記と同様に処理した試料を作製し、上記と同様にTGA、XRD、VSMの各測定を行なった。測定結果を図2〜4に示す。
図2に、オゾン酸化処理有り(本発明)およびオゾン酸化処理無し(比較材)の各試料について、(1)TGA測定チャートおよび(2)TGA測定による重量減少の割合を示す。前記のように、いずれも水素還元処理を行なう前の状態である。
図2(1)に示すように、オゾン処理の有無により、測定温度の上昇に伴うTGA曲線の挙動に明瞭な差異が認められる。すなわち、測定温度が室温から430℃まで上昇するに伴い、230℃付近までは両試料とも重量が比較的なだらかに漸減しているが、オゾン処理有りの本発明材が更に高温領域まで同じ漸減傾向のままなのに対して、オゾン処理無しの比較材は230℃付近で重量が急減している。オゾン処理を施さず表面に有機物が残留している比較材は、この温度より高温の領域で残留有機物が一気に分解・除去されたためであると考えられる。
図2(2)に示すように、オゾン酸化処理無しの比較材はTGA測定前に対してTGA測定後の重量が15wt%減少していたのに対し、本発明のオゾン酸化処理を行なった試料は重量減少割合が3wt%と少なかった。試料無しで空の試料容器のみについてTGA測定を行なった場合の重量減少割合は3.4wt%であり、これは表面に吸着した水分等によるものと考えられる。本発明のオゾン処理有りの場合の重量減少割合はこれと同等であり、残留有機物は実質的に完全に除去されていたと考えられる。これに対して、オゾン処理無しの比較材は、空の試料容器の分を差し引いても重量減少割合12wt%程度に相当する残留有機物が存在したと考えられる。
図3にXRDチャートを示すように、オゾン酸化処理無しで水素還元処理を行なった比較材(上のチャート)は、FeCからの回折ピーク(A〜E)が明瞭に認められるのに対して、本発明によりオゾン酸化処理を行なってから水素還元処理を行なった試料は、FeCからの回折ピークが全く認められない。本発明のオゾン酸化処理により、FeCの生成が防止されたことが分かる。
図4に、VSMによる磁気特性測定結果を示す。横軸が磁界H、縦軸が磁化Mである。2本の磁化曲線のうち、太線がオゾン処理有りの本発明材、細線がオゾン処理無しの比較材である。図示したように、本発明材は比較材と比べて、保磁力Hcは全く同等であり、飽和磁化は比較材のMs0に対してMs1に大きく増加しており、残留磁化も比較材のMr0に対して本発明材Mr1に増加している。特に飽和磁化は比較材のMs0≒90emu/gに対して本発明材のMs1≒135emu/gであり、1.5倍という驚異的な向上を達成している。
本発明によれば、水素還元処理中のFeCの生成を防止して所望のαFe体積分率を確保し、高い残留磁化および飽和磁化を確保したFePd/Feナノコンポジット磁石の製造方法およびそれにより製造されたFePd/Feナノコンポジット磁石が提供される。

Claims (6)

  1. FePdをコアとしFeをシェルとするFePd/Feナノコンポジット磁石の製造方法であって、下記の工程:
    Pdナノ粒子をコアとしγFeナノ粒子をシェルとするγFe/Pd複合ナノ粒子をオゾン雰囲気中で加熱するオゾン処理工程、および
    上記オゾン処理したγFe/Pd複合ナノ粒子を水素雰囲気中で加熱する水素還元処理工程
    を含む製造方法。
  2. 請求項1において、上記オゾン雰囲気のオゾン濃度は1000ppm以上であることを特徴とする製造方法。
  3. 請求項1または2において、上記オゾン処理のための加熱を100℃〜300℃で行なうことを特徴とする製造方法。
  4. 請求項1から3までのいずれか1項において、上記オゾン処理を0.5〜5時間行なうことを特徴とする製造方法。
  5. 請求項1から4までのいずれか1項において、上記オゾン処理中に上記γFe/Pd複合ナノ粒子の粉末を攪拌することを特徴とする製造方法。
  6. 請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法により製造されたFePd/Feナノコンポジット磁石。
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