JP2010253768A - 軸付き合成樹脂成形体の軸振れ矯正方法、および軸振れ矯正装置 - Google Patents

軸付き合成樹脂成形体の軸振れ矯正方法、および軸振れ矯正装置 Download PDF

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Yoshihiro Aramata
芳博 荒俣
Mitsuyoshi Takeshita
光義 竹下
Toshiaki Uejima
敏明 上島
Isoichi Kato
磯一 加藤
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Abstract

【課題】OA機器や扇風機、小型の一般産業機械の軸流型ファンモータのファンは、内側を凹部とした椀形部と椀形部の周囲に配置する複数の羽根部を合成樹脂とし、椀形部の中央に金属製の回転軸を一体成形しているが、合成樹脂の収縮により回転軸が傾き、軸が振れた状態のものが出来てしまう。
【解決手段】高周波誘導コイルと、高周波誘導コイルに通電して合成樹脂成形体の軸を高周波誘導加熱する高周波誘導加熱手段と、軸付き合成樹脂成形体を拘束する矯正冶具とを有し、合成樹脂成形体の表面近傍に高周波誘導コイルを配置し、高周波誘導加熱手段で高周波誘導コイルを用いて合成樹脂成形体の軸を高周波誘導加熱し、軸付き合成樹脂成形体の軸を把持している軸保持部を軟化させ、軸保持部を軟化させた状態において、矯正冶具で軸付き合成樹脂成形体を拘束して軸の傾きを矯正し、軸の傾きを矯正した軸付き合成樹脂成形体を得るようにした。
【選択図】図3

Description

本発明は、回転軸等を有する軸付き合成樹脂成形体の軸振れ矯正方法、および軸振れ矯正装置に関し、特に、OA機器や扇風機、軸流型ファンモータやターンテーブルなど小型の一般産業機械に用いられる軸付き合成樹脂成形体の軸振れ矯正方法、および軸振れ矯正装置に関する。
従来からOA機器や小型の一般産業機械等に用いられている軸流型ファンモータのファンには合成樹脂で作られたものが多くある。これらのファン10は、例えば図16に外観斜視図を示すように、内側を凹部とした椀形部11とその周囲に配置した複数の羽根部12を合成樹脂で成形し、椀形部11の中央に金属製の回転軸20を一体成形、あるいは圧入して作っている。
図17にファン10の椀形部11を中央で断面にした断面図を示す。図17で、椀形部11の底部11aの中央には、軸方向に所定の長さを有する円筒形の軸保持部11bを設けて、回転軸20を所定の長さだけ軸方向に把持している。軸保持部11bの形状としては回転軸20を所定の力で把持するためにある程度の肉厚と長さが必要であり、軸保持部11bは底部11aに対して肉厚な構造となっている。軸保持部11bを含む椀形部11を樹脂成形すると、肉厚の薄い底部11aの方が肉厚の厚い軸保持部11bより先に固化する。そのため、軸保持部11bには外周方向に対して不均一の引っ張り力が作用し、軸保持部11bによって支持される回転軸20が傾いてしまうことがあった。
図18は、回転軸20が椀形部11に対して傾斜した極端な例を示している。実際には、回転軸20の先端の振れ(Δ(デルタ))が目に見えるほど傾斜することは無く、振れは多いときでも0.2ミリメートル程度といわれている。椀形部11に対して傾斜した回転軸20を、図示しないモータに取り付けて回転させると、ファン10がスムーズに回転せず、振動や騒音を引き起こしたり、回転軸支承用ベアリングの早期損耗を引き起こしたりすることがあった。また、図示しない軸流型ファンモータのケーシングをこすってしまうという不具合を生じることがあった。
そこで回転軸の振れを少なくするため、従来技術としては、椀形部11の成形ゲートを回転軸20の周囲をとり囲むように設け、合成樹脂を椀形部11の成形金型内の中心から外側に放射線状に均一に流し、合成樹脂成形時の熱収縮量が均一になるように工夫したり(特許文献1参照)、椀形部11の底部11aと軸保持部11bの肉厚を均一にするために軸保持部11bの表面に複数の凹部を設け、凹部に対応する金型部分を回転軸20の振れを測定しつつ試行錯誤で修正加工して、回転軸20の振れを小さくする工夫をしたりしていた(特許文献2参照)。しかし、ゲート位置や、肉厚の均一化の工夫では、樹脂成形時の回転軸20の振れをある程度小さくすることはできるが、樹脂成形時および樹脂冷却時に生じた振れを矯正することはできなかった。
特開平10−166398号公報 特開2003−340834号公報
本発明は、上記のような軸付き合成樹脂成形体において軸が傾いて一体化されてしまった場合であっても、軸の傾き、つまり振れを矯正できるようにした軸付き合成樹脂成形体の軸振れ矯正方法および軸振れ矯正装置を提供することを課題としている。
本発明は、軸付き合成樹脂成形体の表面近傍に高周波誘導コイルを配置し、高周波誘導コイルに通電して合成樹脂成形体に一体化されている金属製の軸を高周波誘導加熱し、軸を把持している軸保持部を軟化させた状態で、軸付き合成樹脂成形体を矯正冶具で拘束して、軸の傾きを矯正した軸付き合成樹脂成形体を得るようにしている。
また本発明は、軸付き合成樹脂成形体を矯正冶具で拘束し、拘束状態で合成樹脂成形体の表面近傍に高周波誘導コイルを配置し、高周波誘導コイルに通電して合成樹脂成形体に一体化されている金属製の軸を高周波誘導加熱し、軸を把持している軸保持部を軟化させて軸の傾きを矯正し、軸の傾きを矯正した軸付き合成樹脂成形体を得るようにしている。
また本発明は、軸付き合成樹脂成形体の軸の当該部を高周波誘導加熱する際に、非接触温度計で軸の温度を検出して高周波誘導加熱を制御している。
本発明によれば、軸が傾いて一体化してしまった軸付き合成樹脂成形体の軸を高周波誘導加熱し、軸保持部を軟化させた状態で軸の傾きを矯正している。そのため、内部応力を生じさせずに矯正作業を行うことが出来るので、軸の傾きを安定的に矯正することができる。
また、本発明によれば、軸が傾いて一体化してしまった軸付き合成樹脂成形体を、矯正治具に拘束した状態で高周波誘導加熱し、軸保持部を軟化させて軸の傾きを安定的に矯正することができる効果がある。また、矯正治具に拘束した際に生じる内部応力が軸保持部の軟化により消えるので、矯正した後の経年変化に起因する軸の振れや合成樹脂成形体のワレなどを予防する効果がある。
また本発明は、軸付き合成樹脂成形体の軸を高周波誘導加熱する際に、非接触温度計で軸の温度を検出して高周波誘導加熱を制御している。そのため、軸付き合成樹脂成形体の軸を高周波誘導加熱して軸保持部を軟化させる作業を安定的に行うことが出来るという効果がある。
本発明の実施の形態1にかかるファンと矯正治具の位置関係を示した断面図。 本発明の実施の形態1にかかるファンを矯正治具に載置した状態を示した断面図。 本発明の実施の形態1にかかるファンを高周波誘導加熱する状態を示した断面図。 本発明の実施の形態1にかかるファンと高周波誘導コイルの位置関係を示した外観斜視図。 (a)本発明の実施の形態1にかかるファンを押さえ冶具で押さえる状態を示す断面図(b)本発明の実施の形態1にかかるファンを押さえ冶具で押さえつけた状態を示す断面図。 (a)本発明の実施の形態1にかかる軸振れ矯正方法の実験結果の測定部位を示した図(b)本発明の実施の形態1にかかる軸振れ矯正方法の実験結果を示す図。 本発明の実施の形態1にかかる軸振れ矯正方法の工程を示す図。 本発明の実施の形態1にかかるファンを高周波誘導加熱する状態を示した変形例の断面図。 本発明の実施の形態1にかかるファンを高周波誘導加熱する状態を示した他の変形例の断面図。 本発明の実施の形態2にかかるファンを高周波誘導加熱する状態を示した断面図。 本発明の実施の形態2にかかるファンを高周波誘導加熱する状態を示した変形例の断面図。 (a)本発明の実施の形態3にかかるファンと矯正治具と押さえ冶具の位置関係を示した断面図(b)本発明の実施の形態3にかかるファンを押さえ冶具で押さえつけた状態を示す断面図。 本発明の実施の形態3にかかるファンを高周波誘導加熱する状態を示す断面図。 本発明の実施の形態3にかかる軸振れ矯正方法の工程を示す図。 (a)本発明の実施の形態1のタイミングチャート(b)本発明の実施の形態2のタイミングチャート。 従来のファンの外観斜視図。 従来のファンの断面図。 従来のファンの断面図。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1を図面とともに説明する。図1に、本発明の実施の形態1にかかるファン10と矯正治具30の位置関係を示した断面図を示す。なお、ファン10の構造は既に図16から図18で説明したものと同一構造であり説明を省略するが、理解しやすくするために回転軸20が椀形部11に対して大きく傾いている例を示して説明する。
矯正治具30は、軸ガイド部31と、椀形部分支持部32とで構成している。軸ガイド部31には、回転軸20を挿入するガイド孔31aを有し、その上に椀形部分支持部32を同芯で一体に固定している。椀形部分支持部32の上表面32aと軸ガイド部31のガイド孔31aは、矯正治具30の上にファン10を重ねて押さえつけた状態で、椀形部の底部11aの外表面と回転軸20とが垂直に交わるように高い精度で作っている。
図2は、ガイド孔31aに回転軸20を挿入して矯正治具30の上にファン10を重ねた状態を示している。図2のファン10は、椀形部の底部11aの外表面に対して回転軸20が傾いているので、矯正治具30に対して少し浮き上がった状態で載置される。
本発明は、図2のように回転軸20が椀形部の底部11aの外表面に対して傾いて一体成形されたファン10の回転軸20の傾きを矯正するために、高周波誘導コイルを用いて回転軸20を加熱し、回転軸保持部11bを軟化し、回転軸保持部11bが軟化している状態で回転軸20の傾きを矯正する。
図3に本発明の実施の形態1にかかるファンを高周波誘導加熱する状態を示した断面図を示す。図3では、ファン10の椀形部の底部11aの外表面に高周波誘導コイル40を配置し、回転軸20の上方に非接触温度計60を配置した構成を示している。図4に、ファン10と高周波誘導コイル40の位置関係を示した外観斜視図を示す。高周波誘導コイル40の巻き方については、椀形部11の回転軸20が突出していない表面の近傍で中央から外側へ平面的に広がるように渦巻状に巻いている。高周波誘導コイルの端40a、40bは図示しない高周波誘導加熱装置に接続している。
図3で、高周波誘導コイル40に電流を流すと、周囲にループ状の磁力線が出来る。図3では、磁力線のイメージを二点鎖線50で示している。高周波誘導コイル40に流す電流の向きを高周波で切り替えると、磁力線内の導体である回転軸20に誘導電流が流れて発熱する。
非接触温度計60は回転軸20の温度を監視する。非接触温度計60は図示しない高周波誘導加熱装置に接続している。図示しない高周波誘導加熱装置は、非接触温度計60が回転軸20の端部の温度が所定温度に達したことを検出すると、高周波誘導コイル40の通電を止めるなどの通電制御を行う。回転軸20が発熱すると、回転軸20を把持している軸保持部11bが軟化する。
図5(a)、(b)に、軸保持部11bを軟化させた状態で、回転軸の振れを矯正する動作を示す。図5(a)は、ファン10の椀形部の底部11aの外表面を押さえ冶具33でF矢印の方向に押さえ始めた状態を示す。椀形部分支持部32と押さえ冶具33はいずれも厚さの厚い円筒形の冶具であり、ファン10の椀形部11を同心円状の所定幅で上から押さえていく。矯正治具30に対して少し浮き上がっていたファン10は、押さえ冶具33に押さえられて矯正治具30に密着する。
図5(b)に、ファン10の椀形部の底部11aの外表面を押さえ冶具33でF矢印のように押さえきった状態を示す。図示しない高周波誘導加熱装置により回転軸20が所定温度に達し、その熱によりファン10の軸保持部11bは軟化しているので図5(a)から図5(b)のように押さえ冶具33でファン10が押さえつけられると、軸保持部11bが把持している回転軸20の振れは矯正冶具30の寸法形状通りに修正される。
なお上記では、矯正治具30の軸ガイド部31と椀形部分支持部32の材質、そして押さえ冶具33の材質を説明しなかったが、これらは高周波誘導加熱されにくい非磁性体の材料であることが望ましい。例えばベークライトやセラミック、磁性を帯びにくいアルミニュウムなどを用いると、矯正治具30等はあまり加熱されず、鉄やステンレス鋼の回転軸20がよく加熱される。
図6に、本発明の実施の形態1の軸振れ矯正方法によりファンの回転軸の振れを矯正した実験結果を示す。図6(a)に実施の形態1の軸振れ矯正方法を試みた実験結果の測定部位を示す。測定の都合上、ファン10の回転軸20を垂直孔に入れて支え、椀形部の底部11aの外表面に、てこ式マイクロメータを当てた状態でファン10を回転させ、椀形部の底部11aの外表面が上下に振れる量(δ)を測定した。図6(b)の実験結果を見ると、約0.2ミリメートル程度振れていた振れ量(δ)が大きく改善されている。
なお実験では、回転軸20の端面の温度が一定の温度に到達した時点で高周波誘導コイル40の通電を切る制御をした。振れ量が大きい場合には高周波誘導コイル40の通電時間を制御して軸保持部11bが軟化している時間を長くするなどして軸の振れを更に低減することが期待できる。
図7は、本発明の実施の形態1の軸振れ矯正方法を、ターンテーブルを用いた自動機で行うときの工程を示したものである。ターンテーブルを用いた自動機を用いると、高周波誘導加熱して軸保持部11bを軟化させたタイミングと矯正冶具で拘束して矯正するタイミングを軸振れ矯正に必要な条件に合うように制御出来るので、軸振れ矯正作業を安定的に行うことが可能になる。
軸振れ矯正の工程は、矯正冶具30にファン10を装着し(ステップS1)、高周波誘導コイル40で加熱し(ステップS2)、押さえ冶具33で加圧して拘束して回転軸の振れを矯正し(ステップS3)、常温に冷却し(ステップS4)、矯正冶具30からファン10を取り出す(ステップS5)という5つの工程を順次行うことになる。
なお、上記では、矯正冶具30にファン10を装着し、ファン10の上に高周波誘導コイル40を配置して高周波誘導加熱する構成を示したが、図8に示すように、高周波誘導コイル41を矯正冶具30側に配置しても良い。図8の構成であれば、高周波誘導コイル41の中央に回転軸20が位置するので、高周波誘導コイル41の磁力線が回転軸20を通りやすく、効率的に加熱できる利点がある。
また上記では、矯正冶具30の椀形部分支持部32は、椀形部の底部11aを支持して、椀形部の底部11aと回転軸20の垂直度を出すように矯正していたが、図9に示すように、椀形部の外周の縁部11cを支持して、椀形部の外周の縁部11cと回転軸20の垂直度を出すようにしてもよい。図9では、椀形部分支持部32bの径を大きくして椀形部の外周の縁部11cを支持している。回転軸20から離れた縁部11cを支持した方が垂直度が出しやすいという利点がある。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本発明の実施の形態2は、図10に示すとおり、高周波誘導コイル42の巻き方を回転軸20の軸方向に螺旋状に巻いたことに特徴がある。ファン10の回転軸20が突出していない表面上に、回転軸の軸方向に螺旋状に巻いた高周波誘導コイル42を配置して電流を流すことにより、高周波誘導コイル42の周囲にループ状の磁力線が出来る。図10では、磁力線のイメージを二点鎖線51で示している。高周波誘導コイル42に流す電流の向きを高周波で切り替えると、磁力線内の導体である回転軸20に誘導電流が流れて発熱する。回転軸20が発熱すると軸保持部11bが軟化する。ファン10は、軸保持部11bが軟化した状態で、矯正治具30に押さえ治具33で押されて拘束されて、回転軸20の振れが矯正される。
本発明の実施の形態2の矯正方法は原理的には実施の形態1と同じであるが、高周波誘導コイル42の巻き方を回転軸の軸方向に螺旋状に巻いたために、コイルに電流を流したときに生じるループ状の磁力線の密度を本発明の実施の形態1の場合に比べて高くすることが出来る。そのため、回転軸をより短い時間で所定温度に加熱することが出来るので、生産性が増すという効果がある。
なお、上記の図10に示した構成では、矯正冶具30にファン10を装着し、ファン10の上から高周波誘導コイル42で加熱するようにしていたが、図11に示すように、高周波誘導コイル43を矯正冶具30側に配置した構成にしても良い。高周波誘導コイル43を矯正冶具30側に配置すれば、高周波誘導コイル43の中央に回転軸20が位置するので、高周波誘導コイル43の磁力線が回転軸20を通りやすく、回転軸20を効率的に加熱できる利点がある。
また、径を大きくした椀形部分支持部32bを用いて椀形部の外周の縁部11cを支持し、椀形部の外周の縁部11cと回転軸20の垂直度を出すようにもよい。回転軸20から離れた縁部11cを支持すると回転軸20と椀形部の垂直度が出しやすいという利点がある。
更に、椀形部分支持部32bの先に椀形部外周規制部32cを追加して設け、椀形部の外周の縁部11cの中心と回転軸20の軸心を一致させるようにしてもよい。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3を説明する。実施の形態3は、あらかじめ軸付き合成樹脂成形体を矯正冶具で目的とする姿に拘束した状態で、合成樹脂成形体の表面近傍に高周波誘導コイルを配置し、高周波誘導コイルに通電して合成樹脂成形体に一体化している金属製の軸を高周波誘導加熱し、軸を把持している軸保持部を軟化させて軸の傾きを矯正する。
既に説明した実施の形態1では、軸付き合成樹脂成形体の軸保持部を軟化させた状態で、矯正冶具で拘束して軸の傾きを矯正しているのに対し、実施の形態3では、軸保持部を軟化させる前に軸付き合成樹脂成形体を矯正冶具で拘束し、拘束した状態で、軸保持部を軟化させて軸の傾きを矯正している点に特徴がある。
図12(a)に、本発明の実施の形態3にかかるファン10と矯正治具30と押さえ冶具33をそれぞれ断面図で示す。ファン10は矯正治具30の上に重ねられ、ファン10の上方から押さえ冶具33で押さえるようにしている。なお、ファン10の構造、矯正治具30、押さえ冶具33の構造は実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
図12(b)は、矯正治具30の上にファン10を重ね、更にファン10の椀形部の底部11aの外表面を押さえ冶具33でF矢印のように押さえつけた状態を示す。椀形部分支持部32と押さえ冶具33はいずれも厚さの厚い円筒形の冶具で、ファン10の椀形部11を同心円状の所定幅で上下から挟んでいる。図12(b)の矯正治具30の上にファン10を重ねて押さえつけて拘束した状態は、椀形部の底部11aの外表面と回転軸20とが垂直に交わる目標とする姿である。椀形部の底部11aの外表面に対して回転軸20が垂直に交わっていれば、ファン10の椀形部11と回転軸20と矯正治具30の間は、互いに押し合うことはない。しかし、椀形部の底部11aの外表面に対して回転軸20が傾き、いずれかの向きに振れていれば、ファン10の椀形部11と回転軸20と矯正治具30の間では、回転軸20の傾きに応じて互いに押し合う力、すなわち矯正力としての内部応力が作用する。
図13は、図12(b)のファン10の椀形部11の上に高周波誘導コイル40を配置し、高周波誘導コイル40に通電して、回転軸20を加熱し、軸保持部11bを軟化させて回転軸の振れを矯正している状態を示している。なお、高周波誘導コイル40は、その巻き方を椀形部11の回転軸20が突出していない表面の近傍で中央から外側へ平面的に広がるように巻いているのは実施の形態1の図4と同じである。
回転軸20の上方には非接触温度計60を配置している。非接触温度計60は、高周波誘導コイル40に通電して温度上昇する回転軸20の温度を監視する。非接触温度計60は図示しない高周波誘導加熱装置に接続しており、非接触温度計60が回転軸20の端部の温度が所定温度に達したことを検出すると、高周波誘導コイル40の通電を止める等の制御をすることも実施の形態1と同じである。
本発明の実施の形態3では、図13のように、ファン10を矯正治具30に重ね、押さえ冶具33で押さえて拘束した状態で、高周波誘導コイル40に通電して回転軸20を所定温度に到達するまで加熱して軸保持部11bを軟化させる。軸保持部11bが軟化するとファン10の回転軸20の振れの程度に応じて生じている内部応力が矯正力として作用し、ファン10の椀形部11に対する回転軸20の振れが修正される。
図14に実施の形態3の軸振れ矯正方法をターンテーブルを用いた自動機で実現するときの工程を示す。なお、既に説明した図7と同じ部分は、同じ番号を付して説明を省略する。実施の形態3の軸振れ矯正方法の工程は、矯正冶具30にファン10を装着し(ステップS1)、押さえ冶具33で加圧してファン10を矯正冶具30に拘束し(ステップS20)、ファン10を矯正冶具30に拘束した状態で高周波誘導コイル40で加熱し(ステップS30)、常温に冷却し(ステップS4)、矯正冶具30からファン10を取り出す(ステップS5)という5工程である。
実施の形態3によると、軸付き合成樹脂成形体を矯正冶具で目的とする姿に拘束し、内部応力を加えた状態で軸保持部11bを軟化させるため、軸保持部11bが軟化している時間が短くても、内部応力を加えた状態と軟化している状態がタイミング的に必ず重なる。そのため、軟化した軸保持部11bが冷えて固化してしまわないうちに急いで矯正冶具30で拘束するというような注意を払わなくてすむという利点がある。
比較のために、図15(a)に実施の形態1の加熱と加圧の各タイミングの関係をタイミングチャートとして示し、図15(b)に実施の形態3の加熱と加圧の各タイミングの関係を同じくタイミングチャートとして示す。図15(a)に示す実施の形態1の場合は、先に加熱をして(th1)、軸保持部が軟化した状態で矯正冶具で拘束して加圧して(tp1)、回転軸の振れを矯正している。加熱して軸保持部が軟化した状態にあるタイミング(th1〜th2)と、矯正するために加圧するタイミング(tp1〜tp2)が重なるようにしている。タイミングがずれると軸振れ矯正ができなくなる。
一方、図15(b)に示す実施の形態3の場合は、先に矯正冶具で拘束して加圧し(tp3)、加圧した状態で加熱し(th3)軸保持部を軟化させて回転軸の振れを矯正している。矯正するために加圧しているタイミング(tp3〜tp4)内で加熱すれば、加熱して軸保持部が軟化した状態にあるタイミング(th3〜th4)と、矯正するために加圧するタイミング(tp3〜tp4)が必ず重なる。そのため、実施の形態3は、実施の形態1ほど厳密に加熱工程と加圧工程のタイミングあわせをしなくても、軸振れ矯正作業を安定的に行えるという利点がある。
本発明は、OA機器や扇風機、軸流型ファンモータやターンテーブルなど小型の一般産業機械に用いられる軸付き合成樹脂成形体の軸振れを矯正するのに適用することが出来る。適用範囲としては、玩具のコマのように一つの端面の両側に軸を突出させた軸付き合成樹脂成形体であってもよく、小さな軸付き合成樹脂成形体から大型の軸流型ファンモータのファン、そしてその他の軸付きターンテーブルなどの軸振れを矯正するのに適用することが出来る。
10 ファン
11 椀形部
11a 底部
11b 軸保持部
11c 縁部
12 羽根部
20 回転軸
30 矯正治具
33 押さえ治具
40、41、42、43 高周波誘導コイル
60 非接触温度計

Claims (6)

  1. 少なくとも一つの端面に軸を突出させた軸付き合成樹脂成形体の軸振れ矯正方法であって、
    前記合成樹脂成形体の表面近傍に高周波誘導コイルを配置し、
    前記高周波誘導コイルに通電して前記合成樹脂成形体に一体化されている軸を高周波誘導加熱し、前記軸を把持している前記合成樹脂成形体の軸保持部を軟化させ、前記軸保持部を軟化させた状態において、前記軸付き合成樹脂成形体を矯正冶具で拘束して前記軸の傾きを矯正し、
    前記軸の傾きを矯正した軸付き合成樹脂成形体を得るようにした
    ことを特徴とする軸付き合成樹脂成形体の軸振れ矯正方法。
  2. 少なくとも一つの端面に軸を突出させた軸付き合成樹脂成形体の軸振れ矯正方法であって、
    前記合成樹脂成形体を拘束する矯正冶具で拘束し、
    前記拘束状態で、前記合成樹脂成形体の表面近傍に高周波誘導コイルを配置し、
    前記高周波誘導コイルに通電して前記合成樹脂成形体に一体化されている軸を高周波誘導加熱し、前記軸を把持している軸保持部を軟化させて前記軸の傾きを矯正し、
    前記軸の傾きを矯正した軸付き合成樹脂成形体を得るようにした
    ことを特徴とする軸付き合成樹脂成形体の軸振れ矯正方法。
  3. 前記軸付き合成樹脂成形体の軸を高周波誘導加熱して、前記軸を把持している前記合成樹脂成形体の軸保持部を軟化させる際に、
    非接触温度計で前記軸の温度を検出して高周波誘導加熱を制御するようにした請求項1又は請求項2のいずれかに記載の軸付き合成樹脂成形体の軸振れ矯正方法。
  4. 少なくとも一つの端面に軸を突出させた軸付き合成樹脂成形体の軸振れを矯正する軸振れ矯正装置であって、
    高周波誘導コイルと、
    前記高周波誘導コイルに通電して前記合成樹脂成形体の軸を高周波誘導加熱する高周波誘導加熱手段と、
    前記合成樹脂成形体を拘束する矯正冶具と、を有し、
    前記合成樹脂成形体の表面近傍に前記高周波誘導コイルを配置し、
    前記高周波誘導加熱手段で前記高周波誘導コイルを用いて前記合成樹脂成形体の軸を高周波誘導加熱し、前記軸付き合成樹脂成形体の前記軸を把持している軸保持部を軟化させ、
    前記軸保持部を軟化させた状態において、前記矯正冶具で前記軸付き合成樹脂成形体を拘束して前記軸の傾きを矯正し、
    前記軸の傾きを矯正した軸付き合成樹脂成形体を得るようにしたことを特徴とする軸付き合成樹脂成形体の軸振れ矯正装置。
  5. 少なくとも一つの端面に軸を突出させた軸付き合成樹脂成形体の軸振れを矯正する軸振れ矯正装置であって、
    前記合成樹脂成形体を拘束する矯正冶具と、
    高周波誘導コイルと、
    前記高周波誘導コイルに通電して前記合成樹脂成形体の軸を高周波誘導加熱する高周波誘導加熱手段と、を有し、
    前記矯正冶具で前記合成樹脂成形体を拘束した状態で、
    前記合成樹脂成形体の表面近傍に前記高周波誘導コイルを設け、
    前記高周波誘導加熱手段で前記高周波誘導コイルを用いて前記合成樹脂成形体の軸を高周波誘導加熱し、前記軸付き合成樹脂成形体の前記軸を把持している軸保持部を軟化させて前記軸の傾きを矯正し、
    前記軸の傾きを矯正した軸付き合成樹脂成形体を得るようにしたことを特徴とする軸付き合成樹脂成形体の軸振れ矯正装置。
  6. 更に前記軸付き合成樹脂成形体の軸の温度を検出する非接触温度計を有し、前記軸を高周波誘導加熱する際に、前記非接触温度計で前記軸の温度を検出して高周波誘導加熱を制御するようにした請求項4又は請求項5のいずれかに記載の軸付き合成樹脂成形体の軸振れ矯正装置。
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