JP2010253554A - 連続鋳造用鋳型及び水平連続鋳造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属またはその合金を連続鋳造する際に、鋳塊の破断及び溶湯漏れが発生することなく安定した状態で引き抜くことができる連続鋳造鋳型を提供すること。
【解決手段】連続鋳造用鋳型3は、貯溜した溶湯2が吐出される鋳込口1aを有する保持炉1と、この保持炉1の外側に設けられ鋳込口1aに連通する鋳造空間9を形成する一対の黒鉛鋳型4,4と、この黒鉛鋳型4,4を冷却する水冷ジャケット5,5と、を備えている。連続鋳造用鋳型3は、鋳造空間9に溶湯2を通過させることにより鋳塊7を鋳造する。黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5との間の鋳込口側に非接触の空洞からなる非接触部10,10が形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属またはその合金を連続鋳造する連続鋳造用鋳型及び水平連続鋳造方法に関し、特に、銅合金製やアルミニウム合金製等の圧延用の薄板形状のアルミニウム合金等の鋳塊を鋳造するのに好適な連続鋳造用鋳型及び水平連続鋳造方法に関する。
従来、圧延、押出、引抜等の塑性加工によって製造される銅合金製やアルミニウム合金製等の鋳塊の展伸材は、鋳塊品質が優れ、多様な合金に対応できる半連続鋳造法のDC鋳造法(Direct Chill Casting)で製造されている。しかしながら、DC鋳造法では、「高強度材、凝固温度範囲が大きい合金では鋳造割れが発生する」という問題点があった。また、「鋳塊の底部及び頭部が非定常部であるため、製品にはならず、歩留が低い」、「熱間圧延を必要とする」という問題点もある。
この問題点を解決する方法としては、鋳造割れが発生せず、連続鋳造が可能で熱間圧延工程を省略できる双ロール式連続鋳造圧延法等の薄板連続鋳造法がある。しかしながら、この薄板連続鋳造法では、凝固温度範囲が大きい合金の場合、鋳造中に溶湯漏れが発生するため、鋳造することができなかった。
図12は、従来の横型連続鋳造装置を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)のZ−Z拡大断面図である。
図12(a)に示すように、従来、凝固温度範囲が大きい合金の鋳造が可能な装置としては、水冷ジャケット500に黒鉛鋳型400をセットした連続鋳造装置A100が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。この連続鋳造装置A100では、保持炉100に貯溜した溶湯200を黒鉛鋳型400内の鋳造空間900に注入し、水冷ジャケット500によって黒鉛鋳型400を冷却しながら溶湯200を黒鉛鋳型400で抜熱して凝固させている。
連続鋳造装置A100は、溶解炉で溶融された金属の溶湯200を貯溜する保持炉100と、保持炉100の下部側壁に形成された鋳込口110から溶湯200を導入し抜熱して鋳塊700を形成する鋳型300と、鋳塊700を鋳型300から引き抜いて連続的に鋳造するためのピンチロール800と、から主に構成されている。
図12(b)に示すように、鋳型300は、鋳造空間900を形成する上下一対の黒鉛鋳型400の上下外側に、通水路510を有する水冷ジャケット500が配置され、その上下外側にそれぞれ配置された鋳型外枠600をボルト締めして組み立てられている。
連続鋳造装置A100は、鋳造空間900に溶湯200を導入して、水冷ジャケット500で黒鉛鋳型400を冷却することにより、溶湯200が凝固されて、鋳塊700が形成される。連続鋳造装置A100では、その鋳塊700をピンチロール800で引き抜くことで、保持炉100から鋳造空間900に供給された溶湯200が連続鋳造される。
しかしながら、連続鋳造装置A100では、鋳造空間900に溶湯200が導入されたときの黒鉛鋳型400への抜熱量が大きいので、鋳込口110側付近で溶湯200が急速に凝固することにより、ピンチロール800で引き抜く際に、その部位の引出抵抗が増大するため、鋳塊700が破断し易いという問題がある。
これを防止する手段としては、鋳塊700の引抜速度を上げて、単位時間当たりの入熱を増加させることが考えられるが、この場合、鋳型300の鋳塊出口410側で、冷却不足により溶湯漏れが発生するという問題がある。
前記鋳造空間900内で鋳塊700が破断するのを防止した黒鉛鋳型400としては、黒鉛鋳型400の溶湯200が接触する面に耐熱性物質等を被着し、黒鉛鋳型400内での凝着を抑制することにより、鋳塊700の破断に起因する鋳塊割れの欠陥を防止した連続鋳造用鋳型が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、溶湯が接触する面にセラミックス材を複合させた黒鉛鋳型により高品質の鋳塊を鋳造できるようにした複合黒鉛鋳型としては、特許文献2に開示された連続鋳造用複合鋳型が知られている。
しかしながら、前記特許文献1,2に記載の連続鋳造用鋳型のように、黒鉛鋳型の溶湯が接触する面に耐熱性物質等を被着した場合には、鋳造中に耐熱性物質等が剥離するため、長時間にわたって安定した鋳造ができないという問題点があった。
このような問題点を解消して黒鉛鋳型の温度を適度に保ち、溶湯入側付近での凝固を防止した連続鋳造用鋳型としては、黒鉛鋳型と水冷ジャケットとの間に緩衝帯を設けて、熱交換を抑制した連続鋳造用鋳型が知られている(例えば、特許文献3参照)。
特開平5−318033号公報(請求項1及び図2) 特開平5−318034号公報(請求項1及び図2) 特開平2−151347号公報(特許請求の範囲及び第1図) 特開平6−218497号公報(図2)
しかしながら、特許文献3に記載の連続鋳造用鋳型では、黒鉛鋳型と水冷ジャケットとの間全体に緩衝帯を設けているので、冷却能力が必要な鋳塊出口側の冷却も緩和されてしまうため、溶湯漏れが発生し易く、実用化できないという問題点があった。即ち、凝固温度範囲が大きい合金では溶湯を凝固させるに足る鋳型長さが長くなり過ぎるので鋳造設備をコンパクトにできずに鋳型の段取り変え作業が煩雑となり易く実動率が低くなる問題や、凝固温度範囲が小さい合金と区別された専用設備を導入する場合も設備費用が嵩む問題があった。
したがって、鋳塊の破断を防止し、かつ、溶湯漏れの防止を併せて行うことができる連続鋳造用鋳型の構成は存在しなかった。
また、Al−5〜15質量%Mg合金等の凝固温度範囲が大きい合金を連続鋳造する場合は、鋳型からの冷却により形成される鋳型内部の固液共存部が大きくなる。この固液共存部は、強度が低く、容易に鋳塊が破断する。また、板両端部は板中央部に比べ鋳型からの抜熱量が大きいため、鋳塊の幅方向での抜熱量は不均一となる。このため、鋳塊を鋳型から引き抜く際に、鋳型内にて板両端部の凝固層と鋳型との間で摩擦抵抗が生じると、板中央部の強度の低い固液共存部で鋳塊が破断するという問題点があった。
この鋳塊の破断を防止するものとしては、鋳塊からの抜熱量が大きい鋳型の幅方向の両端部の冷却を緩和し、鋳塊の幅方向での抜熱量を均一に揃えるようにした鋳型が提案されている。
例えば、特許文献4では、鋳塊の幅方向の両端に対応する鋳型の両端部の黒鉛鋳型と水冷ジャケットとの間に矩形の貫通孔を施した連続鋳造用鋳型が提案されている。
しかしながら、この連続鋳造用鋳型は、鋳塊の両端部の冷却が過剰に緩和されるため、溶湯漏れが発生し易いという問題点があるので、実用化することができない。
従来の水平連続鋳造方法では、凝固温度範囲が大きい合金を鋳造する場合、鋳塊の幅方向での抜熱量が不均一であるため、鋳塊を引き抜く際に、鋳型内にて板両端部の凝固層と鋳型との間で摩擦抵抗が生じると、板中央部の強度の低い固液共存部で鋳塊が破断するという問題点があった。
また、鋳塊の幅方向の抜熱量を均一に揃えるために、鋳塊の幅方向の両端に対応する鋳型の両端部の黒鉛鋳型と水冷ジャケットとの間に矩形の貫通孔(空洞部)を施して連続鋳造する水平連続鋳造方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、この水平連続鋳造方法であっても、鋳塊の両端部の冷却が過剰に緩和され、溶湯漏れが発生するため、鋳造することができない。したがって、従来の水平連続鋳造方法では、鋳塊の破断と溶湯漏れを同時に防止することはできなかった。
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、金属またはその合金を連続鋳造する際に、鋳塊の破断及び溶湯漏れが発生することなく安定した状態で引き抜くことができる連続鋳造鋳型と、Al−5〜15質量%Mg合金等の凝固温度範囲が大きい合金を連続鋳造する際に、鋳塊の破断や溶湯漏れが発生することなく安定した状態で引き抜くことができる水平連続鋳造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、請求項1に記載の連続鋳造用鋳型は、前記鋳造空間に前記溶湯を通過させることにより鋳塊を鋳造する連続鋳造用鋳型において、前記黒鉛鋳型と前記水冷ジャケットとの間の鋳込口側に、空洞からなる非接触部が形成されていることを特徴とする。
ここで、「鋳込口側」とは、連続鋳造用鋳型において、連続鋳造用鋳型の保持炉側の端面から鋳塊出口の開口端の近傍までの領域となる位置をいう。
かかる構成によれば、連続鋳造用鋳型は、黒鉛鋳型と水冷ジャケットとの間の鋳込口側
に非接触の空洞からなる非接触部が形成されていることにより、金属またはその合金を連続鋳造する際に、非接触部によって鋳込口付近の黒鉛鋳型と水冷ジャケットとの間の熱移動が抑制されるため、黒鉛鋳型の鋳込口付近が水冷ジャケットにより局部的に過冷却されるのを防止することができる。
請求項2に記載の連続鋳造用鋳型は、請求項1に記載の連続鋳造用鋳型であって、前記黒鉛鋳型と前記水冷ジャケットとの間の鋳塊出口側寄りに、前記黒鉛鋳型と前記水冷ジャケットが互いに接触する接触面が形成されていることを特徴とする。
ここで、「鋳塊出口側寄り」とは、連続鋳造用鋳型において、連続鋳造用鋳型の保持炉側の端面から鋳塊出口の開口端までの間の領域を、任意の地点で鋳込口側と鋳塊出口側とに二分した場合の鋳塊出口側の領域をいう。
かかる構成によれば、黒鉛鋳型と水冷ジャケットとの間の鋳塊出口側寄りに、黒鉛鋳型と水冷ジャケットが互いに接触する接触面が形成されていることによって、鋳塊出口側寄りの温度を接触面により加減して調整することが可能となる。
請求項3に記載の連続鋳造用鋳型は、請求項1または請求項2に記載の連続鋳造用鋳型であって、前記非接触部は、少なくとも前記鋳込口側から前記鋳造空間内に前記溶湯を注湯後、鋳塊中心部が凝固する部位まで形成されていることを特徴とする。
かかる構成によれば、鋳込口から鋳造空間内に前記溶湯を注湯後、鋳塊中心部が完全に凝固する部位まで非接触部が形成されていることによって、溶湯が完全に凝固するまでの冷却を緩和させることができる。このため、溶湯は、鋳造空間の鋳込口付近での凝固が抑制され、鋳塊が破断することなく引き抜かれるようになる。
請求項4に記載の連続鋳造用鋳型は、請求項2または請求項3に記載の連続鋳造用鋳型であって、前記黒鉛鋳型は、前記鋳造空間の端面から前記非接触部までの厚さが、前記鋳造空間から前記接触面までの厚さより薄く形成されていることを特徴とする。
かかる構成によれば、鋳造空間の端面から非接触部までの厚さが、鋳造空間から接触面までの厚さより薄く形成されていることによって、薄肉部分における黒鉛鋳型の熱容量が、減少される。
請求項5に記載の連続鋳造用鋳型は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型であって、前記非接触部には、断熱性物質が内設されていることを特徴とする。
かかる構成によれば、非接触部に断熱性物質が内設されていることによって、断熱性物質により黒鉛鋳型の熱の輻射が抑制されるため、黒鉛鋳型の非接触部周辺を適温に保つことができる。
請求項6に記載の水平連続鋳造方法は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型を用い、凝固温度範囲が50℃から450℃の金属またはその合金からなる前記溶湯を鋳造することを特徴とする。
かかる構成によれば、凝固温度範囲が50℃から450℃の金属またはその合金であっても、連続鋳造用鋳型を用いて連続鋳造することが可能となる。
請求項7に記載の水平連続鋳造方法は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型を用い、前記鋳塊を、厚さが5mmから15mmに連続鋳造することを特徴とする。
かかる構成によれば、鋳塊を、連続鋳造用鋳型を用いて厚さが5mmから15mmの薄い板状に連続鋳造することが可能となる。
請求項8に記載の水平連続鋳造方法は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型を用い、前記溶湯は、成分組成がマグネシウムを5〜15質量%を含有し、残部がアルミニウム及び不可避不純物とし、前記連続鋳造鋳型に導く前記溶湯の温度を700〜850℃とし、平均鋳造速度を100〜500mm/minとし、前記鋳塊を後退させる後退ストロークを0.5〜5mmとして、前記鋳塊は、厚さが5〜50mmに連続鋳造されることを特徴とする。
かかる構成によれば、マグネシウムを5〜15質量%含有するアルミニウム合金であっても、連続鋳造することが可能となる。
また、後退する後退ストロークが5mmを超える場合には、鋳塊の表面に生じる高Mg濃度の偏析層が後退時に板状の鋳塊の内部に侵入し、その部位で鋳造割れが発生して破断する。一方、後退ストロークが0.5mm未満の場合には、固液共存部が圧縮されず、強度が低い固液共存部の領域が大きいので、鋳塊を引き抜く際に、鋳型内にて板両端部の凝固層と鋳型との間で摩擦抵抗が生じると、強度が低い固液共存部で鋳塊が破断する。したがって、鋳塊を引き抜きながら連続鋳造する場合の後退ストロークは、0.5〜5mmの範囲が最適である。
また、板厚が5mm未満のマグネシウムを5〜15質量%含有するアルミニウム合金の鋳塊を後退ストロークを0.5mmにして引き抜いて連続鋳造した場合には、鋳塊の表面に生じる高Mg濃度の偏析層が後退時に板状の鋳塊の内部に侵入するため、その部位に鋳造割れが発生して破断する。一方、板厚が50mmを超える鋳塊を後退ストロークを5mmにして引き抜いて連続鋳造した場合も、固液共存部が圧縮されず、強度が低い固液共存部の領域が大きいので、鋳塊を引き抜く際に、鋳型内にて板両端部の凝固層と鋳型との間で摩擦抵抗が生じると、強度が低い固液共存部で鋳塊が破断する。したがって、連続鋳造する鋳塊の板厚は、5〜50mmの範囲が最適である。
請求項9に記載の水平連続鋳造方法は、請求項8に記載の水平連続鋳造方法であって、前記鋳塊を鋳造する際に、鋳造方向に前記鋳塊を送るロールを周期的に鋳造方向とは反対の方向へ回転させて前記鋳塊を後退させることを特徴とする。
かかる構成によれば、鋳造方向に送る鋳塊を周期的に後退させて連続鋳造することによって、固液共存部が圧縮されるため、強度が低い固液共存部の領域を小さくすることができる。また、鋳塊を引き抜く際に、鋳型内にて板両端部の凝固層と鋳型との間で摩擦抵抗が生じても、固液共存部が後退ストロークによる鋳塊の後退で圧縮されることによって、強度が低く破断し易い固液共存部が小さくなるため、破断することなく鋳塊を連続鋳造することができる。
本発明の請求項1に係る連続鋳造用鋳型によれば、黒鉛鋳型と水冷ジャケットとの間の鋳込口側に非接触の空洞からなる非接触部を形成したことにより、金属またはその合金を連続鋳造する際に、非接触部によって水冷ジャケットで冷却される黒鉛鋳型の鋳込口付近の温度を、鋳塊の破断及び溶湯漏れが発生しない適温に調整して、溶湯の冷却を緩和して適正化することができる。このように、連続鋳造用鋳型は、特別な装置を使用することなく、金属またはその合金、特に薄板形状の鋳塊を破断することなく安定した状態に引き抜いて連続鋳造することができる。
また、本発明に係る連続鋳造用鋳型を用いることによって、DC鋳造法、薄板連続鋳造法で製造することが不可能であった凝固温度範囲が大きい合金であっても安定して鋳造することができる。
さらに、本発明に係る連続鋳造用鋳型は、連続鋳造が可能で薄板形状の鋳塊を安定して生産することができるため、歩留り、生産性の向上、熱間圧延工程の省略により、大幅なコストダウンを示すという多大な経済効果がある。
本発明の請求項2に係る連続鋳造用鋳型によれば、黒鉛鋳型と水冷ジャケットとの間の鋳塊出口側寄りに形成した接触面によって、鋳造空間の鋳込口付近での鋳塊の冷却を緩和させて鋳塊が破断するのを防止すると共に、鋳造空間の鋳塊出口側での冷却不足による溶湯漏れを防止することができる。
本発明の請求項3に係る連続鋳造用鋳型によれば、鋳込口側から鋳造空間内に溶湯を注湯後、鋳塊中心部が完全に凝固する部位まで非接触部が形成されていることによって、溶湯が凝固する温度及び凝固する位置を適宜に調整して、鋳塊を破断することなく引き抜くことができる。
本発明の請求項4に係る連続鋳造用鋳型によれば、鋳造空間の端面から非接触部までの厚さが、鋳造空間から接触面までの厚さより薄く形成されていることによって、薄肉部分における黒鉛鋳型の熱容量が薄肉化に伴って減少させることができると共に、短時間で黒鉛鋳型の温度を適温に安定化させることができる。これにより、鋳塊の抜熱が抑制されて、溶湯入側での凝固が抑制され、鋳塊を破断することなく引き抜くことができる。
本発明の請求項5に係る連続鋳造用鋳型によれば、非接触部内の断熱性物質によって、黒鉛鋳型の熱の輻射を抑制して、黒鉛鋳型を適度に保ち、鋳塊の割れの発生を防止することができる。
本発明の請求項6に係る水平連続鋳造方法によれば、今まで連続鋳造することが不可能であった凝固温度範囲が50℃から450℃の金属またはその合金であっても、連続鋳造することができる。
本発明の請求項7に係る水平連続鋳造方法によれば、今まで連続鋳造することが不可能であった金属またはその合金であっても、厚さが5mmから15mmの薄い板状の鋳塊に連続鋳造することが可能となる。
本発明の請求項8に係る水平連続鋳造方法によれば、今まで連続鋳造することが不可能であったマグネシウムを5〜15質量%含有するアルミニウム合金であっても、連続鋳造することが可能となる。
また、鋳塊を後退させる後退ストロークを0.5〜5mmの範囲とすることによって、鋳塊が破断するのを抑制して安定した状態に連続鋳造をすることができる。
また、連続鋳造する鋳塊は、板厚を5〜50mmの範囲とすることによって、今まで連続鋳造することが不可能であったマグネシウムを5〜15質量%含有するアルミニウム合金であっても、連続鋳造することが可能となる。
本発明の請求項9に係る水平連続鋳造方法によれば、鋳塊を連続鋳造する際に、鋳塊を周期的に後退させながら鋳造することによって、強度が低い固液共存部の領域を小さくすることができる。その結果、鋳塊を引き抜く際に、鋳型内にて板両端部の凝固層と鋳型との間で摩擦抵抗が生じても、固液共存部が後退ストロークによる鋳塊の後退で圧縮されることによって、強度が低く破断し易い固液共存部が小さくなるため、破断するのを抑制することができる。
本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型を示す連続鋳造装置の概略断面図である。 図1のW−W断面図である。 本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型を示す要部概略断面図である。 本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型の非接触部の長さを説明するための要部概略断面図である。 鋳塊中心部が完全に凝固する部位を特定する方法を示す図であり、(a)は鋳込口付近の黒鉛鋳型の温度を示すグラフであり、(b)は鋳造空間の鋳込口付近の要部拡大断面図である。 本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型の第1変形例を示す要部概略断面図である。 本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型の第2変形例を示す鋳込口側の断面図であり、(a)は非接触部の一例を示す要部概略断面図であり、(b)は(a)のX−X断面図である。 本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型の第2変形例を示す鋳込口側の断面図であり、(a)は非接触部の左右両側に隙間を有する変形例を示す要部概略縦断面図であり、(b)は(a)のY−Y断面図である。 本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型の第3変形例を示す図であり、(a)は傾斜面を有する非接触部の一例を示す要部概略断面図であり、(b)は凸部を有する非接触部の一例を示す要部概略断面図であり、(c)は凹部を有する非接触部の一例を示す要部概略断面図である。 本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型の第4変形例を示す図であり、連続鋳造装置の概略図を示す。 本発明の実施形態に係る連続鋳造装置の第4変形例と比較例を示す図であり、(a)は第4実施例の鋳型で鋳造された鋳塊の状態を示す説明図、(b)は比較例の鋳型で鋳造された鋳塊の状態を示す説明図である。 従来の横型連続鋳造装置を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)のZ−Z拡大断面図である。
以下、図1及び図2を参照して発明を実施するための形態を説明する。まず初めに、連続鋳造用鋳型(以下、単に「鋳型」という。)を説明する前に、連続鋳造装置A、保持炉1、溶湯2及び鋳塊7について説明する。
≪連続鋳造装置の構成≫
図1に示すように、連続鋳造装置Aは、金属またはその合金の溶湯2から板状の鋳塊7を連続鋳造する装置である。さらに詳述すると、連続鋳造装置Aは、保持炉1の外側に隣接して設けた鋳型3を用いて、鋳造空間9の一端側の鋳込口1aから溶湯2を供給して、黒鉛鋳型4内で溶湯を凝固させ、鋳造空間9の他端側から鋳塊7をピンチロール8で横方向へ引っ張って、溶湯2を鋳造空間9に通過させることにより連続的に鋳造する水平型の装置である。この連続鋳造装置Aは、溶湯2が貯溜される保持炉1と、この保持炉1の外側側面に設置された鋳型3と、鋳塊7を引っ張るピンチロール8と、から主に構成されている。この連続鋳造装置Aは、特に、板状の鋳塊7を製造するのに最適な鋳造装置である。
≪保持炉の構成≫
前記保持炉1は、溶解炉(図示省略)で溶融された金属の溶湯2を保温した状態に一時的に貯溜する炉であり、下部側壁に、鋳型3に溶湯2を供給するための鋳込口1aが形成されている。
≪溶湯及び鋳塊の構成≫
溶湯2は、前記溶解炉(図示省略)で溶融された金属であり、例えば、アルミニウム合金、銅合金の凝固温度範囲(例えば、50℃〜450℃)が大きい合金からなる。例えばAl−Sn系、Al−Mg系、及びAl−Cu系のアルミニウム合金や、Cu−Ni系、Cu−Be系、及びCu−Sn−P系の銅合金が挙げられる。アルミニウム合金は、さらに、具体的に例示するとJISのアルミニウム合金称呼で2024(凝固温度範囲136℃)、4043(凝固温度範囲55℃)、5056(凝固温度範囲70℃)、6061(凝固温度範囲70℃)、7075(凝固温度範囲158℃)、ISO規格でAlSn20Cu(凝固温度範囲400℃)等である。銅合金はC7150(凝固温度範囲70℃)、C5210(凝固温度範囲140℃)、C1720(凝固温度範囲115℃)等である。
また、鋳塊7は、溶湯2が凝固したものであって、例えば、幅100〜2000mm、厚さ5〜15mmの長尺の板状のものに鋳造される。
≪鋳型の構成≫
図1に示すように、鋳型3(連続鋳造用鋳型)は、鋳込口1aから吐出された溶湯2を鋳造空間9内に導入し抜熱することにより鋳塊7を形成する型であり、上型3aと下型3bとからなる。鋳型3には、前記保持炉1の鋳込口1aに連通する鋳造空間9を形成する上下一対の黒鉛鋳型4,4と、黒鉛鋳型4,4を冷却する水冷ジャケット5,5と、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5との間に介在された非接触部10,10と、水冷ジャケット5,5の上下外側に配置された鋳型外枠6,6と、この鋳型外枠6,6の外側から挿入されて鋳型3全体を保持するための締結部材(図示省略)と、が備えられている。
<黒鉛鋳型の構成>
黒鉛鋳型4,4は、鋳造空間9を形成する上下2つの型からなり、この黒鉛鋳型4,4に上下外側に、非接触部10,10及び水冷ジャケット5,5が設置されている。つまり、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5との間には、鋳込口1a側寄りに非接触部10,10が形成され、鋳塊出口4a側寄りに、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5が互いに接触する接触面4bが形成されている。黒鉛鋳型4,4は、鋳塊7の表面割れ、酸化物の鋳塊7の表面への巻き込み等が少ないという特性を有すると共に、潤滑性、耐酸化性、耐摩耗性、熱伝導性及び耐熱性に優れている黒鉛によって形成されている。なお、黒鉛鋳型4,4は、熱伝導率が100W/(m・K)以上のものが望ましい。
<非接触部の構成>
非接触部10,10は、水冷ジャケット5,5を黒鉛鋳型4,4に直接接触しないようにするためのものであり、黒鉛鋳型4,4の上下外面と、この黒鉛鋳型4,4の上下外面にそれぞれ対向する水冷ジャケット5,5の黒鉛鋳型4,4側の面とで形成された空洞からなる。つまり、非接触部10,10は、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5との間の鋳込口1a側寄りの一部に形成された空間であり、その空間に熱伝導率が0.0241W/(m・K)と非常に小さい空気があって熱を伝え難くしている。この場合、非接触部10,10は、少なくとも鋳込口1a側から鋳造空間9内に溶湯2を注湯後、鋳塊7の中心部が完全に凝固する部位2aまで形成されている。なお、この非接触部10,10の鋳塊進行方向の長さは、例えば、鋳塊7の板厚の約30%の長さである。
図2に示すように、非接触部10,10は、鋳込口1a付近を縦断面視して、黒鉛鋳型4,4の鋳造空間9の上部及び下部の部位のみ、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5とが非接触となる空洞が切欠形成されている。つまり、非接触部10,10の左右外側に、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5とが接触する接触面4b,5bが鋳造空間9の左右外側に形成されている。
図3に示すように、非接触部10,10は、黒鉛鋳型4,4の鋳込口1a側の上下外側端部を段差状に切欠形成することによって形成される。黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5との間の非接触部10,10の間隔t1は、非接触部10,10が形成できればよいので、例えば、1mm以上であればよい。黒鉛鋳型4,4は、鋳造空間9の鋳込口1a側の開口端から非接触部10,10までの厚さt2が、鋳造空間9から接触面4b,5bまでの厚さt3より、非接触部10,10の厚さt1分だけ薄く形成されている。
なお、前記厚さt2は、黒鉛鋳型4,4の非接触部10,10が形成されている部位の剛性が保てる厚さであればよい。前記厚さt3は、例えば、20mm〜30mmである。この場合、間隔t1が大きいほど厚さt2が薄くなり、熱容量が小さくなるため、すぐに黒鉛鋳型4,4の温度が安定するようになるので好ましい。
非接触部10,10の鋳塊進行方向の長さL2は、鋳造空間9内の鋳込口1a側から鋳塊7の中心部が完全に凝固する部位2aまでの長さL1より長く形成されていることが望ましい。
つまり、非接触部10,10の鋳塊進行方向の長さL2をさらに長くし、図4に示す鋳型3Aのように、非接触部10A,10Aの鋳塊進行方向の長さL3が、鋳造空間9内の鋳込口1aから鋳塊7の中心部が完全に凝固する部位2aまでの長さL1を越えて鋳塊出口4Aaにより近い位置まで形成したものであっても、黒鉛鋳型4A,4Aと水冷ジャケット5,5が互いに接触する接触面4Ab,5bが形成されていれば構わない。
ここで、図4に示す鋳型3Aにおいて、非接触部10Aが設けられる最大の範囲は、鋳型3Aの保持炉1側の端面から鋳型3Aの全長に対する約90%までの位置とする。
また、非接触部10Aの鋳塊進行方向の長さは、最低限、鋳型3Aの全長に対して約30%の長さである。
<水冷ジャケットの構成>
水冷ジャケット5,5は、非接触部10,10を介して黒鉛鋳型4,4の温度を連続鋳造するのに適切な温度に冷却するための冷却装置である。この水冷ジャケット5,5は、冷却水循環供給装置(図示省略)から供給される冷却水が循環する通水路5a,5aを有し、冷却水循環供給装置のウォーターポンプ(図示省略)によって通水路5a,5aに送り込まれた冷却水がその通水路5a,5aを循環することにより、熱交換して、黒鉛鋳型4,4を冷却する。水冷ジャケット5,5の鋳込口1a側は、鋳造空間9を有する黒鉛鋳型4,4の上下面に非接触部10,10を介して配置されている。水冷ジャケット5,5の材質は、特に限定されず、例えば、黒鉛より熱伝導性が優れている銀、アルミニウム、金、銅等の合金が挙げられる。
<鋳型外枠の構成>
鋳型外枠6,6は、上下の水冷ジャケット5,5の上下外側から鋳型3を挟持する一対の部材であり、その2つの鋳型外枠6,6を外側からボルト締めすることによって、鋳型3全体を保持している。
≪ピンチロールの構成≫
ピンチロール8は、鋳型3内の鋳塊7を引き抜いて連続鋳造させるためのロールであり、対向して配置された上下一対のロールからなる。ピンチロール8は、ピンチロール駆動モータ(図示省略)によって回転駆動され、上下のロール間に通す鋳塊7を挟み込むよう押圧して送り出して搬送させる。
≪鋳塊の中心部が完全に凝固する部位の特定方法≫
ここで、図3及び図5(a)、(b)を参照して鋳塊7の中心部が完全に凝固する部位2aを特定する方法について説明する。
図5(b)に示すように、鋳塊7の中心部が完全に凝固する部位2aは、初期凝固層形成部位と凝固プール形状を元に黒鉛鋳型4,4の温度から特定する。黒鉛鋳型4,4の温度分布は、黒鉛鋳型4,4の幅方向の中央部に数個の熱電対温度計13を長さ方向に1列に設置し、鋳造中の黒鉛鋳型4,4の温度を測定する。溶湯2に初期凝固層が形成されると、図5(a)のグラフに示すように、黒鉛鋳型4,4の温度が低下し始めるので、黒鉛鋳型4,4の温度分布、鋳塊7の板厚及び鋳塊7の熱伝導率から初期凝固層形成部位を特定することができる。
なお、冷却条件により初期凝固層形成部位が変動するため、初期凝固層が形成される部位2bまでは黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5との間に接触面4b,5bを形成しなければならない。そのため、図4に示すように、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5との間の非接触部10,10が鋳塊出口4aの近傍まで形成されている鋳型3を用いて黒鉛鋳型4,4の温度分布を測定した。
また、鋳塊7の幅方向中央部の横断面を鏡面研磨し、マイクロエッチングすることにより、凝固プール形状を観察することができた。図5(a)、(b)に示すように、凝固プール形状によって初期凝固層が形成される部位2bから鋳塊7の中心部が完全に凝固する部位2aまでの距離L4を求めることができるため、初期凝固層が形成される部位2bを特定できれば、鋳塊7の中心部が完全に凝固する部位2aを特定することができる。
≪鋳型の作用≫
次に、本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型の作用を説明する。
図1に示すように、鋳込口1aから保持炉1内の溶湯2を鋳造空間9内に供給する。鋳造空間9内に送られた溶湯2は、非接触部10,10を介して水冷ジャケット5により冷された黒鉛鋳型4,4によって冷却されて鋳塊7に形成され、薄板状に形成された状態でピンチロール8,8により他端の鋳塊出口4aから連続的に引き抜かれる。
この場合、非接触部10,10では、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5との間に熱伝導率の小さい空気が充填されているので、この間を通過する熱移動が抑制される。
さらに、黒鉛鋳型4,4の非接触部10,10が形成された部位は、厚さt2の薄肉化に伴って、鋳造空間9の溶湯2が接触する面からの熱容量が減少し、短時間で黒鉛鋳型4の温度が安定するようになる。
このため、非接触部10,10が配置されている鋳込口1a側の開口端から溶湯2が完全に凝固する部位付近までの間の鋳造空間9内では、黒鉛鋳型4,4の上下面が非接触部10,10の空気を介して水冷ジャケット5,5で冷却されることにより、その空気によって熱の移動を抑制できるので、溶湯2の冷却温度(熱伝導)及び凝固する速度が緩和される。その結果、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5が完全に接触している接触面4b,5bでの抜熱が助長されることなく鋳込口1a側付近での凝固が抑制されて徐々に冷却されるため、ピンチロール8,8で鋳塊7を破断することなく引き抜くことができる。
図2に示すように、溶湯2は、黒鉛鋳型4,4によって断面視して横方向に細長い矩形に形成された鋳造空間9により板状の鋳塊7に連続形成される。上下方向に薄い鋳塊7は、黒鉛鋳型4,4の上下外側面が非接触部10,10を介して水冷ジャケット5,5によって冷却されるので、鋳塊7からの抜熱する黒鉛鋳型4,4の上下方向全体の冷却が緩和される。このため、鋳塊7の幅方向の抜熱量のバラツキがなく、温度を均一にすることができる。
鋳造空間9の鋳塊出口4a側寄りでは、黒鉛鋳型4,4の接触面4b,4bと水冷ジャケット5,5の接触面5b,5bとが互いに接触しているので、鋳塊出口4a側の黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5との間の熱移動を良好な状態に維持して溶湯2を凝固させることができるため、鋳塊出口4a側での冷却不足による溶湯漏れを防止することができる。このようにして溶湯2の凝固がある程度進行すると、鋳塊7は、凝固収縮により、いわゆるエアーギャップが形成されて、黒鉛鋳型4,4の鋳造空間9側の面から離れる。
以上のように、鋳型3の水冷ジャケット5,5と黒鉛鋳型4,4との間に、鋳込口1a側寄りに非接触部10,10を形成し、鋳塊出口4a側寄りに接触面4b,5bを形成したことにより、黒鉛鋳型4,4の鋳込口1a寄りでは、鋳造空間9内の溶湯2からの抜熱を緩和して、局部的に急冷されて破断し易くなることなく適宜に凝固させることができる。このため、凝固温度範囲が50℃から450℃の金属またはその合金であっても、破断せずに連続鋳造することができるようになる。
さらに、黒鉛鋳型4,4の鋳塊出口4a寄りでは、水冷ジャケット5,5の温度が黒鉛鋳型4,4に良好に伝導されて溶湯漏れすることない状態に冷却して凝固させることができる。このため、鋳型3からピンチロール8によって引き抜かれる鋳塊7は、厚さが5mmから15mmの薄板状であっても、破断及び溶湯漏れが発生することなく均一な安定した状態で引き抜かれるようになる。
なお、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5との間の非接触部10,10の間隔t1は、鋳造する鋳塊7の寸法形状や水冷ジャケット5,5の温度等に合わせて適宜に厚さを調整することにより、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5との間の熱の移動及び冷却を抑制して、破断及び溶湯漏れが発生しない適度な厚さにすることができる。
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。以下、前記実施形態の変形例を説明する。なお、既に説明した構成は同じ符号を付してその説明を省略する。
[第1変形例]
図6を参照して第1変形例を説明する。
前記実施形態では、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5との間に非接触部10,10を設けたことを説明したが(図1及び図2参照)、これに限定されるものではない。
図6に示すように、鋳型3Bの黒鉛鋳型4B,4Bの鋳込口1a側の外側端部を切欠形成した空洞状の非接触部10B,10Bには、断熱性物質12,12を内設してもよい。
この場合、断熱性物質12は、例えば、熱伝導率が50W/(m・K)以下のものが望ましく、特に材料は限定されない。断熱性物質12としては、例えば、グラスウール、ロックウール、けい酸カルシウム等の断熱材や、アルミナ等のセラミックスが挙げられる。
このように、非接触部10B,10Bに断熱性物質12,12を内設したことにより、黒鉛鋳型4B,4Bと水冷ジャケット5,5との間の断熱性物質12,12が黒鉛鋳型4B,4Bの鋳込口1a寄りの部位の輻射熱を抑制する。つまり、黒鉛鋳型4B,4Bの鋳込口1a寄りの部位は、非接触部10B,10B内に空気がないので、空冷されることなく、水冷ジャケット5,5による冷却も抑制されるため、黒鉛鋳型4B,4Bの温度を適度に保つことができる。その結果、鋳込口1a側付近での溶湯2の凝固が抑制され、ピンチロール8,8で鋳塊7を破断することなく引き抜くことができる。
[第2変形例]
図7(a)、(b)及び図8(a)、(b)を参照して第2変形例を説明する。
前記実施形態では、図2に示すように、黒鉛鋳型4,4の鋳込口1a付近を断面視して、黒鉛鋳型4,4の鋳造空間9の上部及び下部の部位にのみ、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5とが非接触となる非接触部10,10を切欠形成して、非接触部10,10の左右外側に、黒鉛鋳型4,4と水冷ジャケット5,5とが接触する接触面4b,5bを形成した場合を説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、非接触部10C,10Cは、図7(a)、(b)に示すように、黒鉛鋳型4C,4Cの鋳込口1a付近を断面視して、黒鉛鋳型4C,4Cの外側上面全体及び外側下面全体に非接触部10C,10Cとなる空洞を形成しても構わない。このように、黒鉛鋳型4C,4Cと水冷ジャケット5,5との間全体に非接触部10C,10Cを形成したことにより、非接触部10C,10Cを形成する空洞内全体に熱伝導率の低い空気があることによって黒鉛鋳型4C,4Cの温度を適度に保つことができる。その結果、鋳造空間9の左右両端部側付近で溶湯2が局部的に過冷却されるのが抑制されて、溶湯2が均一に凝固するようになるため、ピンチロール8,8で鋳塊7を破断することなく引き抜くことができる。
なお、この場合、図7(a)、(b)に示す各接触面4Cb,5b間には、図8(a)、(b)に示すように、さらに、非接触部10Dに連通する僅かな隙間からなる第2非接触部10Daを設けても構わない。換言すると、鋳型3Dには、鋳造空間9より左右外側で、黒鉛鋳型4D,4Dと水冷ジャケット5,5とが対向する部位に、非接触部10Dに連通すると共に非接触部10Dの厚さより薄い段差状の第2非接触部10Daを連続形成してもよい。
このように、鋳型3Dの左右両端部に第2非接触部10Daを形成したことにより、黒鉛鋳型4D,4Dと水冷ジャケット5,5との間の両端部にも空気が介在され、熱移動が妨げられて断熱効果が得られるため、鋳込口1a側での急冷凝縮による破断の抑制に有利である。つまり、隙間状の第2非接触部10Daを設けたとしても、鋳造空間9の上下外側に非接触部10D,10Dがあることによって、十分断熱効果がある。
[第3変形例]
図9(a)〜(c)を参照して第3変形例を説明する。
前記実施形態では、図3及び図4に示すように、断面視して矩形の非接触部10,10を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図9(a)、(b)、(c)に示すように、非接触部10E,10F,10Gは、矩形以外の形状に形成されたものであっても構わない。
例えば、図9(a)に示すように、鋳型3Eは、黒鉛鋳型4E,4Eの鋳込口1a側の上下外面に傾斜面4Ec,4Ecを形成することによって、拡開した空間からなる非接触部10E,10Eを形成し、非接触部10E,10Eより鋳塊出口4Fa側に接触面4Eb,5bを形成してもよい。このようにしても同様な作用、効果を得ることができる。
また、図9(b)に示すように、非接触部10F,10Fは、黒鉛鋳型4F,4Fの鋳込口1a側の上下外面に凸部4Fc,4Fcを形成したものであってもよい。
このように、黒鉛鋳型4F,4Fの鋳込口1a側の端部に凸部4Fc,4Fcを形成することによって、黒鉛鋳型4F,4Fの端部を補強することができると共に、黒鉛鋳型4F,4Fと水冷ジャケット5,5との間から非接触部10F,10F内への溶湯2が流入するのを抑制することもできる。
また、図9(c)に示すように、非接触部10G,10Gは、黒鉛鋳型4G,4Gと水冷ジャケット5,5との間隔を略全体的に狭く形成すると共に、黒鉛鋳型4G,4Gの鋳塊出口4Ga側の部位のみ、その間隔を広くした凹部4Gc,4Gcを形成したものであってもよい。
このように、黒鉛鋳型4G,4Gの鋳塊出口4Ga側の端部に凹部4Gc,4Gcを形成したことによって、黒鉛鋳型4G,4Gと水冷ジャケット5,5との間とが接触している接触面4Gb,4Gbの熱流を小さくすることができるため、非接触部10G,10Gの冷却を適宜に緩和させることができる。
[第4変形例]
図10を参照して第4変形例を説明する。
前記実施形態では、図1に示すように、鋳塊7をピンチロール8によって鋳型3から搬送方向(鋳造方向)へ連続的に引き抜いて連続鋳造する場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図10に示すように、鋳塊7をピンチロール81,81によって鋳型3Bから引き抜く場合、ピンチロール81,81を正転させながら周期的に反転させることにより、鋳塊7を鋳造方向に対して前進及び後退させながらピンチロール81,81で鋳塊7を鋳型3Bから引き抜いて搬送させても構わない。
この場合、ピンチロール81,81は、このピンチロール81,81を回転させるモータ(図示省略)を正転させながら周期的に反転させて、鋳型3Bから引き抜く鋳塊7を前進させながら周期的に0.5〜5mmの後退ストロークで後退させ搬送方向(鋳塊進行方向)へ送る。
あるいは、鋳塊7を前進させながら周期的に停止及び後退させて、前進、停止、後退、前進を周期的に繰り返しながら搬送方向へ送る。
この場合、鋳塊7は、ピンチロール81,81で搬送される箇所の後側(鋳造方向側)の位置に、弛んだ状態のテンション部7aを形成して、ピンチロール81,81付近の鋳塊7がそのピンチロール81,81によって押し戻されて後退したときでも、巻き上げられる側の鋳塊7が一定の速度で搬送装置80によって搬送されるようになっている。
テンション部7aは、鋳塊7が搬送方向(鋳造方向)に搬送中に、ピンチロール81,81付近の鋳塊7が周期的に約5mm後退する方向に押し戻されても、そのテンション部7aよりも先の搬送方向にある鋳塊7を一定な速度で搬送させることが可能な弛みに、ルーパ装置86によっていわゆるルーパ制御されている。
前記搬送装置80は、例えば、前記ピンチロール81,81と、このピンチロール81,81とその後方の鋳塊7のテンション部7aとの間に配置された第1搬送ロール82と、鋳塊7にテンション部7aを形成させるためのルーパロール83と、テンション部7aの後側に配置されて鋳塊7を一定な速度で搬送させる第2搬送ロール84と、この第2搬送ロール84の後方の鋳塊7を一定な速度で搬送させる第3搬送ロール85と、ルーパロール83を揺動させて鋳塊7の弛みを調整するルーパ装置86と、ピンチロール81、第1搬送ロール82、第2搬送ロール84、第3搬送ロール85をそれぞれ回転させる不図示の各モータと、テンション部7aの弛みの大きさを検出する不図示のセンサと、このセンサからの検出データ及び予め設定された後退ストロークに基づいて各モータ及びルーパ装置86を制御する制御装置(図示省略)と、電源(図示省略)と、を備えている。
ピンチロール81,81は、前記実施形態で説明したピンチロール8(図1参照)と同じ構造のものであるが、鋳塊7を鋳型3Bから引き抜く際に、制御装置からの駆動信号によってモータが周期的に反転して0.5〜5mmの後退ストロークで鋳塊7を搬送方向とは逆の方向へ後退させるように回転する。つまり、ピンチロール81,81は、鋳型3Bから引っ張り出した鋳塊7を周期的に鋳造方向とは逆の方向へ押し返すことにより、固液共存部が圧縮されて歪が小さなり、応力集中を緩和して鋳塊7が破断するのを抑制している。
なお、前記後退ストロークの0.5〜5mmは、Al−5〜15質量%Mg合金等の凝固温度範囲が50〜450℃の金属または合金である場合には、最適であるが、鋳塊7の材料によって適宜に最適なストロークに変更することが望ましい。
図10に示すように、第1搬送ロール82は、ピンチロール81,81とルーパロール83との間の鋳塊7のテンション部7aの鋳型3B側に配置され、モータ(図示省略)によって回転して鋳塊7を鋳造方向へ搬送させるロールである。
ルーパロール83は、鋳塊7のテンション部7aに当接して転動するロールであり、第1搬送ロール82と第2搬送ロール84との間のテンション部7a上に配置されている。このルーパロール83は、鋳塊7がピンチロール81,81によって後退される後退ストロークの際に、ルーパ装置86によってテンション部7aの弛みを調整して、鋳塊7が第2搬送ロール84及び第3搬送ロール85によって常に一定の速度で搬送されるようにしている。
第2搬送ロール84及び第3搬送ロール85は、予め設定された回転速度で定速回転して鋳塊7を搬送方向へ送るロールである。第2搬送ロール84は、テンション部7aの搬送方向側に配置されている。
第3搬送ロール85は、第2搬送ロール84の搬送方向側に配置されている。なお、この第3搬送ロール85は、鋳塊7を巻き上げる巻取ロールであってもよい。
ルーパ装置86は、鋳塊7がピンチロール81,81の反転で後退しているときであっても、巻き上げられる側の鋳塊7が一定の速度で搬送方向へ搬送可能にするために、鋳塊7のテンション部7aに当接しているルーパロール83を揺動させてテンション部7aの弛みを調整する装置である。このルーパ装置86は、例えば、前記ルーパロール83と、一端がルーパロール83の軸83aに軸支され、他端が搬送装置80に揺動自在に軸支されたルーパアーム861と、このルーパアーム861に連結されたピストンロッド863を有するシリンダ装置862と、このシリンダ装置862にオイル等の圧力媒体を送り込んで駆動させる加圧装置864と、加圧装置864から出力された圧力を蓄圧し、その圧力以上の圧力でシリンダ装置862を安定した状態で駆動させるアキュムレータ865と、を備えて構成されている。
なお、このルーパ装置86は、鋳塊7の搬送速度及びテンション部7aの弛み状態に合わせてシリンダ装置862、加圧装置864等でルーパアーム861を駆動させる装置に限定されるものではなく、例えば、モータ歯車装置によってルーパアーム861を揺動させる装置からなるものであっても構わない。
また、不図示の制御装置は、ピンチロール81,81、第1搬送ロール82、ルーパロール83及び第2搬送ロール84をそれぞれ回転駆動させる各モータ(図示省略)と、前記加圧装置864との駆動を制御する装置である。この制御装置(図示省略)は、ピンチロール81,81を正転・反転(若しくは、正転・停止・反転)させる駆動信号を周期的にピンチロール駆動用のモータに送って鋳塊7を後退させる後退ストロークを制御する。制御装置は、その後退させる反転駆動信号と同時に、加圧装置864に駆動信号を送ってルーパアーム861のルーパ角度(揺動角度)を制御して、ピンチロール81,81付近の鋳塊7がスムーズに前進・後退するように制御すると共に、第2搬送ロール84及び第3搬送ロール85付近の鋳塊7が一定に搬送されるようにルーパ制御する。
このように鋳塊7を連続鋳造する際に、鋳塊7を周期的に後退させながら鋳造することによって、強度が低い固液共存部の領域を小さくすることができる。また、鋳塊7を引き抜く際に、鋳型3B内にて板両端部の凝固層と鋳型3Bとの間で摩擦抵抗が生じても、固液共存部が後退ストロークによる鋳塊7の後退で圧縮されることによって、強度が低く破断し易い固液共存部が小さくなるため、破断することなく鋳塊7を連続鋳造することができる。
[その他の変形例]
なお、前記第1変形例(図6参照)、第2変形例(図7(a)、(b)及び図8(a)、(b)参照)及び第3変形例(図9(a)〜(c)参照)では、黒鉛鋳型4B〜4Gを切欠形成して非接触部10B〜10Gを形成したことを説明したが、非接触部10B〜10Gは、黒鉛鋳型4B〜4Gと水冷ジャケット5,5との間に介在されてあればよく、水冷ジャケット5,5の黒鉛鋳型4A〜4G側の面に切欠形成したものであっても構わない。
また、前記実施形態では、アルミニウム合金及び銅合金を鋳造する例について説明したが、他の金属またはその合金についても同様に適用可能である。
[第1実施例]
図1、図6及び表1を参照して第1実施例を説明する。
表1は、本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型の第1実施例、第2実施例、第3実施例、第1比較例、第2比較例及び第3比較例の鋳造結果を示す比較表である。
第1実施例では、図1に示すような横型の連続鋳造装置Aを用い、板幅100mm、板厚10mm、固相線温度227℃〜液相線温度630℃、凝固温度範囲が400℃程度のAl−20質量%Sn−1質量%Cu合金を鋳造した。鋳型3Bは、図6に示す第1変形例の連続鋳造用鋳型を使用した。黒鉛鋳型4B,4Bは、図6に示すt1=15mm、t2=5mm、t3=20mm、L1=60mm、L2=60mmの黒鉛製のものを使用した。水冷ジャケット5,5は、銅製のものを使用した。非接触部10Bには、断熱性物質12としてセラミックファイバーを使用した。鋳型3Bに導く溶湯2の溶湯温度は750℃、水冷ジャケット5,5の冷却水の水量が25L/min、後退させる後退ストロークを3mm(後退ストロークは、鋳塊7を前進ストロークで12mm程度前進させたら、周期的に後退ストロークで3mm後退させる)、平均鋳造速度が300mm/minの鋳造条件で連続鋳造した。
その結果、表1に示すように、鋳塊7は、破断箇所がなく、溶湯漏れもなかった。
この場合、Al−20質量%Sn−1質量%Cu合金を連続鋳造する際に、非接触部10Bに設けた断熱性物質12のセラミックファイバーによって、鋳込口1a付近の黒鉛鋳型4B,4Bと水冷ジャケット5,5との間の熱移動を抑制して、黒鉛鋳型4B,4Bの鋳込口1a付近が、水冷ジャケット5,5により局部的に過冷却されるのを防止した。このため、初期凝固層が形成される部位での冷却が適正化されて、鋳塊7には、破断箇所がなく、溶湯漏れもなかった。
Figure 2010253554
[第2実施例]
図1、図6及び表1を参照して第2実施例を説明する。
第2実施例では、第1実施例と同様に、図1に示すような横型の連続鋳造装置Aを用い、板幅100mm、板厚10mm、固相線温度880℃〜液相線温度1020℃、凝固温度範囲が140℃程度のCu−8質量%Sn−0.1質量%P合金を鋳造した。鋳型3Bは、図6に示す第2変形例の連続鋳造用鋳型を使用した。黒鉛鋳型4B,4Bは、t1=15mm、t2=5mm、t3=20mm、L1=60mm、L2=60mmの黒鉛製のものを使用した。水冷ジャケット5,5は、銅製のものを使用した。非接触部10Bには、断熱性物質12としてセラミックファイバーを使用した。溶湯温度は1150℃、水冷ジャケット5,5の冷却水の水量が25L/min、後退ストロークが3mm、平均鋳造速度が300mm/minの鋳造条件で連続鋳造した。
その結果、表1に示すように、第2実施例のときも、前記第1実施例と同様に、非接触部10Bの断熱性物質12のセラミックファイバーによって、黒鉛鋳型4B,4Bによる冷却が適正化されているため、鋳塊7は、破断箇所がなく、溶湯漏れもなかった。
[第3実施例]
図1、図6及び表1を参照して第3実施例を説明する。
第3実施例では、第1実施例と同様に、図1に示すような横型の連続鋳造装置Aを用い、板幅100mm、板厚10mm、Al−10質量%Mg合金を鋳造した。鋳型3Bは、図6に示す第2変形例の連続鋳造用鋳型を使用した。黒鉛鋳型4B,4Bは、t1=15mm、t2=5mm、t3=20mm、L1=60mm、L2=60mmの黒鉛製のものを使用した。水冷ジャケット5,5は、銅製のものを使用した。非接触部10Bには、断熱性物質12としてセラミックファイバーを使用した。溶湯温度は750℃、水冷ジャケット5,5の冷却水の水量が25L/min、後退ストロークが3mm、平均鋳造速度が300mm/minの鋳造条件で連続鋳造した。
その結果、表1に示すように、第3実施例のときも、前記第1,2実施例と同様に、鋳塊7は、破断箇所がなく、溶湯漏れもなかった。
[第1比較例、第2比較例及び第3比較例]
図12(a)、(b)に示す前記従来の連続鋳造装置A100を使用して前記第1実施例、第2実施例及び第2実際例と同じ鋳造条件で板幅100mm、板厚10mmのAl−20質量%Sn−1質量%Cu合金(第1比較例)、Cu−8質量%Sn−0.1質量%P合金(第2比較例)、及び、Al−10質量%Mg合金(第3比較例)を鋳造した。
この場合、表1に示すように、第1比較例、第2比較例及び第3比較例共に、鋳塊700が黒鉛鋳型400内の鋳込口110寄りの部位で破断した。
第1〜第3比較例では、図12(a)に示すように、黒鉛鋳型400bに鋳込口110付近に断熱性物質等の非接触部10Bがないので、鋳造空間900に各溶湯200が導入されたときの黒鉛鋳型400への抜熱量が大きい。このため、鋳込口110側付近で各溶湯200が急速に凝固することにより、鋳塊700をピンチロール800で引き抜く際に、その部位の引出抵抗が増大して鋳塊700が破断した。
≪第1〜3実施例と第1〜3比較例との比較≫
表1に示す比較表から明らかなように、第1〜3実施例では、図6に示す鋳型3Bの黒鉛鋳型4B,4Bと水冷ジャケット5,5との間に非接触部10B,10Bを有し、その非接触部10B,10Bに断熱性物質12,12を内設したことにより、鋳造空間9の鋳込口1a側での局部的な過冷却による凝固を抑制し、初期凝固層が形成される部位での冷却が適正化されて、鋳塊7が破断することなく連続鋳造することができる。
また、黒鉛鋳型4Bの鋳塊出口4Ba側では、黒鉛鋳型4B,4Bと水冷ジャケット5,5とが完全に接触する接触面4Cb,5bが形成されているので、黒鉛鋳型4C,4Cが水冷ジャケット5,5によって、冷却されて溶湯2が完全に凝固するため、溶湯漏れが発生することなく連続鋳造することができる。
これにより、第1〜3実施例の連続鋳造装置の鋳型3Bは、第1〜3比較例で発生した鋳塊700の破断を解消して、Al−10質量%Mg合金のような凝固温度範囲(100℃)が大きい金属であっても、連続鋳造することが可能である。
[第4〜13実施例]
図10、図11及び表2を参照して第4〜13実施例を説明する。
第4〜13実施例では、第1実施例と同様に、図10に示すような水平な連続鋳造装置Aを用いて鋳塊7をピンチロール81,81で周期的に前進・後退させて、板幅T=100mm、Al−5質量%Mg合金(第4実施例)、Al−15質量%Mg合金(第5実施例)、及び、Al−10質量%Mg合金(第6〜13実施例)のマグネシウム合金の鋳塊7を鋳造した。
鋳型3Bは、図6に示す第2変形例の水平連続鋳造用の鋳型3Bを使用した。黒鉛鋳型4Bは、t1=15mm、t2=5mm、t3=20mm、L1=60mm、L2=60mmの黒鉛製のものを使用した。水冷ジャケット5は、銅製のものを使用した。非接触部10Bには、断熱性物質12としてセラミックファイバーを使用した。水冷ジャケット5の冷却水の水量が25L/minの鋳造条件で連続鋳造した。
この場合、表2に示すように、マグネシウム合金中のMg質量%を5〜15%、凝固温度範囲を52〜120℃、溶湯温度を750℃〜850℃、平均鋳造速度を100〜500mm/min、後退ストロークを0.5〜5mm、板厚を5〜50mmの鋳造条件に順次変えて第4〜13実施例の連続鋳造を実施した。
Figure 2010253554
表2に示すように、第4実施例では、凝固温度範囲が52℃で低いAl−5質量%Mg合金であっても、鋳塊7に破断箇所がなく、溶湯漏れもない良好な状態に連続鋳造することができた。
第5実施例では、凝固温度範囲が122℃で高く、マグネシウムの含有量が多いAl−15質量%Mg合金であっても、鋳塊7に破断及び溶湯漏れがなく、良好な状態に連続鋳造することができた。
このように、Al−5〜15質量%Mg合金の高Mg質量%のマグネシウム合金の鋳塊7をピンチロール81,81により周期的に前進・後退させて、非接触部10Bを有する鋳型3Bで連続鋳造する場合には、凝固温度範囲が52〜122℃の範囲内であれば、鋳塊7の後退と非接触部10Bとにより良好な状態に連続鋳造することができることが確認できた。
第6実施例では、溶湯温度が700℃で低くても、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7に破断箇所がなく、溶湯漏れもない良好な状態に連続鋳造することができた。
第7実施例では、溶湯温度が850℃で高くても、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7に破断箇所がなく、溶湯漏れもない良好な状態に連続鋳造することができた。
このように、Al−10質量%Mg合金の高Mg質量%のマグネシウム合金の鋳塊7を周期的に前進・後退させて、非接触部10Bを有する鋳型3Bで連続鋳造する場合には、鋳型3Bに導く溶湯2の溶湯温度が700〜850℃の範囲内であれば、鋳塊7の後退と非接触部10Bとにより、良好な状態に連続鋳造することができることが確認できた。
第8実施例では、連続鋳造する平均鋳造速度が100mm/minで低速であっても、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7に破断箇所がなく、溶湯漏れもない良好な状態に連続鋳造することができた。
第9実施例では、平均鋳造速度が500mm/minで速くても、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7に破断及び溶湯漏れがなく、良好な状態に連続鋳造することができた。
このように、Al−10質量%Mg合金の高Mg質量%のマグネシウム合金の鋳塊7を周期的に前進・後退させて、非接触部10Bを有する鋳型3Bで連続鋳造する場合には、平均鋳造速度が100〜500mm/minの範囲内であれば、鋳塊7の後退と非接触部10Bとにより、良好な状態に連続鋳造することができることが確認できた。
第10実施例では、連続鋳造する際の後退ストロークが0.5mmで小さくても、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7に破断箇所がなく、溶湯漏れもない良好な状態に連続鋳造することができた。
第11実施例では、連続鋳造する際の後退ストロークが5mmで大きくても、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7に破断及び溶湯漏れがなく、良好な状態に連続鋳造することができた。
このように、Al−10質量%Mg合金の高Mg質量%のマグネシウム合金の鋳塊7を周期的に前進・後退させて、非接触部10Bを有する鋳型3Bで連続鋳造する場合には、後退ストロークが0.5〜5mmの範囲内であれば、鋳塊7の後退と非接触部10Bとにより、良好な状態に連続鋳造することができることが確認できた。
第12実施例では、連続鋳造する鋳塊7の板厚が5mmで薄くても、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7に破断箇所がなく、溶湯漏れもない良好な状態に連続鋳造することができた。
第13実施例では、鋳塊7の板厚が50mmで厚くても、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7に破断箇所及び溶湯漏れがなく、良好な状態に連続鋳造することができた。
このように、Al−10質量%Mg合金の高Mg質量%のマグネシウム合金の鋳塊7を周期的に前進・後退させて、非接触部10Bを有する鋳型3Bで連続鋳造する場合には、鋳塊7の板厚が5〜50mmの範囲であれば、鋳塊7の後退と非接触部10Bとにより、良好な状態に連続鋳造することができることが確認できた。
以上のように、第4〜13実施例では、凝固温度範囲(52〜122℃)が大きいAl−5〜15質量%Mg合金の高Mg質量%のマグネシウム合金であっても、前記第1〜3実施例と同様に、破断箇所がなく、溶湯漏れもない良好な状態に連続鋳造することができた。
この場合、図11(a)に示すように、鋳塊7をセラミックファイバーの非接触部10Bを有する鋳型3Bで連続鋳造する際に、非接触部10Bで初期凝固層が形成される部位での冷却が適正化される。さらに、鋳塊7をピンチロール81,81により周期的に後退させながら、鋳造することによって、液相2Bと固相7Aとの間の固液共存部2Aが圧縮されて、強度が低い固液共存部2Aの領域が図11(b)に示す比較例よりも小さくなる。このように、黒鉛鋳型4から鋳塊7を引き抜く際に、鋳塊7に後退ストロークを与えて後退させながら連続鋳造することによって、強度が低く破断し易い固液共存部2Aが小さくなるため、破断することがない。
[第4〜13比較例]
また、第1実施例と同様に、図10に示すような水平な連続鋳造装置Aを用いて板幅100mm、板厚10mmのAl−4質量%Mg合金(第4比較例)、及び、Al−16質量%Mg合金(第5比較例)の鋳塊700を連続鋳造した。そして、Al−10質量%Mg合金(第6〜13比較例)を表2に示すように鋳造条件を順次変えて第4〜13比較例の連続鋳造を実施した。
表2に示すように、第4比較例では、マグネシウムの含有量が4質量%と少なく、凝固温度範囲が41℃で低いため、鋳込口110側付近で各溶湯200が凝固することにより、鋳塊700をピンチロール800で引き抜く際に、その部位の引出抵抗が増大して鋳塊700が破断した。
第5比較例では、マグネシウムの含有量が16質量%と多いため、鋳塊700の表面に生じる高Mg濃度の偏析層が後退時に板状の鋳塊内部に侵入し、その部位で鋳造割れが発生するため、Al−16質量%Mg合金の鋳塊700が破断した。
第4,5比較例から、マグネシウムの含有量が4〜16質量%のAl−Mg合金の鋳塊700の場合には、マグネシウムの含有量が4質量%以下、またはマグネシウムの含有量が16質量%以上であると鋳塊700が破断することが判った。
第6比較例では、溶湯温度が690℃で低いため、鋳込口110側付近で各溶湯200が凝固することにより、鋳塊700をピンチロール800で引き抜く際に、その部位の引出抵抗が増大してAl−10質量%Mg合金の鋳塊700が破断した。
第7比較例では、溶湯温度が860℃で高く、鋳塊700が十分に冷却されないため、Al−10質量%Mg合金の鋳塊700に溶湯漏れが発生した。
第6,7比較例から、Al−10質量%Mg合金の鋳塊700の場合には、溶湯温度が690℃以下であると鋳塊700は破断し、溶湯温度が860℃以上であると、鋳塊700は十分に冷却されず溶湯漏れを起こすことが判った。
第8比較例では、連続鋳造する平均鋳造速度が90mm/minで低速なため、鋳込口110側付近で各溶湯200が凝固することにより、鋳塊700をピンチロール800で引き抜く際に、その部位の引出抵抗が増大してAl−10質量%Mg合金の鋳塊700が破断した。
第9比較例では、平均鋳造速度が510mm/minで速く、鋳塊700が十分に冷却されないため、Al−10質量%Mg合金の鋳塊700に溶湯漏れが発生した。
第8,9比較例から、Al−10質量%Mg合金の鋳塊700の場合には、連続鋳造する平均鋳造速度が90mm/min以下であると鋳塊700は破断し、平均鋳造速度が510mm/min以上であると、鋳塊700は十分に冷却されず溶湯漏れを起こすことが判った。
第10比較例では、連続鋳造する際の後退ストロークが0.4mmで小さいため、固液共存部200A(図11(b)参照)が圧縮されず、強度が低い固液共存部200Aの領域が大きいので、鋳塊700を引き抜く際に、鋳型300内にて板両端部の凝固層と鋳型300との間で摩擦抵抗が生じると、強度が低い固液共存部200Aで鋳塊700が破断した。
第11比較例では、連続鋳造する際の後退ストロークが5.1mmで大きいため、鋳塊700の表面に生じる高Mg濃度の偏析層が後退時に板状の鋳塊700の内部に侵入し、その部位で鋳造割れが発生するためAl−10質量%Mg合金の鋳塊700が破断した。
第10,11比較例から、Al−10質量%Mg合金の鋳塊700の場合には、後退ストロークが0.4mm以下では強度が低い固液共存部200Aで鋳塊700が破断し、5.1mm以上であると高Mg濃度の偏析層が後退時に板状の鋳塊内部に侵入して鋳塊700が破断することが判った。
第12比較例では、連続鋳造する鋳塊700の板厚が4mmで薄いため、鋳塊700の表面に生じる高Mg濃度の偏析層が後退時に板状の鋳塊700の内部に侵入し、その部位で鋳造割れが発生するためAl−10質量%Mg合金の鋳塊700が破断した。
第13比較例では、連続鋳造する鋳塊700の板厚が55mmで厚いため、固液共存部200A(図11(b)参照)が圧縮されず、強度が低い固液共存部200Aの領域が大きいので、鋳塊700を引き抜く際に、鋳型300内にて板両端部の凝固層と鋳型300との間で摩擦抵抗が生じると、強度が低い固液共存部200Aで鋳塊700が破断した。
第12,13比較例から、Al−10質量%Mg合金の鋳塊700の場合、連続鋳造する鋳塊700の板厚が4mm以下では高Mg濃度の偏析層が後退時に板状の鋳塊700の内部に侵入して鋳塊700が破断し、及び55mm以上であると、強度が低い固液共存部200Aで鋳塊700が破断することが判った。
<第4実施例と第4比較例との比較>
第4比較例のように図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して、ピンチロール81,81による後退ストローク3mmで、凝固温度範囲が41℃のAl−4質量%Mg合金の鋳塊700を連続鋳造した場合には、マグネシウムの含有量が4質量%で少なく、凝固温度範囲が41℃以下で低いため、鋳塊700が破断する。
これに対して、第4実施例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して後退ストロークが3mmで、マグネシウムの含有量が5質量%のAl−5質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造した場合には、良好な状態に連続鋳造することができる。
つまり、凝固温度範囲が52℃以上のAl−5質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造する場合は、鋳型3Bを使用して後退ストロークが3mmであれば、鋳塊7の後退と非接触部10Bとにより、良好な鋳物を得ることができる。
<第5実施例と第5比較例との比較>
第5比較例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して、後退ストロークが3mmで、凝固温度範囲が125℃のAl−16質量%Mg合金の鋳塊700を連続鋳造した場合には、マグネシウムの含有量が16質量%で多く、凝固温度範囲が125℃以上で高いため、鋳塊700が破断する。
これに対して、第5実施例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して後退ストロークが3mmで、凝固温度範囲が122℃のAl−15質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造した場合には、マグネシウムの含有量が15質量%のAl−15質量%Mg合金であれば、良好な状態に連続鋳造することができる。
つまり、鋳型3Bを使用して後退ストロークが3mmで連続鋳造する場合には、凝固温度範囲が122℃以下のAl−15質量%Mg合金の鋳塊7であれば、鋳塊7の後退と非接触部10Bとにより、良好な鋳物を得ることができる。
<第6実施例と第6比較例との比較>
第6比較例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して、後退ストロークが3mmで、溶湯温度が690℃のAl−10質量%Mg合金の鋳塊700を連続鋳造した場合には、溶湯温度が690℃で低いため、鋳塊700が破断する。
これに対して、第6実施例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して後退ストロークが3mmで、溶湯温度が700℃のAl−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造した場合には、良好な状態に連続鋳造することができる。
つまり、鋳型3Bを使用して後退ストロークが3mmでAl−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造する場合には、溶湯温度が700℃以上であれば、鋳塊7の後退と非接触部10Bとにより、良好な鋳物を得ることができる。
<第7実施例と第7比較例との比較>
第7比較例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して、後退ストロークが3mmで、溶湯温度が860℃のAl−10質量%Mg合金の鋳塊700を連続鋳造した場合には、溶湯温度が860℃で高いため、鋳型300によって十分に冷却されず、鋳塊700が湯漏れする。
これに対して、第7実施例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して後退ストロークが3mmで、溶湯温度が850℃のAl−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造した場合には、良好な状態に連続鋳造することができる。
つまり、鋳型3Bを使用して後退がストローク3mmで、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造する場合は、溶湯温度が850℃以下であれば、十分に冷却されるので溶湯漏れが発生せず、良好な鋳物を得ることができる。
<第8実施例と第8比較例との比較>
第8比較例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して、後退ストロークが3mm、連続鋳造する平均鋳造速度が90mm/minで、Al−10質量%Mg合金の鋳塊700を連続鋳造した場合には、平均鋳造速度が90mm/minで低速なため、鋳塊700が破断する。
これに対して、第8実施例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して後退ストロークが3mmで、平均鋳造速度が100mm/minのAl−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造した場合には、良好な状態に連続鋳造することができる。
つまり、鋳型3Bを使用して後退ストロークが3mmで、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造する場合には、平均鋳造速度が100mm/min以上であれば、鋳塊7の後退と非接触部10Bとにより、良好な鋳物を得ることができる。
<第9実施例と第9比較例との比較>
第9比較例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して、後退ストロークが3mm、平均鋳造速度が510mm/minで、Al−10質量%Mg合金の鋳塊700を連続鋳造した場合には、平均鋳造速度が510mm/minで速いため、溶湯漏れが発生する。
これに対して、第9実施例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して後退ストロークが3mm、平均鋳造速度が500mm/minのAl−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造した場合には、良好な状態に連続鋳造することができる。
つまり、鋳型3Bを使用して後退ストロークが3mmでAl−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造する場合には、平均鋳造速度が500mm/min以下であれば、溶湯漏れが発生せず、良好な鋳物を得ることができる。
<第10実施例と第10比較例との比較>
第10比較例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して、後退ストロークが0.4mmで、Al−10質量%Mg合金の鋳塊700を連続鋳造した場合には、後退ストロークが0.4mmで小さいため、破断する。
これに対して、第10実施例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して後退ストロークが0.5mmで、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造した場合には、良好な状態に連続鋳造することができる。
つまり、鋳型3Bを使用してAl−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造する場合には、後退ストロークが0.5mm以上であれば、鋳塊7の後退と非接触部10Bとにより、良好な鋳物を得ることができる。
<第11実施例と第11比較例との比較>
第11比較例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して、後退ストロークが5.1mmで、Al−10質量%Mg合金の鋳塊700を連続鋳造した場合には、後退ストロークが5.1mmで大きいため、破断する。
これに対して、第11実施例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して後退ストロークが5mmで、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造した場合には、良好な状態に連続鋳造することができる。
つまり、鋳型3Bを使用してAl−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造する場合には、後退ストロークが5mm以下であれば、鋳塊7の後退と非接触部10Bとにより、良好な鋳物を得ることができる。
<第12実施例と第12比較例との比較>
第12比較例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して、後退ストロークが3mmで、板厚が4mmのAl−10質量%Mg合金の鋳塊700を連続鋳造した場合には、板厚が4mmで薄いため、破断する。
これに対して、第12実施例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用し、後退ストロークが3mmで、板厚が5mmのAl−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造した場合には、良好な状態に連続鋳造することができる。
つまり、鋳型3Bを使用して後退ストロークが3mmで、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造する場合には、板厚が5mm以上であれば、鋳塊7の後退と非接触部10Bとにより、良好な鋳物を得ることができる。
<第13実施例と第13比較例との比較>
第13比較例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用して、後退ストロークが3mmで、板厚が55mmのAl−10質量%Mg合金の鋳塊700を連続鋳造した場合には、板厚が55mmで厚いため、破断する。
これに対して、第13実施例のように、図10に示す非接触部10Bを有する鋳型3Bを使用し、後退ストロークが3mmで、板厚が50mmのAl−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造した場合には、良好な状態に連続鋳造することができる。
つまり、鋳型3Bを使用して後退ストロークが3mmで、Al−10質量%Mg合金の鋳塊7を連続鋳造する場合には、板厚が50mm以下であれば、良好な鋳物を得ることができる。
以上のように、本発明は、今まで連続鋳造することが不可能であったAl−5〜15質量%Mg合金等の凝固温度範囲が50〜450℃の合金または金属であっても、連続鋳造することを可能にした。
1 保持炉
1a 鋳込口
2 溶湯
3,3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G 鋳型(連続鋳造用鋳型)
4,4A,4B,4C,4D,4E,4F,4G 黒鉛鋳型
4a,4Aa,4Ba,4Ca,4Da,4Ea,4Fa,4Ga 鋳塊出口
4Ab,4Bb,4Cb,4Db,4Eb,4Fb,4Gb,5b 接触面
5 水冷ジャケット
5a 通水路
7 鋳塊
8,81 ピンチロール(ロール)
80 搬送装置
82 第1搬送ロール
83 ルーパロール
84 第2搬送ロール
85 第3搬送ロール
86 ルーパ装置
9 鋳造空間
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G 非接触部
12 断熱性物質
A 連続鋳造装置

Claims (9)

  1. 貯溜した溶湯が吐出される鋳込口を有する保持炉と、
    この保持炉の外側に設けられ前記鋳込口に連通する鋳造空間を形成する一対の黒鉛鋳型と、
    この黒鉛鋳型を冷却する水冷ジャケットと、を備え、
    前記鋳造空間に前記溶湯を通過させることにより鋳塊を鋳造する連続鋳造用鋳型において、
    前記黒鉛鋳型と前記水冷ジャケットとの間の鋳込口側に、空洞からなる非接触部が形成されていることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  2. 前記黒鉛鋳型と前記水冷ジャケットとの間の鋳塊出口側寄りに、前記黒鉛鋳型と前記水冷ジャケットが互いに接触する接触面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造用鋳型。
  3. 前記非接触部は、少なくとも前記鋳込口から前記鋳造空間内に前記溶湯を注湯後、鋳塊中心部が凝固する部位まで形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の連続鋳造用黒鉛鋳型。
  4. 前記黒鉛鋳型は、前記鋳造空間の端面から前記非接触部までの厚さが、前記鋳造空間から前記接触面までの厚さより薄く形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の連続鋳造用鋳型。
  5. 前記非接触部には、断熱性物質が内設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型を用い、
    凝固温度範囲が50℃から450℃の金属またはその合金からなる前記溶湯を鋳造することを特徴とする水平連続鋳造方法。
  7. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型を用い、
    前記鋳塊を、厚さが5mmから15mmに連続鋳造することを特徴とする水平連続鋳造方法。
  8. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型を用い、
    前記溶湯は、成分組成がマグネシウムを5〜15質量%を含有し、残部がアルミニウム及び不可避不純物とし、
    前記連続鋳造鋳型に導く前記溶湯の温度を700〜850℃とし、
    平均鋳造速度を100〜500mm/minとし、
    前記鋳塊を後退させる後退ストロークを0.5〜5mmとして、
    前記鋳塊は、厚さが5〜50mmに連続鋳造されることを特徴とする水平連続鋳造方法。
  9. 前記鋳塊を鋳造する際に、鋳造方向に前記鋳塊を送るロールを周期的に鋳造方向とは反対の方向へ回転させて前記鋳塊を後退させることを特徴とする請求項8に記載の水平連続鋳造方法。
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