JP2010252739A - マグロの養殖網への衝突防止方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明はマグロ養殖に於いて、マグロの網への衝突死を安価で容易に防止させることが可能となるマグロの養殖網への衝突防止方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は養殖網に養殖用漁網防汚剤で防汚処理した後に、白色系の水性塗料で上塗りした養殖網を用いて養殖するマグロの養殖網への衝突防止方法と成す。また前記白色系の水性塗料として、水性エマルジョン樹脂100重量部に対して、白色系顔料が10〜400重量部を含有したものを用いると良く、その水性エマルジョン樹脂のTg(ガラス転移点)が10℃以下とし、且つ、白色系顔料として、酸化チタン,酸化亜鉛の一方或いは両方を用いるのが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は養殖網に養殖用漁網防汚剤で防汚処理した後に、白色系の水性塗料で上塗りした養殖網を用いて養殖するマグロの養殖網への衝突防止方法と成す。また前記白色系の水性塗料として、水性エマルジョン樹脂100重量部に対して、白色系顔料が10〜400重量部を含有したものを用いると良く、その水性エマルジョン樹脂のTg(ガラス転移点)が10℃以下とし、且つ、白色系顔料として、酸化チタン,酸化亜鉛の一方或いは両方を用いるのが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明はマグロ養殖に於いて、マグロが養殖網に衝突死することを防止させるマグロの養殖網への衝突防止方法に関する。
近年、マグロの養殖が盛んになってきたが、マグロは遊泳力が高いため養殖生簀の網にぶつかって死亡すると言うマグロの特有な問題があり、この問題がマグロの養殖時の歩留まりの悪さの最大の要因となっていた。またマグロは他の魚種に比較して高価であるため、養殖網に対する衝突死は経済損失が極めて甚大であった。尚、マグロのへい死率は、活け込み後、1年で30〜40%、それ以降は10%程度であるとされており、その7割以上が養殖網に対する衝突が原因とされている。この時の、衝突死の原因としては、マグロが他の養殖魚種より大海を高速遊泳する大型魚であるため、何らかの原因による驚愕行動で衝突し易く、更にマグロの外傷に対する抵抗力の弱さのため、へい死に至ると考えられている。又、衝突死は種苗として捕獲された稚魚の養殖網への活け込み時、マグロを網に入れて移動する時、付着生物等での網の汚れで網交換をした後の入れ替え時、出荷の際の移動時など、環境が変化して新しい網への活け込みの際に起きることが多い。衝突死はその環境変化の後、1ヶ月までに多発し、1〜3ヶ月程度でマグロが落ち着くのが一般的である。
このため、マグロの養殖網への衝突防止方法としては、マグロが網を認識し易いように、目立つ色や物を網に付ける方法が一般に行われている。例えば、幼魚を活け込む場合には、きれいに洗浄した網をわざわざ2ヶ月程度海中に浸漬して藻類などの汚損生物を付着させて、網が汚れた後、海中で汚損生物が障害物として目立つようになってから、その網にマグロを活け込みして飼育を始めることが行われているが、藻類などの成長による網交換の時期を早めることになり、潮通しの良い健康的な環境でマグロを飼育するという網交換作業の本来の目的からも外れているのが現状である。次に目立つように元から着色されていない白色の網を使用することも考えられるが、白色の網は日光による紫外線の影響で強度低下が著しく、汚損生物の付着によって重量増となった時、網に対して潮流,波浪,風などの抵抗が大きくなり、網の破損や流失の危険性が増大されているのが現状である。
更に、一般的に使用されている耐久性に優れている黒着色の網に白色の紐やロープ或いは布等を巻付けたり、絡めたり、縫い付けたりして網を目立つようにすることも行われている。しかしながら、黒着色の網に白色の紐やロープ或いは布等を巻付けたり、絡めたり、縫い付けたりして網を目立つようするためには、手間と労力が掛かる上、養殖網に対して潮流,波浪,風などの抵抗が大きくなり、上記同様に網の破損や流失の危険性が増大されているのが現状である。尚、この時、網を目立つように、白色系塗料を直接に塗布すると、防汚効果がなく、付着生物により白色が長持ちしないものとなってしまう。又、網地が白色系に長期間保持できるようにするために、漁網用防汚剤を養殖網に塗布した後に、白色系油性塗料を塗り重ねると、白色系油性塗料によって始めに塗布された防汚剤が溶かされてしまうため、防汚剤の効果が減少し、養殖網に塗布された白色系が短期間でしか保持されないものとなってしまう。更にマグロは新しい網と交換する毎に、衝突死が1ヶ月前後まで多発するため、出荷サイズになるまで同じ網を海中で使用することが殆どである。従って、養殖網には藻類などが成長して、潮通しが悪くなると共に網の負荷が大きくなるため、養殖網に破損を生じてマグロが逃げ出し、且つ、養殖網が流失する恐れも生じていた。しかも出荷後の網交換時には、網に藻やカキなどが多く付着されているため、重量が大きくなってしまい、これを吊下時に網が裂け易く、且つ、その吊下作業時にカキなどで作業者の手などを損傷する恐れがあった。
上記以外でマグロが網を認識し易いようするものとして、特開平9−74975号に於いて、太陽光発電装置や蓄電池を用い、養殖網に点滅灯を付ける方法が提案されている。また特開2006−197875と特開2006−197876に於いて、マグロの異常行動防止方法が提案されており、特開2006−197875は、マグロの飼育,保管,輸送に於ける異常行動を、マグロの視覚制御により防止し、特に環境と接する水槽壁面を透明にし、光が透光すると共に斜め方向にも光の一部が反射する視覚刺激緩衝材を設置し、環境中に有色微粒子を存在させることの単独または組み合わせにより視覚刺激を緩和した環境下でマグロを保持して異常行動を防止する方法であった。又、特開2006−197876は、マグロの飼育,保管,輸送に於ける異常行動を、環境の照明変化を制御し、好ましくは150ルクスの照度以上に保持して防止する方法であった。
しかしながら、特開平9−74975号は、その装置及び設備に多大な費用が掛かると共にその点検や維持費に多大な労力と費用が掛かるものであった。また特開2006−197875と特開2006−197876は、マグロの稚魚期や若魚期の飼育,保管,輸送に対応させる方法であり、マグロが大きくなると前記装備が大掛かりになって採算の合わないものとなっていた。
本発明はマグロ養殖に於いて、マグロの網への衝突死を安価で容易に防止させることが可能となるマグロの養殖網への衝突防止方法を提供することを目的とする。
本発明は上記現状に鑑み成されたものであり、養殖網に養殖用漁網防汚剤で防汚処理した後に、白色系の水性塗料で上塗りした養殖網を用いて養殖するマグロの養殖網への衝突防止方法と成す。また前記白色系の水性塗料として、水性エマルジョン樹脂100重量部に対して、白色系顔料が10〜400重量部を含有したものを用いると良く、その水性エマルジョン樹脂のTg(ガラス転移点)が10℃以下とし、且つ、白色系顔料として、酸化チタン,酸化亜鉛の一方或いは両方を用いるのが好ましい。
請求項1のように養殖網に養殖用漁網防汚剤で防汚処理した後に、白色系の水性塗料で上塗りした養殖網を用いて養殖することにより、白色系の塗料が養殖網に長期間に渡って目立つ状態が確保出来るものとなるため、マグロの網への衝突死を安価で容易に防止できるものとなると共にマグロの衝突死を長期間に渡って防止できるので、経済損失が極めて減少できるものとなる。また本発明は、従来の如き面倒で且つ網の破損や流失の危険性が増大される要因である白色の紐やロープ、布等を巻付けたり、絡めたり、縫い付けたりする必要がなくなるので、網を目立つようにするための手間と労力が激減されると共に網の破損や流失の危険性も殆どなくなる。更に付着生物が少なくなるため、潮通しが良好で且つ網の海中に於ける抵抗が従来のものよりも小さくなり、養殖網の損傷が殆どなくなる。しかも網交換時には、従来の如き網に藻やカキなどが多く付着して吊下時に網を裂けることがなくなり、且つ、吊下作業時にカキなどで作業者の手などを損傷していた事故も殆どないものとなった。
請求項2のように白色系の水性塗料として、水性エマルジョン樹脂100重量部に対して、白色系顔料が10〜400重量部を含有したものを使用すると、漁網用の防汚剤を養殖網に塗布した後に、防汚剤を溶かすことなく塗り重ね(上塗り)することが出来るため、養殖網の表面には白色系の塗膜が確実に安定して形成され、防汚剤の効果が充分に発揮され、養殖網に塗布した白色系は長期間に渡って目立つ状態が確保出来るものとなる。
請求項3に示すように水性エマルジョン樹脂のTg(ガラス転移点)が10℃以下であり、且つ、白色系顔料が、酸化チタン,酸化亜鉛の一方或いは両方としたものを使用すれば、目立つ白色が養殖網に長期間に渡って落ちずに保持出来るものとなるのである。
網を目立つように着色してマグロに視覚で認識させると共に防汚処理した網に重ねて、明るく且つ目立つ顔料に酸化チタン系顔料が使用された水性エマルジョン系樹脂を塗布することで、防汚剤の効果を損うことなく、長期に渡ってマグロの養殖網への衝突を防止させることが実現した。
本発明方法の1実施例について説明する。先ずマグロの養殖網を目立つように着色する場合について説明する。先ず始めに一般的に使用されている耐久性に優れている黒着色の網を用意し、その網に、先ず市販の養殖用漁網防汚剤を塗布して防汚処理させる。前記防汚剤が乾燥した後、その上に白色系水性塗料を塗布し、それが乾燥すると、先に処理した防汚剤の色相に関わらず、網地表面には白色系塗膜が形成され、養殖網全体が白色系の目立つものとなる。この時に使用する防汚剤としては3ヶ月以上の防汚性を有する防汚剤であれば良い。尚、前記白色系水性塗料ではなく、油性の白色系塗料を使用すると、それを養殖網に塗布した後に、塗り重ねることにより、始めに塗布された防汚剤が溶かされてしまい、防汚剤の効果が減少してしまうので、必ず水性塗料を使用する。
この時に使用する白色系水性塗料としては、水性エマルジョン樹脂100重量部に対して、白色系顔料が10〜400重量部を含有したものを用いると良いが、好ましくは白色系顔料を20〜200重量部とするのが良い。また本発明で使用される水性エマルジョン樹脂としては、通常の乳化重合により製造されるアクリル酸エステル類,メタクリル酸エステル類,有機酸ビニルエステル類,エチレン等の単独又は共重合エマルジョン、ポリブテン,ポリブタジエン,ポリイソプレン等のエマルジョンであり、樹脂のTg(ガラス転移点)は10℃以下とし、好ましくは0℃以下が良く、処理網が粘着性を帯びないために、−60℃以上とするのが良い。この時、水性エマルジョン樹脂Tg(ガラス転移点)が10℃以上になると、養殖網がゴワゴワに硬くなって柔軟性がなくなり、使用できなくなる恐れがある。
本発明で使用される白色系顔料としては、酸化チタン,酸化亜鉛の一方或いは両方を用いると共に、その不揮発分(固形分)を5〜30%重量とするのが良いが、7〜20%重量とするのが好ましい。尚、30%重量以上の不揮発分の塗料を網染め時に5〜30%重量に調整して使用させるものとしても良く、少量の無機か有機の赤色,青色,黄色の顔料を添加することに問題はなく、必要に応じてタルク等の体質顔料を加えても良い。更に本発明で使用する水性塗料の溶剤は、水以外の溶剤として、低温時の凍結を防止する等のために、水溶性の溶剤を加えても良く、その溶剤としては、プロピレングリコール,エチレングリコール及びその低アルキルエーテル体,酢酸エステル体,低分子アルコール類を必要に応じて用いると良い。前記白色系塗料の製造は、一般のエマルジョン塗料と同様な方法で容易に製造でき、この時に使用する顔料分散剤,沈殿防止剤,消泡剤は、通常のエマルジョン塗料製造に使用されるもので、塗料の安定性に問題がなければ使用制限はないものとする。
このように養殖網に防汚剤を始めに塗布した後に、白色系水性塗料を塗り重ねることによって、養殖網の汚れが長期間に渡って防止されると共に、白色系が明るく目立つ状態で養殖網の表面で維持出来るため、マグロに養殖網の位置を視覚で認識させることが可能となり、長期間に渡って網の交換が不要で且つマグロに対して、環境の変化が余りない状態を維持出来るものとなり、マグロの飼育に好ましいものとなるのである。
本発明方法の別実施例について説明する。先ずマグロの養殖網を目立つように着色する場合について説明する。先ず始めに一般的に使用されている耐久性に優れている黒着色の網を用意すると共に市販の養殖用漁網防汚剤も用意する。先ず網に防汚剤を上記同様に塗布して防汚処理する。また水性アクリル樹脂エマルジョン100重量部に対して、酸化チタン系顔料が10〜400重量部を含有する白色の水性塗料を用意する。次に前記防汚剤が乾燥した後、前記養殖網に前記白色の水性塗料を浸漬法で塗布し、それが乾燥すると、先に処理した防汚剤の上に白色の塗膜が形成され、養殖網全体が白色の目立つものとなる。尚、白色の水性塗料の塗布方法は浸漬法に限定されるものではなく、白色の水性塗料で養殖網が上塗りされるものであれば他の方法でも良い。
次に本発明の作用について説明する。先ず養殖網に防汚剤を塗布して防汚処理した後に白色の水性塗料を塗布したものと、養殖網に白色の水性塗料を直接に塗布して防汚処理しないものとを用意し、それらを海中に浸漬させて、白色のくすみ具合と付着生物の付着具合を比較した。先ず始めに白色のくすみ具合の結果としては、養殖網に水性塗料を直接に塗布したものは14日で白色がくすんできたが、防汚処理した後に水性塗料を塗布したものは、90日経過しても白色に多少のくすみが出る程度で収まっていた。次に付着生物の付着具合の結果としては、養殖網に水性塗料を直接に塗布したものは30日で50%以上網目に付着し、60日目以降は全面に生物汚損があった。一方、防汚処理した後に水性塗料を塗布したものは、90日経過して生物汚損は薄いケイ藻類が付着した程度であった。尚、防汚処理した後に塗布する水性塗料として、水性アクリル樹脂エマルジョン100重量部に対して、白色系顔料を10重量部含有させたもの、20重量部含有させたもの、50重量部含有させたもの、100重量部含有させたもの、150重量部含有させたもの、200重量部含有させたもの、300重量部含有させたもの、400重量部含有させたもの、各水性塗料についても上記同様に白色のくすみ具合と付着生物の付着具合について行ったところ、上記と略同様な結果となった。
また養殖網に防汚剤を塗布して防汚処理した後に白色の水性塗料を塗布した所定大きさの生簀と、1年間使用された養殖網の所定大きさの生簀とに、平均魚体重0.4Kgのマグロを500尾放して衝突死の比較を行った。3日目で衝突死した数を確認したところ、本発明方法の生簀は3尾であったが、従来方法の生簀は39尾であり、従来方法のものよりも13分の1であった。又、平均魚体重10Kgのマグロを300尾放して衝突死の比較を行った。20日目で衝突死した数を確認したところ、本発明方法の生簀は3尾であったが、従来方法の生簀は31尾であり、従来方法のものよりも10分の1以下であった。
このように本発明方法を行えば、白色の水性塗料によって養殖網に容易に白色塗膜が形成されると共に水性塗料の乾燥性,塗布乾燥した網の取扱い易さ、且つ、作業者の健康に対する影響も少ないものとなる。また白色の水性塗料は下地防汚剤の防汚性を損うことなく、防汚剤の効果を損うことがなく、長期間白色が保たれ、マグロの網への衝突死を長期間に渡って防止することが出来るものとなった。
本発明はマグロ養殖網以外に、マグロの輸送時や移動時に使用する網に対しても応用できる。
Claims (3)
- マグロ養殖に於いて、養殖網に養殖用漁網防汚剤で防汚処理した後に、白色系の水性塗料で上塗りした養殖網を用いて養殖することを特徴とするマグロの養殖網への衝突防止方法。
- 前記白色系の水性塗料が、水性エマルジョン樹脂100重量部に対して、白色系顔料が10〜400重量部を含有した請求項1記載のマグロの養殖網への衝突防止方法。
- 前記水性エマルジョン樹脂のTg(ガラス転移点)が10℃以下であり、且つ、白色系顔料が、酸化チタン,酸化亜鉛の一方或いは両方である請求項2記載のマグロの養殖網への衝突防止方法。
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---|---|---|---|
JP2009108916A JP2010252739A (ja) | 2009-04-28 | 2009-04-28 | マグロの養殖網への衝突防止方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103053464A (zh) * | 2013-01-31 | 2013-04-24 | 中国水产科学研究院淡水渔业研究中心 | 美洲鲥鱼养殖池 |
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2009
- 2009-04-28 JP JP2009108916A patent/JP2010252739A/ja active Pending
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CN103053464A (zh) * | 2013-01-31 | 2013-04-24 | 中国水产科学研究院淡水渔业研究中心 | 美洲鲥鱼养殖池 |
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