JP2010251472A - 有機縦型トランジスタ - Google Patents

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Abstract

【課題】キャリア移動度が高く、低駆動電圧で大電流変調を可能とする有機縦型トランジスタを提供すること。
【解決手段】有機縦型トランジスタ1は、基板7と、エミッタ電極2と、第1有機半導体層3と、ベース電極4と、第2有機半導体層5と、コレクタ電極6とを備え、第1および第2有機半導体層3,5は、正孔輸送材料で形成され、各層を形成する有機半導体材料は、その分子構造に平面部分を有し、各分子の平面部分が基板7に対して略平行に配列し、その分子の形成するπ軌道が上下の分子のπ軌道と重なりを有し、分子が積層される配列方向に、エネルギー−波数(E−k)の関係を示す所定のバンド分散幅を有したエネルギーバンドを形成する。エミッタ電極2は、正孔を第1および第2有機半導体層3,5に注入する電極であり、エミッタ電極2およびコレクタ電極6は仕事関数が大きい材料、ベース電極4は仕事関数が小さい材料で形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機半導体材料を用いた縦型の有機トランジスタに関するものである。
将来のフレキシブルディスプレイ等への応用を考えた低温プロセスで作製できるトランジスタとしては、有機電界効果型トランジスタ(OFET、Organic Field Effect Transistor)が提案されてきた。一般に、FET等の電界効果型トランジスタの構造は、導電層の水平方向(膜面方向)に電流を流す構造(横型)である。
一方、大電流を流すことが可能で、高い動作速度の実現が可能な有機トランジスタとしては、縦型トランジスタであるSIT(Static Induction Transistor静電誘導トランジスタ)やMBOT(Meta1 Base Organic Transistor)が提案されていた(非特許文献1および特許文献1参照)。縦型トランジスタの構造は、導電層の垂直方向(膜厚方向)に電流を流す構造である。
このような縦型トランジスタは、FET等の電界効果型トランジスタと比較した場合、トランジスタの電流経路であるチャネル長を短くすることが可能であり、また、ドレイン電流を大きく取ることができ、トランジスタを高速度で動作させることが可能である。さらに、素子構造が簡単で素子サイズを小さくできる特徴を有している。
縦型トランジスタは、このような優れた特徴を有しているため、その応用として、例えば、有機EL層(electro-luminescence)等の発光層の制御素子(スイッチング素子と呼ぶ場合もある)として用いられる場合があった。例えば、有機EL層を用いた表示装置は、応答速度が速い特徴を有しているため、有機EL層の制御素子については、動作速度が速いことが要求される。
また、有機材料からなるトランジスタと有機EL等とを組み合わせることで、発光層と当該発光層の制御素子の双方を有機材料により形成した発光素子が実現できる。
具体的には、非特許文献1に記載されたSITは、キャリアである正孔(ホール)を輸送する材料であるペンタセンを用いたものであり、比較的高いキャリア移動度が実現可能なペンタセンを銅フタロシアニン(CuPc)薄膜と共に備える構造を有している。このペンタセンSITは、オン/オフ比230、ドレイン電流3[μA]を実現している。
また、特許文献1には、MBOTの一例として、電子をキャリアとする有機半導体材料を用いたトランジスタが開示されている。このトランジスタは、基板上にコレクタ電極、第1有機半導体層、シート状のベース電極、第2有機半導体層およびエミッタ電極がこの順番に積層された縦型構造である。このトランジスタでは、第1および第2有機半導体層に異なる種類の有機化合物の電荷輸送材料が用いられている。このトランジスタは、エミッタ電極から注入され電子が加速されてベース電極を透過してコレクタ電極に到達するという動作原理に基づいたものであり、コレクタ電極およびベース電極に仕事関数の小さい金属材料、エミッタ電極に仕事関数の大きい材料(ITO)が使用されている。そして、ベース電極をアルミニウムとし、第1および第2有機半導体層として、ペリレン顔料(Me−PTC)とフラーレン(C60)とをそれぞれ用いて、コレクタ電圧5[V]、ベース電圧3[V]の条件の下では、コレクタ電流密度は、350[mA/cm2]を実現している。なお、半導体層を共にC60とした場合、コレクタ電流密度は、0.0075[mA/cm2]となり十分な結果を得ることができない。
特開2007−258308号公報(段落0033−0041、表1、図1、図7)
Y. WATANABE, H. IECHl and K. KUDO, "Improvement in On/Off Ratio of Pentacene Static Induction Transistors with Ultrathin CuPc Layer", Jpn. J. Appl. Phys. vol.45, pp. 3698-3703 (2006)
しかしながら、有機材料からなる縦型トランジスタにおいては、有機材料を用いるが故の様々な問題が山積していた。例えば、SITにおいては、縦型なのでチャネル長が充分短いにも関わらず、漏れ電流が大きいため、充分高い電流が得られているとは言えなかった(非特許文献1参照)。
そして、MBOTについては、その電流値については非常に高い値が得られているものの、使用する有機材料の特定の組み合わせが必要である。材料の選択性が乏しいのみならず、2種類以上の材料を用いることから材料構成が複雑なものとなっている。また、特許文献1に記載のトランジスタは、キャリアが電子なので、キャリアに正孔(ホール)を用いた場合と比べてキャリアが注入される有機半導体材料のダメージが大きいという問題もある。
そこで、本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、キャリア移動度が高く、低駆動電圧で大電流変調を可能とする有機縦型トランジスタを提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本願発明者は種々検討を行った。シリコンやゲルマニウムを代表とする無機半導体の分野では、半世紀にもわたり様々なデバイスが開発されると共に、そのデバイス理論の確立も並行して行われてきた。そして、無機半導体中に形成されるエネルギーバンド構造がキャリアの移動に重要な役割を果たしていることが理解され始め、そのバンド伝導を利用することで高いキャリア移動度を容易に得ることができ、その飛躍的な進歩へとつながった。これに対して、有機材料を半導体に用いた有機半導体においては、無機半導体ほど厳密な環境で作製せずとも、それなりの性能が得られていた。そのために、そのデバイス理論については、ほぼ無視されたまま、デバイス作製ばかりが先行して行われてきた。そこで、本願発明者が鋭意研究した結果、有機半導体においても、エネルギーバンド構造を利用することで、キャリアの移動度が高く、低電圧で大電流変調を可能とする有機縦型トランジスタを作製することが可能であることを見出した。
そこで、請求項1に記載の有機縦型トランジスタは、基板と、エミッタ電極と、第1有機半導体層と、ベース電極と、第2有機半導体層と、コレクタ電極とがこの順番に積層され、前記エミッタ電極と前記コレクタ電極とにより前記ベース電極を縦方向に挟んだ有機縦型トランジスタであって、前記第1有機半導体層および前記第2有機半導体層が、正孔輸送材料で形成され、各層を形成する有機半導体材料が、その分子構造に平面部分を有し、各分子は平面部分が前記基板に対して略平行に配列し、その分子の形成するπ軌道が当該分子の縦方向に配置した分子の形成するπ軌道と重なりを有し、前記エミッタ電極が、キャリアとして正孔を前記第1有機半導体層および前記第2有機半導体層に注入する電極であり、前記エミッタ電極および前記コレクタ電極は、仕事関数が予め定められた値よりも大きい材料で形成され、前記ベース電極が、前記エミッタ電極および前記コレクタ電極と比較して、仕事関数が相対的に小さい材料で形成されていることとした。
かかる構成によれば、有機縦型トランジスタにおいて、第1および第2有機半導体層を形成する有機半導体材料の分子が、エミッタ電極−コレクタ電極方向に積層する配向となっているので、積層方向である縦方向に分子の周期的構造が形成される。その結果、有機半導体材料が分子の積層方向である縦方向にエネルギーバンド構造を形成し易くなる。このとき、分子の縦方向に配置した分子の形成するπ軌道の重なりが大きいと、より大きな分散幅を有したエネルギーバンドを形成することができる。また、エミッタ電極およびコレクタ電極の仕事関数が大きいので、キャリアとしての正孔(ホール)を容易に第1および第2有機半導体層へ注入することができ、ホール駆動のトランジスタ動作が可能となる。
また、請求項2に記載の有機縦型トランジスタは、請求項1に記載の有機縦型トランジスタであって、前記第1有機半導体層および前記第2有機半導体層を形成する有機半導体材料が、当該半導体材料の分子が積層される配列方向に、エネルギー−波数(E−k)の関係を示す所定のバンド分散幅を有したエネルギーバンドを形成する性質の材料であることとした。
かかる構成によれば、有機縦型トランジスタのオン状態において、ベース電極およびコレクタ電極のフェルミ準位をエミッタ電極よりも下げる方向にベース電圧およびエミッタ−コレクタ間電圧を印加して第1および第2有機半導体層を形成する分子の最高占有軌道(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbital)の準位を低くすることでHOMOをホールの通り道とするキャリア輸送過程において、有機半導体層中のキャリア輸送が容易であり、低駆動電圧で大電流変調が可能である。
また、請求項3に記載の有機縦型トランジスタは、請求項2に記載の有機縦型トランジスタであって、前記第1有機半導体層および前記第2有機半導体層のうちの少なくとも一方を形成する有機半導体材料が、下記式(1)で示されるBTQBT(bis(1,2,5-thiadiazolo)-p-quinobis(1,3-dithiole))、その類似体および誘導体のいずれかであることとした。
Figure 2010251472
かかる構成によれば、有機縦型トランジスタにおいて、少なくとも一方の有機半導体層の材料に、バンド分散幅が他の材料に比べて大きいBTQBTを用いたので、BTQBTで形成された有機半導体層内のキャリア移動について高い移動度が期待できる。また、BTQBTは、イオン化ポテンシャルも小さいことから、エミッタ電極からのホールの注入が容易に起こる。したがって、ホール駆動の有機縦型トランジスタの変調電流を大きくし、また動作電圧を低くすることが可能となる。
また、請求項4に記載の有機縦型トランジスタは、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の有機縦型トランジスタであって、前記第1有機半導体層と、前記第2有機半導体層とが、同一の有機半導体材料で形成されていることとした。
かかる構成によれば、有機縦型トランジスタは、2つの有機半導体層に対して1種類の有機半導体材料を用いるので、2つの有機半導体層に採用する材料として特定の組み合わせの材料を用いる必要がなく、構成を単純にすることができる。
また、請求項5に記載の有機縦型トランジスタは、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の有機縦型トランジスタであって、前記ベース電極が櫛状に形成されていることとした。
かかる構成によれば、有機縦型トランジスタは、ベース電極の櫛状部分の隙間がキャリアの通り道(チャネル)となるので、電圧印加時に、キャリアがベース電極の隙間を通って第1有機半導体層から第2有機半導体層へと移動することが可能である。
請求項1に記載の発明によれば、有機縦型トランジスタは、第1および第2有機半導体層の正孔輸送材料において平行配向の分子のπ軌道が重なりを有しているので正孔輸送材料は縦方向にエネルギーバンド構造を形成し易くなり、ホールを容易に第1および第2有機半導体層へ注入することができるように電極を構成したので、キャリア移動度が高く、低駆動電圧で大電流変調を可能とするホール駆動のトランジスタ動作が実現できる。
請求項2に記載の発明によれば、有機縦型トランジスタは、第1および第2有機半導体層の材料に、分子が積層される配列方向にエネルギーバンドを形成する性質の材料を採用したので、当該材料の分子のHOMOをホールの通り道とするキャリア輸送過程において、有機半導体層中のキャリア輸送が容易であり、低駆動電圧で大電流変調が可能である。
請求項3に記載の発明によれば、有機縦型トランジスタは、BTQBTを材料として用いたので、有機半導体層内における高いキャリア移動度を実現し、ホール駆動の有機縦型トランジスタの変調電流を大きくし、また動作電圧を低くすることが可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、有機縦型トランジスタは、2つの有機半導体層に採用する材料として特定の組み合わせの材料を用いる必要がないので、構成を単純にすることができる。
請求項5に記載の発明によれば、有機縦型トランジスタは、電圧印加時に、キャリアがベース電極の隙間を通って第1有機半導体層から第2有機半導体層へと容易に移動することができる。
(a)は本発明の実施形態に係る有機縦型トランジスタの概略断面図であり、(b)は、(a)の有機縦型トランジスタのA−A断面矢視図である。 有機半導体において基板平行方向にキャリアを流す際に有用なパッキング構造を示す模式図である。 有機半導体において基板垂直方向にキャリアを流す際に有用なパッキング構造を示す模式図である。 基板垂直方向に形成されたBTQBTのエネルギーバンド構造の一例を示すグラフである。 図1の有機縦型トランジスタの回路図である。 図1の有機縦型トランジスタ内のエネルギーダイアグラムであって、(a)は電圧非印加時、(b)は電圧印加時をそれぞれ示している。 (a)〜(e)は、図1に示した有機縦型トランジスタの製造手順を示す概略断面図である。 ITO上に作製したBTQBT膜のX線回折測定を行った結果を示す図である。 図1の有機縦型トランジスタの特性を示す図である。 図1の有機縦型トランジスタのコレクタ電流−ベース電圧特性を示す図である。
図面を参照して本発明の有機縦型トランジスタを実施するための形態(以下「実施形態」という)について詳細に説明する。以下では、有機縦型トランジスタの概要、有機半導体材料の選択についての原理、有機縦型トランジスタの構成、トランジスタ特性の原理、有機縦型トランジスタの製造方法について順次説明する。
[有機縦型トランジスタの概要]
図1(a)は本発明の実施形態に係る有機縦型トランジスタの概略断面図であり、(b)は、(a)の有機縦型トランジスタのA−A断面矢視図である。図1(a)および図1(b)に示すように、有機縦型トランジスタ1は、基板7と、エミッタ電極2と、第1有機半導体層3と、ベース電極4と、第2有機半導体層5と、コレクタ電極6とがこの順番に積層され、エミッタ電極2とコレクタ電極6とによりベース電極4を縦方向に挟んだ有機縦型トランジスタである。
第1有機半導体層3および第2有機半導体層5は、正孔輸送材料で形成され、第1有機半導体層3および第2有機半導体層5を形成する有機半導体材料の分子は、その分子構造の平面部分が基板7に対して略平行に配列し、その分子の形成するπ軌道が当該分子の縦方向に配置した分子の形成するπ軌道と重なりを有している。本実施形態では、第1有機半導体層3および第2有機半導体層5を形成する有機半導体材料は、当該半導体材料の分子が積層される配列方向に、エネルギー−波数(E−k)の関係を示す所定のバンド分散幅を有したエネルギーバンドを形成する性質の材料である。その詳細は後記する。
エミッタ電極2は、例えばガラス等からなる基板7上に形成され、キャリアとして正孔(ホール)を放出し第1有機半導体層3および第2有機半導体層5に注入する電極である。エミッタ電極2から放出されたキャリアは、第1有機半導体層3および第2有機半導体層5によって輸送されコレクタ電極6が受け取る。エミッタ電極2およびコレクタ電極6は、仕事関数が予め定められた値よりも大きい材料で形成され、ベース電極4は、エミッタ電極2およびコレクタ電極6と比較して、仕事関数が相対的に小さい材料で形成されている。
[有機半導体材料の選択についての原理]
有機トランジスタにおいては、例えば有機FETの系において、分子のパッキング構造や結晶性がキャリア移動度に及ぼす影響については、数多くの報告がなされている。その詳細は、例えば、「C. D. Dimitrakopoulos and P. R. L. Malenfant, “Organic Thin Film Transistors for Large Area Electronics”, Adv. Mater. 14, 99(2002)」に記載されている。
有機分子の最高占有軌道(HOMO)や最低非占有軌道(LUMO:Lowest Unoccupied Molecular Orbital)を構成するπ軌道の重なりが大きいと、分子間のキャリア輸送が容易に起こる。そのため、分子のパッキング構造がキャリア移動度に及ぼす影響が大きい。図2に、分子のπ軌道の広がりとパッキング構造の関係を模式的に示す。
図2に示したパッキング構造は、本実施形態の有機縦型トランジスタの比較例であって、有機FETに代表されるような基板平行方向(横方向)にキャリアを流す系のものである。ここでは、成膜用基板20に対して、4つの分子21a〜21d(区別しないときには、単に分子21と表記する)の平面部分が略垂直に配列している。なお、図2では、分子構造の平面部分を、分子の21の直線部分(σ軌道で挟まれた部分)で表した。この分子21は、例えば正孔輸送材料であるペンタセンの平面分子である。例えば、有機FETの場合には、図2に示すようなパッキング構造になり、かつ、π軌道がキャリアを流す方向に重なっていることが望ましい。なお、有機分子のσ軌道については、そのエネルギーが非常に低く、キャリア輸送には直接関与しないと考えられる。
有機結晶中のキャリア移動を考える上で、分子のパッキング構造はもちろん重要なパラメーターとなるのだが、その結晶内の分子軌道の重なりから形成されるエネルギーバンド構造こそが、有機結晶中のキャリア移動を考える上で最も重要なパラメーターである。
ここで、エネルギーバンド構造と、キャリア移動度との関係について数式を用いて説明する。半導体中のホールの移動度μhは、単位の電場の強さ(E)当たりの移動速度の大きさ|v|であり、式(2)で表される。
Figure 2010251472
式(2)において、eは電子の電荷、τは散乱による緩和時間、mhはホールの有効質量である。次に、不確定性原理より、仮にΔEをバンド分散幅、
Figure 2010251472
をプランク定数とすると、次の式(3)が成り立つ。
Figure 2010251472
有機固体において、緩和時間τに関与する現象としては、分子運動やフォノン緩和が含まれる。これら分子振動やフォノン緩和がバンド分散幅ΔEに効く程度は、温度因子程度なので、kBをボルツマン定数、絶対温度をTとすると、ΔE〜kBTとなる。つまり、緩和時間τにおいて、分子振動やフォノン緩和の影響分として、次の式(4)が成り立つ。
Figure 2010251472
ブロードバンドモデル(ΔE>kBT)では、緩和時間τがより大きくなる方である式(4)を用いる。有機固体において、式(4)を用いると、常温程度(T=290[K])では、ホールの移動度μhは、近似的に式(5)で表される。式(5)において、m0は自由電子の質量である。なお、式(4)と式(5)との関係は、後記する「報告例1」や「報告例5」に記載されている。以下では、ブロードバンドモデルのバンド分散幅ΔEを、あらためてバンド分散幅Wと表記することする。
Figure 2010251472
式(5)は、ホールの有効質量が分かれば、ホールの移動度μhの最低値を見積もることができることを示している。ホールの有効質量mhは、分子間の重なり積分をt、分子間の距離をaとすると式(6)で表される。なお、分子間の重なりとは、分子間のπ軌道の重なりを意味する。
Figure 2010251472
分子間の重なり積分tと、バンド分散幅Wとの間には、W=4tの関係があり、分子間の重なり積分tおよび分子間距離aは、エネルギーバンド構造が分かれば求めることができる。この詳細は、後記する「報告例3」に記載されている。また、前記した式(6)によると、tが大きいほど、すなわちバンド分散幅Wが大きいほど、ホールの有効質量mhは小さくなる。また、前記した式(2)より、ホールの有効質量mhが小さいほど、ホールの移動度μhは高くなる。つまり、前記した式(2)〜式(6)によれば、バンド分散幅Wが大きいほど高い移動度μhが得られることが分かる。そのような材料を用いることで、キャリアの移動度が高く、低電圧で大電流変調を可能とする有機トランジスタを作製することが可能であると推測される。
しかしながら、その有機半導体層(有機半導体薄膜)中のエネルギーバンド構造を考慮したトランジスタ設計がなされた例は皆無である。従来のトランジスタ設計において、有機半導体薄膜中のエネルギーバンド構造が考慮されてこなかった理由としては、無機半導体と異なって有機半導体の研究分野では、有機FETに代表されるような基板平行方向(横方向)にキャリアを流す系で、エネルギーバンド構造が形成されたという報告例が極めて少ないことが挙げられる。
有機FETに用いた場合に高いキャリア移動度が得られる有機半導体材料の研究分野において、近年、有機結晶中(ペンタセン)にエネルギーバンド構造が形成されていることが報告されている(以下、「報告例1」という)。「報告例1」は、「H. Kakula et al. “Electronic Structures of the Highest Occupied Molecular Orbital Bands of a Pentacene Ultrathin Film”, Phys. Rev. Lett. 98, 247601(2007)」に記載されている。「報告例1」により、有機半導体材料のエネルギーバンド構造とキャリア移動度との相関が議論されつつある。しかしながら、その比較は容易ではないと考えられる。
なぜなら、「報告例1」に記載されているように、有機FETのような系では、エネルギーバンド構造の異方性があり、必ずしも、キャリアを流す方向に理想的にエネルギーバンド構造が形成されるとは限らないからである。「報告例1」によると、ペンタセンでは、結晶軸はa方向、b方向、a+b方向に分別され各軸方向のエネルギーバンドの分散幅が異なっている。実際にはペンタセン薄膜は多結晶であり、チャネルの向きに対して理想的な状態になっていないので、本来の性質を得られないのみならず、複数個素子を作った際にその特性にばらつきがでると考えられる。そのため、有機FETのような系では、有機半導体結晶の持つ本来のキャリア移動特性を得ることは事実上困難である。
また、有機FETのような系では、有機単結晶の場合を除き、結晶のグレイン(結晶粒)がソース−ドレイン間に数多く存在する。そのため、グレイン内のキャリア移動度は高いものの、グレイン間のキャリア移動度が高くないということも、有機結晶の持つ本来のキャリア移動特性を得ることは難しいことの要因の一つである。
一方で、有機SITやMBOT等の縦型トランジスタにおいて、使用される有機半導体材料のエネルギーバンド構造を考慮しようとした場合、有機半導体層は、基板垂直方向(縦方向)にπ軌道の重なりがあり、縦方向にエネルギーバンド構造を形成する材料が好ましい。その際に好ましい分子のパッキング構造は、図3に示す通りである。図3に示したパッキング構造は、本実施形態の有機縦型トランジスタと同様に基板垂直方向(縦方向)にキャリアを流す系のものである。図3に示すように、成膜用基板30に対して、4つの分子31a〜31d(区別しないときには、単に分子31と表記する)の平面部分が平行(並行)に積層配列している。この配向(Alignment)では、これら分子31間にはπ軌道の重なり32が生じている。
縦方向にエネルギーバンド構造を形成する性質がある有機半導体材料のエネルギーバンド構造を測定することは、横方向にエネルギーバンド構造を形成する性質がある有機半導体材料について測定する場合と比べ、その測定が比較的容易であり、報告例も比較的多い。縦方向にエネルギーバンド構造を形成する性質がある有機半導体材料についての報告例として、例えば、4つの報告例(順に、「報告例2」、「報告例3」、「報告例4」、「報告例5」という)を挙げる。各報告例の有機半導体材料は、順番に、PTCDI(perylenetetracarboxylic diimide)、PTCDA(perylenetetracarboxylic dianhydride)、HATNA(Hexaazatrinaphthylene)、BTQBTである。
「報告例2」は、「G. N. Gavrila et al.,” Energy band dispersion in well ordered N,N’-dimethyl-3,4,9,10-perylenetetracarboxylic diimide films”, Appl. Phys. Lett. 85, 4657(2004)」に記載されている。
「報告例3」は、「H. Yamane et al.,” Intermolecular energy-band dispersion in PTCDA multilayers”, Phys. Rev. B68, 033102(2003)」に記載されている。
「報告例4」は、「X. Crispin et al.,” Electronic Delocalization in Discotic Liquid Crystals: A Joint Experimental and Theoretical Study”, J. Am. Chem. Soc.,126(38), 11889(2004)に記載されている。
「報告例5」は、「S. Hasegawa et al.,”Intermolecular energy-band dispersion in oriented thin films of bis(l,2,5-thiadiazolo)-p-quinobis(l,3-dithiole) by angle-resolved photoemission”, J. Chem. Phys.,100, 6969(1994)」に記載されている。
前記した4つの報告例のうち、測定されたバンド分散幅Wが最も大きいBTQBTの移動度と、比較的小さいPTCDAの移動度とについて式(2)〜式(6)を用いて見積もる。「報告例4」により、BTQBT薄膜のバンド分散幅W=0.092[eV]から見積もられるホールの移動度μhの最低値は、6.5[cm/Vs]である。一方、「報告例3」により、PTCDA薄膜のバンド分散幅W=0.05[eV]から見積もられるホールの移動度μhの最低値は3.8[cm/Vs]である。このように、有機半導体材料のエネルギーバンド構造は、素子のキャリア移動度にも大きな影響を及ぼすことが推測でき、バンド分散幅Wの大きい材料を用いることで、素子中のキャリア移動度も向上すると考えられる。
また、縦方向にエネルギーバンド構造を形成する系においては、分子間の相互作用で分子が積層する。そのため、有機FETの系では考える必要があったグレイン間のキャリア移動の影響を排除できる。また、縦方向にエネルギーバンド構造を形成する系においては、キャリアを流す方向にエネルギーバンド構造が形成されているため、有機FETの系では考える必要があったエネルギーバンド構造の異方性の影響も極めて小さい。
[有機縦型トランジスタの構成]
図1に戻って、有機縦型トランジスタ1の構成について詳細に説明する。
(基板)
基板7は、例えば、ガラス、プラスチック、石英、アンドープ・シリコンおよび高ドープ・シリコンのいずれかの材料を用いて形成されている。基板用のプラスチックとしては、ポリカーボネート、マイラー、および、ポリイミド等を用いることができる。
(電極)
エミッタ電極2、ベース電極4およびコレクタ電極6は、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、錫(Sn)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の導電性の酸化物、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチアジル、および、導電性ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の材料で構成されている。エミッタ電極2およびコレクタ電極6は、その中でも特に仕事関数の大きい材料(例えばITO等の導電性酸化物や金等)で形成される。一方、ベース電極4は、その中でも特に仕事関数の小さい材料(例えばアルミニウムや銀等)で形成される。そして、これらの電極材料は、蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電着、無電解メッキ、スピンコーティング、印刷および塗布よりなる群から選択された方法により形成される。
ベース電極4は、櫛形に形成されている。このベース電極4の櫛状部分の隙間がキャリアの通り道(チャネル)となっている。これにより、電圧印加時に、キャリアがベース電極4の隙間を通って第1有機半導体層3から第2有機半導体層5へと移動することが可能である。なお、櫛型のベース電極は、例えばSITでも用いられている。
ベース電極4と第1有機半導体層3および第2有機半導体層5との接触をショットキー接触とする。これにより、当該ショットキー接触により形成されるエネルギー障壁を利用して、エミッタ電極2とコレクタ電極6との間のリーク電流を低減可能にすると共に、オン/オフ比を向上させることができる。
(有機半導体層)
第1有機半導体層3および第2有機半導体層5を形成する有機半導体材料は、ホール駆動のp型材料である。この有機半導体材料として、前記した「報告例2」、「報告例3」、「報告例4」、「報告例5」で挙げられている有機半導体材料を用いることが可能である。その中でも、式(1)に示すBTQBTを用いることが特に好ましい。
Figure 2010251472
BTQBTは、「報告例5」に記載されてあるとおり、基板に対して平行配向で膜成長することで、HOMOは基板垂直方向にエネルギーバンド構造を形成する。前記の通り、そのバンド分散幅Wは他の材料に比べても大きく、有機半導体膜内のキャリア移動については高い移動度が期待できる。また、BTQBTは、イオン化ポテンシャルも小さいことから、エミッタ電極2からのホールの注入が容易に起こる。図4に、基板垂直方向に形成されたBTQBTのエネルギーバンド構造の一例を示す。図4のグラフは、「報告例5」に記載されている例であって、横軸が波数(momentum)k⊥[Å−1]、縦軸が束縛エネルギー(binding energy)[eV]を示している。なお、縦軸の束縛エネルギーは、vacuum(真空)レベルのエネルギーEvac=0[eV]として求めたものである。また、図4において、Wはバンド分散幅を示す。
図4に示すように、c軸方向(積層方向:⊥)にエネルギーバンド構造が形成されており、また、キャリアを流す方向も同一方向である。よって、そのエネルギーバンド構造における異方性はきわめて小さいと考えられる。このように第1有機半導体層3および第2有機半導体層5を形成する有機半導体材料のエネルギーバンド構造を考慮したことで、ホール駆動の有機縦型トランジスタ1の変調電流を大きくし、また動作電圧を低くすることが可能となる。また、第1有機半導体層3の膜厚や第2有機半導体層5の膜厚に対応して、この有機縦型トランジスタ1の電流経路であるチャネル長を薄くすることが可能であり、動作抵抗を低くして動作速度を向上させることができると共に、電流密度を向上させることができる。
[トランジスタ特性の原理]
次に、有機縦型トランジスタ1のトランジスタ特性の原理について図5および図6を参照して説明する。図5は、図1の有機縦型トランジスタの回路図である。図6は、有機縦型トランジスタにおけるキャリアのエネルギーダイアグラムであって、(a)は電圧非印加時、(b)は電圧印加時をそれぞれ示している。
図5に示すように、有機縦型トランジスタ1では、エミッタ電極2が接地されている。有機縦型トランジスタ1には、エミッタ−コレクタ間電圧VECおよびベース電圧Vが印加される。
エミッタ−コレクタ間電圧VECおよびベース電圧Vが印加されていない場合、すなわち、有機縦型トランジスタ1がオフ状態である場合、図6(a)に示すように、エミッタ電極2とベース電極4とコレクタ電極6との間が熱平衡状態である。すなわち、ベース電極4のフェルミ準位およびコレクタ電極6のフェルミ準位は、エミッタ電極2のフェルミ準位Eに一致する。すると、仕事関数の大きいエミッタ電極2およびコレクタ電極6によって、仕事関数の小さいベース電極4をサンドイッチすることで、電極間の接触電位差が生じるため、ベース電極4のポテンシャルが高くなり、有機縦型トランジスタ1内のポテンシャルは図6(a)のようになる。ここで、Evacはvacuum(真空)レベル(=0[eV])を示す。第1有機半導体層3や第2有機半導体層5では、有機半導体材料の分子の最高占有軌道(HOMO)が、電極の接触電位差の影響を受けてベース電極4に近いほど引っ張られて準位が高くなる(ポテンシャルの値が高いほど図6(a)において下に位置するので、HOMOが下側にずれる)。
一方、図6(b)に示すように、有機縦型トランジスタ1をオン状態とする場合、有機縦型トランジスタ1に、ベース電極4のフェルミ準位を、エミッタ電極2のフェルミ準位Eよりも下げる方向にベース電圧Vを印加し、かつ、コレクタ電極6のフェルミ準位を、エミッタ電極2のフェルミ準位Eよりも下げる方向に(図6(b)では、フェルミ準位を上側にずらす方向に)、エミッタ−コレクタ間電圧VECを印加する。第1有機半導体層3では、分子のHOMOがベース電圧Vの影響を受けてベース電極4に近いほど引っ張られて準位が低くなる(図6(b)では、HOMOが上側にずれる)。また、第2有機半導体層5では、分子のHOMOがベース電圧Vおよびエミッタ−コレクタ間電圧VECの影響を受けて準位が低くなる(図6(b)では、HOMOが上側にずれる)。ホールはエネルギーの高い方から低い方へ移動するので、第1有機半導体層3および第2有機半導体層5を形成する有機半導体材料のHOMOが、キャリアとしてのホール(h)の通り道となる。このようなキャリア輸送過程において、第1有機半導体層3および第2有機半導体層5を形成する有機半導体中にエネルギーバンド構造が形成されていれば、有機半導体薄膜中のキャリア輸送が容易であり、低駆動電圧で大電流変調が可能である。
[有機縦型トランジスタの製造方法]
次に、図1の有機縦型トランジスタの製造方法について、図7(a)〜(e)について、手順を追って説明する。図7(a)に示す工程では、基板7上面に電極材料を成膜してエミッタ電極2を形成する。次に、図7(b)に示す工程では、エミッタ電極2を覆うように、当該エミッタ電極2上に第1有機半導体層3を例えば真空蒸着法により形成する。次に、図7(c)に示す工程では、第1有機半導体層3の上面と側面を被覆するように電極材料を、例えば櫛状に形成してベース電極4を形成する。櫛状に形成するためには、例えば、第1有機半導体層3の上面に、スリット状のメタルマスクを配置して真空蒸着法で形成することができる。次に、図7(d)に示す工程では、ベース電極4上、および第1有機半導体層3上に、第2有機半導体層5を形成する。このとき、図7(b)に示す工程と同様にして有機半導体層を形成できる。次に、図7(e)に示す工程では、第2有機半導体層5上に、電極材料を成膜してコレクタ電極6を形成する。例えば、第2有機半導体層5の上面にメタルマスクを配置して成膜することができる。
本実施形態によれば、有機縦型トランジスタ1は、第1有機半導体層3および第2有機半導体層5の正孔輸送材料において平行配向の分子のπ軌道が重なりを有しているので正孔輸送材料は縦方向にエネルギーバンド構造を形成し易くなる。また、ホールを容易に第1有機半導体層3および第2有機半導体層5へ注入することができるようにエミッタ電極2、ベース電極4およびコレクタ電極6を構成したので、キャリア移動度が高く、低駆動電圧で大電流変調を可能とするホール駆動のトランジスタ動作が実現できる。特に、BTQBTを第1有機半導体層3および第2有機半導体層5の材料として用いたので、有機半導体層内における高いキャリア移動度を実現することができる。
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で様々に実施することができる。例えば、第1有機半導体層3および第2有機半導体層5の材料をBTQBTとするものとして説明したが、これに限定されるものではなく、その類似体および誘導体のいずれかを用いてもよい。ここで、類似体は、BTQBTの窒素(N)と結合している2つの硫黄(S)のうちの少なくとも1つを、セレン(Se)に置換したものである。なお、他のカルコゲンで置換することも可能である。
また、本実施形態では、第1有機半導体層3と第2有機半導体層5とが同一の有機半導体材料で形成されているものとしたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、一方を形成する有機半導体材料をBTQBTとして、他方を、BTQBTの類似体や誘導体あるいは別の半導体材料(PTCDI、PTCDA、HATNA)としてもよい。
また、本実施形態では、ベース電極4は、櫛形に形成されているものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。ベース電極4は、MBOTで用いられているように面状あるいはシート状に形成されていてもよい。このようにベース電極4を面状あるいはシート状に形成した場合、エミッタ電極2から注入されるキャリアである正孔(ホール)は、第1有機半導体層3から薄いベース電極4を貫通して第2有機半導体層5を介してコレクタ電極6へと移動することができる。
本発明の効果を確認するために本実施形態に係る有機縦型トランジスタを製造した。具体的には、図7(a)〜(e)の手順で作製した。まず、透明な0.7[mm]厚のガラス(コーニング社製無アルカリガラス1737F)からなる基板7の上面に、In酸化物とSn酸化物とからなるITO透明電極をRFスパッタリングにより成膜して、膜厚が110[nm]のエミッタ電極2を形成した。次に、ITO透明電極であるエミッタ電極2上に、真空蒸着法によりBTQBTからなる第1有機半導体層3を形成した。次に、BTQBTからなる第1有機半導体層3の上面にスリット状のメタルマスクを配置して、Alを室温、5×10−4[Pa]の真空条件下において真空蒸着法により、膜厚が35[nm]の櫛状のベース電極4を形成した。次に、ベース電極4および第1有機半導体層3上に、真空蒸着法によりBTQBTからなる第2有機半導体層5を形成した。次に、第2有機半導体層5の上面にメタルマスクを配置してAuを成膜することでコレクタ電極6を形成した。これにより、図1に示した構造を有する有機縦型トランジスタ1を形成した。
<有機半導体層における分子配向>
図8はエミッタ電極であるITO基板(成膜用基板30)上に真空蒸着法により作製したBTQBT薄膜のX線回折測定結果である。図8において、横軸は、入射方向と反射方向との間の角度2θ[°]、縦軸は、X線強度[a.u.=arbitary unit]をそれぞれ示している。なお、X線は、通常のCuKα線(λ=0.15418[nm])である。得られた測定結果(角度2θ)のピーク位置から、ブラッグの条件により計算で求められる基板垂直方向の分子間距離aは、3.3[Å]および9.3[Å]であった。このうち、分子間距離a=3.3[Å]は、BTQBTの分子同士が、分子面をスタックして吸着しているときの分子間距離である。また、分子間距離a=9.3[Å]は、BTQBTの分子同士が、分子面をスタックして吸着しているときの周期的構造として、分子間距離aの3倍の距離が観測されたと考えられる。よって、BTQBT分子は、エミッタ電極2であるITO基板(成膜用基板30)に対して平行に配列した。すなわち、BTQBT分子は、ガラスからなる基板7に対して平行となるように配向した。したがって、BTQBTからなる第1有機半導体層3は、「報告例5」記載と同様なエネルギーバンド構造を形成していることが確認できた。なお、仮に最小の分子間距離aが13[Å]程度であったとしたならば平面分子が垂直に配向していることになる。
<トランジスタ特性>
作製した有機縦型トランジスタ1に対して、図5に示した回路を構成して、電気特性を測定した。具体的には、エミッタ電極2とコレクタ電極6間に電圧VECを印加すると共にベース電極4に電圧Vbを印加してコレクタ電流Iを測定した。このときの測定結果について図9、図10を参照(適宜図5参照)して説明する。
図9は、図5の回路において所定値のベース電圧を印加しておき、エミッタ−コレクタ間電圧VECを変化させたときに測定されたコレクタ電流値Iを示したものである。図9において、横軸は、エミッタ−コレクタ間電圧VEC[V]、縦軸は、コレクタ電流値I[A/cm]をそれぞれ示している。この実験では、所定値のベース電圧Vを、+3.0[V]から−1.0[V]まで0.2[V]ずつ変化させて置き換えた状態で、エミッタ−コレクタ間電圧VECを0.02[V]ずつ変化させてコレクタ電流値Iを測定した。図9に示すように、エミッタ−コレクタ間電圧VECが0〜−1[V]の範囲で、ベース電圧3.0〜−1.0[V]、0.2[V]ステップで変調されていることがわかる。
図10は、エミッタ−コレクタ間電圧VECを−1[V]に固定して、ベース電圧Vを0.05[V]ずつ変化させて測定したコレクタ電流Iを示したものである。図10において、横軸は、ベース電圧V[V]、縦軸は、コレクタ電流値I[A/cm]をそれぞれ示している。なお、図10において、ベース電圧Vが等しい白丸と黒丸は、同じ測定値を示しており、白丸は左側縦軸の目盛、黒丸は右側縦軸目盛に対応している。図10に示すように、本実施例の有機縦型トランジスタ1によれば、ベース電圧Vを+3.0[V]から−1.0[V]まで徐々に変化させると、それに応じて、コレクタ電流Iは、2.9×10−5[A/cm2]から1.9×10−1[A/cm2]へと上昇する。
従来は、このような有機縦型トランジスタを用いた場合であっても、その有機半導体材料の選択がキャリア移動を考慮したものではなく、低い駆動電圧で大電流変調を実現することが困難であった。例えば、非特許文献1に示すようなペンタセンを用いたSITの場合においては、縦方向にキャリアを流す必要があるにもかかわらず、ペンタセン薄膜は、「報告例3」に示す通り、横方向にエネルギーバンド構造を形成する。そのため、横方向にキャリアを流すFETにおいては、よい特性が得られるものの、縦型トランジスタとして十分な特性が得られているとは言い難かった。
一方、有機縦型トランジスタ1の場合、有機半導体材料がキャリアを流す縦方向にエネルギーバンド構造を形成するため、縦方向キャリアの移動度が高いことが期待できる。そのため、低い駆動電圧で大電流変調が可能な縦型トランジスタを実現することできる。
例えば、図10に示した本実施例の有機縦型トランジスタ1のコレクタ電流Iの電流値は、同様の素子構造のSIT(比較例:非特許文献1参照)の1.5×10-4[A/cm2]に比べて3桁以上高い値である。また、本実施例の有機縦型トランジスタ1のオン/オフ比は、6610であったので、この比較例であるSITのオン/オフ比230よりも1桁以上高い。また、図10に示したように、エミッタ−コレクタ間電圧VECおよびベース電圧Vを−1[V]とした条件で、コレクタ電流Iは、1.9×10−1[A/cm2]を示したので、低い駆動電圧で大電流変調を実現した。以上のことから、本発明による有機縦型トランジスタ1の効果を確認した。
1 有機縦型トランジスタ
2 エミッタ電極
3 第1有機半導体層
4 ベース電極
5 第2有機半導体層
6 コレクタ電極
7 基板

Claims (5)

  1. 基板と、エミッタ電極と、第1有機半導体層と、ベース電極と、第2有機半導体層と、コレクタ電極とがこの順番に積層され、前記エミッタ電極と前記コレクタ電極とにより前記ベース電極を縦方向に挟んだ有機縦型トランジスタであって、
    前記第1有機半導体層および前記第2有機半導体層は、正孔輸送材料で形成され、
    各層を形成する有機半導体材料は、その分子構造に平面部分を有し、
    各分子は平面部分が前記基板に対して略平行に配列し、その分子の形成するπ軌道が当該分子の縦方向に配置した分子の形成するπ軌道と重なりを有し、
    前記エミッタ電極は、キャリアとして正孔を前記第1有機半導体層および前記第2有機半導体層に注入する電極であり、
    前記エミッタ電極および前記コレクタ電極は、仕事関数が予め定められた値よりも大きい材料で形成され、
    前記ベース電極は、前記エミッタ電極および前記コレクタ電極と比較して、仕事関数が相対的に小さい材料で形成されていることを特徴とする有機縦型トランジスタ。
  2. 前記第1有機半導体層および前記第2有機半導体層を形成する有機半導体材料は、当該半導体材料の分子が積層される配列方向に、エネルギー−波数(E−k)の関係を示す所定のバンド分散幅を有したエネルギーバンドを形成する性質の材料であることを特徴とする請求項1に記載の有機縦型トランジスタ。
  3. 前記第1有機半導体層および前記第2有機半導体層のうちの少なくとも一方を形成する有機半導体材料は、下記式(1)で示されるBTQBT(bis(1,2,5-thiadiazolo)-p-quinobis(1,3-dithiole))、その類似体および誘導体のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の有機縦型トランジスタ。
    Figure 2010251472
  4. 前記第1有機半導体層と、前記第2有機半導体層とは、同一の有機半導体材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の有機縦型トランジスタ。
  5. 前記ベース電極は、櫛状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の有機縦型トランジスタ。
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