JP2010249424A - 排気熱回収装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】排気の熱を回収して適宜の加熱対象56を昇温可能にするためのループ式ヒートパイプ構造の排気熱回収装置1において、流体封入量を可及的に少なくしながらも、排気の熱を効率良く回収可能にする。
【解決手段】排気熱回収装置1は、受熱部2と放熱部3と移送路4と還流路5とにより作られる閉ループ内で流体を相転移させながら循環させることによって、排気の熱の回収と放熱とを繰り返し行う。この熱の回収形態を次のようにする。放熱部3で凝縮された液相状の流体を還流路5から流入部8に戻し、この流入部8から液相状の流体を流体通路23にその上から流し入れ、その過程で排気通路22を流れる排気との間で熱交換させることで蒸発させ、この蒸発した流体が、その上昇流によって流体通路23を上昇して送出部7に入り、移送路4を経て放熱部3へと送り出される。
【選択図】図2

Description

本発明は、排気の熱を回収して所定部位を昇温可能とするための排気熱回収装置に関する。排気熱回収装置は、例えば自動車等の車両に用いられる。
従来において、ヒートパイプの原理を利用して車両の内燃機関から排出された排気の熱を回収して、この熱を暖機促進等に利用する装置が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
この従来装置は、要するに、内燃機関の排気の熱を受けて閉ループの循環経路内に封入される冷媒を蒸発させ、この蒸発した冷媒で適宜の加熱対象(例えば車両室内の座席、変速機の作動油、内燃機関の冷却水など)を加熱するように構成されている。
特許文献1に係る従来例は、エキゾーストパイプ4にループ型ヒートパイプ14の蒸発部1を横切るように配置し、座席7にループ型ヒートパイプ14の凝縮部6を設置し、凝縮部6と蒸発部1との間に、凝縮部6で凝縮された作動流体を溜めるリザーバー15を配置した構成である。リザーバー15は、この従来例の図1および図2に示されているように、蒸発部1の上側通路と同じ高さに設置されているが、このリザーバー15内の作動流体は、一旦下向きに流出させた後、蒸発部1の下側通路に横方向から供給するようになっている。
特許文献2に係る従来例は、排気管5の中心部に排気管5と平行に蒸発部11であるパイプを挿入し、この蒸発部11で発生した蒸気をオートマチックトランスミッション2に設置した凝縮部12に送ってATFを加熱し、凝縮部12で凝縮された凝縮液を蒸発部1に戻すようになっている。この従来例の図2に示されているように、凝縮液が蒸発部1の上から送られてくるようになっているが、凝縮液は蒸発部1であるパイプに横向きに流し入れるようになっている。
特許文献3に係る従来例は、蒸発器14と凝縮器15とが横並びに設置された構成のループ式ヒートパイプにおいて、凝縮器15で凝縮された液冷媒を蒸発器14の下タンク18に戻すようになっている。この従来例の図1に示されているように、下タンク18の上に蒸発器14の複数のチューブ17aを上下に沿うように設置し、各チューブ17aの間の空間に熱交換用のフィン17bを設けている。そして、凝縮部15で凝縮された液冷媒が下向きに落とされて下側のタンク18に送られてから、この液冷媒の位置エネルギーによって下側のタンク18からチューブ17aへ送り込むようになっている。
特許文献4に係る従来例は、特許文献3に係る従来例と類似した構成であり、凝縮部130で凝縮された作動媒体が下向きに落とされて下側のタンク114に送られてから、この作動媒体の位置エネルギーによって下側のタンク114からチューブ111,112へ送り込むようになっている。さらに、蒸発部110と凝縮部130との間に断熱部121を設けている。この断熱部121は、この従来例の段落0053に示されているように、凝縮部130の冷却水によって蒸発部110が冷却されることを防止するために設けられている。
特開平7−218160号公報 特開2000−130968号公報 特開2008−2793号公報 特開2008−275292号公報
上記特許文献1に係る従来例では、リザーバー15内から下向きに排出される作動流体が、略90度、方向転換されて蒸発部1における水平姿勢の下側通路に横向きに供給されるようになっていて、この下側通路内のみで作動流体が排気ガスと熱交換されるようになっているために、熱交換効率が悪いことが指摘される。
上記特許文献2に係る従来例では、凝縮部12で凝縮された凝縮液が下向きに送出されて蒸発部1である水平姿勢のパイプに横向きに流れるようになっており、また、蒸発部1であるパイプが排気管5の中心に平行に配置されているために、パイプ内の凝縮液と排気ガスとの熱交換効率が悪いと言える。
上記特許文献3,4に係る従来例では、凝縮部15,130で凝縮された液冷媒や作動媒体が下向きに落とされて下側のタンク18,114に送られてから、この液冷媒や作動媒体の位置エネルギーによって下側のタンク18,114からチューブ17a,111,112へ送り込むようになっている。そのために、チューブ17a,111,112内にできるだけ多くの液冷媒や作動媒体を入れて排気ガスとの熱交換面積を大きくするには、液冷媒や作動媒体の封入量を可及的に多くする必要があると言える。
このような事情に鑑み、本発明は、排気の熱を回収して所定部位を昇温可能にするためのループ式ヒートパイプ構造の排気熱回収装置において、流体封入量を可及的に少なくしながらも、排気の熱を効率良く回収可能にすることを目的としている。
本発明に係る排気熱回収装置は、内部に封入される流体を排気の熱で蒸発させるための受熱部と、この受熱部で蒸発された気相状の流体を受け入れて当該流体の熱と加熱対象とを熱交換させるための放熱部と、前記受熱部から気相状の流体を前記放熱部へ移送するための移送路と、前記放熱部での熱交換に伴い凝縮される液相状の流体を前記受熱部へ戻すための還流路とを含むループ式ヒートパイプ構造とされ、前記受熱部は、排気が流入通過されかつ排気の熱を受け取る受熱体が設けられる排気通路と、上下方向に沿って流体を流すための流体通路とを、前記排気流れ方向と直交する方向に交互に隣り合わせに多数設けた構成とされ、前記多数の流体通路の上部には、前記還流路から戻される液相状の流体を流入させるための流入部と、前記流体通路内において排気との熱交換で蒸発される気相状の流体を前記移送路へ送り出すための送出部とが設けられている、ことを特徴としている。
このようなループ式ヒートパイプ構造の排気熱回収装置では、受熱部と放熱部と移送路と還流路とにより作られる閉ループ内で流体が相転移しながら循環されることによって、排気の熱の回収と放熱とが繰り返されるものである。
本発明の構成では、還流路から戻される液相状の流体が流入部を経て流体通路の上から下へと流し入れられるので、従来例のように流体通路の下から凝縮流体を流入させる場合に比べて、流体の流入抵抗が大幅に軽減されるとともに、受熱部と放熱部との設置位置の高低差を小さくすることが可能になり、設置自由度を向上するうえで有利となる。
また、前記液相状の流体が流体通路を下降する過程や下側に溜まった状態で、排気通路を流れる排気との間で熱交換されるようになるから、従来例に比べて、受熱距離が長くなる等、熱回収効率が向上するようになる。
さらに、流体通路内において熱交換により蒸発した流体は、その上昇流と共に流体通路を上向きに流れるようになるので、送出部および移送路を経て放熱部へと速やかに送られるようになる。
このように、受熱部において熱回収を効率良く行うことが可能になるとともに、受熱部への流体の流入動作と受熱部からの流体の送出動作とを円滑に行うことが可能になるから、閉ループ内に対する流体封入量を可及的に少なくすることが可能になる。したがって、本発明の構成によれば、流体封入量を可及的に少なくしながらも、排気の熱を効率良く回収することが可能になる。
好ましくは、前記多数の流体通路は、それぞれ、排気流れ方向の上流側と下流側とに区画されるとともに、この区画された上流側領域と下流側領域とが下部で連通され、前記下流側領域の上部に前記流入部が、また、前記上流側領域の上部に前記送出部がそれぞれ設けられる。
この構成では、多数の流体通路において、下流側領域の上から凝縮流体が流し入れられて、連通部分を経て上流側領域に送られるようになる。
その移動の過程で、液相状の流体が排気通路を流れる排気との間で熱交換されるようになって、蒸発されることになる。この気相状の流体は、上流側領域を上昇して送出部および移送路を経て放熱部へと速やかに送られるようになる。
このような熱の回収形態では、受熱部の流体通路の上流側領域が下流側領域よりも高温となるために、流体通路の下流側領域を下降する液相状の流体が比較的低温の排気で加熱されることになって、流体通路の上流側領域を上昇する気相状の流体が比較的高温の排気で加熱されることになる。
これにより、流体通路の上流側領域を上昇する気相状の流体がその過程で凝縮することが回避される他、流体通路の下流側領域を下降する液相状の流体が蒸発して、この蒸発した流体が上昇して流入部に逆流して放熱部へ送られるという逆流現象が回避されるようになる。そのため、閉ループ内での熱の循環が円滑になるので、排気の熱を効率良く回収して効率良く利用することが可能になる。
好ましくは、前記流入部には、前記下流側領域に液相状の流体を分散流入させるためのタンクが設けられ、前記送出部には、前記上流側領域を上昇する気相状の流体を集めて移送路へ送り出すためのタンクが設けられる。
この構成では、前記下流側領域の略全域に流入された液相状の流体が排気熱により加熱されることになり、また、前記上流側領域の略全域で蒸発された気相状の流体を効率良く集めて放熱部へ送ることが可能になる。これにより、閉ループ内での熱の循環がより円滑になる。
好ましくは、前記多数の流体通路は、それぞれ、排気流れ方向で上流側と下流側とに区画されるとともに、この区画された上流側領域と下流側領域とが下部で連通され、前記上流側領域の上部に前記流入部が、また、前記下流側領域の上部に前記送出部がそれぞれ設けられる。
この構成では、多数の流体通路において、上流側領域の上から凝縮流体が流し入れられて、連通部分を経て下流側領域に送られるようになる。その移動の過程で、液相状の流体が排気通路を流れる排気との間で熱交換されるようになって、蒸発されることになる。この気相状の流体は、下流側領域を上昇して送出部および移送路を経て放熱部へと速やかに送られるようになる。
このような状況において、受熱部の排気通路を通過する排気は、流体通路の上流側領域が下流側領域よりも高温となる。そのため、流体通路の上流側領域を下降する液相状の流体が比較的高温の排気で加熱されることになって、流体通路の下流側領域を上昇する気相状の流体が比較的低温の排気で加熱されることになる。
これにより、上流側領域を下降する液相状の流体がその過程で早期に蒸発されやすくなり、また、下流側領域を上昇する気相状の流体が過剰に加熱されなくなる。そのため、流体通路において排気流れ方向での温度の高低差が小さくなるので、流体通路を構成する部材に対する局部的な熱的応力の集中を軽減できるようになる等、受熱部の耐久性を向上するうえで有利となる。
好ましくは、前記流入部には、前記上流側領域に液相状の流体を分散流入させるためのタンクが設けられ、前記送出部には、前記下流側領域を上昇する気相状の流体を集めて移送路へ送り出すためのタンクが設けられる。
この構成では、前記上流側領域の略全域に流入された液相状の流体が排気熱により加熱されることになり、また、前記下流側領域の略全域で蒸発された気相状の流体を効率良く集めて放熱部へ送ることが可能になる。これにより、閉ループ内での熱の循環がより円滑になる。
好ましくは、前記多数の流体通路および排気通路は、それぞれ、排気流れ方向と直交する方向で3つのグループに分けられるとともに、この各グループに属するすべての流体通路が下部で連通され、前記流入部は、前記両側のグループに属する流体通路の上部にそれぞれ設けられ、前記送出部は、前記中央のグループに属する流体通路の上部に設けられる。
この構成では、多数の流体通路において、両側のグループに属する流体通路の上から凝縮流体が流し入れられて、連通部分を経て中央のグループに属する流体通路に送られるようになる。その移動の過程で、液相状の流体が排気通路を流れる排気との間で熱交換されるようになって、蒸発されることになる。この気相状の流体は、中央のグループに属する流体通路を上昇して送出部および移送路を経て放熱部へと速やかに送られるようになる。
この場合、前記両側のグループに属する流体通路が、中央のグループに属する流体通路と外気との熱伝導を遮断することが可能になる。つまり受熱部内から外への熱放出や、冷たい外気で受熱部が冷却されるといったことを回避することが可能になる。
これにより、受熱部の設置場所の周辺に及ぼす熱害を回避するうえで有利となり、受熱部の設置自由度が向上する。一方、例えば外気温が低い状況においても、前記中央のグループに属する流体通路を上昇する気相状の流体が再度凝縮されてしまうといったことを回避することが可能になる。
また、仮に、両側のグループに属する流体通路を下降する液相状の流体が外気で温度低下したとしても、この液相状の流体が連通部分および中央のグループに属する流体通路において加熱されるようになる。そのため、流体の蒸発作用が著しく低下することがなくなる等、排気の熱を効率良く回収するうえで有利となる。
好ましくは、前記流入部には、前記両側のグループに属する流体通路に液相状の流体を分散流入させるためのタンクが設けられ、前記送出部には、前記中央のグループに属する流体通路を上昇する気相状の流体を集めて移送路へ送り出すためのタンクが設けられる。
この構成では、前記両側のグループに属する略すべての流体通路に流入された液相状の流体が排気熱により加熱されることになり、また、前記中央のグループに属する略すべての流体通路で蒸発された気相状の流体を効率良く集めて放熱部へ送ることが可能になる。これにより、閉ループ内での熱の循環がより円滑になる。
好ましくは、前記流入部と送出部との間には、断熱部が設けられる。
なお、前記断熱部としては、空気層や、断熱材料等とすることが可能である。この構成では、送出部内の気相状流体の熱が流入部内の液相状流体に奪われなくなる。これにより、例えば排気熱回収装置の作動開始後、早期段階において排気熱を回収して有効に利用することが可能になる。
好ましくは、前記断熱部には、前記送出部に取り付けられる取り付け部と、前記流入部に当接可能に離隔して設けられる自由端部とを有する熱伝導部材が設置され、この熱伝導部材は、前記送出部が規定温度未満のときに前記自由端部が前記流入部に離隔する状態となる一方、前記送出部が規定温度以上のときに前記自由端部が前記流入部に当接する状態になる。
この熱伝導部材は、バイメタル、あるいは形状記憶合金等とすることができる。この構成では、前記送出部が規定温度未満のときに熱伝導部材が前記流入部から離隔するので、送出部から流入部へ熱が伝導されなくなる。これにより、一方、前記送出部が規定温度以上のときに熱伝導部材が前記流入部に当接するので、送出部から流入部へ熱が伝導されるようになる。
ところで、例えば排気熱の回収動作を開始した直後等では、送出部内に蒸発した流体が少ないので、送出部の温度も低くなっている。しかし、排気熱の開始動作を開始してからある程度時間が経過すると、送出部内に蒸発した流体が溜まるので、この突出部が高温になっている。
このような状況において、送出部が低温である場合には、この送出部内における気相状の流体の熱が流入部内の液相状の流体に奪われなくなるので、送出部内で気相状の流体が再度凝縮されることがなくなり、可及的に多くの気相状の流体を放熱部へ送ることが可能になる。
一方、送出部が高温である場合には、この送出部内における気相状の流体の熱を流入部内の液相状の流体に伝達することが可能になるので、流入部内の液相状の流体が加熱されることになって、流体通路内に流入してから早期に蒸発されるようになる。つまり、熱の早期回収が可能になる。しかも、送出部の熱を流入部に伝達しても、送出部内には高温の気相状の流体が順次流入されるので、送出部の温度が低下することはない。
本発明に係る排気熱回収装置は、閉ループ内への流体封入量を可及的に少なくしながらも、排気の熱を効率良く回収することが可能になる。
本発明に係る排気熱回収装置の一実施形態で、その全体の外観を示す斜視図である。 図1の排気熱回収装置を排気流れ方向に沿って断面にした図である。 図1および図2の受熱部を分解して示す斜視図である。 図2の(4)−(4)線断面の矢視図である。 図2の(5)−(5)線断面の矢視図である。 本発明に係る排気熱回収装置の他実施形態で、その全体の外観を示す斜視図である。 図6の排気熱回収装置を排気流れ方向に沿って断面にした図である。 本発明に係る排気熱回収装置の他実施形態で、その全体の外観を示す斜視図である。 図1の排気熱回収装置を排気流れ方向に沿って断面にした図である。 図8の受熱部を分解して示す斜視図である。 図9の(11)−(11)線断面の矢視図である。 図9の(12)−(12)線断面の矢視図である。 本発明に係る排気熱回収装置の他実施形態で、その全体の外観を示す斜視図である。 図13の排気熱回収装置を排気流れ方向と直交する方向で断面にした図である。 本発明に係る排気熱回収装置の他実施形態を示す平面図であり、熱伝導部材が弾性変形していない自然状態を示している。 図15において熱伝導部材が弾性変形した状態を示す図である。
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1から図5に本発明の一実施形態を示している。図中、1は排気熱回収装置の全体を示している。排気熱回収装置1は、主として受熱部2、放熱部3、移送路4、還流路5を含んだループ式ヒートパイプ構造になっている。
図示例の排気熱回収装置1は、受熱部2と放熱部3とが接近して配置されてコンパクトにユニット化されているタイプを例に挙げている。
この排気熱回収装置1の内部は、真空状態とされていて、そこに適量の流体が封入されている。流体は、例えば純水等とされる。水の沸点は、1気圧で100℃であるが、排気熱回収装置1内を減圧(例えば0.01気圧)しているため、沸点は、例えば5〜10℃となる。なお、流体は、純水の他に、例えばアルコール、フロロカーボン、フロン等とすることが可能である。また、排気熱回収装置1の主要構成要素は、例えば高耐食性を備えるステンレス材で形成されている。
受熱部2は、内部に封入される液相状の流体を排気の熱で蒸発させるものである。この受熱部2は、単一のコア21を用いた構成になっている。このコア21には、多数の排気通路22と多数の流体通路23とが交互に隣り合わせに配置された状態で設けられている。この受熱部2の構成については後で詳しく説明する。
放熱部3は、受熱部2で蒸気とされた気相状の流体を受け入れて、この流体の潜熱で加熱対象(例えば内燃機関の冷却水)を加熱するものである。この放熱部3内の気相状の流体は、前記熱交換に伴い凝縮されて液相状となり、受熱部2に戻される。
この放熱部3は、内部が密閉されたケースからなり、その底壁には移送路4の下流端および還流路5の上流端がそれぞれ接続されている。この放熱部3の内部空間には、加熱対象(例えば下記する冷却水通路56)が挿入される。
移送路4は、受熱部2で蒸発された気相状の流体を放熱部3へ移送するための配管である。この移送路4は、受熱部2で蒸発されて気相状となった流体を放熱部3へ送り出しやすくするために適宜の上り勾配がつけられている。
還流路5は、放熱部3で凝縮した液相状の流体を受熱部2へ戻すための配管である。この還流路5は、放熱部3で凝縮されて液相状となった流体を受熱部2へ戻しやすくするために適宜の下り勾配がつけられている。なお、放熱部3内で凝縮された液相状の流体を還流路5にさらに流入させやすくするために、放熱部3のケースの底壁を傾斜させて、この傾斜した底壁の最下位置に還流路5を接続している。
次に、前記した排気熱回収装置1の使用形態について、図1および図2を参照して説明する。
排気熱回収装置1は、例えば自動車等の車両に搭載される内燃機関から排出される排気の熱を回収して、内燃機関の冷却水(LLC:ロングライフクーラントと呼ばれる冷媒)を加熱する形態で使用することができる。
図示しているように、排気熱回収装置1の受熱部2が、自動車等の車両に備える排気管51の途中に設置され、排気熱回収装置1の放熱部3内に、内燃機関の冷却水を外部に取り出してから戻すための冷却水通路56が挿入されている。
排気管51は、排気熱回収装置1を設置することによって、それを境に上流部52と下流部53とに分割される。ちなみに、図示していないが、排気管51の上流部52側に触媒が設けられ、排気管51の下流部53側に消音マフラー等が設けられる。
排気熱回収装置1の受熱部2における各排気通路22の入口が排気管51の上流部52側に配置されて、各排気通路22の出口が排気管51の下流部53に配置される。
受熱部2における排気入口側と排気管51の上流部52との連結部分、および排気熱回収装置1の受熱部2における排気出口側と排気管51の下流部53との連結部分には、テーパコーン形状の中継パイプ54,55が設けられている。
上流側連結部分に設置される中継パイプ54は、排気流れ方向の上流側から下流側へ向けて内径寸法を漸次大きくする形状であり、それによって排気管51の上流部52を流れる排気を排気熱回収装置1の受熱部2の排気入口全域に行き届かせることが可能になっている。
下流側連結部分に設置される中継パイプ55は、排気流れ方向の上流側から下流側へ向けて内径寸法を漸次小さくする形状であり、それによって排気熱回収装置1の受熱部2の排気出口全域から流出する排気を排気管51の下流部53に抵抗少なく集めて流すことが可能になっている。
ここで、前記した受熱部2の構成を詳しく説明する。
受熱部2のコア21は、図3に示すように、適宜数のチューブ24・・・を横方向に積層して連結した積層構造体になっている。この連結は、積層部分を溶接またはロウ付け等により接合することにより行われる。
チューブ24は、この実施形態において四角い筒のような形状とされている。このチューブ24の内孔が、排気通路22となる。
チューブ24の両側壁における左右方向の中間領域には、上下方向に沿う凹み25,26が設けられている。各チューブ24を積層して連結すると、各凹み25,26の底側が向き合わされて孔が作られる。つまり、チューブ24の片側の凹み25と、このチューブ24に隣り合うチューブ24の片側の凹み26とが合わされて孔が作られるようになり、この孔が流体通路23となる。
また、各チューブ24の排気通路22には、排気の熱を受ける受熱体としてのフィン27が設けられている。このフィン27は、例えば一般的に公知のコルゲートタイプのフィンとされている。
このように、排気通路22と、流体通路23とは、交互に隣り合わせに多数配置されている。ここでは、排気通路22は、排気流れ方向に沿う横穴として、また、流体通路23は、排気流れ方向と直交して上下方向に沿う縦穴として利用される。
このようなコア21の上部には、流体通路23内で蒸発された気相状の流体を集めて放熱部3へ送り出すための送出用バッファタンク7と、放熱部3で凝縮された液相状の流体を受け入れて流体通路23内に落とし入れるための流入用バッファタンク8とが設置されている。
送出用バッファタンク7は、すべての流体通路23において排気流れ方向の上流側領域の上部開口を覆うように、コア21の上部に設置されている。これにより、送出用バッファタンク7には、コア21のすべての流体通路23内で蒸発された気相状の流体を集めることが可能になる。この送出用バッファタンク7の上部には、移送路4が接続されている。
流入用バッファタンク8は、すべての流体通路23の排気流れ方向下流側領域の上部開口を覆うように、コア21の上部に設置されている。これにより、流入用バッファタンク8には、放熱部3から受け入れた液相状の流体が、コア21のすべての流体通路23に分散して流し入れることが可能になる。この流入用バッファタンク8の上部には、還流路5が接続されている。
このように、放熱部3で凝縮された液相状の流体を受熱部2の排気流れ方向の下流側から入れるタイプを「後入れ」と言うことにする。この場合、送出用バッファタンク7が、流入用バッファタンク8よりも高温となる。
送出用バッファタンク7と流入用バッファタンク8とは、この実施形態において、排気流れ方向に離れた状態で設置されている。このような設置状態では、コア21のすべての流体通路23において排気流れ方向の中間領域が前記離隔部分から露出することになる。そこで、前記離隔部分に蓋9を取り付けることにより、前記露出部分を閉塞するようにしている。前記両タンク7,8の離隔部分は、互いの熱の伝導を遮断するための空気層からなる断熱部14となる。
また、コア21には、底面と両側面を覆うようにケース10が取り付けられており、上面と、排気通路22の入口および出口とが露呈されている。
このケース10は、一側から見てU字形に形成されており、平坦な底板部11の両側に立ち上がり壁12,13を設けた形状になっている。このケース11の底板部11は、コア21のすべての流体通路23の下部開口を閉塞するようになっている。また、ケース10の一方の立ち上がり壁12は、コア21の一側に位置する凹み25を閉塞して、この閉塞空間を流体通路23とするようになっている。また、ケース10の他方の立ち上がり壁13は、コア21の他側に位置する凹み26を閉塞して、この閉塞空間を流体通路23とするようになっている。
ここで、排気熱回収装置1の基本的な動作を説明する。
排気管51を流れる排気は、受熱部2におけるコア21の排気通路22に流入して通過することになるが、その過程で排気通路22内のフィン27の外表面に接触して下流側へ流れる。これにより、フィン27に排気の熱が伝わることになる。
その一方で、放熱部3から還流路5を経て流入用バッファタンク8内に戻された液相状の流体は、コア21におけるすべての流体通路23内における下流側領域に上から流し入れられる。このすべての流体通路23内で液相状の流体が落ちる過程、あるいはすべての流体通路23内の下に液相状の流体が溜まった状態で、液相状の流体が前記フィン27の熱で加熱されることになって、蒸発される。
この蒸発した気相状の流体は、すべての流体通路23内を上昇して上流側領域に配置される送出用バッファタンク7に集められ、移送路4を経て放熱部3に移送される。
この放熱部3においては、気相状の流体の潜熱で冷却水通路56内を流通する内燃機関の冷却水が加熱される。これにより、放熱部3内の気相状の流体が凝縮されて液相状となり、還流路5を経て受熱部2の流入用バッファタンク8に戻される。
以降は、受熱部2と放熱部3と移送路4と還流路5とにより作られる閉ループ内で流体が相転移しながら循環されることになって、排気の熱の回収と機関冷却水の加熱とを繰り返すようになる。これにより、内燃機関の暖機運転を早期に終了させることが可能になる。
ところで、例えば放熱部3において機関冷却水との熱交換が不要となった暖機完了時等に、放熱部3への気相状の流体の移送を停止させることにより、機関冷却水の過剰昇温を防止させるのが好ましい。そのためには、図示していないが、還流路5に、流体の戻り量を規制するためのバルブを設ければよい。そして、例えば放熱部3において加熱対象との熱交換が不要となった時等に前記バルブを全閉状態とすればよい。
以上説明したように、本発明の特徴を適用した実施形態の排気熱回収装置1では、受熱部2において、図2中の太線矢印で示すように、流体が相転移しながら熱を回収するように工夫しているので、次のような効果が得られる。
まず、還流路5から戻される液相状の流体が、流入用バッファタンク8を経て各流体通路23の下流側領域にその上から下へと流し入れられるので、従来例のように流体通路の下から凝縮流体を流入させる場合に比べて、流体の流入抵抗が大幅に軽減されるとともに、受熱部2と放熱部3との設置位置の高低差を小さくすることが可能になって、それらの設置自由度を向上するうえで有利となる。
また、液相状の流体が流体通路23を下降する過程や下側に溜まった状態で、排気通路22を流れる排気との間で熱交換されるようになるから、従来例に比べて、受熱距離が長くなる等、熱回収効率が向上するようになる。
さらに、流体通路23内において熱交換により蒸発した流体は、その上昇流と共に流体通路23の上流側領域を上向きに流れるようになるので、送出用バッファタンク7および移送路4を経て放熱部3へと速やかに送られるようになる。
このように、受熱部2において熱回収を効率良く行うことが可能になるとともに、受熱部2への流体の流入動作と受熱部2からの流体の送出動作とを円滑に行うことが可能になるから、閉ループ内に対する流体封入量を可及的に少なくすることが可能になる。したがって、本発明の構成によれば、流体封入量を可及的に少なくしながらも、排気の熱を効率良く回収することが可能になる。
この他、前記したような後入れタイプによる熱の回収形態では、受熱部2の流体通路23の上流側領域が下流側領域よりも高温となるために、流体通路23の下流側領域を下降する液相状の流体が比較的低温の排気で加熱されることになって、流体通路23の上流側領域を上昇する気相状の流体が比較的高温の排気で加熱されることになる。
これにより、流体通路23の上流側領域を上昇する気相状の流体がその過程で凝縮することが回避される他、流体通路23の下流側領域を下降する液相状の流体が蒸発して、この蒸発した流体が上昇して流入用バッファタンク8に逆流して放熱部3へ送られるという逆流現象が回避されるようになる。そのため、閉ループ内での熱の循環が円滑になるので、排気の熱を効率良く回収して効率良く利用することが可能になる。
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲で包含されるすべての変形や応用が可能である。以下で例を挙げる。
(1)上記実施形態では、受熱部2のコア21において排気流れ方向の上流側領域に送出用バッファタンク7を設置して、下流側領域に流入用バッファタンク8を設置した場合を例に挙げている。しかし、例えば図6および図7に示すように、受熱部2のコア21において排気流れ方向の下流側領域に流入用バッファタンク8を設置して、上流側領域に送出用バッファタンク7を設置することも可能である。このように、放熱部3で凝縮した流体を受熱部2の排気流れ方向の上流側から入れるタイプを「前入れ」と言うことにする。
このような前入れタイプの場合、受熱部2において、図7中の太線矢印で示すように、流体が相転移しながら熱を回収するようになる。
具体的に、還流路5から流入用バッファタンク8に戻された液相状の流体は、受熱部2のすべての流体通路23における排気流れ方向の上流側領域に上から流し入れられるが、この落下過程あるいは流体通路23の下側に溜まった状態で液相状の流体が排気通路22を流れる排気との間で熱交換されるようになって、蒸発されることになる。
この蒸発して気相状になった流体は、すべての流体通路23における排気流れ方向下流側領域を上昇して送出用バッファタンク7に集められることになり、この送出用バッファタンク7から移送路4を経て放熱部3へと速やかに送られるようになる。
このように、この実施形態でも上記実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。しかも、その他に下記するような作用、効果が得られる。
つまり、前記したような受熱部2による熱の回収状況では、受熱部2におけるすべての流体通路23の上流側領域が下流側領域よりも高温となる。これにより、流体通路23の上流側領域を下降する液相状の流体が比較的高温の排気で加熱されるので、早期に蒸発されやすくなる。その一方で、流体通路23の下流側領域を上昇する気相状の流体が比較的低温の排気で加熱されるので、過剰に加熱されずに済む。このようなことから、流体通路23において排気流れ方向全域における温度の高低差が小さくなるので、流体通路23を構成するコア21に対する局部的な熱的応力の集中を軽減できるようになる等、受熱部2の耐久性を向上するうえで有利となる。
(2)上記実施形態では、受熱部2について単一のコア21を用いる構成にした場合を例に挙げている。しかし、例えば図8および図12に示すように、受熱部2について2つのコア21A,21Bを用いる構成にすることが可能である。
この実施形態では、受熱部2について2つのコア21A,21Bを排気流れ方向に並べた状態で設けた構成になっている。2つのコア21A,21Bは、同じ構成とされ、ケース10に取り付けられて一体化されている。
排気流れ方向の上流側に位置するコア21Aの上部には、それらすべての流体通路23Aの上部開口を覆うように、送出用バッファタンク7が設置されている。また、排気流れ方向の下流側に位置するコア21Bの上部には、それらすべての流体通路23Bの上部開口を覆うように、流入用バッファタンク8が設置されている。送出用バッファタンク7の上部には、移送路4が接続されており、流入用バッファタンク8の上部には、還流路5が接続されている。
2つのコア21A,21Bの両方の下部には、両方の流体通路23A,23Bの下部を連通するための連通用のタンク15が設けられている。
そして、2つのコア21A,21Bは、排気流れ方向に所定寸法離れて配置されており、これと同じように送出用バッファタンク7と流入用バッファタンク8とについても、排気流れ方向に所定寸法離れて配置されている。
2つのコア21A,21Bの離隔部分の側方開口は、ケース10の立ち上がり壁12,13により閉塞されているが、2つのバッファタンク7,8の離隔部分における側方開口や上方開口は、上記実施形態で示すような蓋9で閉塞せずに、開放されている。これにより、2つのコア21A,21Bの間の離隔部分が、互いの熱の伝導を遮断するための空気層からなる断熱部16になり、また、2つのバッファタンク7,8の間の離隔部分が、互いの熱の伝導を遮断するための空気層からなる断熱部14となる。
この場合、放熱部3から流入用バッファタンク8に戻された液相状の流体は、排気流れ方向の下流側に位置するコア21Bにおける多数の流体通路23Bから下向きに落とされることになるので、その過程で排気との熱交換により蒸発される他、蒸発されなかった液相状の流体が連通用タンク15内に溜まるとともに、排気流れ方向の上流側に位置するコア21Aにおける多数の流体通路23Aの下部から入り込む。この連通用タンク15内や上流側の流体通路23A内においても排気との熱交換により蒸発されるようになる。この蒸発された気相状の流体は、排気流れ方向の上流側に位置するコア21Aにおける多数の流体通路23Aを上昇して送出用バッファタンク7に集められることになり、この送出用バッファタンク7から移送路4を経て放熱部3へと速やかに送られるようになる。
この実施形態の場合、上記実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。しかも、その他に下記するような作用、効果が得られる。
つまり、上流側のコア21Aの流体通路23Aと、下流側のコア21Bの流体通路23Bとを完全に分離しているとともに、2つのバッファタンク7,8を分離していて、受熱部2において、上流側の排気通路22Aを通過する排気が下流側の排気通路22Bを通過する排気よりも高温となる。そのため、下流側の流体通路23Bを下降する液相状の流体が比較的低温の排気で加熱されることになって、上流側の流体通路23Aを上昇する気相状の流体が比較的高温の排気で加熱されることになる。
これにより、上流側の流体通路23Aを上昇する気相状の流体がその過程で凝縮することが回避される他、下流側の流体通路23Bを下降する液相状の流体が蒸発して、そのまま上昇して流入用バッファタンク8に逆流して放熱部3へ送られるという逆流現象が回避されるようになる。これにより、閉ループ内での熱の循環が円滑になるので、排気の熱を効率良く回収して効率良く利用することが可能になる。
また、上流側のコア21Aの流体通路23Aと、下流側のコア21Bの流体通路23Bとの間、および送出用バッファタンク7と流入用バッファタンク8との間に、断熱部16を設けているので、送出バッファタンク7内に集められる気相状の流体の熱が流入バッファタンク8内の液相状の流体に奪われなくなる。これにより、例えば排気熱回収装置1の作動開始後、早期段階において排気熱を回収して有効に利用することが可能になる。
なお、この実施形態では、2つのコア21A,21Bを用いることによって、2つの流体通路23A,23Bに分けているが、1つのコア21に備える流体通路23を排気流れ方向の上流側領域と下流側領域とに区画壁等を用いて区画することも可能である。また、この実施形態において、上記(1)の実施形態で示したように、流入用バッファタンク8を排気流れ方向の上流側に位置するコア21Aの上部に設け、送出用バッファタンク7を排気流れ方向の下流側に位置するコア21Bの上部に設けるようにしてもよい。
(3)上記実施形態では、受熱部2の流入用バッファタンク8と送出用バッファタンク7とを排気流れ方向に並べて配置した場合を例に挙げている。しかし、例えば図13および図14に示すように、受熱部2の流入用バッファタンク8と送出用バッファタンク7とを排気流れ方向と直交する方向に並べて配置することが可能である。
この実施形態では、受熱部2について1つのコア21をケース10に取り付け、この1つのコア21に備える多数の流体通路23を排気流れ方向と直交する方向で3つのグループに分けたうえで、両側のグループに属する複数の流体通路23A,23Bの上部に流入用バッファタンク8A,8Bを設置し、また、中央のグループに属する複数の流体通路23Cの上部に、単一の送出用バッファタンク7が設置されている。
送出用バッファタンク7の上部には、移送路4が接続されており、2つの流入用バッファタンク8A,8Bの各上部には、二股に分岐された還流路5が接続されている。
コア21の下部には、両側のグループに属する流体通路23A,23Bの下部と中央のグループに属する流体通路23Cの下部とを連通するための連通用のタンク15が設けられている。
そして、3つのバッファタンク7,8A,8Bは、互いに所定寸法離れて配置されている。3つのバッファタンク7,8A,8Bの離隔部分の側方開口および上方開口は、上記実施形態で示すような蓋9で閉塞せずに、開放されている。これにより、両側の送出用バッファタンク7と流入用バッファタンク8との間の離隔部分が、互いの熱の伝導を遮断するための空気層からなる断熱部14となる。
この場合、放熱部3から流入用バッファタンク8に戻された液相状の流体は、両側のグループに属する各流体通路23A,23Bから下向きに落とされることになるので、その過程で排気との熱交換により蒸発される他、蒸発されなかった液相状の流体が連通用タンク15内に溜まるとともに、中央のグループに属する流体通路23Cの下部から入り込む。この連通用タンク15内や中央のグループに属する流体通路23C内においても排気との熱交換により蒸発されるようになる。この蒸発された気相状の流体は、中央のグループに属する各流体通路23Cを上昇して送出用バッファタンク7に集められることになり、この送出用バッファタンク7から移送路4を経て放熱部3へと速やかに送られるようになる。
この実施形態の場合、上記実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。しかも、その他に下記するような作用、効果が得られる。
つまり、両側のグループに属する流体通路23A,23Bが、中央のグループに属する流体通路23Cと外気との熱伝導を遮断することが可能になる。つまり受熱部2内から外への熱放出や、冷たい外気で受熱部2が冷却されるといったことを回避することが可能になる。
これにより、受熱部2の設置場所の周辺に及ぼす熱害を回避するうえで有利となり、受熱部2の設置自由度が向上する。一方、例えば外気温が低い状況においても、中央のグループに属する流体通路23Cを上昇する気相状の流体が再度凝縮されてしまうといったことを回避することが可能になる。
また、仮に、両側のグループに属する流体通路23A,23Bを下降する液相状の流体が外気で温度低下したとしても、この液相状の流体が連通用タンク15および中央のグループに属する流体通路23Cにおいて加熱されるようになる。そのため、流体の蒸発作用が著しく低下することがなくなる等、排気の熱を効率良く回収するうえで有利となる。
なお、この実施形態では、1つのコア21に備える流体通路23を排気流れ方向と直交する方向で3つのグループに分けるようにしているが、例えば3つのコアを排気流れ方向と直交する方向に並べた状態で設けるようにすることが可能である。この場合、3つのコアは、同じ構成とされ、ケース10に取り付けられて一体化される。
(4)上記実施形態で説明したように、受熱部2の流入バッファタンク8と送出バッファタンク7とを離隔して配置する場合、この離隔部分の空気層からなる断熱部14に、例えば図15および図16に示すように、熱伝導部材30を設けることが可能である。
具体的に、熱伝導部材30は、バイメタル、あるいは形状記憶合金等で帯板状に形成されている。
この熱伝導部材30は、その一端側が送出用バッファタンク7に取り付けられていて、かつ、他端側が、送出用バッファタンク7に対して離隔または当接可能に対向配置されている。
そして、送出用バッファタンク7が規定温度(例えば90℃)未満のときに、例えば図15に示すように、熱伝導部材30の他端側が流入用バッファタンク8から離隔する状態になる。このときの熱伝導部材30の形状は、弾性変形していない自然な状態である。
一方、送出用バッファタンク7が前記規定温度以上のときに、例えば図16に示すように、熱伝導部材30が弾性変形して、その他端側(自由端側)が流入用バッファタンク8に当接する状態になる。
このように、送出用バッファタンク7が規定温度未満のときに熱伝導部材30の他端側が流入用バッファタンク8から離隔しているので、送出用バッファタンク7から流入用バッファタンク8への熱の伝導が遮断されるようになる。
一方、送出用バッファタンク7が規定温度以上のときに熱伝導部材30の他端側が流入バッファタンク8に当接しているので、送出用バッファタンク7から流入用バッファタンク8へ熱が伝導されるようになる。
ところで、例えば排気熱の回収動作を開始した直後等では、送出用バッファタンク7内に蒸発した流体が少ないので、送出用バッファタンク7の温度も低くなっている。しかし、排気熱の開始動作を開始してからある程度時間が経過すると、送出用バッファタンク7内に蒸発した流体が溜まるので、この送出用バッファタンク7が高温になっている。
このような状況において、送出用バッファタンク7が低温である場合には、この送出用バッファタンク7内の気相状の流体の熱が流入用バッファタンク8内の液相状流体に奪われなくなるので、送出用バッファタンク7内で気相状流体が再度凝縮されることがなくなり、可及的に多くの気相状の流体を放熱部3へ送ることが可能になる。
一方、送出用バッファタンク7が高温である場合には、この送出用バッファタンク7内の気相状の流体の熱を流入用バッファタンク8内の液相状の流体に伝達することが可能になるので、流入用バッファタンク8内の液相状の流体が加熱されることになって、流体通路23内に流入してから早期に蒸発されるようになる。つまり、熱の早期回収が可能になる。しかも、送出用バッファタンク7の熱を流入用バッファタンク8に伝達しても、送出用バッファタンク7内には高温の気相状の流体が順次流入されるので、送出用バッファタンク7の温度が低下することはない。
(5)上記実施形態では、排気熱回収装置1で回収した熱による加熱対象として内燃機関の冷却水とする場合を例に挙げている。しかし、この加熱対象としては、例えば内燃機関の排気管51に設けられる触媒、内燃機関のオイル、あるいは変速機のオイル等とすることが可能である。
(6)上記実施形態では、受熱部2と放熱部3とを接近して配置するコンパクトタイプの排気熱回収装置1を例に挙げているが、本発明は、それに限定されるものではなく、例えば受熱部2と放熱部3とを遠く離して配置するセパレートタイプの排気熱回収装置として実施することも可能である。
1 排気熱回収装置
2 受熱部
3 放熱部
4 移送路
5 還流路
7 送出用バッファタンク
8 流入用バッファタンク
9 蓋
10 ケース
21 受熱部のコア
22 受熱部の排気通路
23 受熱部の流体通路
24 チューブ
27 フィン
51 排気管
56 冷却水通路

Claims (9)

  1. 内部に封入される流体を排気の熱で蒸発させるための受熱部と、この受熱部で蒸発された気相状の流体を受け入れて当該流体の熱と加熱対象とを熱交換させるための放熱部と、前記受熱部から気相状の流体を前記放熱部へ移送するための移送路と、前記放熱部での熱交換に伴い凝縮される液相状の流体を前記受熱部へ戻すための還流路とを含むループ式ヒートパイプ構造とされ、
    前記受熱部は、排気が流入通過されかつ排気の熱を受け取る受熱体が設けられる排気通路と、上下方向に沿って流体を流すための流体通路とを、前記排気流れ方向と直交する方向に交互に隣り合わせに多数設けた構成とされ、
    前記多数の流体通路の上部には、前記還流路から戻される液相状の流体を流入させるための流入部と、前記流体通路内において排気との熱交換で蒸発される気相状の流体を前記移送路へ送り出すための送出部とが設けられている、ことを特徴とする排気熱回収装置。
  2. 請求項1に記載の排気熱回収装置において、
    前記多数の流体通路は、それぞれ、排気流れ方向の上流側と下流側とに区画されるとともに、この区画された上流側領域と下流側領域とが下部で連通され、
    前記下流側領域の上部に前記流入部が、また、前記上流側領域の上部に前記送出部がそれぞれ設けられる、ことを特徴とする排気熱回収装置。
  3. 請求項2に記載の排気熱回収装置において、
    前記流入部には、前記下流側領域に液相状の流体を分散流入させるためのタンクが設けられ、
    前記送出部には、前記上流側領域を上昇する気相状の流体を集めて移送路へ送り出すためのタンクが設けられる、ことを特徴とする排気熱回収装置。
  4. 請求項1に記載の排気熱回収装置において、
    前記多数の流体通路は、それぞれ、排気流れ方向で上流側と下流側とに区画されるとともに、この区画された上流側領域と下流側領域とが下部で連通され、
    前記上流側領域の上部に前記流入部が、また、前記下流側領域の上部に前記送出部がそれぞれ設けられる、ことを特徴とする排気熱回収装置。
  5. 請求項4に記載の排気熱回収装置において、
    前記流入部には、前記上流側領域に液相状の流体を分散流入させるためのタンクが設けられ、
    前記送出部には、前記下流側領域を上昇する気相状の流体を集めて移送路へ送り出すためのタンクが設けられる、ことを特徴とする排気熱回収装置。
  6. 請求項1に記載の排気熱回収装置において、
    前記多数の流体通路および排気通路は、それぞれ、排気流れ方向と直交する方向で3つのグループに分けられるとともに、この各グループに属するすべての流体通路が下部で連通され、
    前記流入部は、前記両側のグループに属する流体通路の上部にそれぞれ設けられ、前記送出部は、前記中央のグループに属する流体通路の上部に設けられる、ことを特徴とする排気熱回収装置。
  7. 請求項6に記載の排気熱回収装置において、
    前記流入部には、前記両側のグループに属する流体通路に液相状の流体を分散流入させるためのタンクが設けられ、
    前記送出部には、前記中央のグループに属する流体通路を上昇する気相状の流体を集めて移送路へ送り出すためのタンクが設けられる、ことを特徴とする排気熱回収装置。
  8. 請求項1から7のいずれか1つに記載の排気熱回収装置において、
    前記流入部と送出部との間には、断熱部が設けられる、ことを特徴とする排気熱回収装置。
  9. 請求項8に記載の排気熱回収装置において、
    前記断熱部には、前記送出部に取り付けられる取り付け部と、前記流入部に当接可能に離隔して設けられる自由端部とを有する熱伝導部材が設置され、
    この熱伝導部材は、前記送出部が規定温度未満のときに前記自由端部が前記流入部に離隔する状態となる一方、前記送出部が規定温度以上のときに前記自由端部が前記流入部に当接する状態になる、ことを特徴とする排気熱回収装置。
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