JP2010249314A - 電動ブレーキ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドラムブレーキの改良を図る。
【解決手段】ドラムブレーキの作用作動時に、押圧部材44a,bに加えられる力が設定値より小さい間は、電動モータの回転に伴って、回転入力部材52,回転スライド部材53が回転させられ、ねじ機構84を介して駆動部材54が軸方向に移動させられ、押圧部材44aが前進させられる。また、回転スライド部材53の軸方向の移動により、押圧部材44bが前進させられる。一対の押圧部材44a,bがブレーキシュー30a,bに当接して、加えられる力が設定値以上になると、ねじ機構84がロックするため、駆動部材54が回転スライド部材53とともに回転させられ、ボールランプ機構90が作用作動させられ、押圧部材44a,bが前進させられる。それにより、ブレーキシュー20a,bがドラムに押し付けられて、ドラムブレーキが作用させられる。
【選択図】図6

Description

本発明は、車輪に設けられ、車輪の回転を抑制するブレーキに関するものである。
特許文献1〜3には、ボールランプ機構が記載されている。
そのうちの、特許文献1には、ボールランプ機構を備えたディスクブレーキにおいて、負荷が小さい間は、ねじ機構を利用して押圧部材5をパッド6に押し付けるが、負荷が大きくなると、ボールランプ機構を利用して押圧部材5をパッド6に押し付けることが記載されている。
特許文献2には、1段のボールランプ機構の傾斜溝が、傾斜角度が小さい部分と大きい部分とを有することが記載されている。
特許文献3には、2段のボールランプ機構を備えたエンジンのクラッチ装置が記載されている。
また、特許文献4には、ドラムブレーキが記載されている。
特開2000−291702号公報 特開2001−41269号公報 特開平7−269592号公報 特開2001−12521号公報
本発明の課題は、ランプ機構を備えた電動ブレーキ装置の改良である。
本願請求項1に係る電動ブレーキ装置は、(I)車両の車輪に設けられ、(a)その車輪と共に回転するブレーキ回転体と、(b)非回転体に保持された摩擦部材と、(c)その摩擦部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付機構とを備え、前記摩擦部材と前記ブレーキ回転体との摩擦係合により前記車輪の回転を抑制するブレーキと、(II)前記押付機構を作動させる電動モータとを含む電動ブレーキ装置であって、前記押付機構が、(d)ハウジングと、(e)前記摩擦部材に対向して設けられ、前記ハウジングに相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能に保持された押圧部材と、(f)その押圧部材にランプ機構を介して係合させられた駆動部材と、(g)前記電動モータにより回転させられる回転要素と、(h)その回転要素と前記駆動部材との間に設けられたねじ機構を備え、前記回転要素の回転を直線移動に変換して前記駆動部材に出力する運動変換機構と、(i)前記駆動部材を前記押圧部材に押し付けることにより、前記ランプ機構を復帰状態に維持する復帰維持部とを含み、前記ブレーキの作動時に、前記押圧部材に加えられる力が予め定められた設定値以下の場合に、前記ランプ機構が復帰状態に維持された状態で、前記回転要素の回転に伴って前記駆動部材が前記ねじ機構により直線移動させられ、前記押圧部材に加えられる力が前記設定値より大きくなると、前記ねじ機構がロックして、前記駆動部材が前記回転要素の回転に伴って回転させられることにより前記押圧部材に対して相対回転させられ、前記ランプ機構が作動させられるものとされる。
請求項1に係る電動ブレーキ装置において、ねじ機構、復帰維持部、ランプ機構が、ブレーキの作用作動時に、押圧部材に加えられる力が予め定められた設定値以下の場合に、ランプ機構が復帰状態に維持された状態で、回転要素の回転に伴って駆動部材がねじ機構により直線移動させられ、押圧部材に加えられる力が設定値より大きくなると、ねじ機構がロックして駆動部材が回転要素の回転に伴って回転させられることにより、押圧部材に対して相対回転させられ、ランプ機構が作用作動させられる構成とされる。押圧部材に加えられる力が設定値以下の場合には、押圧部材が駆動部材の直線移動によって前進させられ、設定値より大きい場合には、ランプ機構の作用作動により前進させられるのである。
なお、本明細書において、ブレーキの作用作動とは、ブレーキを作用状態にするための作動をいい、ブレーキの解除作動とは、ブレーキを解除するための作動をいう。また、ブレーキの作用、あるいは、作用状態とは、ブレーキが効いている状態(ブレーキにより車輪にブレーキ力が加えられている状態)をいう。ランプ機構についても同様であり、ランプ機構の作用作動とは、ランプ機構を作用状態にするための作動をいい、復帰作動とは、復帰状態にするための作動をいう。ランプ機構の復帰状態とは、押圧部材の駆動部材に対する相対位置が最も後退側にある状態をいい、作用状態とは、押圧部材の駆動部材に対する相対位置が復帰状態より前進側にある状態をいう。
それに対して、特許文献1に記載の電動ブレーキ装置はディスクブレーキを含むものであるが、ディスクブレーキにおいて、ねじ31の前進に伴って押圧部材5が前進させられ、パッド6がディスクロータ7に押し付けられる。ねじ31にはナット18が螺合させられ、ギヤ13に電動モータの回転が伝達され、ナット18とギヤ13との間にボールランプ機構が設けられる。ディスクブレーキの作動時に、押圧部材5に加えられる力が予め定められた設定値以下の場合において、電動モータの回転によってギヤ13が回転させられ、ギヤ13の回転がボールランプ機構を介してナット18に伝達され、ナット18が回転させられ(ギヤ13,ナット18およびボールランプ機構が一体的に回転させられ)、それによって、ねじ31が前進させられ、押圧部材5がパッド6に押し付けられる。また、押圧部材5に加えられる力が設定値より大きくなると、ナット18が停止し、ギヤ13のみが回転させられる。ギヤ13のナット18に対する相対回転によりボールランプ機構が作動させられ、ナット18とねじ31とが一体的に前進させられ、押圧部材5がパッド6に押し付けられる。
特許文献1に記載の電動ブレーキ装置と本願請求項1に係る電動ブレーキ装置とを比較すると、特許文献1に記載の電動ブレーキ装置においては、回転運動を直線移動に変換する運動変換機構の入力側にボールランプ機構が設けられるのに対して、本願請求項1に記載の電動ブレーキ装置においては、運動変換機構の出力側にボールランプ機構が設けられる点が異なる。
すなわち、特許文献1に記載の電動ブレーキ装置においては、押圧部材に加えられる力が小さい場合に、ギヤ13の回転がボールランプ機構を介してナット18に伝達され、ナット18の回転により、ねじ31が前進させられて、押圧部材5が前進させられるのに対して、本願請求項1に係る電動ブレーキ装置においては、駆動部材が直線移動させられ、それによって、押圧部材が前進させられることになる。
そのため、特許文献1に記載の電動ブレーキ装置においては、電動モータの回転がランプ機構を介してねじ部材31の直線移動に変換されるようにされているため、ランプ機構には回転力が加えられ、ねじ部材31の移動とともにランプ機構が作動させられる可能性が高い。それに対して、本願請求項1に記載の電動ブレーキ装置においては、回転要素の回転がねじ機構を介して直線移動に変換されて、駆動部材が直線移動させられ、ランプ機構を介して、押圧部材が直線移動させられる。しかも、駆動部材が押圧部材に復帰維持部によって押し付けられているため、ランプ機構は復帰状態に維持されている。そのため、押圧部材に加えられる力が設定値以下である場合に、駆動部材を直線移動させて押圧部材を前進させる場合に、特許文献1に記載の電動ブレーキ装置における場合より、ランプ機構が作動し難くできるという特有の効果が得られるのである。
特許請求可能な発明
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組を、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
(1)(I)車両の車輪に設けられ、(a)その車輪と共に回転するブレーキ回転体と、(b)非回転体に保持された摩擦部材と、(c)その摩擦部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付機構とを備え、前記摩擦部材と前記ブレーキ回転体との摩擦係合により前記車輪の回転を抑制するブレーキと、
(II)前記押付機構を作動させる電動モータと
を含む電動ブレーキ装置であって、
前記押付機構が、
ハウジングと、
前記摩擦部材に対向して設けられ、前記ハウジングに相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能に保持された押圧部材と、
その押圧部材にランプ機構を介して係合させられた駆動部材と、
前記電動モータにより回転させられる回転要素と、
その回転要素と前記駆動部材との間に設けられたねじ機構を備え、前記回転要素の回転を直線移動に変換して前記駆動部材に出力する運動変換機構と、
前記駆動部材を前記押圧部材に押し付けることにより、前記ランプ機構を復帰状態に維持する復帰維持部と
を含み、前記ブレーキの作用作動時に、前記押圧部材に加えられる力が予め定められた設定値以下の場合に、前記ランプ機構が復帰状態に維持された状態で、前記回転要素の回転に伴って前記駆動部材が前記ねじ機構により直線移動させられ、前記押圧部材に加えられる力が前記設定値より大きくなると、前記ねじ機構がロックして、前記駆動部材が前記回転要素の回転に伴って回転させられることにより前記押圧部材に対して相対回転させられ、前記ランプ機構が作用作動させられることを特徴とする電動ブレーキ装置。
ブレーキはドラムブレーキであっても、ディスクブレーキであってもよい。
復帰維持部は、駆動部材を押圧部材に押し付ける部材であり、例えば、ばね要素等の弾性部材とすることができる。また、復帰維持部は、押圧部材に加えられる軸方向の力が設定値以下である間、ランプ機構を復帰状態に維持するとともに、駆動部材の押圧部材に対する相対回転を阻止する。
『前進』とは、押圧部材の、ブレーキを作用させる向きへの移動をいう。具体的には、(i)押圧部材が摩擦部材に接近する状態(押圧部材が摩擦部材に当接していない状態)、(ii)押圧部材が、摩擦部材をブレーキ回転体に接近させる状態(摩擦部材とブレーキ回転体との間にクリアランスがあり、実質的にはブレーキが効いていない状態)、(iii)押圧部材が、摩擦部材のブレーキ回転体への押付力を大きくする状態(ブレーキが効いている状態)が該当する。
また、『押圧部材に加えられる力が設定値以下の状態』とは、(i)の押圧部材が摩擦部材に当接していない状態(押圧部材には、実質的に軸方向の力が加えられていない状態)をいう場合や、(i)の状態および(ii)の摩擦部材をブレーキ回転体に近づける場合の、押圧部材が受ける力が設定値以下の状態をいう場合や、(i)の状態、(ii)の状態および(iii)の摩擦部材をブレーキ回転体に押し付ける場合の、その押圧部材が受ける力が設定値以下の状態をいう場合等がある。
この場合の設定値の大きさは、ねじ機構の特性(例えば、リード角の大きさ、すべり摩擦係数で表すことができる。これらはねじ機構の構成と称することもできる。以下、復帰維持部、ランプ機構についても同様である。)、復帰維持部の特性(例えば、弾性部材のセット荷重等)、ランプ機構の特性(例えば、傾斜角度等)等によって決まる。
(2)前記ブレーキが、前記ブレーキ回転体としてのドラムと、前記摩擦部材としての一対のブレーキシューとを含むドラムブレーキであり、前記押圧部材が、前記一対のブレーキシューに対向してそれぞれ設けられ、前記駆動部材が、それら一対の押圧部材のうちの一方に係合させられ、前記回転要素が前記一対の押圧部材の他方に相対回転可能に係合させられるとともに、前記軸方向に移動可能とされた(1)項に記載の電動ブレーキ装置。
本項に記載の電動ブレーキ装置はドラムブレーキを備えたものであり、押付機構において、駆動部材が一対の押圧部材のうちの一方に係合させられ、回転要素が他方の押圧部材に係合させられ、駆動部材の軸方向の移動と回転要素の軸方向の移動とにより、一対の押圧部材がそれぞれ軸方向の反対方向へ前進させられる。また、一対の押圧部材によって一対のブレーキシューが、それぞれドラムに押し付けられることによりドラムブレーキが作用させられる。
ドラムブレーキは、リーディング・トレーディング式のものとしたり、デュオサーボ式のものとしたりすることができる。
特許文献1に記載の電動ブレーキ装置と本願(2)項に記載の電動ブレーキ装置とを比較すると、特許文献1に記載の電動ブレーキ装置はディスクブレーキを含むが、本願(2)項に記載の電動ブレーキ装置はドラムブレーキを含む点が異なる。
具体的には、特許文献1に記載のディスクブレーキにおいて、ギヤ13は、ナット18と軸方向の反対側においてベアリング13aを介してキャリパに当接して設けられており、軸方向の移動が阻止されている。また、ギヤ13には、押圧部材が係合させられていない。それに対して、本願(2)項に記載のドラムブレーキにおいて、回転要素が軸方向に移動可能とされており、回転要素に押圧部材が係合させられている。
特許文献1に記載の電動ブレーキ装置におけるように、ディスクブレーキにおいては、ギヤ13を軸方向に移動させる必要も、ギヤ13に押圧部材を係合させる必要もない。それに対して、本願(2)項に記載のドラムブレーキは、リーディング・トレーディング式、あるいは、デュオサーボ式のものであるため、一対のブレーキシューに対して一対の押圧部材が設けられ、一対の押圧部材がそれぞれ前進させられることにより、一対のブレーキシューがドラムに押し付けられて、ドラムブレーキが作用させられるものである。このようなドラムブレーキ特有の作動を実現するために、回転要素を軸方向に移動可能とするとともに、押圧部材を係合させたのである。さらに、電動モータの回転を駆動部材に伝達する機能を有する回転要素に、押圧部材が係合させられるようにしたため、電動モータの回転を伝達する部材と、押圧部材を前進させる部材との両方を別個に設ける場合に比較して、部品点数を減らすことができるという特有の効果も有する。特許文献1には、ギヤ13を軸方向に移動可能とすることを示唆する記載もギヤ13に押圧部材を係合させることを示唆する記載もない。
特許文献4には、回転スライド部材を備えたドラムブレーキが記載されている。このドラムブレーキにおいて、回転スライド部材は、概して中空の円筒状を成したものであり、内周側にそれぞれ、一対の押圧部材が、それぞれ、互いに逆向きに形成されたねじ機構を介して螺合されている。しかし、特許文献4に記載のドラムブレーキは、ランプ機構を備えていない。また、押圧部材は、回転スライド部材の内周側に螺合されており、これらの間にランプ機構を設けることは予定されていない。また、ねじ機構がロックすると、押圧部材は前進できなくなり、ブレーキ力を大きくすることができなくなる。そのため、ねじ機構がロックすることは予定されていない。以上により、特許文献4に記載のドラムブレーキと、本願(2)項に係る電動ブレーキ装置に含まれるドラムブレーキとは全く異なるものであり、特許文献4に、本願(2)項に係る電動ブレーキ装置の構造を示唆する記載があるとは言えない。
(3)前記回転要素が、(i)前記電動モータの回転を伝達する回転伝達機構に係合させられ、前記ハウジングに相対回転可能、かつ、前記軸方向に相対移動不能に保持された回転入力部材と、(ii)その回転入力部材に、相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能に保持された回転スライド部材とを含み、その回転スライド部材が前記他方の押圧部材に係合させられた(2)項に記載の電動ブレーキ装置。
回転スライド部材は回転スライド機構を介して回転入力部材に保持される。回転スライド機構は、(i)スプライン軸およびスプライン溝を備えたものとしたり、(ii)キーおよびキー溝を備えたものとしたり、(iii)軸方向に延びた溝および溝に配設された複数のボールを備えたものとしたりすること等ができる。
また、駆動部材は、回転スライド部材に、ねじ機構を介して保持されるようにすることができる。
例えば、回転入力部材、回転スライド部材が、軸方向に延びた中空の円筒部を有する形状を成した部材であり、駆動部材が、軸方向に延びたロットを有する形状を成した部材である場合には、回転入力部材の内周側に回転スライド部材が回転スライド機構を介して係合させられ、回転スライド部材の内周側にねじ機構を介して駆動部材が螺合されるようにすることができる。
(4)前記ドラムブレーキが、前記一対のブレーキシューを非作用位置に付勢するリターンスプリングを含み、前記ねじ機構が、前記押圧部材に加えられる軸方向の力が、前記リターンスプリングのセット荷重で決まる前記設定値より大きくなると、ロックする特性を有する(2)項または(3)項に記載の電動ブレーキ装置。
(5)前記復帰維持部、前記ランプ機構が、前記押圧部材に加えられる軸方向の力が前記設定値より大きくなると、前記駆動部材の前記押圧部材に対する相対回転を許容する特性を有する(4)項に記載のものである。
ねじ機構は、リード角が設定角度以上のものであり、押圧部材に加えられる軸方向の力が、ドラムブレーキのリターンスプリングのセット荷重で決まる設定値より大きくなると、ロックするものである。そのため、押圧部材に加えられる軸方向の力が設定値より大きくなり、駆動部材に加えられる軸方向の力が大きくなると、駆動部材は回転要素の回転に伴って回転させられる。
復帰維持部が弾性部材である場合に、その弾性部材のセット荷重等が、押圧部材に加えられる軸方向の力が設定値以下である場合には、駆動部材の押圧部材に対する相対回転を阻止し、ランプ機構を復帰状態に維持する大きさとされる。また、ランプ機構の傾斜溝の傾斜角度等は、復帰維持部によって転動体が傾斜溝(傾斜面)に押し付けられることにより、押圧部材に加えられる軸方向の力が設定値以下の場合には、転動体が傾斜溝に沿って転がり上がらない大きさとされる。そして、押圧部材に加えられる軸方向の力が設定値より大きくなると、駆動部材の押圧部材に対する相対回転が許容され、ランプ機構の作用作動が許容される。
ドラムブレーキの非作用状態において、一対のブレーキシューの少なくとも一方と、押圧部材との間に隙間がある場合において、ドラムブレーキの作用作動時に、電動モータが回転させられると、駆動部材が軸方向に直線移動させられ、回転要素が軸方向に移動させられ、一対の押圧部材が、それぞれ、ブレーキシューに接近させられる。一対の押圧部材が一対のブレーキシューに当接するまでの間、押圧部材に加えられる力が設定値より大きくなることはないため、駆動部材が軸方向に移動させられ、一対の押圧部材がそれぞれ前進させられる。
一対の押圧部材が一対のブレーキシューに当接すると、一対の押圧部材にはリターンスプリングのセット荷重に応じた弾性力が加えられ、ねじ機構がロックする。さらに、電動モータが回転させられると、駆動部材は回転要素の回転に伴って回転させられ、一方の押圧部材に対して相対回転させられる。ランプ機構が作用作動させられ、一方の押圧部材が駆動部材に対して前進させられ、それにより、他方の押圧部材も前進させられる。
設定値は、リターンスプリングのセット荷重に応じた大きさ以下の大きさとされる。上述のように、ねじ機構は、押圧部材がブレーキシューに当接するまでの間は、ロックしないで、押圧部材にリターンスプリングのセット荷重に応じた力が作用した場合にロックしていればよい。また、押圧部材がブレーキシューに当接するまでの間、押圧部材に加えられる力は非常に小さいため、ねじ機構が実際にロックする際の設定値は、リターンスプリングのセット荷重に応じた大きさ以下とすればよいのである。復帰維持部についても同様であり、押圧部材がブレーキシューに当接するまでの間、ランプ機構を復帰状態に維持し、駆動部材の押圧部材に対する相対回転を阻止する特性を有するものとすればよい。
(6)前記ドラムブレーキが、前記一対のブレーキシューを非作用位置に付勢するリターンスプリングと、前記一対のブレーキシューの間の長さを規定するストラットとを含み、前記押圧部材が、前記ドラムブレーキの解除作動時に、前記リターンスプリングの弾性力により、前記ランプ機構が復帰状態に戻され、一対の押圧部材が前記ドラムブレーキのストラットで決まる前記ドラムブレーキの非作用位置まで戻される(2)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
ドラムブレーキの解除作動時に、電動モータへの供給電流が0とされる。ランプ機構が復帰状態まで戻されるのであり、その位置がドラムブレーキの非作用位置となる。上述のように、ランプ機構が、一対の押圧部材が一対のブレーキシューに当接した場合に作用作動させられるようにされている場合には、ランプ機構の復帰状態において、原則として、押圧部材とブレーキシューとの間に隙間はない。そのため、次に、ドラムブレーキを作用作動させる場合に、直ちに、押圧部材の前進により、一対のブレーキシューをドラムに接近させることが可能となり、ブレーキの効き遅れを抑制することが可能となる。
すなわち、駆動部材は、電動モータがブレーキ作用作動時とは逆方向に回転させられた場合に、後退させられるが、本項に記載の電動ブレーキ装置においては、ドラムブレーキの解除作動時に、電動モータが逆方向に回転させられることがない。そのため、駆動部材が後退させられることがなく、駆動部材の回転要素に対する相対位置が維持されることになる。
一方、ドラムブレーキにアジャスタ付きストラットとリターンスプリングとが設けられている場合には、ブレーキドラムの解除作動時には、ブレーキシューの外周面とドラム内周面との間の隙間が小さくなる位置まで、ブレーキシューが戻される。そして、ブレーキライニングの磨耗量が大きい場合には、押圧部材とブレーキシューとの間の隙間が大きくなるのであり、押圧部材とブレーキシューとの間の隙間は、ブレーキライニングの磨耗量に応じた大きさとなる。それに対して、本項に記載の電動ブレーキ装置においては、ブレーキ解除時に、押圧部材とブレーキシューとの間の隙間が小さくなる位置まで戻されるため、次に、ブレーキを作用作動させる場合に、ブレーキの効き遅れを小さくすることができる。この意味において、駆動部材と、ねじ機構と、ブレーキ解除作動時に電動モータを逆方向に回転させないようにする部分とにより磨耗調整機構が構成されると考えることができ、駆動部材を磨耗補償用部材と称することができる。
(7)前記駆動部材と前記押圧部材とが前記軸方向に延びた中心軸線回りに相対回転可能に保持されており、前記ランプ機構が、(a)前記駆動部材の前記押圧部材に対向する端面に、前記中心軸線を中心とした円筒面に沿って、かつ、前記中心軸線に直角な平面である直角基準平面に対して傾斜して形成された1つ以上の第1傾斜溝と、(b)前記押圧部材の前記駆動部材に対向する端面に形成され、前記第1傾斜溝と対を成す1つ以上の第2傾斜溝と、(c)それら1対以上の傾斜溝の間にそれぞれ1つずつ配設された1つ以上の転動体とを含む(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
第1,第2傾斜溝は、これら傾斜溝の底面と直角基準平面との間の距離(以下、傾斜溝の軸方向成分と称する)が、それぞれ、周方向にいくにつれて単調に変化(増加あるいは減少)する形状とされる。そのため、転動体が、駆動部材の押圧部材に対する相対回転に伴って、第1、第2傾斜溝の間を転がると、押圧部材が駆動部材に対して軸方向に相対移動させられる。また、駆動部材の押圧部材に対する相対回転角を制御することによって、押圧部材の駆動部材に対する相対移動量(突出量)を制御することができ、ブレーキ力を制御することができる。
また、第1,第2傾斜溝は、軸方向成分が連続して変化する部分を有するのが普通である。その場合には、押圧部材の駆動部材に対する軸方向の相対移動量を連続的に制御することが可能となる。
(8)前記駆動部材の端面と前記押圧部材の端面との形状を、それぞれ、前記第1,第2傾斜溝に沿って傾斜する傾斜面を有する形状とした(7)項に記載の電動ブレーキ装置。
駆動部材、押圧部材の端面を、それぞれ、1つ以上の傾斜溝に沿った1つ以上の傾斜面を有する形状を成したものとして、駆動部材と押圧部材とを、これら傾斜面同士が対向する状態で設ければ、実施例において詳述するように、駆動部材の端面と押圧部材の端面との間に隙間ができる。その隙間を利用すれば、傾斜溝の軸方向成分を大きくすることができ、押圧部材の相対移動量の理論上の最大値(以下、ランプ機構の理論上の最大ストロークと称することがある)を大きくすることができる。
また、傾斜溝の直角基準平面に対する傾斜角度を大きくすることができる。そのため、駆動部材の押圧部材に対する相対回転角度が同じ場合のランプ機構のストロークを大きくすることができる。
傾斜面は、傾斜溝の底面と傾斜面とが平行になる部分を含む姿勢で設けることができる。
(9)前記ランプ機構が、前記転動体を2つ以上有するとともに、前記駆動部材と前記押圧部材との間に設けられ、前記2つ以上の転動体を、互いに、相対回転可能、かつ、相対移動不能に保持するホルダを含む(7)項または(8)項に記載の電動ブレーキ装置。
ホルダを設け、2つ以上の転動体を自転可能、かつ、互いに相対移動不能に保持すれば、2つ以上の転動体を第1、第2傾斜溝に沿って、良好に転がすことが可能となる。
また、駆動部材の端面と押圧部材の端面とに、それぞれ、傾斜面が形成されている場合には、これらの間に形成された隙間にホルダを配設させることが可能となり、実施例において詳述するように、ホルダを設けることにより、ランプ機構の最大ストロークが小さくなることがない。その場合に、ホルダは、駆動部材の端面と押圧部材の端面との間の隙間で決まる形状、大きさを成したものとすることができる。
第1傾斜溝、第2傾斜溝は、それぞれ、3つ以上形成され、転動体が3つ以上配設されることが望ましい。転動体は、球体(ボール)としたり、円筒体としたりすることができる。
(10)前記ランプ機構が、互いに直列に2つ以上設けられ、2つ以上のランプ機構の各々において、それぞれ、傾斜溝が、前記駆動部材の前記押圧部材に対する相対回転角度が同じ場合に前記押圧部材の相対移動量が同じとなる状態で、形成された(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
本項に記載の電動ブレーキ装置におけるように、ランプ機構を直列に2つ以上設ければ、1つの場合と比較して、押圧部材の相対移動量の最大値を大きくすることができる。
また、ストロークを1つの場合と同じにすれば、その分、傾斜溝の傾斜角度を小さくすることができ、倍力率を大きくすることができる。
(11)前記2つ以上のランプ機構の各々の傾斜溝が、それぞれ、前記軸方向に延びた中心軸線を中心とする同じ直径の円筒面に沿って、かつ、前記中心軸線に直角な直角基準平面に対する傾斜角度が同じ大きさで形成された(10)項に記載の電動ブレーキ装置。
(12)前記ランプ機構が、互いに直列に2つ以上設けられ、それら2つ以上のランプ機構のうちの2つのランプ機構の各々の傾斜溝が、前記2つのランプ機構のうち先に作用作動するランプ機構における方が後に作用作動するランプ機構における場合より、前記駆動部材の前記押圧部材に対する相対回転角度が同じ場合に前記押圧部材の相対移動量が大きくなる状態で、形成された(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
(13)前記先に作用するランプ機構の傾斜溝が、前記軸方向に延びた中心軸線を中心とする第1円筒面に沿って、かつ、前記中心軸線に直角な直角基準平面に対して第1角度傾斜して形成され、前記後に作用するランプ機構の傾斜溝が、前記中心軸線を中心とした第2円筒面に沿って、かつ、前記直角基準平面に対して第2角度傾斜して形成されるとともに、前記第1円筒面と第2円筒面との直径が同じとされ、第1角度が第2角度より大きくされた(12)項に記載の電動ブレーキ装置。
(14)前記先に作用するランプ機構の傾斜溝が、前記軸方向に延びた中心軸線を中心とする第1円筒面に沿って、かつ、前記中心軸線に直角な直角基準平面に対して第1角度傾斜して形成され、前記後に作用するランプ機構の傾斜溝が、前記中心軸線を中心とする第2円筒面に沿って、かつ、前記直角基準平面に対して第2角度傾斜して形成されるとともに、前記第1角度と前記第2角度とが同じとされ、前記第1円筒面の直径が前記第2円筒面の直径より小さくされた(12)項に記載の電動ブレーキ装置。
(15)前記駆動部材と前記押圧部材とが前記軸方向に延びた中心軸線回りに相対回転可能に保持されており、前記ランプ機構が、前記駆動部材と前記押圧部材との間に保持された1つ以上の転動体を含み、
当該電動ブレーキ装置が、前記ブレーキの非作用状態において、前記押圧部材の後退が阻止された状態で、前記電動モータへの供給電流を制御することにより、前記ランプ機構において、前記1つ以上の転動体を復帰位置に戻す復帰時電流制御装置を含む(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
転動体の復帰位置とは、押圧部材の駆動部材に対する復帰状態に対応する位置であり、1つ以上の転動体の各々について規定される位置である。
例えば、転動体が第1保持部と第2保持部との間に保持される場合に、第1保持部と第2保持部との各々の予め定められた部分と転動体の予め定められた部分とが一致する(対応する)位置として規定することができる。また、復帰状態に対応する位置は、第1保持部材、第2保持部材、転動体の形状で決まる。
さらに、転動体が第1傾斜溝と第2傾斜溝との間に保持される場合に、転動体の凸曲面の中心と、第1傾斜溝の凹曲面の中心と、第2傾斜溝の凹曲面の中心とが一致あるいはほぼ一致する位置とすることができる。換言すれば、復帰位置において、転動体は、一対の傾斜溝(第1傾斜溝と第2傾斜溝)の最も深い部分(直角基準平面からの距離が最も大きい部分)同士の間、あるいは、その近傍に存在すると考えることができる。
電動モータに、駆動部材が後退する方向の電流(以下、後退方向の電流あるいは逆方向の電流と略称する)が供給されると、駆動部材が後退させられ、それに伴って押圧部材も後退させられる。押圧部材がそれの後退端位置を規定するストッパに当接すると、押圧部材の後退が阻止され、ねじ機構がロックする。転動体が復帰位置にない場合には、駆動部材は、回転要素と一体的にその方向に押圧部材に対して相対回転させられ、転動体と、駆動部材と押圧部材との少なくとも一方とが復帰位置に向かって相対移動させられる。
このように、駆動部材を、後退回転方向(電動モータに、後退方向の電流が供給された場合にねじ機構がロックすることにより駆動部材が回転させられる場合のその回転方向をいう。)に回転させることにより転動体を復帰位置に向かって相対移動させることができる。
(16)前記復帰時電流制御装置が、前記1つ以上の転動体を復帰位置に戻す場合に、前記電動モータに第1設定電流値の電流を供給する供給電流制御部を含む(15)項に記載の電動ブレーキ装置。
第1設定電流値は、駆動部材に加えられた回転力が、1つ以上の転動体を復帰位置に向かって相対移動させ得る大きさに対応する電流値である。換言すれば、転動体を復帰位置に向かって相対移動させるのに必要な最小の回転力に対応する電流値以上の値とすることができる。
例えば、1つ以上の転動体が、駆動部材に形成された第1傾斜溝と押圧部材に形成された第2傾斜溝との間に保持されている場合において、駆動部材に加えられた回転力が、1つ以上の転動体を第1傾斜溝と第2傾斜溝との間を、それら第1傾斜溝および第2傾斜溝の深さが深くなる向きに相対移動させ得る大きさに対応する電流値とされる。
転動体が、駆動部材に設けられた第1傾斜溝の最も深い部分から離間した部分と押圧部材に設けられた第2の傾斜溝の最も深い部分から離間した部分との間に位置している状態において、駆動部材が押圧部材に対して相対回転させられると、転動体は転がり、第1傾斜溝と第2傾斜溝とのいずれか一方の最も深い部分と、他方の傾斜溝の最も深い部分から離間した部分との間に位置することが多い(この状態で、復帰位置に戻ることもある)。この状態から駆動部材に回転力を加えると、転動体は、駆動部材と押圧部材との他方(他方の傾斜溝が形成された部材)に対して、復帰位置に向かって、すべりつつ相対移動させられると考えられる。
一方、駆動部材の後退回転方向は、転動体が傾斜溝の斜面を下る向きであり、移動し易い方向であるが、駆動部材および押圧部材との間には、復帰維持部によって、互いに接近させる向きの力が作用するため、その分、転動体は移動し難くされている。
これらの事情を考慮して、電動モータに供給される第1設定電流値が決定されるのであり、駆動部材に加えられる回転力が、駆動部材と押圧部材との少なくとも一方と、転動体との間に作用する摩擦力に抗して、これらを相対移動させ得る大きさとなるように、決定される。
(17)前記復帰時電流制御装置が、前記電動モータに前記第1設定電流値以上の電流を供給した場合の前記電動モータの回転角度が予め定められた第1設定角度以上である場合に、前記1つ以上の転動体のうちの少なくとも1つが前記復帰位置にない可能性があると判定する非復帰判定手段を含む(16)項に記載の電動ブレーキ装置。
電動モータに第1設定電流値以上の電流を供給する前において、1つ以上の転動体すべてが復帰位置にある場合には電動モータに第1設定電流値以上の電流を供給しても、電動モータは回転しないか、あるいは、回転角度が非常に小さくなる。
それに対して、電動モータが第1設定角度以上回転した場合には、電動モータに第1設定電流値以上の電流を供給する前において、少なくとも1つの転動体は復帰位置になかったため、現時点(第1設定電流値以上の電流が供給された時点)においても復帰位置にない可能性があると判定される。
第1設定角度は、移動判定しきい値と称することができる。
電動モータの回転角度は、回転角検出装置によって検出することができる。
(18)前記復帰時電流制御装置が、前記電動モータに前記第1設定電流値以上の電流を供給した場合の前記電動モータの回転角度が予め定められた設定角度より小さい場合に、前記1つ以上の転動体のすべてが前記復帰位置にあると判定する復帰判定手段を含む(16)項または(17)項に記載の電動ブレーキ装置。
例えば、1つ以上の第1傾斜溝、第2傾斜溝が、中心軸線の回りに回転対称に形成された場合において、電動モータに第1設定電流値以上の電流が供給された場合に、電動モータ(駆動部材)の回転角度が設定角度以下である場合には、1つ以上の転動体すべてが復帰位置にあると判定することができる。
(19)前記供給電流制御部が、前記供給電流を、前記第1設定電流値と、それより小さい第2設定電流値との間で1回以上増減させる電流値増減手段を含む(16)項ないし(18)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
駆動部材の回転力が過大になると転動体が一対の傾斜溝から外れるおそれがある。それを回避するために、駆動部材の回転力が過大とならないように、供給電流が制御されることが望ましい。そこで、供給電流の増加・減少を繰り返し行うことにより、回転力の増加・減少を繰り返し、転動体を徐々に復帰位置まで相対移動させることが望ましい。
第2設定電流値は0としたり、0と第1設定電流値との間の大きさとしたりすることができる。例えば、第1設定電流値の電流が供給されることにより、転動体がわずかに傾斜溝から乗り上げる場合には、第2設定電流値を、その転動体を傾斜溝の内部に戻し得る大きさとすることができる。
(20)前記復帰時電流制御装置が、前記供給電流を前回第1設定電流値まで電流を増加した時点と今回第1設定電流値まで電流を増加させた時点との前記電動モータの回転角度の差が予め定められた第2設定角度以上である場合に、前記1つ以上の転動体のうちの少なくとも1つがほぼ復帰位置にない可能性があると判定する角度差依拠非復帰判定手段を含む(19)項に記載の電動ブレーキ装置。
前回第1設定電流値まで電流を増加した時点の電動モータの回転角度と、今回第1設定電流値まで電流を増加した時点の電動モータの回転角度との差が大きい場合には、前回第1設定電流値まで電流を増加した時点において転動体が復帰位置にないため、今回第1設定電流値まで電流を増加させた時点においても復帰位置にない可能性があると判定される。
それに対して、これらの差が小さい場合には、前回第1設定電流値まで電流が供給された時点において転動体はほぼ復帰位置にあり、今回第1設定電流値まで電流が供給された時点においてもほぼ復帰位置にあると判定することができる。
第2設定角度は、修正終了判定しきい値と称することができる。第2設定角度は第1設定角度と同じ大きさとしても異なる大きさとしてもよい。
なお、前回第2設定電流値の電流が供給された場合と今回第2設定電流値の電流が供給された場合との電動モータの回転角度差で比較することもできる。
また、第2設定電流値から第1設定電流値まで電流が増加させられる間の電動モータの回転角度に基づいて復帰位置にあるかどうかを取得することもできる。
(21)前記復帰時電流制御装置が、前記電動モータへの供給電流を予め定められたパターンに従って制御して、前記1つ以上の転動体を復帰位置に戻す強制復帰手段を含む(15)項ないし(20)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
電動モータへの供給電流が予め定められたパターンに従って制御される。
例えば、供給電流の増加・減少を繰り返す場合には、第1設定電流値、第2設定電流値の大きさを、パターンに従って変化させることもできる。
(22)前記駆動部材と前記押圧部材とが前記軸方向に延びた中心軸線回りに相対回転可能に保持されており、前記ランプ機構が、前記駆動部材と前記押圧部材との間に保持された1つ以上の転動体を含み、
当該電動ブレーキ装置が、前記電動モータに、前記駆動部材に加えられた回転力が、前記1つ以上の転動体を復帰位置に移動させ得る大きさとなる電流を供給した場合に、前記電動モータの回転角度が予め定められた設定角度以上である場合に、前記1つ以上の転動体のうちの少なくとも1つが前記復帰位置にない可能性があると判定する判定手段を含む(1)項ないし(21)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
(23)当該電動ブレーキ装置が、前記駆動部材に加えられた回転力が、前記1つ以上の転動体を前記駆動部材と前記押圧部材との少なくとも一方に対して、それぞれが配設された前記第1傾斜溝と第2傾斜溝との間を、それら第1傾斜溝および第2傾斜溝の深さが深くなる向きに相対移動させ得る大きさとなる電流を、前記電動モータに供給した場合に、前記電動モータの回転角度が予め定められた設定角度以上である場合に、前記1つ以上の転動体のうちの少なくとも1つがそれぞれ前記第1傾斜溝と第2傾斜溝との間の、それぞれの溝の深さが最も深い位置の間にない可能性があると判定する判定手段を含む(7)項ないし(21)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
(24)前記駆動部材と前記押圧部材とが前記軸方向に延びた中心軸線回りに相対回転可能に保持されており、前記ランプ機構が、(a)前記駆動部材と前記押圧部材との一方に設けられた第1保持部と、(b)前記駆動部材と前記押圧部材との他方に設けられた第2保持部と、(c)それら第1保持部と第2保持部とによって保持された1つ以上の転動体とを含む(1)項ないし(23)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
ランプ機構において、1つ以上の転動体が、第1保持部と第2保持部とによって保持される。第1保持部、第2保持部の各々は、溝を含むものであっても含まないものであってもよい。
(25)前記第1保持部が、前記1つ以上の転動体の各々の1点と接する第1接平面を有し、前記第2保持部が、前記1つ以上の転動体の各々と2点で接する2つの第2接平面を有する(24)項に記載の電動ブレーキ装置。
1つ以上の転動体の各々が、一方の部材に設けられた第1接平面と他方の部材に設けられた2つの第2接平面とに接する状態、すなわち、接平面の各々に合計3点で接する状態で、保持される。
転動体が3点で保持されれば、実施例において詳述するように、駆動部材と押圧部材との相対回転において、転動体を、駆動部材と押圧部材とに対してすべらないで回転させることができる。その結果、転動体の移動軌跡を安定させることができ、転動体を予め予定されたストローク移動させることが可能となる。それにより、押圧部材を駆動部材に対して、予め予定されたストロークだけ軸線方向に前進させることが可能となり、所望のブレーキ力を付与することが可能となる。
2つの第2接平面は、互いに平行に伸びたものではなく、例えば、第2接平面を含む平面(第2接平面を含み、同一平面状に伸びた面)同士が交差するものとすることができる。
また、2つの第2接平面は、溝を構成するものであっても、構成しないものであってもよい。
(26)前記第1保持部が、前記中心軸線に直角な直角基準平面に対して傾斜する傾斜面を有し、前記第2保持部が、前記中心軸線を中心とする円周に沿って設けられ、互いに交差する一対の保持面を有する(24)項または(25)項に記載の電動ブレーキ装置。
傾斜面は、転動体との接点と直角基準平面との間の距離が、円周に沿って(駆動部材と押圧部材との相対回転に伴って)変化する形状を成す。
また、傾斜面は、直角基準平面との成す角度が一定である形状を成したものとしたり、直角基準平面との成す角度が円周に沿って変化する形状を成したものとしたりすることができる。直角基準平面との成す角度が変化する場合には、ブレーキの作用作動時の、駆動部材と押圧部材との相対回転角度が大きい場合は小さい場合より、直角基準平面との成す角度が小さくなる形状とすることが望ましい。傾斜面と直角基準平面との成す角度を小さくすれば、駆動部材が転動体を介して押圧部材に作用する力の軸方向成分を大きくすることができる。
一対の(2つの)保持面は、円周に沿って形成されたものであるが、中心軸線Lに直角な直角基準平面に対して傾斜していても傾斜していなくてもよい。また、円環状を成したもの(全周において連続して形成されたもの)であっても、円弧状を成したものであってもよい。
なお、他方の部材が概して有底円筒状を成したものである場合に、底面と筒部の内周面とを、それぞれ、保持面とすることができる。また、底面と内周面とによって溝が構成されると考えることもできる。
(27)前記転動体が、前記駆動部材と前記押圧部材とによって、前記中心軸線を中心とする半径方向の前記転動体の移動が防止される3点で保持された(24)項ないし(26)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
例えば、転動体上の3点(駆動部材、押圧部材上の3点)は、転動体上の3点の各々が接する3つの平面(例えば、3つの接平面を含み、同一平面状に伸びた平面)が、半径方向に沿った断面において、転動体を、半径方向に囲む三角形を成す(3つの平面のうちの2つの平面は必ず交差する)位置に、設けることができる。
(28)前記駆動部材と前記押圧部材とが前記軸方向に延びた中心軸線回りに相対回転可能に保持されており、前記ランプ機構が、1つ以上の転動体を含み、それら1つ以上の転動体の各々が、前記駆動部材と前記押圧部材とによって、3点で保持された(1)項ないし(27)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
転動体が3点で保持されれば、上述のように、転動体を、すべることなく回転させることができる。
(29)前記駆動部材と前記押圧部材とが、同じ中心軸線に対して相対回転可能に設けられ、前記ランプ機構が、(i)前記駆動部材と前記押圧部材との間に配設された中間部材と、(ii)(a)前記駆動部材の前記中間部材に対向する端面に、前記中心軸線を中心とした第1円筒面に沿って、かつ、前記中心軸線に直角な面である直角基準平面に対して傾斜して形成された1つ以上の第1傾斜溝と、(b)前記中間部材の前記駆動部材に対向する端面に形成され、前記第1傾斜溝と対を成す1つ以上の第2傾斜溝と、(c)それら1対以上の傾斜溝の間にそれぞれ1つずつ配設された1つ以上の転動体とを含む第1ランプ機構と、(iii)(d)前記中間部材の前記押圧部材に対向する端面に、前記中心軸線を中心とした第2円筒面に沿って、かつ、前記直角基準平面に対して傾斜して形成された1つ以上の第3傾斜溝と、(b)前記押圧部材の前記駆動部材に対向する端面に形成され、前記第3傾斜溝と対を成す1つ以上の第4傾斜溝と、(c)それら1対以上の傾斜溝の間にそれぞれ1つずつ配設された1つ以上の転動体とを含む第2ランプ機構とを含む(1)項ないし(28)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
(30)前記第1ランプ機構と前記第2ランプ機構とで、前記第1円筒面の直径と前記第2円筒面の直径とが同じであり、前記第1傾斜溝、第2傾斜溝、第3傾斜溝、第4傾斜溝の前記直角基準平面に対する傾斜角度が同じ大きさとされた(29)項に記載の電動ブレーキ装置。
傾斜溝が形成される円筒面の直径が同じで、傾斜溝の直角基準平面に対する傾斜角度が同じである場合には、第1ランプ機構と第2ランプ機構とで駆動部材の押圧部材に対する相対回転角度が同じ場合の押圧部材の相対移動量が同じとなり、押圧部材の相対移動量の、電動モータの回転角度に対する変化勾配が同じとなる。
なお、第1筒面の直径を、第2円筒面の直径より小さくするとともに、第1傾斜溝、第2傾斜溝の傾斜角度を、前記第3傾斜溝、第4傾斜溝の傾斜角度より小さくしても、同様の効果が得られる。
(31)前記第1ランプ機構と前記第2ランプ機構とで、前記第1円筒面の直径と前記第2円筒面の直径とが同じであり、前記第1傾斜溝、第2傾斜溝の前記直角基準平面に対する傾斜角度が、前記第3傾斜溝、第4傾斜溝の傾斜角度より大きくされ、前記第1ランプ機構が第2ランプ機構より先に作用作動させられる構造を成した(30)項に記載の電動ブレーキ装置。
円筒面の直径が同じ場合に傾斜溝の傾斜角度を大きくすれば、電動モータの回転角度に対する押圧部材の相対移動量の変化勾配を大きくすることができる。その結果、速やかに押圧部材を摩擦部材に接近させたり、速やかに摩擦部材をブレーキ回転体に接近させたり、速やかに摩擦部材のブレーキ回転体への押付力を大きくしたりすることができる。
摩擦部材とブレーキ回転体との間にクリアランスがある場合には、ブレーキ作用作動開始当初に、ストロークの増加勾配を大きくすれば、ブレーキの効き遅れを抑制する点で望ましい。
なお、前記第1ランプ機構と前記第2ランプ機構とで、前記第1傾斜溝、第2傾斜溝の前記直角基準平面に対する傾斜角度と前記第3傾斜溝、第4傾斜溝の傾斜角度とを同じとして、前記第1円筒面の直径を前記第2円筒面の直径より小さくしても、同様の効果が得られる。
(32)前記第3傾斜溝と、第4傾斜溝とが、前記復帰状態で前記転動体を保持する凹部を含み、その凹部の前記直角基準平面に対する傾斜角度が、前記第1傾斜溝、第2傾斜溝の傾斜角度より大きくされた(31)項に記載の電動ブレーキ装置。
第3,第4傾斜溝において、凹部の傾斜角度が、第1、第2傾斜溝の傾斜角度より大きくされる。そのため、第2ランプ機構は第1ランプ機構より作用作動し難くされ、後に作用作動させられることになる。
(33)前記第1ランプ機構が、前記駆動部材と前記中間部材とを互いに接近させる向きに押し付けて、第1ランプ機構を復帰状態に維持する第1復帰維持部を含み、前記第2ランプ機構が、前記中間部材と前記押圧部材とを互いに接近させる向きに押し付けて、第2ランプ機構を復帰状態に維持する第2復帰維持部を含み、前記第2復帰維持部の付勢力を前記第1復帰維持部の付勢力より大きくした(31)項または(32)項に記載の電動ブレーキ装置。
第2復帰維持部の付勢力を第1復帰維持部の付勢力より大きくすれば、第2ランプ機構を、第1ランプ機構より作用作動し難くすることができる。
例えば、復帰維持部が弾性部材である場合に、第2復帰維持部のセット荷重を、第1復帰維持部のセット荷重より大きくしたり、第2復帰維持部と中間部材との間に生じ得る摩擦力が、第1復帰維持部と駆動部材との間に生じ得る摩擦力より大きくなるようにしたりすることができる。
(34)中心軸線の回りに互いに相対回転可能に保持された第1部材と第2部材との間に設けられたランプ機構であって、(a)前記第1部材の前記第2部材に対向する端面に、前記中心軸線を中心とした円筒面に沿って、かつ、前記中心軸線に直角な直角基準平面に対して傾斜して形成された1つ以上の第1傾斜溝と、(b)前記第2部材の前記第1部材に対向する端面に形成され、前記第1傾斜溝と対を成す1つ以上の第2傾斜溝と、(c)それら1対以上の第1,第2傾斜溝の間にそれぞれ1つずつ配設された1つ以上の転動体とを含み、かつ、前記第1部材の前記端面に、前記第1傾斜溝の各々に沿って傾斜した1つ以上の第1傾斜面が形成されるとともに、前記第2部材の前記端面に、前記第2傾斜溝の各々に沿って傾斜した1つ以上の第2傾斜面が形成されたことを特徴とするランプ機構。
第1部材と第2部材とは、第1傾斜面と第2傾斜面とが対向する状態で設けられる。
本項に記載のランプ機構は、(1)項ないし(33)項のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置に適用することができる。
(35)互いに中心軸線の回りに相対回転可能に保持された第1部材と第2部材との間に設けられたランプ機構であって、(i)前記第1部材と前記第2部材との間に設けられた中間部材と、(ii)(a)前記第1部材の前記中間部材に対向する端面に、前記中心軸線を中心とした第1円筒面に沿って、かつ、前記中心軸線に直角な平面である直角基準平面に対して傾斜して形成された1つ以上の第1傾斜溝と、(b)前記中間部材の前記第1部材に対向する端面に形成され、前記第1傾斜溝と対を成す1つ以上の第2傾斜溝と、(c)それら1対以上の傾斜溝の間にそれぞれ1つずつ配設された1つ以上の転動体とを含む第1ランプ機構と、(ii)(d)前記第2部材の前記中間部材に対向する端面に、前記中心軸線を中心とした第2円筒面に沿って、かつ、前記直角基準平面に対して傾斜して形成された1つ以上の第3傾斜溝と、(b)前記中間部材の前記第2部材に対向する端面に形成され、前記第3傾斜溝と対を成す1つ以上の第4傾斜溝と、(c)それら1対以上の傾斜溝の間にそれぞれ1つずつ配設された1つ以上の転動体とを含む第2ランプ機構とを含むことを特徴とするランプ機構。
本項に記載のランプ機構は、(1)項ないし(34)項のいずれかに記載の電動ブレーキ装置に適用することができる。
(36)(I)車両の車輪に設けられ、(a)前記車輪と共に回転するブレーキ回転体と、(b)非回転体に保持された摩擦部材と、(c)電動モータと、(d)その電動モータにより作動させられる駆動部材により押圧部材を前進させて、摩擦部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付機構とを備え、摩擦部材とブレーキ回転体との摩擦係合により前記車輪の回転を抑制する電動ブレーキであって、
前記ランプ機構が、前記押圧部材と前記駆動部材との間に設けられた(34)項または(35)項に記載のものとしたことを特徴とする電動ブレーキ。
(37)前記電動ブレーキが、前記ブレーキ回転体としてのドラムと、前記摩擦部材としての一対のブレーキシューとを含む電動ドラムブレーキである(36)項に記載の電動ブレーキ。
(38)(i)互いに中心軸線の回りに相対回転可能に保持された第1部材および第2部材と、(ii)それら第1部材と第2部材との間に配設された1つ以上の転動体とを含むランプ機構であって、前記1つ以上の転動体の各々が、前記第1部材と前記第2部材との3点で保持されたことを特徴とするランプ機構。
本項に記載のランプ機構は、(1)項ないし(33)項に記載の電動ブレーキ装置、(36)項、(37)項に記載の電動ブレーキに適用することができる。
(39)車両の車輪に設けられ、(a)前記車輪と共に回転するブレーキ回転体と、(b)非回転体に保持された摩擦部材と、(c)電動モータと、(d)その電動モータにより作動させられる駆動部材により押圧部材を前進させて、摩擦部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付機構とを備え、摩擦部材とブレーキ回転体との摩擦係合により前記車輪の回転を抑制する電動ブレーキと、
前記電動モータへの供給電流を制御することにより、前記押付機構を制御する電流制御装置と
を含む電動ブレーキ装置であって、
前記押付機構が、前記駆動部材と前記押圧部材との間に設けられ、1つ以上の転動体を有するランプ機構を含み、
前記電流制御装置が、(a)前記電動ブレーキの非作用状態において、前記電動モータへの供給電流を制御することにより、前記ランプ機構の前記1つ以上の転動体をほぼ復帰位置に戻す復帰時電流制御部と、
(b)その復帰時電流制御部によって、前記電動モータに、前記駆動部材に加えられた回転力が、前記1つ以上の転動体を復帰位置に移動させ得る大きさとなる電流を供給した場合に、前記電動モータの回転角度が予め定められた設定角度以上である場合に、前記1つ以上の転動体のうちの少なくとも1つが前記復帰位置にない可能性があると判定する非復帰判定手段とを含むことを特徴とする電動ブレーキ装置。
本項に記載の電動ブレーキ装置には、(1)項ないし(38)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
(40)互いに中心軸線の回りに相対回転可能に保持された第1部材と第2部材との間に設けられたランプ機構であって、(i)前記第1部材と前記第2部材との間に設けられた中間部材と、(ii)(a)前記第1部材の前記中間部材に対向する端面に、前記中心軸線を中心とした第1円筒面に沿って、かつ、前記中心軸線に直角な平面である直角基準平面に対して傾斜して形成された1つ以上の第1保持部と、(b)前記中間部材の前記第1部材に対向する端面に形成された第2保持部と、(c)それら第1保持部と第2保持部との間に配設された1つ以上の転動体とを含む第1ランプ機構と、(ii)(d)前記第2部材の前記中間部材に対向する端面に、前記中心軸線を中心とした第2円筒面に沿って、かつ、前記直角基準平面に対して傾斜して形成された1つ以上の第3保持部と、(b)前記中間部材の前記第2部材に対向する端面に形成された第4保持部と、(c)それら第3保持部と第4保持部との間に配設された1つ以上の転動体とを含む第2ランプ機構とを含むことを特徴とするランプ機構。
本項に記載のランプ機構は、(1)項ないし(39)項のいずれかに記載の電動ブレーキ装置に適用することができる。
本発明の一実施例である電動ブレーキ装置に含まれるドラムブレーキの正面図である(実施例1)。 上記電動ブレーキ装置に含まれるドラムブレーキの電動アクチュエータを示す図である。 図2のAA断面図である。 (a)上記電動アクチュエータの押付機構に含まれるランプ機構の展開図である。(b) ランプ機構の駆動部材の斜視図である。(c)ランプ機構の作用状態を示す図である。 (a)上記ドラムブレーキの非作用状態を示す図である。(b)上記ドラムブレーキの作用作動時の押圧部材のストロークと拡開力との関係を示す図である。 上記押付機構の作動図である。 上記電動ブレーキ装置に含まれるブレーキECUの記憶部に記憶された電動モータ制御プログラムを表すフローチャートである。 上記電動ブレーキ装置に含まれる別の押付機構を表す図である(実施例2)。(a)押付機構の断面図である。(b)(a)図のBB断面図である。 (a)上記押付機構に含まれる別のランプ機構の展開図である(実施例3)。(b) 駆動部材の斜視図である。(c)ランプ機構の作用状態を示す図である。 上記押付機構に含まれるさらに別のランプ機構を示す図である(実施例4)。(a)ランプ機構の展開図である。(b)駆動部材の斜視図である。(c)ランプ機構の作用状態を示す図である。(d)図4のランプ機構にホルダが配設された場合の状態を表す図である。 上記押付機構に含まれるさらに別のランプ機構を示す図である(実施例5)。(a)ランプ機構の要部を示す図である。(b)ランプ機構における回転角度とストロークとの関係を示す図である。 上記押付機構に含まれる別のランプ機構を示す図である(実施例6)。(a)ランプ機構の要部を表す図である。(b)ランプ機構の傾斜溝の断面図である。(c)ランプ機構の回転角度とストロークとの関係を示す図である。(d)ブレーキにおいて要求される特性(ストロークと押圧部材に加えられる力との関係)を表す図である。(e)上記ランプ機構とは別のランプ機構の要部を概念的に示す図である。 本発明の別の一実施例である電動ブレーキ装置に含まれる押付機構の電動アクチュエータの断面図(一部)である(実施例7)。 上記押付機構の作動図である。 上記押付機構における転動体と傾斜溝との相対位置の変化を示す図である。 上記押付機構の作動状態における電動アクチュエータへの供給電流と回転角度との関係を示す図である。 上記押付機構の作動状態における電動アクチュエータの回転角度と駆動部材の位置との関係を示す図である。 上記電動ブレーキ装置に含まれるブレーキECUのROMに記憶された転動体位置修正プログラムを表すフローチャートである。 上記押付機構とは別の押付機構に含まれるランプ機構の要部を示す図である。 従来の電動ブレーキ装置におけるランプ機構の作動を示す図である。 上記電動ブレーキ装置に含まれる別のランプ機構を概念的に示す図である(実施例8)。 上記ランプ機構に含まれる駆動部材の斜視図である。 上記ランプ機構の要部を示す概念図である。 上記ランプ機構の作動を説明するために用いる図であり、転動体が2点で接する場合に、駆動部材の駆動により、転動体が回転しつつ移動する状態を示す図である。 上記電動ブレーキ装置に含まれるさらに別のランプ機構の要部を概念的に示す図である。 上記電動ブレーキ装置に含まれる別のランプ機構を概念的に示す断面部である(実施例9)。 上記ランプ機構に含まれる駆動部材の斜視図である。 上記ランプ機構の要部を概念的に示す図である。 上記ランプ機構の作動を示す図である。 上記電動ブレーキ装置に含まれる別のランプ機構の要部を示す図である(実施例10)。
以下、本発明の一実施形態である電動ブレーキ装置について、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、下記に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
実施例1に係る電動ブレーキ装置は、図1に示すドラムブレーキ10を含む。ドラムブレーキ10は、図示しない車体に取り付けられた非回転部材としてのバッキングプレート12と、内周側に摩擦面14を備えて車輪と共に回転するドラム16とを含む。バッキングプレート12の一直径方向に隔たった2箇所には、それぞれアンカ部材17と電動アクチュエータ18(図2参照)とが固定されている。また、それらアンカ部材17と電動アクチュエータ18の押付機構19との間に、各々円弧状を成す一対のブレーキシュー20a,20bがドラム16の摩擦面14に対面する状態で、シューホールドダウン装置22a,22bによってバッキングプレート12の面に沿って移動可能に取り付けられている。
なお、バッキングプレート12の中央に設けられた貫通穴は、図示しないアクスルシャフトの貫通を許容するためのものである。
一対のブレーキシュー20a,20bは、それぞれ、一端部が押付機構19に係合させられ、他端部がアンカ部材17と当接して、拡開可能に支持される。また、ブレーキシュー20a,20bの各々の外周面には摩擦材としてのブレーキライニング26a,26bが保持され、それら一対のブレーキライニング26a,26bがドラム16の摩擦面14に摺接させられることにより、それらブレーキライニング26a,26bとドラム16との間に摩擦力が発生する。
さらに、一対のブレーキシュー20a,bの一端部同士の間には、アジャスタ付きストラット28と、リターンスプリング29とが設けられる。アジャスタ付きストラット28は、ブレーキライニング26a,bの摩耗に応じて、これら一対のブレーキライニング26a,26bとドラム摩擦面14との隙間を調整するものである。
このように、本ドラムブレーキ10は、リーディング・トレーリング式のものである。
電動アクチュエータ18は、図2に示すように、押付機構19に加えて、駆動源としての電動モータ40と、電動モータ40の回転を押付機構19に伝達する回転伝達機構42とを含む。電動モータ40および回転伝達機構42は、バッキングプレート12のブレーキシュー20a,bが保持された側とは反対側に取り付けられる。
押付機構19は、一対の押圧部材44a,bを前進させる機構であり、ハウジング50と、回転入力部材52と、回転スライド部材53と、駆動部材54とを含む。
押圧部材44a,bは、それぞれ、ハウジング50に、回り止め機構58a,bを介して相対回転不能かつ軸方向(中心軸線Lと平行な方向)に相対移動可能に保持される。
回転入力部材52は、概して中空の円筒状を成したものであり、ハウジング50に、軸方向に相対移動不能かつ相対回転可能に、一対のベアリング62,64を介して保持される。回転入力部材52には、電動モータ40の回転が伝達される。
回転スライド部材53は、軸方向に延びた中空の筒部66と一端部に設けられた頭部68とを有し、筒部66において、回転入力部材52に、相対回転不能かつ軸方向に相対移動可能に保持される。
図3に示すように、回転スライド部材53の軸部66はスプライン軸とされており、回転入力部材52にはスプライン穴72が形成され、それらスプライン軸とスプライン穴72との嵌合により、回転スライド部材53が回転入力部材52に保持されている。スプライン軸およびスプライン穴72には、DLC(Diamond like Carbon)処理(表面処理)が施され、摩擦係数が非常に小さくされている。
そのため、回転スライド部材53は、回転入力部材52に対して、軸方向にすべり易くされている。また、DLC処理が施されることにより、耐磨耗性を向上させることができる。
本実施例においては、これらスプライン軸とスプライン穴72とにより回転スライド機構74が構成される。また、頭部68には、押圧部材44bがスラストベアリング76を介して相対回転可能に係合させられ、押圧部材44bには、頭部68を押圧部材44bに押し付ける向きに付勢する付勢手段としてのばね部材77が設けられる。
駆動部材54は、軸方向に延びた中実の軸部78と、一端部に設けられた頭部80とを有し、軸部78において回転スライド部材53の筒部66の内周側に、軸方向に相対移動可能に保持される。回転スライド部材53の筒部66の内周面には、雌ねじ部81が形成されるとともに、駆動部材54の軸部78の外周面には雄ねじ部82が形成され、これらが螺合されて、回転を直線移動に変換する運動変換機構84が構成されている。運動変換機構84は、一対の雄ねじ部82と雌ねじ部81とから成るねじ機構84であり、これらねじ部81,82は、リードが設定値より大きい形状を成したものであり、ロックし易いものである。そのため、駆動部材54に設定値以上の力が加えられると、ロックし、駆動部材54と回転スライド部材53とは一体的に回転させられる。
駆動部材54の頭部80には押圧部材44aがランプ機構としてのボールランプ機構90を介して係合させられる。また、押圧部材44aには、頭部80を押圧部材44aに押し付ける向きに付勢する付勢手段としてのばね部材91が設けられる。
また、駆動部材54と押圧部材44aとは中心軸線Lの回りに相対回転可能とされる。
ボールランプ機構90は、図4に示すように、駆動部材54と押圧部材44aとの互いに対向する端面80P、44Pの間に設けられる。ボールランプ機構90は、図4(a)の展開図に示すように、頭部80(図4(b)参照)の押圧部材44aに対向する端面80P,押圧部材44aの駆動部材54に対向する端面44Pに、それぞれ形成された第1傾斜溝92a,b,cおよび第2傾斜溝94a,b,cと、これら第1傾斜溝92a,b,cおよび第2傾斜溝94a,b,cの間にそれぞれ1つずつ保持された3つの転動体としてのボール96a,b,cとを含む。第1,第2傾斜溝92,94a,b,cは、図4(a)、(b)に示すように、それぞれ、中心軸線Lを中心とする円筒面に沿って形成され、かつ、中心軸線Lと直角な直角基準平面(実施例1においては、端面80P,44Pが直角基準平面と平行な面である)に対して傾斜した状態で形成される。換言すれば、円周に沿っていくにつれて傾斜溝の底面と直角基準平面との間の距離(以下、溝の軸方向成分と称する)が単調に連続して減少する形状を成したものである。また、第1傾斜溝92a,b,cおよび第2傾斜溝94a,b,cは、それぞれ、2/3πずつ位相がずれた位置に設けられる。
駆動部材54が押圧部材44aに対して相対回転させられると、図4(c)に示すように、ボール96a,b,cが、それぞれ、第1傾斜溝92a,b,c、第2傾斜溝94a,b,cの間を転動し、これらの相対位置が変化し、押圧部材44aが駆動部材54に対して軸方向に相対移動させられる。押圧部材44aの駆動部材54に対する相対移動量(以下、ランプ機構90のストロークと称することがある)の理論上の最大値は、ほぼボール96の直径に応じた長さとなる。
駆動部材54は、回転スライド部材53にねじ機構84を介して係合させられるが、駆動部材54に加えられる軸方向の力が設定値以下である間、ねじ機構84はロックすることはない。また、駆動部材54は押圧部材44aにばね部材91によって押し付けられるが、駆動部材54に加えられる力が設定値以下である間、駆動部材54の押圧部材44aに対する相対回転が阻止される。駆動部材54が押圧部材44aに対して相対回転するためには、ボール96a,b,cが第1傾斜溝92a,b,cおよび第2傾斜溝94a,b,cをころがり上り、駆動部材54と押圧部材44aとをばね部材91の付勢力に抗して互いに離間させることが必要であるが、その際に駆動部材54が押圧部材44aから受ける抵抗トルク(ボール96a,b,cが第1傾斜溝92a,b,cおよび第2傾斜溝94a,b,cを登るのに必要な軸方向の力とボール96a,b,cのころがり摩擦とに起因して受ける抵抗トルクであるが、ころがり摩擦は小さいため無視することもできる)が、上記軸方向の力が設定値以下である状態で、駆動部材54と回転スライド部材53とが相対回転する際にねじ機構84において受ける抵抗トルク(ねじ面間におけるすべり摩擦力と、一方のねじ山が他方のねじ山をリード角分登るのに必要な軸方向の力とに起因して受ける抵抗トルク)より大きくなるように、ねじ機構84におけるリード角,ねじ機構84におけるすべり摩擦係数,ボールランプ機構90における第1,第2傾斜溝92,94a,b,cの傾斜角,およびばね部材91のセット荷重が選定されているのである。
そのため、回転スライド部材53の回転に伴って駆動部材54は前進(直線移動)させられ、押圧部材44aが前進させられる。
それに対して、駆動部材54に加えられる軸方向の力が設定値より大きくなると、ねじ機構84がロックする。その結果、駆動部材54に加えられる駆動回転トルクが大きくなり、ボールランプ機構90が駆動部材54と押圧部材44aとを離間させようとする力がばね部材91の付勢力を超える。そのために、駆動部材54は、押圧部材44aに対して相対回転させられ、ボール96a,b,cが第1傾斜溝92a,b,cと第2傾斜溝94a,b,cとの間を転がり上がり、それによって、押圧部材44bが駆動部材54に対して軸方向に相対的に移動させられる。
この設定値は、リターンスプリング29のセット荷重に応じた大きさ以下の大きさ、すなわち、リターンスプリング29のセット荷重に応じた力が加えられた場合には、ねじ機構84がロックする大きさとされる。例えば、設定値は、セット荷重に応じた力Fsに係数α(0<α≦1)を掛けた大きさ(Fs・α)とすることができる。
回転伝達機構42は、実施例1においては、4つのギヤ100〜103を含む。ギヤ100は、電動モータ40の出力軸106に相対回転不能に設けられ、ギヤ101〜103は、それぞれ、ハウジング50に相対回転可能に保持される。
ギヤ101は、回転入力部材52に噛み合わされる。
ギヤ102はギヤ100に噛み合わされ、ギヤ103はギヤ101に噛み合わされるが、ギヤ102,103は、同軸状に一体的に回転可能に保持される。そのため、電動モータ40の出力軸106の回転は、ギヤ100,102,103,101を介して回転入力部材52に伝達される。
電動ブレーキ装置には、コンピュータを主体とするブレーキECU150が設けられる。ブレーキECU150は、入出力部、実行部、記憶部を含み、入出力部には、電動モータ40の回転角度を検出する回転角センサ152,運転者によって操作可能なブレーキ操作部材154の操作量や操作力等の操作状態を検出するブレーキ操作状態検出装置156,実際のブレーキ力を検出する荷重センサ158等が接続されるとともに、電動モータ40が図示しない駆動回路を介して接続される。荷重センサ158はアンカ部材17に設けられ、ブレーキシュー20a,bによって加えられる荷重が検出される。
電動モータ40への供給電流は回転角センサ152による出力値に基づいて制御されるが、荷重センサ158による検出値に基づいて取得される実際のブレーキ力が、運転者のブレーキ操作状態で決まる要求ブレーキ力に近づくように制御される。
なお、要求ブレーキ力は、車両の走行状態に基づいて決まるようにすることもできる。運転者がブレーキ操作部材154を操作しなくても自動でドラムブレーキ10が作動させられるようにすることもできる。
以上のように構成された電動ブレーキ装置の作動について,図5,6に基づいて説明する。
(A)ドラムブレーキ10の非作用状態
本実施例においては、図6(A)に示すように、押付機構19において、一対の押圧部材44a,bとブレーキシュー20a,bとの間に隙間Δa,Δbがある場合について説明する。
ブレーキライニング26a,bが磨耗すると、ドラム摩擦面14とブレーキライニング26a,bとの間に隙間ができる。一方、アジャスタ付きストラット28が作動させられると、ドラムブレーキ10の非作用状態におけるブレーキシュー20a,bの位置が、これらの隙間が小さくなる位置とされる。そのため、ブレーキシュー20a,bと押付機構29との間に隙間が生じるのである。
なお、ブレーキライニング26a,bの磨耗量が非常に小さい場合、あるいは、後述するように、押付機構19により磨耗量に応じた調整が行われた後においては、隙間Δa,Δbは非常に小さくなる。
また、ランプ機構90は復帰状態にある。復帰状態において、駆動部材54に対して押圧部材44aは後退端位置にあり、ボール96は、一対の傾斜溝92,94の間の、軸方向成分(溝92,94の底面と端面80P、44Pとの成す距離)が最も大きい位置にある。
(B)ドラムブレーキ10の作用作動(押圧部材44a,bとブレーキシュー20a,bとの間の隙間Δa、Δbを埋める作動)
運転者によってブレーキ操作部材154が作用操作(ブレーキ10を作用させるための操作)された場合等ドラムブレーキ10を作用させる要求が検出された場合には、電動モータ40が回転させられる。
図6(B)に示すように、押付機構19において、回転入力部材52が回転させられ、それによって、回転スライド部材53が回転させられ、駆動部材54が回転スライド部材53に対して軸方向に相対移動させられ、押圧部材44aがブレーキシュー20aに近づけられる。駆動部材54の回転スライド部材53に対する突出量が大きくなり、一対の押圧部材44a,bの間の長さが長くなる。
押圧部材44aがブレーキシュー20aに当接すると、回転スライド部材53は、相対回転しつつ駆動部材54とは反対側に相対移動し、押圧部材44bがブレーキシュー20bに近づけられる。一対の押圧部材44a,bがブレーキシュー20a,bに当接するまでの間、駆動部材54と回転スライド部材53とが相対移動させられる。
この間、駆動部材54に加えられる力は非常に小さく、設定値以下である。ねじ機構84に加えられる力も非常に小さく、ロックすることがない。また、ばね部材91によって頭部80が押圧部材44aへ押し付けられる力が、ボールランプ機構90が頭部80と押圧部材44aとを互いに離間させようとする力より大きいため、ボールランプ機構90は復帰状態に保たれ、駆動部材54が押圧部材44aに対して相対回転させられることはない。
この状態は、図5(b)の領域Bで表される。
(C)ドラムブレーキ10の作用作動(ブレーキシュー20a,bとドラム摩擦面14との間の隙間Δsa,Δsbを埋める作動)
一対の押圧部材44a,bがそれぞれ一対のブレーキシュー20a,bに当接した状態では、駆動部材54には、ドラムブレーキ10のリターンスプリング29(図5参照)の弾性力(リターンスプリング29のセット荷重に相当する力)が加えられるのであり、設定値より大きい力が加えられる。
それにより、図6(C)に示すように、ねじ機構84がロックする。その結果、ボールランプ機構90が頭部80と押圧部材44aとを互いに離間させようとるす力が、ばね部材92によって頭部80が押圧部材44aへ押し付けられる力より大きくなり、駆動部材54が押圧部材44aに対して相対回転させられ、ボールランプ機構90が作用作動する。ボール96a,b,cが第1、第2傾斜溝92,94a,b,cをころがり上り、押圧部材44aが駆動部材54に対して軸方向に相対移動させられ、ブレーキシュー20aを押す(拡開させる)。また、押圧部材44bも前進させられ、ブレーキシュー20bを押す。これら押圧部材44a,bによってブレーキシュー20a,bに加えられる軸方向の駆動力は同じ大きさである。
このように、押圧部材44aと押圧部材44bとがブレーキシュー20a,20bを拡開させるのであるが、ブレーキライニング24a,bとドラム摩擦面14との間にクリアランスΔsa,Δsbがある場合には、クリアランスΔsa,Δsbが消滅させられる前における押圧部材44a,bによるブレーキシュー20a,bの駆動力は、リターンスプリング24のセット荷重に応じた一定の大きさとなる。換言すれば、押圧部材44a,bに加えられる軸方向の力がリターンスプリング24のセット荷重に応じた大きさとなるのである。この状態は、図5(b)の領域Cで表される。
(D)ドラムブレーキ10の作用作動(ブレーキ力を付与する状態)
クリアランスΔsa,Δsbがなくなると、押付部材44a,bの前進に伴ってブレーキシュー20a,bのライニング26a,bがドラム摩擦面14に押し付けられ、ブレーキシュー20a,bのドラム摩擦面14に対する押付力が大きくなり、ブレーキ力が大きくなる。ブレーキ力は、電動モータ40の回転に伴って大きくなるのであり、実際のブレーキ力が要求ブレーキ力に近づくように、電動モータ40が制御される。この状態は、図5(b)の領域Dで表される。
なお、クリアランスΔsa,sbがなくなった状態において、ブレーキシュー20a,bとドラム摩擦面14との間の隙間が完全になくなったとは限らない。
(E)ドラムブレーキ10の解除作動
運転者によるブレーキ操作部材154の解除操作(ブレーキ10を解除するための操作)が行われると、電動モータ40に電流が供給されなくなる(供給電流が0とされる)。ドラムブレーキ10においてリターンスプリング29の作用により、一対のブレーキシュー20a,bが、ストラット28で決まる位置まで縮径させられる。それにより、押圧部材44a,bが後退させられ、ボールランプ機構90が復帰状態まで戻される。図5(b)のEの位置、すなわち、図6(B)が終了し、(C)が開始する位置まで戻されるのであり、隙間Δa,bが非常に小さい状態とされる。
このように、前述の図6(B)のドラムブレーキ10の作用作動の初期状態において駆動部材54が軸方向に相対移動させられた分は、電動モータ40を逆方向に回転しない限り戻されることはない。換言すれば、ブレーキライニング26a,bの磨耗量が大きくなると、駆動部材54の回転スライド部材53に対する突出量が大きい位置が、ドラムブレーキ10の非作用位置(初期位置)とされるのであり、ブレーキライニング26a,bの磨耗量に応じて初期位置を調整することが可能となる。この意味において、駆動部材54を磨耗補償用部材と称することができる。
(F)ドラムブレーキ10の再度の作用作動(隙間Δa,Δbが小さい場合の作用作動)
この状態からドラムブレーキ10が作用作動させられる場合には、隙間Δa,bが非常に小さいため、電動モータ40の回転に伴って一対の押圧部材44a,bが前進させられると、直ちに、一対のブレーキシュー20a,bに当接する。
また、一対のブレーキシュー20a,bがリターンスプリング29によってストラット28で決まる位置まで戻された状態においては、ストラット28により、一対のブレーキシュー20a,bのライニング26a,bとドラム摩擦面14との間の隙間Δsa,Δsbが小さい状態にある。電動モータ40の回転に伴ってボールランプ機構90が作用作動させられ、一対のブレーキシュー20a,bがドラム摩擦面14に接近させられ、直ちに、ドラム摩擦面14に押し付けられる。
このように、ブレーキシュー20a,bを速やかにドラム摩擦面14に押し付けることが可能となり、ドラムブレーキ10を速やかに効かせることができる。
(G)ドラムブレーキ10の、ドラム16が偏心して取り付けられている場合の作動
ドラム16が偏心して取り付けられている場合には、図5(a)に示すブレーキシュー20a,bの各々とドラム摩擦面14との間の隙間Δsa,Δsbが互いに異なる大きさとなる。この場合には、図6(D)に示すように、上述の図5の領域Cにおいて(ランプ機構90が作用作動した状態で)、回転スライド部材53(押圧部材44a,b、回転スライド部材53,駆動部材54全体)が軸方向に移動させられ、それによって、隙間Δsa、Δsbの両方が埋められる。また、偏心したドラム16が回転するにつれて、ブレーキシュー20a,bが押圧部材44a,bおよびアンカ17に対して、押圧機構19とアンカ部材17とを通る直線に平行な方向に滑ることと、押圧部材44a,b、回転スライド部材53,駆動部材54全体が上記直線と直交する方向に移動することとが繰り返されることによって、ブレーキシュー20a,bが偏心したドラム16の回転に容易に追従する。それによって、ドラム16の偏心に起因するドラムブレーキ10の振動を良好に抑制することができる。
図7のフローチャートで表されるモータ制御プログラムは、予め定められた設定時間毎に実行される。ステップ1(S1と略称する。以下のステップについても同様とする)において、電動モータ40が制御中であるか否かが判定される。制御中でない場合には、S2において、ブレーキ作用要求があるか否かが判定され、作用要求がない場合には、S1,2が繰り返し実行される。作用要求が検出された場合には、S3において、要求ブレーキ力が決定され、S4において電動モータ40が始動させられる。駆動部材56が前進させられる方向に回転(正回転)させられるのである。
なお、要求ブレーキ力は、ブレーキ操作部材154の操作状態で決まる大きさとしても、車両の走行状態で決まる大きさとしてもよい。また、ブレーキ操作部材154が作用操作された場合に限らず、自動ブレーキを作用させる必要がある場合にも、作用要求があると検出されるようにしてもよい。
それに対して、制御中である場合には、S1の判定がYESとなる。S5において、ブレーキ解除要求があるか否かが判定される。解除要求がない場合には、S6において、荷重センサ158による検出値に基づき、実際のブレーキ力が検出され、S7において、実際のブレーキ力が要求ブレーキ力に達したか否かが判定される。要求ブレーキ力に達する前においては、S1,5,6,7が繰り返し実行される。そのうちに、実際のブレーキ力が要求ブレーキ力に達すると、S7の判定がYESとなって、S8において、電動モータ40への供給電流が保持される。
それ以降、S1,5,6,7あるいはS1,5,6,7,8が繰り返し実行されるが、ブレーキ解除要求が検出された場合には、S5の判定がYESとなり、S9において、電動モータ40への供給電流が0とされる。リターンスプリング29の作動により一対のブレーキシュー20a,bが戻され、ボールランプ機構90が復帰状態に戻される。前述のように、図5のEの状態に戻されるのである。
このように、本実施例においては、ねじ機構84とボールランプ機構90との作動により、ドラムブレーキ10を良好に作動させることができる。
具体的には、ねじ機構84、駆動部材54等によりライニング26a,bの磨耗量に応じて押付機構19の初期位置(ドラムブレーキ10が非作用状態にある場合の位置)を調整することができるため、ドラムブレーキ10の効き遅れを良好に抑制することができる。
また、ドラム16の偏心によるずれを吸入できるため、ドラム16の偏心に起因する振動を抑制し、ブレーキフィーリングを向上させることができる。
さらに、ボールランプ機構90が利用されるため、倍力率を大きくすることができ、電動モータ40の駆動力を効率よくブレーキ力に利用することができる。また、出力可能なブレーキ力の最大値を同じにした場合には、電動モータ40の小形化を図ることが可能となる。
以上のように、本実施例においては、回転入力部材52と回転スライド部材53とにより回転要素が構成され、ばね部材91により復帰維持部が構成される。
実施例1においては、回転入力部材52と回転スライド部材53との間の回転スライド機構74がスプライン軸とスプライン溝72とによって構成されるようにされていたが、複数のボールと溝とによって構成されるようにすることもできる。その場合の一例を図8(a)、(b)に示す。
本実施例においては、回転入力部材200の内周面と、回転スライド部材202の筒部203の外周面とに、それぞれ、断面が半円形を成し、軸方向に延びた溝204,206が円周方向に隔てて複数個ずつ形成され、これら溝204,206の間に、それぞれ、複数のボール208が軸方向に並べてそれぞれ配設される。実施例2においては、複数対の溝204,206および複数のボール208等により、回転スライド機構210が構成される。
ボール208により、回転入力部材200と回転スライド部材202とが一体的に回転可能とされるとともに、回転スライド部材202の回転入力部材200に対する相対移動の際の摩擦力を小さくすることができる。
ボールランプ機構の構造は上記実施例におけるそれに限らず、種々の態様のものとすることができる。
その場合の一例を図9に示す。
ボールランプ機構250において、図9(a)、(b)に示すように、駆動部材252の頭部254と、押圧部材256aとの互いに対向する端面に、それぞれ、中心軸線Lを中心とした円筒面に沿って、中心軸線Lに直角な直角基準平面Poに対して傾斜した第1傾斜溝258a,b,cおよび第2傾斜溝260a,b,cが形成されるとともに、これら第1,第2傾斜溝258,260a,b,cに沿った第1傾斜面262a,b,cおよび第2傾斜面264a,b,cが形成される。
一対の第1傾斜溝258a,b,cと第2傾斜溝260 a,b,cとの間には、ボール266a,b,cが配設される。また、第1,第2傾斜溝258a,b,c,260a,b,cは、それぞれ、図9(a)に示すように、直角基準平面Poに対して傾斜して、軸方向成分が周方向にいくにつれて単調に変化する状態で形成されるが、第1,第2傾斜面262a,b,c,264a,b,cに対しては、軸方向成分がほぼ一定となる状態、換言すれば、傾斜面262,264と傾斜溝258,260の底面とがほぼ平行になる状態で形成される。
また、このように、駆動部材252,押圧部材256の端面にそれぞれ傾斜面258,260を設けると、図9(a)に示すように、第1傾斜面262a,b,cと第2傾斜面264a,b,cとの間に、それぞれ、隙間Aを設けることができる。そのため、その隙間Aを埋めるように、第1、第2傾斜面262,264を延長させることが可能となり(延長部分q)、結果的に、第1、第2傾斜溝258,260の軸方向成分を長くすることが可能となる。第1傾斜溝258の底面と駆動部材252の前進側の端面270との間の距離の最大値、第2傾斜溝260の底面と押圧部材256aの後退側の端面272との間の距離の最大値を大きくすることができるのである。
ボールランプ機構250は、実施例1における場合と同様に、ねじ機構84がロックした場合に作用作動させられる。図9(c)に示すように、駆動部材252の押圧部材256に対する相対回転により、ボール266a,b,cが一対の第1傾斜溝260a,b,cと第2傾斜溝262a,b,cとの間を転がり、押圧部材256aが前進させられる。実施例1に記載のボールランプ機構90においては、軸方向の押圧部材44aの最大ストロークは、理論上(So×2)(図9(a)参照)であったが、実施例3に記載のボールランプ機構250においては、押圧部材256aの最大ストロークを理論上(Si×2)とすることが可能となり、ストロークを大きくすることができる(Si>So)。
また、第1傾斜溝260、第2傾斜溝262の直角基準平面に対する傾斜角度を大きくすることができる。その結果、駆動部材252の押圧部材256aに対する相対回転角度が同じ場合のボールランプ機構250のストロークを大きくすることができる。
このように、ボールランプ機構250の作用作動による押圧部材252aの軸方向のストロークを大きくすれば、シュークリアランスΔs(Δsa,Δsb)が大きくても、所望のブレーキ力を付与することが可能となる。
ボールランプ機構300を、図10(a)〜(c)に示す。
ボールランプ機構300は、実施例3に記載のボールランプ機構250と第1,第2傾斜溝258,260、第1,第2傾斜面262,264等については同じであるが、ホルダ302を有する点が異なる。ホルダ302は、ボール266a,b,cの各々の相対回転(自転)を許容しつつ、相対移動を阻止するものであり、3つのボール266a,b,cを互いに連結するものである。
ホルダ302は、図10(a)〜(c)に示すように、押圧部材256aと駆動部材252との間の隙間Aを埋める形状、すなわち、概して円盤状を成すが、端面に複数の傾斜面が形成された形状を成すものであり、ボール266a,b,cが位置する3つのボール保持穴304a,b,cが形成されている。ボール保持穴304a,b,cは、互いに位相が2/3π隔たった位置に設けられる。ホルダ302を設ければ、ボール266a,b,c相互間の位相が決まる。それによって、ストロークのバラツキを小さくしたり、押圧部材256aが傾いたりすることを良好に回避することができる。
また、図10(c)に示すように、ボールランプ機構300の作用作動時に、ホルダ302が邪魔になることはない。
一方、実施例1に係る電動ブレーキ装置のボールランプ機構90にホルダ310′を設ける場合には、図10(d)に示すように、駆動部材54′と押圧部材44a′との間に配設される。ホルダ310′は円盤状を成したものであり、中心角が2/3π隔たった位置にボール保持穴が形成される。
しかし、ホルダ310′を設けるために、駆動部材54′と押圧部材44a′との間に隙間Bを設けなければならず、その分、理論上の最大ストロークが小さくなる(2×So′<2×So)。
それに対して、実施例4においては、すでに設けられている隙間Aにホルダ302が配設されるため、ホルダ302を配設するために隙間を設ける必要がない。また、上述のように、ホルダ302を設けたことによってストロークが小さくなることもない。その結果、理論上の最大ストローク(Si×2)を確保しつつ、ホルダ302を設けることができるのであり、押圧部材256aが傾いたり、ストロークのバラツキが生じたりすることを良好に回避することができる。
ボールランプ機構350を図11に概念的に示す。
図11(a)に示すように、ボールランプ機構350は、互いに直列に配設された2つの(2段の)第1,第2ボールランプ機構352,353を含む。第1,第2ボールランプ機構352,353は、互いに、同じ構造を成す。
ボールランプ機構350は、駆動部材354と押圧部材355aとの間に配設された中間部材356を含む。これら駆動部材354,中間部材356,押圧部材355aは、中心軸線Lの回りに相対回転可能に保持される。
第1ボールランプ機構352は、駆動部材354と中間部材356との間に設けられる。第1ボールランプ機構352は、駆動部材354の中間部材356に対向する端面354Pに形成された第1傾斜溝360と、中間部材356の駆動部材354に対向する端面356PR(後退側の端面)に形成された第2傾斜溝362と、これら第1,第2傾斜溝360,362間に配設されたボール364とを含む。第1,第2傾斜溝360,362は、中心軸線Lを中心とする第1円筒面に沿って、中心軸線Lと直角な直角基準平面に対して傾斜角度β1だけ傾斜した姿勢で形成される。また、第1,第2傾斜溝360,362は、3個づつ形成され、ボール364も、第1,第2傾斜溝360,362の間に、それぞれ、1つずつ合計3個配設される。端面354P、356PRは直角基準平面と平行な面である。
第2ボールランプ機構353は、中間部材356と押圧部材355aとの間に設けられる。第2ボールランプ機構353は、第1ボールランプ機構352と同様に、これら中間部材356,押圧部材355aの端面356PF(前進側の端面)、355Pに、それぞれ形成された第3傾斜溝370,第4傾斜溝372と、これら第3,第4傾斜溝370,372の間に配設されたボール374とを含む。第3傾斜溝370,第4傾斜溝372は、中心軸線Lを中心とする第2円筒面に沿って、端面356PF、355P(直角基準平面と平行な面)に対して角度β2だけ傾斜した姿勢で形成される。
実施例5においては、第1,第2傾斜溝360,362が形成された第1円筒面と、第3、第4傾斜溝370,372が形成された第2円筒面とで、直径が同じである。また、第1,第2傾斜溝360,362の直角基準平面に対する傾斜角度β1と、第3、第4傾斜溝370,372の傾斜角度β2とは同じである。
以上のように構成されたボールランプ機構350の作動について説明する。ボールランプ機構350は、実施例1における場合と同様に、ドラムブレーキ10の作用作動時の、ねじ機構84がロックした状態において、駆動部材354が電動モータ40により回転させられる場合に作動させられる。
駆動部材354の押圧部材355aに対する相対回転により、第1ボールランプ機構352が作動させられるか、第2ボールランプ機構354が作動させられるかは一義的に決まらないが、いずれが先に作動しても、押圧部材355aは、ボールランプ機構350の作用作動に伴って前進させられる。
駆動部材354が中間部材356および押圧部材355aに対して相対回転させられると、第1ボールランプ機構352が作用作動させられ、中間部材356および押圧部材355aが前進させられる。駆動部材354および中間部材356が、押圧部材355aに対して相対回転させられると、第2ボールランプ機構353が作用作動させられ、押圧部材355aが前進させられる。その結果、図11(b)に示すように、押圧部材355aの軸方向の最大ストロークは、ボールランプ機構が1つの場合の2倍とすることができる。
このように、押圧部材355aの軸方向の最大ストロークを、ボールランプ機構が1つの場合より大きくできるため、ボールランプ機構が1つの場合と比較して、車輪に付与可能なブレーキ力の最大値を大きくすることができる。また、隙間Δsa,Δsbが大きくしても所望のブレーキ力を付与することが可能となる。
それに対して、1つのボールランプ機構における場合と最大ストロークを同じにする場合には、その分、第1,第2傾斜溝360,362および第3,第4傾斜溝370,372の傾斜角度を小さくすることができ、倍力率を大きくすることができる。
なお、ボールランプ機構を直列に3つ以上配設することもできる。
また、傾斜溝は、4つ以上形成することもできる。
さらに、駆動部材354,押圧部材355a、中間部材356の端面354P、355P、356PF、PRに、それぞれ、実施例3における場合と同様に、傾斜溝に沿った傾斜面を設けることもできる。
ボールランプ機構400を図12に概念的に示す。
図12(a)に示すように、ボールランプ機構400は、直列に配設された2つの第1ボールランプ機構402,第2ボールランプ機構404を含む。第1,第2ボールランプ機構402,404は、互いに構造が異なる。ボールランプ機構400は、駆動部材410と押圧部材412aとの間に配設された中間部材413を含み、駆動部材410,中間部材413,押圧部材412aは、中心軸線Lの回りに相対回転可能に設けられる。
第1ボールランプ機構402は、駆動部材410,中間部材413の互いに対向する端面410P、413PRに、中心軸線Lを中心する第3円筒面に沿ってそれぞれ形成された第1,第2傾斜溝414、416と、これら第1,第2傾斜溝414,416の間に配設されたボール418とを含む。
また、第2ボールランプ機構404についても同様に、中間部材413,押圧部材412aの端面413PF、412Pに、中心軸線Lを中心とする第4円筒面に沿ってそれぞれ形成された第3,第4傾斜溝430 、432と、これら第3,第4傾斜溝430,432の間に配設されたボール434とを含む。
第1,第2ボールランプ機構402,404の各々において、第3円筒面の直径と第4円筒面の直径とは同じであるが、第1,第2傾斜溝414,416は、直角基準平面(端面410P、413PRと平行)に対して角度β1傾斜して形成され、第3,第4傾斜溝430,432は、直角基準平面(端面413PF、端面412Pと平行)に対して角度β1より小さい角度β2傾斜して形成される(β2<β1)。また、第1,第2傾斜溝414,416および第3,第4傾斜溝430,432は、それぞれ、3個づつ形成され、ボール418,434は、3つずつ配設される。
詳細には、第1,第2傾斜溝414,416は、軸方向成分(直角基準平面から底面までの距離)が連続的に変化する連続傾斜溝部440を含む形状とされる(凹部を含まない)が、第3,第4傾斜溝430(432)は、図12(b)に示すように、軸方向成分が最も大きい(最も深い)部分に形成された凹部442と、その凹部442と連続する連続傾斜溝部444(軸方向成分が連続的に変化する傾斜溝)とを含む形状とされる。
そして、第1,第2傾斜溝414,416の連続傾斜溝部440の直角基準平面との成す傾斜角度β1は、第3,第4傾斜溝430,432の傾斜角度β2より大きくされ(β1>β2)、第3,第4傾斜溝430,432の凹部442の連続傾斜溝部444に連続する側の接線と直角基準平面との成す角度β3は、第1,第2傾斜溝414,416の連続傾斜溝部440の傾斜角度β1より大きくされている(β3>β1)。
第2ボールランプ機構404は、回転方向の力が、ボール434が傾斜角度β3の斜面を転がるのに要する力より大きくなると作用作動を開始し、第1ボールランプ機構402においては、ボール418が傾斜角度β1の斜面を転がるのに要する力より大きくなると作用作動を開始する。回転方向の力は、電動モータ40の回転角度が大きくなり、押圧部材412aに加えられる力が大きくなると、大きくなる。その結果、第1ボールランプ機構402の方が第2ボールランプ機構404より、先に作用作動が開始することになる。
以上のように構成されたボールランプ機構400の作動について説明する。
ドラムブレーキ10の作用作動時の、ねじ機構84がロックした状態において、駆動部材410が電動モータ40により回転させられ、中間部材413,押圧部材412aに対して相対回転させられると、第1ボールランプ機構402が作用作動させられる。そして、中間部材413に作用する回転方向の力がボール434と傾斜角度β3の斜面との間の転がり摩擦力を超えると、駆動部材410および中間部材413が押圧部材412aに対して相対回転させられるのであり、第2ボールランプ機構404が作用作動させられる。
その結果、図12(c)に示すように、駆動部材410の回転角度と押圧部材412aの軸方向のストロークとの関係において、回転角度が小さい間、回転角度に対するストロークの増加勾配が大きくなり、回転角度が大きくなると、ストロークの増加勾配が小さくなる。
すなわち、押圧部材412a、bがブレーキシュー20a,bに当接した当初においては、ストロークがブレーキライニング26a,bとドラム摩擦面14との間のクリアランスΔsa,Δsb(図5参照)を埋めるために使用されるため、ストロークの増加勾配を大きくすることにより、ブレーキの効き遅れを抑制することができる。それに対して、その後、ストロークの増加勾配を小さくすれば(傾斜溝の傾斜角度を小さくすれば)、その分、倍力率を大きくすることができ、電動モータ40の駆動力の最大値が同じ場合に、大きなブレーキ力を得ることができる。また、ブレーキ力の増加勾配が抑制されるため、ブレーキ力を細かに制御することが可能となり、制御精度を向上させることができる。
逆に、出力されるブレーキ力を1つのボールランプ機構における場合と同じにした場合には、その分、電動モータ40の小形化を図ることができる。
このように、本実施例においては、図12(d)に示すように、ブレーキに要求される特性を、2段のボールランプ機構を利用して良好に実現することができる。
また、第1ボールランプ機構402の作用作動による押圧部材412aのストロークを隙間Δsa,Δsbが埋まる大きさとすれば、特に、ブレーキの効き遅れを良好に抑制し、ブレーキ力の制御精度を向上させることができる。そのためには、第3円筒面の直径を調節することが望ましい。
一方、特許文献3に記載のように、1段のボールランプ機構の傾斜溝を、傾斜勾配が大きい部分と小さい部分とを有する形状を成したものとすることによっても、ブレーキ作用開始当初においてストロークの増加勾配を大きくすることが可能であるが、1つの傾斜溝の傾斜角度を変えなければならず、加工が困難である。それに対して、ランプ機構を2段とすれば、傾斜溝の加工を容易にすることができ、かつ、ストロークの増加勾配が大きい状態と小さい状態とを確実に区別することが可能となる等の特有の効果が得られる。
なお、実施例6において、図12(e)に示すように、第1ボールランプ機構402にストッパを設けることができる。本実施例においては、駆動部材410の端面410Pと中間部材413の端面413PRとのいずれか一方(本実施例においては、駆動部材410の端面410P)の、第1傾斜溝414から外れた位置(本実施例においては、外周側に外れた位置に設けたが、内周側に外れた位置に設けることもできる)に円弧状の溝448を形成し、他方の端面(413PR)に溝448に嵌合可能な(同一円周上に)突部450を設ける。駆動部材410と中間部材412との相対回転により、突部450は、溝448に沿って相対移動させられる。
そして、駆動部材410の中間部材413に対する相対回転により、図12(e)に示すように、突部450が溝448の回転方向の後方側の端部に当接すると、駆動部材410の回転が中間部材413に伝達される。このように、駆動部材410の回転に伴って中間部材413が回転させられるようにすれば、第2ボールランプ機構404を確実に作用作動させることが可能となる。
また、溝448の後退端を、第1傾斜溝414の後退端より回転方向の前方側に設ければ、ボール418が第1傾斜溝414の後退端位置に達する前に、ストッパ450が溝448の後退端に達することになる。そのため、第2ボールランプ機構404を作動させる際に、ボール418に加えられる回転方向の力を小さくすることができ、その分、ボール418が第1傾斜溝414を乗り上げ難くすることができる。さらに、ボール418に加えられる力を小さくすることができるため、耐久性を向上させて、信頼性を向上させることができる。
また、実施例6において、第1、第2傾斜溝414,416と第3、第4傾斜溝430,432とで、傾斜角度β1,2を同じとして、第1、第2傾斜溝414,416が形成される第3円筒面の直径を、第3,第4傾斜溝430,432が形成される第4円筒面の直径より小さくすることによっても同様の効果が得られる。このように第3円筒面、第4円筒面の直径を、図5の領域C、Dに適した大きさにすることもできる。
本実施例における電動ブレーキ装置の押付機構500を図13に示す。実施例1における押付機構19と同じ部材については同じ符号を付して説明を省略する。
押付機構500において、ハウジング50には、押圧部材44a,bの後退端位置を規定するストッパ502a,bが設けられる。
また、電動モータ40に流れる電流を検出する電流センサ508が設けられ、電流センサ508による検出値がブレーキECU510に供給される。ブレーキECU510の記憶部には、ボール位置修正プログラム等の種々のプログラムが格納されている。
本実施例においては、ボール位置修正プログラムの実行により、ブレーキ10の解除後に、ボールランプ機構90におけるボール96a,b,cの位置が修正されて、復帰位置に戻される。ボールの復帰位置とは、押圧部材44aの駆動部材54に対する復帰状態に対応する位置である。本実施例においては、ボール96a,b,cの各々について規定される位置で、第1傾斜溝92a,b,cの最も深い部分と、第2傾斜溝94a,b,cの最も深い部分との間に存在する位置をいう。換言すれば、ボール96a,b,cの中心と、第1傾斜溝92の凹曲面の中心と、第2傾斜溝94の凹曲面の中心とが互いに一致する位置である。
復帰状態に対応する位置は、溝の形状、ボールの形状等で決まる。
図20(a)に示すように、ボール96a,b,cは、駆動部材54と押圧部材44aとの間に、すなわち、押圧部材44aに設けられた第2傾斜溝94a,b,cと駆動部材54に設けられた第1傾斜溝92a,b,cとの間の、予め定められた位相に配設される。しかし、組付け時に生じた振動、駆動部材54と押圧部材44aとの接触具合によりボール96a,b,cの第1傾斜溝92a,b,c,第2傾斜溝94a,b,cに対する相対位相がずれることがある。また、ボール96a,b,cの各々において、ボール96a,b,cの第1傾斜溝92a,b,cおよび第2傾斜溝94a,b,cに対する相対移動軌跡が、ブレーキ作用作動時と解除作動時とで異なることがある。さらに、ボール96a,b,cの相互間において、ブレーキ作用作動時、解除作動時の各々における軌跡が異なることがある。
これらの原因により、図20(b)に示すように、ボール96a,b,cの第1傾斜溝92a,b,c,第2傾斜溝94a,b,cに対する相対位置がずれ、ストロークが減少(突出量が減少)したり、中心軸線Lに対して傾斜したりする等の問題が生じる。
そこで、本実施例においては、ブレーキ10が解除した後に、ボール96a,b,cを図20(a)に示す復帰位置に戻すための修正制御が行われる。
なお、明細書、図面において、ボール96a,b,c、第1傾斜溝92a,b,c,第2傾斜溝94a,b,c等は、これらを代表して、ボール96,第1傾斜溝92,第2傾斜溝94等と表すことがある。
以下、ボール位置の修正制御について説明する。
(P)修正制御開始状態
ブレーキ10の解除作動後(電流0)には、押付機構500において、駆動部材54,押圧部材44aは、図14(P)に示す状態にある。押圧部材44a、44bは、前進側においてブレーキシュー20a,bに接触し、後退側においてストッパ502a,bから離間している。ブレーキシュー20a,bと押圧部材44a,bとの間に隙間はない。
この状態において、例えば、図15(0)に示すように、ボール96が復帰位置にないと仮定する。この図15(0)に示す状態においては、ボール96は、第1傾斜溝92の最も深い位置からX0ずれ、第2傾斜溝94の最も深い位置からY0ずれている。また、ずれY0はずれX0より小さい(Y0<X0)。
以下、本明細書において、ずれを第1傾斜溝92,第2傾斜溝94の最も深い位置(凹曲面の中心)とボール96の中心との間の距離で表す。
また、駆動部材54は、図17に示すように、軸方向の位置P0(基準位置)にあり、電動モータ40の回転角度は、図16,17に示すようにS0である{回転角度S0を基準角度(0)とすることもできる}。
なお、電動モータ40の回転角度(回転角センサ152による検出値)をそのまま使用しても、電動モータ40の回転角度に基づいて取得される回転スライド部材53の回転角度を使用してもよい。
(Q)押圧部材44aの後退(ステージI)
図14(P)の状態から電動モータ40を、後退方向(駆動部材54が後退する方向)に回転させると、回転スライド部材53が回転させられ、ねじ機構84を介して、駆動部材54が中心軸線Lに沿って相対的に後退させられる。また、駆動部材54と押圧部材44aとは、ばね部材91により係合させられているため、駆動部材54の後退に伴って押圧部材44aも後退させられるのであり、これら駆動部材54、押圧部材44aは、図14(Q)に示すように、押圧部材44aがストッパ502aに当接するまで後退させられる。
押圧部材44aがストッパ502aに当接したことは、回転角度の変化量が急激に小さくなることでわかる。
また、押圧部材44aがストッパ502aに当接した後、駆動部材54は多少相対回転させられる。それによって、ボール96は、転がりつつ、第1傾斜溝92,第2傾斜溝94の最も深い位置に向かって相対移動させられる。ずれY0はずれX0より小さいため、図15(1)に示すように、ボール96は、第2傾斜溝94の壁94Pに当接し、ボール96の中心と第2傾斜溝94の凹曲面の中心とが一致する(ずれY0が0となる)。また、ずれXも小さくなる(X1<X0)。
回転スライド部材53および押圧部材44bも同様に、押圧部材44bがストッパ502bに当接するまで後退させられる。この状態においては、ブレーキシュー20a,bと押圧部材44a,bとの間に隙間Δc,dが形成される。
駆動部材54は後退させられ、図17に示すように、軸方向の位置P1にあり、電動モータ40の回転角度は、図16,17に示すようにS1である。
なお、後述するように、図14(P)の状態から図14(Q)の状態に至るまでの電動モータ40の回転角度ΔS(0){図14(P)の状態における回転角センサ152の検出値S0と図14(Q)の状態における回転角センサ152の検出値S1との差であり、以下、回転角度差と称する}が取得されて、記憶される。
ΔS(0)=S1−S0
電動モータ40の回転角度差ΔS(0)に基づけば、図14(P)の位置から図14(Q)の位置に至るまでの押圧部材44a,bの後退方向のストロークの和を求めることができる。これら後退方向のストロークの和が、ブレーキシュー20a,bと押付部材44a,bとの隙間Δc,dの和となる。
Δc+Δd=α・ΔS0
αは、電動モータ40の回転角度を駆動部材54のストロークに換算するための係数である。
(R)修正制御(ステージII)
図14(R)に示すように、押圧部材44a,bがストッパ502a,bに当接すると、押圧部材44a,bはそれ以上後退しない。
ボール96a,b,cのすべてが復帰位置にある場合には、電動モータ40に後退方向の電流が供給されても、駆動部材54は押付部材44aに対して相対回転することはない。その場合には、ステージIIは実行されることなく、修正制御が終了させられる。
それに対して、ボール96a,b,cのうちの少なくとも1つが復帰位置にない場合には、駆動部材54が相対回転させられ、ボール96a,b,cが復帰位置に向かって相対移動させられる。
本実施例においては、電動モータ40に供給される後退方向の電流が増加・減少させられ、ボール96a,b,cが少しずつ復帰位置に向かって相対移動させられる。
R-1-1)第1回目の電流の増加
押圧部材44aがストッパ502aに当接した状態で、電動モータ40への供給電流が、駆動部材54に加えられる回転力がボール96a,b,cを復帰位置に向かって相対移動させ得る大きさ(換言すれば、駆動部材54がボール96に対してすべりつつ相対移動し得る大きさ)以上であって、ボール96a,b,cがわずかに乗り上げる可能性がある大きさとなる第1設定電流値(以下、第1しきい値Thi1と称する)まで増加させられる。
図15(2)に示す状態において、駆動部材54の相対移動方向(矢印X方向)は、ボール96にとっては移動し易い方向(斜面に沿って下る方向)である。しかし、ボール96と駆動部材54,押圧部材44aとの間には、ばね91により互いに接近する向きの力が加えられる。そのため、ボール96は転がり難く、駆動部材54がボール96に対して相対移動させられる。このことから、上記第1設定電流値は、駆動部材54とボール96との間の摩擦力に抗して、駆動部材54がボール96に対してすべりつつ相対移動し得る大きさに基づいて決まる大きさとすることができる。
ボール96a,b,cが復帰位置にない場合には、電動モータ40に第1設定電流値の電流が供給されると、駆動部材54は矢印X方向(後退方向)に、ボール96a,b,cおよび押圧部材44aに対して相対回転して、ボール96a,b,cは、第2傾斜溝94a,b,cの壁94pに押し付けられて、若干乗り上げる。それにより、ずれXは、小さくなる(X2<X1)。
本実施例においては、図14(Q)の時点の電動モータ40の回転角度S1と電動モータ40への供給電流が最初に第1しきい値Thi1まで増加させられた時点の電動モータ40の回転角度S2(図16,17に記載)との差が取得され、移動判定しきい値Th0と比較される。
ΔS(1)=S2−S1
ΔS(1)<Th0
回転角度差ΔS(1)が移動判定しきい値Th0以上である場合には、図14(Q)の時点(押圧部材44aがストッパ502aに当接した時点)において、ボール96aが復帰位置からずれており、現時点においてもずれている可能性が高いと判定され、以下の修正制御が実行される。
それに対して、回転角度差ΔS(1)が移動判定しきい値Th0より小さい場合には、図14(Q)の時点において、ボール96a,b,cはほぼ復帰位置にあり、現時点においても復帰位置にあると考えられる。そのため、以下の修正制御を実行する必要はない。その場合には、後述するように、電動モータ40を前進方向に回転させて、図14(P)の状態に戻す。
なお、図17に示すように、押圧部材44aがストッパ502aに当接した状態で電動モータ40への供給電流の増加・減少が行われる間、駆動部材54の軸方向の位置は一定である(P1=P2=・・・・)。
R-1-2)第1回目の電流の減少
その後、電動モータ40への供給電流が第2しきい値Thi2(本実施例においては0)まで小さくされ、回転力が0とされる。それによって、図15(2)*に示すように、若干乗り上げたボール96a,b,cが転がりつつ溝94、92の内部に戻る。この場合のずれX2*は、図15(2)における場合と同じである(X2=X2*)。
R-2-1)第2回目の電流の増加
再び、電動モータ40に第1しきい値Thi1の電流が供給される。ボール96a,b,cが復帰位置にない場合には、駆動部材54がX方向に、ボール96に対してすべりつつ相対回転させられる。
第1回目に電流が第1しきい値Thi1まで増加させられた場合の電動モータ40の回転角度S2と、今回(第2回目に)電流が第1しきい値Thi1まで増加させられた場合の電動モータ40の回転角度S3(図16,17に記載)との差ΔS(2)が取得され、修正終了判定しきい値Thsより小さいか否かが判定される。
ΔS(2)=S3−S2
ΔS(2)<Ths
修正終了判定しきい値Ths以上である場合には、第1回目に第1しきい値Thi1の電流が供給された時点(図15(2)の状態)でボール96a,b,cが復帰位置になかったため、現時点においても、すべてのボール96a,b,cは復帰位置にない可能性があると判定される。この場合には、修正制御が継続して行われる。
また、図15(3)に示すように、第2回目の電流の増加により、ずれXは小さくなる(X3<X2)。
それに対して、回転角度の差ΔS(2)が修正終了判定しきい値Thsより小さい場合には、図15(2)の時点においてボール96a,b,cが復帰位置にあり、現時点においても復帰位置にあると判定される。修正制御が終了させられ、電動モータ40が前進方向に回転させられ、図14(P)の状態に戻される。
R-2-2)第2回目の電流の減少
再度、電流が第2しきい値(0)まで小さくされ、わずかに乗り上げたボール96が一対の傾斜溝92,94の内部に戻される。
R-3)第3回目の電流の増加等
再度、電流が第1しきい値Thi1まで増加させられて、回転速度差ΔS(3)(=S4−S3)が取得され、修正終了判定しきい値Thsと比較される。
以下、回転角度の差ΔS(k)が修正終了判定しきい値Thsより小さくなるまで、電流の増加減少が繰り返される。
本実施例においては、4回目に電流を増加した時の回転角度の差ΔS(4)が修正終了判定いきい値Thsより小さくなったため、修正制御が終了させられる。
電流の増加・減少を繰り返すにつれて、図15(3)、(4)、(5)に示すように、ずれが小さくなる。
X5<X4<X3
また、図16,17に示すように、電動モータ40の回転角度の差は小さくなる。
ΔS(4)<ΔS(3)<ΔS(2)
(S)初期状態に戻す(ステージIII)
回転角度差ΔS(k)が修正終了判定しきい値Thsより小さくなると、ステージIIが終了し、ステージIIIが実行される。図14(S)に示すように、電動モータ40が前進方向に回転させられる。駆動部材54が前進させられ、押圧部材44aが前進させられる。電動モータ40は、回転角度がΔS(0)に達するまで回転させられる。それにより、押圧部材44a、44bとブレーキシュー20a,bとが丁度接触する状態、すなわち、隙間が0になる状態{図14(P)に示す状態}に戻される。
図17に示すように、駆動部材54の前進により、軸方向の位置P0に戻される。また、ステージIIIにおいて、電動モータ40は、ΔS(0)だけ回転させられるため、ステージIIIが終了した時点の回転角度は、図17に示すように、S0′となる。
それにより、次にブレーキ10を作動させる場合の効き遅れを小さくすることができる。
図18のフローチャートで表されるボール位置修正プログラムは、予め定められた設定時間毎に実行される。
S21,22,23において、SIIIフラグ、SIIフラグ、SIフラグがセット状態にあるか否かが判定される。SIフラグ、SIIフラグ、SIIIフラグは、それぞれのステージにおける制御が実行されている場合にセットされるフラグである。ステージIは、駆動部材54および押圧部材44が一体的に後退させられる工程、ステージIIは、駆動部材54の相対回転によりボール96a,b,cが復帰位置に戻される工程、ステージIIIは、駆動部材54および押圧部材44が一体的に前進させられる工程である。
S21から23の判定がすべてNOである場合には、S24において、ボール修正条件が満たされるか否かが判定される。本実施例においては、ブレーキ操作部材154が操作されておらず、ブレーキ10の解除作動時に電流が0とされた場合(あるいは、電流が0とされてから設定時間が経過した後)に修正条件が満たされたとされる。図14(P)の状態にある場合に、ボール修正条件が満たされたとされるのである。
ボール修正条件が満たされない場合には、S25において、フラグ、カウンタ、パラメータ等が初期化される。以下、修正条件が満たされるまでの間、S21〜25が繰り返し実行される。修正条件が満たされると、S24の判定がYESとなり、ステージIの制御が開始される。
(ステージI)
S26において、修正条件が満たされた時点における回転角センサ152による検出値が読み込まれ、S0として記憶される。S27において、SIフラグがセットされ、S28において、電動モータ40に後退方向の、一定の大きさの電流が供給される。S29において、回転角センサ152による検出値が読み込まれ、回転角の変化量dSが取得される。前回検出された回転角と今回検出された回転角との差が取得されるのである。そして、S30において、回転角の変化量dSが設定値以上小さくなったか否かが判定される。すなわち、押圧部材44がストッパ502aに当接したか否かが判定されるのである。
ストッパ502aに当接する以前においては、駆動部材54はほぼ一定の速度で後退させられ、回転角の変化量dSはほぼ一定に保たれるため、判定がNOとなる。この場合には、SIフラグがセットされているため、S21〜23,28〜30が繰り返し実行される。
そのうちに、押圧部材44aがストッパ502aに当接すると、回転角の変化量dSが設定値以上小さくなり、S30の判定がYESとなる。ステージIが終了したのである。
S31において、カウンタkのカウント値が1とされ、S32において、その時点の回転角がSkとして記憶され、S33において、修正条件が成立した時点からステージIが終了するまでの間の回転角度ΔS(0)(=S1−S0)が求められて、記憶される。S34において、SIフラグがリセットされて、SIIフラグがセットされる。
(ステージII)
SIIフラグがセットされているため、S22の判定がYESとなり、S35以降が実行される。S35において、電動モータ40への供給電流(後退方向の電流)が増加させられ、S36において、第1しきい値Thi1に達したか否かが判定される。第1しきい値Thi1に達する以前においては、S21,22,35,36が繰り返し実行される。第1しきい値Thi1に達すると、S37において、回転角センサ152による検出値が読み込まれ、S38において、前回検出された回転角度と今回検出された回転角度との差である回転角度差ΔS(k)(=Sk+1−Sk)が取得される。
そして、S39において、カウンタkのカウント値が1であるか否かが判定される。カウント値が1である場合には、回転角度差ΔS(1)は、押圧部材44aがストッパ502aに当接した時点からの回転角度差ΔS(1)(=S2−S1)に対応するため、S40において、移動判定しきい値Th0と比較される。回転角度差ΔS(1)が移動判定しきい値Th0以上である場合には、修正制御は継続して行われる。S42において、電流が0まで減少させられ、S43において、カウンタkのカウント値が1増加させられる。
それに対して、回転角度差ΔS(1)が移動判定しきい値Th0より小さい場合には、押圧部材44aがストッパ502aに当接した時点においてボール96a,b,cはほぼ復帰位置にあり、現時点においても復帰位置にあると判定することができる。修正制御を継続して行う必要がないため、ステージIIが終了させられ、後述するようにステージIIIが実行される。
回転角度差ΔS(1) が移動判定しきい値Th0以上である場合には、S21,22,35,36、あるいは、S21,22,35〜38が同様に実行され、回転速度差ΔS(2)が取得される。ここでは、カウント値は2であるため、S39の判定はNOとなり、S41において、回転角度差ΔS(k)が修正終了判定しきい値Thsより小さいか否かが判定される。この場合には、前回、電流が第1しきい値Thi1まで増加させられた時点の回転角度S2と今回、第1しきい値Thi1まで増加させられた時点の回転角度S3との差ΔS(2)(=S3−S2)が修正終了判定しきい値Thsより小さいか否かが判定される。
図15(2)の状態において、ボール96a,b,cが復帰位置になかった場合には、回転角度差ΔS(2)が修正終了しきい値Ths以上になると考えられる。S41の判定がNOとなり、上述の場合と同様に、S42,43において電流が0まで減少させられて、カウント値が1増加させられる。
以下、電流の増加・減少が繰り返し行われることにより、供給電流が第1しきい値Thi1に達した場合の電動モータ40の回転角度(基準位置S0から後退方向への回転角度)は、ボール96a,b,cが復帰位置に戻されるまでの間、漸増させられる。
そして、回転角度差ΔS(4)(=S5−S4)が修正終了しきい値Ths以下になると、S41の判定がYESとなり、S44において、SIIフラグがリセットされて、SIIIフラグがセットされる。
ボール96a,b,cの位置の修正が終了したのであり、ボール96a,b,cは、図20(a)に示す復帰位置に戻されたと考えられる。
なお、本実施例においては、回転角度差ΔS(1)と回転角度差ΔS(k)(k≧2)とでは、回転角度差の意味するものが異なると考えて、移動判定しきい値Th0と修正終了しきい値Thsとを異なる値としたが、これらは同じ値とすることもできる。
(ステージIII)
S45において、電動モータ40が正方向、すなわち、前進方向に回転させられる。S46において、回転角度がS33において記憶されたΔS(0)に達したか否かが判定される。前進方向にΔS(0)だけ回転させられたか否かが判定されるのである。ΔS(0)に達する以前においては、S46の判定がNOとなり、S21,45,46が繰り返し実行される。ΔS(0)に達すると、S46の判定がYESとなり、S47,48において、電動モータ40が停止させられ、フラグSI、SII、SIIIがリセットされる。この状態において、駆動部材54は位置P0にあり、初期状態に戻される。
押圧部材44a,bは、ブレーキシュー20a,bに当接した状態にあるため、次にブレーキ10を作用作動させる場合の遅れを小さくすることができる。
このように、本実施例においては、ブレーキ10の非作用状態におけるボール96a,b,cの復帰位置からのずれを良好に修正することができる。それにより、押圧部材44の軸線Lに対する傾きを抑制し、ブレーキ制御を良好に行うことが可能となる。
また、電流の増減の繰り返しにより、ボール96a,b,cの第1傾斜溝92a,b,c,第2傾斜溝94a,b,cに対する相対位置が少しずつ修正されるため、ボール96a,b,cが溝から外れることを防止することができる。
一方、図19(a)、(b)に示すように、ボールランプ機構518において、駆動部材54,押圧部材44aの各々の、第1傾斜溝92,第2傾斜溝94の周方向に隣接する部分に、相手側の溝に向かって突出する突部520,522を設けることができる。突部520,522は、端面524、526が、それぞれ、駆動部材54,押圧部材44の端面80P、44Pと直交する形状を成したものである。
このように、相手側の溝に向かって突出する突部520,522を設ければ、ボール位置を修正する際に、大きな電流を供給しても、ボール96が溝から外れ難くすることができる。その結果、ボール96を復帰位置に戻す際に、電流を繰り返し増減させる必要がなくなるか、あるいは、増減の回数を減らすことができるという利点がある。
本実施例においては、ブレーキECU510の図18のフローチャートで表されるボール位置修正プログラムのS40、41を記憶する部分、実行する部分等により判定手段が構成される。
なお、第1しきい値Thi1、第2しきい値Thi2は、電流の増加・減少において、常に同じ値としても、異なる値としてもよい。また、第2しきい値Thi2は、0と第1しきい値Thi1との中間の値としたり、ブレーキ10の作動に影響が及ばない場合の前進方向の電流値とすることもできる。
さらに、電動モータ40への供給電流が第1しきい値Thi1に達した場合の電動モータ40の回転角度の差が修正終了判定しきい値と比較されるようにされていたが、第2しきい値Thi2に達した場合の回転角度の差が修正終了判定しきい値と比較されるようにしたり、第2しきい値Thi2から第1しきい値Thi1まで増加させられる間の電動モータ30の回転角度が修正終了判定しきい値と比較されるようにしたりすることもできる。
また、上記実施例においては、ずれYが0である場合において、ずれXが修正される場合について説明したが、ずれXが0である場合において、ずれYを修正する場合についても同様である。
ボールランプ機構550は、図21〜23に示す構造を成したものとすることができる。
図21に示すように、押圧部材552には溝554が形成され、駆動部材556の端面557には、中心軸線Lに直角な直角基準平面(本実施例においては、端面557が直角基準平面に対応する)に対して傾斜した駆動面558が形成される。
溝554は、中心軸線Lを中心とする円周に沿って形成された円環状を成したものであり、内周側の傾斜壁面560と外周側の傾斜壁面562とを有する。これら一対の内周側、外周側の傾斜壁面560,562が底部において当接(交差)することにより、半径方向に沿った断面が三角形の溝554が形成される。
なお、溝554は、同じ位相ずつ隔てて形成された、互いに独立の複数の溝部を含むものとすることができる。
駆動面558は、図22に示すように、駆動部材556の端面557の押圧部材552の溝554に対向する位置に、すなわち、中心軸線Lを中心とする円周に沿って、同じ位相だけ隔てて複数個形成される。駆動面558の各々は、円弧状を成し、直角基準平面(端面557)に対する角度はほぼ一定であるが、直角基準平面からの距離が連続的に変化する形状を成したものである。
実施例8においては、駆動面558の各々に対応してボール580(球体)が1つずつ配設され、駆動面558,溝554,ボール580等によってボールランプ機構550が構成される。
ボール580は、駆動部材556と押圧部材552とによって保持されるが、押圧部材552の溝554は、断面が三角形を成したものであるため、ボール580は、内周側、外周側傾斜壁面560,562および駆動面558の3つの面にそれぞれ接する状態で保持される。すなわち、ボール580は、図23に示すように、内周側傾斜壁面上の点560P,外周側傾斜面上の点562Pおよび駆動面上の点558Pの3点で保持される。
なお、点560P,562P,558Pは、駆動部材556の押圧部材552に対する相対回転およびボール580の回転に伴って移動する点であり、点560P,562P,564Pは、図23に示すように、それぞれ、中心軸線Lからの半径がRa,Rb,Rcである円周上の点となる。
また、これら点560P、562P、558Pと接するボール580上の点を、それぞれ、点a,b,cとする。
このように、ボール580が、駆動部材556と押圧部材552とによって、3点558P、560P,562Pで保持されるため、ボールランプ機構550の作動時、すなわち、駆動部材556が押圧部材552に対して、図23の紙面に対して直交する方向(接線方向)に相対回転させられる場合において、ボール580を、駆動部材556,押圧部材552に対してすべらないで回転させることができる。
ボール580が、すべらないで回転させられる理由は、以下の通りであると推測される。
最初に、図24(a)に示すように、2つの部材X,ZによってボールYが保持された状態で、部材Xが部材Zに対して直線的に相対移動させられる場合において、ボールYが部材X、Zに対してすべらないで回転させられる場合について考える。
ボールYは、実線で示す位置Iにある状態において、ボールYの中心Oを通る直径と球面との交点E,Fが部材X、Z上のそれぞれの点G、Hに接する状態にある。この位置Iから、部材Xが矢印の方向に距離LXだけ相対移動させられると(点Gが点G′に達するまで移動させられると)、ボールYは、回転しつつ破線で示す位置IIまで直線的に移動させられる。
ボールYは部材Xに対しても部材Zに対してもすべらないことから、ボールY上の点Eの移動長さEE′が部材X上の長さLX1(G′G″)と等しくなり、ボールY上の点Fの移動長さFF′が部材Z上の長さLZと等しくなる。
EE′=LX1・・・(1a)
FF′=LZ ・・・(1b)
また、ボールYは、前述のように中心Oを通る直径上の2点E,Fにおいて部材X,Zと接しており、かつ、中心Oが直線状に移動させられるため、ボールYは中心Oを通り、紙面に直交する方向に伸びた自転軸回りに回転させられる。そのため、点E,Fの各々の自転半径は等しくなる(re=rf)。
さらに、ボールYは剛体であるため、点Eと点Fとで自転軸回りの回転角度φは等しくなる。
そのため、点Eの移動長さEE′と、点Fの移動長さFF′とは、それぞれ、下式に示す通りとなり、
EE′=re・φ
FF′=rf・φ
re=rf
点Eの移動長さEE′と、点Fの移動長さFF′とは等しいことがわかる。
EE′=FF′・・・(2)
また、(1a)、(1b)、(2)式から、式
LX1=LZ・・・(3)
が成立する。
以上、部材Xが部材Zに対して直線的に相対移動させられる場合について説明したが、部材Xが部材Zに対して、中心軸線Lの回りに相対回転させられる場合においても事情は同じである。図24(b)に示すように、部材Xが中心角θだけ相対回転させられると、ボールYは中心角θ/2だけ自転しつつ公転させられる。
そして、図24(b)に示す状態において、θが微小角度dθである場合を考える。部材Xが角速度dθで回転させられた場合、ボールYは角速度dθ/2で公転させられるため、部材XはボールYに対して角速度dθ/2で回転させられ、部材ZはボールYに対して角速度−dθ/2で回転させられると考えることができる。
さらに、この事情は、ボールが2つの部材によって3点で支持される場合も同じである。
図23に示すように、ある時点のボール580上の点c,a,bを基準とした場合、点cに対して、駆動部材554が相対角速度dθ/2で回転させられると、点a,bに対して、押圧部材552は相対角速度−dθ/2で回転させられると考えることができる。
また、点c,a,bの中心軸線Lからの半径は、それぞれ、Rc,Ra,Rbであるため、駆動部材554のボール上の点cに対する周速度Vc、押圧部材552のボール上の点a,bに対する周速度Va,Vbは、それぞれ、下式に示す通りとなる。
Vc=Rc・dθ/2・・・(4a)
Va=−Ra・dθ/2・・・(4b)
Vb=−Rb・dθ/2・・・(4c)
また、点c,a,bは、それぞれ、ボール580上の自転中心軸の回りに自転させられるが、ボール580は剛体であるため、自転中心軸回りの回転角速度φは、いずれの点についても同じである。したがって、点c,a,bの周速度vc,va,vbは、自転中心軸からの半径をrc,ra,rbとした場合に、下式に示す通りとなる。
vc=rc・φ・・・(5a)
va=−ra・φ・・・(5b)
vb=−rb・φ・・・(5c)
これら周速度Vc,Va,Vbと、周速度vc,va,vbとは、ボール580が駆動部材554,押圧部材552に対してすべらないことから、互いに等しい。そのため、(4a)、(4b)、(4c)式、(5a)、(5b)、(5c)式から、下式が成立する。
Rc・θ/2=rc・φ・・・(6a)
Ra・θ/2=ra・φ・・・(6b)
Rb・θ/2=rb・φ・・・(6c)
また、(6a)、(6b)、(6c)式から、下式
Rc/rc=Ra/ra=Rb/rb・・・(7)
が成立することがわかる。
以上のことから、(7)式が成立することを条件として、すなわち、ボール上の、押圧部材552,駆動部材554との接点a,b,cの各々の瞬間自転軸からの半径と公転中心からの半径との比が等しいことを条件として、ボール580は、駆動部材554に対しても押圧部材552に対してもすべることなく自転しつつ公転できると考えられる。図23に示す場合においては、傾斜壁面560,562の成す角度はほぼ90°であるが、(7)式を満たす瞬間自転軸がY0となる。
換言すれば、ボール580が、押圧部材552に対しても駆動部材554に対してもすべらないで回転するためには、(7)式が成立することが条件となる。そして、ボール上の点a,b,c(駆動部材554,押圧部材552との接点558P、560P、562Pと同じ)が決まれば、(7)式を満たす瞬間自転軸が一義的に決まると推測される。したがって、ボール580は3点で保持された状態で、駆動部材554,押圧部材552に対して滑らないで回転可能であると推測できる。
以上のように、ボール580は、駆動部材554と押圧部材552とによって3点で支持されるため、駆動部材554,押圧部材552に対してすべることなく、瞬間自転軸の回りに自転しつつ中心軸線Lの回りに公転させることができる。
その結果、ボール580が一対の曲面(溝)によって保持される場合に比較して、ボール580の移動軌跡を安定化させることができる。
また、ボールランプ機構550の作動時に、ボール580を予定されたストローク(フルストローク)移動させることができ、押圧部材552を予定されたストローク(フルストローク)直線的に移動させることが可能となり、所望のブレーキ力を出力することが可能となる。
なお、押圧部材552の溝554の形状{内周側の傾斜壁面、外周側傾斜壁面の形状(傾き角等)}は、図23に示す場合に限らない。例えば、図25に示す形状を成したものとすることができる。
図25に示すボールランプ機構600においては、押圧部材602に形成された溝604が内周側傾斜壁面606と外周側傾斜壁面608とを有するものであり、半径方向に沿った断面が三角形を成す。また、内周側傾斜壁面606と外周側傾斜壁面608との成す角度は鈍角である(90°より大きい)。
ボール580は、内周側傾斜壁面上の点606P、外周側傾斜壁面上の点608P、駆動面上の点558Pによって保持される。また、これらに対向するボール上の点が点a,b,cである。
本実施例において、(7)式の条件を満たす瞬間自転軸はY1となり、ボール580は、駆動部材554,押圧部材602に対してすべらないで、瞬間自転軸Y1の回りに自転しつつ中心軸線Lの回りに公転できる。
ボールランプ機構630は、図26〜29に示す構造を成したものとすることができる。
押圧部材632は、概して有底円筒形状を成したものであり、底面634と筒部の内周面636との間にボール640が配設される。底面634,内周面636が、それぞれ、実施例8の傾斜壁面に対応し、底面634,内周面636によって溝が形成されると考えることもできる。
駆動部材644の端面646には、図27に示すように、切欠648が同じ位相を隔てて複数(3個)設けられる。
切欠648によって形成された切欠面650は、中心軸線Lに対して角度Φ(一定)傾斜し、かつ、図27,29に示すように中心軸線Lからの距離が円弧に沿って連続的に変化する形状を成している。
換言すれば、中心軸線Lに対する傾斜角度Φが一定に保持され、かつ、ボール640上の接点cと端面646との間の距離が円弧に沿って連続的に変化する形状、すなわち、切欠の大きさが漸変する形状を成している。
なお、切欠面650の中心軸線Lに対する傾斜角度Φは、π/2から直角基準平面(端面)646に対する傾斜角度Φ0を引いた角度に対応する(Φ=90°−Φ0)。
また、本実施例においては、押圧部材632に溝を形成する必要がなく、高度な部品精度が要求されないため、その分、コストを安くすることができる。
ボール640は、図28に示すように、押圧部材632の底面634,内周面636と駆動部材644の切欠面650との間に保持されるのであり、ボール上の点a,b,cが、それぞれ、押圧部材632の底面上の点634P、内周面上の点636P、切欠面上の点650Pと接する状態で保持される。
すなわち、ボール640は、半径方向の移動が防止される状態で支持されるのであり、駆動面650を含む面、底面634を含む面、内周面636を含む面によって、ボール640は、半径方向に囲まれることになる。
駆動部材644が中心軸線Lの回りに相対回転させられると、ボール640は、駆動部材644,押圧部材632に対してすべることなく、図28の瞬間自転軸Y2の回りに、自転しつつ中心軸線Lの回りに公転させられる。
本実施例においては、切欠面650,底面634,内周面636,ボール640等によりボールランプ機構630が構成される。
ボールランプ機構は、図30に示す構造を成したものとすることができる。
本実施例においては、駆動部材に形成された切欠の切欠面の形状が、実施例9における場合と異なる。
図30に示すボールランプ機構750において、駆動部材760の端面761に形成された切欠の切欠面762の中心軸線Lに対する傾斜角度Φ(Φ=90°−Φ0)は、円弧に沿って連続的に変化する。
ボール764は、駆動部材760と押圧部材766とによって保持されるが、駆動部材760の押圧部材766に対する相対回転に伴ってボール764に接する切欠面762の中心軸線Lに対する傾斜角度Φが大きくなる(切欠面762の端面761に対する傾斜角度Φ0が小さくなる)。そのため、ボールランプ機構750の作動時(ブレーキの作用作動時)において、駆動部材760の押圧部材766に対する相対回転に伴って、ボール764と切欠面762との接点762Pが半径方向に移動させられ(ボール764の頂点に近づき)、ボール764に作用する力の軸方向成分が大きくなる。その結果、ブレーキの作用時に、押圧部材766に軸方向の力を良好に付与することができる。
なお、切欠面の形状については、問わない。例えば、切欠面の半径方向の切欠深さが円弧方向で同じとすることもできる。
また、ドラムブレーキは、デュオサーボ式のものであってもよく、ブレーキはディスクブレーキであっても、ツーリーディング シュー型のドラムブレーキにも同様に適用することができる。
さらに、ランプ機構の傾斜溝の形状は問わない。ボールを保持する凹部をそれぞれ設けることもできる。
また、本発明は、上記実施例1〜10を適宜組み合わせた態様で実施することもできる。
また、上記ランプ機構250,300,350,400、518、550,600,630,750は、ドラムブレーキに限らず、ディスクブレーキに適用したり、車両のトランスミッションのパーキングロック機構、エンジンのクラッチ機構等に適用したり、広く工作機械に適用したりすることができる。
10:ドラムブレーキ 12:バッキングプレート 14:摩擦面 16;ドラム 17:アンカ部材 18:電動アクチュエータ 19:押付機構 20:ブレーキシュー 29:リターンスプリング 26:ブレーキライニング 44a,b,258a,355a,412a,552,602,632,766:押圧部材 52:回転入力部材 54:回転スライド部材 54,252,354,410,554,644,760:駆動部材 74,210:回転スライド機構 84:運動変換機構 90,250,350,400、518,550,600,630,750:ボールランプ機構 352:第1ボールランプ機構 353:第2ボールランプ機構 402:第1ボールランプ機構 402:第2ボールランプ機構 92,94,258,260,360,362,370,372,414,416,430,432:傾斜溝 96,266,353,374,418,434、580,640,764:ボール 262,264:傾斜面 302:ホルダ 502:ストッパ 508:電流センサ 510:ブレーキECU 520,522:突部 554,604:溝 558,650,762:駆動面 560,562,606,608:傾斜壁面 634:底面 636:内周面

Claims (10)

  1. (I)車両の車輪に設けられ、(a)その車輪と共に回転するブレーキ回転体と、(b)非回転体に保持された摩擦部材と、(c)その摩擦部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付機構とを備え、前記摩擦部材と前記ブレーキ回転体との摩擦係合により前記車輪の回転を抑制するブレーキと、
    (II)前記押付機構を作動させる電動モータと
    を含む電動ブレーキ装置であって、
    前記押付機構が、
    ハウジングと、
    前記摩擦部材に対向して設けられ、前記ハウジングに相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能に保持された押圧部材と、
    その押圧部材にランプ機構を介して係合させられた駆動部材と、
    前記電動モータにより回転させられる回転要素と、
    その回転要素と前記駆動部材との間に設けられたねじ機構を備え、前記回転要素の回転を直線移動に変換して前記駆動部材に出力する運動変換機構と、
    前記駆動部材を前記押圧部材に押し付けることにより、前記ランプ機構を復帰状態に維持する復帰維持部と
    を含み、前記ブレーキの作動時に、前記押圧部材に加えられる力が予め定められた設定値以下の場合に、前記ランプ機構が復帰状態に維持された状態で、前記回転要素の回転に伴って前記駆動部材が前記ねじ機構により直線移動させられ、前記押圧部材に加えられる力が前記設定値より大きくなると、前記ねじ機構がロックして、前記駆動部材が前記回転要素の回転に伴って回転させられることにより前記押圧部材に対して相対回転させられ、前記ランプ機構が作動させられることを特徴とする電動ブレーキ装置。
  2. 前記ブレーキが、前記ブレーキ回転体としてのドラムと、前記摩擦部材としての一対のブレーキシューとを含むドラムブレーキであり、前記押圧部材が、前記一対のブレーキシューに対向してそれぞれ設けられ、前記駆動部材が、それら一対の押圧部材のうちの一方に係合させられ、前記回転要素が前記一対の押圧部材の他方に相対回転可能に係合させられるとともに、前記軸方向に移動可能とされた請求項1に記載の電動ブレーキ装置。
  3. 前記回転要素が、(i)前記電動モータの回転を伝達する回転伝達機構に係合させられ、前記ハウジングに相対回転可能、かつ、前記軸方向に相対移動不能に保持された回転入力部材と、(ii)その回転入力部材に、相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能に保持された回転スライド部材とを含み、その回転スライド部材が前記他方の押圧部材に係合させられた請求項2に記載の電動ブレーキ装置。
  4. 前記ドラムブレーキが、前記一対のブレーキシューを非作用位置に付勢するリターンスプリングを含み、前記ねじ機構が、前記押圧部材に加えられる力が、前記リターンスプリングのセット荷重で決まる前記設定値より大きくなると、ロックする特性を有する請求項2または3に記載の電動ブレーキ装置。
  5. 前記駆動部材と前記押圧部材とが前記軸方向に延びた中心軸線回りに相対回転可能に保持されており、前記ランプ機構が、(a)前記駆動部材の前記押圧部材に対向する端面に、前記中心軸線を中心とした円筒面に沿って、かつ、前記中心軸線に直角な平面である直角基準平面に対して傾斜して形成された1つ以上の第1傾斜溝と、(b)前記押圧部材の前記駆動部材に対向する端面に形成され、前記第1傾斜溝と対を成す1つ以上の第2傾斜溝と、(c)それら1対以上の傾斜溝の間にそれぞれ1つずつ配設された1つ以上の転動体とを含み、前記駆動部材の端面と前記押圧部材の端面との形状を、それぞれ、前記第1,第2傾斜溝に沿って傾斜する傾斜面を有する形状とした請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
  6. 前記ランプ機構が、前記転動体を2つ以上有するとともに、前記駆動部材と前記押圧部材との間に設けられ、前記2つ以上の転動体を、互いに、相対回転可能、かつ、相対移動不能に保持するホルダを含む請求項5に記載の電動ブレーキ装置。
  7. 前記ランプ機構が、互いに直列に2つ以上設けられ、2つ以上のランプ機構の各々において、それぞれ、傾斜溝が、前記駆動部材の前記押圧部材に対する相対回転角度が同じ場合に前記押圧部材の相対移動量が同じとなる状態で、形成された請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
  8. 前記ランプ機構が、互いに直列に2つ以上設けられ、それら2つ以上のランプ機構のうちの2つのランプ機構の各々の傾斜溝が、前記2つのランプ機構のうち先に作動するランプ機構における方が後に作動するランプ機構における場合より、前記駆動部材の前記押圧部材に対する相対回転角度が同じ場合に前記押圧部材の相対移動量が大きくなる状態で、形成された請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
  9. 前記駆動部材と前記押圧部材とが前記軸方向に延びた中心軸線回りに相対回転可能に保持されており、前記ランプ機構が、前記駆動部材と前記押圧部材との間に保持された1つ以上の転動体を含み、
    当該電動ブレーキ装置が、前記電動モータに、前記駆動部材に加えられた回転力が、前記1つ以上の転動体を復帰位置に向かって転動させ得る大きさ以上である電流を供給した場合に、前記電動モータの回転角度が予め定められた設定角度以上である場合に、前記1つ以上の転動体のうちの少なくとも1つが前記復帰位置にない可能性があると判定する判定手段を含む請求項1ないし8のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
  10. 前記駆動部材と前記押圧部材とが前記軸方向に延びた中心軸線回りに相対回転可能に保持されており、前記ランプ機構が、1つ以上の転動体を含み、それら1つ以上の転動体の各々が、前記駆動部材と前記押圧部材とによって、3点で保持された請求項1ないし9のいずれか1つに記載の電動ブレーキ装置。
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