JP2010248614A - 溶融金属浄化装置 - Google Patents

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匡平 石田
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Abstract

【課題】高い浄化効率で安定した溶融金属の浄化装置を提供する。
【解決手段】磁場発生手段11と、電場発生手段12とを有し、溶融金属流路10を流れる介在物を含む溶融金属に、磁場および電場を作用させて溶融金属を浄化する。溶融金属流路10に沿って、磁場の向きが溶融金属の流れの向きに一致するように磁場発生手段11を配し、さらに電場の向きが該磁場の向きと直交する向きに一致するように電場発生手段11を配し、さらに溶融金属流路10の出側で、磁場の作用範囲内に、二股の分岐部10aを配設し、該分岐部あるいは該分岐部の下流側に、少なくとも一対の電極からなる分岐部電場発生手段13を電場の向きが磁場の向きに直交する向きに一致するように、配設する。これにより、分岐部での溶融金属流の乱れ、よどみにより、一旦分離された介在物が、再度浄化された溶融金属流に混入することによる浄化能の低下を防止することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、溶融亜鉛めっき浴等の溶融金属めっき装置等に好適な、介在物を含む溶融金属を浄化する溶融金属浄化装置に関する。
通常、被めっき板である金属板(金属帯板)への溶融金属めっきは、図7に示すような連続溶融金属めっき装置を使用して行われる。例えば、鋼帯(鋼板)に溶融亜鉛めっき処理を行う際には、鋼帯(金属板)Aをスナウト102を通り、溶融亜鉛めっき浴(溶融金属めっき浴)100a中に連続的に導き入れ、シンクロール101によって進行方向を上方に変更して、一対のピンチロール103でめっき浴から引き出し、めっき厚調整手段104により溶融亜鉛めっき層の厚さを調節して、溶融亜鉛めっき鋼板とする。この場合、溶融亜鉛めっき浴100a中では、鋼帯や浴中機器から溶出したFeが、溶融亜鉛めっき浴の亜鉛ZnやアルミニウムAlと反応して、一般にドロスと呼ばれる介在物を生成する。浴の底部に堆積する介在物(FeZn7、FeZn13)はボトムドロスと呼ばれ、また浴面に浮上する介在物(Fe2Al5)はトップドロスと呼ばれる。大きさはいずれも、数μm〜数百μmである。
溶融亜鉛めっき浴内の流動や浴面の波立ち等によって、これらのトップドロスやボトムドロスが、浴中を浮遊し、溶融亜鉛めっき浴を通過中の鋼帯表面上に付着することがある。特に、ボトムドロスは溶融亜鉛との比重差が小さいことが多いため、一度浴中に舞い上がると再び沈降するまで数時間を要する。浮遊したこれらドロスの付着は、めっき鋼板の外観を著しく損ない、めっき品質欠陥となり、めっき鋼帯の歩留低下を招く。
このようなめっき浴中のドロスの浮遊を防止するためには、めっき浴内を攪拌しないように操業することが考えられる。しかし、実操業上は、所望のめっき仕様を確保するために、ラインスピードの調整や浴中機器の位置調整などを優先するため、めっき浴内の流動を乱してしまうことが多い。
また、ドロスは、例えば、めっき浴中で鋼帯の方向を変えるシンクロールや、めっき浴中で鋼帯の振動・C反りを矯正するためのサポートロールなどの浴中機器にも析出する。これらのロール等にドロスが析出すると、鋼帯への押し疵や擦り傷などの表面欠陥の原因となる。このため、製造ラインを停止して、ドロスが析出した浴中機器を取り替えることが必要となる。製造ラインの停止は、当然ながら、生産コストの高騰を招く。
トップドロスによる上記したような問題を回避するため、従来から、トップドロスを操業中に定期的に柄杓状の道具で掻き出すことが行われていた。しかし、この掻き出し作業自体が、めっき浴面を乱し、ドロスの生成を促進することになる場合があり、また、この掻き出し作業は、重筋作業であるとともに、作業者により掻き出しに差が生じるという問題がある。
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、トップドロスの回収を機械化した、トップドロス分離回収装置が提案されている。特許文献1に記載されたトップドロス分離回収装置では、トップドロスを撹拌羽根付き回転軸によりフラックスと撹拌混合し、フラックスと混合したトップドロスを、圧空噴射ノズルから噴射された圧空でアッシュとして飛散させて、防塵器で吸引回収する。特許文献1に記載された技術では、トップドロスとフラックスとを反応させて回収容易な状態にするために、攪拌容器をめっき浴内に配置する必要がある。しかし、撹拌容器をめっき浴内に設置し、めっき浴を撹拌することは、逆にドロス生成を促進させてしまうという懸念がある。
また、特許文献2には、アームの先端にドロス捕集網を取り付け、溶融金属めっき槽中のトップドロスを除去するロボットを設け、掻き出し作業をロボット化したドロス除去装置が提案されている。しかし、特許文献2に記載された技術では、予めプログラムされた掻き出し動作を繰り返すだけで、掻き出しきれずに浴内にドロスが残る場合があるという問題があった。
また、ボトムドロスの除去は、通常、数週間に1回程度の浴中機器のメンテナンス時に、ポンプや重機で排出している。しかし、ボトムドロスは、時間が経つと浴底に固着してしまうため、このような数週間に1回程度しか実施できない方法では、ボトムドロスの完全な除去はできていないのが実状である。
このようなボトムドロス、あるいはトップドロスの大部分は浴中に浮遊するドロスに起因しており、このような浴中に浮遊するドロスを除去する方法として、例えば、特許文献3には、セラミックフィルターで溶融金属を濾過するとともに、ガスを吹込みフィルターを通過させてガスを微細化して、浴中を浮上させることにより、微細ドロスを浴面に速やかに浮上させ、分離除去する、溶融めっき金属の介在物除去方法が記載されている。しかし、特許文献3に記載された技術では、浴中にセラミックフィルタを配置する必要があり、フィルター自体が目詰まりしやすいことや、フィルターの保守・交換等に多大の労力を要するという問題がある。
また、特許文献4には、溶融金属中の固形介在物を遠心分離する機能を有する装置と溶融金属中の固形介在物を浮上分離する機能を有する装置とを備え、溶融金属を該二つの装置内を通過させ、溶融金属中の固形介在物を除去し、清浄化した溶融金属を溶融金属めっき槽内へ還流する、溶融金属めっき方法が提案されている。特許文献4に記載された技術では、遠心分離効果を得るために、溶融金属の流速を大きくする必要があるが、大きな流速を有する溶融金属をそのまま、めっき浴槽内に還流すると、めっき浴内の流動を撹乱するという問題があった。そのため、還流する溶融金属の流速を低減するために更なる装置の付加が必要となり、多大の投資を必要とするという問題がある。
また、特許文献5には、溶融亜鉛めっき浴槽と、その近傍に少なくとも2本の通管でめっき浴槽と循環連通する補助ポットとを設け、めっき浴槽から補助ポットに溶融亜鉛を流入させる通管に設けた冷却装置で溶融亜鉛を冷却し、補助ポット内に溶融亜鉛中の浮遊ドロスを沈下させて浮遊ドロスの無い溶融亜鉛として、加熱装置を設けた他の通管からめっき浴槽内に循環させる、連続溶融亜鉛めっき槽内に浮遊ドロスを生成せしめない方法が提案されている。特許文献5に記載された技術は、沈殿法と呼ばれるものであるが、しかし、特許文献5に記載された技術ではドロスは十分に沈殿除去されないという問題があった。
また、特許文献6には、溶融亜鉛めっき槽とそれに隣接して設けられたドロス沈殿槽とを有し、溶融亜鉛めっき槽の亜鉛融液を貯留すべき部分の容量、ドロス沈殿槽の亜鉛融液を貯留すべき部分の容量とをそれぞれ所定範囲の容量としたうえで、溶融亜鉛めっき槽とドロス沈殿槽との間で亜鉛融液を移送する移送手段の移送量を限定したドロス除去装置が提案されている。これにより、沈殿法を用いた、ドロスの除去効率が向上するとしている。
また、上記した技術とは別に、特許文献7には、電磁アルキメデス効果を利用した溶融金属から不純物元素を除去する方法が記載されている。特許文献7に記載された技術は、溶融金属に対して、除去すべき不純物と金属間化合物を形成する元素を添加して金属間化合物を形成させ、溶融金属を細管又は細孔を有する細孔体に保持、または流通させながら直流電流を通じ、更に直流電流とほぼ直流方向に直流磁界をかけて電磁気力を発生させ、これにより金属間化合物を溶融金属から分離する技術である。
実開昭60−122358号公報 特開平5−302157号公報 特開昭62−202070号公報 特開平5−230606号公報 特開昭53−88633号公報 特開平9−104957号公報 特開平08−60263号公報
特許文献5、6に記載された技術はいずれも、溶融亜鉛めっき槽に隣接して設けられた沈殿槽(補助ポット)で、浮遊ドロスを溶融亜鉛とドロスとの比重差を利用して分離、除去しようとするものである。しかし、特許文献5、6に記載された技術では、溶融亜鉛とドロスとの比重差が小さいため、分離に長時間を要するという問題がある。分離に長時間を要すると、溶融亜鉛の温度が低下し、ドロスが生成しやすくなる。そのため、特許文献5、6に記載された技術では、溶融亜鉛を加熱・保温する必要があり、大掛かりな加熱・保温装置を必要とするという問題があった。
また、特許文献7に記載された技術は、不純物元素を含有する溶融金属に除去すべき不純物元素と金属間化合物を形成する元素を添加し、電場と磁場とを作用させ、金属間化合物を溶融金属から分離させて、溶融金属から不純物元素を除去しようとするものであるが、主としてアルミニウムあるいはアルミニウム合金を対象としており、除去すべき不純物元素と金属間化合物を形成する元素を添加することを必須の要件としているうえ、高い不純物元素除去効率を安定して確保できないという問題があった。
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、溶融亜鉛めっき鋼板製造ラインにおける溶融亜鉛めっき浴等の、介在物を含む溶融金属から介在物を容易に除去でき、高い浄化効率で安定して溶融金属を浄化できるとともに、点検・保守が容易なメンテナンス性に優れた溶融金属浄化装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、介在物を含む溶融金属に、電場と磁場を作用させて溶融金属から介在物を分離・除去し、溶融金属を浄化する分離除去手段について鋭意研究し、本発明者らの一人は、電磁アルキメデス効果を利用した分離除去手段を有する溶融金属溶融金属めっき装置を特開2008−231526号公報として、すでに提案している。
介在物を含む溶融金属に、例えば、図4に示す向きに電場と磁場を作用させると、溶融金属にはフレミングの法則に従った図4に示す向きに電磁力が作用する。図4では、電場は溶融金属の流れの向きを横切る向きに、磁場は溶融金属の流れと平行する向きに、それぞれ作用させている。なお、磁場はコイル状電磁石で発生させている。
ここで、溶融金属と介在物は一般に強磁性体でないから、磁場による磁化力の作用は無視できる。介在物は、酸化物あるいは金属間化合物であり、溶融金属よりも電気伝導度が小さいことがほとんどである。介在物は電気伝導度が小さい、すなわち電気抵抗が大きいため、電場は、介在物には作用せず、電磁力も働かない。このため、介在物は、介在物を取り巻く溶融金属から介在物表面に電磁力を受けるが、反作用の合力として電磁力とは逆向きの力を受けることになる。この現象はあたかも、重力場における浮力の作用と同じであるため、電磁アルキメデス効果と呼ばれ、作用する力は電磁アルキメデス力と称されている。図4に示す向きに電場と磁場を作用させると、介在物には、電磁アルキメデス力が一方向に作用し、図4に示すように、介在物を溶融金属流内の一方の領域に濃化・偏析させることができる。そして、電場と磁場を作用させる分離除去手段の出側の溶融金属流路に二股の分岐部を設けることにより、介在物が分離除去され浄化された溶融金属と、介在物が濃化・偏析した溶融金属に分離でき、介在物を含む溶融金属を容易に浄化することができる。
このようなことから、本発明者らは、上記した装置で、介在物を溶融金属内の一方の領域に濃化・偏析させるには、強力な磁場発生装置と強力な電場発生装置を設置することに加え、分離除去手段の出側の溶融金属流路に設置した二股の分岐部で、浄化された溶融金属と介在物が濃化した溶融金属とを確実に分離することが肝要であることに思い至った。というのは、分離除去手段の出側の溶融金属流路に設置した二股の分岐部で、流れの乱れやよどみが生じ、一旦分離された、浄化された溶融金属と介在物が濃化した溶融金属とが、再び混じりあう場合があり、結果として浄化能が低下する場合がある。
そこで、本発明者らは、配管分岐部近傍の溶融金属にさらに効果的に電磁アルキメデス力が作用するように、配管分岐部を磁場が作用する領域に設置し、さらに、電場を、電磁アルキメデス力が分岐部の分岐方向に有効に作用するように、作用させることに思い至った。
例えば、図2(a)に示すように、配管分岐部をT字分岐とし、磁場の作用下に設置し、さらに分岐部中央付近に電極を設置し、紙面を表から裏への向きに電場を作用させると、図2(b)に示すように、分岐方向に電磁アルキメデス力が作用し、溶融金属中の介在物が分岐部の一方の側(介在物濃化側)に濃化される。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)磁場発生手段と、電場発生手段とを有し、溶融金属流路を移送される介在物を含む溶融金属に、磁場および電場を作用させて溶融金属を浄化する溶融金属浄化装置であって、前記溶融金属流路内では、前記磁場発生手段を、磁場の向きが溶融金属の流れの向きに一致するように配し、さらに前記電場発生手段を、電場の向きが該磁場の向きと直交する向きに一致するように配し、さらに前記溶融金属流路の出側で、前記磁場の作用範囲内に、二股の分岐部を配設し、該分岐部あるいは該分岐部の下流側に、前記電場発生手段に加えてさらに、分岐部電場発生手段として少なくとも一対の電極を、該少なくとも一対の電極による電場の向きが前記磁場の向きに直交する向きに一致するように、配設し、前記介在物を溶融金属の分岐流の一方の流れに濃化・偏析させることを特徴とする溶融金属浄化装置。
(2)(1)において、前記二股の分岐部が、T字状の分岐部であることを特徴とする溶融金属浄化装置。
(3)(1)において、前記二股の分岐部が、Y字状の分岐部であることを特徴とする溶融金属浄化装置。
本発明によれば、介在物を含む溶融金属から介在物を分離し、溶融金属を浄化する能力が飛躍的に向上し、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、連続溶融金属めっきラインの溶融金属めっき浴を簡便に浄化でき、介在物性欠陥の発生を防止して、優れた表面品質を有する溶融金属めっき金属板を容易に製造できるという効果もある。また、本発明によれば、溶融金属めっき浴中機器の点検・保守の頻度が低減して、メンテナンスコストが大幅に低減できるという効果もある。
本発明の溶融金属浄化装置の構成の一例を模式的に示す説明図である。 本発明の溶融金属浄化装置の分岐部近傍の構成の一例を模式的に示す説明図である。 本発明の溶融金属浄化装置の分岐部近傍の構成の一例を模式的に示す説明図である。 磁場および電場による、溶融金属からの介在物の分離機構を模式的に説明する説明図である。 本発明の実施例で使用した連続溶融亜鉛めっき装置の構成を模式的に示す説明図である。 本発明の実施例で使用した電場発生手段の複数の電極対にそれぞれ付加した電流値を示す。 通常の連続溶融亜鉛めっき装置における、溶融亜鉛めっき浴中のドロス生成を模式的に説明する説明図である。
本発明の溶融金属浄化装置1は、介在物を含む溶融金属が移動する溶融金属流路10と、磁場発生手段11と、電場発生手段12とを有する。溶融金属流路10の出側には、二股の分岐部10aを有する。本発明では、磁場発生手段11は、溶融金属の流れの向きにほぼ一致して、溶融金属に磁場を作用させることができるように配設することが好ましい。また、磁場発生手段11は、図1に示すように、溶融金属流路10、分岐部10aおよびその下流側まで磁場の作用が及ぶように配設するものとする。一方、電場発生手段12(12a,12b)は、電場の向きが磁場の向きに直交する向きとなるように(溶融金属の流れの向きに直交するように)、配設する。
なお、電場発生手段12は、溶融金属流路10に沿って、一対の点電極12a,12bを多数対配設することが好ましい。これにより、ほぼ均一な電場を溶融金属に作用させることができる。点状の電極とすることにより、図1に示すように、電極を配管の外部側に接合設置することが可能となり、配管内部に設置した場合のように、異物の付着、電極腐食といった問題を回避することが可能となる。これにより、溶融金属に、安定して電場を作用させることができる。なお、使用する電極の形状は、これに限定されないことは言うまでもなく、板状あるいは曲板状、線状としてもよい。
本発明では、溶融金属流路10の出側で、磁場が作用する範囲内に、二股の分岐部10aを配置する。これにより、溶融金属流路10の一方の側には介在物が濃化・偏析した溶融金属が、他方には浄化された溶融金属が、分離され、介在物が濃化・偏析した溶融金属は回収され、浄化された溶融金属は還流されることになる。
本発明では、分岐部10aに、図1、図2(a)に示すように、その中央部近傍、あるいはさらにその下流側に、少なくとも1対の、好ましくは点状の電極13a,13bからなる分岐部電場発生手段13を設置する。この分岐部電場発生手段13により発生する電場の向きは、磁場の向きに直交する向きとすることは言うまでもない。これにより、分岐部近傍での流れの乱れやよどみで、介在物が浄化された溶融金属流に混合されることを防止でき、浄化能の向上が図れる。なお、更なる浄化能の向上のために、電場発生手段としては、図3に示すように分岐部近傍で、複数対の電極を分岐部電場発生手段として設置してもよい。複数対の電極を設置して電場の作用範囲を拡大することにより、溶融金属流の流れの乱れやよどみによって、浄化された溶融金属流に流れ出た介在物を、介在物が濃化した溶融金属流へ戻すことが可能となる。
また、電場の強さは、溶融金属中の介在物の濃度、粒径等に応じて適宜決定すればよく、とくに限定されないが、実操業という観点から電流密度が、1〜100,000A/m2とすることが好ましい。
さらに、本発明では、溶融金属流路10を、溶融金属の流れの向きが磁場の向きに平行する向きにほぼ一致するように構成することが好ましい。
なお、磁場発生手段11としては、永久磁石、電磁石、超伝導電磁石あるいは超伝導バルク磁石とすることが好ましいが、図1では、磁場発生手段11は、コイル状の電磁石を用いて、磁場の向きが溶融金属流の流れの向きに一致するように、溶融金属流路を直管状に構成した例を示す。
なお、磁場の強さは、溶融金属中の介在物の濃度、粒径等に応じて適宜決定すればよく、とくに限定されないが、磁束密度が、0.01〜30Tとなる磁場を付与することが設備構成の観点から好ましい。
上記したように本発明の溶融金属浄化装置では、電場と磁場は常に直交して溶融金属に作用する。したがって、図2に示すように、本発明における溶融金属流路10および分岐部10aにおいては、溶融金属には電磁力が、介在物には電磁アルキメデス力が常に働き続けることになる。そのため、溶融金属流路10の一方の領域、および分岐部10aの一方の分岐側には、効率よく容易に、介在物が濃化・偏析することになる。
なお、更なる浄化能の向上のためには、分岐部10aは、図1に示すようなY字型、あるいは図2に示すようなT字型とすることが好ましい。Y字型やT字型の分岐部とすることにより、溶融金属中の介在物の分離が極めて容易となる。
なお、本発明の溶融金属浄化装置は、配管流路の終端部に、複数段、直列に配設してもよく、浄化能力をさらに向上させることができる。
つぎに、上記した本発明の溶融金属浄化装置を用いて、介在物を含む溶融金属を浄化する溶融金属の浄化方法について説明する。
本発明の溶融金属の浄化方法では、介在物を含む溶融金属を、溶融金属めっき浴等の溶融金属浴の外に、ポンプ等の排出手段を用いて、一旦排出し、移送手段である溶融金属流路(配管流路)等を用いて移送し、配管流路等の終端に本発明の溶融金属浄化装置を配設し、介在物を含む溶融金属に電場と磁場とが直交するように作用させて、溶融金属流路の一方の領域に、介在物を濃化・偏析させる。そして、配管流路の出側に配置された二股の分岐部で、一方の領域の、介在物が濃化・偏析した溶融金属と、他方の領域の、介在物が低減した溶融金属とに分離する。介在物が低減され浄化された溶融金属は還流され、一方の介在物が濃化・偏析した溶融金属は回収されることが好ましい。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
図5に示す連続溶融金属めっき装置の移送手段(配管流路)21の終端に配設される分離手段1として、図1に示す溶融金属浄化装置1を用いて、溶融亜鉛めっき浴(溶融金属)の浄化を行いながら、鋼板(鋼帯)(板厚0.1〜3.0mm×板幅600〜2400mm)に溶融亜鉛めっきを連続的に施し、溶融亜鉛めっき鋼板とした。なお、ポンプPは、電磁誘導式ポンプとした。使用した本発明の溶融金属浄化装置1では、溶融金属流路の出側にT字状の分岐部10aを配設した。
使用した本発明の溶融金属浄化装置1では、磁場の向きを溶融金属の流れの向きと一致するように、磁場発生手段11を設けた。使用した磁場発生手段11は、冷凍機を使用した無冷媒型の超伝導磁石とした。使用した磁石はコア内径:100mmφ、コア中心における最大磁束密度:10Tであるが、磁束密度の調整が可能な磁石とした。なお、超伝導磁石は耐熱性が低いため、水冷ジャケット配管を用いた。
また、使用した本発明の溶融金属浄化装置1では、電場の向きを磁場と直交する向きに一致するように、電場発生手段12、分岐部電場発生手段13をそれぞれ配設した。使用した電場発生手段12は、一対の点状の電極12a,12bを溶融金属流路10の配管に沿って10対配設する構成とし、さらに分岐部電場発生手段13は、分岐部10aの中央部に一対の点状の電極13a,13bを配設する構成とした。なお、電場発生手段12には、図6に示す電流値となるように、各電極対に電流を流した。
また、分岐部電場発生手段13の電極13a,13b間には10Aの電流を流した。
上記した電場、磁場の作用により、本発明の溶融金属浄化装置1の、溶融金属流路の一方の領域には、介在物が濃化・偏析した溶融金属が、他方の領域には、浄化された溶融金属が分離された。出側に配設した分岐部10aにより、介在物が濃化・偏析した溶融金属と、浄化された溶融金属との二つの流れに分離された。
なお、移送手段である配管流路には、配管径:30mmφのSUS鋼管を使用した。また配管流路には、保熱用のヒータを多数巻きつけ、断熱材を使用し保熱対策とした。また、溶融金属の移送速度は2 l/minとした。
本発明の溶融金属浄化装置を用いて浄化された溶融亜鉛と、浄化前の溶融金属めっき浴とについて、サンプルを凝固させ、凝固したサンプルを切断し、光学顕微鏡(倍率:50倍)を用いてドロス分布密度を測定し、含まれる介在物量を算出した。なお、サンプル採取の時期は、溶融金属浄化装置1を通過する溶融亜鉛量を、ポンプの駆動電流と経過時間から計算し、溶融亜鉛めっき浴の全溶融亜鉛量が1回通過した場合に相当する時期(「1回通過」)および5回通過した場合に相当する時期(「5回通過」)とした。その結果、浄化された溶融亜鉛に含まれる介在物量は、浄化前の溶融亜鉛めっき浴中の介在物量(基準:1.0)に比べ、「1回通過」では0.87、「5回通過」では0.11と大幅に減少していた。本発明の溶融金属浄化装置を用いることにより溶融亜鉛が顕著に浄化されることが分かる。
1 分離手段(溶融金属浄化装置)
10 溶融金属流路(配管流路)
10a 分岐部
11 磁場発生手段
12 電場発生手段
13 分岐部電場発生手段
12a,12b、13a,13b 電極
100 溶融金属
100a 溶融金属めっき浴
101 シンクロール
102 スナウト
103 ピンチロール
104 めっき厚調整手段
21 排出・移送手段(溶融金属流路、配管流路)
22 回収・搬送手段
23 還流・移送手段

Claims (3)

  1. 磁場発生手段と、電場発生手段とを有し、溶融金属流路を移送される介在物を含む溶融金属に、磁場および電場を作用させて溶融金属を浄化する溶融金属浄化装置であって、前記溶融金属流路内では、前記磁場発生手段を、磁場の向きが溶融金属の流れの向きに一致するように配し、さらに前記電場発生手段を、電場の向きが該磁場の向きと直交する向きに一致するように配し、さらに前記溶融金属流路の出側で、前記磁場の作用範囲内に、二股の分岐部を配設し、該分岐部あるいは該分岐部の下流側に、前記電場発生手段に加えてさらに、分岐部電場発生手段として少なくとも一対の電極を、該少なくとも一対の電極による電場の向きが前記磁場の向きに直交する向きに一致するように、配設し、前記介在物を溶融金属の分岐流の一方の流れに濃化・偏析させることを特徴とする溶融金属浄化装置。
  2. 前記二股の分岐部が、T字状の分岐部であることを特徴とする請求項1に記載の溶融金属浄化装置。
  3. 前記二股の分岐部が、Y字状の分岐部であることを特徴とする請求項1に記載の溶融金属浄化装置。
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