以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は本発明の衛生洗浄装置の第1実施形態を示す外観斜視図であり、図2は図1に示す衛生洗浄装置の制御構成を示すブロック図である。
図1及び図2に示すように、衛生洗浄装置100は、便座400を有する便座本体200を有している。便座本体200には、便座400及び蓋部500が取り付けられており、蓋部500が便座400に対して開閉可能となっている。便座本体200は、便座400がトイレ室(toilet)内に設置された便器700上に位置した状態で固定され、便座400は、便座本体200が固定された状態で蓋部500とともに便器700に対して開閉可能となっている。さらに、便座本体200には、用便後の局部を温水を用いて洗浄するための洗浄ノズル40及び洗浄水供給機構(図示せず)を含む洗浄装置が設けられている。便座本体200には、制御部90が設けられ、洗浄装置の動作制御や便座400の温度制御等の衛生洗浄装置100の各部の動作制御を行う。なお、制御部90は、1つの制御部を有し、当該1つの制御部が集中制御することとしてもよいし、複数の制御部を有し、それぞれが分散制御することとしてもよい。
図2に示すように、便座400には、内部に便座ヒータ450が設けられており、便座400を電気的に加熱することにより便座表面を暖める。さらに、便座400の内部には、便座400の温度を検知する便座温度検知部401aが設けられており、便座温度検知部401aで検知された便座温度を制御部90に送っている。便座温度検知部401aは例えばサーミスタにより実現される。
衛生洗浄装置100は、便座本体200とは別体に設けられ、人体の存否を検出する入退室検出器600aを有している。入退室検出器600aは、トイレ室の入口等に取り付けられており、内蔵電池601により駆動されて、トイレ室への使用者の入退室を検出する。より具体的には、入退室検出器600aは、内蔵電池601で駆動される第1遠隔器600(入退室検出装置)に設けられている。入退室検出器600aは、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入退室検出器600aが人体で反射された赤外線を検知することにより、使用者がトイレ室に入室したことを検出し、赤外線が反射されなくなったことを検知することにより、使用者が退室したことを検出する。
第1遠隔器600は、入退室検出器600aで検知された入退室情報を便座本体200へ送る第2送信器として機能する送信器603と図示されない制御器(例えば、マイクロコンピュータで構成される)とを有しており、この制御器によってその動作が制御される。入退室検出器600aは、入室又は退室を検出した場合、入室信号又は退室信号を送信器603を用いて便座本体200へ送っている。より具体的には、入退室検出器600aが入室を検出した場合、入室情報とともに後述する室温検知器602で検知された室温情報及び内蔵電池601の電圧状態に応じた電池情報を含む信号を入室信号として便座本体200へ送信している。便座本体200には、第1遠隔器600からの信号を受信する受信部403が設けられている。
さらに、衛生洗浄装置100は、便座本体200とは別体に設けられた室温検知器602を有している。室温検知器602は、第1遠隔器600に設けられており、内蔵電池601を電源として動作する。すなわち、第1遠隔器600は、室温検知装置としても機能する。室温検知器602は内蔵電池601を電源として動作し、室温検知器602の周囲の温度を室温情報として第1送信器としても機能する送信器603を用いて便座本体200へ送っている。
なお、入退室検出器600aの検出精度は室温によって変化するため、室温検知器602又はその他の室温検知器を用いて検知した周囲の温度を用いて入退室検出器600aの検出結果を制御してもよい。
なお、本実施形態における衛生洗浄装置100は、内蔵電池(図示せず)で駆動され、便座温度の設定や洗浄開始又は停止等の各種操作を行う第2遠隔器300を有している。便座本体200の受信部403は、第2遠隔器300からの信号も受信可能となっている。
制御部90は、例えばマイクロコンピュータ及びその周辺回路等で構成されており、便座温度検知部401aで検知された便座温度及び室温検知器602で検知された室温(室温検知器602の周囲の温度)に基づいて便座ヒータ450への通電量を制御している。具体的には、便座本体200は、制御部90に接続され、便座ヒータ450を駆動するヒータ駆動部402を有しており、制御部90は、ヒータ駆動部402を制御することにより、便座ヒータ450への通電量を制御する。
本実施形態において、便座本体200には、正面上部に使用者の着座を検知する着座センサ610が設けられている。着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610が人体で反射された赤外線を検知することにより、使用者が便座400に着座しようとして接近したことを検知する。着座センサ610は、人体で反射された赤外線を検知した後、赤外線を検知しなくなった場合、使用者が便座400から立ち上がって立ち去ったことを検知する。
ここで、入退室検出器600aを用いた便座温度制御について説明する。図3は便座ヒータ加熱時における時間と便座温度との関係を示す図である。
使用者による使用時(着座時)以外においては、便座400を暖める必要はないため、便座ヒータ450の通電量は0でも構わないが、図3に示すように、室温が低い場合(図3の例においては5℃)、便座400の便座表面の温度は室温と略同じ温度となる。特に、便座400が金属により形成されている場合は、顕著である。このような状態において、入退室検出器600aが使用者の入室を検出すると、便座本体200へ入室信号を送信する。便座本体200の制御部90は、入退室検出器600aから送られてきた入室信号に基づいて便座400の温度を所定の温度まで上昇させるように便座ヒータ450の通電量を制御する(時刻ta)。このとき制御部90は、便座温度検知部401aの測定温度値、及び予め記憶された便座設定温度に基づいたヒータ制御パターンを用いて便座ヒータ450の通電量を制御する。制御部90は、ヒータ制御パターンおよび制御部90に内蔵されたタイマ(図示せず)による時間情報に基づいてヒータ駆動部402の駆動時間及び駆動熱量を制御する。これにより、便座400の温度が設定された温度へ上昇する。
ここで、使用者がトイレ室に入室してから便座400に着座するまでに要する時間は6秒程度である(時刻tb)。従って、時刻tbから時刻tcまでの間に便座400の温度を所定の温度まで上昇させる必要がある。ここで、所定の温度は、少なくとも使用者が便座400に接触しても冷たく感じることのない冷感限界温度Tcとするのが好ましい。ところが、室温が低い場合、図3において破線で示すように、時刻taにおいて室温と略同じ温度から冷感限界温度Tcまで上げるには、時刻tbより遅い時刻tcまでかかってしまう。従って、使用者が便座400に着座した際の時刻tbにおいては、まだ冷感限界温度T1には達しておらず、使用者が冷たいと感じてしまい、使用者に不快感を与える結果となる。
そこで、便座本体200の制御部90は、人が入室していない待機時において予め設定された待機温度(図3の例においては18℃)に設定している。これは、時刻taから時刻tbまでの間に便座400の温度を冷感限界温度Tcまで上昇可能な温度を待機温度として設定することを意味する。従って、図3において実線で示すように、使用者が入室してから便座400に着座するまでの間に待機温度から冷感限界温度Tcへの温度上昇制御を行うことができるため、使用者が冷たいと感じることを十分に防止することができる。
さらに、上述した通り、使用者が実際に着座する便座400の表面は、便座温度検知部401aが設けられる便座400の内部に比べて外気にさらされている分、熱が逃げ易いため、便座温度検知部401aで検知された便座400の温度と便座表面の温度とは一致しない場合が生じ得る。すなわち、例えば同じ待機温度に設定していても室温が高ければ便座400の表面の温度は18℃より高くなる。従って、室温検知器602で検知された室温に応じて便座ヒータ450の通電量を制御することにより、便座400の表面温度を同じ待機温度に保持することができる。
このように待機温度を一定に保持するために、便座ヒータ450の通電量を室温の変化に応じて精密に制御することにより、無駄な通電を防ぎ、省エネルギー化することができる。また、待機温度を一定に保持することにより、便座400の温度上昇制御後(時刻tb後)の便座400の表面温度も室温によらず一定に制御することができる。
具体的には、例えば、便座400の表面温度を18℃に保持したい場合、室温検知器602が検知した室温が12℃以下の温度であれば、便座温度検知部401aで検知される温度が20.5℃となるように制御する。また、室温検知器602が検知した室温が12℃を超えた温度から室温の上限温度(例えば19.5℃)までの間の温度であれば、便座温度検知部401aで検知される温度が20.5℃未満の所定の温度(例えば19.5℃)となるように制御する。なお、ここでは室温に応じて2段階に制御する例について説明したが、より多くの段階に制御してもよいし、室温に対してリニアに制御することとしてもよい。
ここで、入退室検出器600aの内蔵電池601が消耗等により電圧低下した場合の制御について説明する。図4は図1に示す衛生洗浄装置の入退室検出器における制御の流れを示すフローチャートである。図5は図1に示す衛生洗浄装置の制御部における制御の流れを示すフローチャートである。
まず、図4に示すように、入退室検出装置(第1遠隔器600)は、内蔵電池601の電圧Vを定期的に検出し、内蔵電池601の電圧Vが所定の電圧値V1未満か否かを監視する(ステップSA1)。内蔵電池601の電圧Vが所定の電圧値V1未満となった場合(ステップSA1でYes)、第1遠隔器600(正確にはその制御器)は、電池切れ状態になったと判断し、電池切れ状態であることを示す電池切れ情報を含む電池切れ信号を作成し、送信器603によって制御部90へ電池切れ信号を送信する(ステップSA2)。
一方、図4に示すように、制御部90は、電池切れ信号を受信したか否かを監視しており(ステップSB1)、電池切れ信号を受信すると(ステップSB1でYes)、便座400が電池切れ信号受信前における待機温度より高い所定の設定温度となるように、便座ヒータ450への通電量を制御する(ステップSB2)。
制御部90は、後述する電池正常信号を受信したか否かを監視し(ステップSB3)、電池正常信号を受信しない場合(ステップSB3でNo)、上記所定の設定温度となるように、便座ヒータ450への通電量を制御する(ステップSB2)。すなわち、一度電池切れ信号を受信した後は、電池正常信号を受信するまで、電池切れ信号受信前における待機温度より高い所定の設定温度となるように、便座ヒータ450を制御する。
また、図4に示すように、内蔵電池601の交換等により、内蔵電池601の電圧Vが所定の電圧値V1以上となった場合(ステップSA1でNo)、入退室検出器600aは、人体が検出された入室状態となるか否かを監視し(ステップSA3)、人体が検出された場合(ステップSA3でYes)、第1遠隔器600は、使用者が入室したものとして入室信号を便座本体200へ送信する(ステップSA4)。この入室信号は、内蔵電池601の電圧Vが所定の電圧値V1以上である正常時における信号であり、制御部90は、入室信号を電池正常信号として扱う。すなわち、制御部90は、図5に示すように、入室信号を受信すると、電池正常信号を受信したものと判定し(ステップSB3でYes)、室温検知器602で検知され、便座本体200へ送信された信号に含まれる室温情報を用いて便座ヒータ450を制御する(ステップSB4)。続いて、入退室検出器600aは、図4に示すように、入室信号を送信した後、人体が検出されなくなる退出状態となるか否かを監視し(ステップSA5)、人体が検出されなくなった場合(ステップSA5でYes)、第1遠隔器600は、使用者が退室したものとして退室信号を便座本体200へ送信する(ステップSA6)。このように、制御部90は、電池正常信号が送られてくる度に、室温検知器602で検知された室温情報(すなわち、更新された室温情報)に基づいて便座ヒータ450への通電量を制御する。
入退室検出器600aが電池切れ状態か否かによる便座ヒータ450への通電量制御の違いについてより詳しく説明する。図6は図1に示す衛生洗浄装置において使用者が入室してからの時間経過に対する便座温度の関係の一例を示す図である。
図6に示すように、通常時、使用者が入室して入退室検出器600aから入室信号が送信されると(時刻ti)、制御部90は、便座400の温度が冷感限界温度を超え、使用者が設定可能な使用者設定温度となるように便座ヒータ450への通電量を制御する(昇温制御を行う)。本実施形態においては、使用者設定温度は、高、中、低の3段階であり、使用者は何れかを選択設定可能に構成されている。図6においては「中」に設定されている。なお、使用者設定温度は所定温度刻みに複数段設定可能に構成されてもよいし、設定温度の変更を連続的に行い得る構成としてもよい。
その後、便座400の温度が使用者の設定温度に到達すると(時刻tj)、制御部90は、便座400の温度が当該使用者設定温度に保持されるように便座ヒータ450への通電量を制御する。この時刻tjの前後において使用者は着座する。さらに、使用者が衛生洗浄装置100の使用後、便座400から離座すると、着座センサ610が使用者の離座を検知して制御部90に離座情報を送る。制御部90は、離座情報を受けた場合(時刻tk)、通常時においては、便座400の温度が待機温度に低下するように便座ヒータ450を制御する(図6において破線で示す)。
ところが、入退室検出器600aを有する第1遠隔器600が電池切れ状態となると、その後、入室信号が送信されないため、制御部90は、昇温制御を行うことができない。そこで、制御部90は、電池切れ信号を受信すると、使用者の離座を検知しても、便座400が電池切れ信号受信前における待機温度より高い予め使用者が設定した使用者設定温度(図6においては設定温度「中」)となるように、便座ヒータ450への通電量を制御する(図6の時刻tk以降において実線で示す)。これにより、第1遠隔器600が電池切れ状態となっても便座400を使用者の好ましい温度に保持することができる。なお、便座400の温度が待機温度に保持されているとき(時刻ti以前)に、入退室検出器600aから電池切れ信号を受信した場合、制御部90は、入室信号の受信を待つことなく便座400の温度が使用者設定温度となるように、便座ヒータ450への通電量を制御する。
第1遠隔器600が電池切れ状態である場合の所定の設定温度は、図6の例に限られず、例えば、使用者が設定可能な使用者設定温度より低く、電池切れ信号受信前における待機温度より高い温度に予め設定された温度であるように構成されてもよい。例えば、所定の設定温度が使用者が便座400に接触しても冷たく感じることのない冷感限界温度に設定されてもよい。図7は図1に示す衛生洗浄装置において使用者が入室してからの時間経過に対する便座温度の関係の他の例を示す図である。
図7においても通常時の制御は図6の例と同様である。制御部90は、入退室検出器600aからの電池切れ信号を受信すると、使用者の離座を検知しても、使用者設定温度より低く、便座400が電池切れ信号受信前における待機温度より高い温度として予め設定された冷感限界温度となるように、便座ヒータ450への通電量を制御する(図6の時刻tk以降において実線で示す)。これにより、消費電力を抑えつつ、使用者に冷たさを感じさせることを十分に防止することができる。なお、冷感限界温度として設定される温度は、例えば、金属製の便座400においては26℃以上32℃以下が好ましく、29℃がより好ましい。
上記構成によれば、電池駆動される第1遠隔器600が電池切れ状態となっても、便座400の温度を電池切れ信号受信前における待機温度より高い所定の設定温度に保持するため、第1遠隔器600の電池交換が行われず、使用者の入室が検知できない場合であっても、使用者が便座400に着座した際に冷たさを感じさせることを十分に防止することができる。
さらに、第1遠隔器600の電池交換がなされたことによって内蔵電池601の電圧Vが所定電圧V1以上となった場合には、入退室検出器600aで検出される入退室情報を用いて、便座ヒータ450への通電量を制御することができるため、便座400の温度制御を効率的且つ省エネルギーに行うことができる。すなわち、使用者の退室時においては比較的低い待機温度に保持してエネルギー消費を抑えつつ、入退室検出器600aにおいて使用者の入室を検出した場合には、使用者の入室をトリガとして便座400の温度上昇制御を行うことにより、使用者に冷たく感じさせることなく快適に使用させることができる。
この際、室温検知器602で検知される周囲の温度を用いて、便座ヒータ450への通電量を制御することができるため、便座400の温度制御を高精度に行うことができる。すなわち、使用者が実際に着座する便座400の表面は、便座温度検知部401aが設けられる便座400の内部に比べて外気にさらされている分、熱が逃げ易いため、便座温度検知部401aで検知された便座400の温度と便座表面の温度とは一致しない場合が生じ得る。従って、通常時においては、室温検知器602で検知された室温に応じて便座ヒータ450の通電量を制御することにより、同じ便座の設定温度に対して実際の便座表面の温度が変化することを十分に防止することができる。
また、便座本体200は、第1遠隔器600の電池切れ状態を報知する報知器280を備えている。そして、制御部90は、電池切れ信号を受信した後であって、入室信号を受信した場合、報知器280から電池切れ状態を報知させるよう制御する。これにより、使用者がトイレ室に入室した際に、第1遠隔器600の電池切れを効率的に報知することができる。報知器280は、例えば、LEDランプや警告ブザー等種々の態様が適用可能である。なお、この報知器280を便座400の昇温状態を報知する報知手段として用いてもよい。この場合、便座400の昇温制御開始直後から点滅を開始し、便座400に着座しても冷たくない冷感限界温度Tc以上に昇温した場合は連続して点灯し、使用者に便座400の昇温の状態を報知する。また、便座ヒータ450やサーミスタ401aの断線などの異常時にも使用者に対して報知を行うこととしてもよい。
なお、本実施形態においては、室温検知器602と入退室検出器600aとが同じ第1遠隔器600に設けられた構成について説明したが、入退室検出器600aが電池駆動され且つ室温検知器602及び入退室検出器600aが対応する送信器を介して便座本体200へそれぞれの信号を送信可能な限り、室温検知器602と入退室検出器600aとは別々に設けられていてもよい。例えば、入退室検出器600aは、第2遠隔器300に設けられていてもよい。また、室温検出器602は、第2遠隔器300に設けられてもよいし、便座本体200に設けられてもよい。
続いて、本実施形態におけるその他の構成について説明する。
また、第2遠隔器300には、複数のスイッチが設けられている。図8は、図1の衛生洗浄装置における第2遠隔器の構成を示す図である。図8(a)は第2遠隔器の下部カバーを閉じた状態を示す図であり、図8(b)は第2遠隔器の下部カバーを開いた状態を示す図である。図7に示すように、第2遠隔器300には、衛生洗浄装置100の各部を動作させるためのスイッチ、設定状態の変更スイッチ及び状態表示ランプ等が設けられた操作部301を有している。図8(a)に示すように、使用頻度の高いスイッチは下部カバー302を閉じた状態でも操作可能となっている。また、図8(b)に示すように使用頻度の低いスイッチや設定状態の変更スイッチ等は下部カバー302を開いた状態で操作可能となっている。このような第2遠隔器300は、例えば便座400上に着座する使用者が操作容易な場所に取り付けられる。
また、便座本体200に設けられた洗浄装置は、前述の通り、洗浄水供給機構(図示せず)を有している。洗浄水供給機構は、水道配管(図示せず)に接続されており、水道配管から供給される水を加熱部(図示せず)を介して所定の設定温度に加熱し、加熱された水を洗浄水として洗浄ノズル40に供給する。洗浄ノズル40は、通常時において、便座400の中央に設けられた空洞部に向けて洗浄水を噴出させるように構成されているが、洗浄ノズル40の使用開始前においては、洗浄ノズル40から便器700の内面部に幅広に洗浄水を噴出させる便器プレ洗浄や、便器700の内面部の背面側に洗浄水を噴出させる便器後部洗浄等を行わせることも可能である。さらに、洗浄ノズル40から線浄水を噴出させることで、洗浄ノズル40のセルフクリーニングを行わせることも可能である。なお、洗浄装置は、お尻洗浄用の洗浄ノズル40とは別にビデ洗浄用の洗浄ノズルを有してもよいし、兼用であってもよい。
続いて、便座400の詳細構成について説明する。図9は図1に示す衛生洗浄装置の便座の分解斜視図であり、図10は図9に示す便座ヒータの平面図である。図10(a)は、便座ヒータの全体を示す平面図であり、図10(b)は、図10(a)の領域Xbを拡大して示す図である。また、図11は図1に示す衛生洗浄装置の便座の平面図であり、図12は図11の便座400のXII−XII断面図である。
図9に示すように、便座400は、主としてアルミニウムにより形成された略楕円形状の上部便座ケーシング410、略馬蹄形状の便座ヒータ450及び合成樹脂により形成された略楕円形状の下部便座ケーシング420を備えている。
以下、着座した使用者から見て前方側を便座400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座400の後部とする。
図10(a)および図11に示すように、便座ヒータ450は、前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成されている。なお、便座ヒータ450は、略楕円形状を有してもよい。便座ヒータ450は、例えばアルミニウムからなる金属箔451,453及び線状ヒータ460を含んでいる。
線状ヒータ460は、シート中央部SE3からシート一方端部SE1までの領域及びシート中央部SE3からシート他方端部SE2までの領域において上部便座ケーシング410の形状に合わせて蛇行形状に配設されている。
具体的には、線状ヒータ460は、左右6列程度のU字状部を有するように形成される。これらのU字状部は、着座した使用者の大腿部の方向に略沿って並行に配置される。各U字状部における線状ヒータ460の間隔は5mm程度である。線状ヒータ460のヒータ始端部460a及びヒータ終端部460bは、便座400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。
さらに、図10(b)に示すように、蛇行形状の線状ヒータ460の経路中に熱応力緩衝部となる複数の折曲部CUが設けられる。
図12に示すように、上部便座ケーシング410の外側の側辺に沿った領域G1における線状ヒータ460の間隔ds1及び内側の側辺に沿った領域G3における線状ヒータ460の間隔ds3は、上部便座ケーシング410の中央部の領域G2における線状ヒータ460の間隔ds2よりも小さく設定される。これにより、上部便座ケーシング410の外側の側辺に沿った領域G1および内側の側辺に沿った領域G3では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460が密に配列される。
上部便座ケーシング410は、例えば厚さ1mmのアルミニウム板により形成される。アルミニウム板の上面には、アルマイト層および表面化粧層が形成される。表面化粧層の上面が着座面410Uとなる。また、アルミニウム板の下面には、塗装膜が形成される。塗装膜は、例えば膜厚40μmおよび150℃の耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜である。
なお、アルミニウム板の代わりに、銅板、ステンレス板、アルミニウムめっき鋼板及び亜鉛アルミニウムめっき鋼板のうちのいずれか又は複数を用いてもよい。塗装膜の下面に粘着層を介して例えばアルミニウムからなる金属箔451が貼着される。金属箔451の膜厚は、例えば50μmである。
線状ヒータ460は、断面円形の発熱線、エナメル層および絶縁被覆層により構成される。断面円形の発熱線の外周面がエナメル層および絶縁被覆層で順に被覆される。発熱線およびエナメル層によりエナメル線が構成される。
発熱線は、例えば0.16〜0.25mmの直径を有し、銅または銅合金からなる。本実施の形態では、発熱線として、直径0.176mmの4%Ag−Cu合金からなる高抗張力型ヒータ線が用いられる。抵抗値は0.833Ω/mである。
エナメル層は、例えば180〜300℃の耐熱性を有するポリエステルイミド(PEI)からなる。エナメル層の膜厚は、20μm以下であり、本実施の形態では12〜13μmである。このようなエナメル線は、エナメル層の膜厚が極めて薄い0.01〜0.02mm程度であっても、電気用品技術基準である1000Vで1分間以上の電気絶縁耐圧性能を十分確保することができる。また、エナメル層の材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
絶縁被覆層は、例えば260℃の耐熱性を有するパーフロロアルコキシ混合物(以下PFAと称する)等のフッ素樹脂からなる。絶縁被覆層の厚みは、例えば0.1〜0.15mmである。PFAからなる絶縁被覆層の形成は、押出し加工により行うことができる。この場合、絶縁被覆層の厚みが0.05〜0.1mmと薄くても、雷サージにも耐える電気絶縁耐圧性能を確保することができる。
なお、絶縁被覆層の材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
線状ヒータ460の外径は、例えば0.46〜0.50mmである。線状ヒータ460の電力密度は、例えば0.95W/cm2である。線状ヒータ460は、粘着層および例えばアルミニウムからなる金属箔453で覆うように金属箔451に取り付けられる。金属箔453の膜厚は、例えば50μmである。
このように、単一のエナメル線上に絶縁被覆層を形成することにより二重の絶縁構造を確保することができる。
また、絶縁被覆層は比較的薄くても十分な絶縁性が得られる。従って、絶縁被覆層の厚さを薄くすることができる。本実施の形態では、線状ヒータ460の樹脂層(エナメル層および絶縁被覆層)の厚さは、0.12mm程度であり、極めて薄い。この場合、発熱線から金属箔451および便座ケーシング410への熱伝導を極めて俊敏に行うことができる。
ちなみに従来の衛生洗浄装置においては、線状ヒータのシリコーンゴムまたは塩化ビニール等からなる被覆チューブの厚さは、本実施の形態の約10倍の1mm程度ある。このような被覆チューブの熱伝導速度は桁違いに遅く、便座の昇温速度を速くすることはできなかった。
従来の衛生洗浄装置において便座の昇温速度を無理やり速くするためにヒータ線に大きい電力を供給した場合、断熱状態でヒータ線の温度を高くした場合と同様に、被覆チューブが溶融および焼損する。そのため、このような方法による便座の昇温は実用できなかった。
一方、本実施形態のように耐熱性能に優れたエナメル線をヒータ線として使用した場合、十分短時間で便座を昇温でき、かつ電気絶縁性および安全性を確保できる。従って、本実施形態の構造は、種々の衛生洗浄装置に有効に実用することができる。
また、本実施形態の構造では、エナメル層および絶縁被覆層等からなる樹脂層を0.1〜0.4mm程度の薄い厚さで形成できる。それにより、発熱線および樹脂層の絶対温度が低い温度に維持された状態で、便座を急速に昇温させることができる。その結果、高価な耐熱絶縁材料でなく比較的安価な絶縁材料を用いることができる。
また、本実施形態においては、線状ヒータ460の熱を便座ケーシング410に効率よく伝達するために、線状ヒータ460をアルミ箔451,453で挟んでいる。ここで、本実施形態の線状ヒータ460においては、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462を薄くできるので、線状ヒータ460の外径を細く(約φ0.2〜φ0.4)できる。この場合、アルミ箔451とアルミ箔とを貼り合わせる際に、アルミ箔451とアルミ箔453との間の空気層を小さくすることができるとともに、アルミ箔451,453のしわを少なくすることができる。
それにより、エナメル線の局所高熱が抑制され、エナメル線の断線および電気絶縁層(エナメル層および絶縁被覆層)の損傷が防止される。その結果、衛生洗浄装置100の長寿命化が可能になる。また、エナメル線を細くできるので、便座ヒータ450の重量を低減でき、便座開閉トルクを小さくすることができる。それにより、便座開閉用の電動開閉ユニットを小型化でき、衛生洗浄装置100の小型化が可能となる。
次に、便座ヒータ450の動作について説明する。便座ヒータ450のヒータ始端部460aとヒータ終端部460bとの間に一定の電圧が印加されると、内部の発熱線を電流が流れ、この発熱線が発熱する。このとき、発生した熱は、発熱線からエナメル層および金属箔451,453を通って上部便座ケーシング410の着座面410Uに伝導する。
線状ヒータ460は、絶縁被覆層が260℃程度の耐熱性を有するPFAにより形成されるため、絶縁被覆層の厚みが例えば0.1〜0.15mmと薄くても、発熱線の100〜150℃への急速昇温時にもエナメル層が破壊されることが防止される。したがって、線状ヒータ460から着座面410Uへの熱伝導を迅速に進行させることにより、着座面410Uを急速に昇温させることができる。
この場合、線状ヒータ460への通電開始から所定の最適温度に到達するのは5〜6秒と短時間であり、例えば、使用者がトイレ室に入室して着座面410Uに着座するまでに要する7〜8秒より短時間である。従って、使用者がトイレ室に入室したことを入室検知センサ600aにより検知されると同時に線状ヒータ460に通電を開始しても、使用者が着座するまでには着座面410Uを十分に最適温度に到達させることができる。
さらに、図12の着座面410Uの内側の領域G3および外側の領域G1は、中央部の領域G2に比べて放熱性が高い。本実施の形態では、内側の領域G3および外側の領域G1では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460が密に配列される。したがって、使用者が着座面410Uに着座した瞬間に温度むらおよび冷感を感じることがない。
一方、線状ヒータ460は、全長10m程度と長く、発熱線の急速昇温に伴って急速な膨張が発生し、結果として長さ方向に伸張する。また、通電が停止された場合は、発熱線の温度が低下し、収縮により元の長さに戻る。つまり、発熱線には熱膨張および熱収縮による熱応力歪が反復して形成される。
線状ヒータ460と金属箔451,453との密着が弱く、または線状ヒータ460と着座面410Uとの間に隙間が形成された場合、熱応力歪全体がそれらのうちの最も動きやすい箇所に集中する。その結果、線状ヒータ460に比較的強い屈伸運動が発生し、その応力疲労の蓄積により発熱線の破断といった線状ヒータ460の破損が発生する。
本実施形態では、線状ヒータ460に熱応力緩衝部として複数の折曲部が形成されるので、これらの折曲部が全体の熱応力歪を細かく分散させるとともに、折曲部が熱応力歪を吸収する作用をも果たす。従って、折曲部での熱応力は極めて小さく、結果として微小な屈伸の発生に留まる。その結果、発熱線の破断という事態には至らず、線状ヒータ460の長寿命化および耐久性が向上する。
なお、比較的放熱の多い着座面410Uの内側の領域G3および外側の領域G1では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460の間隔を大きくし、折曲部の数を少なくてもよい。
上記のように、線状ヒータ460の全長はほぼ10mと長く、かつ線状ヒータ460には折曲部が形成される。そのため、着座面410Uへの線状ヒータ460の装着時に、これらの線状ヒータ460の配列を維持および固定化する必要がある。線状ヒータ460を金属箔451,453で挟持した状態で線状ヒータ460を金属箔451,453に密着させることによりユニット化された便座ヒータ450が構成される。したがって、線状ヒータ460の配列を強固に維持した状態で線状ヒータ460を着座面410Uに接着することができる。
また、金属箔451,453により線状ヒータ460が挟持されるように構成されるので、金属箔451,453により均等に熱分散が行われる。それにより、線状ヒータ460が高温化することを十分に防止することができる。また、着座面410Uが均熱化されるとともに、便座ヒータ450の破損が防止される。
次に、便座400への通電シーケンスについて説明する。便座ヒータ450の駆動制御は、便座ヒータ450を駆動する電力を大きく3つに変化させることにより行う。例えば、便座400を第1の温度勾配で昇温させる場合、図2のヒータ駆動部402は約1200Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(1200Wでの駆動)。
例えば、便座ヒータ450の抵抗値は0.833Ω/mであり、全長10mである。従って、便座ヒータ450の抵抗値は8.33Ωとなる。この抵抗値を有する便座ヒータ450に交流100Vが印加されると、(100V×100V)÷8.33Ω=1200Wの電力が発生する。すなわち、便座ヒータ450に交流電源の全周期に渡って電流を流すことにより、1200Wの電力が発生する。
また、便座400を第1の温度勾配よりもやや緩やかな第2の温度勾配で昇温させる場合、ヒータ駆動部402は約600Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(600W駆動)。さらに、便座400の温度を一定に保つ場合、ヒータ駆動部402は約50Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(低電力駆動)。なお、低電力駆動とは、1200W駆動および600W駆動に比べて十分に低い電力(例えば、0W〜50Wの範囲内の電力)により便座ヒータ450を駆動することをいう。
1200W駆動、600W駆動及び低電力駆動の切替えは、制御部90が、ヒータ駆動部402から便座ヒータ450への通電を制御することにより行われる。
ヒータ駆動部402には図示しない電源回路から交流電流が供給されている。そこで、ヒータ駆動部402は、制御部90から与えられる通電制御信号に基づいて供給された交流電流を便座ヒータ450に流す。
図13は本実施形態における便座ヒータ450の駆動例および便座400の表面温度の変化を示す図である。図13においては、便座400の表面温度と時間との関係を示すグラフと、便座ヒータ450を駆動する際の通電率と時間との関係を示すグラフとが示されている。これら2つのグラフの横軸は共通の時間軸である。
本実施形態では、使用者が予め暖房機能をオンし、便座設定温度を高く(38℃)設定した場合を想定している。
冬季等室温が待機温度である18℃よりも低い場合、制御部90は、便座400の温度を18℃となるように温度調整する。このように、制御部90は、入室検知センサ600aにより使用者の入室が検知されるまでの待機期間D1の間、便座400の表面温度が18℃で一定となるように、便座ヒータ450の低電力駆動を行う。
制御部90は、時刻t1で入退室検知器600aにより使用者の入室が検知された場合、突入電流低減期間D2の間、600Wでの駆動を行う。なお、この600Wでの駆動は、突入電流を十分に低減するために行う。この場合、便座400の表面温度はやや緩やかな第2の温度勾配で上昇される。
その後、制御部90は、突入電流低減期間D2の経過後の時刻t2で、便座ヒータ450の1200Wでの駆動を開始し、第1の昇温期間D3の間便座ヒータ450の1200Wでの駆動を継続する。この場合、便座400の表面温度は上述の第1の温度勾配で上昇される。
ここで、便座400の表面温度は急激に上昇される。便座ヒータ450の1200Wでの駆動は、便座400の表面温度が所定温度(例えば30℃)に達するまで行われる。もちろん、この所定温度は暖房温度として設定された温度であってもよいが、この所定温度は暖房温度にまで十分に上昇した温度でなく、それよりも低くても、使用者が着座した際に冷たいという不快感を生じない最低の温度(冷感限界温度)以上であればよい。
このように、第1の昇温期間D3においては、便座400の表面温度が1200Wでの駆動により迅速に所定温度まで上昇される。それにより、使用者は便座400を冷たいと感じることなく便座400に着座することができる。
また、上述のように、便座400の表面温度を急激に上昇させると、その温度変化にオーバーシュートが生じる。しかしながら、本実施形態では、便座400の表面温度が所定温度に達したときに便座ヒータ450の1200Wでの駆動を600Wでの駆動に切替える。したがって、便座400の表面温度の変化がオーバーシュートした場合でも、その表面温度は便座設定温度を超えない。その結果、使用者が着座時に便座400を熱いと感じることが防止される。
続いて、制御部90は、第1の昇温期間D3の経過後の時刻t3で、便座ヒータ450の600W駆動を開始し、第2の昇温期間D4の間便座ヒータ450の600W駆動を継続する。この場合、便座400の表面温度は上述の第2の温度勾配で上昇される。
便座ヒータ450の600W駆動は、便座400の表面温度が便座設定温度(38℃)に達するまで行われる。第2の温度勾配は、第1の温度勾配よりも緩やかである。これにより、便座400の表面温度の変化に大きなオーバーシュートが生じることが防止される。
制御部90は、第2の昇温期間D4の経過後の時刻t4で、便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、第1の維持期間D5の間便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。それにより、便座400の表面温度が便座設定温度で一定となる。
制御部90は、時刻t5で着座センサ290により使用者の便座400への着座が検知された場合、低電力駆動の通電率を低下させ、第1の着座期間D6の間便座400の表面温度が便座設定温度を維持するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本実施の形態では、第1の着座期間D6は約10分に設定される。
また、制御部90は、第1の着座期間D6の経過後の時刻t6で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の着座期間D7の間便座400の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)に低下するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本実施の形態では、第2の着座期間D7は約2分に設定される。
制御部90は、第2の着座期間D7の経過後の時刻t7で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の維持期間D8の間、便座400の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)で一定となるように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。以下の説明では、第2の維持期間D8において一定に維持される期間、便座400の表面温度、すなわち便座設定温度よりもやや低い温度を維持温度と称する。
このように、本実施の形態では、使用者が便座400に着座した後、制御部90が徐々に便座400の表面温度を低下させる。それにより、使用者が低温やけどすることが防止される。
制御部90は、時刻t8で着座センサ610により使用者が便座400から離れたことを検知すると、停止期間D9の間便座ヒータ450の駆動を停止する。それにより、便座400の表面温度が低下する。
制御部90は、便座400の表面温度が18℃に達した時刻t9で、再び便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、便座400の表面温度が18℃で一定となるように待機期間D10の間、便座ヒータ450の低電力駆動を維持する。
このように温度勾配が徐々に緩やかになる場合、便座400の温度変化により生じるオーバーシュートを十分に小さくすることができる。
本実施形態では、使用者の便座400への着座後、便座ヒータ450の駆動に用いる電力を調整することにより便座400の表面温度を徐々に低下させているが、便座ヒータ450の駆動は使用者の便座400への着座時に停止してもよい。この場合においても、使用者が低温やけどすることが防止される。
上記のように、本実施形態では、時刻t8に使用者が便座400から離れたことが検知されることにより便座ヒータ450の駆動が停止される旨を説明したが、便座ヒータ450の駆動の停止は、使用者が便座400から離れたことが検知された時刻t8から一定時間(例えば1分間)経過後に行われてもよい。この場合、一度使用者が便座400から離れた後に再度便意をもよおし、再度便座400に着座する際にも、便座400の表面温度が低下しない。これにより、使用者は快適に便座400に着座することができる。
1200Wでの駆動時、600Wでの駆動時及び低電力駆動時における便座ヒータ450への通電状態を制御部90の通電制御信号とともに説明する。以下の説明において、通電率とは交流電流の1周期に対して便座ヒータ450に交流電流を流す時間の割合をいう。
図14は1200Wでの駆動時における電流波形及び信号波形を示す図である。図14(a)は1200Wでの駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図であり、図14(b)は1200Wでの駆動時に制御部90からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
図14(b)に示すように、1200Wでの駆動時における通電制御信号は常に論理「1」となる。ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図14(a)太線部)。それにより、全周期の期間に渡って交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が約1200Wの電力で駆動される。
図15は600Wでの駆動時における電流波形及び信号波形を示す図である。図15(a)は600Wでの駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図であり、図15(b)は600Wでの駆動時に制御部90からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
図15(b)に示すように、600Wでの駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部402に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%に設定される。
ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図15(a)太線部)。それにより、半周期の期間交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が約600Wの電力で駆動される。
図16は低電力駆動時における電流波形及び信号波形を示す図である。図16(a)は低電力駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図16(b)は低電力駆動時に制御部90からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
図16(b)に示すように、低電力駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部402に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%よりも小さく(例えば数%程度)に設定される。
ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図16(a)太線部)。各周期においては、パルス幅に相当する期間交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が例えば約50Wの電力で駆動する。
上記の他、便座400の温度を低くする場合、または衛生洗浄装置100の暖房機能をオフしている場合等には、制御部90はヒータ駆動部402に通電制御信号を与えない(通電制御信号を論理「0」に設定する)。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動しない。
ここで、一般に、電子機器に供給される電流が高調波成分を有する場合、ノイズが発生する。本実施の形態では、上述のように便座ヒータ450の1200W駆動または600W駆動を行う場合には、便座ヒータ450に供給される電流がサインカーブを描くように変化するので、電流の大きさが大きくなってもノイズの発生が十分に低減される。
また、便座ヒータ450の低電力駆動を行う場合、便座ヒータ450に供給される電流は高調波成分を有するが、電流の大きさが1200W駆動時および600W駆動時に比べて非常に小さいので、ノイズの発生が十分に低減される。
上記のように、本実施形態では、便座ヒータ450を1200W、600Wおよび約50Wの電力で駆動するとしているが、他の大きさの電力で便座ヒータ450を駆動してもよい。
例えば、便座ヒータ450に半周期の期間交流電流を流す場合には、交流電流を流すタイミングを2周期または3周期等所定の周期の間隔で設定する。それにより、1200W、600Wおよび約50Wとは異なる大きさの電力で、ノイズの発生を十分に防止しつつ便座ヒータ450を駆動することができる。
なお、本実施形態では、制御部90は通電制御信号が論理「1」のときに便座ヒータ450に電流を供給し、通電制御信号が論理「0」のときに便座ヒータ450への電流の供給を停止しているが、通電制御信号が論理「1」のときに便座ヒータ450への電流の供給を停止し、通電制御信号が論理「0」のときに便座ヒータ450に電流を供給してもよい。
なお、便座ヒータ450のオンおよびオフは時間により制御されるため、時間の計測がずれると便座400の温度が所定値を超えたり、所定値に達しなかったりする。そこで、時間の計測がずれないように、制御部90では、2つの計測源にて便座400のオンの時間を計測する。1つの計測源として、制御部90のプログラムの実効速度を規定する発振子により便座ヒータ450のオンの時間を計測し、もう1つの計測源として、交流電圧の周期を基準として便座ヒータ450のオンの時間を計測する。これらの計測値の少なくとも一方が規定時間を超過すると、次の通電パターンに移行する。
特に、便座に1200Wで通電される時間が正確に計測されることにより過昇温が確実に防止される。これにより、さらに機器の安全性が向上する。ここでは、計測源を複数設けることにより計測の精度を向上させる方法について記載したが、便座ヒータ450がフル通電される時間を計測し、強制的にヒータへの通電を遮断もしくは制限する方法であっても、同様の効果を得ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。