JP2010245261A - 超電導マグネット - Google Patents

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Abstract

【課題】径方向において分割された超電導コイルの層間での損傷を抑制する。
【解決手段】超電導マグネット1に係る内層分割コイル30a、30b、および30cの間には、マイカシート51を挿入している。よって、これらのコイル同士の間を絶縁できる。したがって、これらのコイルの間に高電圧がかかっても、これらのコイルの損傷を抑制できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、超電導マグネットに関する。本発明は10T以上の高磁場を必要とするプロトンの磁気共鳴周波数にて500MHz以上のNMR(核磁気共鳴、Nuclear Magnetic Resonance)や物性研究に用いる超電導マグネットとして好適なものである。
従来より、NMRや物性研究などに超電導マグネットが用いられている。この超電導マグネットには、線種が異なる超電導コイルを有するものがある。この種の超電導マグネットには例えば、内層コイルにNbSn化合物(以下単にNbSnと言う)を用い、外層コイルにNbTi合金(以下単にNbTiと言う)を用いたものがある(以下これらのコイルをNbSnコイル、NbTiコイルと言う)。また、この超電導マグネットには、複数の超電導コイルのうち、1つまたは複数のコイルごとに並列に保護素子を接続し、複数のセクションを形成したものがある(このようなセクションは「クエンチ保護セクション」と呼ばれる)。
この超電導マグネットでは、コイルの導体(超電導線)は電磁力を受ける。この電磁力により、導体のすべりが生じ、摩擦発熱が生じる場合がある。この摩擦発熱による熱的な擾乱により、このコイルにはクエンチ(超電導状態から常電導状態へ転移する現象)が生ずる場合がある。このクエンチが生じると、クエンチが生じたコイルの電気抵抗が大きくなる。この電気抵抗の増大により、クエンチが生じたコイルを有するクエンチ保護セクションでは、コイルを流れる電流が減衰する(保護素子を流れる電流は増加する)。この電流の減衰と共に、このセクションの電磁エネルギーは、他のセクションに電磁誘導により転送される。電磁エネルギーが転送されたセクションでは、コイルに流れる電流値が増加する。この電流値の増加により以下に述べる問題が生ずる場合がある。
この超電導コイルの導体は、線種により温度マージン(超電導マグネット使用中の極低温温度からクエンチが生じる臨界温度までの温度差)が異なる。言い換えると臨界電流値が異なる。例えばNbTi導体はNbSn導体と比べて温度マージンが低い。これらの導体を有するNbTiコイル、およびNbSnコイルは、電磁エネルギーが転送され電流値が増加することで、次のようになる。
NbTiコイルでは、直ぐに臨界電流値を上回りクエンチが生じる。クエンチが生じると、上述したように、このコイルを流れる電流はそれ以上増加しない。
一方NbSnコイルでは、直ぐには臨界電流値を上回らない。例えば定格電流値の1.5倍から2.5倍程度まで電流値が増加しないとクエンチが生じない。この場合、電磁力(電流に比例する)は通常時の1.5倍から2.5倍になり得る。この電磁力により、NbSn導体は塑性変形を起こす。金属間化合物であり歪に弱いNbSn化合物は、この塑性変形により超電導特性が劣化する場合がある。
特許文献1には、この問題を回避する電気回路が記載されている。この回路では、NbSnコイルの一部とNbTiコイルの一部を、同一のクエンチ保護セクションに直列に接続している。この回路では次のような動作をする。あるセクションに上述したように電磁エネルギーが転送される。これにより、このセクションのNbTiコイルにクエンチが生ずる。このクエンチにより、このセクションでは電流がそれ以上増加しない。すなわち、このセクションのNbSnコイルがクエンチを起こさなくても、このNbSnコイルに流れる電流は増加しない。こうしてNbSnコイルが保護される。
特許第3667954号公報
ところで、特許文献1に記載の電気回路に係る超電導マグネットでは、1つの巻枠体に径方向において複数に分割してNbSnコイルを巻線している。この複数に分割したNbSnコイルそれぞれを、別個の保護セクションに配置している。すなわち、分割されたNbSnコイルは、電気回路上ではセクションごとに切り離されているが、物理的には層間が接している。したがって、クエンチが生じたセクションと、クエンチが生じていないセクションがある場合、分割したNbSnコイルの隣接する層間に高電圧(例えば500V以上)がかかる。
分割したNbSnコイルの隣接する層間にこのような高電圧がかかると、NbSnコイルが損傷する問題が生じうる。これは以下の理由による。この超電導コイルに用いるNbTi導体は、例えばホルマール被覆により絶縁する。一方、NbSn導体は、巻線後に700℃前後の高温で熱処理して超電導相を生成する必要がある。よって、NbSn導体ではホルマール被覆ができない。そこでNbSn導体は耐熱性に優れたガラス繊維で被覆する。しかし、このガラス繊維は絶縁性が低い。したがって、分割されたNbSnコイルの隣接する層間に高電圧がかかった場合、この層間でアーク放電などが生じうる。これにより、NbSnコイルが損傷する場合がある。
本発明の目的は、径方向において分割された超電導コイルの層間での損傷を抑制できる超電導マグネットを提供することである。
第1の発明に係る超電導マグネットは、第1超電導コイルと、径方向において複数の分割コイル(第2分割コイル)に分割され、前記第1超電導コイルよりも温度マージンの大きい第2超電導コイルと、前記第1超電導コイルおよび前記第2超電導コイルに対して並列に接続され複数のセクションを形成する保護素子と、を備え、前記複数の分割コイルの一部と、前記第1超電導コイルとが、同じセクション内で直列に接続され、物理的には隣接し、異なるセクションに配置された前記分割コイル同士の間に絶縁体が挿入されている。
この超電導マグネットでは、物理的に隣接する分割コイル(第2超電導コイルを構成する分割コイル)同士の間を絶縁できる。したがって、物理的に隣接する分割コイル同士の間に高電圧がかかっても、分割コイルの損傷を抑制できる。
第2の発明に係る超電導マグネットは、第1の発明に係る超電導マグネットにおいて、 前記第1超電導コイルは径方向において複数の分割コイル(第1分割コイル)に分割され、前記第2超電導コイルを構成する複数の分割コイルの一部と、前記第1超電導コイルを構成する複数の分割コイルの一部とが、同じセクション内で直列に接続されていることを特徴としている。
この超電導マグネットでは、第1超電導コイルが径方向において分割されている場合でも、第2超電導コイルを構成する複数の分割コイルの損傷を抑制できる。
第3の発明に係る超電導マグネットは、第1又は第2の発明に係る超電導マグネットにおいて、前記絶縁体はマイカシートであることを特徴としている。
この超電導マグネットでは、第2超電導コイルが巻線後に高温での熱処理を要するコイルであっても、第2超電導コイルを構成する複数の分割コイル同士の間を絶縁しうる。
第4の発明に係る超電導マグネットでは、第1〜第3のいずれかの発明に係る超電導マグネットにおいて、前記第1超電導コイルはNbTi合金製のコイルであり、前記第2超電導コイルはNbSn化合物製のコイルであることを特徴としている。
この超電導マグネットでは、第1超電導コイルがNbTi合金製のコイルであり、第2超電導コイルがNbSn化合物製のコイルである場合でも、第2超電導コイルを構成する複数の分割コイル同士の間を絶縁できる。
第5の発明に係る超電導マグネットでは、第1〜第4のいずれかの発明に係る超電導マグネットにおいて、前記絶縁体は、前記第2超電導コイルを構成する複数の分割コイルの軸方向および周方向の全体にわたって挿入されていることを特徴としている。
この超電導マグネットでは、絶縁体が第2超電導コイルを構成する分割コイルの軸方向または周方向の一部のみ挿入されている場合に比べ、分割コイル同士の間を広く絶縁できる。したがって、分割コイルの損傷をより抑制できる。
以上の説明に述べたように、第1〜第5の発明では第2超電導コイルを構成する分割コイルの損傷を抑制できる。
超電導マグネットを構成する超電導コイルの配置を示す模式断面図である。 図1に示す内層コイルの断面図である。 超電導マグネットを構成する電気回路を示す回路図である。 図1に示す超電導コイルの電位と時間との関係を示すグラフである。
以下、本発明に係る超電導マグネットの実施形態について図面を参照して説明する。
図1は超電導マグネットを構成する超電導コイルの配置を示す模式断面図である。図2は図1に示す内層コイルの断面図である。図3は超電導マグネットを構成する電気回路を示す回路図である。以下、図1〜図3を参照して超電導マグネット1の構成について詳細に説明する。
超電導マグネット1は、例えば10T以上の高磁場を必要とするプロトンの磁気共鳴周波数にて500MHz以上のNMR、および物性研究に用いる。この超電導マグネット1は図1に示す超電導コイル10、および電気回路40(図3参照)を有する。
(コイルの配置)
超電導コイル10は、超電導線32(図2参照)をソレノイド状に巻いたものである。この超電導線32に電流を流すことで磁場を発生させる。またこの超電導コイル10は、断熱真空容器(図示なし)に収容した液体ヘリウム容器(図示なし)などに収容して冷却する。これは超電導線32(図2参照)を超電導状態にするためである。
また、この超電導コイル10は、図1に示すように、複数のコイルから構成される。これら複数のコイルは次の形状および配置である。各コイルは、それぞれ巻枠体(図2参照)に巻いたものである。各コイルの形状は筒状である。各コイルは同軸である。各コイルは軸方向Zに対して対象に配置する。また、これら複数のコイルは、径方向外側の外層コイル20、および径方向内側の内層コイル30から構成される。
外層コイル20(第1超電導コイル)は、超電導コイル10の径方向外側に配置するコイルである(以下、超電導コイル10の径方向外側を「外層側」、径方向内側を「内層側」などと呼ぶ)。この外層コイル20はNbTi合金製である。この外層コイル20の超電導線32(図2参照)はホールマルで被覆する。また、この外層コイル20は、内層側から順に、外層内側メインコイル21、外層外側メインコイル22、補正コイル23、およびシールドコイル24を有する。
外層内側メインコイル21は、外層コイル20の最も内側に配置したコイルである。この外層内側メインコイル21は径方向において分割される。内層側から順に、外層内側分割コイル21a、21b、および21c(第1超電導コイルを構成する分割コイル)を有する。これらのコイルの形状および配置は次の通りである。各コイルは径方向に接する。各コイルの軸方向の両端部は揃う。外層内側分割コイル21bの径方向の長さ(以下、コイルの径方向の長さを「厚さ」と言う)は外層内側分割コイル21aの厚さの約2倍である。外層内側分割コイル21cの厚さは外層内側分割コイル21aの厚さの約3倍である。すなわち、外層内側分割コイル21a、21b、21cでは、それぞれ巻き数が異なる。
外層外側メインコイル22は、外層内側メインコイル21の外層側に配置したコイルである。この外層外側メインコイル22は次のような形状および配置である。厚さは、外層内側メインコイル21の厚さとほぼ同一である。軸方向両端部は、外層内側メインコイル21の軸方向両端部と揃うように設ける。
また、この外層外側メインコイル22は径方向において分割される。内層側から順に、外層外側分割コイル22a、22b、および22cを有する。これらのコイルの形状および配置は次の通りである。各コイルは径方向に接する。各コイルの軸方向の両端部は揃う。各コイルの厚さはそれぞれほぼ同一である。
補正コイル23は超電導マグネット1の磁場が均一になるよう補正するため設ける。この補正コイル23は次のように配置する。外層外側メインコイル22の外層側に配置する。軸方向の一端(図1における下端)は、外層外側メインコイル22の軸方向の一端(図1における下端)より内側(図1における上側)に設ける。軸方向の他端(図1における上端)は、外層外側メインコイル22の軸方向の他端(図1における上端)と揃うように設ける(以下、軸方向Zにおいて、補正コイル23の一端側を「下側」、補正コイル23の他端側を「上側」などと言う)。
また、この補正コイル23は6つに分割され、補正分割コイル23Aa、23Ab、23Ac、23Ba、23Bb、および23Bcから構成される。これらの補正分割コイルの配置および形状は次の通りである。補正コイル23の内層側下端に補正分割コイル23Aaを設ける。補正分割コイル23Aaの上側に補正分割コイル23Acを、その上側に補正分割コイル23Bcを、その上側に補正分割コイル23Baを、それぞれ間隔を開けて配置する。補正分割コイル23Abを補正分割コイル23Aaの外層側に設ける。補正分割コイル23Aaと23Abは、径方向に接し、軸方向の端部が揃う。補正分割コイル23Baと23Bbとは、補正分割コイル23Aaと23Abとの関係と同様である。また、これらの補正分割コイルは、それぞれ厚さがほぼ同一である。
シールドコイル24は、超電導マグネット1外側の漏れ磁場を少なくするため設ける。すなわち、超電導コイル10の内部(径方向中央部)に発生させる磁場の方向と逆向きの磁場を発生させる。このシールドコイル24は、次のように配置する。補正コイル23の外層側に設ける。軸方向両端部は、外層内側メインコイル21や補正コイル23の軸方向両端部より内側に設ける。
また、このシールドコイル24は径方向に層単位に分割され、シールド分割コイル24Aa、24Ab、24Ac、24ad、24Ba、24Bb、24Bc、および24Bdを有する。これらのシールド分割コイルは次のように配置する。シールドコイル24の内層側下端にシールド分割コイル24Aaを設ける。このシールド分割コイル24Aaの外層側に、内層側から順に、シールド分割コイル24Ab、24Ac、および24Adをそれぞれ設ける。これらのシールド分割コイル24Aa、24Ab、24Ac、および24Adは径方向に接し、軸方向の端部が揃う。また、シールド分割コイル24Aaの上側に間隔を開けてシールド分割コイル24Baを設ける。このシールド分割コイル24Baの外層側に、内層側から順に、シールド分割コイル24Bb、24Bc、24Bdを、それぞれ設ける。これらのシールド分割コイル24Ba、24Bb、24Bc、および24Bdは、径方向に接し、軸方向の端部が揃う。また、シールド分割コイル24Aa、24Ac、24Ad、24Ba、24Bc、24Bdはそれぞれほぼ同じ厚さである。シールド分割コイル24Abおよび24Bbの厚さは、シールド分割コイル24Aaの厚さの約3倍である。
内層コイル30(第2超電導コイル)は、外層コイル20の内層側に設けるコイルである。この内層コイル30の軸方向両端部は、外層コイル20の軸方向両端部より内側に設ける。また、この内層コイル30はNbSn化合物製のコイルである。
また、この内層コイル30は径方向において3層に分割され、内層側から、内層分割コイル30a(1層目)、30b(2層目)、および30c(3層目)(それぞれ第2超電導コイルを構成する分割コイル)を有する。これらの内層分割コイル30a、30b、および30cは、径方向に隣接し、軸方向の端部が揃う。また、それぞれの厚さがほぼ同一である。
(内層コイルの詳細)
また、図2に示すように、この内層コイル30は、巻枠体31に巻かれた超電導線32からなる。すなわち、内層分割コイル30a、30b、30cは、3本の超電導線32a、32b、32cからなる。また、内層分割コイル30aと30bとの間、および内層分割コイル30bと30cとの間にはそれぞれマイカシート51を挟む。
巻枠体31は、外周に内層コイル30を取り付けるため設ける。この巻枠体31はボビン形状である。すなわち、超電導コイル10の軸方向中央部は筒状であり(この部分を筒状部31aとする)、この筒状部31aの軸方向両端部にはここから径方向外側に延びるツバ部31bを有する。この筒状部31aの外周に沿うように超電導線32をソレノイド状に巻く。すなわち内層コイル30を巻枠体31の外周に取り付ける。この巻枠体31はアルミニウム材またはステンレス材などの非磁性材料である。なお外層コイル20を構成する各コイルもこれと同様の巻枠体の外周に取り付けられる。
超電導線32は、ソレノイド状に巻かれることで、筒状の内層コイル30を形成する部材である。また、この超電導線32は、内層分割コイル30a、30b、および30cそれぞれから、超電導線32a、32b、32cの両端を引き出す。なお、外層コイル20を構成する各コイルからもこれと同様に超電導線が引き出されている。
また、この超電導線32はガラス繊維(図示なし)で被覆され、絶縁される。このガラス繊維は布状であり、超電導線32の周方向に沿うように巻く。このガラス繊維の厚みにより超電導線32間の距離をとる。また、このガラス繊維は耐熱性に優れる。すなわち、巻枠体31に超電導線32を巻いた後、これらを700℃前後で熱処理し、NbSn導体の超電導相を生成する。このガラス繊維は、この熱処理に耐えることができる。なお外層コイル20に用いたNbTi導体のホールマル被覆に比べ、このガラス繊維の被覆は絶縁性が低い。このため、内層分割コイル30a、30b、および30cのうち2つの隣接する層間に高電圧(例えば500V以上)が発生した場合(この高電圧の発生については後述する)、この層間にアーク放電などが生ずる場合がある。
なお、マイカシート51については後述する。
(電気回路)
電気回路40は、図3に示すように、超電導コイル10(図1参照)に電流を流すと共に、超電導コイル10をクエンチなどから保護するため設ける。この電気回路40は複数のセクション42および永久電流スイッチ43を有する。
複数のセクション42のうちの、1つのセクション42Aは次のように構成される。内層コイル30の一部である内層分割コイル30aと、外層コイル20の一部である外層内側分割コイル21aとを直列に接続する。これら2つのコイルに対して1つの保護ダイオード41(保護素子)を並列に接続する。これら2つのコイルおよび1つの保護ダイオード41で1つのセクション42Aが構成される。
このように、1または複数のコイルに対し並列に保護ダイオード41を接続したセクション42を直列に11個設ける。これらのセクション42は、セクション42Aに近い側から(図3における上から)順に次のように構成される。内層分割コイル30cと外層内側分割コイル21aとがセクション42Bを構成する。内層分割コイル30bと外層内側分割コイル21cとがセクション42Cを構成する。また、外層外側分割コイル22aで1つの、外層外側分割コイル22bで1つの、外層外側分割コイル22cで1つの、補正分割コイル23Baと補正分割コイル23Aaとで1つの、補正分割コイル23Bbと補正分割コイル23Abとで1つの、補正分割コイル23Bcと補正分割コイル23Acとで1つの、シールド分割コイル24Aaと24Abと24Baと24Bbとで1つの、シールド分割コイル24Acと24Adと24Bcと24Bdとで1つの、それぞれセクション42が構成される(なお図3では、セクション42A、42B、42C以外のセクション42の符号を省略している)。
永久電流スイッチ43(Persistent Current Switch)は、超電導コイル10(図1参照)に電流を流し続けるため設ける。この永久電流スイッチ43は、直列に接続された超電導コイル10の両端(すなわち内層分割コイル30aの一端、およびシールド分割コイル24Bdの一端。図3における上下端)に並列に接続する。これにより閉回路が形成される。
また、この永久電流スイッチ43には電源(図示なし)が並列に接続される。超電導コイル10の電流を増やす時は、永久電流スイッチ43を切る。これにより電源から超電導コイル10へ電流が流れる。超電導コイル10の電流が所定の値になると永久電流スイッチ43をつなぐ。これにより、電源を切っても超電導コイル10に電流が流れ続ける。また、この超電導マグネット1は一電源(図示なし)で運転している。
この電気回路40は、定常状態およびクエンチ発生時に次のように動作する。
定常状態(各コイルが超電導の状態)では、電源(図示なし)や永久電流スイッチ43から各コイルへ電流が流れる。そしてこの電流は電源や永久電流スイッチ43へ戻る。
クエンチ発生時には次のように動作する。
あるコイルでクエンチが発生すると、このコイルは急激に電気抵抗が生じる。この電気抵抗により、このコイルを含むセクション42を流れる電流は急激に減少する(このセクション42の保護ダイオード41に流れる電流は増加する)。これにより、このセクション42のコイルは保護される。
このクエンチは、他のセクション42に伝播しうる。すなわち次のように動作する。クエンチを起こしたコイルを有するセクションの電磁エネルギーは、他のセクションに電磁誘導により転送される。このエネルギーが転送されたセクションを流れる電流は増大する。この電流の増大により、温度マージンが小さい(臨界電流値が小さい)NbTiコイルは直ぐにクエンチが生じうる。
また、このクエンチ発生時、次のようにNbSnコイルが保護される。上記の電流の増大があった場合、NbTiコイルで直ぐにクエンチが生じる。このクエンチが生じたコイルを有するセクションに流れる電流は急激に減少する。すると、このセクションのNbSnコイルへ流れる電流も減少する。したがって、NbSnコイルが保護される。
この電気回路40では、以下のように物理的に隣接する内層分割コイルの層間に高電圧がかかる場合がある。このような動作をする電気回路40では、クエンチが生じているセクション42と、クエンチが生じていないセクション42とが存在する場合がある。例えば、セクション42Aでクエンチが生じ、セクション42Cでクエンチが生じない場合がある。この場合、セクション42Aを構成する内層分割コイル30aの電流は減少し、セクション42Cを構成する内層分割コイル30bの電流は増大する。内層分割コイル30aと内層分割コイル30bは、図3に示すように電気回路40上では別個のセクション42Aと42Cとに切り離されている。一方で、図2に示すように、物理的には内層分割コイル30aと内層分割コイル30bとは隣接している。よって、これらのコイルの層間に高電圧(例えば500V以上)がかかる。なお、内層分割コイル30bと30cとの層間においても、内層分割コイル30aと30bとの層間と同様に高電圧がかかりうる。
図2に示すマイカシート51は、内層分割コイル30a、30b、30c同士を絶縁するために設ける。このマイカシート51はシート状であり、内層分割コイル30aと30bとの間に挿入する。すなわち、物理的には隣接し、異なるセクションに配置された内層分割コイル30aと30bとの間(第2超電導コイルを構成する分割コイル同士の間)に挿入する。さらに言い換えれば、内層分割コイル30aとマイカシート51とは径方向に接し、マイカシート51と内層分割コイル30bとは径方向に接している。内層分割コイル30bと30cとの間にも、内層分割コイル30aと30bとの間と同様に、マイカシート51を挿入する。
また、このマイカシート51は、内層コイル30の、軸方向および周方向の全体にわたって挿入する。すなわち、このマイカシート51は略円筒状となるように、内層分割コイル30aおよび30bそれぞれの外周の全周に巻かれている。なお、このマイカシート51は、1周巻きでも良く、2周3周など複数巻きでも良い。また、内層コイル30と略同一形状である。なお、内層コイル30の形状は例えば、コイルの円周の半径を軸方向の長さの約1/5、径方向の厚さを軸方向の長さの約1/20とする。
また、このマイカシート51の厚さは0.1mm以上、1mm以下とする。また、このマイカシート51は耐熱性に優れる。市販のマイカシートを用いることができる。この「耐熱性」は、上述したNbSn導体の超電導相を形成するための熱処理に耐えられる程度の耐熱性を要する。
なお、内層コイル30と巻枠体31との間には図示しないマイカシートをさらに設ける。この図示しないマイカシートは次のように設ける。巻枠体31の筒状部31aと内層分割コイル30aとの間に挿入する。すなわち略円筒状となるように、筒状部31aの外周全体に巻かれる。また、巻枠体31のツバ部31bに沿うようにツバ部31bと内層コイル30との間に挿入する。
また、この図示しないマイカシートは、マイカシート51と、マイカシート51の軸方向端部(図2における左右の端部)で接するように配置している。マイカシート51の厚さは、この図示しないマイカシートの厚さと同じかそれ以下が良い。
(実施例)
図4に示すグラフは、上記実施形態に係る超電導マグネット1(図1参照)を励磁したときの、各コイルに生ずる電位V(縦軸)と時間T(横軸)との関係を示す。このグラフはシミュレーションでの結果を示すものである。このグラフから、NbSnコイルの層間で最大約600Vの電圧が発生することが予測できた。この予測は次のように行った。例えば、図3に示す、内層分割コイル30cを含むセクション42Bでクエンチが生じない場合、この内層分割コイル30cの電位は最大約−600Vになる(図4参照)。一方、内層分割コイル30bを含むセクション42Cでクエンチが生じた場合、この内層分割コイル30bの電位は約0Vとなる。したがって内層分割コイル30cと内層分割コイル30bとの間で約600Vの電圧が発生することが予測できる。
そこで、厚さ0.2mmのマイカシート51を用いた、上記実施形態に係る超電導マグネット1を励磁した。すると励磁途中に、同一セクションにNbSnコイルを有するNbTiコイルがクエンチした。すなわちNbSnコイル内部の隣接する層間に高電圧が生じた。しかしNbSnコイルは破損しなかった。
(本実施形態の超電導マグネットの特徴)
本実施形態の超電導マグネット1には以下の特徴がある。
図2に示すように物理的には隣接し、図3に示すように異なるセクション42に配置された、内層分割コイル30a、30b、および30cの間には、図2に示すように、マイカシート51が挿入されている。よって、内層分割コイル30a、30b、および30cの間を絶縁できる。したがって、物理的に隣接する内層分割コイル30a、30b、および30cの間に高電圧がかかっても、これらのコイルの損傷を抑制できる。
また、内層分割コイル30a、30b、および30cの間に挿入する絶縁体として、耐熱性を有するマイカシート51を用いている。したがって、内層コイル30が巻線後に高温で熱処理を要するコイルであっても、内層分割コイル30a、30b、および30cの間を絶縁できる。
また、この超電導マグネット1に係る外層コイル20はNbTi合金製のコイルであり、内層コイル30はNbSn化合物製のコイルである。この場合でも、内層分割コイル30a、30b、および30cの間を絶縁できる。
また、マイカシート51は、内層コイル30の軸方向および周方向の全体にわたって挿入されている。よって、絶縁体が内層分割コイル30a、30b、および30cの軸方向または周方向の一部のみ挿入されている場合に比べ、これらのコイル同士の間を広く絶縁できる。したがって、内層コイル30の損傷をより抑制できる。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、前記実施形態では、外層コイル20(第1超電導コイル)を構成する、外層内側メインコイル21、外層外側メインコイル22、補正コイル23、およびシールドコイル24それぞれを層単位に分割した。しかし、これらは層単位に分割されていなくても本発明を適用できる。
また、前記実施形態では、2種類の線材を用いた超電導コイルを示した。すなわち第1超電導コイル、および第2超電導コイルにはそれぞれ1種類の線材を用いた。しかし3種類以上の線材を用いた超電導コイルでも本発明を適用できる。
また、前記実施形態では、電気回路の保護素子としてダイオードを用いたが、抵抗を用いても本発明を適用できる。
なお、マイカシート51の軸方向端部と、ツバ部31bに沿う図示しないマイカシートとのすき間は、できるだけない方が良いが、絶縁性を損なわない程度に超電導線32の線径以下、さらには、線径の半分以下とすることもできる。
1 超電導マグネット
20 外層コイル(第1超電導コイル)
21a、21b、21c 外層内側分割コイル(分割コイル)
30 内層コイル(第2超電導コイル)
30a、30b、30c 内層分割コイル(分割コイル)
42 セクション
41 保護ダイオード(保護素子)
51 マイカシート(絶縁体)

Claims (5)

  1. 第1超電導コイルと、
    径方向において複数の分割コイルに分割され、前記第1超電導コイルよりも温度マージンの大きい第2超電導コイルと、
    前記第1超電導コイルおよび前記第2超電導コイルに対して並列に接続され複数のセクションを形成する保護素子と、
    を備え、
    前記複数の分割コイルの一部と、前記第1超電導コイルとが、同じセクション内で直列に接続され、
    物理的には隣接し、異なるセクションに配置された前記分割コイル同士の間に絶縁体が挿入されている、超電導マグネット。
  2. 請求項1に記載の超電導マグネットにおいて、
    前記第1超電導コイルは径方向において複数の分割コイルに分割され、
    前記第2超電導コイルを構成する複数の分割コイルの一部と、前記第1超電導コイルを構成する複数の分割コイルの一部とが、同じセクション内で直列に接続されていることを特徴とする、超電導マグネット。
  3. 請求項1又は2に記載の超電導マグネットにおいて、
    前記絶縁体はマイカシートであることを特徴とする、超電導マグネット。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の超電導マグネットにおいて、
    前記第1超電導コイルはNbTi合金製のコイルであり、前記第2超電導コイルはNbSn化合物製のコイルであることを特徴とする、超電導マグネット。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の超電導マグネットにおいて、
    前記絶縁体は、前記第2超電導コイルを構成する複数の分割コイルの軸方向および周方向の全体にわたって挿入されていることを特徴とする、超電導マグネット。
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