JP2010238569A - 燃料電池用セパレータ材料、それを用いた燃料電池スタック - Google Patents

燃料電池用セパレータ材料、それを用いた燃料電池スタック Download PDF

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Abstract

【課題】Ti圧延板表面にAu層又はAu合金層を形成した燃料電池用セパレータ材料の接触抵抗を低減させ導電性を確保した燃料電池用セパレータ材料、それを用いた燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】Ti基材の表面にAu層又はAu合金層が形成され、表面の平均ピット深さをE(d)、平均ピット幅をE(l)とした時に、E(l)≦3.0μm、かつE(d)/E(l)≦0.5である燃料電池用セパレータ材料である。
【選択図】図1

Description

本発明は、Ti圧延板等のTi基材の表面にAu又はAu合金(Auを含む層)が形成された燃料電池用セパレータ材料、それを用いた燃料電池スタックに関する。
固体高分子型の燃料電池用セパレータとして、従来はカーボン板にガス流通路を形成したものが使用されていたが、材料コストや加工コストが大きいという問題がある。一方、カーボン板の代わりに金属板を用いる場合、高温で酸化性の雰囲気に曝されるために腐食や溶出が問題となる。このようなことから、Ti板表面にAu,Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPt等から選ばれる貴金属とAuとの合金をスパッタ成膜して導電部分を形成する技術が知られている(特許文献1)。さらに、特許文献1には、Ti表面に上記貴金属の酸化物を成膜することが記載されている。
一方、Ti圧延板の酸化被膜の上にAu膜を形成する燃料電池用セパレータが知られている(特許文献2)。
又、固体高分子型燃料電池において、アノードに供給する燃料ガスとして、取扱いが容易なメタノールを使用するダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC(direct methanol fuel cell))も開発されている。DMFCは、メタノールから直接エネルギー(電気)を取り出すことができるため、改質器などが不要で燃料電池の小型化に対応でき、携帯機器の電源としても有望視されている。
DMFCの構造としては、以下の2つが提案されている。まず第1の構造は、単セル(固体高分子型電解質膜を燃料極と酸素極で挟み込んだ膜電極接合体(以下、MEAという)を積層した積層型(アクティブ型)構造である。第2の構造は、単セルを平面方向に複数個配置した平面型(パッシブ型)構造である。これらの構造は、いずれも単セルを複数個直列に繋いだもの(以下、スタックという)であるが、このうち、パッシブ型構造は、燃料ガス(燃料液体)や空気などをセル内に供給するための能動的な燃料移送手段を必要としないため、更なる燃料電池の小型化が有望視されている。
ところで、燃料電池用セパレータは、電気伝導性を有し、各単セルを電気的に接続し、各単セルで発生したエネルギー(電気)を集電すると共に、各単セルへ供給する燃料ガス(燃料液体)や空気(酸素)の流路が形成されている。このセパレータは、インターコネクタ、バイポーラプレート、集電体とも称される。
そして、DMFC用集電体に要求される条件は、水素ガスを用いる固体高分子型燃料電池用セパレータと比較すると多い。すなわち、通常の固体高分子型燃料電池用セパレータに要求される硫酸水溶液への耐食性に加え、燃料であるメタノール水溶液への耐食性、及び蟻酸水溶液への耐食性が必要である。蟻酸は、アノード触媒上でメタノールから水素イオンが生成する際に発生する副生成物である。
このようにDMFC作動環境下では、従来の固体高分子型燃料電池用セパレータに用いる材料をそのまま適用できるとは限らない。
特開2001−297777号公報 特開2004−185998号公報
チタン材の表面粗さはステンレスと比較すると粗く、また、チタン圧延板の場合、圧延ロールとチタン素材との間に供給される圧延油が圧延時に作用する力によってチタン素材に押し込まれ、オイルピットと呼ばれる数μm〜数十μmの深さの微細な凹みが表面に形成されている。特に、オイルピットが大きな窪みに発達した場合、窪みの側壁にはAu層が形成され難く、Au層の厚みが不均一となって、燃料電池動作時の耐久性に影響を与えかねないことが分かった。特に、スパッタによってチタン圧延板上にAu層を形成する場合に、オイルピットの側壁にはAuが成膜され難い。
そして、セパレータを組み込んだ燃料電池に対して連続発電試験を行い、セパレータの流路に水素ガスを流し続けると、セパレータの凹部のうち、表面処理が不十分な部分が水素脆化を起こす可能性がある。
すなわち、本発明は、Ti基材表面にAu層又はAu合金層を形成した燃料電池用セパレータ材料において、接触抵抗を低減させ導電性を確保し、燃料電池動作時の耐久性に優れた燃料電池用セパレータ材料、それを用いた燃料電池スタックの提供を目的とする。
本発明の燃料電池用セパレータ材料は、Ti基材の表面にAu層又はAu合金層が形成され、表面の平均ピット深さをE(d)、平均ピット幅をE(l)とした時に、E(l)≦3.0μm、かつE(d)/E(l)≦0.5である。
前記Ti基材の表面の平均ピット深さをE(d)、平均ピット幅をE(l)とした時に、E(l)≦3.0μm、かつE(d)/E(l)≦0.5であることが好ましい。
前記Au合金層は、Al、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Sn及びBiからなる群より選択される少なくとも1種類以上の金属からなる第1成分とAuとの合金からなり、前記Au合金層と前記Ti基材との間に、Ti、O及び前記第1成分を含み、Au20質量%未満の中間層が存在することが好ましい。
前記中間層は、Ti、Oがそれぞれ10質量%以上でかつ前記第1成分が20質量%以上含まれる1nm以上の層として存在することが好ましい。
前記Ti基材がTi圧延板からなるストリップであり、該ストリップの表面に、前記Au層又は前記Au合金層を連続して形成してなることが好ましい。
前記Au層又は前記Au合金層において,Au40質量%以上の領域の厚みが1〜20nmであることが好ましい。
90℃で硫酸濃度0.5g/Lの水溶液に1週間浸漬後、前記Ti基材から前記Au層又は前記Au合金層を貫通する酸化チタンが、断面長さ1μm当り5個未満であることが好ましい。
前記Ti基材と、前記Au層又は前記Au合金層との間に、Oが20質量%以上50質量%以下含まれる酸化層が5nm以下の厚みで形成され、又は前記酸化層が形成されていないことが好ましい。
前記Ti基材と、前記Au層又は前記Au合金層との間に、Oが20質量%以上含まれる酸化層が5〜30nmの厚みで形成されていることが好ましい。
本発明の燃料電池用セパレータ材料は、固体高分子形燃料電池又はダイレクトメタノール型固体高分子形燃料電池に好適に用いられる。
本発明の燃料電池スタックは、前記燃料電池用セパレータ材料を用いたものである。
本発明によれば、Ti基材表面にAu層又はAu合金層を形成した燃料電池用セパレータ材料の接触抵抗を低減させ導電性を確保し、燃料電池動作時の耐久性を向上させることができる。
燃料電池用セパレータ材料の表面の深さプロファイルの例を示す図である。 図1の矢印Aのピット部分を模式的に示す図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池スタック(単セル)の断面図である。 本発明の実施形態に係る平面型燃料電池スタックの断面図である。 耐食性試験後の、燃料電池用セパレータ材料の断面のBF−STEM像を示す図である。
以下、本発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料について説明する。なお、本発明において%とは、特に断らない限り、質量%(質量%)を示すものとする。
又、本発明において「燃料電池用セパレータ」とは、電気伝導性を有し、各単セルを電気的に接続し、各単セルで発生したエネルギー(電気)を集電すると共に、各単セルへ供給する燃料ガス(燃料液体)や空気(酸素)の流路が形成されたものをいう。セパレータは、インターコネクタ、バイポーラプレート、集電体とも称される。
従って、燃料電池用セパレータとして、板状の基材表面に凹凸状の流路を設けたセパレータの他、上記したパッシブ型DMFC用セパレータのように板状の基材表面にガスやメタノールの流路孔が開口したセパレータを含む。
<燃料電池用セパレータ材料の表面の形態>
本発明の燃料電池用セパレータ材料は、Ti基材の表面にAu層又はAu合金層が形成され、表面の平均ピット深さをE(d)、平均ピット幅をE(l)とした時に、E(l)≦3.0μm、かつE(d)/E(l)≦0.5である。
ここで、E(d)は、燃料電池用セパレータ材料の表面のうち40μm×40μmの領域を1視野とし、10視野を原子間力顕微鏡(AFM)で測定し、以下のようにして求める。まず、1視野を縦横それぞれ4等分して得られる縦横合計の6本の線分の深さプロファイルをライン測定する。
1本の線分についての深さプロファイルの例を図1に示す。又、図1の矢印Aのピット部分を図2に模式的に示す。図2の深さプロファイルにおいて、周縁p1、p2を結んだ線分から垂直に0.3μmを越える深さで落ち込む孔をピットとみなし、その深さをピット深さdとし、全視野の全線分についてのピット深さdの平均値をE(d)とする。又、p1とp2との間隔をピット幅lとし、全視野の全線分についてのピット幅lの平均値をE(l)とする。
AFMとしては、例えばSPI−4000(セイコーインスツル社製)を用いることができる。
又、図2において、周縁p1、p2の位置は、比較的急峻なピットの側壁から平坦になる最初の部分とし、この最初の部分からさらに平坦な部分が続く場合は、そこからさらに立ち上がる側壁に繋がる周縁p3は含まない。又、周縁p1、p2の位置の採り方は必ずしも一義的でなく、若干の変動があるが、周縁p1、p2の位置が変動しても、dはそれほど変わらない。これは、上記したように、急峻なピットの側壁に繋がる部分を周縁とみなすからである。
又、p4はピットの側壁から平坦になる最初の部分であるが、p4からさらに側壁が急峻に立ち上がってp2に至る。このように、急峻な側壁が再度生じる場合は、急峻な側壁がすべて終わる部分p2を「周縁」とみなす。
E(l)が3.0μmより大きいと、燃料電池用スタックを構成したときに、幅が広い(3.0μmを超える)窪みがセパレータ表面に存在し、その窪み部分でセパレータ同士が接触し難くなる。そして、燃料電池に通常負荷される加重の範囲内(2〜10kg/cm)では、セパレータの接触抵抗が増大し、燃料電池の出力が低下する。この場合、燃料電池に負荷する荷重を大きくすればセパレータの接触抵抗が低くなるが、加重が大きくなり過ぎてセパレータ流路が変形して不具合を発生してしまう場合がある。
E(d)/E(l)は、ピットのアスペクト比を表し、アスペクト比が大きいほど、ピットの幅が同じでも深さがより深くなる。そして、E(d)/E(l)が0.5を超えると、ピットの内面(側壁)にAu層やAu合金層を形成し難く、Au層やAu合金層が十分に形成されずに被膜欠陥が生じる。特に、スパッタによりAu層やAu合金層を形成する場合に、スパッタ投影面積に対してピット内部(側壁)の面積が大きくなり、ピット側壁がスパッタされ難くなる。
E(d)/E(l)≦0.2とするのが好ましく、E(d)/E(l)≦0.1とするのがより好ましい。
なお、E(d)>0.2μmとする。これより小さいと基材の表面粗さと区別が付き難く、E(d)の測定が精度よく行えないからである。
<チタン基材>
燃料電池用セパレータ材料には耐食性と導電性が要求され、基材には耐食性が求められる。このため基材として耐食性が良好なチタンを用い、好ましくはチタンの圧延板を用いる。
Ti基材の材質はチタンであれば特に制限されない。又、Ti圧延板の場合、厚みが10μm以上であることが好ましい。
Ti基材の表面についても、E(l)≦3.0μm、かつE(d)/E(l)≦0.5の関係を有する。数〜数十nmのAu層又はAu合金層をTi基材上に成膜する場合、Au層又はAu合金層の厚みがTi基材の表面構造の大きさに比べて極めて薄いため、Au層又はAu合金層の表面形状はTi基材の表面形状を反映し、上記したE(l)及びE(d)/E(l)の値となる。なお、本発明では、Au層又はAu合金層を形成前のTi基材表面のピットをオイルピットと称し、Au層又はAu合金層形成後の表面のピットをピットと称するが、両者は同一である。
なお、Ti基材のオイルピットは、圧延ロールのRaで変わる。実際の生産ラインでTi圧延板を連続圧延する場合、Ra0.06μm程度のロールが使用されるが、チタンはステンレスと比較すると材料が軟らかく、ロールと焼付けを起こしやすい。このため、圧延中にロールを交換せず、同じロールを使用し続けると、材料はさらに焼付きやすくなり、結果としてTi圧延板のオイルピットも粗くなってしまう。従って、圧延ロールのRaを管理することで、Ti圧延板のオイルピットを制御し、上記したE(l)及びE(d)/E(l)の値を実現することができる。具体的には、最終パス又は最終パス前に新しいロールに交換して圧延を行うことが望ましい。さらには、最終圧延後、表面粗度を整えるためのスキンパス圧延を行うことも有効である。
本発明においては、燃料電池用セパレータ材料の最表面にAu層又はAu合金層が形成されていればよく、チタン基材とAu層又はAu合金層との間に各種の層が介在していてもよい。
具体的には、チタン基材上に直接Au層又はAu合金層が形成されていてもよく、又、Au層又はAu合金層の密着性を確保するため、基材とAu層又はAu合金層との間に,後述する酸化層や中間層が介装されていてもよい。
<Au層又はAu合金層>
Au層又はAu合金層は、Ti基材表面に形成されて高い導電性を確保するものである。導電性を確保する点から、Au層又はAu合金層において、Au40質量%以上の領域の厚みが1〜20nmであることが好ましい。ここで、本発明においては、Au層又はAu合金層の厚みが薄いため、「Au層」といっても最表面から下地のTi圧延板までの深さが完全にAu100%であることはない。そのため、上記したように、Au層又はAu合金層においても「Au40質量%以上の領域の厚み」を規定する必要がある。
Au層又はAu合金層において、Au40質量%以上の領域の厚みが1nm未満であると、得られたセパレータ材料の導電性や耐食性が劣り、20nmを超えるとコストアップになる場合がある。Au層又はAu合金層の厚みは、より好ましくは2nm以上、さらには好ましくは4nm以上である。Au層又はAu合金層の厚みは、XPS分析の際、SiO換算での走査距離の実寸である。
なお、Au層又はAu合金層において、Au40質量%以上の領域の厚みを20nm以下としても、被膜欠陥(ピンホール)を少なくする方法としては、Ti基材表面にAuをスパッタする条件を適切に設定することが挙げられる。
スパッタ時のアルゴン圧力やスパッタ出力が高いと、スパッタ粒子とアルゴン分子の衝突が多くなるために均一な皮膜構造が得られ難く、被膜欠陥(ピンホール)が生じやすい。従って、アルゴン圧力やスパッタ出力を適正な範囲にすることで欠陥の少ないAu層又はAu合金層を成膜することができる。例えば、アルゴン圧力0.2〜0.5Pa、スパッタ出力50〜75Wとすることが望ましい。
Au層又はAu合金層の濃度と厚みは、XPS分析の深さ(Depth)プロファイルによりAu, Ti,O,C、及び合金層成分の濃度分析をすることにより算出することができる。なお厚みはXPS分析の際、SiO換算での走査距離の実寸である。
<Au合金層>
Au合金層としては、Auと合金を形成するものが例示でき、Au合金層の表面側がAu層となっていてもよい。
Au合金層は、XPS分析により確認することができ、XPS分析により最表面から下層に向かってAu40質量%以上で厚み1nm以上を有する部分であって、以下の中間層より上層に位置する部分をAu合金層とする。Au合金層の厚みは1〜100nmであることが好ましい。Au合金層の厚みが1nm未満であると、Ti基材上に燃料電池用セパレータに要求される耐食性を確保できなくなる場合がある。Au合金層の厚みが100nmを超えると省金化が図られずコストアップとなる場合がある。
又、Au合金層において、最表面から下層に向かう厚み1nm以上の領域のAu濃度が40質量%未満であると、燃料電池用セパレータに要求される耐食性を確保できなくなる。
燃料電池作動環境下での耐久性(耐脆化性)をより一層改善しようとするためには、Au合金層として、Al、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Sn及びBiからなる群より選択される少なくとも1種類以上の金属からなる第1成分とAuとの合金層を用いることが好ましい。第1成分を含むAu合金層は、Ti基材にAuの特性(耐食性、導電性等)や耐水素脆性を付与する。
第1成分として選択される上記金属は、a)酸素と結合しやすい、b)Auと合金を構成する、c)水素を吸収し難い、という性質を有しており、Au合金層に上記した機能を付与するとともに、中間層を形成して合金層とTi基材との密着性を向上させる。
上記金属は電位-pH図からAuより易酸化性であり、また水素を吸収しにくい特性を利用し、上記第1成分を以下の中間層の構成元素として用いる。また第1成分は単一の元素から成っていてもよく、複数の元素から成っていてもよいが、耐食性、導電性及び耐久性の観点からCr、Moが好ましい。
<中間層>
Au合金層として、上記した第1成分とAuとの合金層を用いた場合、この合金層とTi基材との間に、Ti、O及び前記第1成分を含み、Au20質量%未満の中間層が存在する。
通常、Ti基材は表面に酸化層を有しており、酸化され難いAu(含有)層をTi表面に直接形成させるのは難しい。一方、上記第1成分はAuに比べて酸化され易く、Ti基材の表面でTi酸化物中のO原子と酸化物を形成し、Ti基材表面に強固に結合するものと考えられる。
又、上記第1成分は水素を吸収しにくい。これらの点で、Auを含んだ導電性膜(上記合金層又はAu単独層)の厚みが数10nm以下の場合には、従来、中間層として単にTi,Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W等を用いた場合に比べ、Ti、O及び前記第1成分から中間層を形成することにより、耐久性が良好なセパレータ材を提供できる。
なお中間層にはAuは含まれないほうが好ましく、Auが20 質量%以上含まれると密着性が低下する。中間層中のAu濃度を20質量%未満とするためには、Ti基材上に、第1成分単体のターゲット、又は低Au濃度の第1成分−Au合金ターゲットを用いてスパッタすることが好ましい。
中間層は、Ti、Oがそれぞれ10質量%以上でかつ第1成分が20質量%以上含まれる1nm以上の層として存在することが好ましい。この場合、燃料電池用セパレータ材料の断面をXPSで分析したとき、Ti、Oがそれぞれ10質量%以上でかつ第1成分が20 質量%以上含まれると共に、Auが20 質量%以上含まれる領域が厚み方向に1nm以上存在する。このような組成を有する中間層の厚みの上限は限定されないが、第1成分のコストの点から100nm以下であることが好ましい。
Ti、Oの下限をそれぞれ10質量%とし、第1成分の下限を20質量%とした理由は、第1成分が20 質量%未満である部分はTi基材の表面に近く、Tiが10 質量%未満である部分は合金層に近くなるためであり、又、Oが10 質量%未満である部分は第1成分とTiがO原子と充分な酸化物を形成しておらず、中間層として機能しないと考えられるからである。又、Ti、Oはそれぞれ10質量%から急激に減少するので、測定上から10質量%を下限とする。Auを20 質量%未満とした理由は密着性を向上させるためである。
なお厚みはXPS分析の際、SiO換算での走査距離の実寸である。
<耐食性試験>
以上のようにして得られた燃料電池用セパレータ材料を、90℃で硫酸濃度0.5g/Lの水溶液に1週間浸漬後、厚み方向の断面試料を作製し、この断面を観察したとき、Ti基材からAu層又はAu合金層を貫通する酸化チタンが、断面長さ1μm当り5個未満であることが好ましい。Au層又はAu合金層を貫通する酸化チタンは、Au層又はAu合金層の被膜欠陥の存在を示すと考えられ、被膜欠陥から上記水溶液が浸透し、Ti基材表面の酸化膜を成長させ、上記した被膜欠陥を突き破って表出する。
そして、Au層又はAu合金層を貫通する酸化チタンの個数と、燃料電池用セパレータ材料の不良(接触抵抗の増加)には相関があることが判明している。Au層又はAu合金層を貫通する酸化チタンが5個を超える場合には、燃料電池用セパレータ材料の接触抵抗が増加し、燃料電池用セパレータ材料を電池に組んだ際、連続発電試験後の出力電圧が低下する傾向がある。
Au層又はAu合金層の被膜欠陥は、TEM(透過型電子顕微鏡)レベルの分析機器でも判別できないが、上記水溶液中の加速試験を利用することにより簡単に判別することができる。Au層又はAu合金層を貫通する酸化チタンが断面長さ1μm当り5個未満であれば、発電特性が良好となる燃料電池用セパレータ材料が短時間で判断できる。
図1は、上記水溶液中で耐食性試験後の、燃料電池用セパレータ材料(実施例6)の断面のBF−STEM像を示す。又この断面をEDXでマッピングして判明した組成を、図1上に記載している。酸化チタンがAu層を貫通することがわかる。
<酸化層>
Au層の密着性や導電性を確保するためには、Ti基材表面に形成される酸化層が薄いほうが望ましい。
(1)第1の場合は、Oが20質量%以上50質量%以下含まれる領域を酸化層とし、酸化層が5nm以下の厚みで形成されている場合である。第1の場合としては、上記した中間層等を介さずに、Ti基材表面に直接Au層やAu合金層を設ける場合が相当する。
Oを20質量%以上含まれる領域を酸化層とした理由は、酸化層のO(酸素)濃度が20質量%未満であると、燃料電池の連続発電試験を行った場合にチタン基材が脆化して燃料電池用セパレータ材料としての耐久性が劣化するためである。
一方、酸化層中のO(酸素)濃度が50質量%以上になると、Ti基材上にAu層が均一に成膜されているように見えても、密着性が劣り、実際に燃料電池として動作中にAu層やAu合金層が剥がれることがある。
酸化層の厚みが5nmを超えると、Ti基材表面に形成したAu層又はAu合金層の密着性が低下する。
(2)第2の場合は、Oが20質量%以上含まれる領域を酸化層とし、酸化層が5〜30nmの厚みで形成されている場合である。第2の場合としては、第1の場合より燃料電池用セパレータ材料の耐久性を向上させたい場合が挙げられる。
つまり、上述したように、Ti基材表面の上記酸化層が5nmを超えている状態で直接Au層を成膜すると、Au層の密着性が劣化する。しかし、燃料電池作動環境下でのセパレータの耐久性(耐脆化性)を向上させる為には、予めTi基材の表面に10→6nm程度の厚みで酸化層(以下、上記した本発明で規定する酸化層と区別するため、「原始酸化層」と称する)が形成されている必要がある。但し、Ti基材に形成された原始酸化層は、表面側でO濃度が50質量%を超えるため、上記したようにAu層又はAu合金層の密着性を低下させる場合がある。そこで、表面に原始酸化層が形成されているTi基材の表面に、厚み1nm以上のTi被膜を形成すると、原始酸化層の表面側のO濃度が低下し、Oが20質量%以上含まれる酸化層を5〜30nmの厚みで形成することができる。
ここで、Ti基材を空気中に放置すると、その表面に原始酸化層(TiO)が自然に形成されるが、これだけでは上記した酸化層を5nm以上の厚みで形成するには不充分なことがある。そこで、Ti基材を積極的に酸化させ、6nm程度の厚みになるまで原始酸化層を形成させてもよい。酸化させる方法としては、陽極酸化処理、雰囲気焼鈍等が挙げられる。なお、Ti基材の表面に形成されている酸化層も、通常はOを20質量%以上含む。
原始酸化層が6nm程度形成されたTiの表面に、さらにTi被膜を形成する際、そのTi被膜の厚みが1nm未満であると、表面側のO濃度が充分に低下しない場合がある。従って、このTi被膜の厚みが2nm以上であるとより好ましい。又、得られた燃料電池用セパレータ材料の導電性を低下させない(酸化層を30nm以下にする)ためには、Ti被膜の厚みは10nm未満であることが好ましい。
なお、Ti基材表面に予め形成させる原始酸化層が厚過ぎる(概ね、10nmを超える)場合、上記したTi被膜を厚く(10nm以上)形成すれば表面側のO濃度が低下するものの、得られた酸化層が厚くなり過ぎ(30nmを超え)るので、導電性を低下させる。又、厚過ぎる原始酸化層は、後述するAu層成膜前の前処理である逆スパッタを長時間行っても薄くすることができない。
ここで、最終的な酸化層のOの濃度や厚みは、Ti基材に形成された原始酸化層や、Ti皮膜をさらに成膜することにより制御できる。
第1の場合、第2の場合のいずれにおいても、酸化層のOの濃度、及び酸化層の厚みは、XPS(X線光電子分光)分析の深さ(Depth)プロファイルにより、Au, Ti,O,Cの濃度分析することにより算出することができる。なお厚みはXPS分析の際、SiO換算での走査距離の実寸である。
<5nm以下の酸化層を有する燃料電池用セパレータ材料の製造>
5nm以下の酸化層を有する燃料電池用セパレータ材料は、例えば以下のように製造することができる。まず、Ti基材表面の原始酸化層(Ti基材に最初から形成されている酸化層)が3nm程度の厚みを有するかを確認し、原始酸化層の厚みが厚ければ、Ti基材をスパッタ前にフッ化物含有前処理液で処理して、原始酸化層の厚みを3nm以下とする。
次に、必要に応じ、Ti基材表面のクリーニング及び原始酸化層の調整を目的として逆スパッタ(イオンエッチング)を行う。逆スパッタは、例えばRF100W程度の出力で、アルゴン圧力0.2Pa程度としてアルゴンガスをTi基材に照射して行うことができる。
そして、Au層を形成するためのAuターゲットとしたスパッタにより、Au層又はAu合金層を、Ti基材の上に成膜する。
<5〜30nmの酸化層を有する燃料電池用セパレータ材料の製造>
5〜30nmの酸化層を有する燃料電池用セパレータ材料は、例えば以下のように製造することができる。まず、Ti基材表面の原始酸化層が10nm程度の厚みを有するかを確認し、原始酸化層の厚みが薄ければ、Ti基材を積極的に酸化させてその厚みを10nm程度にする。
次に、必要に応じ、Ti基材表面のクリーニング及び原始酸化層の調整を目的として逆スパッタ(イオンエッチング)を行う。逆スパッタは、例えばRF100W程度の出力で、アルゴン圧力0.2Pa程度としてアルゴンガスをTi基材に照射して行うことができる。
次に、Ti基材の原始酸化層の表面に、厚み1nm以上のTi被膜を形成し、原始酸化層の表面側のO濃度を低下させ、上記した組成と厚みの酸化層を形成する。
そして、Au層を形成するためのAuターゲット用いたスパッタにより、Au層又はAu合金層を酸化層の上に成膜する。
<中間層を有する燃料電池用セパレータ材料の製造>
中間層を有する燃料電池用セパレータ材料の形成方法としては、Ti基材の表面Ti酸化膜を除去せずに、このTi基材に第1の成分をターゲットとしてスパッタ成膜することにより、表面Ti酸化膜中のOに第1の成分が結合し、中間酸化層を形成することができる。又、Ti基材の表面Ti酸化膜を除去後、第1の成分の酸化物をターゲットとしてスパッタ成膜することや、Ti基材2の表面Ti酸化膜を除去後、第1の成分をターゲットとし酸化雰囲気でスパッタ成膜することによっても中間酸化層を形成することができる。
なお、スパッタの際、Ti基材の表面Ti酸化膜を適度に除去し、基材表面のクリーニングを目的として逆スパッタ(イオンエッチング)を行ってもよい。逆スパッタは、例えばRF100W程度の出力で、アルゴン圧力0.2Pa程度としてアルゴンガスを基材に照射して行うことができる。
そしてAuのスパッタにより、Au原子が中間層に入り込むことによって、Au合金層が形成される。又、第1成分とAuを含む合金ターゲットを用いてTi基材表面にスパッタ成膜してもよい。
<燃料電池用セパレータ>
次に、本発明の燃料電池用セパレータ材料を用いた燃料電池用セパレータについて説明する。燃料電池用セパレータは、上記した燃料電池用セパレータ材料を所定形状に加工してなり、燃料ガス(水素)又は燃料液体(メタノール)、空気(酸素)、冷却水等を流すための反応ガス流路又は反応液体流路(溝や開口)が形成されている。
<積層型(アクティブ型)燃料電池用セパレータ>
図3は、積層型(アクティブ型)燃料電池の単セルの断面図を示す。なお、図3では後述するセパレータ10の外側にそれぞれ集電板140A,140Bが配置されているが、通常、この単セルを積層してスタックを構成した場合、スタックの両端にのみ一対の集電板が配置される。
そして、セパレータ10は電気伝導性を有し、後述するMEAに接して集電作用を有し、各単セルを電気的に接続する機能を有する。又、後述するように、セパレータ10には燃料ガスや空気(酸素)の流路となる溝が形成されている。
図3において、固体高分子電解質膜20の両側にそれぞれアノード電極40とカソード電極60とが積層されて膜電極接合体(MEA;Membrane Electrode Assembly)80が構成されている。又、アノード電極40とカソード電極60の表面には、それぞれアノード側ガス拡散膜90A、カソード側ガス拡散膜90Bがそれぞれ積層されている。本発明において膜電極接合体という場合、ガス拡散膜90A、90Bを含んだ積層体としてもよい。又、例えばアノード電極40やカソード電極60の表面にガス拡散層が形成されている等の場合は、固体高分子電解質膜20、アノード電極40、カソード電極60の積層体を膜電極接合体と称してもよい。
MEA80の両側には、ガス拡散膜90A、90Bにそれぞれ対向するようにセパレータ10が配置され、セパレータ10がMEA80を挟持している。MEA80側のセパレータ10表面には流路10Lが形成され、後述するガスケット12、流路10L、及びガス拡散膜90A(又は90B)で囲まれた内部空間20内をガスが出入可能になっている。
そして、アノード電極40側の内部空間20には燃料ガス(水素等)が流れ、カソード電極60側の内部空間20に酸化性ガス(酸素、空気等)が流れることにより、電気化学反応が生じるようになっている。
アノード電極40とガス拡散膜90Aの周縁の外側は、これらの積層厚みとほぼ同じ厚みの枠状のシール部材31で囲まれている。又、シール部材31とセパレータ10の周縁との間には、セパレータに接して略枠状のガスケット12が介装され、ガスケット12が流路10Lを囲むようになっている。さらに、セパレータ10の外面(MEA80側と反対側の面)にはセパレータ10に接して集電板140A(又は140B)が積層され、集電板140A(又は140B)とセパレータ10の周縁との間に略枠状のシール部材32が介装されている。
シール部材31及びガスケット12は、燃料ガス又は酸化ガスがセル外に漏れるのを防止するシールを形成する。又、単セルを複数積層してスタックにした場合、セパレータ10の外面と集電板140A(又は140B)との間の空間21には空間20と異なるガス(空間20に酸化性ガスが流れる場合、空間21には水素が流れる)が流れる。従って、シール部材32もセル外にガスが漏れるのを防止する部材として使われる。
そして、MEA80(及びガス拡散膜90A、90B)、セパレータ10、ガスケット12、集電板140A、140Bを含んで燃料電池セルが構成され、複数の燃料電池セルを積層して燃料電池スタックが構成される。
図3に示す積層型(アクティブ型)燃料電池は、上記した水素を燃料として用いる燃料電池のほか、メタノールを燃料として用いるDMFCにも適用することができる。
<平面型(パッシブ型)燃料電池用セパレータ>
図4は、平面型(パッシブ型)燃料電池の単セルの断面図を示す。なお、図4では後述するセパレータ10の外側にそれぞれ集電板140A,140Bが配置されているが、通常、この単セルを積層してスタックを構成した場合、スタックの両端にのみ一対の集電板が配置される。
なお,図4において、MEA80の構成は図3の燃料電池と同一であるので同一符号を付して説明を省略する(図4では、ガス拡散膜90A、90Bの記載を省略しているが、ガス拡散膜90A、90Bを有していてもよい)。
図4において、セパレータ100は電気伝導性を有し、MEAに接して集電作用を有し、各単セルを電気的に接続する機能を有する。又、後述するように、セパレータ100には燃料液体や空気(酸素)の流路となる孔が形成されている。
セパレータ100は、断面がクランク形状になるよう、長尺平板状の基材の中央付近に段部100sを形成してなり、段部100sを介して上方に位置する上側片100bと、段部100sを介して下方に位置する下側片100aとを有する。段部100sはセパレータ100の長手方向に垂直な方向に延びている。
そして、複数のセパレータ100を長手方向に並べ、隣接するセパレータ100の下側片100aと上側片100bとの間に空間を形成させ、この空間にMEA80を介装する。2つのセパレータ100でMEA80が挟まれた構造体が単セル300となる。このようにして、複数のMEA80がセパレータ100を介して直列に接続されたスタックが構成される。
図4に示す平面型(パッシブ型)燃料電池は、上記したメタノールを燃料として用いるDMFCのほか、水素を燃料として用いる燃料電池にも適用することができる。又、平面型(パッシブ型)燃料電池用セパレータの開口部の形状や個数は限定されず、開口部として上記した孔の他、スリットとしてもよく、セパレータ全体が網状であってもよい。
<燃料電池用スタック>
本発明の燃料電池用スタックは、本発明の燃料電池用セパレータ材料を用いてなる。
燃料電池用スタックは、1対の電極で電解質を挟み込んだセルを複数個直列に接続したものであり、各セルの間に燃料電池用セパレータが介装されて燃料ガスや空気を遮断する。燃料ガス(H2)が接触する電極が燃料極(アノード)であり、空気(O2) が接触する電極が空気極(カソード)である。
燃料電池用スタックの構成例は、既に図3及び図4で説明した通りであるが、これに限定されない。
<試料の作製>
厚み100μmの工業用純チタン材(JIS1種)のストリップを、圧延ロールの使用条件を以下のように変えて冷間圧延し、表面の中心線平均表面Raの異なるTi圧延板を用意した。
圧延条件A:圧延ロール粗さ(Ra)が0.06で、最終パスを新しいロールに交換し圧延、最終パス圧延後、さらにスキンパス圧延を実施
圧延条件B:圧延ロール粗さ(Ra)が0.06で、最終パスを新しいロールに交換し圧延
圧延条件C:圧延ロール粗さ(Ra)が0.1で、最終パスを新しいロールに交換し圧延
圧延条件D:圧延ロール粗さ(Ra)が0.06で、最終パスもロール交換せず圧延
圧延条件E:圧延ロール粗さ(Ra)が0.1で最終パスもロール交換せず圧延
次に、各Ti圧延板の表面に、スパッタ法を用いて所定の目標厚みとなるように、Cr、MoまたはTi(金属膜)を成膜した。次に、スパッタ法を用いて所定の目標厚みとなるようにAuを成膜した(なお、実施例6は、Ti基材の表面の原始酸化層を酸によって3nmに調整したのち、直接Auを成膜した。)。
なお、Tiのスパッタの前に、基材表面のクリーニングを目的として逆スパッタ(イオンエッチング)を出力RF100W アルゴン圧力0.2Paの条件で行った。
目標厚みは以下のように定めた。まず、予め銅箔材にスパッタで対象物(例えばTi)を成膜し、蛍光X線膜厚計(Seiko Instruments製SEA5100、コリメータ0.1mmΦ)で実際の厚みを測定し、このスパッタ条件におけるスパッタレート(nm/min)把握した。そして、把握したスパッタレートに基づき各条件でスパッタを行った。
Cr,Mo, Ti及びAuのスパッタは、株式会社アルバック製のスパッタ装置を用い、出力DC50W アルゴン圧力0.2Paの条件で行った。
各試料の圧延条件、スパッタ条件等を表1に示す。なお、比較例8の試料は、Ti圧延板を冷間圧延する際の圧延ロールとして、10トン以上のTi圧延板をメンテナスせずに連続圧延した後のロールを用いた。
<層構造の測定>
得られた試料は、XPS(X線光電子分光)分析の深さ(Depth)プロファイルによりAu, Ti,O,C,第1成分(Cr,Mo)の濃度分析することにより、層構造を測定した。XPS装置としては、アルバック・ファイ株式会社製5600MCを用い、到達真空度:6.5×10−8Pa、励起源:単色化AlK、出力:300W、検出面積:800μmΦ、入射角:45度、取り出し角:45度、中和銃なしとし、以下のスパッタ条件で、測定した。
イオン種:Ar+
加速電圧:3kV
掃引領域:3mm×3mm
レート:3.7nm/min(SiO2換算)
なお、XPSによる濃度検出は、指定元素の合計100質量%として、各元素の濃度(質量%)を分析した。又、XPS分析で厚み方向に1nmの距離とはXPS分析によるチャート(図1)の横軸の距離(SiO2換算での距離)である。
<Au層を貫通する酸化チタンの数の測定>
Au層を貫通する酸化チタンは、BF−STEMで試料を断面観察し、その部分をEDXマッピングすること(分析元素:Au,Ti,O,C)で測定した。図5は、耐食性試験後の燃料電池用セパレータ材料(実施例6)の断面のBF−STEM像であり、この部分をEDXマッピング分析すると、図5に記載した組成になっていることが確認できた。図5によれば、Au層を貫通する酸化チタンが形成されたことがわかる。
なお測定に用いたSTEMは、日立製作所のHD−2000STEMであり、1つのセパレータ材に対して10視野任意の場所を測定した。
各試料について以下の評価を行った。
A.平均ピット深さE(d)、平均ピット幅E(l)の測定
AFM(セイコーインスツル社製のSPI−4000)を用い、Au成膜前のTi圧延板の表面、及びAu成膜後の表面の形状を測定した。AFMのモードはE−Eweepで行い、測定モード:DFM(ノンコンタクト・サイクリックコンタクト)、走査範囲:1視野当り40μm×40μmで、10視野につき測定を行った。
まず、1視野を縦横それぞれ4等分して得られる縦横合計の6本の線分の深さプロファイルをライン測定した。図1は、実施例2の試料において、1本の線分についての深さプロファイルを示す。この深さプロファイルにおいて、周縁p1、p2を結んだ線分から垂直に0.3μmを越える深さで落ち込む孔をピットとみなし、その深さをピット深さdとし、全視野の全線分についてのピット深さdの平均値をE(d)とした。
又、p1とp2との間隔をピット幅lとし、全視野の全線分についてのピット幅lの平均値をE(l)とした。
B.接触抵抗
接触抵抗の測定は、試料全面に荷重を加える方法で行った。まず、40×50mmの板状の試料の片側にそれぞれカーボンペーパーを積層し、さらにその両側にそれぞれCu/Ni/Au板を積層した。Cu/Ni/Au板は厚み10mmの銅板に1.0μm厚のNi下地めっきをし、Ni層の上に0.5μmのAuめっきした材料であり、Cu/Ni/Au板のAuめっき面が試料やカーボンペーパーに接するように配置した。
さらに、Cu/Ni/Au板の外側にそれぞれテフロン(登録商標)板を配置し、各テフロン(登録商標)板の外側からロードセルで圧縮方向に10kg/cmの荷重を加えた。この状態で、2枚のCu/Ni/Au板の間に電流密度100mA/cmの定電流を流した時、Cu/Ni/Au板間の電気抵抗を4端子法で測定した。
又、接触抵抗は、以下の条件により硫酸水溶液中に試料を浸漬した耐食試験の前後でそれぞれ測定した。
硫酸水溶液(浴温90℃、濃度0.5g/L、浸漬時間166時間[1週間])
又、燃料電池用セパレータに求められる代表的な特性は、低接触抵抗(10mΩ・cm以下)、使用環境での耐食性(耐食試験後も低接触抵抗で、有害なイオンの溶出がない)の2つである。
燃料電池用セパレータに求められる代表的な特性は、低接触抵抗(10mΩ・cm以下)、使用環境での耐食性(耐食試験後も低接触抵抗で、有害なイオンの溶出がない)の2つである。
得られた結果を表1に示す。
表1から明らかなように、Au層表面(及びTi圧延板表面)のE(l)≦3.0μm、かつE(d)/E(l)≦0.5である実施例1〜6の場合、接触抵抗が低く導電性に優れるものとなった。
なお、実施例1〜3の試料の断面をXPSで分析したところ、Ti、Oがそれぞれ10質量%以上でかつCrが20 質量%以上含まれると共に、Auが20 質量%以上含まれる領域(中間層)が厚み方向に1nm以上存在した。さらに最表面から下層に向かってAu40質量%以上のAu(合金)層が厚み1nm以上存在した。中間層はAu合金層とTi圧延板の間に存在した。
又、実施例4の試料の断面をXPSで分析したところ、Ti、Oがそれぞれ10質量%以上でかつMoが20 質量%以上含まれると共に、Auが20 質量%以上含まれる領域(中間層)が厚み方向に1nm以上存在した。さらに最表面から下層に向かってAu40質量%以上のAu(合金)層が厚み1nm以上存在した。中間層はAu合金層とTi圧延板の間に存在した。
又、実施例5の試料の断面のXPS像を測定したところ、Oが20質量%以上50質量%未満の酸化層が5〜30nm存在し、さらに最表面から下層に向かってAu40質量%以上のAu層が厚み1nm以上存在した。
実施例6の試料を耐食性試験した結果、Au層を貫通する酸化チタンの数が5個/μm未満であった。
一方、Au層表面(及びTi圧延板表面)のE(l)が3.0μmを超えた比較例7,8の場合、耐食性試験前の接触抵抗が目標値より高くなり導電性に劣った。また、比較例8,9の場合、E(d)/E(l)が0.5を超え、このピット部分におけるAu層、Cr等の第1成分、Ti層の成膜が不均一となり、耐食性試験後の接触抵抗が高くなった。

Claims (12)

  1. Ti基材の表面にAu層又はAu合金層が形成され、表面の平均ピット深さをE(d)、平均ピット幅をE(l)とした時に、E(l)≦3.0μm、かつE(d)/E(l)≦0.5である燃料電池用セパレータ材料。
  2. 前記Ti基材の表面の平均ピット深さをE(d)、平均ピット幅をE(l)とした時に、E(l)≦3.0μm、かつE(d)/E(l)≦0.5である請求項1に記載の燃料電池用セパレータ材料。
  3. 前記Au合金層は、Al、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Sn及びBiからなる群より選択される少なくとも1種類以上の金属からなる第1成分とAuとの合金からなり、
    前記Au合金層と前記Ti基材との間に、Ti、O及び前記第1成分を含み、Au20質量%未満の中間層が存在する請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータ材料。
  4. 前記中間層は、Ti、Oがそれぞれ10質量%以上でかつ前記第1成分が20質量%以上含まれる1nm以上の層として存在する請求項3に記載の燃料電池用セパレータ材料。
  5. 前記Ti基材がTi圧延板からなるストリップであり、該ストリップの表面に、前記Au層又は前記Au合金層を連続して形成してなる請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料。
  6. 前記Au層又は前記Au合金層において,Au40質量%以上の領域の厚みが1〜20nmである請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料。
  7. 90℃で硫酸濃度0.5g/Lの水溶液に1週間浸漬後、前記Ti基材から前記Au層又は前記Au合金層を貫通する酸化チタンが、断面長さ1μm当り5個未満である請求項1〜6のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料。
  8. 前記Ti基材と、前記Au層又は前記Au合金層との間に、Oが20質量%以上50質量%以下含まれる酸化層が5nm以下の厚みで形成され、又は前記酸化層が形成されていない請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料。
  9. 前記Ti基材と、前記Au層又は前記Au合金層との間に、Oが20質量%以上含まれる酸化層が5〜30nmの厚みで形成されている請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料。
  10. 固体高分子形燃料電池に用いられる請求項1〜9のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料。
  11. ダイレクトメタノール型固体高分子形燃料電池に用いられる請求項1〜9のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料を用いた燃料電池スタック。
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