JP2010123330A - 燃料電池用セパレータ材料、それを用いた燃料電池用セパレータ、及び燃料電池スタック - Google Patents

燃料電池用セパレータ材料、それを用いた燃料電池用セパレータ、及び燃料電池スタック Download PDF

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Abstract

【課題】チタン基材表面にAu層又はAuを含む層を強固かつ均一に形成可能で、燃料電池用セパレータに要求される耐食性も確保できる燃料電池用セパレータ材料を提供する。
【解決手段】Ti基材2の表面に、Auより易酸化性のAgとAuとの合金層6が形成され、合金層とTi基材との間にTi、O及び前記Agを含み、Au20質量%未満の中間層が存在し、合金層又はAu単独層において、最表面から下層に向かってAu50質量%以上で厚み1nm以上の領域を有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、表面にAu又はAu合金(Auを含む層)が形成された燃料電池用セパレータ材料、それを用いた燃料電池用セパレータ、及び燃料電池スタックに関する。
固体高分子型の燃料電池用セパレータとして、従来はカーボン板にガス流通路を形成したものが使用されていたが、材料コストや加工コストが大きいという問題がある。一方、カーボン板の代わりに金属板を用いる場合、高温で酸化性の雰囲気に曝されるために腐食や溶出が問題となる。このようなことから、Ti板表面にAu,Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPt等から選ばれる貴金属とAuとの合金をスパッタ成膜して導電部分を形成する技術が知られている(特許文献1)。さらに、特許文献1には、Ti表面に上記貴金属の酸化物を成膜することが記載されている。
一方、Ti基材の酸化被膜の上に、Ti,Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W等からなる中間層を介してAu膜を形成する燃料電池用セパレータが知られている(特許文献2)。この中間層は、基材酸化膜との密着性、すなわちO(酸素原子)との結合性が良いとともに、金属または半金属のためにAu膜との密着性、結合性が良いとされている。
又、固体高分子型燃料電池において、アノードに供給する燃料ガスとして、取扱いが容易なメタノールを使用するダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC(direct methanol fuel cell))も開発されている。DMFCは、メタノールから直接エネルギー(電気)を取り出すことができるため、改質器などが不要で燃料電池の小型化に対応でき、携帯機器の電源としても有望視されている。
DMFCの構造としては、以下の2つが提案されている。まず第1の構造は、単セル(固体高分子型電解質膜を燃料極と酸素極で挟み込んだ膜電極接合体(以下、MEAという)を積層した積層型(アクティブ型)構造である。第2の構造は、単セルを平面方向に複数個配置した平面型(パッシブ型)構造である。これらの構造は、いずれも単セルを複数個直列に繋いだもの(以下、スタックという)であるが、このうち、パッシブ型構造は、燃料ガス(燃料液体)や空気などをセル内に供給するための能動的な燃料移送手段を必要としないため、更なる燃料電池の小型化が有望視されている(特許文献3)。
ところで、燃料電池用セパレータは、電気伝導性を有し、各単セルを電気的に接続し、各単セルで発生したエネルギー(電気)を集電すると共に、各単セルへ供給する燃料ガス(燃料液体)や空気(酸素)の流路が形成されている。このセパレータは、インターコネクタ、バイポーラプレート、集電体とも称される。
そして、DMFC用集電体に要求される条件は、水素ガスを用いる固体高分子型燃料電池用セパレータと比較すると多い。すなわち、通常の固体高分子型燃料電池用セパレータに要求される硫酸水溶液への耐食性に加え、燃料であるメタノール水溶液への耐食性、及び蟻酸水溶液への耐食性が必要である。蟻酸は、アノード触媒上でメタノールから水素イオンが生成する際に発生する副生成物である。
このようにDMFC作動環境下では、従来の固体高分子型燃料電池用セパレータに用いる材料をそのまま適用できるとは限らない。
特開2001−297777号公報 特開2004−185998号公報 特開2005−243401号公報
しかしながら、上記した特許文献1記載の技術の場合、密着性の良いAu合金膜を得るためには、チタン基材表面の酸化皮膜を取り除く処理が必要であり、酸化被膜の除去が不充分な場合は貴金属膜の密着性が低下するという問題がある。
又、特許文献2には、基材表面の酸化皮膜の表面に導電性薄膜を形成することが規定されているが、例えば、チタン基材表面に酸化皮膜を残したまま、Auを成膜しようとすると、均一に成膜されない。特に、湿式の金めっきではめっきの電着形状が粒状であり、チタン基材表面に酸化皮膜が残っていると、チタン基材表面の一部に非めっき部分となる部分が生じてしまう。また、特許文献2には、密着性を向上させるために、中間層を設けることも規定されているが、単に中間層を設けるだけでは十分な密着性は得られない。
特許文献3記載の技術は、銅板の両面にステンレスをクラッド加工した基材に、樹脂を被覆したものであり、耐食性が優れているとはいえない。
すなわち、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、チタン基材表面にAuを含む高耐食性の導電性膜を高い密着性で成膜することができる燃料電池用セパレータ材料、それを用いた燃料電池用セパレータ、及び燃料電池スタックの提供を目的とする。
本発明者らは種々検討した結果、Ti基材の表面にTi、O及び所定のAgを含む中間層を形成させ、中間層の上にAu合金層又はAu単独層を形成させることで、Au(合金)層をTi上に強固かつ均一に形成可能であり、燃料電池用セパレータに要求される耐食性も確保できることを見出した。
上記の目的を達成するために、本発明の燃料電池用セパレータ材料は、Ti基材の表面に、Auより易酸化性のAgとAuとの合金層、又はAu単独層が形成され、前記合金層又は前記Au単独層と前記Ti基材との間に、Ti、O及びAgを含み、Au20質量%未満の中間層が存在し、前記合金層又は前記Au単独層において、最表面から下層に向かって厚み1nm以上でAu50質量%以上の領域を有し、又は前記Au単独層は厚み1nm以上である。
前記中間層は、Ti、Oがそれぞれ10質量%以上でかつ前記Agが20質量%以上含まれる1nm以上の層として存在することが好ましい。
前記合金層中のAuの割合が下層側から上層側に向かって増加することが好ましい。前記合金層の表面にAu単独層が形成されていると、厳しい腐食環境下で燃料電池セパレータが使用されても良好な耐食性を示す。
前記Ti基材は、Tiと異なる基材表面に厚み10nm以上のTi被膜を形成してなるものであってもよい。
本発明の燃料電池用セパレータ材料は、固体高分子形燃料電池又はダイレクトメタノール型固体高分子形燃料電池に好適に用いられる。
本発明の燃料電池用セパレータは、前記燃料電池用セパレータ材料を用い、前記Ti基材に予めプレス加工による反応ガス流路及び/又は反応液体流路を形成した後、前記合金層又はAu単独層を形成して成る。
また、本発明の燃料電池用セパレータは、前記燃料電池用セパレータ材料を用い、前記Ti基材に前記合金層又はAu単独層を形成した後、プレス加工による反応ガス流路及び/又は反応液体流路を形成して成る。
本発明の燃料電池スタックは、前記燃料電池用セパレータ材料、又は前記燃料電池用セパレータを用いたものである。
本発明によれば、Ti基材の表面にTi、O、及びAgを含む中間層を形成させ、中間層の上にAu合金層又はAu単独層を形成させることで、Au層又はAuを含む層をTi上に強固かつ均一に形成させることができ、燃料電池用セパレータに要求される耐食性も確保できる。
以下、本発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料について説明する。なお、本発明において%とは、特に断らない限り、質量%(質量%)を示すものとする。
又、本発明において「燃料電池用セパレータ」とは、電気伝導性を有し、各単セルを電気的に接続し、各単セルで発生したエネルギー(電気)を集電すると共に、各単セルへ供給する燃料ガス(燃料液体)や空気(酸素)の流路が形成されたものをいう。セパレータは、インターコネクタ、バイポーラプレート、集電体とも称される。
従って、詳しくは後述するが、燃料電池用セパレータとして、板状の基材表面に凹凸状の流路を設けたセパレータの他、上記したパッシブ型DMFC用セパレータのように板状の基材表面にガスやメタノールの流路孔が開口したセパレータを含む。
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料について説明する。図1に示すように、第1の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料は、Ti基材2の表面に中間層2aが形成され、中間層2aの上に合金層6が形成されてなる。
<Ti基材>
燃料電池用セパレータ材料は耐食性と導電性が要求され、基材には耐食性が求められる。このため基材には耐食性が良好なチタン材を用いる。
Ti基材は無垢のチタン材であってもよいが、Tiと異なる基材表面に厚み10nm以上のTi被膜を形成したものであってもよい。Tiと異なる基材としてはステンレス鋼やアルミニウムが挙げられ、これらの表面にTiを被覆することにより、チタンと比べて耐食性の低いステンレス鋼やアルミノウムの耐食性を向上させることができる。但し、耐食性向上効果はTiを10nm以上被覆しないと得られない。
Ti基材2の材質はチタンであれば特に制限されない。又、Ti基材2の形状も特に制限されず、Ag及び金をスパッタできる形状であればよいが、セパレータ形状にプレス成形することを考えると、Ti基材の形状は板材であることが好ましく、Ti基材全体の厚みが10μm以上の板材であることが好ましい。
中間層2aに含まれるO(酸素)は、Ti基材2を空気中に放置することにより自然に形成されるが、酸化雰囲気で積極的にOを形成してもよい。
<合金層>
Ti基材2上に、Auより易酸化性のAgとAuとの合金層6が形成される。このAu合金層は、Ti基材にAgの特性(耐食性、導電性等)を付与するためのものである。上記貴金属は、電位-pH図からAuより易酸化性であり、この特性を利用し、上記Agを以下の中間層の構成元素として用いる。合金層は、後述するSTEM分析により確認することができ、STEM分析により最表面から下層に向かってAu50質量%以上で厚み1nm以上有する部分であって、以下の中間層より上層に位置する部分を合金層とする。合金層の厚みは1〜100nmであることが好ましい。合金層の厚みが1nm未満であると、Ti基材上に燃料電池用セパレータに要求される耐食性を確保できなくなる。合金層の厚みが100nmを超えると省金化が図られずコストアップとなる場合がある。
又、合金層において、最表面から下層に向かう厚み1nm以上の領域のAu濃度が50質量%未満であると、燃料電池用セパレータに要求される耐食性を確保できなくなる場合がある。
なお、合金層6の代わりにAu単独層が形成されていてもよい。Au単独層は、STEM分析によりAuの濃度がほぼ100%wtの部分であり、Au単独層の厚みが1nm以上であることが必要となる。
又、合金層6の中間層側において、主にAgからなる組成領域(貴金属領域)を有していてもよい。
<中間層>
合金層(又はAu単独層)6とTi基材2との間に、Ti、O及び前記Agを含み、Au20質量%未満の中間層2aが存在する。
通常、Ti基材は表面に酸化層を有しており、酸化され難いAu(含有)層をTi表面に直接形成させるのは難しい。一方、上記AgはAuに比べて酸化され易く、Ti基材の表面でTi酸化物中のO原子と酸化物を形成し、Ti基材表面に強固に結合するものと考えられる。
又、上記Agは耐食性が他の金属と比べ高い。これらの点で、Auを含んだ導電性膜(上記合金層又はAu単独層)の厚みが数10nm以下の場合には、従来、中間層に用いられてきた元素であるTi,Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W等に比べ、Ti、O及び前記Agを含む中間層の方が耐食性が高く、金属の溶出がない中間層を形成することができる。
一方、なお中間層にはAuは含まれないほうが好ましく、Auが20 質量%以上含まれると密着性が低下する。中間層中のAu濃度を20質量%未満とするためには、Ti基材上に、Ag単体のターゲット、又は低Au濃度のAg−Au合金ターゲットを用いてスパッタすることが好ましい。
前記中間層は、Ti、Oがそれぞれ10質量%以上でかつ前記Agが20質量%以上含まれる1nm以上の層として存在することが好ましい。この場合、燃料電池用セパレータ材料の断面をSTEM(走査透過電子顕微鏡)で分析したとき、Ti、Oがそれぞれ10質量%以上でかつ前記Agが20 質量%以上含まれると共に、Auが20 質量%以上含まれる領域が厚み方向に1nm以上存在する。このような組成を有する中間層の厚みの上限は限定されないが、Agのコストの点から100nm以下であることが好ましい。
ここでSTEM分析は、STEM装置に付属しているEDS(Energy Dispersive X-ray Spectrometer)分析器を用いて、分析したい部分(ライン)及び元素を指定し、各部分における指定元素の濃度をEDSにより検出するものである。指定する元素は、Au、Ag、O、Tiである。
Ti、Oの下限をそれぞれ10質量%とし、前記Agの下限を20質量%とした理由は、前記Agが20 質量%未満である部分はTi基材の表面に近く、Tiが10 質量%未満である部分は合金層に近くなるためであり、又、Oが10 質量%未満である部分はAgとTiがO原子と充分な酸化物を形成しておらず、中間層として機能しないと考えられるからである。又、Ti、Oはそれぞれ10質量%から急激に減少するので、測定上から10質量%を下限とする。Auを20 質量%未満とした理由は密着性を向上させるためである。
なお、STEM分析で厚み方向に1nmの距離とは、走査距離の実寸である。
合金層中のAuの割合が下層側から上層側に向かって増加する傾斜組成になっていることが好ましい。ここで、Auの割合(質量%)は、上記したSTEM分析で求めることができる。合金層又はAu単独層の厚みは、STEM分析での走査距離の実寸である。
合金層を傾斜組成とすると、合金層の下層側ではAuより易酸化性のAgの割合が多くなり、Ti基材表面との結合が強固になる一方、合金層の上層側ではAuの特性が強くなるので、耐食性が向上する。
図2は、第1の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料の断面の実際のFE−TEM(電解放射型透過電子顕微鏡)像を示す。
AgとAuとからなる合金層6が均一な層(図の黒い画像部分)を形成していることがわかる。又、図2における合金層6の位置C(白抜き)における組成はEDX(エネルギー分散型蛍光X線分析)からAg:43質量%,Au:57質量%であり、合金層6の位置Dにおける組成はAg:32質量%,Au:68質量%であった。つまり、合金層のAu濃度は下層側から上層側に向かって増加したものとなった。なお、位置Aの組成はTiを示し、位置Bの組成はTi基材表面のTi酸化被膜層(EDX でTiとOを検出)を示す。但し、この酸化被膜層がAgを含むか否かはEDXでは判定できない。
<燃料電池用セパレータ材料の製造>
燃料電池用セパレータ材料の中間層の形成方法としては、Ti基材の表面Ti酸化膜を除去せずに、この基材にAgをターゲットとしてスパッタ成膜することにより、表面Ti酸化膜中のOにAgの成分が結合し、中間層を形成することができる。又、Ti基材2の表面Ti酸化膜を除去後、Agの酸化物をターゲットとしてスパッタ成膜することや、Ti基材2の表面Ti酸化膜を除去後、Agをターゲットとし酸化雰囲気でスパッタ成膜することによっても中間層を形成することができる。
なお、スパッタの際、Ti基材の表面Ti酸化膜を適度に除去し、基材表面のクリーニングを目的として逆スパッタ(イオンエッチング)を行ってもよい。逆スパッタは、例えばRF100W程度の出力で、アルゴン圧力0.2Pa程度としてアルゴンガスを基材に照射して行うことができる。
中間層のAuは、以下の合金層を形成するためのAuスパッタにより、Au原子が中間層に入り込むことによって中間層内に含まれるようになる。又、AgとAuを含む合金ターゲットを用いてTi基材表面にスパッタ成膜してもよい。
合金層の形成方法としては、例えば上記したスパッタによりTi基材上にAgを成膜した後、Ag膜の上にAuをスパッタ成膜することができる。この場合、スパッタ粒子は高エネルギーを持つため、AgのみがTi基材表面に成膜されていても、そこにAuをスパッタすることにより、Ag膜にAuが入り込み、合金層となる。又、この場合、合金層中のAuの割合が下層側から上層側に向かって増加する傾斜組成となる。
Ti基材表面に最初にAgとAuのうちAu濃度が低い合金ターゲットを用いてスパッタ成膜し、その後、AgとAuのうちAu濃度が高い合金ターゲットを用いてスパッタ成膜してもよい。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料について説明する。図4に示すように、第3の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料は、Ti基材2の表面に中間層2aを介して合金層6が形成され、合金層6の表面にAu単独層8が形成されている。Ti基材2及び合金層6は、第1の実施形態と同一であるので説明を省略する。
Au単独層8は、スパッタ条件(スパッタ時間、出力)等を変えることにより、適宜形成することができる。
本発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料によれば、Au(合金)層をTi上に強固かつ均一に形成させることができ、この層が導電性と耐食性を有することから、燃料電池用セパレータ材料として好適である。又、本発明の実施形態によれば、Au(合金)層をスパッタ成膜すればこの層が均一な層となるので、湿式の金めっきに比べて表面が平滑となり、Auを無駄に使用しなくて済むという利点がある。
<燃料電池用セパレータ>
次に、本発明の燃料電池用セパレータ材料を用いた燃料電池用セパレータについて説明する。燃料電池用セパレータは、上記した燃料電池用セパレータ材料を所定形状に加工してなり、燃料ガス(水素)又は燃料液体(メタノール)、空気(酸素)、冷却水等を流すための反応ガス流路又は反応液体流路(溝や開口)が形成されている。
<積層型(アクティブ型)燃料電池用セパレータ>
図5は、積層型(アクティブ型)燃料電池の単セルの断面図を示す。なお、図5では後述するセパレータ10の外側にそれぞれ集電板140A,140Bが配置されているが、通常、この単セルを積層してスタックを構成した場合、スタックの両端にのみ一対の集電板が配置される。
そして、セパレータ10は電気伝導性を有し、後述するMEAに接して集電作用を有し、各単セルを電気的に接続する機能を有する。又、後述するように、セパレータ10には燃料ガスや空気(酸素)の流路となる溝が形成されている。
図5において、固体高分子電解質膜20の両側にそれぞれアノード電極40とカソード電極60とが積層されて膜電極接合体(MEA;Membrane Electrode Assembly)80が構成されている。又、アノード電極40とカソード電極60の表面には、それぞれアノード側ガス拡散膜90A、カソード側ガス拡散膜90Bがそれぞれ積層されている。本発明において膜電極接合体という場合、ガス拡散膜90A、90Bを含んだ積層体としてもよい。又、例えばアノード電極40やカソード電極60の表面にガス拡散層が形成されている等の場合は、固体高分子電解質膜20、アノード電極40、カソード電極60の積層体を膜電極接合体と称してもよい。
MEA80の両側には、ガス拡散膜90A、90Bにそれぞれ対向するようにセパレータ10が配置され、セパレータ10がMEA80を挟持している。MEA80側のセパレータ10表面には流路10Lが形成され、後述するガスケット12、流路10L、及びガス拡散膜90A(又は90B)で囲まれた内部空間20内をガスが出入可能になっている。
そして、アノード電極40側の内部空間20には燃料ガス(水素等)が流れ、カソード電極60側の内部空間20に酸化性ガス(酸素、空気等)が流れることにより、電気化学反応が生じるようになっている。
アノード電極40とガス拡散膜90Aの周縁の外側は、これらの積層厚みとほぼ同じ厚みの枠状のシール部材31で囲まれている。又、シール部材31とセパレータ10の周縁との間には、セパレータに接して略枠状のガスケット12が介装され、ガスケット12が流路10Lを囲むようになっている。さらに、セパレータ10の外面(MEA80側と反対側の面)にはセパレータ10に接して集電板140A(又は140B)が積層され、集電板140A(又は140B)とセパレータ10の周縁との間に略枠状のシール部材32が介装されている。
シール部材31及びガスケット12は、燃料ガス又は酸化ガスがセル外に漏れるのを防止するシールを形成する。又、単セルを複数積層してスタックにした場合、セパレータ10の外面と集電板140A(又は140B)との間の空間21には空間20と異なるガス(空間20に酸化性ガスが流れる場合、空間21には水素が流れる)が流れる。従って、シール部材32もセル外にガスが漏れるのを防止する部材として使われる。
そして、MEA80(及びガス拡散膜90A、90B)、セパレータ10、ガスケット12、集電板140A、140Bを含んで燃料電池セルが構成され、複数の燃料電池セルを積層して燃料電池スタックが構成される。
次に、セパレータ10の構造について、平面図6を参照して説明する。セパレータ10は、本発明の燃料電池用セパレータ材料からプレス加工によって矩形状に成形され、セパレータ10の上端縁(上辺)には、燃料ガス導入孔10xが左側に開口している。又、セパレータ10の下端縁(下辺)には、燃料ガス排出孔10yが右側に開口している。
さらに、セパレータ10の上辺から下辺へ向かう方向(図6の上下方向)に平行に延びる複数の直線状流路溝10Lがプレス加工等によって形成されている。直線状流路溝10Lは、ガス流に平行流を生じさせる。
また、この実施形態では、直線状流路溝10Lの始端及び終端はセパレータ10の外縁まで到達せず、セパレータ10の外周縁には直線状流路溝10Lが形成されない平坦部が存在する。また、この実施形態では、隣接する直線状流路溝10Lはそれぞれ等間隔で位置しているが、不等間隔であってもよい。
又、セパレータ10の対向する側端縁(側辺)には、それぞれ位置決め孔10fが開口している。
なお、流路溝は直線だけでなく曲線であってもよく、又、各流路溝は必ずしも互いに平行でなくてもよい。又、曲線としては、例えば湾曲線の他、S字状であってもよい。
流路溝の形成を容易にする点からは、互いに平行な直線が好ましい。
セパレータ10の厚みは、プレス成形性の面で10μm以上であることが好ましいが、コストの点から200μm以下とすることが好ましい。
次に、ガスケット12の構造について、平面図7を参照して説明する。
ガスケット12は例えばテフロン(登録商標)からなるシート状であり、外縁がセパレータ10とほぼ同じ大きさの矩形枠体であって、その内縁が燃料ガス導入孔10x、排出孔10y、及び直線状流路溝10Lを囲む略矩形状に形成され、ガスケット12の内部空間において燃料ガス導入孔10x、排出孔10y、及び直線状流路溝10Lが連通するようになっている。
なお、ガスケット12の対向する側端縁(側辺)には、それぞれ位置決め孔12fが開口し、セパレータ10の位置決め孔10fと重なるようにガスケット12を積層することにより、セパレータ10とガスケット12の相対位置を規定する。
ガスケット12の材料としては、耐食性、燃料電池の稼働温度である80〜90℃での耐熱性を有するテフロン(登録商標)、耐食性と導電性を有する貴金属を成膜した金属板(チタン、ステンレス、アルミニウム等のシート)、又はカーボン材料を用いることができる。ガスケット12の厚みはセパレータ10の凹凸形状によって異なるが、セパレータの溝高さ(枠部と凹或いは凸との高低差)と同等以上の厚みとする必要がある。例えば、セパレータの溝高さが0.5mmの場合、ガスケットの厚みは0.5mmとする。
次に、ガスケット12の形状をより詳細に説明する。ガスケット12の上側内縁12cは直線状流路溝の上端10L1よりやや上側に位置し、直線状流路溝10Lに沿って流れるガスが折り返して180度向きを変えるための空間が形成されている。又、上側内縁12cの左端部は外側に延び、セパレータ10の燃料ガス導入孔10xがガスケット12内に表出するようになっている。
同様に、ガスケット12の下側内縁12dは直線状流路溝の下端10L2よりやや下側に位置し、直線状流路溝10Lに沿って流れるガスが折り返して180度向きを変えるための空間が形成されている。又、下側内縁12dの右端部は外側に延び、セパレータ10の燃料ガス排出孔10yがガスケット12内に表出するようになっている。
さらに、上側内縁12cのうち燃料ガス導入孔10xに向かって延びる部分に隣接する位置には内側に向かって片状の仕切り部材12e1が延びている。又、上側内縁12cのうち仕切り部材12e1から所定距離だけ右側の位置には、内側に向かって別の片状の仕切り部材12e2が延びている。そして、仕切り部材12e1、12e2の先端は直線状流路溝の上端(始端又は終端に相当)10L1に接している。
同様に、下側内縁12dのうち仕切り部材12e1に対向する位置から所定距離だけ右側の位置には、内側に向かって片状の仕切り部材12e3が延びている。又、下側内縁12dのうち仕切り部材12e2に対向する位置から所定距離だけ右側であって、燃料ガス排出孔10yに向かって延びる部分に隣接する位置には、内側に向かって片状の仕切り部材12e4が延びている。そして、仕切り部材12e3、12e4の先端は直線状流路溝の下端(始端又は終端に相当)10L2に接している。
又、ガスケット12の対向する内縁12c、12dからそれぞれ延びる仕切り部材12e1〜12e4は、図7の左側から、仕切り部材12e1(上側内縁12c)、12e3(下側内縁12d)、12e2(上側内縁12c)、12e4(下側内縁12d)の順に配置されている。
このように、ガスケット12の対向する内縁からそれぞれ延びる仕切り部材は互いに千鳥状に配置されているので、直線状流路溝10Lに沿って流れるガス流路が仕切り部材近傍で折り返されて蛇行流路を構成するようになる。
具体的には、燃料ガス導入孔10xからセパレータ10内に導入されたガスは、直線状流路溝10Lに沿って図7の下方向に流れるが、仕切り部材12e3が1つの流路溝10Lの下端に接しているため、この流路溝10Lに沿う流れが抑制される。又、流路溝10Lを横断する流れは、もともと抑制されている。従って、仕切り部材12e3が接している流路溝10Lは、ガスが横方向(図7の右方向)へショートカットする流れと、縦方向への流れをいずれも防止する堤防として機能し、このため、ガス流は仕切り部材12e3近傍で折り返して180度向きを変え、直線状流路溝10Lに沿って上方向に流れる。次に、仕切り部材12e1、e2が同様に横方向のショートカット流を防止するため、ガス流は仕切り部材12e2近傍で折り返して直線状流路溝10Lに沿って下方向に流れる。以下同様にして、ガス流は仕切り部材12e4近傍で折り返し、直線状流路溝10Lに沿った後、ガスケット12の右側内縁(側縁)がショートカット流を防止するため、この部分で折り返した後、直線状流路溝10Lに沿って燃料ガス排出孔10yへ排出される。
なお、1個の仕切り部材が接している流路溝の個数は、セパレータの大きさや流路溝の大きさ(幅)にも依存するので特に限定されないが、あまり個数が多くなるとガスの流れに寄与する溝が減ることになるので、好ましくは1〜3本とする。
以上のように、加工が容易なガスケットの形状によってセパレータ内のガス流路が蛇行流路になるよう構成しているため、セパレータに複雑な流路を形成する必要がなく、セパレータ自体の流路形状を簡単にし、生産性を損なわずにガスの流れを改善して燃料電池の発電特性を向上できる。つまり、セパレータの流路による平行流を、ガスケットの形状によって蛇行流(サーペンタイン)に変えることができる。
但し、セパレータの流路溝として、サーペンタイン(蛇行)状に繋がるものを用いても勿論よく、流路溝の形状は限定されない。
図5に示す積層型(アクティブ型)燃料電池は、上記した水素を燃料として用いる燃料電池のほか、メタノールを燃料として用いるDMFCにも適用することができる。
<平面型(パッシブ型)燃料電池用セパレータ>
図8は、平面型(パッシブ型)燃料電池の単セルの断面図を示す。なお、図5では後述するセパレータ10の外側にそれぞれ集電板140A,140Bが配置されているが、通常、この単セルを積層してスタックを構成した場合、スタックの両端にのみ一対の集電板が配置される。
なお,図8において、MEA80の構成は図5の燃料電池と同一であるので同一符号を付して説明を省略する(図8では、ガス拡散膜90A、90Bの記載を省略しているが、ガス拡散膜90A、90Bを有していてもよい)。
図8において、セパレータ100は電気伝導性を有し、MEAに接して集電作用を有し、各単セルを電気的に接続する機能を有する。又、後述するように、セパレータ100には燃料液体や空気(酸素)の流路となる孔が形成されている。
セパレータ100は、断面がクランク形状になるよう、長尺平板状の基材の中央付近に段部100sを形成してなり、段部100sを介して上方に位置する上側片100bと、段部100sを介して下方に位置する下側片100aとを有する。段部100sはセパレータ100の長手方向に垂直な方向に延びている。
そして、複数のセパレータ100を長手方向に並べ、隣接するセパレータ100の下側片100aと上側片100bとの間に空間を形成させ、この空間にMEA80を介装する。2つのセパレータ100でMEA80が挟まれた構造体が単セル300となる。このようにして、複数のMEA80がセパレータ100を介して直列に接続されたスタックが構成される。
図9は、セパレータ100の上面図を示す。下側片100aと上側片100bには、それぞれ複数個の孔100hが開口し、酸素(空気)の反応ガス流路やメタノールの反応液体流路となっている。
このスタックにおいて、図8の上方から空気(酸素)を流すと、セパレータ100の孔100hを通ってMEA80のカソード電極60側に酸素が接触し、反応を生じるようになる。一方、図8の下方からメタノールを流すと、セパレータ100の孔100hを通ってMEA80のアノード電極40側にメタノールが接触し、反応を生じるようになる。なお、メタノールは、図8の下方のタンク(メタノールカートリッジ)200から供給される。
図8に示す平面型(パッシブ型)燃料電池は、上記したメタノールを燃料として用いるDMFCのほか、水素を燃料として用いる燃料電池にも適用することができる。又、平面型(パッシブ型)燃料電池用セパレータの開口部の形状や個数は限定されず、開口部として上記した孔の他、スリットとしてもよく、セパレータ全体が網状であってもよい。
本発明の燃料電池用セパレータにおいて、プレス加工による反応ガス流路及び/又は反応液体流路が予め前記Ti基材に形成されていると好ましい。このようにすると、後工程で反応ガス流路(反応液体流路)を形成する必要がなく、中間層や合金層等を形成する前のTi基材をプレス加工することで、容易に反応ガス流路(反応液体流路)を形成できるので、生産性が向上する。
又、本発明の燃料電池用セパレータにおいて、Ti基材表面に合金層又はAu単独層を形成した燃料電池用セパレータ材料に対し、後からプレス加工によって反応ガス流路及び/又は反応液体流路を形成してもよい。本発明の燃料電池用セパレータ材料は合金層やAu単独層がTi基材表面に強固に密着しているので、被膜形成後にプレス加工しても被膜が剥がれずに反応ガス流路(反応液体流路)を形成でき、生産性が向上する。
なお、反応ガス流路(反応液体流路)形成のためのプレス加工をするためには、燃料電池用セパレータ材料として、Ti基材の厚みを10μm以上とすることが好ましい。Ti基材の厚みの上限は限定されないが、コストの点から200μm以下とすることが望ましい。
<燃料電池用スタック>
本発明の燃料電池用スタックは、本発明の燃料電池用セパレータ材料、又は本発明の燃料電池用セパレータを用いてなる。
燃料電池用スタックは、1対の電極で電解質を挟み込んだセルを複数個直列に接続したものであり、各セルの間に燃料電池用セパレータが介装されて燃料ガスや空気を遮断する。燃料ガス(H2)が接触する電極が燃料極(アノード)であり、空気(O2) が接触する電極が空気極(カソード)である。
燃料電池用スタックの構成例は、既に図5及び図8で説明した通りであるが、これに限定されない。
<試料の作製>
Ti基材として、厚み100μmの工業用純チタン材(JIS1種)を用い、FIB(集束イオンビーム加工)による前処理をした。FE−TEM(電解放射型透過電子顕微鏡)によるエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)により観察したところ、Ti基材の表面には予め約6nmのチタン酸化物層が形成されていたのを確認した。
又、一部の実施例では、厚み100μm工業用純ステンレス鋼材(SUS316L)に対し、表1,2に示す所定厚みのTiを被覆したものを用いた(Ti被覆材)。Tiの被覆は、電子ビーム蒸着装置(アルバック製、MB05−1006)を用いた真空蒸着により行った。
次に、Ti基材のチタン酸化物層の表面に、スパッタ法を用いて目標厚み1nmとなるようにAgを成膜した。ターゲットには純Agを用いた。次に、スパッタ法を用いて目標厚み1nmとなるようにAuを成膜した。ターゲットには純Auを用いた。
目標厚みは以下のように定めた。まず、予めチタン基材にスパッタで対象物(例えばPd)を成膜し、蛍光X線膜厚計(Seiko Instruments製SEA5100、コリメータ0.1mmΦ)で実際の厚みを測定し、このスパッタ条件におけるスパッタレート(nm/min)を把握した。そして、スパッタレートに基づき、厚み1nmとなるスパッタ時間を計算し、この条件でスパッタを行った。
Ag及びAuのスパッタは、株式会社アルバック製のスパッタ装置を用い、出力DC50W アルゴン圧力0.2Paの条件で行った。
<層構造の測定>
得られた試料の断面の実際のFE−TEM(電解放射型透過電子顕微鏡)像を観察し、像の中でEDX分析したい位置を指定し、その部分のEDX分析を行うことで、試料中の各層の組成を分析した。
FE−TEM装置としては、日立製作所製のHF-2000 FE-TEMを用い、加速電圧200kV、倍率10万倍、70万倍で観察した。又、EDX装置は、上記FE−TEM装置に附属したEDAX社製Genesisシリーズを用い、分析エリア1nmで分析した。
図2は、試料の断面FE−TEMを示す。AgとAuとからなる合金層6が均一な層を形成していることがわかる。又、図2における合金層6の位置Cにおける組成はEDXからAg:43質量%,Au:57質量%であり、合金層6の位置Dにおける組成はAg:32質量%,Au:68質量%であった。つまり、合金層のAu濃度は下層側から上層側に向かって増加したものとなった。なお、位置Aの組成はTiを示し、位置Bの組成はTi基材表面のTi酸化被膜層(又は中間層)を示した。
又、試料のTi基材表面近傍の断面をSTEM(走査透過電子顕微鏡)で分析し、Ti、O及びAgの濃度を検出した。STEMとしては、日立製作所製のHD−2000STEMを用い、加速電圧200kV、倍率90万倍、n数3視野として測定した。
なお、STEMによる濃度検出は、検出元素からカーボンを除外し、指定元素の合計100質量%として、各元素の濃度(質量%)を分析した。又、STEM分析で厚み方向に1nmの距離とは、STEM分析によるチャート(図3)の横軸の距離である。
同様にして、試料の最表面側の断面をSTEMで分析した。
図3は、試料断面の実際のSTEM像を示す。
Ti基材2の表面に、Ti、Oがそれぞれ10 質量%以上含まれ、かつAgが20 質量%以上含まれると共に、Auが20 質量%未満である中間層2aが1nm以上存在することがわかる。
なお、本発明においては、中間層を定義するためTi、O等の濃度を規定している。従って、中間層の境界は便宜上Ti、O濃度によって決められるため、中間層とその上下の層(例えばTi基材2)との間に、中間層ともTi基材とも異なる層が介在する場合もある。
<各試料の作製>
チタン基材(純Ti、Ti被覆材)に、スパッタ時のAg膜及びAu膜の目標厚みを種々変更して実施例1〜16の試料を作製した。
比較例17として、スパッタの代わりに、湿式めっきにより、Ti基材表面にAu層を50nm形成した。湿式めっきは、基材の浸漬脱脂、水洗、酸洗、水洗、活性化処理、水洗を順に行った後、金めっきし、さらに水洗、熱処理を行った。
比較例18、19として、スパッタ時にそれぞれAu膜、Ag膜のみ成膜した。
比較例20として、Ag膜及びAu膜を別個にスパッタする代わりに、Ag−Au合金(Ag70質量%,Au30質量%)を用いて成膜した。比較例21として、Ag膜及びAu膜を別個にスパッタする代わりに、Ag−Au合金(Ag50質量%,Au50質量%)を用いて成膜した。比較例22として、Ag膜及びAu膜を別個にスパッタする代わりに、Ag−Au合金(Ag30質量%,Au70質量%)を用いて成膜した。
比較例23として、スパッタ時のAg膜の目標厚みを0.5nmに低減して成膜した。比較例24として、スパッタ時のAu膜の目標厚みを0.5nmに低減して成膜した。
比較例25として、Ti被覆材(Ti厚み1nm)に、Agの目標厚み5nm、Auの目標厚み10nmでスパッタ成膜した。
<評価>
各試料について以下の評価を行った。
A.密着性
各試料の最表層の合金層に1mm間隔で碁盤の目を罫書いた後、粘着性テープをはり付け、さらに各試験片を180°曲げて元の状態に戻し、曲げ部のテープを急速にかつ強く引き剥がす剥離試験を行った。
剥離が全くない場合を○とし、一部でも剥離があると目視で認められた場合を×とした。
B.成膜形状
各試料の断面のFE-TEM像を撮影し、表面に数nmから数百nmの粒子が集まった凹凸構造が観察された場合を粒状とし、粒状に比べて表面が平滑な場合を層状とした。
C.接触抵抗
接触抵抗の測定は、試料全面に荷重を加える方法で行った。まず、40×50mmの板状の試料の表裏にそれぞれカーボンペーパーを積層し、さらに表裏のカーボンペーパーの外側にそれぞれCu/Ni/Au板を積層した。Cu/Ni/Au板は厚み10mmの銅板に1.0μm厚のNi下地めっきをし、Ni層の上に0.5μmのAuめっきした材料であり、Cu/Ni/Au板のAuめっき面がカーボンペーパーに接するように配置した。
さらに、Cu/Ni/Au板の外側にそれぞれテフロン(登録商標)板を配置し、各テフロン板の外側からロードセルで圧縮方向に10kg/cmの荷重を加えた。この状態で、2枚のCu/Ni/Au板の間に電流密度100mA/cmの定電流を流した時、Cu/Ni/Au板間の電気抵抗を4端子法で測定した。
又、接触抵抗は、以下の4つの条件により水溶液中に試料を浸漬した耐食試験の前後でそれぞれ測定した。
条件1:硫酸水溶液(浴温80℃、濃度0.5g/L、浸漬時間240時間)
条件2:メタノール水溶液(浴温80℃、濃度400g/L、浸漬時間240時間)
条件3:ギ酸水溶液A(浴温80℃、濃度1g/L、浸漬時間240時間)
条件4:ギ酸水溶液B(浴温80℃、濃度9g/L、浸漬時間240時間)
なお、DMFCの場合、条件2〜4は条件1(通常の固体高分子型燃料電池の耐食性試験条件)に付け加えられ、通常の固体高分子型燃料電池と比較すると評価すべき耐食性試験環境が多くなる。
又、燃料電池用セパレータに求められる代表的な特性は、低接触抵抗(10mΩ・cm以下)、使用環境での耐食性(耐食試験後も低接触抵抗で、有害なイオンの溶出がない)の2つである。
表1〜表3に結果を示す。なお、表1〜表3において、中間層の厚み、最表層の厚みは、いずれもSTEM分析を3箇所について行った値の平均値とした。
表1〜表3から明らかなように、合金層とTi基材との間に、Ti、Oがそれぞれ10 質量%以上含まれ、かつAgが20 質量%以上含まれると共に、Auが20 質量%未満である中間層が1nm以上存在する実施例1〜13の場合、各層の密着性に優れ、又、スパッタにより成膜した合金層又はAu層(最表層)は平滑な層状となった。さらに、耐食試験前後で試料の接触抵抗が変化せず、耐食性と導電性が優れたものとなった。また、純Ti基材に代え、厚み10nm以上のTi被覆材を用いた実施例14〜16の場合も、他の実施例と同等の耐食性と導電性が得られた。
なお、各実施例1〜16の場合、最表面から下層に向かうAu50質量%以上の領域の厚みはいずれも1nm以上であった。
Au層を湿式めっきで形成した比較例17の場合、最表層が粒状となり、Auの使用量が多くなった。
Auのみをスパッタした比較例18の場合、中間層が形成されずに密着性が劣化した。一方、Agのみをスパッタした比較例19の場合、最表層がAuを含まず、耐食試験後に接触抵抗が大幅に増大した。これは、最表層がAuを含まないために耐食性が劣化したためと考えられる。
Ag-Au合金(Ag70質量%)をターゲットとしてスパッタした比較例20の場合も、耐食試験後に接触抵抗が大幅に増大した。これは、Ag-Au合金中のAuの割合が少ないために最表層にAuを50質量%以上含む層が形成されず、耐食性が劣化したためと考えられる。
Ag-Au合金(Ag50質量%)をターゲットとしてスパッタした比較例21、及びAg-Au合金(Ag30質量%)をターゲットとしてスパッタした比較例22の場合、いずれも中間層の厚みが1nm未満となり、密着性が劣化した。
これは、Ag-Au合金中のAgの割合が少ないために中間層が充分に形成されなかったためと考えられる。
Ag膜の目標厚みを低減してスパッタした比較例23の場合も、中間層の厚みが1nm未満となり、密着性が劣化した。
Au膜の目標厚みを低減してスパッタした比較例24の場合、最表面から下層に向かうAu50質量%以上の領域の厚みが1nm未満と薄く、耐食試験後に接触抵抗が大幅に増大した。
また、純Ti基材に代え、厚み1nmのTi被覆材を用いた比較例25の場合、Ti膜厚が薄いためにステンレス鋼基材が腐食し、耐食試験後に接触抵抗が大幅に増加した。
本発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料の構成を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料の断面FE−TEM像を示す図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料の断面のSTEM分析結果を示す図である。 本発明のさらに別の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料の構成を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池スタック(単セル)の断面図である。 本発明の実施形態にかかるセパレータの構造を示す平面図である。 本発明の実施形態にかかるガスケットの構造を示す平面図である。 本発明の実施形態に係る平面型燃料電池スタックの断面図である。 平面型燃料電池用セパレータの構造を示す平面図である。
符号の説明
2 Ti基材
2a 中間層
6 合金層
8 Au単独層
2 固体高分子電解質膜
4、6 電極
8 膜電極接合体
10、100 セパレータ
10L、10LB (ガス)流路
10L1、10LB1 流路溝の始端
10L2、10LB2 流路溝の終端
12、12B ガスケット
12c、12d ガスケットの内縁
12e1〜12e4 仕切り部材
12eb1〜12eb4 ガスケット流路
20 固体高分子電解質膜
40 アノード電極
60 カソード電極
80 膜電極接合体(MEA)
100h (セパレータの)孔

Claims (10)

  1. Ti基材の表面に、Auより易酸化性のAgとAuとの合金層、又はAu単独層が形成され、
    前記合金層又は前記Au単独層と前記Ti基材との間に、Ti、O及びAgを含み、Au20質量%未満の中間層が存在し、
    前記合金層又は前記Au単独層において、最表面から下層に向かって厚み1nm以上でAu50質量%以上の領域を有し、又は前記Au単独層は厚み1nm以上である燃料電池用セパレータ材料。
  2. 前記中間層は、Ti、Oがそれぞれ10質量%以上でかつ前記Agが20質量%以上含まれる1nm以上の層として存在する請求項1に記載の燃料電池用セパレータ材料。
  3. 前記合金層中のAuの割合が下層側から上層側に向かって増加する請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータ材料。
  4. 前記合金層の表面にAu単独層が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料。
  5. 前記Ti基材は、Tiと異なる基材表面に厚み10nm以上のTi被膜を形成してなる請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料
  6. 固体高分子形燃料電池に用いられる請求項1乃至5のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料。
  7. ダイレクトメタノール型固体高分子形燃料電池に用いられる請求項6記載の燃料電池用セパレータ材料。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料を用いた燃料電池用セパレータであって、前記Ti基材に予めプレス加工による反応ガス流路及び/又は反応液体流路を形成した後、前記合金層又はAu単独層を形成して成る燃料電池用セパレータ。
  9. 請求項1乃至7のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料を用いた燃料電池用セパレータであって、前記Ti基材に前記合金層又はAu単独層を形成した後、プレス加工による反応ガス流路及び/又は反応液体流路を形成して成る燃料電池用セパレータ。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料、又は請求項8若しくは9記載の燃料電池用セパレータを用いた燃料電池スタック。
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