JP2010236079A - 非結晶性酸化スズ薄膜及び薄膜積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、内部応力が小さい酸化スズ薄膜を提供することを課題とする。
【解決手段】透明基材上に蒸着プロセスを経て形成される非結晶性の酸化スズ薄膜であり、該薄膜はCuKα線を用いたX線反射率法により該薄膜の緻密化度(ρ/ρ0)×100が90〜95%とすること。酸化スズ薄膜の波長550nmにおける屈折率が2.03以下である特徴も持つ。当該薄膜は内部応力が小さいため、基板との密着性が向上し、膜自体の剥離や基板の反り発生を抑制するため、低放射膜の部材として有用である。
【選択図】図4
【解決手段】透明基材上に蒸着プロセスを経て形成される非結晶性の酸化スズ薄膜であり、該薄膜はCuKα線を用いたX線反射率法により該薄膜の緻密化度(ρ/ρ0)×100が90〜95%とすること。酸化スズ薄膜の波長550nmにおける屈折率が2.03以下である特徴も持つ。当該薄膜は内部応力が小さいため、基板との密着性が向上し、膜自体の剥離や基板の反り発生を抑制するため、低放射膜の部材として有用である。
【選択図】図4
Description
本発明は、基材上にスパッタ等の蒸着プロセスを経て形成される非結晶性酸化スズ薄膜に関する。
酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウムを主成分とする薄膜は、フラットパネルディスプレイや太陽電池等の透明電極として広く用いられている。この中でも酸化スズ薄膜と酸化亜鉛薄膜は環境面、コスト面から、銀等の金属膜層を有する薄膜積層体中の金属膜の保護膜等にも使用されている。一般的に基材上にスパッタ等の蒸着プロセスを経て形成される酸化スズ薄膜や酸化亜鉛薄膜は、エネルギーの高い粒子の打ち込みにより緻密な膜が得られる。
酸化スズ薄膜や酸化亜鉛薄膜等の金属酸化物薄膜は、蒸着時の雰囲気を制御することで微細構造が修飾されることが知られている。例えば、特許文献1及び2では、二酸化炭素ガスを含んだガス雰囲気中で結晶性の酸化亜鉛薄膜等の金属酸化物薄膜を形成している。当該プロセスを経て得られた金属酸化物薄膜は、膜形成時に膜が緻密化され、薄膜の内部応力が減少したものとなるとされている。
X線反射率の測定と解析[平成21年6月16日検索]、インターネット<http://www.nsg-ntr.com/tech/d01xrd.html>
S.K.Choi et al. Effect of film density on electrical properties of indium tin oxide films deposited by dc magnetron reactive sputtering, J. Vac. Sci. Technol. A, Vol.19, No.5(2001)2043-2047.
重里有三 他、酸化チタン光触媒薄膜の内部応力と光分解活性に関する研究、J. Vac. Soc Jpn. Vol.50, No.6 (2007) 432-436.
薄膜に生じる応力としては、薄膜と基板材料の熱膨張係数の違いにより発生する熱応力、及び基板温度と膜材料の融点の比が小さいプロセスにおいて発生する内部応力がある。蒸着プロセスを経て得られる酸化スズ薄膜においては、内部応力が優勢となる。この内部応力が大きいと、酸化スズ薄膜と基板の密着性が悪くなるために、薄膜の基材からの剥離、基材の反り等が生じることがある。更に、酸化スズ薄膜と他の金属薄膜とが積層されている場合、酸化スズ薄膜の内部応力に起因して外観不良等の欠陥が生じることがある。例えば酸化スズ薄膜と銀薄膜との積層構造を有する薄膜の場合、銀膜が経時変化して凝集した際、内部応力の大きい酸化スズ薄膜が剥離し、白い斑点として観測されることがある。かくして、本発明は、内部応力が小さい非結晶性酸化スズ薄膜を提供することを課題とする。
本発明の非結晶性酸化スズ薄膜(以下、単に酸化スズ薄膜と表記することがある)は、透明基板上に蒸着プロセスを経て形成される非結晶性薄膜であり、該薄膜は酸化スズ薄膜の理論密度をρ0、実測密度をρとしたとき(ρ/ρ0)×100で表わされる値(以下、「緻密化度」と表記することがある)が95%以下、好ましくは90〜93.5%であることを特徴とする。
酸化スズ薄膜の理論密度ρ0は、7.077g/cm3(JCPDSカード番号03-1114に掲載された値を採用)とされ、実測密度ρは、X線反射率法で臨界角を測定し、これを解析することで求められる。X線反射率法による密度測定については、非特許文献1に詳細に紹介されており、XRD測定装置(Rigaku社製RINT−UltimaIII)に付随した汎用の解析プログラムにより導き出すことができる。
本発明の酸化スズ薄膜は非結晶性のものであるが、緻密化度を求める前記式において、結晶の値を理論密度ρ0として採用している。緻密化度は結晶性が悪くなると100%未満となり、非結晶性状態ではさらなる値の低下が見られる。従って、非結晶性の薄膜の緻密化度を表す指標を得るために、結晶の値を理論密度ρ0として採用しても差し支えない。
図1に本発明で得られた酸化スズ薄膜のXRDパターンの典型例を示す。図1のようにXRDパターンにおいて、結晶のピークを示さない薄膜が、非結晶性酸化スズ薄膜として扱われる。
また、「基板上」は、酸化スズ薄膜が基板に接するものでも、基板と該酸化スズ薄膜との間に他の薄膜が介在してもよい。
本発明では、緻密化度を95%以下、好ましくは93.5%以下としている。緻密化度の低い膜は、非結晶性の薄膜の内部応力低減に効果を奏すことが本発明の検討で明らかになった。そして、緻密化度が95%超では、内部応力の低減が十分とは言えないものであった。しかしながら、緻密化度が低くなりすぎると膜強度が低下するおそれが生じる。さらに、非特許文献2において、ITO等の酸化スズを含む金属酸化物膜は、緻密化度が低くなるにつれ電気伝導率が低下していくとされている。よって、緻密化度は90%以上とする。
また、緻密化度の低い酸化スズ薄膜は、緻密化度の高いものよりも屈折率が低くなる傾向が見られた。一般的に、屈折率の低い薄膜は、薄膜のぎらつき感を低減させ、透過率を向上させることにも繋がる可能性があるため、屈折率の低い酸化スズ薄膜は、本発明において好ましい形態であるとも言える。この観点から、本発明の酸化スズ薄膜は、波長550nmにおける屈折率が2.03以下とすることが好ましく、特に1.99以下とすることが最も好ましい。なお、酸化スズ薄膜の屈折率が2.03を超えると、緻密化度が高くなり内部応力が大きくなる構造を薄膜中にもたらすことがある。また、屈折率の下限は、特に限定されるものではないが、屈折率は緻密化度と相関性があり、低い屈折率を得ようとすると、緻密化度が低くなり薄膜の膜強度を弱めることがある。従って、屈折率の下限は1.90、好ましくは1.95と設定してもよい。
本発明の非結晶性酸化スズ薄膜は、内部応力が小さいため、基板との密着性が向上し、膜自体の剥離や基板の反り発生を抑制する。また、非結晶性酸化スズ薄膜と他の金属薄膜とが積層されている場合、酸化スズ薄膜内の内部応力に起因する外観不良等の欠陥が低減される。
透明基材(可視光に光透過性を有するもの)には、ガラス基板が好適に使用される。ガラス基板の例としては、建築用や車両用をはじめとする窓や鏡、ディスプレイ用に使用されているソーダ石灰ケイ酸塩ガラスからなるフロート板ガラス、又はロールアウト法で製造されたソーダ石灰ケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等無機質の透明性がある板ガラスが挙げられる。
当該板ガラスには、無色のもの、着色のもの共に使用可能で、基材の形状は、平板、曲げ板を問わず、さらには、風冷強化ガラス、化学強化ガラス等の各種強化ガラスの他に編入りガラスも使用できる。さらには、ホウケイ酸塩ガラス、低膨張ガラス、ゼロ膨張ガラス、低膨張結晶化ガラス、ゼロ膨張結晶化ガラス、TFT用ガラス、PDP用ガラス、光学フィルム用基板ガラス等の各種ガラス基材を用いることができる。
また、ガラス基板以外の例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネートや高透過ガラスなどの廉価なフロート板ガラスが好適であるが、透明ガラスのほかにも、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等の透明な樹脂基板あるいはフィルム等を用いてもよい。
非結晶性酸化スズ薄膜は、スパッタリングなどの蒸着プロセスを用いて形成されることが好ましい。蒸着プロセスには、スパッタリング以外にも電子ビーム蒸着、イオンビームデポジション、イオンプレーティングなどを用いてもよい。
緻密化度が95%以下である酸化スズ薄膜は、成膜時の雰囲気ガスを調整することで得られ、例えばO2とCO2との混合ガスを用いることによっても得られる。特に [{CO2/(O2+CO2)}×100] の式で求められるCO2流量比が37体積%以上であるとき、酸化スズ薄膜の緻密化度を容易に低減させることが可能となるため好ましい。
一般的にスパッタ法などでは、金属ターゲットを用いてO2雰囲気中で酸化物薄膜を成膜させると、ターゲット表面で生成される酸素負イオンなどの高エネルギー粒子が、膜に打ち込まれるため、該膜は密度が高くなり、緻密化度は高くなる。
O2とCO2との混合ガスを用いると、CO2はO2に比べて酸化力が弱いため、ターゲット表面の酸化を抑制する効果があると考えられる。その結果、ターゲット表面で生成される酸素負イオンなどの高エネルギー粒子が減少し、酸化スズ膜の膜密度が減少すると考えられる。また、O2とCO2に加えて、放電を安定させるためにArを用いてもよい。
本発明により、成膜時の雰囲気ガスにCO2ガスを含むことによって、O2ガスが100体積%の雰囲気下で形成された酸化スズ薄膜と比較して、二乗平均粗さ(以下Rmsと記載することもある)及び算術平均粗さ(以下Raと記載することもある)が小さくなることが明らかとなった。なお、二乗平均粗さ(Rms)はCuKα線を用いたX線反射率法等によって求められる値であり、また、算術平均粗さ(Ra)は粗さ曲線の高さ方向に関する平均値であり、それぞれ値が小さいほど表面形状が平滑である。
一般的に、表面形状が平滑な薄膜は、耐摩耗性、密着性等に奏功するとされており、本発明の酸化スズ薄膜は、薄膜積層体の下地膜等として好適に使用される。
なお、非結晶性薄膜を形成するには成膜時の雰囲気ガスの圧力の上限を1.0Paとすることが好ましく、下限は特に限定されるものではないが、0.1Paと設定してもよい。
本発明の酸化スズ薄膜は、Sb、In、Znなど少なくとも一種から選択された金属を含有していてもよい。
本発明の酸化スズ薄膜と銀等の金属膜層とを有する薄膜積層体は、例えば、低放射積層体として好適に使用される。透明基材と該透明基材上に形成された薄膜積層体とからなる物品は、建物において日射熱が室内に流入することを防ぐ遮熱性、または室内の温度が室外へ流出することを防ぐ断熱性を付与した窓ガラスとして用いられる。
窓ガラスとして用いる場合、室外に設置される面から低放射積層体付きガラス、乾燥空気層、透明ガラスの順で構成することにより遮熱性が付与された複層ガラス、または室外に設置される面から、透明ガラス、乾燥空気層、低放射積層体付きガラスの順で構成することにより断熱性が付与された複層ガラスとして用いる事が好ましく、低放射積層体付きガラスは乾燥空気層に接する面に低放射積層体を形成することが好ましい。
また、上記の低放射積層体付きガラスは、流通、保管などの過程を経て、複層ガラスとして組み込まれることがあり、その際、ガラス表面の付着物等の汚れに対して、水とブラシとを使用した洗浄を行うことがある。該低放射積層体は、銀層を含むものが多く使用されており、銀層を含む積層体に水を接触させると積層体が劣化することがあるため、水との接触は回避されることが好ましい。しかしながら、本発明の非結晶性酸化スズ薄膜を銀層の保護膜として使用した低放射積層体付きガラスは、上記のような水が接触する洗浄時に膜表面の劣化が生じないものであった。
以下に、本発明の具体例を実施例および比較例にて説明する。
実施例1
酸化スズ薄膜の成膜は、図2に示すような概略構造を有するDCマグネトロンスパッタリング装置を用いて行った。図2は、該装置を上方から観察したときの要部を示すものである。ターゲット1にSnターゲットを用い、透明基材(フロート法で得られたソーダ石灰ケイ酸塩ガラス)3を基材ホルダー2に保持させた後、真空チャンバー8内を、真空ポンプ5を用いて排気した。尚、図2では、ターゲット1は2個描かれているが、設置数、種類は薄膜の積層数、膜種に応じて適宜設定される。
酸化スズ薄膜の成膜は、図2に示すような概略構造を有するDCマグネトロンスパッタリング装置を用いて行った。図2は、該装置を上方から観察したときの要部を示すものである。ターゲット1にSnターゲットを用い、透明基材(フロート法で得られたソーダ石灰ケイ酸塩ガラス)3を基材ホルダー2に保持させた後、真空チャンバー8内を、真空ポンプ5を用いて排気した。尚、図2では、ターゲット1は2個描かれているが、設置数、種類は薄膜の積層数、膜種に応じて適宜設定される。
真空チャンバー8内の雰囲気ガスは、ガス導入管7より、O2およびCO2ガスを導入し、ガス流量をマスフロコントローラー(図示せず)により制御し、CO2流量比[{CO2/(O2+CO2)}×100]を74体積%とした。成膜中の真空チャンバー8内の圧力は、開閉バルブ6により0.3Paに調節した。さらに、DC電源の出力電力を1kWとした。
基材ホルダー2は、搬送ロール12上を搬送され、ターゲット1の横を通過する。この時の通過速度を調整し、膜厚37nmの酸化スズ薄膜を得た。
実施例2及び3
CO2流量比を変更した以外は実施例1と同様の手順で酸化スズ薄膜を得た。実施例2では、CO2流量比を50体積%、実施例3では、CO2流量比を37体積%とした。
CO2流量比を変更した以外は実施例1と同様の手順で酸化スズ薄膜を得た。実施例2では、CO2流量比を50体積%、実施例3では、CO2流量比を37体積%とした。
比較例1及び2
比較例1ではCO2を使用せず、O2流量比を100体積%、比較例2ではCO2流量比を12体積%とした以外は、実施例1と同様の手順で酸化スズ薄膜を得た。
比較例1ではCO2を使用せず、O2流量比を100体積%、比較例2ではCO2流量比を12体積%とした以外は、実施例1と同様の手順で酸化スズ薄膜を得た。
(1)実施例1〜3、及び比較例1〜2で得られた酸化スズ薄膜の評価
CuKα線を用いたX線反射率測定によって、得られた薄膜の二乗平均粗さ(Rms)、および薄膜の緻密化度を評価した。また、磁気分光光度計(日立製作所製U−4000)を用いて測定した膜面反射率、ガラス面反射率および透過率から、薄膜光学シミュレーションによって屈折率を評価した。
CuKα線を用いたX線反射率測定によって、得られた薄膜の二乗平均粗さ(Rms)、および薄膜の緻密化度を評価した。また、磁気分光光度計(日立製作所製U−4000)を用いて測定した膜面反射率、ガラス面反射率および透過率から、薄膜光学シミュレーションによって屈折率を評価した。
(2)実施例2及び比較例1で得られた酸化スズ薄膜の表面形状の評価
得られた薄膜の表面形状を、原子間力顕微鏡(以下AFMと表記することもある)(島津社製SPM−9600)によって観察し、JIS B0601(2001年)に基づいて算術平均粗さ(Ra)を算出した。
得られた薄膜の表面形状を、原子間力顕微鏡(以下AFMと表記することもある)(島津社製SPM−9600)によって観察し、JIS B0601(2001年)に基づいて算術平均粗さ(Ra)を算出した。
(3)薄膜の内部応力の評価
薄膜の内部応力は、片持ち梁法によって評価された。該方法は、成膜前後の基板の反りの変化量を測定することにより、膜の内部応力を求める方法である。この評価の実施のために、基材を厚さ0.1mmのマイクロシートガラスとし、実施例1、2、3及び比較例1及び2と同様の条件で薄膜を形成した。ただし、該ガラス基材は、基材ホルダー2にその一端だけが固定された。
薄膜の内部応力は、片持ち梁法によって評価された。該方法は、成膜前後の基板の反りの変化量を測定することにより、膜の内部応力を求める方法である。この評価の実施のために、基材を厚さ0.1mmのマイクロシートガラスとし、実施例1、2、3及び比較例1及び2と同様の条件で薄膜を形成した。ただし、該ガラス基材は、基材ホルダー2にその一端だけが固定された。
該条件で薄膜を形成すると、薄膜内に生じた内部応力に応じて基材に反りが発生するので、非特許文献3で紹介されているように、該反り量から薄膜の内部応力が求められる。
本実施例では、内部応力の値が負の値で表されるが、内部応力の大きさは絶対値で評価されるので、数値がゼロに近いほど内部応力が小さいものとして評価できる。評価結果を表1に示す。また、CO2流量比と成膜速度との関係を図3、緻密化度と薄膜の内部応力との関係を図4、屈折率と内部応力との関係を図5、AFMによる観測像を図6にそれぞれ示す。実施例1、2および3のいずれも、緻密化度が93.5%以下、内部応力の絶対値が1.4×109N/m2以下、屈折率も2.03以下となった。また、実施例1乃至3いずれの成膜速度も比較例1又は2に比べて速いものであった。成膜時の雰囲気ガスとしてCO2を用いた実施例1〜3及び比較例2は、O2ガス100体積%の環境下で形成した比較例1よりもRmsが小さくなった。また、実施例2のRaは0.15nm、比較例1のRaは0.59となり、図6からも、CO2を成膜時の雰囲気ガスに含むことで、薄膜の表面形状が平滑となることが確認された。
実施例5
薄膜積層体を、図2に示すような概略構造を有するDCマグネトロンスパッタリング装置を用いて作製した。上流側のターゲット1にZnターゲットを用い、その下流側ターゲット1にAgターゲット、さらに下流側ターゲット1にZnAlO(Al 4wt%含有ZnO)ターゲット、最下流のターゲット1にSnターゲットを用いた。
薄膜積層体を、図2に示すような概略構造を有するDCマグネトロンスパッタリング装置を用いて作製した。上流側のターゲット1にZnターゲットを用い、その下流側ターゲット1にAgターゲット、さらに下流側ターゲット1にZnAlO(Al 4wt%含有ZnO)ターゲット、最下流のターゲット1にSnターゲットを用いた。
透明基材(フロート法で得られたソーダ石灰ケイ酸塩ガラス)3を基材ホルダー2に保持させた後、真空チャンバー8内を、真空ポンプ5を用いて排気した。真空チャンバー8内の雰囲気ガスは、ガス導入管7より、O2及びCO2ガスを導入し、ガス流量をマスフロコントローラー(図示せず)により制御し、CO2流量比[{CO2/(O2+CO2)}×100]等のガス雰囲気を、積層体の積層種に応じて調整した。成膜中の真空チャンバー8内の圧力は、開閉バルブ6により調節した。また、DC電源の出力電力を1kWとした。
基材ホルダー2は、搬送ロール12上を搬送され、ターゲット1の横を通過する。この時の通過速度を調整し各薄膜層の膜厚を調整し、透明基材3上にZnO/Ag/ZnAlO/SnO2の順で薄膜が積層された積層体を形成した。
基材上に酸化亜鉛薄膜を形成するときは、CO2流量を0体積%とし、圧力を0.3Paとした。該酸化亜鉛薄膜層は、37nmの膜厚を有する層とした。
該酸化亜鉛薄膜層上にAg薄膜層を形成するときは、真空チャンバー8内のO2ガスを排気した後、Arガスをガス導入管7よりマスフロコントローラーにより制御しながら、真空チャンバー8内に導入し、圧力を0.5Paとした。また、DC電源の出力電力を0.4kWとした。該Ag薄膜層は、10nmの膜厚を有するものとした。
該Ag薄膜層上にZnAlO薄膜層を形成するときの条件は、Ag薄膜層を形成するとき同様とした。該ZnAlO薄膜層は、5nmの膜厚を有するものとした。
該ZnAlO薄膜層上に酸化スズ薄膜層を形成するときは、真空チャンバー8内のArガスを排気した後、ガス導入管7より、O2およびCO2ガスを導入し、ガス流量をマスフロコントローラー(図示せず)により制御し、CO2流量比[{CO2/(O2+CO2)}×100]を74体積%とした。成膜中の真空チャンバー8内の圧力は、開閉バルブ6により0.3Paに調節した。該酸化スズ薄膜層は、37nmの膜厚を有するものとした。
実施例6
酸化スズ膜を成膜時にCO2流量比を37体積%とした以外は実施例5と同様の手順で薄膜積層体を得た。
酸化スズ膜を成膜時にCO2流量比を37体積%とした以外は実施例5と同様の手順で薄膜積層体を得た。
比較例3及び4
酸化スズ膜の成膜中、比較例3ではCO2を使用せず、O2流量比を100体積%、比較例4ではCO2流量比を12体積%とした以外は、実施例5と同様の手順で薄膜積層体を得た。
酸化スズ膜の成膜中、比較例3ではCO2を使用せず、O2流量比を100体積%、比較例4ではCO2流量比を12体積%とした以外は、実施例5と同様の手順で薄膜積層体を得た。
(4)実施例5及び6、及び比較例3及び4で得られた薄膜積層体の評価
薄膜積層体が形成された透明基材を、温度30℃、相対湿度90%の環境下で4週間保持し、20cm角(20cm×20cm=400cm2)の領域内に発生した直径0.3mm以上の欠陥数を計測した。
薄膜積層体が形成された透明基材を、温度30℃、相対湿度90%の環境下で4週間保持し、20cm角(20cm×20cm=400cm2)の領域内に発生した直径0.3mm以上の欠陥数を計測した。
表2に実施例5、6及び比較例3、4における酸化スズ膜の内部応力と欠陥数を示す。表2から、実施例5及び6は、酸化スズ膜の内部応力が小さく、これに起因して欠陥数が少なかった。一方で、比較例3、4は内部応力が大きく、欠陥数も多いという結果となった。
また、耐湿性が良好であった実施例5及び6に関して、以下の水洗浄に関する評価を行った。薄膜積層体が形成された基材を、超音波洗浄機を用いて、温度40℃の純水で10分間洗浄を行い、洗浄後に温風乾燥を行った。上記の水洗浄、乾燥工程を経ても、薄膜積層体表面に欠陥は生じなかった。
本発明の酸化スズ薄膜は、緻密化度が低いことに起因して内部応力が小さいため、基材、他の膜に与える影響が小さくなる。さらに、本発明の酸化スズ薄膜は、表面形状が平滑な膜となる。従って、透明導電膜、赤外線遮蔽膜、光学フィルタ等の薄膜積層体へ使用されることが好ましい。具体的には、銀等の金属薄膜の保護膜や下地膜として用いられることが好ましい。
1 ターゲット
2 基材ホルダー
3 透明基板
4 カソードマグネット
5 真空ポンプ
6 開閉バルブ
7 ガス導入管
8 真空チャンバー
9 電源コード
10 DC電源
11 バッキングプレート
12 搬送ロール
2 基材ホルダー
3 透明基板
4 カソードマグネット
5 真空ポンプ
6 開閉バルブ
7 ガス導入管
8 真空チャンバー
9 電源コード
10 DC電源
11 バッキングプレート
12 搬送ロール
Claims (4)
- 透明基板上に蒸着プロセスを経て形成される非結晶性酸化スズ薄膜であり、該薄膜は酸化スズ薄膜の理論密度をρ0、実測密度をρとしたとき(ρ/ρ0)×100で表わされる値が90〜95%であることを特徴とする非結晶性酸化スズ薄膜。
- 酸化スズ薄膜の波長550nmにおける屈折率が2.03以下であることを特徴とする請求項1に記載の非結晶性酸化スズ薄膜。
- 膜厚が5〜100nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の非結晶性酸化スズ薄膜。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の非結晶性酸化スズ薄膜と金属薄膜とを有する薄膜積層体。
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