JP2010235972A - 高張力鋼板の製造制御装置及び製造方法 - Google Patents

高張力鋼板の製造制御装置及び製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高張力鋼板の規格及び製品寸法が多様なものであっても、高張力鋼板素材に対する適正な焼戻温度を十分に高い精度で簡単に演算する。
【解決手段】製造制御装置では、鋼板製造設備において焼戻処理が高張力鋼板素材に対して行われる前に、焼戻補正手段72が、偏差演算手段68の演算結果(化学成分差ΔCC、焼入開始温度差ΔTH及び冷却速度差ΔVC)を入力因子とし、第1推定モデル76により高張力鋼板22の推定材質MTSを演算し、高張力鋼板22の推定材質MTSを求める。次いで、焼戻補正手段72が、目標材質MTOと推定材質MTSとの差である製品材質差ΔMTを第2推定モデル82に入力し、この第2推定モデル82により温度補正量TTCを演算し、高張力鋼板22の製品グループ毎に、第2データベース84の記憶内容に基づいて構築された第2推定モデル82により温度補正量TTCを求める。
【選択図】図5

Description

本発明は、圧延完了後に、焼入処理及び焼戻処理を含む熱処理工程を経て製造される調質型の高張力鋼板、特に高張力厚鋼板の製造工程を管理するための高張力鋼板の製造制御装置及び、圧延完了後に、焼入処理及び焼戻処理を含む熱処理工程を経て製造される調質型の高張力鋼板、特に高張力厚鋼板の製造方法に関する。
調質型の高張力鋼板は、圧延完了後に、焼入処理及び焼戻処理を含む熱処理工程を経て製造される。焼入処理は、一般的に、圧延後の鋼板を加熱炉にて加熱した後に、所定の温度から急冷することにより実施される。また焼戻処理は、焼入処理後の鋼板を所定の温度域に加熱した後、徐冷することにより実施される。
ところで、上記のような高張力鋼板に対しては、ユーザの要求仕様、用途等に応じて強度上の規格値が定められている。この規格値としては、例えば、引張強さ、降伏点又は耐力、シャルピー衝撃値、硬度等が挙げられ、高張力鋼板に対しては、必ず規格下限値以上の強度を有することが要求される。一方、高張力鋼板に対しては、ユーザにより加工性を良好にすることが求められることが多く、この要求を満足させるためには、高張力鋼板の強度が規格の下限値を大きく超えるようなものになることを避ける必要がある。
また、上記のような高張力鋼板の強度を含む材質は、高張力鋼板の化学成分、焼入処理における焼入開始温度及び冷却速度、焼戻処理における焼戻温度が大きな影響を与えることが知られているが、実際の操業においては、高張力鋼板の化学成分、焼入開始温度、冷却速度及び焼戻温度(以下、これらをそれぞれ「材質制御要因」という。)の全てを常に一定(目標値=例えば、規格範囲の中央値)に保つことは不可能であり、材質制御要因毎の目標値と実績値との差の総和が大きくなるに従い、高張力鋼板の強度を含む材質が累積的に不安定になる。
特許文献1には、材質制御要因の変動により鋼材料・部品の硬度等の材質が不安定化することを抑制するための技術(熱処理品質制御方法)が開示されている。この特許文献1記載の熱処理品質制御方法では、鋼製品に対して焼入処理を行った直後に、電磁誘導試験法を用いた検査装置により鋼材料・部品における硬度、化学成分等を検出し、この硬度、化学成分等の検出結果に基づいて、続いて行われる焼戻処理における鋼材料・部品に対する焼戻温度が制御(フィードバック制御)される。これにより、焼戻温度を除く材質制御要因の変動により鋼材料・部品における硬度等の材質が変化することが抑制される。
特開昭62−188725号公報
高張力鋼板の製造設備(一般には製鉄所)では、高張力鋼板の用途、使用条件、ユーザの要求仕様等に応じて規格及び製品寸法が互いに異なる多品種の高張力鋼板が製造されている。ここで、材質制御要因は、その目標値と実績値との差が一定であっても、高張力鋼板の規格及び製品寸法の一方又は双方が異なる場合には、高張力鋼板の材質に対する影響量は異なるものになる。
このため、例えば、材質制御要因の実績値と焼戻処理後の高張力鋼板の材質との相関関係(推定モデル)を重回帰法等の公知の手法により求め、この推定モデルに基づいて、材質制御要因の実績値のみを入力因子とし、適正な焼戻温度を出力因子として求めても、高張力鋼板素材に対する適正な焼戻温度を十分に高い精度で得ることは難しい。
また、推定モデルの精度を向上するため、推定モデルに対して高張力鋼板の規格及び製品寸法をそれぞれパラメータ(入力因子)として追加すると、推定モデルが極めて多変数で、高次のものになることから、適正な焼戻温度を十分に高い精度で得るための演算量が膨大なものになる。また、近時に製造された高張力鋼板の材質実績が推定モデルに反映されるように、推定モデルを修正しようとした場合は、その作業が非常に煩瑣なものになる。
本発明の目的は、上記事実を考慮し、高張力鋼板の規格及び製品寸法が多様なものであっても、高張力鋼板素材に対する適正な焼戻温度を十分に高い精度で簡単に演算でき、かつデータベースモデルに高張力鋼板の情報が新たに追加された場合でも、追加情報に基づいて推定モデルを修正する作業を簡単に行える高張力鋼板の製造制御装置及び製造方法を提供することにある。
本発明の請求項1に係る高張力鋼板の製造制御装置は、圧延完了後に、焼入処理及び焼戻処理を含む熱処理工程を経て製造される高張力鋼板の製造条件を管理するための製造制御装置であって、過去に製造された高張力鋼板についての化学成分の実績値、前記焼入処理における焼入開始温度の実績値及び、前記焼入処理における冷却速度の実績値を、高張力鋼板の規格及び製品寸法の一方又は双方に応じて分類された製品グループ毎に記憶すると共に、これらの実績値にそれぞれ関連付けて、所定の基準焼戻温度で焼戻処理を行った高張力鋼板の材質実績を、前記製品グループ毎に記憶した第1のデータベースと、前記焼戻処理が高張力鋼板素材に対して行われる前に、該高張力鋼板素材における化学成分の目標値と実績値との化学成分差、前記焼入処理における焼入開始温度の目標値と実績値との焼入開始温度差及び、前記焼入処理における冷却速度の目標値と実績値との冷却速度差をそれぞれ演算する偏差演算手段と、前記第1のデータベースの記憶内容に基づいて、前記化学成分差、前記焼入開始温度差及び前記冷却速度差をそれぞれ入力因子とし、所定の基準焼戻温度で高張力鋼板素材に対して前記焼戻処理が行われた場合の高張力鋼板の推定材質を出力因子とする第1の推定モデルを、前記製品グループ毎に構築する第1のモデル構築手段と、前記焼戻処理が高張力鋼板素材に対して行われる前に、前記偏差演算手段の演算結果及び前記第1の推定モデルにより前記推定材質を求めると共に、製造対象である高張力鋼板に適合する鋼板材質の目標材質と前記推定材質との製品材質差を演算し、該製品材質差及び過去に製造された高張力鋼板の材質実績に基づいて前記基準焼戻温度の温度補正量を演算する焼戻補正手段と、を有することを特徴とする。
上記請求項1に係る高張力鋼板の製造制御装置では、焼戻処理が高張力鋼板素材に対して行われる前に、焼戻補正手段が、偏差演算手段の演算結果(化学成分差、焼入開始温度差及び前記冷却速度差)を入力因子とし、第1の推定モデルにより高張力鋼板の推定材質を演算することにより、偏差演算手段の演算結果及び、製品グループ毎に構築された第1の推定モデルにより高張力鋼板の推定材質を求めることができる。
すなわち、高張力鋼板の規格及び製品寸法の一方又は双方に応じて分類された製品グループを十分に細分化しておけば、高張力鋼板の規格及び製品寸法を第1の推定モデルの変数(入力因子)としなくても、偏差演算手段の演算結果(化学成分差、焼入開始温度差及び冷却速度差)のみを入力因子とする第1の推定モデルにより焼戻処理後の高張力鋼板の材質を十分に高い精度で得ることができる。
従って、請求項1に係る高張力鋼板の製造制御装置によれば、焼戻補正手段が、偏差演算手段により演算された製品材質差及び、過去に製造された高張力鋼板の材質実績に基づいて基準焼戻温度の温度補正量を演算することができるので、この温度補正量により補正された補正焼戻温度により高張力鋼板素材に対する焼戻処理を行って高張力鋼板を製造すれば、この高張力鋼板の材質を、その高張力鋼板に適合する目標材質との差(製品材質差)を十分に小さいものとし、かつ安定化できる。
また請求項1に係る高張力鋼板の製造制御装置では、第1のデータベースモデルに過去に製造された特定の高張力鋼板についての情報が新たに追加され、この追加情報に基づいて、第1のモデル構築手段が第1の推定モデルを修正する場合にも、特定の高張力鋼板が属する製品グループに対応する第1の推定モデルのみを修正すれば良く、さらに特定の高張力鋼板の追加情報が反映されるように、特定の高張力鋼板が属する製品グループに対応する第1の推定モデルを修正しても、この修正に伴って第1の推定モデルの変数(入力因子)が増加することもないので、追加情報に基づいて第1の推定モデルを修正する作業を簡単に行える。
また本発明の請求項2に係る高張力鋼板の製造制御装置は、請求項1記載の高張力鋼板の製造制御装置において、前記製品グループ毎に、前記温度補正量及び、該温度補正量により補正された補正焼戻温度で前記焼戻処理が行われた高張力鋼板の材質実績をそれぞれ記憶した第2のデータベースと、前記製品グループ毎に、前記第2のデータベースの記憶内容に基づいて、前記製品材質差を入力因子とし、前記温度補正量を出力因子とする第2の推定モデルを構築する第2のモデル構築手段とを有し、前記焼戻補正手段は、前記製品材質差を前記第2の推定モデルに入力し、該第2の推定モデルにより前記温度補正量を演算することを特徴とする。
また本発明の請求項3に係る高張力鋼板の製造制御装置は、請求項1又は2記載の高張力鋼板の製造制御装置において、前記第2の推定モデルは、前記焼戻補正手段により前記製品材質差が入力されると、前記製品材質差を可能な限り小さくする前記温度補正量を演算し、出力することを特徴とする。
また本発明の請求項4に係る高張力鋼板の製造制御装置は、請求項1乃至3の何れか1項記載の高張力鋼板の製造制御装置において、前記第1のモデル構築手段は、過去に製造された高張力鋼板の材質実績について新たな情報が前記第1のデータベースに格納されると、該新たな情報の内容を反映させて前記第1の推定モデルを再構築することを特徴とする。
また本発明の請求項5に係る高張力鋼板の製造制御装置は、請求項1乃至4の何れか1項記載の高張力鋼板の製造制御装置において、前記第2のモデル構築手段は、前記温度補正量及び、該温度補正量により前記焼戻温度が補正された条件で、過去に製造された高張力鋼板の材質実績について新たな情報が前記第2のデータベースに格納されると、該新たな情報の内容を反映させて前記第2の推定モデルを再構築することを特徴とする。
また本発明の請求項6に係る高張力鋼板の製造方法は、請求項1乃至5の何れか1項記載の高張力鋼板の製造制御装置を用いて高張力鋼板を製造する高張力鋼板の製造方法であって、前記焼戻処理が高張力鋼板素材に対して行われる前に、該高張力鋼板素材における化学成分の目標値と実績値との化学成分差、前記焼入処理における焼入開始温度の目標値と実績値との焼入開始温度差及び、前記焼入処理における冷却速度の目標値と実績値との冷却速度差をそれぞれ演算する偏差演算工程と、製品グループ毎に構築された前記第1の推定モデルに対して、前記化学成分差、前記焼入開始温度差及び前記冷却速度差をそれぞれ入力し、該第1の推定モデルにより前記基準焼戻温度で焼戻処理が行われた高張力鋼板の推定材質を演算する推定材質演算工程と、前記焼戻処理が高張力鋼板素材に対して行われる前に、前記偏差演算手段の演算結果及び前記第1の推定モデルにより前記推定材質を求めると共に、製造対象である高張力鋼板に適合する鋼板材質の目標材質と前記推定材質との製品材質差を演算し、該製品材質差及び過去に製造された高張力鋼板の材質実績に基づいて前記基準焼戻温度の温度補正量を演算する温度補正量演算工程と、を有することを特徴とする。
また本発明の請求項7に係る高張力鋼板の製造方法は、請求項6記載の高張力鋼板の製造方法において、前記温度補正量演算工程では、前記製品グループ毎に構築された前記第2の推定モデルに前記製品材質差を入力し、該第2の推定モデルにより前記温度補正量を演算することを特徴とする。
以上説明したように、本発明に係る高張力鋼板の製造制御装置及び高張力鋼板の製造方法によれば、高張力鋼板の規格及び製品寸法が多様なものであっても、高張力鋼板素材に対する適正な焼戻温度を十分に高い精度で簡単に演算でき、かつデータベースに高張力鋼板の情報が新たに追加された場合でも、追加情報に基づいて推定モデルを修正する作業を簡単に行うことができる。
本発明の実施形態に係る高張力鋼板の製造設備の構成を模式的に示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る高張力鋼板の製造制御装置の概略的な構成を示すブロック図である。 図2に示される中央演算処理部の機能的な構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る中央演算処理部による高張力鋼板の目標材質と推定材質との製品材質差についての演算方法を説明するためのフローチャートである。 本発明の実施形態に係る温度補正量演算工程における温度補正量TTCに基づいて焼戻温度TTを補正する方法を説明するためのフローチャートである。 焼戻し処理前鋼板について、偏差演算手段において演算された演算結果を入力因子として、予め構築しておいた第1の推定モデルにより所定の基準温度で焼戻処理が行われた場合の推定材質として推定された引張強さを示すヒストグラムである。 予め構築しておいた第2の推定モデルにより焼戻温度を補正した上で、焼戻処理を実施した際の引張強さの実績値を示すヒストグラムである。
以下、本発明の実施形態に係る高張力鋼板の製造制御装置及び、この製造制御装置を用いた高張力鋼板の製造方法について図面を参照して説明する。
(高張力鋼板の製造設備)
図1には、本発明の実施形態に係る高張力鋼板の製造設備の概略構成がブロック図により示されている。この高張力鋼板の製造設備(以下「鋼板製造設備」という。)10は、圧延ライン12及び熱処理設備14を備えている。圧延ライン12には、一段ないし複数段の圧延機18が配置されており、この圧延機18の上流側には、スラブ等の圧延素材16を所定の圧延開始温度まで加熱する連続式加熱炉20が配置されている。圧延ライン12では、連続式加熱炉20にて前記圧延開始温度まで加熱された圧延素材16を圧延機18により圧延することにより、圧延素材16を製品寸法と略一致する厚さ及び幅を有する高張力素材鋼板24に成形する。
熱処理設備14は焼入設備26及び焼戻設備28を備えており、焼入設備26には、加熱炉30及び冷却装置32がそれぞれ設けられている。加熱炉30は、高張力鋼板素材24を所定の焼入開始温度THまで加熱する。ここで、焼入処理の焼入開始温度THは、高張力鋼板22の規格及び製品寸法に応じて予め設定されており、上限値THH及び下限値THLにより品質上の許容範囲が規定されると共に、目標値THOが定められている。なお、加熱炉30としては、バッチ式及び連続式の何れでも用いることができる。
加熱炉30には温度センサ36が設置されており、この温度センサ36は、冷却装置32に搬入される直前の高張力鋼板素材24の表面温度を検出し、その検出信号を後述する製造制御装置50(図2参照)へ出力する。
冷却装置32は、前記焼入開始温度THに加熱された高張力素材鋼板24を急冷するためのもので、例えば、圧力水が大量に流れている装置内を高張力素材鋼板24が移動して行く間に焼入れを行う連続式焼入装置や、冷却水が通水された冷却槽内に高張力素材鋼板24を浸漬させて焼入れを行う浸漬タイプのものを用いることができる。また冷却装置32にも温度センサ38が設置されており、この温度センサ38は、冷却完了直後の高張力鋼板素材24の表面温度を検出し、その検出信号を後述する製造制御装置50(図2参照)へ出力する。
ここで、図2に示す製造制御装置50は、温度センサ36から入力した検出信号に基づいて焼入処理における焼入開始温度THの実績値THRを判断すると共に、温度センサ36により検出された焼入開始温度THと温度センサ38により検出された焼入処理が完了した時の焼入終了温度との差及び、冷却装置32での高張力鋼板素材24の冷却時間に基づいて高張力鋼板素材24の焼入処理の冷却速度VCの実績値VCRを演算する。この冷却速度VCは、高張力鋼板22の規格及び製品寸法に応じて予め設定されており、上限値VCH及び下限値VCLにより品質上の許容範囲が規定されると共に、目標値VCOが定められている。
焼戻設備28には加熱炉34が設けられている。この加熱炉34としては、バッチ式及び連続式の何れでも用いることができる。加熱炉34は、焼入設備26により焼入処理が完了した高張力鋼板素材24を所定の焼戻温度TTまで加熱する。この高張力鋼板素材24は、加熱炉34から搬出された後、徐冷されて焼戻処理されることにより、製品としての高張力鋼板22とされる。
焼戻設備28の加熱炉34にも温度センサ40が設置されており、この温度センサ40は、加熱炉34による加熱完了直後の高張力鋼板素材24の表面温度を検出し、その検出信号を製造制御装置50(図2参照)へ出力する。
ここで、図2に示される製造制御装置50は、温度センサ40からの検出信号に基づいて焼戻処理における焼戻温度TTの実績値TTRを判断する。焼戻温度TTは、高張力鋼板22の規格及び製品寸法に応じて予め設定されており、上限値TTH及び下限値TTLにより品質上の許容範囲が規定されると共に、目標値TTOが定められている。
なお、鋼板製造設備10には、以上の説明において言及しなかった設備、例えば、圧延完了後の鋼板を加速冷却する設備、鋼板の形状を矯正する設備、鋼板を常温近くまで冷却する設備等が配置される場合もあるが、このような鋼板製造設備10に対しても本発明を適用することが可能である。
(高張力鋼板の製造制御装置)
次に、本発明の実施形態に係る高張力鋼板の製造制御装置について説明する。図2には、本実施形態に係る高張力鋼板の製造制御装置の概略的な構成が示されている。この高張力鋼板の製造制御装置(以下「製造制御装置」ともいう。)50には、中央演算処理部52、製造実績収集部54及び試験実績収集部56が設けられると共に、これらの間で各種の情報を伝送するローカルエリアネットワーク(LAN)58が設けられている。また中央演算処理部52、製造実績収集部54及び試験実績収集部56は、LAN58を介して鋼板製造設備10全体を制御するプロセスコンピュータ60に接続されている。このような中央演算処理部52、製造実績収集部54及び試験実績収集部56は、例えば、ワークステーション等の電子計算機によりそれぞれ構成することができる。
プロセスコンピュータ60は、圧延ライン12を構成する圧延機18、連続式加熱炉20等の装置単位で設置された複数のコントローラ62及び、熱処理設備14を構成する加熱炉30、冷却装置32、加熱炉34等の装置単位で設置された複数のコントローラ64に対して高張力鋼板22の規格、製品寸法等に対応する制御情報を出力することにより、鋼板製造設備10全体を包括的に制御している。
製造実績収集部54は、過去に製造した高張力鋼板22毎に、その化学成分CC、焼入開始温度TH及び冷却速度VC、焼戻温度TT(以下、これらを包括して「材質制御要因」という。)についての目標値及び実績値をそれぞれ収集し、これらの材質制御要因に関する情報を中央演算処理部52に対して所定の更新周期毎に出力する。
ここで、高張力鋼板22毎とは、後述される材料試験が行われる単位毎にという意味であり、例えば、製鋼工程における出鋼チャージ単位で材質制御要因の情報が収集される。また化学成分は、原則的に精錬中の最終分析値を用いるが、半製品としてのスラブ等の圧延素材16や、製品としての高張力鋼板22から採取されたサンプルの分析値を用いても良い。
なお、本明細書では、化学成分情報を「化学成分CC」のように包括的に表現するが、実際には各元素について演算処理されるものとする。ここで、演算処理の対象とされる成分元素としては、鋼中に含有される全元素でもよいし、あるいは鋼の焼入れ及び/又は焼戻し挙動に及ぼす影響が大きな元素に限定することにしてもよい。
試験実績収集部56は、過去に製造された高張力鋼板22毎に、行われた材料試験により得られた高張力鋼板22の材質実績を収集し、これらの材質実績に関する情報を中央演算処理部52に対して所定の更新周期毎に出力する。なお、高張力鋼板22の材質実績とは、主として材料強度についての試験結果の実績値であり、具体的には、例えば、引張強さ、降伏点又は耐力、シャルピー衝撃値、表面硬度、ジョミニー値等が挙げられるが、熱処理と関連する属性を有するものであれば、材料強度以外のものを材質実績として取り扱っても良い。ここで、試験実績の情報が材質制御要因の情報よりも遅い時期に得られることから、製造実績収集部54は、試験実績収集部56が試験実績の情報を中央演算処理部52へ出力するタイミングに同期し、この試験実績の情報に対応する材質制御要因の情報を中央演算処理部52へ出力するものとする。
中央演算処理部52は、図3に示されるように、焼戻補正手段72、偏差演算手段68、第1モデル構築手段70、第2モデル構築手段80、及び記憶装置78を備えている。記憶装置78には、製造実績収集部54及び試験実績収集部56からそれぞれ送られてくる情報が格納される第1データベース74及び弟2データベース84が設けられている。
第1データベース74は、具体的には、過去に製造された高張力鋼板22についての化学成分CCの実績値CCR、焼入開始温度THの実績値THR及び、冷却速度VCの実績値VCRを、高張力鋼板22の製品グループ毎に記憶すると共に、これらの実績値にそれぞれ関連付けて、所定の基準焼戻温度TTSで高張力鋼板素材24に対して焼戻処理を行った場合に得られた高張力鋼板22の材質実績を製品グループ毎に記憶している。
ここで、基準焼戻温度TTSは、焼戻温度TTの目標値TTOを中心値とし、この目標値TTOに対して実操業で不可避的に生じる誤差範囲内の温度とされている。また高張力鋼板22の製品グループとは、高張力鋼板22を、その規格及び製品寸法の一方又は双方に基づいて分類したものであり、この製品グループには、成分系等の冶金学的な特徴及び、焼入性に対して大きな影響を及ぼす製品寸法(特に、厚さ)が互いに類似する高張力鋼板22の製品群が含まれる。
中央演算処理部52は、記憶装置78に製造実績収集部54及び試験実績収集部56から新たな情報が入力すると、これらの情報のうち基準焼戻温度TTSで焼戻処理が行われた高張力鋼板22に関する情報を、第1データベース74に追加記憶する。なお、第1データベース74のサイズが物理的に制限される場合には、高張力鋼板22の製品グループ毎に格納情報量の上限値を定め、この上限値を超える古い情報を第1データベース74から消去しつつ、新たな情報を第1データベース74に格納するようにしても良い。
また記憶装置78には、製品規格に関する情報のデータテーブル(図示省略)が設けられており、このデータテーブルには、高張力鋼板素材24の規格及び製品寸法毎に規定された化学成分CCの目標値CCO、焼入開始温度THの目標値THO、焼戻温度TTの目標値TTO及び冷却速度VCの目標値VCOが予め格納されている。
第1モデル構築手段70は、第1データベース74が記憶する過去に製造された高張力鋼板22についての材質制御要因の実績値(化学成分CCの実績値CCR、焼入開始温度THの実績値THR及び、冷却速度VCの実績値VCR)及び、これらの材質制御要因の実績値にそれぞれ関連付けられた高張力鋼板22の材質実績に基づいて第1推定モデル76を製品グループ毎に構築し、この第1推定モデル76を記憶装置78に格納する。
具体的には、第1推定モデル76は、後述する偏差演算手段68により演算される化学成分差ΔCC、焼入開始温度差ΔTH及び冷却速度差ΔVCをそれぞれ入力因子とし、基準焼戻温度TTSで高張力鋼板素材24に対して焼戻処理が行われた場合の高張力鋼板22の材質の推定値である推定材質MTSを出力因子とする関数式である。第1モデル構築手段70は、第1データベース74の記憶内容(実績値CCR、実績値THR、実績値VCR、基準焼戻温度TTSで焼戻処理が行われた場合の材質実績)に基づいて、例えば、重回帰法、ニューラルネットワーク法、データベース法等の公知の解析方法を用いて第1推定モデル76を構築する。
また、第1モデル構築手段70は、第1データベース74に製造実績収集部54及び試験実績収集部56から新たな情報が入力すると、それに同期して第1推定モデル76を再構築する。これにより、第1推定モデル76は、第1データベース74に格納された新たな情報が反映されたものになる。
図4のフローチャートには、本実施形態に係る中央演算処理部による高張力鋼板の目標材質と推定材質との製品材質差についての演算方法が示されている。この図4を参照しつつ、製品材質差についての演算方法について説明する。
図4のステップS01では、中央演算処理部52は、高張力鋼板素材24に対する焼入処理が完了したことを判断すると、ルーチンをステップS02へ移行させる。ステップS02の偏差演算工程では、中央演算処理部52は、高張力鋼板素材24に対して焼戻処理が行われる前に、偏差演算手段68により高張力鋼板素材24における化学成分CCの目標値CCOと実績値CCRとの差である化学成分差ΔCC、焼入開始温度THの目標値THOと実績値THRとの差である焼入開始温度差ΔTH及び、冷却速度VCの目標値VCOと実績値VCRとの差である冷却速度差ΔVCをそれぞれ演算する。
ステップS03では、中央演算処理部52は、偏差演算手段68による演算結果(化学成分差ΔCC、焼入開始温度差ΔTH及び、冷却速度差ΔVC)を焼戻補正手段72へ出力する。
ステップS04の推定材質演算工程では、焼戻補正手段72は、焼戻処理が高張力鋼板素材24に対して行われる前に、偏差演算手段68の演算結果(化学成分差ΔCC、焼入開始温度差ΔTH及び冷却速度差ΔVC)を、高張力鋼板22の製品グループに対応する第1推定モデル76に入力し、この第1推定モデル76を用いて基準焼戻温度TTSで高張力鋼板素材24に対して焼戻処理が行われた場合の高張力鋼板22の推定材質MTSを演算する。
ステップS05では、焼戻補正手段72は、高張力鋼板素材24から製造される高張力鋼板22に適合する鋼板材質の目標材質MTOを記憶装置78から読み出すと共に、ステップS04で演算した推定材質MTSと目標材質MTOとの差である製品材質差ΔMTを演算する。
ここで、推定材質MTS及び目標材質MTOは、それぞれ材料試験により得られた高張力鋼板22の材質実績(主として材料強度についての試験結果)に対応するものであり、例えば、引張強さ、降伏点又は耐力、シャルピー衝撃値、表面硬度、ジョミニー値等の推定値及び目標値をそれぞれ含んでいる。
例えば、製品材質差ΔMTは、推定材質MTSに含まれた試験結果の推定値と、目標材質MTOに含まれた試験結果の目標値との差を試験項目毎に算出し、これら試験項目毎の差にそれぞれ評価係数を乗じ、それらを合算することにより求められる。このとき、評価係数は、高張力鋼板22に要求される性能等に応じて適宜設定される。
記憶装置78に設けられた第2データベース84は、過去に算出された温度補正量TTC及び、この温度補正量TTCにより補正された補正焼戻温度TTUで、焼戻処理が行われた高張力鋼板22の材質実績を、製品グループ毎に記憶している。ここで、補正焼戻温度TTUは、温度補正量TTCにより焼戻温度TTの目標値TTOを補正(増減)した値を算出し、この補正後の目標値TTOを中心とし、この補正後の目標値TTOに対して実操業で不可避的に生じる誤差範囲内の温度とされている。
中央演算処理部52は、記憶装置78に製造実績収集部54及び試験実績収集部56から新たな情報が入力すると、これらの情報のうち、補正焼戻温度TTUで焼戻処理が行われた高張力鋼板22の材質実績に関する情報を、第2データベース84に追加記憶する。なお、第2データベース84のサイズが物理的に制限される場合には、高張力鋼板22の製品グループ毎に格納情報量の上限値を定め、この上限値を超える古い情報を第2データベース84から消去しつつ、新たな情報を第2データベース84に格納するようにしても良い。
第2モデル構築手段80は、高張力鋼板22の製品グループ毎に、第2データベース84の記憶内容に基づいて、製品材質差ΔMTを入力因子とし、温度補正量TTCを出力因子とする第2推定モデル82を製品グループ毎に構築し、この第2推定モデル82を記憶装置78に格納する。
具体的には、第2推定モデル82は、製品材質差ΔMTを入力因子とし、焼戻温度TTに対する温度補正量TTCを出力因子とする関数式である。この第2推定モデル82は、製品材質差ΔMTが入力されると、鋼板材質の目標材質MTOと推定材質MTSとの製品材質差ΔMTを可能な限り小さくする温度補正量TTCを求め、出力する。
第2モデル構築手段80は、第2データベース84の記憶内容(温度補正量TTC及び、補正焼戻温度TTUで焼戻処理が行われた高張力鋼板22の材質実績)に基づいて、例えば、重回帰法、ニューラルネットワーク法、データベース法等の公知の解析方法を用いて第2推定モデル82を構築する。
また、第2モデル構築手段80は、第2データベース84に製造実績収集部54及び試験実績収集部56から新たな情報が入力すると、それに同期して第2推定モデル82を再構築する。これにより、第2推定モデル82は、第2データベース84に格納された新たな情報が反映されたものになる。
図5のフローチャートには、本実施形態に係る温度補正量演算工程における温度補正量TTCに基づいて焼戻温度TTを補正する方法が示されている。
ステップS06及びステップS07では、焼戻補正手段72は、図4のステップS05で求めた製品材質差ΔMTを第2推定モデル82に入力し、第2推定モデル82により温度補正量TTCを演算する。ステップS08では、中央演算処理部52は、ステップS09で求めた温度補正量TTCを、LAN58を介してプロセスコンピュータ60へ出力する。
ステップS09では、プロセスコンピュータ60は、中央演算処理部52から送られてきた温度補正量TTCに基づいて焼戻温度TTの上限値TTH、下限値TTL及び目標値TTOをそれぞれ補正し、上限値TTH、下限値TTL及び目標値TTOを焼戻設備28の加熱炉34に対応するコントローラ64へ制御情報として出力する。これにより、加熱炉34は、コントローラ64により高張力鋼板素材24が目標値TTOに加熱されるように制御(フィードバック制御)される。このとき、コントローラ64による制御が正常に行われれば、高張力鋼板素材24は、目標値TTOの誤差範囲内におさまった補正焼戻温度TTUに加熱された後、徐冷されることにより焼戻処理が行われる。
(本実施形態の作用)
以上説明した本実施形態に係る製造制御装置50では、鋼板製造設備10において焼戻処理が高張力鋼板素材24に対して行われる前に、焼戻補正手段72が、偏差演算手段68の演算結果(化学成分差ΔCC、焼入開始温度差ΔTH及び冷却速度差ΔVC)を入力因子とし、第1推定モデル76により高張力鋼板22の推定材質MTSを演算する。これにより、偏差演算手段68の演算結果及び、製品グループ毎に構築された第1推定モデル76により高張力鋼板22の推定材質MTSを求めることができる。
すなわち、高張力鋼板22の規格及び製品寸法の一方又は双方に応じて分類された製品グループを十分に細分化しておけば、高張力鋼板22の規格及び製品寸法を第1推定モデル76の変数(入力因子)としなくても、偏差演算手段68の演算結果(化学成分差ΔCC、焼入開始温度差ΔTH及び冷却速度差ΔVC)のみを入力因子とする第1推定モデル76により焼戻処理後の高張力鋼板22の材質を十分に高い精度で推定できる。
また鋼板製造設備10では、第1データベース74に過去に製造された特定の高張力鋼板22についての情報が新たに追加され、この追加情報に基づいて第1モデル構築手段70が第1推定モデル76を修正する場合にも、特定の高張力鋼板が属する製品グループに対応する第1推定モデル76のみを修正すれば良く、さらに特定の高張力鋼板22の追加情報が反映されるように、特定の高張力鋼板が属する製品グループに対応する第1推定モデル76を修正しても、この修正に伴って第1推定モデル76の変数(入力因子)が増加することもないので、追加情報に基づいて第1推定モデル76を修正する作業を簡単に行える。
さらに、本実施形態に係る鋼板製造設備10では、高張力鋼板22の製品グループ毎に、第2データベース84が、温度補正量TTC及び、この温度補正量TTCにより補正された補正焼戻温度TTUで焼戻処理が行われた高張力鋼板22の材質実績をそれぞれ記憶し、かつ第2モデル構築手段80が、第2データベース84の記憶内容に基づいて、製品材質差ΔMTを入力因子とし、温度補正量TTCを出力因子とする第2推定モデル82を、製品グループ毎に構築している。従って、鋼板製造設備10において焼戻処理が高張力鋼板素材24に対して行われる前に、焼戻補正手段72が、目標材質MTOと推定材質MTSとの差である製品材質差ΔMTを第2推定モデル82に入力し、この第2推定モデルにより温度補正量TTCを演算することにより、高張力鋼板22の製品グループ毎に、第2データベース84の記憶内容に基づいて構築された第2推定モデル82により温度補正量TTCを求めることができる。
すなわち、第1推定モデル76と同様に、高張力鋼板22の規格及び製品寸法の一方又は双方に応じて分類された製品グループを十分に細分化しておけば、高張力鋼板22の規格及び製品寸法を第2推定モデル82の変数(入力因子)としなくても、製品材質差ΔMTのみを入力因子とする第2推定モデル82により適正な焼戻温度TTに対する温度補正量TTCを十分に高い精度で得ることができる。
この結果、前記温度補正量TTCにより補正された補正焼戻温度TTUにより高張力鋼板素材24に対する焼戻処理を行って高張力鋼板22を製造すれば、この高張力鋼板22の材質(実績値)を、その高張力鋼板22に適合する目標材質MTOとの差(製品材質差ΔMT)を十分に小さいものとし、かつ安定化できる。
また鋼板製造設備10では、第2データベース84に過去に製造された特定の高張力鋼板22についての情報が新たに追加され、この追加情報に基づいて第2モデル構築手段80が第2推定モデル82を修正する場合にも、特定の高張力鋼板が属する製品グループに対応する第2推定モデル82のみを修正すれば良く、さらに特定の高張力鋼板22の追加情報が反映されるように、特定の高張力鋼板が属する製品グループに対応する第2推定モデル82を修正しても、この修正に伴って第2推定モデル82の変数(入力因子)が増加することもないので、追加情報に基づいて第2推定モデル82を修正する作業を簡単に行える。
なお、本実施形態に係る製造制御装置50及び製造方法は、調質型の高張力鋼板22を製造する鋼板製造設備10を制御するものとして説明したが、鋼材に対する圧延工程及び熱処理工程がこの順に実施される鋼材の製造設備であるならば、高張力鋼板22(厚板)以外の丸棒等の他の形状に形成される鋼材製造設備にも、本発明に係る鋼板の製造制御装置及び製造方法を適用することが可能であり、本発明に係る鋼板の製造制御装置及び製造方法を適用することにより、焼入処理及び焼戻処理を含む熱処理完了後の鋼材品質を目標材質に近づけ、かつ安定化できる。
次に、本発明に係る高張力鋼板の製造制御装置及び製造方法を780MPa級調質高強度厚鋼板の製造に適用した結果を実施例として説明する。
化学成分、焼入開始温度、及び焼入時の冷却速度がそれぞれ所定の基準値の範囲内に制御された条件下で、780MPa級調質高強度厚鋼板の中間品(焼戻処理前鋼板)を製造した。この焼戻処理前鋼板を、従来の高張力鋼板の製造方法では、、基準焼戻し温度である640℃の条件で焼戻処理することにより、焼戻処理前鋼板から30キロ級調質高強度厚鋼板を製造する。ここで、780MPa級調質高強度厚鋼板の引張強さの目標範囲は780〜819MPaに設定されている。
上記のようにして製造された10枚の焼戻処理前鋼板について、偏差演算手段において演算された化学成分差、焼入開始温度差、及び冷却速度差の演算結果を入力因子として、予め構築しておいた第1の推定モデルにより、所定の基準温度(本実施例では、640℃)で焼戻処理が行われた場合の推定材質として引張強さを推定した。その結果を図6のヒストグラムに示す。この図6に示すように、焼戻処理前鋼板に対して、所定の基準温度(本実施例では、640℃)で焼戻処理を行った場合、目標範囲を上回る820Pa以上の引張強さとなる鋼板(780MPa級調質高強度厚鋼板)が4枚発生することが推定されると共に、引張強さのばらつきを表す標準偏差σは13.7MPaとなることが推定された。この推定結果は、従来の高張力鋼板の製造方法により製造された780MPa級調質高強度厚鋼板についての引張強さ分布に相当するものである。
そこで、予め構築しておいた第2の推定モデルにより焼戻温度を補正した上で、焼戻処理を実施したところ、引張強さ実績値は、図7のヒストグラムに示されるような結果となった。この場合には、10枚の30キロ級調質高強度厚鋼板の引張強さは、いずれも目標強度範囲内である780〜819MPaの範囲に収まると共に、標準偏差σも9.8MPaとなった。すなわち、第2の推定モデルにより焼戻温度を補正した場合には、その引張強さの標準偏差σ(=9.8MPa)を焼戻温度を補正しない場合の標準偏差σ(=13.8MPa)よりも小さいものにでき、かつ、ばらつきも低減できた。
10 鋼板製造設備(高張力鋼板の製造設備)
12 圧延ライン
14 熱処理設備
16 圧延素材
18 圧延機
20 連続式加熱炉
22 高張力鋼板
24 高張力鋼板素材
26 焼入設備
28 焼戻設備
30 加熱炉
32 冷却装置
34 加熱炉
36 温度センサ
38 温度センサ
40 温度センサ
50 製造制御装置
52 中央演算処理部
54 製造実績収集部
56 試験実績収集部
60 プロセスコンピュータ
62 コントローラ
64 コントローラ
68 偏差演算手段
70 第1モデル構築手段
72 焼戻補正手段
74 第1データベース
76 第1推定モデル
78 内部メモリ
80 第2モデル構築手段
82 モデル構築手段
82 推定モデル
84 第2データベース
CC 化学成分
CCO 目標値
CCR 実績値
ΔCC 化学成分差
MTO 目標材質
MTS 推定材質
ΔMT 製品材質差
S2 ステップ
TH 焼入開始温度
THR 実績値
ΔTH 焼入開始温度差
TT 焼戻温度
TTC 温度補正量
TTR 実績値
TTS 基準焼戻温度
TTU 補正焼戻温度
VC 冷却速度
VCR 実績値
ΔVC 冷却速度差

Claims (7)

  1. 圧延完了後に、焼入処理及び焼戻処理を含む熱処理工程を経て製造される高張力鋼板の製造条件を管理するための製造制御装置であって、
    過去に製造された高張力鋼板についての化学成分の実績値、前記焼入処理における焼入開始温度の実績値及び、前記焼入処理における冷却速度の実績値を、高張力鋼板の規格及び製品寸法の一方又は双方に応じて分類された製品グループ毎に記憶すると共に、これらの実績値にそれぞれ関連付けて、所定の基準焼戻温度で焼戻処理を行った高張力鋼板の材質実績を、前記製品グループ毎に記憶した第1のデータベースと、
    前記焼戻処理が高張力鋼板素材に対して行われる前に、該高張力鋼板素材における化学成分の目標値と実績値との化学成分差、前記焼入処理における焼入開始温度の目標値と実績値との焼入開始温度差及び、前記焼入処理における冷却速度の目標値と実績値との冷却速度差をそれぞれ演算する偏差演算手段と、
    前記第1のデータベースの記憶内容に基づいて、前記化学成分差、前記焼入開始温度差及び前記冷却速度差をそれぞれ入力因子とし、所定の基準焼戻温度で高張力鋼板素材に対して前記焼戻処理が行われた場合の高張力鋼板の推定材質を出力因子とする第1の推定モデルを、前記製品グループ毎に構築する第1のモデル構築手段と、
    前記焼戻処理が高張力鋼板素材に対して行われる前に、前記偏差演算手段の演算結果及び前記第1の推定モデルにより前記推定材質を求めると共に、製造対象である高張力鋼板に適合する鋼板材質の目標材質と前記推定材質との製品材質差を演算し、該製品材質差及び過去に製造された高張力鋼板の材質実績に基づいて前記基準焼戻温度の温度補正量を演算する焼戻補正手段と、
    を有することを特徴とする高張力鋼板の製造制御装置。
  2. 前記製品グループ毎に、前記温度補正量及び、該温度補正量により補正された補正焼戻温度で前記焼戻処理が行われた高張力鋼板の材質実績をそれぞれ記憶した第2のデータベースと、
    前記製品グループ毎に、前記第2のデータベースの記憶内容に基づいて、前記製品材質差を入力因子とし、前記温度補正量を出力因子とする第2の推定モデルを構築する第2のモデル構築手段と、を有し、
    前記焼戻補正手段は、前記製品材質差を前記第2の推定モデルに入力し、該第2の推定モデルにより前記温度補正量を演算することを特徴とする請求項1記載の高張力鋼板の製造制御装置。
  3. 前記第2の推定モデルは、前記焼戻補正手段により前記製品材質差が入力されると、前記製品材質差を可能な限り小さくする前記温度補正量を演算し、出力することを特徴とする請求項1又は2記載の高張力鋼板の製造制御装置。
  4. 前記第1のモデル構築手段は、
    過去に製造された高張力鋼板の材質実績について新たな情報が前記第1のデータベースに格納されると、該新たな情報の内容を反映させて前記第1の推定モデルを再構築することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の高張力鋼板の製造制御装置。
  5. 前記第2のモデル構築手段は、
    前記温度補正量及び、該温度補正量により前記焼戻温度が補正された条件で、過去に製造された高張力鋼板の材質実績について新たな情報が前記第2のデータベースに格納されると、該新たな情報の内容を反映させて前記第2の推定モデルを再構築することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の高張力鋼板の製造制御装置。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項記載の高張力鋼板の製造制御装置を用いて高張力鋼板を製造する高張力鋼板の製造方法であって、
    前記焼戻処理が高張力鋼板素材に対して行われる前に、該高張力鋼板素材における化学成分の目標値と実績値との化学成分差、前記焼入処理における焼入開始温度の目標値と実績値との焼入開始温度差及び、前記焼入処理における冷却速度の目標値と実績値との冷却速度差をそれぞれ演算する偏差演算工程と、
    製品グループ毎に構築された前記第1の推定モデルに対して、前記化学成分差、前記焼入開始温度差及び前記冷却速度差をそれぞれ入力し、該第1の推定モデルにより前記基準焼戻温度で焼戻処理が行われた高張力鋼板の推定材質を演算する推定材質演算工程と、
    前記焼戻処理が高張力鋼板素材に対して行われる前に、前記偏差演算手段の演算結果及び前記第1の推定モデルにより前記推定材質を求めると共に、製造対象である高張力鋼板に適合する鋼板材質の目標材質と前記推定材質との製品材質差を演算し、該製品材質差及び過去に製造された高張力鋼板の材質実績に基づいて前記基準焼戻温度の温度補正量を演算する温度補正量演算工程と、
    を有することを特徴とする高張力鋼板の製造方法。
  7. 前記温度補正量演算工程では、前記製品グループ毎に構築された前記第2の推定モデルに前記製品材質差を入力し、該第2の推定モデルにより前記温度補正量を演算することを特徴とする請求項6記載の高張力鋼板の製造方法。
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