この発明は、生産工程から得られる各種データに基づいて不良発生時の要因分析を行う要因分析装置および要因分析方法に関する。
各種製品の生産工程において、高品質な製品を高い歩留まりで生産するためには、生産工程での現象を分析し、その分析結果に基づいて上記生産工程をコンロトールすることが重要である。
上述したような手法の1つとして、生産工程での不良発生時における不良要因分析を行い、その分析結果を生産工程へフィードバックする手法がある。上記不良要因分析には、生産工程のうちの製造工程から取得できる製造プロセスデータと、上記生産工程のうちの検査工程から取得できる検査データとを、データベースに保存する。そして、それらのデータについて統計的手法を適用して、不良要因を抽出する方法がある。
このような不良要因抽出方法として、例えば、特開2003‐332209号公報(特許文献1)に開示された「製造方法ラインの診断方法」がある。上記特許文献1に開示された製造方法ラインの診断方法では、多品種の半導体デバイス製造ラインにおける各工程毎の検査データおよびその際の製造装置の製造条件の実績値を用いて、半導体デバイス製造の検査工程における規格外れ要因を、製造装置起因とプロセス起因とに分離する診断処理を行うようにしている。
このように、上記特許文献1では、半導体デバイスの生産工程において、製造条件の実績値および各工程での検査データをデータベースに収集し、それらのデータに基づいて製造工程の問題箇所の抽出を行っている。
また、生産工程の製造プロセスに対して、製造プロセスから得られたデータに基づいて統計的手法によって作成した計算式、製造プロセスにおける物理的および化学的現象に基づいて作成した計算式、または、それらの形算式を組み合わせた計算モデルを構築する。そして、上記計算式あるいは計算モデルを用いて、製造プロセスによる処理の結果得られる製品の品質および特性を予測する方法がある。
このような製品の品質および特性の予測方法として、特開2005‐136113号公報(特許文献2)に開示された「検査データ解析プログラム」がある。上記特許文献2に開示された検査データ解析プログラムでは、欠陥座標データと電気検査データとレイアウト図面を読み出す。そして、読み出した上記欠陥座標データと上記レイアウト図面とを照合し、欠陥によって生ずる可能性がある不良を予測し、この予測結果に基づいて上記欠陥座標データから必要なデータだけを絞り込む。次に、上記電気検査データの分類情報に基づいて上記電気検査データの各チップを2つのグループに分け、上記絞り込んだ欠陥座標データとグループ分けした上記電気検査データとを用いて、歩留まり影響度を計算して出力するようにしている。
このように、上記特許文献2では、製品の品質および特性の予測方法を生産工程の品質改善に適用しており、薄膜デバイスの生産において、不良発生状態として成膜欠陥の面内分布を予測し、その予測結果に基づいて、成膜欠陥がデバイスの良否に与える影響度を評価している。
一方、生産工程における各種検査においては、検査装置による測定方法が高度であるため測定に時間が掛かり、生産ラインの許容時間内に測定ができない検査や、製品の品質に対して検査装置によって不可逆な処理を行って測定を行う検査のような、全製品に対する検査実行あるいは高い頻度での検査実行が不可能な検査がある。このような検査は、製品の一部を抜取って検査を実行する「抜取り検査」を行う。このような抜取り検査は製品の品質を確認する上で重要であっても、高い頻度でデータを取得することはできない。
化学プロセスのような連続的な生産においては、連続生産であるため検査は抜取り検査が主となり、高い頻度で検査を行うことができない。また、連続生産ではない電子デバイスの製造工程においても抜取り検査は行われており、同様に、データ取得の頻度が低くなる。
さらに、集積回路,フラットパネルディスプレイ,太陽電池および化合物半導体素子等で代表される薄膜デバイスのような、高度なプロセスで多量な生産を高い歩留まりで行うことが必要とされる製品の生産工程においては、同じ機能を有する複数の製造装置を備えた生産工程がある。このような生産工程では、個々の製造装置に個体差が発生し、それが製造される製品の特性および歩留まりのばらつきに影響を与えることになる。特に、近年においては、プロセスの高度化と製品特性に対するマージンの縮小化とが図られており、製品特性に対する個々の製造装置の影響が大きくなってきている。さらには、複数の工程において複数の製造装置が存在する場合には、各製造装置を通過する組合せが多数の組合せがあり、その組合せによって製品の特性および歩留まりに差異が出ることになる。
したがって、上述した抜取り検査を含む生産工程に対して、実際の検査データが必要な上記特許文献1を適用した場合には、生産される製品数に対して分析可能な検査データ数が少なくなるため、上記不良要因分析の精度が低くなるという問題がある。または、分析するために必要なデータの取得期間が長くなり、迅速な要因分析ができなくなるという問題がある。
特に、上述のごとく同じ機能を有する複数の製造装置を備えた生産工程においても、多量の生産を行うために上記抜取り検査を行うようになってきている。このような生産工程においては、さらに、各製造装置に対する検査頻度が低下し、上記不良要因分析の精度低下の現象や分析のためのデータ収集期間が長くなる現象が顕著になり、高品質および高歩留まり生産が困難になる。
また、上述したような製品の品質および特性を予測する上記特許文献2においては、予測された品質および特性が製品の良否に与える影響度を分析している。しかしながら、上記特許文献2では、不良要因を特定する分析まではできておらず、製品の品質および歩留まりの改善に対しては不十分な分析であるという問題がある。
特開2003‐332209号公報
特開2005‐136113号公報
そこで、この発明の課題は、検査データ数が十分に取得できない生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができる要因分析装置および要因分析方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明の要因分析装置は、
プロセス装置によってプロセス処理が行われる製造プロセスと、検査装置によって検査が行われる検査工程とを含む生産工程において、上記プロセス装置の運転条件および上記プロセス装置のプロセス条件を含む上記プロセス装置に関する計測値を収集するデータ収集部と、
上記データ収集部によって収集された上記計測値に基づいて、上記検査装置における検査項目の測定値の予測値である検査予測値を演算する予測演算部と、
上記予測演算部によって演算された上記検査予測値を分析対象とすると共に、上記生産工程から収集された上記プロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行う要因分析部と
を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、予測演算部によって、検査工程の検査装置における検査項目の測定値の予測値である検査予測値を演算し、要因分析部によって、上記検査予測値を分析対象とすると共に、生産工程から収集されたプロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行うようにしている。したがって、上記検査工程が、抜き取り検査を行う検査工程のごとく、実計測される検査測定値の数が十分でない検査工程の場合であっても、上記検査予測値を要因分析の分析対象とすることにより、分析対象数を十分に確保することができる。
すなわち、この発明によれば、検査工程での検査測定値が十分に取得できないような生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができるのである。
また、この発明の要因分析方法は、
この発明の要因分析装置を用いた要因分析方法であって、
上記生産工程から、上記プロセス装置の運転条件および上記プロセス装置のプロセス条件を含む上記プロセス装置に関する計測値を収集するデータ収集ステップと、
上記収集された上記計測値に基づいて、上記検査装置における検査項目の測定値の予測値である検査予測値を演算する予測演算ステップと、
上記演算された上記検査予測値を分析対象とすると共に、上記生産工程から収集された上記プロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行う要因分析ステップと
を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、予測演算ステップによって、検査工程の検査装置における検査項目の測定値の予測値である検査予測値を演算し、要因分析ステップによって、上記検査予測値を分析対象とすると共に、生産工程から収集されたプロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行うようにしている。したがって、上記検査工程が、抜き取り検査を行う検査工程のごとく、実計測される検査測定値の数が十分でない検査工程の場合であっても、上記検査予測値を要因分析の分析対象とすることによって、分析対象数を十分に確保することができる。
すなわち、この発明によれば、検査工程での検査測定値が十分に取得できないような生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができるのである。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記生産工程は、複数の上記製造プロセスを含み、上記各製造プロセスは同じ機能を有する複数の上記プロセス装置を有しており、上記製品が上記複数のプロセス装置のうちの何れか一つを通過することによって、上記製品が通過した上記プロセス装置を含む上記製造プロセスでの処理が完了するようになっている。
この実施の形態によれば、生産工程の各製造プロセスが有するプロセス装置から収集された計測値を要因候補とすることによって、不良が発生している上記プロセス装置および上記製造プロセスを特定することができる。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記要因分析ステップでは、上記要因候補には四則演算ができない上記計測値である質的な計測値が含まれており、不良発生の要因として質的な要因を抽出可能になっている。
この実施の形態によれば、上記質的な計測値を上記要因候補とすることによって、不良発生の要因として質的な要因を抽出することができる。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記要因分析ステップで行われる上記要因分析は、分散分析あるいは決定木による要因分析である。
この実施の形態によれば、上記要因候補として質的な上記計測値を含んでいる場合であっても、不良が発生している上記プロセス装置および上記製造プロセスを精度よく特定することができる。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記生産工程は、複数の上記製造プロセスを含むと共に、1つの上記検査工程に属する上記検査装置は上記複数の製造プロセスでの処理結果の検査を行うようになっており、
上記要因分析ステップでは、上記1つの検査工程に属する検査装置に関する上記検査予測値を分析対象とすると共に、上記複数の製造プロセスに属する上記プロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行う。
この実施の形態によれば、上記1つの検査工程に属する検査装置に関する上記検査予測値を分析対象とし、上記複数の製造プロセスに属するプロセス装置に関する計測値を要因候補として要因分析を行うことによって、不良の要因となっている複数の製造プロセス夫々のプロセス装置を特定することができる。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記要因分析ステップで行われる上記要因分析は、相関分析による要因分析である。
この実施の形態によれば、1つの上記製造プロセスを構成する1つの上記プロセス装置に関する上記計測値と、当該プロセス装置での処理結果の検査を行う上記検査装置に関する上記検査予測値との、相関を分析することができる。
以上より明らかなように、この発明の要因分析装置は、予測演算部によって、検査工程の検査装置に関する検査予測値を演算し、要因分析部によって、上記検査予測値を分析対象とすると共に、製造プロセスのプロセス装置に関する計測値を要因候補として、生産工程における不良発生の要因分析を行うので、上記検査工程が、抜き取り検査を行う検査工程のごとく、実計測される検査測定値の数が十分でない検査工程の場合であっても、要因分析の分析対象数を十分に確保することができる。
したがって、この発明によれば、上記検査工程での検査測定値が十分に取得できないような生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができる。
また、この発明の要因分析方法では、予測演算ステップによって、検査工程の検査装置に関する検査予測値を演算し、要因分析ステップによって、上記検査予測値を分析対象とすると共に、製造プロセスのプロセス装置に関する計測値を要因候補として、生産工程における不良発生の要因分析を行うので、上記検査工程が、抜き取り検査を行う検査工程のごとく、実計測される検査測定値の数が十分でない検査工程の場合であっても、要因分析の分析対象数を十分に確保することができる。
したがって、この発明によれば、上記検査工程での検査測定値が十分に取得できないような生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができる。
この発明の要因分析装置における概略構成を示す図である。
図1に示す要因分析装置による要因分析の対象となる生産工程を示す図である。
図1における各プロセス装置毎の検査予測値および検査測定値の分布範囲を示すボックスチャートである。
図1における各プロセス装置毎の検査予測値の数および検査測定値の数を示す図である。
図2とは異なる生産工程を示す図である。
検査項目の検査測定値およびその予測値と製造プロセスの計測項目の計測値との相関を示す図である。
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
・第1実施の形態
図1は、本実施の形態の要因分析装置における概略構成を示す。また、図2は、図1に示す要因分析装置によって不良の要因分析が行われる生産工程の概要を示す。この生産工程は電子デバイスの生産工程であり、製造される製品は出荷前に全数が確認される。
先ず、図2に従って、上記生産工程1について詳細に説明する。
図2において、生産工程1は、製造のための各種プロセス処理を行う複数の製造プロセスからなる製造過程11と、製造過程11の途中段階あるいは最終段階で製品の検査を行う複数の検査工程からなる検査過程12とから成っている。製造過程11を構成する複数の製造プロセスのうちの一つの製造プロセスAには、同じ処理を行う複数のプロセス装置A1〜Anが備えられている。製品はロット番号で管理され、複数のプロセス装置A1〜Anの何れか一つによって処理されて次の工程へ進む。他の製造プロセスX…についても同様である。
上記検査過程12を構成する複数の検査工程のうちの一つの検査工程Cでは、製造プロセスAでの処理結果について検査を行っており、複数の検査項目について検査が実施されて検査データが取得される。検査工程Cは、検査に時間が掛かるため、生産ラインの処理能力を所望の処理能力とするために抜き取り検査を行っている。その場合、各検査項目について許容範囲が設定されており、取得された検査データが許容範囲内にある製品は次の工程へ進み、許容範囲から逸脱した製品は不良品として処理される。他の検査工程Y…の場合も同様に、製造プロセスAとは異なる何れかの製造プロセスでの処理結果について検査を行う。
次に、上記生産工程1から取得されたデータに対して要因分析を行う要因分析装置2について説明する。図1において、要因分析装置2は、データ収集部3,予測演算部4,要因分析部5およびインターフェイス部6から概略構成されている。各部3〜6は、以下のように機能する。
上記データ収集部3は、上記生産工程1の各製造プロセスX,A,…を構成する各プロセス装置X1,X2,…,A1,A2,…および各検査工程C,Y,…を構成する各検査装置C1,C2,…,Y1,Y2,…からのデータを取得する。その場合の上記データは、各製造プロセスX,A,…の各プロセス装置X1,X2,…,A1,A2,…の場合には、各製造プロセスの処理時間、あるいは、各製造プロセスの処理時間にその前後の処理時間(予備加熱時間,ガス切換時間や冷却時間等)を含めた時間に関して、プロセス装置の運転条件と、各プロセス装置での各種計測値とである。尚、上記各種計測値としては、上記各プロセス装置内の温度および圧力、上記各プロセス装置への投入電力量等がある。また、各検査工程C,Y,…の各検査装置C1,C2,…,Y1,Y2,…の場合には、製品に対する検査測定値(検査データ)である。
以下の上記予測演算部4および上記要因分析部5の説明では、製造プロセスAと、その製造プロセスAでの処理結果について検査を行って品質を確認する検査工程Cとで、代表して説明する。他の製造プロセスとその製造プロセスでの品質を確認する検査工程の場合も同様である。
上記予測演算部4は、上記製造プロセスAの各プロセス装置A1,A2,…から取得した上記各種計測値に基づいて、製造プロセスAを通過した全製品に関して検査工程Cでの検査測定値の予測値を演算して出力する。この場合における予測演算には、PLS(Partial Least Squares:部分最小二乗法),多重線形回帰および主成分回帰等の多変量解析手法、ニューラルネットワークによる予測モデル、カルマンフィルタ等の統計モデルによる演算手法、製造プロセスの物理現象を定式化した物理モデルによる演算手法、あるいは、上記両演算手法を組み合わせた演算手法を用いることができる。
尚、上記予測演算によって算出された検査測定値の予測演算結果は、データ収集部3に保管するようにしても差し支えない。
上記要因分析部5は、上記予測演算部4から出力された検査工程Cでの検査測定値の予測値(検査予測値)を分析対象とし、上記検査予測値に基づいて不良の発生が検知された場合に、その不良の発生の要因分析を行う。尚、上記不良の発生の検知は、実計測の検査測定値に対する不良発生の検知と同様に、上記検査予測値が許容範囲から逸脱した場合を不良として検知する。
また、上記要因分析は、検査工程Cでの検査予測値に対する要因分析であるので、要因候補としては、製造プロセスAから取得可能なプロセス装置X1,X2,…のIDおよび製造条件設定値のような製造条件と、プロセス装置X1,X2,…に関する温度,圧力および投入電力量等のプロセス装置X1,X2,…に関する各種計測項目とが挙げられる。ここで、要因分析の具体的な手法については後述する。
上記インターフェイス部6は、本要因分析装置2の稼動状態,分析条件の設定状態,分析の実行および分析結果のような要因分析に関する情報を、ユーザに表示するための表示装置7と、分析条件の設定および分析結果の表示切換のようなユーザからの操作を受け付けるための入力装置8とを、含んでいる。
ここで、上記予測演算部4と要因分析部5とは1つのコンピュータで構成してもよく、さらにデータ収集部3を含んで構成してもよい。また、インターフェイス部6は、具体的には、表示装置7としてのディスプレイ装置と、入力装置8としてのキーボード等の文字入力装置やマウス等のポインティング装置と、で構成してもよい。
以下、本実施の形態の上記要因分析部5による要因分析の手法について、具体的な事例を用いて説明する。ここで、要因分析部5による要因分析の手法は「分散分析」である。また、製造プロセスAは、同じプロセス処理を行う16台のプロセス装置AO1〜A16で構成されているものとする。
上記製造プロセスAによる処理結果は検査工程Cで検査されるが、検査工程Cでの検査は抜き取り検査であり、抜取りの頻度は10製品に1つであるとする。また、この生産工程1において、検査工程Cにおける検査項目の1つである検査項目c1(以下、検査c1と言う)による検査測定値の予測値(以下、単に「検査c1の予測値」と言う)について不良が発生したため、不良発生の要因分析を行うものとする。つまり、検査c1の予測値には製造プロセスAのプロセス装置AO1〜A16が影響を及ぼすことが分かっているため、製造プロセスAに関する各種計測値(上記要因候補の計測値)について分析を行うのである。
先ず、上記製造プロセスAは複数のプロセス装置AO1〜A16で構成されているため、製造プロセスAを構成しているプロセス装置AO1〜A16の中で、不良発生の原因となっているプロセス装置がないか否かを分散分析によって分析する。この分析においては、上記分散分析で使用される評価値であるF値の大小を確認すると共に、製造プロセスAの各プロセス装置AO1〜A16に関する検査c1の予測結果をグラフ化し、不良が発生しているプロセス装置を特定する。
ここで、上記分散分析の評価値であるF値の計算式は式(1)に示す通りであり、F値が大きい程プロセス装置間差の影響が大きいとされる。
但し、S
T:全ロットの残差平方和
S
e:プロセス装置別の残差平方和
v
T:全ロットの自由度
v
e:プロセス装置別の自由度
以上の要因分析の手法によって、不良発生の原因となっているプロセス装置の抽出を行うと、例えば以下のような結果となる。
先ず、従来のように、上記検査工程Cにおいて実際に製品を抜き取って検査した値で上記要因分析を行った場合、製造プロセスAにおけるF値はF=26.54である。また、実計測された検査c1の検査測定値におけるプロセス装置別の分布は図3(b)に示すようになる。その場合の上記検査測定値における各プロセス装置別の数を図4(b)に示す。
図3に示すグラフは、各プロセス装置別の検査c1の検査予測値(図3(a))あるいは検査測定値(検査データ)(図3(b))の分布範囲をボックスチャートで示している。図3において、1つの検査測定値が1つのプロセス装置に対応しており、グラフ中の左からA01…A16の順に配列されている。図3(b)より、プロセス装置A14が不良の原因装置となっていることが分かる。しかしながら、図4(b)を参照するに、プロセス装置A14に関する検査測定値の数は4個と少なく、プロセス装置A14が不良の原因装置となっていることを十分確認できるとは言いがたい。
次に、本実施の形態によって、検査c1の予測値による上記要因分析を行った場合について説明する。尚、検査測定値の予測は全ロットに対して演算している。その結果、製造プロセスAにおけるF値はF=669.97となり、上述した抜取り検査の場合と比較して、プロセス装置間の差の影響がより大きいことが確認できる。また、プロセス装置別の検査c1での予測値の分布は図3(a)に示すようになる。また、その場合の各プロセス装置の検査c1の予測値数を図4(a)に示す。
先ず、図3(a)に示すように、上記抜取り検査の場合には、検査測定値数が1つであるため分布が確認できなかったプロセス装置A5,A7,A12,A15についても、要因分析が可能になる。また、図4(a)に示すように、プロセス装置A14の検査測定値数が36個となっており、これはプロセス装置A14での全生産数であることから、プロセス装置A14が不良発生の原因装置となっていることを十分確認することができる。さらに、プロセス装置A15については、上記抜取り検査の場合には不良が発生するプロセス装置であることが判別できなかったが、図3(a)から分かるように、検査c1の予測値による上記要因分析を行うことによって、プロセス装置A15についても不良発生の原因装置になっていることが確認できる。
以上のごとく、本実施の形態においては、上記データ収集部3によって、生産工程1の各製造プロセスX,A,…を構成する各プロセス装置X1,X2,…,A1,A2,…から、各プロセス装置の運転条件と、上記各プロセス装置内の温度および圧力、上記各プロセス装置への投入電力量等の各プロセス装置に関する各種計測値とを取得する。さらに、予測演算部4によって、データ収集部3で取得された製造プロセスAの各プロセス装置A1,A2,…の上記各種計測値に基づいて、製造プロセスAを通過した全製品に関して検査工程Cでの検査測定値の予測値(検査予測値)を演算する。そして、要因分析部5によって、検査工程Cでの上記検査予測値を分析対象とし、上記検査予測値が許容範囲から逸脱することにより不良の発生が検知された場合に、その不良の発生の分散分析を用いた要因分析を行うようにしている。
したがって、上記製造プロセスAでの処理結果について検査を行う検査工程であって、抜き取り検査を行う検査工程Cのごとく、実計測される検査測定値の数が十分でない場合であっても、製造プロセスAを通過した全製品に関する検査工程Cでの検査測定値の予測値(検査予測値)を要因分析の分析対象とすることによって、分析対象数を十分に確保することができるのである。
すなわち、本実施の形態によれば、上記生産工程1中の検査工程が抜き取り検査を行う検査工程の場合であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができるのである。
上記実施の形態においては、1つの製造プロセスに対する不良発生の要因分析を行っている。しかしながら、複数の製造プロセスについて、各製造プロセスのプロセス装置の組合せに対して、不良発生の要因分析を行っても良い。例えば、図5に示すように、製造プロセスAと製造プロセスBとが共に複数のプロセス装置を備えており、1つの製品に対して処理をおこなうプロセス装置が一意に決まっておらず、さらに、両製造プロセスA,Bが共に検査工程Cに影響を与える場合には、製造プロセスAと製造プロセスBとの各プロセス装置から収集するデータの一つとして上記各プロセス装置のIDを取得することによって、不良の原因装置となっているプロセス装置を特定することができる。このように、上記製造プロセスが1つの場合よりも上記要因候補のパターンが多い上記製造プロセスが複数の場合の方が、より本発明の効果が明確になるのである。
尚、本実施の形態における上記要因分析部5による要因分析においては分散分析を用いているが、「決定木」による要因分析を行っても同様の効果を得ることができる。
・第2実施の形態
本実施の形態における要因分析装置の概略構成は、上記第1実施の形態において図1に示す概略構成と同じである。また、本実施の形態の要因分析装置によって不良の要因分析が行われる生産工程の概要は、上記第1実施の形態において図2に示す生産工程と同じである。したがって、本実施の形態における要因分析装置の構成および生産工程の内容についての説明は省略し、以下の説明では上記第1実施の形態の場合と同じ番号を用いることにする。
本実施の形態は、上記第1実施の形態における要因分析部5による上記要因分析の手法が「分散分析」あるいは「決定木」であるのに対して、本実施の形態における要因分析部5による要因分析の手法が「相関分析」である点で異なる。
以下、本実施の形態の上記要因分析部5による要因分析(相関分析)について、製造プロセスAは同じプロセス処理を行う16台のプロセス装置AO1〜A16で構成されており、上記製造プロセスAによる処理結果を検査する検査工程Cでは10製品に1つの頻度で抜き取り検査を行い、検査工程Cにおける検査c1の予測値について不良が発生したため不良発生の要因分析を行う、と言う上記第1実施の形態の場合と同じ具体的な事例を用いて説明する。
本実施の形態の上記要因分析部5においては、上記製造プロセスAに関する検査c1の予測値に対応する上記要因候補を分析対象として検査c1との相関関係を分析するのであるが、上記「相関分析」は、分析対象のデータにプロセス装置間の差のような質的なデータが含まれていると分析精度が落ちる。そのため、分析対象は、製造プロセスAのプロセス装置の1つであるプロセス装置A14によって処理された製品の各種計測値(上記要因候補の計測値)としている。ここで、上記「質的なデータ」とは、四則演算ができないデータのことであり、プロセス装置の装置番号やプロセス処理のレシピ番号等の名義尺度、および、順序尺度の要因がこれに属する。
図6に示すグラフは、上記検査工程Cにおける検査c1の検査予測値(図6(a))あるいは検査測定値(検査データ)(図6(b))と、プロセス装置A14における上記計測値の項目(計測項目)の1つである計測項目a1(以下、項目a1と言う)の値との相関を示している。尚、図6においては、項目a1の値をx軸とし、検査c1の検査測定値あるいはその予測値をy軸としている。
図6によれば、従来のように、上記検査工程Cにおいて実際に製品を抜き取って検査した実計測された検査測定値で上記相関分析を行った場合と、本実施の形態によって、検査c1の予測値で上記相関分析を行った場合との両方において、検査c1と項目a1との相関係数が高いことが分かる。
但し、従来のように、上記検査工程Cにおいて実際に製品を抜き取って検査した検査測定値で上記要因分析を行った場合には、図6(b)に示すように、全体として右上がりの相関となっているが、得られた検査c1の検査測定値は僅かに4点であるため、要因分析の精度としては不十分である。これに対し、本実施の形態にように、検査c1の予測値で上記要因分析を行った場合には、図6(a)に示すように、相関値の配列が単純な右上がりではなく、項目a1の値が「29.5」以上になると検査c1の予測値が略一定となっていることが確認できる。したがって、これを基に項目a1を適切に制御することによって検査c1を改善することが可能になる。例えば、図6(a)の場合、項目a1の値を29.5以上に設定することによって、検査c1の値を0.5付近に保つことができるのである。尚、本実施の形態における上記検査c1の予測値の数は36個である。
尚、上記各実施の形態においては、上記生産工程1は電子デバイスの生産工程であるとして説明しているが、この発明はこれに限定されるものではなく、化学プラントのような連続的な製造プロセスが行われる生産工程についても適用できる。連続的な製造プロセスの場合は特に抜取りの頻度を高くすることができず、また、製品の品質や特性の予測演算については、製造プラントからのデータサンプリング間隔と同じ間隔で予測演算が可能であるため、上記要因分析の頻度を高くすることが可能になる。
本発明の要因分析装置は、抜取り検査のために製品の品質および特性の確認を高頻度でできない生産工程において、この生産工程の高品質で高歩留まりな稼動を実現するための要因分析に対して、検査計測値の予測演算の結果を要因分析に使用することによって、高頻度で十分な分析対象データ数による要因分析が可能となる。そのため、要因分析結果を高頻度,高精度で生産工程にフィードバックでき、生産工程の高品質,高歩留まりな稼動が可能となり、本発明は非常に有用である。
1…生産工程、
2…要因分析装置、
3…データ収集部、
4…予測演算部、
5…要因分析部、
6…インターフェイス部、
7…表示装置、
8…入力装置、
11…製造過程、
12…検査過程、
X,A,B…製造プロセス、
C,Y…検査工程、
X1〜Xn,A1〜An…プロセス装置、
C1,C2,〜,Y1,Y2,〜…検査装置。
この発明は、生産工程から得られる各種データに基づいて不良発生時の要因分析を行う要因分析装置および要因分析方法に関する。
各種製品の生産工程において、高品質な製品を高い歩留まりで生産するためには、生産工程での現象を分析し、その分析結果に基づいて上記生産工程をコンロトールすることが重要である。
上述したような手法の1つとして、生産工程での不良発生時における不良要因分析を行い、その分析結果を生産工程へフィードバックする手法がある。上記不良要因分析には、生産工程のうちの製造工程から取得できる製造プロセスデータと、上記生産工程のうちの検査工程から取得できる検査データとを、データベースに保存する。そして、それらのデータについて統計的手法を適用して、不良要因を抽出する方法がある。
このような不良要因抽出方法として、例えば、特開2003‐332209号公報(特許文献1)に開示された「製造方法ラインの診断方法」がある。上記特許文献1に開示された製造方法ラインの診断方法では、多品種の半導体デバイス製造ラインにおける各工程毎の検査データおよびその際の製造装置の製造条件の実績値を用いて、半導体デバイス製造の検査工程における規格外れ要因を、製造装置起因とプロセス起因とに分離する診断処理を行うようにしている。
このように、上記特許文献1では、半導体デバイスの生産工程において、製造条件の実績値および各工程での検査データをデータベースに収集し、それらのデータに基づいて製造工程の問題箇所の抽出を行っている。
また、生産工程の製造プロセスに対して、製造プロセスから得られたデータに基づいて統計的手法によって作成した計算式、製造プロセスにおける物理的および化学的現象に基づいて作成した計算式、または、それらの形算式を組み合わせた計算モデルを構築する。そして、上記計算式あるいは計算モデルを用いて、製造プロセスによる処理の結果得られる製品の品質および特性を予測する方法がある。
このような製品の品質および特性の予測方法として、特開2005‐136113号公報(特許文献2)に開示された「検査データ解析プログラム」がある。上記特許文献2に開示された検査データ解析プログラムでは、欠陥座標データと電気検査データとレイアウト図面を読み出す。そして、読み出した上記欠陥座標データと上記レイアウト図面とを照合し、欠陥によって生ずる可能性がある不良を予測し、この予測結果に基づいて上記欠陥座標データから必要なデータだけを絞り込む。次に、上記電気検査データの分類情報に基づいて上記電気検査データの各チップを2つのグループに分け、上記絞り込んだ欠陥座標データとグループ分けした上記電気検査データとを用いて、歩留まり影響度を計算して出力するようにしている。
このように、上記特許文献2では、製品の品質および特性の予測方法を生産工程の品質改善に適用しており、薄膜デバイスの生産において、不良発生状態として成膜欠陥の面内分布を予測し、その予測結果に基づいて、成膜欠陥がデバイスの良否に与える影響度を評価している。
一方、生産工程における各種検査においては、検査装置による測定方法が高度であるため測定に時間が掛かり、生産ラインの許容時間内に測定ができない検査や、製品の品質に対して検査装置によって不可逆な処理を行って測定を行う検査のような、全製品に対する検査実行あるいは高い頻度での検査実行が不可能な検査がある。このような検査は、製品の一部を抜取って検査を実行する「抜取り検査」を行う。このような抜取り検査は製品の品質を確認する上で重要であっても、高い頻度でデータを取得することはできない。
化学プロセスのような連続的な生産においては、連続生産であるため検査は抜取り検査が主となり、高い頻度で検査を行うことができない。また、連続生産ではない電子デバイスの製造工程においても抜取り検査は行われており、同様に、データ取得の頻度が低くなる。
さらに、集積回路,フラットパネルディスプレイ,太陽電池および化合物半導体素子等で代表される薄膜デバイスのような、高度なプロセスで多量な生産を高い歩留まりで行うことが必要とされる製品の生産工程においては、同じ機能を有する複数の製造装置を備えた生産工程がある。このような生産工程では、個々の製造装置に個体差が発生し、それが製造される製品の特性および歩留まりのばらつきに影響を与えることになる。特に、近年においては、プロセスの高度化と製品特性に対するマージンの縮小化とが図られており、製品特性に対する個々の製造装置の影響が大きくなってきている。さらには、複数の工程において複数の製造装置が存在する場合には、各製造装置を通過する組合せが多数の組合せがあり、その組合せによって製品の特性および歩留まりに差異が出ることになる。
したがって、上述した抜取り検査を含む生産工程に対して、実際の検査データが必要な上記特許文献1を適用した場合には、生産される製品数に対して分析可能な検査データ数が少なくなるため、上記不良要因分析の精度が低くなるという問題がある。または、分析するために必要なデータの取得期間が長くなり、迅速な要因分析ができなくなるという問題がある。
特に、上述のごとく同じ機能を有する複数の製造装置を備えた生産工程においても、多量の生産を行うために上記抜取り検査を行うようになってきている。このような生産工程においては、さらに、各製造装置に対する検査頻度が低下し、上記不良要因分析の精度低下の現象や分析のためのデータ収集期間が長くなる現象が顕著になり、高品質および高歩留まり生産が困難になる。
また、上述したような製品の品質および特性を予測する上記特許文献2においては、予測された品質および特性が製品の良否に与える影響度を分析している。しかしながら、上記特許文献2では、不良要因を特定する分析まではできておらず、製品の品質および歩留まりの改善に対しては不十分な分析であるという問題がある。
特開2003‐332209号公報
特開2005‐136113号公報
そこで、この発明の課題は、検査データ数が十分に取得できない生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができる要因分析装置および要因分析方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明の要因分析装置は、
プロセス装置によってプロセス処理が行われる製造プロセスと、検査装置によって抜き取り検査が行われる検査工程とを含む生産工程において、上記プロセス装置の運転条件および上記プロセス装置のプロセス条件を含む上記プロセス装置に関する計測値を収集するデータ収集部と、
上記データ収集部によって収集された上記計測値に基づいて、上記検査装置における検査項目の測定値の予測値である検査予測値を演算する予測演算部と、
上記予測演算部によって演算された上記検査予測値を分析対象とすると共に、上記生産工程から収集された上記プロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行う要因分析部と
を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、予測演算部によって、検査工程の検査装置における検査項目の測定値の予測値である検査予測値を演算し、要因分析部によって、上記検査予測値を分析対象とすると共に、生産工程から収集されたプロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行うようにしている。したがって、上記検査工程が、抜き取り検査を行う検査工程であって、実計測される検査測定値の数が十分でない検査工程の場合であっても、上記検査予測値を要因分析の分析対象とすることにより、分析対象数を十分に確保することができる。
すなわち、この発明によれば、検査工程での検査測定値が十分に取得できないような生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができるのである。
また、この発明の要因分析方法は、
この発明の要因分析装置を用いた要因分析方法であって、
上記生産工程から、上記プロセス装置の運転条件および上記プロセス装置のプロセス条件を含む上記プロセス装置に関する計測値を収集するデータ収集ステップと、
上記収集された上記計測値に基づいて、上記検査装置における検査項目の測定値の予測値である検査予測値を演算する予測演算ステップと、
上記演算された上記検査予測値を分析対象とすると共に、上記生産工程から収集された上記プロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行う要因分析ステップと
を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、予測演算ステップによって、検査工程の検査装置における検査項目の測定値の予測値である検査予測値を演算し、要因分析ステップによって、上記検査予測値を分析対象とすると共に、生産工程から収集されたプロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行うようにしている。したがって、上記検査工程が、抜き取り検査を行う検査工程であって、実計測される検査測定値の数が十分でない検査工程の場合であっても、上記検査予測値を要因分析の分析対象とすることによって、分析対象数を十分に確保することができる。
すなわち、この発明によれば、検査工程での検査測定値が十分に取得できないような生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができるのである。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記生産工程は、複数の上記製造プロセスを含み、上記各製造プロセスは同じ機能を有する複数の上記プロセス装置を有しており、上記製品が上記複数のプロセス装置のうちの何れか一つを通過することによって、上記製品が通過した上記プロセス装置を含む上記製造プロセスでの処理が完了するようになっている。
この実施の形態によれば、生産工程の各製造プロセスが有するプロセス装置から収集された計測値を要因候補とすることによって、不良が発生している上記プロセス装置および上記製造プロセスを特定することができる。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記要因分析ステップでは、上記要因候補には四則演算ができない上記計測値である質的な計測値が含まれており、不良発生の要因として質的な要因を抽出可能になっている。
この実施の形態によれば、上記質的な計測値を上記要因候補とすることによって、不良発生の要因として質的な要因を抽出することができる。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記要因分析ステップで行われる上記要因分析は、分散分析あるいは決定木による要因分析である。
この実施の形態によれば、上記要因候補として質的な上記計測値を含んでいる場合であっても、不良が発生している上記プロセス装置および上記製造プロセスを精度よく特定することができる。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記生産工程は、複数の上記製造プロセスを含むと共に、1つの上記検査工程に属する上記検査装置は上記複数の製造プロセスでの処理結果の検査を行うようになっており、
上記要因分析ステップでは、上記1つの検査工程に属する検査装置に関する上記検査予測値を分析対象とすると共に、上記複数の製造プロセスに属する上記プロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行う。
この実施の形態によれば、上記1つの検査工程に属する検査装置に関する上記検査予測値を分析対象とし、上記複数の製造プロセスに属するプロセス装置に関する計測値を要因候補として要因分析を行うことによって、不良の要因となっている複数の製造プロセス夫々のプロセス装置を特定することができる。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記要因分析ステップで行われる上記要因分析は、相関分析による要因分析である。
この実施の形態によれば、1つの上記製造プロセスを構成する1つの上記プロセス装置に関する上記計測値と、当該プロセス装置での処理結果の検査を行う上記検査装置に関する上記検査予測値との、相関を分析することができる。
以上より明らかなように、この発明の要因分析装置は、予測演算部によって、検査工程の検査装置に関する検査予測値を演算し、要因分析部によって、上記検査予測値を分析対象とすると共に、製造プロセスのプロセス装置に関する計測値を要因候補として、生産工程における不良発生の要因分析を行うので、上記検査工程が、抜き取り検査を行う検査工程であって、実計測される検査測定値の数が十分でない検査工程の場合であっても、要因分析の分析対象数を十分に確保することができる。
したがって、この発明によれば、上記検査工程での検査測定値が十分に取得できないような生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができる。
また、この発明の要因分析方法では、予測演算ステップによって、検査工程の検査装置に関する検査予測値を演算し、要因分析ステップによって、上記検査予測値を分析対象とすると共に、製造プロセスのプロセス装置に関する計測値を要因候補として、生産工程における不良発生の要因分析を行うので、上記検査工程が、抜き取り検査を行う検査工程であって、実計測される検査測定値の数が十分でない検査工程の場合であっても、要因分析の分析対象数を十分に確保することができる。
したがって、この発明によれば、上記検査工程での検査測定値が十分に取得できないような生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができる。
この発明の要因分析装置における概略構成を示す図である。
図1に示す要因分析装置による要因分析の対象となる生産工程を示す図である。
図1における各プロセス装置毎の検査予測値および検査測定値の分布範囲を示すボックスチャートである。
図1における各プロセス装置毎の検査予測値の数および検査測定値の数を示す図である。
図2とは異なる生産工程を示す図である。
検査項目の検査測定値およびその予測値と製造プロセスの計測項目の計測値との相関を示す図である。
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
・第1実施の形態
図1は、本実施の形態の要因分析装置における概略構成を示す。また、図2は、図1に示す要因分析装置によって不良の要因分析が行われる生産工程の概要を示す。この生産工程は電子デバイスの生産工程であり、製造される製品は出荷前に全数が確認される。
先ず、図2に従って、上記生産工程1について詳細に説明する。
図2において、生産工程1は、製造のための各種プロセス処理を行う複数の製造プロセスからなる製造過程11と、製造過程11の途中段階あるいは最終段階で製品の検査を行う複数の検査工程からなる検査過程12とから成っている。製造過程11を構成する複数の製造プロセスのうちの一つの製造プロセスAには、同じ処理を行う複数のプロセス装置A1〜Anが備えられている。製品はロット番号で管理され、複数のプロセス装置A1〜Anの何れか一つによって処理されて次の工程へ進む。他の製造プロセスX…についても同様である。
上記検査過程12を構成する複数の検査工程のうちの一つの検査工程Cでは、製造プロセスAでの処理結果について検査を行っており、複数の検査項目について検査が実施されて検査データが取得される。検査工程Cは、検査に時間が掛かるため、生産ラインの処理能力を所望の処理能力とするために抜き取り検査を行っている。その場合、各検査項目について許容範囲が設定されており、取得された検査データが許容範囲内にある製品は次の工程へ進み、許容範囲から逸脱した製品は不良品として処理される。他の検査工程Y…の場合も同様に、製造プロセスAとは異なる何れかの製造プロセスでの処理結果について検査を行う。
次に、上記生産工程1から取得されたデータに対して要因分析を行う要因分析装置2について説明する。図1において、要因分析装置2は、データ収集部3,予測演算部4,要因分析部5およびインターフェイス部6から概略構成されている。各部3〜6は、以下のように機能する。
上記データ収集部3は、上記生産工程1の各製造プロセスX,A,…を構成する各プロセス装置X1,X2,…,A1,A2,…および各検査工程C,Y,…を構成する各検査装置C1,C2,…,Y1,Y2,…からのデータを取得する。その場合の上記データは、各製造プロセスX,A,…の各プロセス装置X1,X2,…,A1,A2,…の場合には、各製造プロセスの処理時間、あるいは、各製造プロセスの処理時間にその前後の処理時間(予備加熱時間,ガス切換時間や冷却時間等)を含めた時間に関して、プロセス装置の運転条件と、各プロセス装置での各種計測値とである。尚、上記各種計測値としては、上記各プロセス装置内の温度および圧力、上記各プロセス装置への投入電力量等がある。また、各検査工程C,Y,…の各検査装置C1,C2,…,Y1,Y2,…の場合には、製品に対する検査測定値(検査データ)である。
以下の上記予測演算部4および上記要因分析部5の説明では、製造プロセスAと、その製造プロセスAでの処理結果について検査を行って品質を確認する検査工程Cとで、代表して説明する。他の製造プロセスとその製造プロセスでの品質を確認する検査工程の場合も同様である。
上記予測演算部4は、上記製造プロセスAの各プロセス装置A1,A2,…から取得した上記各種計測値に基づいて、製造プロセスAを通過した全製品に関して検査工程Cでの検査測定値の予測値を演算して出力する。この場合における予測演算には、PLS(Partial Least Squares:部分最小二乗法),多重線形回帰および主成分回帰等の多変量解析手法、ニューラルネットワークによる予測モデル、カルマンフィルタ等の統計モデルによる演算手法、製造プロセスの物理現象を定式化した物理モデルによる演算手法、あるいは、上記両演算手法を組み合わせた演算手法を用いることができる。
尚、上記予測演算によって算出された検査測定値の予測演算結果は、データ収集部3に保管するようにしても差し支えない。
上記要因分析部5は、上記予測演算部4から出力された検査工程Cでの検査測定値の予測値(検査予測値)を分析対象とし、上記検査予測値に基づいて不良の発生が検知された場合に、その不良の発生の要因分析を行う。尚、上記不良の発生の検知は、実計測の検査測定値に対する不良発生の検知と同様に、上記検査予測値が許容範囲から逸脱した場合を不良として検知する。
また、上記要因分析は、検査工程Cでの検査予測値に対する要因分析であるので、要因候補としては、製造プロセスAから取得可能なプロセス装置X1,X2,…のIDおよび製造条件設定値のような製造条件と、プロセス装置X1,X2,…に関する温度,圧力および投入電力量等のプロセス装置X1,X2,…に関する各種計測項目とが挙げられる。ここで、要因分析の具体的な手法については後述する。
上記インターフェイス部6は、本要因分析装置2の稼動状態,分析条件の設定状態,分析の実行および分析結果のような要因分析に関する情報を、ユーザに表示するための表示装置7と、分析条件の設定および分析結果の表示切換のようなユーザからの操作を受け付けるための入力装置8とを、含んでいる。
ここで、上記予測演算部4と要因分析部5とは1つのコンピュータで構成してもよく、さらにデータ収集部3を含んで構成してもよい。また、インターフェイス部6は、具体的には、表示装置7としてのディスプレイ装置と、入力装置8としてのキーボード等の文字入力装置やマウス等のポインティング装置と、で構成してもよい。
以下、本実施の形態の上記要因分析部5による要因分析の手法について、具体的な事例を用いて説明する。ここで、要因分析部5による要因分析の手法は「分散分析」である。また、製造プロセスAは、同じプロセス処理を行う16台のプロセス装置AO1〜A16で構成されているものとする。
上記製造プロセスAによる処理結果は検査工程Cで検査されるが、検査工程Cでの検査は抜き取り検査であり、抜取りの頻度は10製品に1つであるとする。また、この生産工程1において、検査工程Cにおける検査項目の1つである検査項目c1(以下、検査c1と言う)による検査測定値の予測値(以下、単に「検査c1の予測値」と言う)について不良が発生したため、不良発生の要因分析を行うものとする。つまり、検査c1の予測値には製造プロセスAのプロセス装置AO1〜A16が影響を及ぼすことが分かっているため、製造プロセスAに関する各種計測値(上記要因候補の計測値)について分析を行うのである。
先ず、上記製造プロセスAは複数のプロセス装置AO1〜A16で構成されているため、製造プロセスAを構成しているプロセス装置AO1〜A16の中で、不良発生の原因となっているプロセス装置がないか否かを分散分析によって分析する。この分析においては、上記分散分析で使用される評価値であるF値の大小を確認すると共に、製造プロセスAの各プロセス装置AO1〜A16に関する検査c1の予測結果をグラフ化し、不良が発生しているプロセス装置を特定する。
ここで、上記分散分析の評価値であるF値の計算式は式(1)に示す通りであり、F値が大きい程プロセス装置間差の影響が大きいとされる。
但し、S
T:全ロットの残差平方和
S
e:プロセス装置別の残差平方和
v
T:全ロットの自由度
v
e:プロセス装置別の自由度
以上の要因分析の手法によって、不良発生の原因となっているプロセス装置の抽出を行うと、例えば以下のような結果となる。
先ず、従来のように、上記検査工程Cにおいて実際に製品を抜き取って検査した値で上記要因分析を行った場合、製造プロセスAにおけるF値はF=26.54である。また、実計測された検査c1の検査測定値におけるプロセス装置別の分布は図3(b)に示すようになる。その場合の上記検査測定値における各プロセス装置別の数を図4(b)に示す。
図3に示すグラフは、各プロセス装置別の検査c1の検査予測値(図3(a))あるいは検査測定値(検査データ)(図3(b))の分布範囲をボックスチャートで示している。図3において、1つの検査測定値が1つのプロセス装置に対応しており、グラフ中の左からA01…A16の順に配列されている。図3(b)より、プロセス装置A14が不良の原因装置となっていることが分かる。しかしながら、図4(b)を参照するに、プロセス装置A14に関する検査測定値の数は4個と少なく、プロセス装置A14が不良の原因装置となっていることを十分確認できるとは言いがたい。
次に、本実施の形態によって、検査c1の予測値による上記要因分析を行った場合について説明する。尚、検査測定値の予測は全ロットに対して演算している。その結果、製造プロセスAにおけるF値はF=669.97となり、上述した抜取り検査の場合と比較して、プロセス装置間の差の影響がより大きいことが確認できる。また、プロセス装置別の検査c1での予測値の分布は図3(a)に示すようになる。また、その場合の各プロセス装置の検査c1の予測値数を図4(a)に示す。
先ず、図3(a)に示すように、上記抜取り検査の場合には、検査測定値数が1つであるため分布が確認できなかったプロセス装置A5,A7,A12,A15についても、要因分析が可能になる。また、図4(a)に示すように、プロセス装置A14の検査測定値数が36個となっており、これはプロセス装置A14での全生産数であることから、プロセス装置A14が不良発生の原因装置となっていることを十分確認することができる。さらに、プロセス装置A15については、上記抜取り検査の場合には不良が発生するプロセス装置であることが判別できなかったが、図3(a)から分かるように、検査c1の予測値による上記要因分析を行うことによって、プロセス装置A15についても不良発生の原因装置になっていることが確認できる。
以上のごとく、本実施の形態においては、上記データ収集部3によって、生産工程1の各製造プロセスX,A,…を構成する各プロセス装置X1,X2,…,A1,A2,…から、各プロセス装置の運転条件と、上記各プロセス装置内の温度および圧力、上記各プロセス装置への投入電力量等の各プロセス装置に関する各種計測値とを取得する。さらに、予測演算部4によって、データ収集部3で取得された製造プロセスAの各プロセス装置A1,A2,…の上記各種計測値に基づいて、製造プロセスAを通過した全製品に関して検査工程Cでの検査測定値の予測値(検査予測値)を演算する。そして、要因分析部5によって、検査工程Cでの上記検査予測値を分析対象とし、上記検査予測値が許容範囲から逸脱することにより不良の発生が検知された場合に、その不良の発生の分散分析を用いた要因分析を行うようにしている。
したがって、上記製造プロセスAでの処理結果について検査を行う検査工程であって、抜き取り検査を行う検査工程Cのごとく、実計測される検査測定値の数が十分でない場合であっても、製造プロセスAを通過した全製品に関する検査工程Cでの検査測定値の予測値(検査予測値)を要因分析の分析対象とすることによって、分析対象数を十分に確保することができるのである。
すなわち、本実施の形態によれば、上記生産工程1中の検査工程が抜き取り検査を行う検査工程の場合であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができるのである。
上記実施の形態においては、1つの製造プロセスに対する不良発生の要因分析を行っている。しかしながら、複数の製造プロセスについて、各製造プロセスのプロセス装置の組合せに対して、不良発生の要因分析を行っても良い。例えば、図5に示すように、製造プロセスAと製造プロセスBとが共に複数のプロセス装置を備えており、1つの製品に対して処理をおこなうプロセス装置が一意に決まっておらず、さらに、両製造プロセスA,Bが共に検査工程Cに影響を与える場合には、製造プロセスAと製造プロセスBとの各プロセス装置から収集するデータの一つとして上記各プロセス装置のIDを取得することによって、不良の原因装置となっているプロセス装置を特定することができる。このように、上記製造プロセスが1つの場合よりも上記要因候補のパターンが多い上記製造プロセスが複数の場合の方が、より本発明の効果が明確になるのである。
尚、本実施の形態における上記要因分析部5による要因分析においては分散分析を用いているが、「決定木」による要因分析を行っても同様の効果を得ることができる。
・第2実施の形態
本実施の形態における要因分析装置の概略構成は、上記第1実施の形態において図1に示す概略構成と同じである。また、本実施の形態の要因分析装置によって不良の要因分析が行われる生産工程の概要は、上記第1実施の形態において図2に示す生産工程と同じである。したがって、本実施の形態における要因分析装置の構成および生産工程の内容についての説明は省略し、以下の説明では上記第1実施の形態の場合と同じ番号を用いることにする。
本実施の形態は、上記第1実施の形態における要因分析部5による上記要因分析の手法が「分散分析」あるいは「決定木」であるのに対して、本実施の形態における要因分析部5による要因分析の手法が「相関分析」である点で異なる。
以下、本実施の形態の上記要因分析部5による要因分析(相関分析)について、製造プロセスAは同じプロセス処理を行う16台のプロセス装置AO1〜A16で構成されており、上記製造プロセスAによる処理結果を検査する検査工程Cでは10製品に1つの頻度で抜き取り検査を行い、検査工程Cにおける検査c1の予測値について不良が発生したため不良発生の要因分析を行う、と言う上記第1実施の形態の場合と同じ具体的な事例を用いて説明する。
本実施の形態の上記要因分析部5においては、上記製造プロセスAに関する検査c1の予測値に対応する上記要因候補を分析対象として検査c1との相関関係を分析するのであるが、上記「相関分析」は、分析対象のデータにプロセス装置間の差のような質的なデータが含まれていると分析精度が落ちる。そのため、分析対象は、製造プロセスAのプロセス装置の1つであるプロセス装置A14によって処理された製品の各種計測値(上記要因候補の計測値)としている。ここで、上記「質的なデータ」とは、四則演算ができないデータのことであり、プロセス装置の装置番号やプロセス処理のレシピ番号等の名義尺度、および、順序尺度の要因がこれに属する。
図6に示すグラフは、上記検査工程Cにおける検査c1の検査予測値(図6(a))あるいは検査測定値(検査データ)(図6(b))と、プロセス装置A14における上記計測値の項目(計測項目)の1つである計測項目a1(以下、項目a1と言う)の値との相関を示している。尚、図6においては、項目a1の値をx軸とし、検査c1の検査測定値あるいはその予測値をy軸としている。
図6によれば、従来のように、上記検査工程Cにおいて実際に製品を抜き取って検査した実計測された検査測定値で上記相関分析を行った場合と、本実施の形態によって、検査c1の予測値で上記相関分析を行った場合との両方において、検査c1と項目a1との相関係数が高いことが分かる。
但し、従来のように、上記検査工程Cにおいて実際に製品を抜き取って検査した検査測定値で上記要因分析を行った場合には、図6(b)に示すように、全体として右上がりの相関となっているが、得られた検査c1の検査測定値は僅かに4点であるため、要因分析の精度としては不十分である。これに対し、本実施の形態にように、検査c1の予測値で上記要因分析を行った場合には、図6(a)に示すように、相関値の配列が単純な右上がりではなく、項目a1の値が「29.5」以上になると検査c1の予測値が略一定となっていることが確認できる。したがって、これを基に項目a1を適切に制御することによって検査c1を改善することが可能になる。例えば、図6(a)の場合、項目a1の値を29.5以上に設定することによって、検査c1の値を0.5付近に保つことができるのである。尚、本実施の形態における上記検査c1の予測値の数は36個である。
尚、上記各実施の形態においては、上記生産工程1は電子デバイスの生産工程であるとして説明しているが、この発明はこれに限定されるものではなく、化学プラントのような連続的な製造プロセスが行われる生産工程についても適用できる。連続的な製造プロセスの場合は特に抜取りの頻度を高くすることができず、また、製品の品質や特性の予測演算については、製造プラントからのデータサンプリング間隔と同じ間隔で予測演算が可能であるため、上記要因分析の頻度を高くすることが可能になる。
本発明の要因分析装置は、抜取り検査のために製品の品質および特性の確認を高頻度でできない生産工程において、この生産工程の高品質で高歩留まりな稼動を実現するための要因分析に対して、検査計測値の予測演算の結果を要因分析に使用することによって、高頻度で十分な分析対象データ数による要因分析が可能となる。そのため、要因分析結果を高頻度,高精度で生産工程にフィードバックでき、生産工程の高品質,高歩留まりな稼動が可能となり、本発明は非常に有用である。
1…生産工程、
2…要因分析装置、
3…データ収集部、
4…予測演算部、
5…要因分析部、
6…インターフェイス部、
7…表示装置、
8…入力装置、
11…製造過程、
12…検査過程、
X,A,B…製造プロセス、
C,Y…検査工程、
X1〜Xn,A1〜An…プロセス装置、
C1,C2,〜,Y1,Y2,〜…検査装置。
この発明は、生産工程から得られる各種データに基づいて不良発生時の要因分析を行う要因分析装置および要因分析方法に関する。
各種製品の生産工程において、高品質な製品を高い歩留まりで生産するためには、生産工程での現象を分析し、その分析結果に基づいて上記生産工程をコンロトールすることが重要である。
上述したような手法の1つとして、生産工程での不良発生時における不良要因分析を行い、その分析結果を生産工程へフィードバックする手法がある。上記不良要因分析には、生産工程のうちの製造工程から取得できる製造プロセスデータと、上記生産工程のうちの検査工程から取得できる検査データとを、データベースに保存する。そして、それらのデータについて統計的手法を適用して、不良要因を抽出する方法がある。
このような不良要因抽出方法として、例えば、特開2003‐332209号公報(特許文献1)に開示された「製造方法ラインの診断方法」がある。上記特許文献1に開示された製造方法ラインの診断方法では、多品種の半導体デバイス製造ラインにおける各工程毎の検査データおよびその際の製造装置の製造条件の実績値を用いて、半導体デバイス製造の検査工程における規格外れ要因を、製造装置起因とプロセス起因とに分離する診断処理を行うようにしている。
このように、上記特許文献1では、半導体デバイスの生産工程において、製造条件の実績値および各工程での検査データをデータベースに収集し、それらのデータに基づいて製造工程の問題箇所の抽出を行っている。
また、生産工程の製造プロセスに対して、製造プロセスから得られたデータに基づいて統計的手法によって作成した計算式、製造プロセスにおける物理的および化学的現象に基づいて作成した計算式、または、それらの形算式を組み合わせた計算モデルを構築する。そして、上記計算式あるいは計算モデルを用いて、製造プロセスによる処理の結果得られる製品の品質および特性を予測する方法がある。
このような製品の品質および特性の予測方法として、特開2005‐136113号公報(特許文献2)に開示された「検査データ解析プログラム」がある。上記特許文献2に開示された検査データ解析プログラムでは、欠陥座標データと電気検査データとレイアウト図面を読み出す。そして、読み出した上記欠陥座標データと上記レイアウト図面とを照合し、欠陥によって生ずる可能性がある不良を予測し、この予測結果に基づいて上記欠陥座標データから必要なデータだけを絞り込む。次に、上記電気検査データの分類情報に基づいて上記電気検査データの各チップを2つのグループに分け、上記絞り込んだ欠陥座標データとグループ分けした上記電気検査データとを用いて、歩留まり影響度を計算して出力するようにしている。
このように、上記特許文献2では、製品の品質および特性の予測方法を生産工程の品質改善に適用しており、薄膜デバイスの生産において、不良発生状態として成膜欠陥の面内分布を予測し、その予測結果に基づいて、成膜欠陥がデバイスの良否に与える影響度を評価している。
一方、生産工程における各種検査においては、検査装置による測定方法が高度であるため測定に時間が掛かり、生産ラインの許容時間内に測定ができない検査や、製品の品質に対して検査装置によって不可逆な処理を行って測定を行う検査のような、全製品に対する検査実行あるいは高い頻度での検査実行が不可能な検査がある。このような検査は、製品の一部を抜取って検査を実行する「抜取り検査」を行う。このような抜取り検査は製品の品質を確認する上で重要であっても、高い頻度でデータを取得することはできない。
化学プロセスのような連続的な生産においては、連続生産であるため検査は抜取り検査が主となり、高い頻度で検査を行うことができない。また、連続生産ではない電子デバイスの製造工程においても抜取り検査は行われており、同様に、データ取得の頻度が低くなる。
さらに、集積回路,フラットパネルディスプレイ,太陽電池および化合物半導体素子等で代表される薄膜デバイスのような、高度なプロセスで多量な生産を高い歩留まりで行うことが必要とされる製品の生産工程においては、同じ機能を有する複数の製造装置を備えた生産工程がある。このような生産工程では、個々の製造装置に個体差が発生し、それが製造される製品の特性および歩留まりのばらつきに影響を与えることになる。特に、近年においては、プロセスの高度化と製品特性に対するマージンの縮小化とが図られており、製品特性に対する個々の製造装置の影響が大きくなってきている。さらには、複数の工程において複数の製造装置が存在する場合には、各製造装置を通過する組合せが多数の組合せがあり、その組合せによって製品の特性および歩留まりに差異が出ることになる。
したがって、上述した抜取り検査を含む生産工程に対して、実際の検査データが必要な上記特許文献1を適用した場合には、生産される製品数に対して分析可能な検査データ数が少なくなるため、上記不良要因分析の精度が低くなるという問題がある。または、分析するために必要なデータの取得期間が長くなり、迅速な要因分析ができなくなるという問題がある。
特に、上述のごとく同じ機能を有する複数の製造装置を備えた生産工程においても、多量の生産を行うために上記抜取り検査を行うようになってきている。このような生産工程においては、さらに、各製造装置に対する検査頻度が低下し、上記不良要因分析の精度低下の現象や分析のためのデータ収集期間が長くなる現象が顕著になり、高品質および高歩留まり生産が困難になる。
また、上述したような製品の品質および特性を予測する上記特許文献2においては、予測された品質および特性が製品の良否に与える影響度を分析している。しかしながら、上記特許文献2では、不良要因を特定する分析まではできておらず、製品の品質および歩留まりの改善に対しては不十分な分析であるという問題がある。
特開2003‐332209号公報
特開2005‐136113号公報
そこで、この発明の課題は、検査データ数が十分に取得できない生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができる要因分析装置および要因分析方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明の要因分析装置は、
プロセス装置によってプロセス処理が行われる製造プロセスと、検査装置によって抜き取り検査が行われる検査工程とを含む生産工程において、上記プロセス装置の運転条件および上記プロセス装置のプロセス条件を含む上記プロセス装置に関する計測値を収集するデータ収集部と、
上記データ収集部によって収集された上記計測値に基づいて、上記検査装置における検査項目の測定値の予測値である検査予測値を演算する予測演算部と、
上記予測演算部によって演算された上記検査予測値を分析対象とすると共に、上記生産工程から収集された上記プロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行う要因分析部と
を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、予測演算部によって、検査工程の検査装置における検査項目の測定値の予測値である検査予測値を演算し、要因分析部によって、上記検査予測値を分析対象とすると共に、生産工程から収集されたプロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行うようにしている。したがって、上記検査工程が、抜き取り検査を行う検査工程であって、実計測される検査測定値の数が十分でない検査工程の場合であっても、上記検査予測値を要因分析の分析対象とすることにより、分析対象数を十分に確保することができる。
すなわち、この発明によれば、検査工程での検査測定値が十分に取得できないような生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができるのである。
また、この発明の要因分析方法は、
この発明の要因分析装置を用いた要因分析方法であって、
上記生産工程から、上記プロセス装置の運転条件および上記プロセス装置のプロセス条件を含む上記プロセス装置に関する計測値を収集するデータ収集ステップと、
上記収集された上記計測値に基づいて、上記検査装置における検査項目の測定値の予測値である検査予測値を演算する予測演算ステップと、
上記演算された上記検査予測値を分析対象とすると共に、上記生産工程から収集された上記プロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行う要因分析ステップと
を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、予測演算ステップによって、検査工程の検査装置における検査項目の測定値の予測値である検査予測値を演算し、要因分析ステップによって、上記検査予測値を分析対象とすると共に、生産工程から収集されたプロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行うようにしている。したがって、上記検査工程が、抜き取り検査を行う検査工程であって、実計測される検査測定値の数が十分でない検査工程の場合であっても、上記検査予測値を要因分析の分析対象とすることによって、分析対象数を十分に確保することができる。
すなわち、この発明によれば、検査工程での検査測定値が十分に取得できないような生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができるのである。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記生産工程は、複数の上記製造プロセスを含み、上記各製造プロセスは同じ機能を有する複数の上記プロセス装置を有しており、製品が上記複数のプロセス装置のうちの何れか一つを通過することによって、上記製品が通過した上記プロセス装置を含む上記製造プロセスでの処理が完了するようになっている。
この実施の形態によれば、生産工程の各製造プロセスが有するプロセス装置から収集された計測値を要因候補とすることによって、不良が発生している上記プロセス装置および上記製造プロセスを特定することができる。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記要因分析ステップでは、上記要因候補には四則演算ができない上記計測値である質的な計測値が含まれており、不良発生の要因として質的な要因を抽出可能になっている。
この実施の形態によれば、上記質的な計測値を上記要因候補とすることによって、不良発生の要因として質的な要因を抽出することができる。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記要因分析ステップで行われる上記要因分析は、分散分析あるいは決定木による要因分析である。
この実施の形態によれば、上記要因候補として質的な上記計測値を含んでいる場合であっても、不良が発生している上記プロセス装置および上記製造プロセスを精度よく特定することができる。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記生産工程は、複数の上記製造プロセスを含むと共に、1つの上記検査工程に属する上記検査装置は上記複数の製造プロセスでの処理結果の検査を行うようになっており、
上記要因分析ステップでは、上記1つの検査工程に属する検査装置に関する上記検査予測値を分析対象とすると共に、上記複数の製造プロセスに属する上記プロセス装置に関する計測値を要因候補として、上記生産工程における不良発生の要因分析を行う。
この実施の形態によれば、上記1つの検査工程に属する検査装置に関する上記検査予測値を分析対象とし、上記複数の製造プロセスに属するプロセス装置に関する計測値を要因候補として要因分析を行うことによって、不良の要因となっている複数の製造プロセス夫々のプロセス装置を特定することができる。
また、1実施の形態の要因分析方法では、
上記要因分析ステップで行われる上記要因分析は、相関分析による要因分析である。
この実施の形態によれば、1つの上記製造プロセスを構成する1つの上記プロセス装置に関する上記計測値と、当該プロセス装置での処理結果の検査を行う上記検査装置に関する上記検査予測値との、相関を分析することができる。
以上より明らかなように、この発明の要因分析装置は、予測演算部によって、検査工程の検査装置に関する検査予測値を演算し、要因分析部によって、上記検査予測値を分析対象とすると共に、製造プロセスのプロセス装置に関する計測値を要因候補として、生産工程における不良発生の要因分析を行うので、上記検査工程が、抜き取り検査を行う検査工程であって、実計測される検査測定値の数が十分でない検査工程の場合であっても、要因分析の分析対象数を十分に確保することができる。
したがって、この発明によれば、上記検査工程での検査測定値が十分に取得できないような生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができる。
また、この発明の要因分析方法では、予測演算ステップによって、検査工程の検査装置に関する検査予測値を演算し、要因分析ステップによって、上記検査予測値を分析対象とすると共に、製造プロセスのプロセス装置に関する計測値を要因候補として、生産工程における不良発生の要因分析を行うので、上記検査工程が、抜き取り検査を行う検査工程であって、実計測される検査測定値の数が十分でない検査工程の場合であっても、要因分析の分析対象数を十分に確保することができる。
したがって、この発明によれば、上記検査工程での検査測定値が十分に取得できないような生産工程であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができる。
この発明の要因分析装置における概略構成を示す図である。
図1に示す要因分析装置による要因分析の対象となる生産工程を示す図である。
図1における各プロセス装置毎の検査予測値および検査測定値の分布範囲を示すボックスチャートである。
図1における各プロセス装置毎の検査予測値の数および検査測定値の数を示す図である。
図2とは異なる生産工程を示す図である。
検査項目の検査測定値およびその予測値と製造プロセスの計測項目の計測値との相関を示す図である。
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
・第1実施の形態
図1は、本実施の形態の要因分析装置における概略構成を示す。また、図2は、図1に示す要因分析装置によって不良の要因分析が行われる生産工程の概要を示す。この生産工程は電子デバイスの生産工程であり、製造される製品は出荷前に全数が確認される。
先ず、図2に従って、上記生産工程1について詳細に説明する。
図2において、生産工程1は、製造のための各種プロセス処理を行う複数の製造プロセスからなる製造過程11と、製造過程11の途中段階あるいは最終段階で製品の検査を行う複数の検査工程からなる検査過程12とから成っている。製造過程11を構成する複数の製造プロセスのうちの一つの製造プロセスAには、同じ処理を行う複数のプロセス装置A1〜Anが備えられている。製品はロット番号で管理され、複数のプロセス装置A1〜Anの何れか一つによって処理されて次の工程へ進む。他の製造プロセスX…についても同様である。
上記検査過程12を構成する複数の検査工程のうちの一つの検査工程Cでは、製造プロセスAでの処理結果について検査を行っており、複数の検査項目について検査が実施されて検査データが取得される。検査工程Cは、検査に時間が掛かるため、生産ラインの処理能力を所望の処理能力とするために抜き取り検査を行っている。その場合、各検査項目について許容範囲が設定されており、取得された検査データが許容範囲内にある製品は次の工程へ進み、許容範囲から逸脱した製品は不良品として処理される。他の検査工程Y…の場合も同様に、製造プロセスAとは異なる何れかの製造プロセスでの処理結果について検査を行う。
次に、上記生産工程1から取得されたデータに対して要因分析を行う要因分析装置2について説明する。図1において、要因分析装置2は、データ収集部3,予測演算部4,要因分析部5およびインターフェイス部6から概略構成されている。各部3〜6は、以下のように機能する。
上記データ収集部3は、上記生産工程1の各製造プロセスX,A,…を構成する各プロセス装置X1,X2,…,A1,A2,…および各検査工程C,Y,…を構成する各検査装置C1,C2,…,Y1,Y2,…からのデータを取得する。その場合の上記データは、各製造プロセスX,A,…の各プロセス装置X1,X2,…,A1,A2,…の場合には、各製造プロセスの処理時間、あるいは、各製造プロセスの処理時間にその前後の処理時間(予備加熱時間,ガス切換時間や冷却時間等)を含めた時間に関して、プロセス装置の運転条件と、各プロセス装置での各種計測値とである。尚、上記各種計測値としては、上記各プロセス装置内の温度および圧力、上記各プロセス装置への投入電力量等がある。また、各検査工程C,Y,…の各検査装置C1,C2,…,Y1,Y2,…の場合には、製品に対する検査測定値(検査データ)である。
以下の上記予測演算部4および上記要因分析部5の説明では、製造プロセスAと、その製造プロセスAでの処理結果について検査を行って品質を確認する検査工程Cとで、代表して説明する。他の製造プロセスとその製造プロセスでの品質を確認する検査工程の場合も同様である。
上記予測演算部4は、上記製造プロセスAの各プロセス装置A1,A2,…から取得した上記各種計測値に基づいて、製造プロセスAを通過した全製品に関して検査工程Cでの検査測定値の予測値を演算して出力する。この場合における予測演算には、PLS(Partial Least Squares:部分最小二乗法),多重線形回帰および主成分回帰等の多変量解析手法、ニューラルネットワークによる予測モデル、カルマンフィルタ等の統計モデルによる演算手法、製造プロセスの物理現象を定式化した物理モデルによる演算手法、あるいは、上記両演算手法を組み合わせた演算手法を用いることができる。
尚、上記予測演算によって算出された検査測定値の予測演算結果は、データ収集部3に保管するようにしても差し支えない。
上記要因分析部5は、上記予測演算部4から出力された検査工程Cでの検査測定値の予測値(検査予測値)を分析対象とし、上記検査予測値に基づいて不良の発生が検知された場合に、その不良の発生の要因分析を行う。尚、上記不良の発生の検知は、実計測の検査測定値に対する不良発生の検知と同様に、上記検査予測値が許容範囲から逸脱した場合を不良として検知する。
また、上記要因分析は、検査工程Cでの検査予測値に対する要因分析であるので、要因候補としては、製造プロセスAから取得可能なプロセス装置X1,X2,…のIDおよび製造条件設定値のような製造条件と、プロセス装置X1,X2,…に関する温度,圧力および投入電力量等のプロセス装置X1,X2,…に関する各種計測項目とが挙げられる。ここで、要因分析の具体的な手法については後述する。
上記インターフェイス部6は、本要因分析装置2の稼動状態,分析条件の設定状態,分析の実行および分析結果のような要因分析に関する情報を、ユーザに表示するための表示装置7と、分析条件の設定および分析結果の表示切換のようなユーザからの操作を受け付けるための入力装置8とを、含んでいる。
ここで、上記予測演算部4と要因分析部5とは1つのコンピュータで構成してもよく、さらにデータ収集部3を含んで構成してもよい。また、インターフェイス部6は、具体的には、表示装置7としてのディスプレイ装置と、入力装置8としてのキーボード等の文字入力装置やマウス等のポインティング装置と、で構成してもよい。
以下、本実施の形態の上記要因分析部5による要因分析の手法について、具体的な事例を用いて説明する。ここで、要因分析部5による要因分析の手法は「分散分析」である。また、製造プロセスAは、同じプロセス処理を行う16台のプロセス装置AO1〜A16で構成されているものとする。
上記製造プロセスAによる処理結果は検査工程Cで検査されるが、検査工程Cでの検査は抜き取り検査であり、抜取りの頻度は10製品に1つであるとする。また、この生産工程1において、検査工程Cにおける検査項目の1つである検査項目c1(以下、検査c1と言う)による検査測定値の予測値(以下、単に「検査c1の予測値」と言う)について不良が発生したため、不良発生の要因分析を行うものとする。つまり、検査c1の予測値には製造プロセスAのプロセス装置AO1〜A16が影響を及ぼすことが分かっているため、製造プロセスAに関する各種計測値(上記要因候補の計測値)について分析を行うのである。
先ず、上記製造プロセスAは複数のプロセス装置AO1〜A16で構成されているため、製造プロセスAを構成しているプロセス装置AO1〜A16の中で、不良発生の原因となっているプロセス装置がないか否かを分散分析によって分析する。この分析においては、上記分散分析で使用される評価値であるF値の大小を確認すると共に、製造プロセスAの各プロセス装置AO1〜A16に関する検査c1の予測結果をグラフ化し、不良が発生しているプロセス装置を特定する。
ここで、上記分散分析の評価値であるF値の計算式は式(1)に示す通りであり、F値が大きい程プロセス装置間差の影響が大きいとされる。
但し、S
T:全ロットの残差平方和
S
e:プロセス装置別の残差平方和
v
T:全ロットの自由度
v
e:プロセス装置別の自由度
以上の要因分析の手法によって、不良発生の原因となっているプロセス装置の抽出を行うと、例えば以下のような結果となる。
先ず、従来のように、上記検査工程Cにおいて実際に製品を抜き取って検査した値で上記要因分析を行った場合、製造プロセスAにおけるF値はF=26.54である。また、実計測された検査c1の検査測定値におけるプロセス装置別の分布は図3(b)に示すようになる。その場合の上記検査測定値における各プロセス装置別の数を図4(b)に示す。
図3に示すグラフは、各プロセス装置別の検査c1の検査予測値(図3(a))あるいは検査測定値(検査データ)(図3(b))の分布範囲をボックスチャートで示している。図3において、1つの検査測定値が1つのプロセス装置に対応しており、グラフ中の左からA01…A16の順に配列されている。図3(b)より、プロセス装置A14が不良の原因装置となっていることが分かる。しかしながら、図4(b)を参照するに、プロセス装置A14に関する検査測定値の数は4個と少なく、プロセス装置A14が不良の原因装置となっていることを十分確認できるとは言いがたい。
次に、本実施の形態によって、検査c1の予測値による上記要因分析を行った場合について説明する。尚、検査測定値の予測は全ロットに対して演算している。その結果、製造プロセスAにおけるF値はF=669.97となり、上述した抜取り検査の場合と比較して、プロセス装置間の差の影響がより大きいことが確認できる。また、プロセス装置別の検査c1での予測値の分布は図3(a)に示すようになる。また、その場合の各プロセス装置の検査c1の予測値数を図4(a)に示す。
先ず、図3(a)に示すように、上記抜取り検査の場合には、検査測定値数が1つであるため分布が確認できなかったプロセス装置A5,A7,A12,A15についても、要因分析が可能になる。また、図4(a)に示すように、プロセス装置A14の検査測定値数が36個となっており、これはプロセス装置A14での全生産数であることから、プロセス装置A14が不良発生の原因装置となっていることを十分確認することができる。さらに、プロセス装置A15については、上記抜取り検査の場合には不良が発生するプロセス装置であることが判別できなかったが、図3(a)から分かるように、検査c1の予測値による上記要因分析を行うことによって、プロセス装置A15についても不良発生の原因装置になっていることが確認できる。
以上のごとく、本実施の形態においては、上記データ収集部3によって、生産工程1の各製造プロセスX,A,…を構成する各プロセス装置X1,X2,…,A1,A2,…から、各プロセス装置の運転条件と、上記各プロセス装置内の温度および圧力、上記各プロセス装置への投入電力量等の各プロセス装置に関する各種計測値とを取得する。さらに、予測演算部4によって、データ収集部3で取得された製造プロセスAの各プロセス装置A1,A2,…の上記各種計測値に基づいて、製造プロセスAを通過した全製品に関して検査工程Cでの検査測定値の予測値(検査予測値)を演算する。そして、要因分析部5によって、検査工程Cでの上記検査予測値を分析対象とし、上記検査予測値が許容範囲から逸脱することにより不良の発生が検知された場合に、その不良の発生の分散分析を用いた要因分析を行うようにしている。
したがって、上記製造プロセスAでの処理結果について検査を行う検査工程であって、抜き取り検査を行う検査工程Cのごとく、実計測される検査測定値の数が十分でない場合であっても、製造プロセスAを通過した全製品に関する検査工程Cでの検査測定値の予測値(検査予測値)を要因分析の分析対象とすることによって、分析対象数を十分に確保することができるのである。
すなわち、本実施の形態によれば、上記生産工程1中の検査工程が抜き取り検査を行う検査工程の場合であっても、不良発生時に、より高精度な要因分析を行うことができるのである。
上記実施の形態においては、1つの製造プロセスに対する不良発生の要因分析を行っている。しかしながら、複数の製造プロセスについて、各製造プロセスのプロセス装置の組合せに対して、不良発生の要因分析を行っても良い。例えば、図5に示すように、製造プロセスAと製造プロセスBとが共に複数のプロセス装置を備えており、1つの製品に対して処理をおこなうプロセス装置が一意に決まっておらず、さらに、両製造プロセスA,Bが共に検査工程Cに影響を与える場合には、製造プロセスAと製造プロセスBとの各プロセス装置から収集するデータの一つとして上記各プロセス装置のIDを取得することによって、不良の原因装置となっているプロセス装置を特定することができる。このように、上記製造プロセスが1つの場合よりも上記要因候補のパターンが多い上記製造プロセスが複数の場合の方が、より本発明の効果が明確になるのである。
尚、本実施の形態における上記要因分析部5による要因分析においては分散分析を用いているが、「決定木」による要因分析を行っても同様の効果を得ることができる。
・第2実施の形態
本実施の形態における要因分析装置の概略構成は、上記第1実施の形態において図1に示す概略構成と同じである。また、本実施の形態の要因分析装置によって不良の要因分析が行われる生産工程の概要は、上記第1実施の形態において図2に示す生産工程と同じである。したがって、本実施の形態における要因分析装置の構成および生産工程の内容についての説明は省略し、以下の説明では上記第1実施の形態の場合と同じ番号を用いることにする。
本実施の形態は、上記第1実施の形態における要因分析部5による上記要因分析の手法が「分散分析」あるいは「決定木」であるのに対して、本実施の形態における要因分析部5による要因分析の手法が「相関分析」である点で異なる。
以下、本実施の形態の上記要因分析部5による要因分析(相関分析)について、製造プロセスAは同じプロセス処理を行う16台のプロセス装置AO1〜A16で構成されており、上記製造プロセスAによる処理結果を検査する検査工程Cでは10製品に1つの頻度で抜き取り検査を行い、検査工程Cにおける検査c1の予測値について不良が発生したため不良発生の要因分析を行う、と言う上記第1実施の形態の場合と同じ具体的な事例を用いて説明する。
本実施の形態の上記要因分析部5においては、上記製造プロセスAに関する検査c1の予測値に対応する上記要因候補を分析対象として検査c1との相関関係を分析するのであるが、上記「相関分析」は、分析対象のデータにプロセス装置間の差のような質的なデータが含まれていると分析精度が落ちる。そのため、分析対象は、製造プロセスAのプロセス装置の1つであるプロセス装置A14によって処理された製品の各種計測値(上記要因候補の計測値)としている。ここで、上記「質的なデータ」とは、四則演算ができないデータのことであり、プロセス装置の装置番号やプロセス処理のレシピ番号等の名義尺度、および、順序尺度の要因がこれに属する。
図6に示すグラフは、上記検査工程Cにおける検査c1の検査予測値(図6(a))あるいは検査測定値(検査データ)(図6(b))と、プロセス装置A14における上記計測値の項目(計測項目)の1つである計測項目a1(以下、項目a1と言う)の値との相関を示している。尚、図6においては、項目a1の値をx軸とし、検査c1の検査測定値あるいはその予測値をy軸としている。
図6によれば、従来のように、上記検査工程Cにおいて実際に製品を抜き取って検査した実計測された検査測定値で上記相関分析を行った場合と、本実施の形態によって、検査c1の予測値で上記相関分析を行った場合との両方において、検査c1と項目a1との相関係数が高いことが分かる。
但し、従来のように、上記検査工程Cにおいて実際に製品を抜き取って検査した検査測定値で上記要因分析を行った場合には、図6(b)に示すように、全体として右上がりの相関となっているが、得られた検査c1の検査測定値は僅かに4点であるため、要因分析の精度としては不十分である。これに対し、本実施の形態にように、検査c1の予測値で上記要因分析を行った場合には、図6(a)に示すように、相関値の配列が単純な右上がりではなく、項目a1の値が「29.5」以上になると検査c1の予測値が略一定となっていることが確認できる。したがって、これを基に項目a1を適切に制御することによって検査c1を改善することが可能になる。例えば、図6(a)の場合、項目a1の値を29.5以上に設定することによって、検査c1の値を0.5付近に保つことができるのである。尚、本実施の形態における上記検査c1の予測値の数は36個である。
尚、上記各実施の形態においては、上記生産工程1は電子デバイスの生産工程であるとして説明しているが、この発明はこれに限定されるものではなく、化学プラントのような連続的な製造プロセスが行われる生産工程についても適用できる。連続的な製造プロセスの場合は特に抜取りの頻度を高くすることができず、また、製品の品質や特性の予測演算については、製造プラントからのデータサンプリング間隔と同じ間隔で予測演算が可能であるため、上記要因分析の頻度を高くすることが可能になる。
本発明の要因分析装置は、抜取り検査のために製品の品質および特性の確認を高頻度でできない生産工程において、この生産工程の高品質で高歩留まりな稼動を実現するための要因分析に対して、検査計測値の予測演算の結果を要因分析に使用することによって、高頻度で十分な分析対象データ数による要因分析が可能となる。そのため、要因分析結果を高頻度,高精度で生産工程にフィードバックでき、生産工程の高品質,高歩留まりな稼動が可能となり、本発明は非常に有用である。
1…生産工程、
2…要因分析装置、
3…データ収集部、
4…予測演算部、
5…要因分析部、
6…インターフェイス部、
7…表示装置、
8…入力装置、
11…製造過程、
12…検査過程、
X,A,B…製造プロセス、
C,Y…検査工程、
X1〜Xn,A1〜An…プロセス装置、
C1,C2,〜,Y1,Y2,〜…検査装置。