以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例であるコンクリート画像領域分割方法の実施に用いられる画像領域分割システム1の外観を示した図である。図1に示すように、画像領域分割システム1は、主に、撮像装置2と、読取装置3と、画像処理装置4とを備えている。
撮像装置2は、後述する硬化コンクリートを被写体としたコンクリート画像を撮像するための機器であり、多値(多階調)カラー画像データ形式で画像を撮像可能なCCDやCMOS等の撮像素子を備えている。例えば、この撮像装置2には、スキャナ、デジタルカメラその他の被写体を多値カラー画像データで撮像可能な機器が用いられる。
また、撮像装置2は、通信ケーブル5を介して画像処理装置4と通信可能に接続されており、この通信ケーブル5を介して、当該撮像装置2によって撮像されたコンクリート画像が画像処理装置4へ出力されるようになっている。
読取装置3は、外部記録媒体3aに記録された各種情報を読み取るための機器であり、本実施例では、コンクリート画像が外部記録媒体3aに記録されている場合に、この外部記録媒体3aからコンクリート画像を画像処理装置4へと読み込むために用いられる。
このため、読取装置3は、通信ケーブル6を介して画像処理装置4と通信可能に接続されており、この通信ケーブル6を介して、当該読取装置3によって読み取られたコンクリート画像が画像処理装置4へ出力されるようになっている。
また、外部記録媒体3aには、フレキシブルディスク、メモリーカード、CDーROM、DVD−ROMなどがあることから、本実施例では、読取装置3として、フレキシブルディスクドライブ、メモリーカードドライブ、CDーROMドライブ、DVD−ROMドライブなどが用いられる。
画像処理装置4は、上記した撮像装置2又は読取装置3により取得されるコンクリート画像に基づき、その被写体となった硬化コンクリート面について、コンクリート配合成分である骨材(例えば、小石や砂などを含む)を表わす骨材領域と、セメント成分を含んだ残りの成分(「残余成分」という。)を表わす残余成分領域とに二分割したコンクリート領域分割画像を生成する装置である。
図2は、画像領域分割システム1として機能するハードウェアの電気的構成を示したブロック図である。図2に示すように、画像処理装置4として機能するハードウェアには、例えば、電子計算機の一種であるパーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)10が用いられる。
このPC10は、CPU11、ROM12、RAM13、バス14、入出力回路15、大容量の補助記憶装置であるハードディスク(以下「HD」という。)16と、ディスプレイ17と、各種の入力操作を行うための複数のキースイッチを有したキーボード18と、ディスプレイ17の画面上に表示されるマウスポインタを操作して各種の入力操作を行うポインティングデバイスの一種であるマウス19とを備えている。
CPU11は、PC10の各部に対する各種制御処理と各種データの演算処理とを行う中央処理装置であり、コンクリート画像領域分割方法に備わる各処理工程を実現するためのコンピュータプログラム(以下「画像領域分割プログラム」という。)16aや、その他の各種アプリケーションプログラム(ソフトウェア)を実行するものである。
ROM12は、BIOS(Basic-Input/Output-System)などの基本プログラムが記憶され、EEPROM(フラッシュメモリを含む)等のデータ書換可能な不揮発性メモリで構成されている。
RAM13は、PC10のメインメモリとして機能し、各種演算処理や制御処理におけるワークエリアとして用いられるものであって、DRAM等のデータ書換可能な揮発性メモリで構成されている。
バス14は、アドレスバス、データバス及びコントロールバスで構成されており、CPU11、ROM12及び、RAM13と相互に接続され、更に、入出力回路15とも接続されている。
入出力回路15は、HD16及びディスプレイ17とそれぞれ接続されており、更に、通信ケーブル5,6を介して撮像装置2及び読取装置3とも接続されている。このため、撮像装置2により撮像され又は外部記録媒体3aに記録されたコンクリート画像が、通信ケーブル5,6及び入出力回路15を介して、画像処理装置4へ入力させることができる。
HD16には、PC10用の基本OS(図示せず)に加えて、上記した画像領域分割プログラム16aその他のアプリケーションプログラムが記憶されており、更に、コンクリート画像などの各種画像データや画像処理装置4の各部の処理で用いられる各種データなども記憶管理されている。
ここで、画像領域分割プログラム16aは、PC10によって実行されるアプリケーションプログラムであり、この画像領域分割プログラム16aがPC10において実行されて両者が協動することによって、図3に示す複数の機能ユニット21〜25が実現されて、本実施例に係る画像領域分割システム1及びその画像処理装置4が構築される。
図3は、画像領域分割システム1に関する機能ブロック図である。図3に示すように、画像領域分割システム1は、上記した撮像装置2及び読取装置3が電気的に接続されたPC10と画像領域分割プログラム16aとの協働によって実現される複数の機能ユニット21〜25を備えている。
具体的には、画像領域分割システム1は、画像取得ユニット21と、濃淡2値化ユニット22と、輪郭2値化ユニット23と、モノクロ合成ユニット24と、合成領域修正ユニット25とを、主たる機能ユニットとして備えている。
画像取得ユニット21は、後述する画像取得工程(S1)を実行する機能ユニットであって、上記した撮像装置2又は読取装置3からコンクリート画像を取得するためのものである。また、濃淡2値化ユニット22は、後述する濃淡2値化工程(S2)を実行する機能ユニットであって、第1色分解ユニット22a、RGB濃淡化ユニット22b、濃淡合成ユニット22c及び、濃領域修正ユニット22dの4つの機能ユニットから成っている。
ここで、第1色分解ユニット22aは後述する第1色分解工程(S21)を、RGB濃淡化ユニット22bは後述するRGB濃淡化工程(S22)を、濃淡合成ユニット22cは後述する濃淡合成工程(S23)を、濃領域修正ユニット22dは後述する濃領域修正工程(S24)を、それぞれ実行する機能ユニットである。
輪郭2値化ユニット23は、後述する輪郭2値化工程(S3)を実行する機能ユニットであって、平滑化ユニット23a、第2色分解ユニット23b、グレースケール化ユニット23c、RGB輪郭化ユニット23d、輪郭合成ユニット23e及び、輪郭領域修正ユニット23fの6つの機能ユニットから成っている。
ここで、輪郭2値化ユニット23は後述する輪郭2値化工程(S3)を、平滑化ユニット23aは後述する平滑化工程(S31)を、第2色分解ユニット23bは後述する第2色分解工程(S32)を、グレースケール化ユニット23cは後述するグレースケール化工程(S33)を、RGB輪郭化ユニット23dは後述するRGB輪郭化工程(S34)を、輪郭合成ユニット23eは後述する輪郭合成工程(S35)を、輪郭領域修正ユニット23fは後述する輪郭領域修正工程(S36)を、それぞれ実行する機能ユニットである。
また、モノクロ合成ユニット24は、後述するモノクロ合成工程(S4)を実行する機能ユニットであり、合成領域修正ユニット25は、後述する合成領域修正工程(S5)を実行する機能ユニットである。
図4は、画像領域分割システム1で実行されるコンクリート画像領域分割方法を用いた処理(以下「画像領域分割処理」という。)を示したフローチャートである。なお、この画像領域分割処理に備わる各処理工程は、PC10を用いることで比較的短時間で実行可能なものである。
画像領域分割処理は、上記した複数の機能ユニット21〜25により各処理工程を実行することによって、最終的にコンクリート領域分割画像を生成するための処理である。この画像領域分割処理は、画像取得工程(S1)、濃淡2値化工程(S2)、輪郭2値化工程(S3)、モノクロ合成工程(S4)及び、合成領域修正工程(S5)を備えており、これらの5つの処理工程によって、コンクリート画像からコンクリート領域分解画像を生成するものである。
[ 画像取得工程 ]
まず、図4に示す画像領域分割処理における、第1の処理工程である画像取得工程(S1)について、説明する。
画像取得工程(S1)によれば、硬化コンクリート面を被写体としたコンクリート画像が、画像撮像装置2又は読取装置3から通信ケーブル5,6を介して多値カラー画像データ形式で取得される。このコンクリート画像には、光の3原色であるR成分、G成分及び、B成分の各原色成分が、例えば、256階調(8ビット)で表わされた24ビット(階調)のカラー画像が用いられる。
また、コンクリート画像、並びに、このコンクリート画像を基礎に生成される後述のR原色画像、G原色画像、B原色画像、R濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像、B濃淡基礎画像、濃淡モノクロ画像、平滑化コンクリート画像、R系グレー画像、G系グレー画像、B系グレー画像、R輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像、B輪郭基礎画像、輪郭モノクロ画像、合成モノクロ画像及び、コンクリート領域分割画像には、いずれも画素がN行×M列で配置された合計N×Mピクセルの2次元画像が用いられる。
さらに、これらの18種類の2次元画像は、その画像上における任意の画素の座標が(x,y)で表わされるものである(但し、x、yは正の整数である。以下、同様とする。)。例えば、これらの画像については、その左上端の画素の座標が(1,1)で表わされ、その右下端の座標が(N,M)で表わされる。
なお、本明細書において「モノクロ画像」とは「2値画像」と同義の画像をいうものとする。また、2値画像は、白黒の2色のみで表わされた2階調の画像であって、白と黒との中間色(グレー)を含まず、かつ、各画素が濃淡に応じて「1」又は「0」のどちからかの画素値を持つ画像である。もっとも、本実施例では、2値画像は、画素値「1」の画素を「白」で表わし、画素値「0」の画素を「黒」で表わしている。
<コンクリート画像>
図5は、コンクリート画像の一例を示した図面代用写真である。なお、図5では、カラー画像を図面として添付できないからことから、便宜上、実際のコンクリート画像の一例をグレースケール化したグレー画像を用いている。
図5に示したコンクリート画像は、被写体として硬化コンクリート面を撮像した画像であり、ここでいう硬化コンクリート面は、硬化したコンクリートの表面であり、例えば、コンクリートをコンクリートカッターなどで切断した切断面又は、コンクリートを研磨した研磨面であることが好ましい。
さすれば、硬化コンクリート面に表れるコンクリートの各種配合成分、特に、多数存在する骨材の像を顕現させることができ、コンクリート領域分割画像における骨材領域の抽出精度が向上されるからである。
このコンクリート画像には、多様な大きさを持つ骨材とセメント成分とがコンクリート配合成分として写し出されており、これらコンクリート配合成分の他にも、硬化コンクリート面に存在する気泡なども写し出されている。
また、図5はグレースケール画像のため判然としないが、実際のコンクリート画像には、黒、藍、青、黄、赤、茶、緑又は白等を基調とした多様な色合いや模様を呈する骨材が存在しており、これらの色合いは各種の鉱物成分によるものである。例えば、骨材には、その内側部分や輪郭部分に、セメント成分の色濃度と同程度又はそれより低い淡色系の鉱物成分などである淡色系含有成分が、局所的に内包するように混入して淡色化した部分も見受けられる。
このように、コンクリート画像において、多数の骨材は高低様々な色濃度を持つ色合いとして写し出されているが、セメント成分が存在する画像領域であるセメント成分領域については、全体としてその色濃度が比較的低い淡色を呈しており、色濃度について概ね一定的である。
そこで、画像領域分割処理では、このようなセメント成分の色濃度を基準として、コンクリート画像に存在する多様な色濃度を呈する骨材を、セメント成分よりも色濃度が高い濃色の骨材と、セメント成分と同程度の色濃度を呈する骨材と、セメント成分よりも色濃度が低い淡色の骨材とに大別することを基本概念の一つとしている。
なお、本明細書において「画像領域」とは画像内に存在する領域であって、1つの画素又は、2以上の画素の集合(以下「画素集合」ともいう)と同義である。
[ 濃淡2値化工程 ]
次に、図4に示す画像領域分割処理における、第2の処理工程である濃淡2値化工程(S2)について、説明する。
濃淡2値化工程(S2)によれば、コンクリート画像を色濃度閾値を用いて2値化することによって、濃淡モノクロ画像が生成される。濃淡モノクロ画像は、セメント成分よりも濃色を呈する濃色成分が存在する濃領域、及び、セメント成分を含めた淡色を呈する淡色成分が存在する淡領域という2種類の画像領域から構成される2値画像であり、例えば、濃領域を構成する各画素の画素値が「1」とされ、淡領域を構成する各画素の画素値が「0」とされている。
この濃淡モノクロ画像は、その濃領域がコンクリート画像中の濃色成分を表わし、その淡領域がコンクリート画像中の淡色成分を表わしたものである(図6から図8参照。)。ここで、濃色とは色濃度が高い色合い、即ち、明度(輝度)が低い色合いを、淡色とは色濃度が低い色合い、即ち、明度(輝度)が高い色合いを、それぞれ意味している。
濃色成分及び淡色成分は、コンクリートの配合成分を色濃度に基づいて2種類に分類したものであり、濃色成分には、セメント成分よりも濃色を呈する骨材などが含まれる一方、淡色成分には、セメント成分と同等の色濃度やそれより淡色を呈する骨材に加え、セメント成分自体も含まれる。
ここで、濃淡2値化工程(S2)は、第1色分解工程(S21)、RGB濃淡化工程(S22)、濃淡合成工程(S23)及び、濃領域修正工程(S24)を備えており、これら4つの処理工程が連係することによって、コンクリート画像から濃淡モノクロ画像を生成するものである。また、濃淡2値化工程(S2)においては、第1色分解工程(S21)、RGB濃淡化工程(S22)、濃淡合成工程(S23)及び、濃領域修正工程(S24)が、この順番で実行される。
<第1色分解工程>
第1色分解工程(S21)によれば、コンクリート画像が光の3原色であるR成分、G成分及び、B成分の各原色成分にそれぞれ色分解されることで、R原色画像、G原色画像及び、B原色画像が、それぞれ生成される。
ここで、R原色画像は、コンクリート画像に含まれる256階調の赤色成分の濃淡を、G原色画像は、コンクリート画像に含まれる256階調の緑色成分の濃淡を、B原色画像は、コンクリート画像に含まれる256階調の青色成分の濃淡を、それぞれ表わした画像である。
<RGB濃淡化工程>
RGB濃淡化工程(S22)によれば、R原色画像、G原色画像及び、B原色画像のそれぞれについて、マルチレベルの大津の方法を用いて求められる適正色濃度閾値に基づいて2値化が行われる。
このRGB濃淡化工程(S22)による2値化によって、R原色画像から骨材に相当する画像領域を抽出した2値画像(以下「R濃淡基礎画像」という。)、G原色画像から骨材に相当する画像領域を抽出した2値画像(以下「G濃淡基礎画像」という。)、B原色画像から骨材に相当する画像領域を抽出した2値画像(以下「B濃淡基礎画像」という。)が、それぞれ生成される。
このRGB濃淡化工程(S22)においては、まず、R原色画像、G原色画像及び、B原色画像のそれぞれについて、適正色濃度閾値が求められる。つまり、マルチレベルの大津の方法を用いて、R原色画像の適正色濃度閾値が、G原色画像の適正色濃度閾値が、B原色画像の適正色濃度閾値が、それぞれ求められる。そして、これらの各適正色濃度閾値を求めるにあたって、R原色画像、G原色画像及び、B原色画像について、それぞれ4種類の色濃度閾値が求められる。
なお、以下の説明において、R原色画像、G原色画像及び、B原色画像を総称して「原色画像」といもいう。
この4種類の色濃度閾値は、原色画像における各画素の色濃度に基づいて、その原色画像に表れるコンクリートの配合成分を、5つのクラス(相)に分割するための境界値(閾値)である。ここで、コンクリートの配合成分は、色濃度の値の大きい順に、濃色骨材相、遷移骨材相、遷移セメント相、セメント相及び、淡色骨材相という合計5つのクラス(相)に分割される。
そして、各原色成分の原色画像に関する適正色濃度閾値には、遷移骨材相と遷移セメント相との境界を示す色濃度閾値が選択される。結果、かかる適正色濃度閾値を用いて2値化された濃淡基礎画像においては、原色画像の濃色骨材相及び遷移骨材相が濃領域に含まれ、原色画像の遷移セメント相、セメント相及び、淡色骨材相が淡領域に含まれることとなる。
ここで、この原色画像の適正色濃度閾値の導出に用いられる各原色画像のヒストグラムを、図17に示す。図17(a)は、R原色画像における赤色成分のヒストグラムであり、図17(b)は、G原色画像における緑色成分のヒストグラムであり、図17(c)は、B原色画像における青色成分のヒストグラムである。
具体的には、R原色画像について、256階調の赤色成分の色濃度tR(但し、1≦tR≦256とする)を階級とし、色濃度tRの画素数を度数とするか又は、色濃度tRの画素数をR原色画像の全画素数N×M個で割った確率値を相対度数として、R原色画像についての度数分布表又はヒストグラム(図17(a)参照。)を生成して、R原色画像を構成する画素の色濃度tRに関する離散確率分布を求める。
そして、このR原色画像を構成する画素の色濃度tRに関する離散確率分布に対してマルチレベルの大津の方法を適用することで、R原色画像を、上記した濃色骨材相、遷移骨材相、遷移セメント相、セメント相及び、淡色骨材相の5クラスに分割するための色濃度閾値tR1,tR2,tR3,tR4が求められる。
さすれば、R原色画像における各相の色濃度範囲は、濃色骨材相が1≦tR≦tR1、遷移骨材相がtR1+1≦tR≦tR2、遷移セメント相がtR2+1≦tR≦tR3、セメント相がtR3+1≦tR≦tR4、淡色骨材相がtR4+1≦tR≦256、となる。
このようにしてR原色画像について、4種類の色濃度閾値tR1,tR2,tR3,tR4が求められれば、その中から遷移骨材相と遷移セメント相との境界を示す色濃度閾値tR2が適正色濃度閾値として選択され、この適正色濃度閾値tR2を用いてR原色画像がR濃淡基礎画像へと2値化される。
このR原色画像の2値化によれば、R原色画像の中で、色濃度tRの値が適正色濃度閾値tR2の値以下となる画素は、その画素値が「1」に変更される一方、色濃度tRの値が適正色濃度閾値tR2の値を越える画素は、その画素値が「0」に変更され、かかる変更によってR原色画像からR濃淡基礎画像が生成される。
また、G原色画像について、256階調の緑色成分の色濃度tG(但し、1≦tG≦256とする)を階級とし、色濃度tGの画素数を度数とするか又は、色濃度tGの画素数をG原色画像の全画素数N×M個で割った確率値を相対度数として、G原色画像についての度数分布表又はヒストグラム(図17(b)参照。)を生成して、G原色画像を構成する画素の色濃度tGに関する離散確率分布を求める。
そして、このG原色画像を構成する画素の色濃度tGに関する離散確率分布に対してマルチレベルの大津の方法を適用することで、G原色画像を、上記した濃色骨材相、遷移骨材相、遷移セメント相、セメント相及び、淡色骨材相の5クラスに分割するための色濃度閾値tG1,tG2,tG3,tG4が求められる。
さすれば、G原色画像における各相の色濃度範囲は、濃色骨材相が1≦tG≦tG1、遷移骨材相がtG1+1≦tG≦tG2、遷移セメント相がtG2+1≦tG≦tG3、セメント相がtG3+1≦tG≦tG4、淡色骨材相がtG4+1≦tG≦256、となる。
このようにしてG原色画像について、4種類の色濃度閾値tG1,tG2,tG3,tG4が求められれば、その中から遷移骨材相と遷移セメント相との境界を示す色濃度閾値tG2が適正色濃度閾値として選択され、この適正色濃度閾値tG2を用いてG原色画像がG濃淡基礎画像へと2値化される。
このG原色画像の2値化によれば、G原色画像の中で、色濃度tGの値が適正色濃度閾値tG2の値以下となる画素は、その画素値が「1」に変更される一方、色濃度tGの値が適正色濃度閾値tG2の値を越える画素は、その画素値が「0」に変更され、かかる変更によってG原色画像からG濃淡基礎画像が生成される。
さらに、B原色画像について、256階調の青色成分の色濃度tB(但し、1≦tB≦256とする)を階級とし、色濃度tBの画素数を度数とするか又は、色濃度tBの画素数をB原色画像の全画素数N×M個で割った確率値を相対度数として、B原色画像についての度数分布表又はヒストグラム(図17(c)参照。)を生成して、B原色画像を構成する画素の色濃度tBに関する離散確率分布を求める。
そして、このB原色画像を構成する画素の色濃度tBに関する離散確率分布に対してマルチレベルの大津の方法を適用することで、B原色画像を、上記した濃色骨材相、遷移骨材相、遷移セメント相、セメント相及び、淡色骨材相の5クラスに分割するための色濃度閾値tB1,tB2,tB3,tB4が求められる。
さすれば、B原色画像における各相の色濃度範囲は、濃色骨材相が1≦tB≦tB1、遷移骨材相がtB1+1≦tB≦tB2、遷移セメント相がtB2+1≦tB≦tB3、セメント相がtB3+1≦tB≦tB4、淡色骨材相がtB4+1≦tB≦256、となる。
このようにしてB原色画像について、4種類の色濃度閾値tB1,tB2,tB3,tB4が求められれば、その中から遷移骨材相と遷移セメント相との境界を示す色濃度閾値tB2が適正色濃度閾値として選択され、この適正色濃度閾値tB2を用いてB原色画像がB濃淡基礎画像へと2値化される。
このB原色画像の2値化によれば、B原色画像の中で、色濃度tBの値が適正色濃度閾値tB2の値以下となる画素は、その画素値が「1」に変更される一方、色濃度tBの値が適正色濃度閾値tB2の値を越える画素は、その画素値が「0」に変更され、かかる変更によってB原色画像からB濃淡基礎画像が生成される。
以上の結果、R濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像及び、B濃淡基礎画像は、画素値が「1」の画素で表わされる濃領域と、画素値が「0」の画素で表わされる淡領域とに、それぞれ分割されることとなり、結果、濃領域と淡領域とでは互いに異なる画素値を持つものとなる。
このように、R濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像及び、B濃淡基礎画像は、いずれも白色の画素で表示される濃領域と、黒色の画素で表示される淡領域を有した2値画像であり、その濃領域によって骨材の存在領域が表わされ、その淡領域によって残余成分の存在領域が表わされている。
なお、マルチレベルの大津の方法については、Huang Yourni and Wang Shuang, "Multilevel thresholding methods for image segmentation with Otsu based on QPSO," IEEE Trans. Image and Signal Processing, 2008. CISP apos;08. Congress on Volume 3, Issue, 27-30 May 2008 Page(s):701 - 705.における702頁左欄「2.Image Segmentation Based On the Otsu Method」が詳しいので、ここでは詳細な説明を省略する。
<濃淡合成工程>
濃淡合成工程(S23)によれば、R濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像及び、B濃淡基礎画像が論理和演算(OR演算)されることによって合成され、この合成により1個の2値画像である濃淡モノクロ画像が生成される。
ここで、濃淡合成工程(S23)により合成生成される濃淡モノクロ画像は、画素値が「1」の画素から形成される濃領域と、画素値が「0」の画素から形成される淡領域とからなる2値画像であり、R濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像及び、B濃淡基礎画像における全ての対応する画素同士について論理和演算した結果得られる画像である。
この濃淡合成工程(S23)では、R濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像及び、B濃淡基礎画像を論理和演算する場合、例えば、R濃淡基礎画像とG濃淡基礎画像とを論理和演算して得られる画像(以下「RG濃淡基礎画像」という。)を生成し、このRG濃淡基礎画像とB濃淡基礎画像とを論理和演算することで、1個の濃淡モノクロ画像が合成生成される。
ここで、R濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像、B濃淡基礎画像、RG濃淡基礎画像及び、濃淡モノクロ画像は、コンクリート画像と同様に、画素がN行×M列で配置された合計N×Mピクセルの2次元画像である。
次に、この濃淡合成工程(S23)による濃淡モノクロ画像の合成生成について説明する。まずは、R濃淡基礎画像とG濃淡基礎画像との対応する座標位置に存在する画素同士の画素値の論理和が演算され、その論理和値がRG濃淡基礎画像の対応する座標位置に存在する画素の画素値として設定される。
つまり、座標(x,y)についてR濃淡基礎画像の画素の画素値が「1」、G濃淡基礎画像の画素の画素値が「1」又は、R濃淡基礎画像及びG濃淡基礎画像の画素の画素値が両方とも「1」である場合に、RG濃淡基礎画像の座標(x,y)にある画素の画素値が「1」に設定される。一方、座標(x,y)についてR濃淡基礎画像及びG濃淡基礎画像の画素の画素値が両方とも「0」である場合には、RG濃淡基礎画像の座標(x,y)にある画素の画素値が「0」に設定される。
それから、RG濃淡基礎画像とB濃淡基礎画像との対応する座標位置に存在する画素同士の画素値の論理和が演算され、その論理和値が濃淡モノクロ画像の対応する座標位置に存在する画素の画素値として設定される。
つまり、座標(x,y)についてRG濃淡基礎画像の画素の画素値が「1」、B濃淡基礎画像の画素の画素値が「1」又は、RG濃淡基礎画像及びB濃淡基礎画像の画素の画素値が両方とも「1」である場合に、濃淡モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値が「1」に設定される。一方、座標(x,y)についてRG濃淡基礎画像及びB濃淡基礎画像の画素の画素値が両方とも「0」である場合には、濃淡モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値が「0」に設定される。
以上の結果、濃淡モノクロ画像は、画素値が「1」の画素で表わされる濃領域と、画素値が「0」の画素で表わされる淡領域とに、それぞれ分割されることとなり、結果、濃領域と淡領域とでは互いに異なる画素値を持つものとなる。つまり、濃淡モノクロ画像は、図6から図8に示すように、骨材の存在領域を示すために白色の画素で表示される濃領域と、残余成分の存在領域を示すために黒色の画素で表示される淡領域とを有した2値画像となる。
<原濃淡モノクロ画像>
図6は、濃淡合成工程(S23)による生成後であって濃領域修正工程(S24)の実行前における濃淡モノクロ画像(以下「原濃淡モノクロ画像」ともいう。)の構造説明図であり、図中では、濃領域に白色を付する一方で、図示上の便宜から淡領域に黒色ではなく灰色を付している。
図6に示すように、原濃淡モノクロ画像によれば、その濃領域はそれを構成する画素の画素値が「1」であるために白色で表示され、その淡領域はそれを構成する画素の画素値が「0」であるために黒色で表示されている。原濃淡モノクロ画像には、コンクリート画像に表われる同一骨材の存在領域の輪郭に比べて、濃領域により表わされる骨材の存在領域の輪郭が不正確なものが含まれている。
原濃淡モノクロ画像の濃領域の中には、骨材に淡色系の鉱物などの淡色系含有成分が局所的に混入するため、この淡色系含有成分が濃領域の内部に隔離淡領域(閉領域)となって、又は、濃領域の一部に欠損淡領域となって表われるものがある。隔離淡領域は、画素値「1」の画素集合である濃領域により周囲が完全包囲される画素値「0」の画素集合からなる閉領域内の淡領域であり、他の淡領域から完全に隔離された状態で存在している。
なお、欠損淡領域は、骨材の淡色系含有成分が残余成分の存在領域に紛れ込んでしまうことで、濃淡モノクロ画像において濃領域の一部がその濃領域の周囲に存在する淡領域の一部と繋がってしまい、濃領域の一部から欠如した画像領域である。
図7は、原濃淡モノクロ画像の一例を示した図面代用写真であり、図5に示したコンクリート画像を用いて生成されたものである。図7に示すように、原濃淡モノクロ画像は、濃領域が白色(画素値「1」)で表示され、淡領域が黒色(画素値「0」)で表示されている。この原濃淡モノクロ画像の濃領域の中には、上記した肉眼で目視する限りにおいて隔離淡領域を確認することはできないが、一部の濃領域に欠損淡領域が表われている。
これらのことから、原濃淡モノクロ画像は、コンクリート画像における骨材の存在領域が正確に抽出できず、その再現精度が低下してしまうことがある。しかし、原濃淡モノクロ画像に存在する隔離淡領域及び欠損淡領域については、本来であれば、残余成分の存在領域を表わす淡領域ではなく、骨材の存在領域を表わす濃領域に属すべきものである。
そこで、図4に示すように、画像領域分割処理は、濃淡合成工程(S23)の後に濃領域修正工程(S24)が設けられており、この濃領域修正工程(S24)によって、原濃淡モノクロ画像に含まれている隔離淡領域である画素集合を濃領域と同じ画素値に反転させ、かかる隔離淡領域を濃領域に置換することで、濃領域をより正確な骨材の存在領域へと修正し、かつ、淡領域をより正確な残余成分の存在領域へと修正するようにしている。
<濃領域修正工程>
つまり、濃領域修正工程(S24)は、原濃淡モノクロ画像の濃領域を修正するための処理工程である。この濃領域修正工程(S24)によれば、原濃淡モノクロ画像の中に隔離淡領域が存在する場合に(図6及び図7参照。)、このような全ての隔離淡領域における画素値「0」の画素集合が濃領域と同じ画素値「1」に変更(反転)される(図8参照。)。
具体的には、原濃淡モノクロ画像の中から隔離淡領域がラベリング処理により全て検出される。そして、この検出された全ての隔離淡領域における画素値「0」の画素に対して、穴埋め処理が実行されることによって、その隔離淡領域の全画素の画素値が濃領域の画素値と等しい「1」の値に変更される。
この結果、濃淡2値化工程(S2)からは、この濃領域修正工程(S24)の実行により原濃淡モノクロ画像を修正することにより生成された新たな濃淡モノクロ画像(以下「修正濃淡モノクロ画像」ともいう。図8参照。)が、次工程のモノクロ合成工程(S4)へと供給されることとなる。
<修正濃淡モノクロ画像>
図8は、修正濃淡モノクロ画像の構造説明図であり、図中では、濃領域に白色を付する一方で、図示上の便宜から淡領域に黒色ではなく灰色を付している。図8に示すように、修正濃淡モノクロ画像では、図6の原濃淡モノクロ画像において隔離淡領域であった画素集合が、濃領域と同一色(同一画素値)に変更されることで、濃領域の一部へと置換されている。
この結果、修正濃淡モノクロ画像は、原濃淡モノクロ画像に比べて、その濃領域及び淡領域によって骨材の存在領域及び残余成分の存在領域がより正確に表わされる。しかし、修正濃淡モノクロ画像には、濃領域の一部に欠損淡領域が残存したままであるので、このような欠損淡領域については、後述するモノクロ合成工程(S4)及び合成領域修正工程(S5)により更なる修正が加えられるのである。
なお、以下の説明において、原濃淡モノクロ画像及び修正濃淡モノクロ画像を総称して単に「濃淡モノクロ画像」ともいう。
[ 輪郭2値化工程 ]
次に、図4に示す画像領域分割処理における、第3の処理工程である輪郭2値化工程(S3)について、説明する。
輪郭2値化工程(S3)によれば、コンクリート画像を基礎とした情報から色濃度勾配に基づくエッジ抽出方法を用いて、骨材の輪郭を形成する画素である骨材輪郭画素を抽出することによって、輪郭モノクロ画像が生成される。
輪郭モノクロ画像は、骨材輪郭画素から形成される輪郭領域、及び、その輪郭領域を除いた背景領域という2種類の画像領域から構成される2値画像であり、輪郭領域を構成する各画素の画素値が「1」とされ、背景領域を構成する各画素の画素値が「0」とされている。
この輪郭モノクロ画像の輪郭領域は、エッジ抽出方法を用いて抽出された多数の骨材輪郭画素が線状に連なる又は点在するように集合することで形成される画像領域であって、かかる骨材輪郭画素の集合が全体として骨材の輪郭線を表わすものとなっている(図8(a)参照。)。
一方、輪郭モノクロ画像の背景領域は、輪郭領域を構成する骨材輪郭画素として抽出されずに残った画素が集合することで形成される画像領域であって、全体として骨材の輪郭線ではない部分を表わすものとなっている(図8(a)参照。)。
ここで、輪郭2値化工程(S3)は、平滑化工程(S31)、第2色分解工程(S32)、グレースケール化工程(S33)、RGB輪郭化工程(S34)、輪郭合成工程(S35)及び、輪郭領域修正工程(S36)を備えており、これら6つの処理工程が連係することによって、コンクリート画像から輪郭モノクロ画像を生成するものである。また、輪郭2値化工程(S3)においては、平滑化工程(S31)、第2色分解工程(S32)、グレースケール化工程(S33)、RGB輪郭化工程(S34)、輪郭合成工程(S35)及び、輪郭領域修正工程(S36)が、この順番で実行される。
<平滑化工程>
平滑化工程(S31)によれば、コンクリート画像が平滑化フィルタによって平滑化されて、コンクリート画像から不要な画像ノイズが除去されることで、平滑化コンクリート画像が生成される。ここで、平滑化フィルタにはKuwaharaフィルタが用いられる。
なお、本実施例では、かかる平滑化工程(S31)によりKuwaharaフィルタを用いてコンクリート画像を平滑化するため、RGB輪郭化工程(S34)におけるCannyのエッジ抽出アルゴリズムからは、後述するグレー画像についてガウシアンフィルタを用いてノイズ除去する処理が削除されることとなる。
なお、Kuwaharaフィルタに関しては、M. Kuwahara, K. Hachimura, S. Eiho, and M.Kinoshita. Digital Processing of Biomedical Images.,Plenum Press, pp. 187-203, New York, NY,1976.が詳しいので、ここでは詳細な説明を省略する。
<平滑化コンクリート画像>
図9(a)は、Kuwaharaフィルタを用いて平滑化した本実施例の平滑化コンクリート画像の参考図であり、図9(b)は、ガウシアンフィルタを用いて平滑化した比較例の平滑化コンクリート画像の参考図である。なお、図9では、カラー画像を図面として添付できないからことから、便宜上、平滑化コンクリート画像の一例をグレースケール化したグレー画像を用いている。
図9に示すように、本実施例の平滑化コンクリート画像(図9(a)参照。)と、比較例の平滑化コンクリート画像(図9(b)参照。)とを比較すると、本実施例の平滑化コンクリート画像は比較例の平滑化コンクリート画像に比べて、画像上のノイズも除去されており、かつ、骨材の輪郭もより鮮明に抽出されている。
ガウシアンフィルタを用いる場合は、ガウス分布関数の標準偏差を任意に設定する必要があるため、この設定に際して標準偏差が小さいとコンクリート画像からノイズを十分に除去できず、逆に、標準偏差が大きいと平滑化コンクリート画像における骨材の画像領域の色濃度が低下することから骨材の輪郭が不鮮明となってエッジ抽出精度が低下してしまう。
これに対し、Kuwaharaフィルタは、ガウシアンフィルタのように標準偏差を任意に設定する必要がなく、その設定値が大小することによるノイズ除去性能の低下や、エッジ抽出精度の低下を回避でき、ガウシアンフィルタを用いる場合に比べて、平滑化コンクリート画像における骨材の輪郭を鮮明度を維持しつつノイズを除去することができるのである。
<第2色分解工程>
第2色分解工程(S32)によれば、平滑化コンクリート画像が光の3原色であるR成分、G成分及び、B成分の各色成分にそれぞれ色分解されることで、平滑化R原色画像、平滑化G原色画像及び、平滑化B原色画像が、それぞれ生成される。
ここで、平滑化R原色画像は、平滑化コンクリート画像から抽出される256階調の赤色成分の濃淡を、平滑化G原色画像は、平滑化コンクリート画像から抽出される256階調の緑色成分の濃淡を、平滑化B原色画像は、平滑化コンクリート画像から抽出される256階調の青色成分の濃淡を、それぞれ表わした画像である。
<グレースケール化工程>
グレースケール化工程(S33)によれば、平滑化R原色画像、平滑化G原色画像及び、平滑化B原色画像がそれぞれグレースケール画像に変換される。なお、グレースケール画像は、白黒の2色のみならず中間色であるグレーを含んだ多階調(多値)の画像である。
このグレースケール化工程(S33)による変換によって、平滑化R原色画像のグレースケール画像(以下「R系グレー画像」という。)、平滑化G原色画像のグレースケール画像(以下「G系グレー画像」という。)及び、平滑化B原色画像のグレースケール画像(以下「B系グレー画像」という。)が、それぞれ生成される。
ここで、R系グレー画像は平滑化R原色画像における赤色成分の256階調の濃淡を、G系グレー画像は平滑化G原色画像における緑色成分の256階調の濃淡を、B系グレー画像は平滑化B原色画像における青色成分の256階調の濃淡を、それぞれ256階調の白黒濃淡に変換した画像である。
なお、以下の説明において、Rグレー画像、Gグレー画像及び、Bグレー画像を総称して、単に「グレー画像」ともいう。
<RGB輪郭化工程>
RGB輪郭化工程(S34)によれば、R系グレー画像、G系グレー画像及び、B系グレー画像のぞれぞれについて、色濃度勾配(画素値勾配)に基づくエッジ抽出法の一種であるCannyのエッジ抽出アルゴリズムを用いて、骨材輪郭画素の抽出が行われる。
但し、ここで言うところの、Cannyのエッジ抽出アルゴリズムとは、かかるエッジ抽出アルゴリズムにおいて一般的なガウシアンフィルタによる画像ノイズ除去処理が存在しないものであり、主として、エッジ強さ及びエッジ方向の計算、抽出された輪郭線の細線化(non-maximum suppress)、及び、上限値及び下限値を設定することによる輪郭線のスムーズ化から成っている。
このCannyのエッジ抽出アルゴリズムを用いることによって、R系グレー画像から全ての骨材輪郭画素が、G系グレー画像から全ての骨材輪郭画素が、B系グレー画像から全ての骨材輪郭画素が、それぞれ抽出される。ここで、骨材輪郭画素とは、各グレー画像に表示される骨材の輪郭を形成している画素である。
具体的には、まず、RGB輪郭化工程(S34)によって、R系グレー画像において骨材輪郭画素として抽出された全ての画素の画素値が「1」に設定され、かつ、R系グレー画像における骨材輪郭画素を除いた残りの画素の画素値が「0」に設定されることで、R系グレー画像から骨材の輪郭を抽出した2値画像(以下「R輪郭基礎画像」という。)が生成される。
また、RGB輪郭化工程(S34)によって、G系グレー画像において骨材輪郭画素として抽出された全ての画素の画素値が「1」に設定され、かつ、G系グレー画像における骨材輪郭画素を除いた残りの画素の画素値が「0」に設定されることで、G系グレー画像から骨材の輪郭を抽出した2値画像(以下「G輪郭基礎画像」という。)が生成される。
さらに、RGB輪郭化工程(S34)によって、B系グレー画像において骨材輪郭画素として抽出された全ての画素の画素値が「1」に設定され、かつ、B系グレー画像における骨材輪郭画素を除いた残りの画素の画素値が「0」に設定されることで、B系グレー画像から骨材の輪郭を抽出した2値画像(以下「B輪郭基礎画像」という。)が生成される。
すると、R輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像及び、B輪郭基礎画像は、画素値が「1」の画素で表わされる輪郭領域と、画素値が「0」の画素で表わされる背景領域とに、それぞれ分割されることとなり、結果、輪郭領域と背景領域とでは互いに異なる画素値を持つものとなる。
このように、R輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像及び、B輪郭基礎画像は、いずれも白色の画素で表示される輪郭領域と、黒色の画素で表示される背景領域を有した2値画像であり、その輪郭領域によって骨材の輪郭が表わされ、その背景領域によって骨材の輪郭を除いた部分が表わされている。
なお、Cannyのエッジ抽出アルゴリズムに関しては、J.F.Canny "Finding edge and lines in images". Master's thesis, AITR-720. MIT, Cambridge, USA, 1983や、J.F.Canny "A computational approach to edge detection". IEEE Trans. on Pattern Analysis and Machine Intelligence, 8(6):679-698, November 1986が詳しいので、ここでは詳細な説明を省略する。
<輪郭合成工程>
輪郭合成工程(S35)によれば、R輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像及び、B輪郭基礎画像が論理和演算(OR演算)されることによって合成され、この合成により1個の2値画像である輪郭モノクロ画像が生成される。
ここで、輪郭合成工程(S35)により合成生成される輪郭モノクロ画像は、画素値が「1」の画素から形成される輪郭領域と、画素値が「0」の画素から形成される背景領域とからなる2値画像であり、R輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像及び、B輪郭基礎画像における全ての対応する画素同士について論理和演算した結果得られる画像である。
この輪郭合成工程(S35)では、R輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像及び、B輪郭基礎画像を論理和演算する場合、例えば、R輪郭基礎画像とG輪郭基礎画像とを論理和演算して得られる画像(以下「RG輪郭基礎画像」という。)を生成し、このRG輪郭基礎画像とB輪郭基礎画像とを論理和演算することで、1個の輪郭モノクロ画像が合成生成される。
ここで、R輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像、B輪郭基礎画像、RG輪郭基礎画像及び、輪郭モノクロ画像は、コンクリート画像と同様に、画素がN行×M列で配置された合計N×Mピクセルの2次元画像である。
次に、この輪郭合成工程(S35)による輪郭モノクロ画像の合成生成について説明する。まずは、R輪郭基礎画像とG輪郭基礎画像との対応する座標位置に存在する画素同士の画素値の論理和が演算され、その論理和値がRG輪郭基礎画像の対応する座標位置に存在する画素の画素値として設定される。
つまり、座標(x,y)についてR輪郭基礎画像の画素の画素値が「1」、G輪郭基礎画像の画素の画素値が「1」又は、R輪郭基礎画像及びG輪郭基礎画像の画素の画素値が両方とも「1」である場合に、RG輪郭基礎画像の座標(x,y)にある画素の画素値が「1」に設定される。一方、座標(x,y)についてR輪郭基礎画像及びG輪郭基礎画像の画素の画素値が両方とも「0」である場合には、RG輪郭基礎画像の座標(x,y)にある画素の画素値が「0」に設定される。
それから、RG輪郭基礎画像とB輪郭基礎画像との対応する座標位置に存在する画素同士の画素値の論理和が演算され、その論理和値が輪郭モノクロ画像の対応する座標位置に存在する画素の画素値として設定される。
つまり、座標(x,y)についてRG輪郭基礎画像の画素の画素値が「1」、B輪郭基礎画像の画素の画素値が「1」又は、RG輪郭基礎画像及びB輪郭基礎画像の画素の画素値が両方とも「1」である場合に、輪郭モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値が「1」に設定される。一方、座標(x,y)についてRG輪郭基礎画像及びB輪郭基礎画像の画素の画素値が両方とも「0」である場合には、輪郭モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値が「0」に設定される。
以上の結果、輪郭モノクロ画像は、画素値が「1」の画素で表わされる輪郭領域と、画素値が「0」の画素で表わされる背景領域とに、それぞれ分割されることとなり、結果、輪郭領域と背景領域とでは互いに異なる画素値を持つものとなる。つまり、輪郭モノクロ画像は、図10から図13に示すように、骨材の存在領域の輪郭を示すために白色の画素で表示される輪郭領域と、この輪郭領域を除く領域を示すために黒色の画素で表示される背景領域とを有した2値画像となる。
<原輪郭モノクロ画像>
図10は、輪郭合成工程(S35)による生成後であって輪郭領域修正工程(S36)の実行前における輪郭モノクロ画像(以下「原輪郭モノクロ画像」ともいう。)の構造説明図であり、図中では、輪郭領域に白色を付する一方で、図示上の便宜から背景領域に黒色ではなく灰色を付している。
図10に示すように、原輪郭モノクロ画像によれば、その輪郭領域はそれを構成する画素の画素値が「1」であるために白色で表示され、その背景領域はそれを構成する画素の画素値が「0」であるために黒色で表示されている。
原輪郭モノクロ画像の中には、その輪郭領域が、骨材輪郭画素の集合からなる輪郭線により背景領域の周囲を完全に包囲する連続輪郭領域と、骨材輪郭画素の集合からなる輪郭線の一部が途切れて背景領域の周囲を不完全に包囲する不連続輪郭領域とからなっているものがある。
連続輪郭領域は、画素値「1」の画素集合からなる輪郭線であって、その輪郭線の内側に画素値「0」の画素集合(背景領域)を完全包囲している輪郭領域である。また、不連続輪郭領域は、画素値「1」の画素集合からなる輪郭線であって、この輪郭線の内外にある画素値「0」の画素集合(背景領域)が互いに繋がっている輪郭領域である。
連続輪郭領域の中には、背景領域の一種であって、この連続輪郭領域の画素値「1」の画素集合により周囲が完全包囲されている画素値「0」の画素集合である隔離背景領域(閉領域)が存在しており、この隔離背景領域は、他の背景領域から完全に隔離された状態で存在している。
不連続輪郭領域の中には、背景領域の一種であって、この不連続輪郭領域の画素値「1」の画素集合により周囲が部分的に包囲されているが、この不連続隔離領域の周囲に存在する背景領域と繋がった画素値「0」の画素集合である内在背景領域(閉領域)が存在しており、この内在背景領域は、他の背景領域と連続した状態で存在している。
図11は、原輪郭モノクロ画像の一例を示した図面代用写真であり、図5に示したコンクリート画像を用いて生成されたものである。図11に示すように、原輪郭モノクロ画像は、輪郭領域(連続輪郭領域及び不連続輪郭領域)が白色(画素値「1」)で表示され、背景領域(隔離背景領域及び内在背景領域を含む。)が黒色(画素値「0」)で表示されている。
この原輪郭モノクロ画像によれば、輪郭領域によって骨材の存在領域の輪郭が高い精度で再現されており、いずれの輪郭領域も、その内側に隔離背景領域又は内在背景領域の背景領域が存在しており、かつ、骨材輪郭画素の画素集合からなる線状の輪郭線で形成されている。ただし、原輪郭モノクロ画像に存在する隔離背景領域及び内在背景領域は、純粋な意味において残余成分の存在領域を表わす背景領域ではなく、本来は骨材の存在領域に属すべきものである。
そこで、図4に示すように、画像領域分割処理は、輪郭合成工程(S35)の後に輪郭領域修正工程(S36)が設けられており、この輪郭領域修正工程(S36)によって、原輪郭モノクロ画像に含まれる隔離背景領域であるところの画素集合を輪郭領域と同じ画素値に反転させ、かかる隔離背景領域を包囲する連続輪郭領域とともに骨材抽出領域に置換して、骨材の存在領域を明確化するようにしている。
<輪郭領域修正工程>
つまり、輪郭領域修正工程(S36)は、原輪郭モノクロ画像の中から骨材の存在領域であるところの骨材抽出領域を抽出するための処理工程である。この輪郭領域修正工程(S36)によれば、原輪郭モノクロ画像の中に隔離背景領域が存在する場合に(図10及び図11参照。)、このような全ての隔離背景領域における画素値「0」の画素集合が輪郭領域と同じ画素値である「1」に変更(反転)される(図12及び図13参照。)。
具体的には、原輪郭モノクロ画像の中から隔離背景領域がラベリング処理により全て検出される。そして、この検出された全ての隔離背景領域における画素値「0」の画素に対して、穴埋め処理が実行されることによって、その隔離背景領域の全画素の画素値が輪郭領域の骨材輪郭画素の画素値と等しい「1」の値に変更される。
この結果、輪郭2値化工程(S3)からは、この輪郭領域修正工程(S36)の実行により原輪郭モノクロ画像を修正することにより生成された新たな輪郭モノクロ画像(以下「修正輪郭モノクロ画像」ともいう。図12及び図13参照。)、即ち、骨材抽出領域を有する修正輪郭モノクロ画像が、次工程のモノクロ合成工程(S4)へ供給されることとなる。
なお、修正輪郭モノクロ画像において「輪郭領域」とは、不連続輪郭領域及び骨材抽出領域の双方を含めた画像領域をいうものとする。
<修正輪郭モノクロ画像>
図12は、修正輪郭モノクロ画像の構造説明図であり、図中では、輪郭領域に白色を付する一方で、図示上の便宜から背景領域に黒色ではなく灰色を付している。図12に示すように、修正輪郭モノクロ画像は、白色の画素で表示される骨材抽出領域及び不連続輪郭領域と、黒色の画素で表示される背景領域とを有した2値画像となっている。
また、この修正輪郭モノクロ画像は、図10の原輪郭モノクロ画像から生成されたものである。この修正輪郭モノクロ画像では、図10の原輪郭モノクロ画像において連続輪郭領域内に存在する隔離背景領域であった画素集合が、連続輪郭領域及び不連続輪郭領域と同一色(同一画素値)に変更されることで、隔離背景領域と連続輪郭領域とが一体化した骨材抽出領域へと置換されている。
図13は、修正輪郭モノクロ画像の一例を示した図面代用写真であり、図5に示したコンクリート画像を用いて生成された原輪郭モノクロ画像(図11参照。)を用いて生成されたものである。図13に示すように、修正輪郭モノクロ画像では、図11の原輪郭モノクロ画像において連続輪郭領域内の隔離背景領域であった画素集合が、輪郭領域と同一色(同一画素値)に変更されることで、骨材抽出領域へと置換されている。
具体的には、輪郭領域のうち骨材抽出領域が画素値「1」の白色の画素からなる面状の画素集合となって表われ、輪郭領域のうち不連続輪郭領域が画素値「1」の白色の画素からなる線状の画素集合となって表われ、背景領域が画素値「0」の黒色の画素からなる面状の画素集合となって表われている。
このように修正輪郭モノクロ画像によれば、輪郭領域の一部である不連続輪郭領域は、複数の骨材輪郭画素が線状に集合した画素集合を形成して骨材の輪郭線として表示されるの対し、同様に輪郭領域の一部である骨材抽出領域については、複数の骨材輪郭画素と同一の画素値を持つ画素が面状に集合した画素集合を形成して骨材の存在領域として表示されるのである。
しかし、修正輪郭モノクロ画像には、実際の骨材ではなく当該骨材内に存在する含有成分の輪郭線が連続輪郭領域である場合に、かかる含有成分が骨材抽出領域として誤って抽出されたものがあり、又、骨材の輪郭線が不連続輪郭領域となって表われるものもある。また、不連続輪郭領域は、修正輪郭モノクロ画像となった後も以前として、骨材抽出領域として抽出できずに残存したままである。
このように、修正輪郭モノクロ画像の骨材抽出領域はコンクリート画像の骨材の存在領域を表わすものとしては不充分であることから、後述するモノクロ合成工程(S4)及び合成領域修正工程(S5)によって、修正輪郭モノクロ画像に対して更なる修正が加えられるのである。
なお、以下の説明において、原輪郭モノクロ画像及び修正輪郭モノクロ画像を総称して単に「輪郭モノクロ画像」ともいう。
[ モノクロ合成工程 ]
次に、図4に示す画像領域分割処理における、第4の処理工程であるモノクロ合成工程(S4)について、説明する。
モノクロ合成工程(S4)によれば、上記した修正濃淡モノクロ画像及び修正輪郭モノクロ画像が論理和演算(OR演算)されることによって合成され、この合成により1個の2値画像である合成モノクロ画像が生成される。
ここで、このモノクロ合成工程(S4)により合成生成される合成モノクロ画像は、画素値が「1」の画素から形成される合成濃領域と、画素値が「0」の画素から形成される合成淡領域とからなる2値画像であり、修正濃淡モノクロ画像及び修正輪郭モノクロ画像における全ての対応する画素同士について論理和演算した結果得られる画像である。
合成モノクロ画像における合成濃領域は、修正濃淡モノクロ画像における画素値「1」の画素集合である濃領域と、同じく修正輪郭モノクロ画像における画素値「1」の画素集合である輪郭領域とを、互いに重ね合わせることで形成される画像領域である。
つまり、この合成濃領域は、修正濃淡モノクロ画像において濃領域として抽出された骨材について、当該骨材のより正確な輪郭を、修正輪郭モノクロ画像において輪郭領域として抽出された骨材の輪郭線によって補完した画像領域である。また、この合成濃領域は、コンクリート領域分割画像の骨材領域を形成するに際し、その骨材領域の元(基礎)となる画像領域でもある。
一方、合成モノクロ画像における合成淡領域は、画素値「0」の画素集合である修正濃淡モノクロ画像の淡領域及び修正輪郭モノクロ画像の背景領域を互いに重ね合わせることで形成される画像領域である。
つまり、この合成淡領域は、修正濃淡モノクロ画像において淡領域として抽出された淡色成分と、修正輪郭モノクロ画像において背景領域として抽出された非骨材輪郭部分との重複部分に相当する画像領域であって、コンクリート領域分割画像における残余成分領域の元(基礎)となるものである。
ここで、修正濃淡モノクロ画像、修正輪郭モノクロ画像及び、合成モノクロ画像は、コンクリート画像と同様に、画素がN行×M列で配置された合計N×Mピクセルの2次元画像である。
次に、このモノクロ合成工程(S4)による合成モノクロ画像の合成生成について説明する。まずは、修正濃淡モノクロ画像と修正輪郭モノクロ画像との対応する座標位置に存在する画素同士の画素値の論理和が演算され、その論理和値が合成モノクロ画像の対応する座標位置に存在する画素の画素値として設定される。
つまり、座標(x,y)にある修正濃淡モノクロ画像の画素の画素値が「1」、修正輪郭モノクロ画像の画素の画素値が「1」又は、修正濃淡モノクロ画像及び修正輪郭モノクロ画像の画素の画素値が両方とも「1」である場合に、合成モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値が「1」に設定される。一方、座標(x,y)にある修正濃淡モノクロ画像及び修正輪郭モノクロ画像の画素の画素値が両方とも「0」である場合には、合成モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値が「0」に設定される。
以上の結果、合成モノクロ画像は、画素値が「1」の画素で表わされる合成濃領域と、画素値が「0」の画素で表わされる合成淡領域とに、それぞれ分割されることとなり、結果、合成濃領域と合成淡領域とでは互いに異なる画素値を持つものとなる。つまり、合成モノクロ画像は、図14に示すように、骨材の存在領域を示すために白色の画素で表示される合成濃領域と、残余成分の存在領域を示すために黒色の画素で表示される合成淡領域とを有した2値画像となる。
<合成モノクロ画像>
図14は、モノクロ合成工程(S4)により生成される合成モノクロ画像の構造説明図であり、図中では、合成濃領域に白色を付する一方で、図示上の便宜から合成淡領域に黒色ではなく灰色を付している。図14に示すように、合成モノクロ画像によれば、その合成濃領域はそれを構成する画素の画素値が「1」であるために白色で表示され、その合成淡領域はそれを構成する画素の画素値が「0」であるために黒色(図中では灰色)で表示されている。
合成モノクロ画像の濃領域の中には、修正濃淡モノクロ画像の濃領域が表わす骨材の輪郭と修正輪郭モノクロ画像の輪郭領域が表わす骨材の輪郭とが齟齬するため、この齟齬部分が合成濃領域の内部に隔離合成淡領域(閉領域)となって表われている。隔離合成淡領域は、画素値「1」の画素集合である合成濃領域により周囲が完全包囲される画素値「0」の画素集合からなる閉領域内の合成淡領域であり、他の合成淡領域から完全に隔離された様態で存在している。
しかしながら、この合成モノクロ画像に存在する隔離合成淡領域は、本来であれば、残余成分の存在領域を表わす合成淡領域ではなく、骨材の存在領域を表わす合成濃領域に属すべきものである。
そこで、図4に示すように、画像領域分割処理は、モノクロ合成工程(S4)の後に合成領域修正工程(S5)が設けられており、この合成領域修正工程(S5)によって、合成モノクロ画像に含まれる隔離合成淡領域であるところの画素集合を合成濃領域と同じ画素値に反転させ、かかる隔離合成淡領域を包囲する合成濃領域とともに骨材領域に置換して、骨材の存在領域を更に明確化するようにしている。
[ 合成領域修正工程 ]
次に、図4に示す画像領域分割処理における、第5の処理工程である合成領域修正工程(S5)について、説明する。
この合成領域修正工程(S5)は、モノクロ合成工程(S4)により生成された合成モノクロ画像における合成濃領域を修正して骨材領域を抽出して、コンクリート領域分割画像を生成するための処理工程である。この合成領域修正工程(S5)によれば、合成モノクロ画像の中に輪郭合成淡領域が存在する場合に(図14参照。)、このような全ての隔離合成淡領域における画素値「0」の画素集合が合成濃領域と同じ画素値である「1」に変更(反転)される(図15及び図16参照。)。
具体的には、合成モノクロ画像の中から隔離合成淡領域がラベリング処理により全て検出される。そして、この検出された全ての隔離合成淡領域における画素値「0」の画素に対して、穴埋め処理が実行されることによって、その隔離合成淡領域の全画素の画素値が合成濃領域の画素値と等しい「1」の値に変更される。
この結果、隔離合成淡領域は合成濃領域と一体となって骨材領域へと置換され、この置換によって、より正確な骨材の存在領域である骨材領域を作り出すとともに、より正確な残余成分の存在領域である残余成分領域を作り出し、結果、コンクリート領域分割画像を作り出すのである。
<コンクリート領域分割画像>
図15は、コンクリート領域分割画像の構造説明図であり、図中では、骨材領域に白色を付する一方で、図示上の便宜から残余成分領域に黒色ではなく灰色を付している。図15に示すように、コンクリート領域分割画像は、画素値が「1」の白色の画素で表示される骨材領域と、画素値が「0」の黒色の画素で表示される残余成分領域とに、それぞれ分割されており、骨材領域と残余成分領域とが互いに異なる画素値を持った2値画像である。
<コンクリート領域分割画像>
図16は、コンクリート領域分割画像の一例を示した図面代用写真であり、図5に示したコンクリート画像を用いて生成された合成モノクロ画像を用いて生成されたものである。図16に示すように、このコンクリート領域分割画像によれば、骨材領域は、画素値「1」の白色の画素からなる面状の画素集合となって表わされ、残余成分領域は、画素値「0」の黒色の画素からなる面状の画素集合となって表わされる。
このようにして得られたコンクリート領域分割画像によれば、その骨材領域によってコンクリート画像における骨材の存在領域がより正確に再現されているので、例えば、この骨材領域を構成している全画素数を計数し、その値をコンクリート領域分割画像の全画素数と対比すれば、被写体となったコンクリート面に含まれる骨材の量をより正確に算定することができる。
なお、本実施例において、請求項1に記載するところの、コンクリート画像はコンクリート画像が、各色成分のコンクリート原色画像はR原色画像、G原色画像及び、B原色画像が、各色成分の濃淡基礎画像はR濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像及び、B濃淡基礎画像が、濃淡画像は濃淡モノクロ画像が、平滑化コンクリート画像は平滑化コンクリート画像が、各色成分の平滑化コンクリート原色画像は平滑化R原色画像、平滑化G原色画像及び、平滑化B原色画像が、各色成分のグレースケール画像はR系グレー画像、G系グレー画像及び、B系グレー画像が、各色成分の輪郭基礎画像はR輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像及び、B輪郭基礎画像が、輪郭画像は輪郭モノクロ画像が、合成2値画像は合成モノクロ画像が、コンクリート領域分割画像はコンクリート領域分割画像が、それぞれ該当する。また、請求項2に記載するところの、R成分のコンクリート原色画像はR原色画像が、G成分のコンクリート原色画像はG原色画像が、B成分のコンクリート原色画像はB原色画像が、それぞれ該当する。
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、本実施例では、コンクリート画像が24ビットのカラー画像であったが、かかるコンクリート画像の階調数は必ずしもこれに限定されるものではなく、24ビットとは異なる階調数であっても良い。
また、本実施例では、コンクリート画像に対応させて、平滑化コンクリート画像を24ビットとし、コンクリート画像を基礎に生成されるR原色画像、G原色画像、B原色画像、R系グレー画像、G系グレー画像及び、B系グレー画像を8ビットとしたが、これらの画像の階調数は必ずしもこれらに限定されるものではなく、その他の階調数であっても良い。
ただし、コンクリート画像をRGBの各原色成分に色分解することで得られるR原色画像、G原色画像及び、B原色画像については、これらを基礎に得られる濃淡モノクロ画像における濃領域の再現精度の観点から、それぞの階調数が上記の如く均等であることが好ましい。このようにすることで、濃淡2値化工程(S2)において、多様な色合いを呈する骨材を、RGBの各原色成分毎に格差なく濃領域として抽出できるからである。
さらに、平滑化コンクリート画像をRGBの各原色成分に色分解することで得られるR系グレー画像、G系グレー画像及び、B系グレー画像についても、これらを基礎に得られる輪郭モノクロ画像における輪郭領域の再現精度の観点から、それぞの階調数が上記の如く均等であることが好ましい。輪郭2値化工程(S3)において、多様な色合いを呈する骨材を、RGBの各原色成分毎に格差なく輪郭領域として抽出できるからである。
また、本実施例では、濃淡2値化工程(S2)において、濃領域の画素値が「1」であって淡領域の画素値が「0」であるR濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像及び、B濃淡基礎画像の論理和を演算することで、濃領域の画素値が「1」であって淡領域の画素値が「0」である原濃淡モノクロ画像を生成したが、これら4種類の2値画像の画素値の割り当て及び論理演算の種類は、必ずしもこれに限定されるものではない。
要するに、R濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像及び、B濃淡基礎画像を合成して原濃淡モノクロ画像を生成する論理演算は、R濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像及び、B濃淡基礎画像の座標(x,y)にある各画素の画素値のうち少なくとも1つが濃領域を表わす画素値である場合に、原濃淡モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値を濃領域を表わす画素値に設定し、かつ、R濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像及び、B濃淡基礎画像の座標(x,y)にある3つの画素の画素値が全て淡領域を表わす画素値である場合に、原濃淡モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値を淡領域を表わす画素値に設定するものであれば良い。
また、本実施例では、輪郭2値化工程(S3)において、輪郭領域の画素値が「1」であって背景領域の画素値が「0」であるR輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像及び、B輪郭基礎画像の論理和を演算することで、輪郭領域の画素値が「1」であって背景領域の画素値が「0」である原輪郭モノクロ画像を生成したが、これら4種類の2値画像の画素値の割り当て及び論理演算の種類は、必ずしもこれに限定されるものではない。
要するに、R輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像及び、B輪郭基礎画像を合成して原輪郭モノクロ画像を生成する論理演算は、R輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像及び、B輪郭基礎画像の座標(x,y)にある各画素の画素値のうち少なくとも1つが輪郭領域を表わす画素値である場合に、原輪郭モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値を輪郭領域を表わす画素値に設定し、かつ、R輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像及び、B輪郭基礎画像の座標(x,y)にある3つの画素の画素値が全て背景領域を表わす画素値である場合に、原輪郭モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値を背景領域を表わす画素値に設定するものであれば良い。
また、本実施例では、モノクロ合成工程(S4)において、濃領域の画素値が「1」であって淡領域の画素値が「0」である修正濃淡モノクロ画像と輪郭領域の画素値が「1」であって背景領域の画素値が「0」である修正輪郭モノクロ画像との論理和を演算することで、骨材領域の画素値が「1」であって残余成分領域の画素値が「0」である合成モノクロ画像を生成したが、これら3種類の2値画像の画素値の割り当て及び論理演算の種類は、必ずしもこれに限定されるものではない。
要するに、修正濃淡モノクロ画像及び修正輪郭モノクロ画像を合成して合成モノクロ画像を生成する論理演算は、修正濃淡モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値が濃領域を表わす画素値であるか又は、修正輪郭モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値が輪郭領域を表わす画素値である場合に、合成モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値を骨材領域を表わす画素値に設定し、かつ、修正濃淡モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値が淡領域を表わす画素値であり且つ修正輪郭モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値が背景領域を表わす画素値である場合に、合成モノクロ画像の座標(x,y)にある画素の画素値を残余成分領域を表わす画素値に設定するものであれば良い。
また、本実施例では、濃淡合成工程(S23)において、R濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像及び、B濃淡基礎画像を論理和演算する場合に、R濃淡基礎画像とG濃淡基礎画像とを論理和演算してRG濃淡基礎画像を生成し、このRG濃淡基礎画像とB濃淡基礎画像とを論理和演算することで、1個の原濃淡モノクロ画像が合成生成した。
しかしながら、かかる原濃淡モノクロ画像を生成するためのR濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像及び、B濃淡基礎画像を論理和演算の形式は、必ずしもこれに限定されるものではなく、R濃淡基礎画像及びB濃淡基礎画像を論理和演算した結果得られる画像と、G濃淡基礎画像とを論理和演算することで原濃淡モノクロ画像を生成しても良く、又は、R濃淡基礎画像、G濃淡基礎画像及び、B濃淡基礎画像をまとめて論理和演算して原濃淡モノクロ画像を生成するようにしても良い。
また、本実施例では、濃淡合成工程(S23)により生成された原濃淡モノクロ画像に対して、濃領域修正工程(S24)により穴埋め処理による修正を施したが、この濃領域修正工程(S24)による原濃淡モノクロ画像に対する修正処理を、濃淡2値化工程(S2)から削除して、その機能を合成領域修正工程(S5)による合成モノクロ画像に対する修正処理によって代替するようにしても良い。
かかる場合には、モノクロ合成工程(S4)は、修正濃淡モノクロ画像に代えて原濃淡モノクロ画像が入力される。よって、モノクロ合成工程(S4)では、原濃淡モノクロ画像と修正輪郭モノクロ画像とが論理演算されることで合成モノクロ画像が生成されることとなる。
また、本実施例では、輪郭合成工程(S35)において、R輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像及び、B輪郭基礎画像を論理和演算する場合に、R輪郭基礎画像とG輪郭基礎画像とを論理和演算してRG輪郭基礎画像を生成し、このRG輪郭基礎画像とB輪郭基礎画像とを論理和演算することで、1個の原輪郭モノクロ画像が合成生成した。
しかしながら、かかる原輪郭モノクロ画像を生成するためのR輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像及び、B輪郭基礎画像を論理和演算の形式は、必ずしもこれに限定されるものではなく、R輪郭基礎画像及びB輪郭基礎画像を論理和演算した結果得られる画像と、G輪郭基礎画像とを論理和演算することで原輪郭モノクロ画像を生成しても良く、又は、R輪郭基礎画像、G輪郭基礎画像及び、B輪郭基礎画像をまとめて論理和演算して原輪郭モノクロ画像を生成するようにしても良い。
また、本実施例では、輪郭合成工程(S35)により生成された原輪郭モノクロ画像に対して、輪郭領域修正工程(S36)により穴埋め処理による修正を施したが、この輪郭領域修正工程(S36)による原輪郭モノクロ画像に対する修正処理を、輪郭2値化工程(S3)から削除して、その機能を合成領域修正工程(S5)による合成モノクロ画像に対する修正処理によって代替するようにしても良い。
かかる場合には、モノクロ合成工程(S4)は、修正輪郭モノクロ画像に代えて原輪郭モノクロ画像が入力される。よって、モノクロ合成工程(S4)では、修正濃淡モノクロ画像と原輪郭モノクロ画像とが論理演算されることで合成モノクロ画像が生成されることとなる。
さらに、濃淡領域修正工程(S23)による原濃淡モノクロ画像に対する修正処理を濃淡2値化工程(S2)から削除し、かつ、輪郭領域修正工程(S36)による原輪郭モノクロ画像に対する修正処理を輪郭2値化工程(S3)から削除して、これらの双方の機能を合成領域修正工程(S5)による合成モノクロ画像に対する修正処理によって代替するようにしても良い。
かかる場合には、モノクロ合成工程(S4)は、修正輪郭モノクロ画像及び修正輪郭モノクロ画像に代えて原濃淡モノクロ画像及び原輪郭モノクロ画像が入力される。よって、モノクロ合成工程(S4)では、原濃淡モノクロ画像と原輪郭モノクロ画像とが論理演算されることで合成モノクロ画像が生成されることなる。