JP2010229006A - フランジ部を備える中空構造物の製造方法、フランジ部を備える中空構造物、及びタービン翼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】繊維から形成される筒形状の中空織物10に対して、該中空織物10の端部10xに到達せずかつ外周面から内周面に抜ける切込20を周方向に複数形成し、上記切込20が形成された上記中空織物10を周面によって囲われる軸Lの延在方向に圧縮することによって上記周面から外側に突出する突出部を複数形成し、上記突出部が形成された中空織物を上記中空構造物の形状に矯正してマトリックスを付着形成することによって上記突出部を上記フランジ部とする。
【選択図】図4
Description
このようなタービン翼は、従来、金属材料を鋳造することによって製造されていた。ところが、近年においては、タービン翼に対して耐熱性の向上及び軽量化が要求されており、このような要求を満足するために、繊維と該繊維に付着するマトリックスからなる複合材料によってタービン翼を形成することが提案されている。
そして、このような複合材料によってタービン翼を製造する場合には、繊維からなる織物を形成し、当該織物に対してマトリックスを付着形成することによってタービン翼を製造する。
そして、例えば、フランジ部が一体化された中空構造物によってタービン翼を形成し、当該フランジ部をバンド部として用いることによって翼体とバンド部とのシール性を確保することができる。
そして、特許文献1には、織物に対してフランジ部となる部分を形成するための具体的な手法が提案されている。
具体的には、特許文献1においては、筒形状の中空織物の端部に切込を形成し、中空織物の端部を切り開くことによってフランジ部となる部分を形成している。
このため、例えば中空織物の端部をフランジ部に合わせて折り曲げる際に、端部近傍の繊維が脱落したり、繊維密度の偏りが生じたりする場合がある。
つまり、本発明においては、筒形状の中空織物の端部を切り開くことなく複合材料からなるフランジ部が形成される。したがって、中空織物の端部近傍における繊維の結合力を低下させることない。
このため、本発明によれば、中空織物の端部における繊維の脱落や繊維の偏りが生じることを抑制することができ、フランジ部を備える中空構造物における強度バラツキを抑止し、また成形性が向上することによってフランジ部を備える中空構造物を容易に製造することが可能となる。
そして、翼体2とバンド部3と(すなわちタービン翼1)は、セラミックス(例えばSiC)繊維からなる織物に対してセラミックス(例えばSiC)マトリックスが付着形成されたセラミックス基複合材料によって形成されている。
まず、図3に示すように、セラミックス繊維を用いたブレーディング織りによって得られる複数の円筒形状の中空織物10a,10bを半径方向に積層することによって、図4に示すような外周面の周長が翼体2の外周面の周長と一致し、内周面の周長が翼体2の内周面の周長と一致する中空織物10を形成する。なお、図4においては、視認性を向上させるために、中空織物10の表面を滑らかに図示している。
そして、半径の異なる複数の中空織物10a,10bを、軸Lを重ねて半径方向に連続して積層することによって、図4に示すように周面によって囲われる軸Lを有する円筒形状(筒形状)の中空織物10が形成される。
なお、図4に示すように、中空織物10に形成される切込20は、中空織物10の中央寄りの水平な仮想ラインAから端部10x寄りの水平な仮想ラインBの範囲で軸Lに平行に形成されている。より詳細には、中空織物10の上方領域に形成される切込20は、中空織物10の中央寄りの仮想ラインA1から端部10x寄りの仮想ラインB1の範囲で形成される。また、中空織物10の下方領域に形成される切込20は、中空織物10の中央寄りの仮想ラインA2から端部10x寄りの仮想ラインB2の範囲で形成される。
これによって、切込20同士の間には少なくとも2本の中央糸が存在することとなり、これらの複数の中央糸によって切込20同士の間の組糸が保持される。このため、切込20同士の間において繊維同士の結合力が低下することを抑制し、組糸が脱落したり偏ったりすることを抑制することができる。
これによって矯正された際の曲率が大きい領域では、切込20が密に形成されることとなり、中空織物10が柔軟に形状変化させることが可能となり、矯正された際の曲率が小さい領域では、切込20が粗に形成されることとなり、切込20同士の間に存在する中央糸の数が増えて組糸の保持力を増加させることが可能となる。
また、中空織物10を翼体2の形状に矯正した場合に最も大きく曲げられるリーディングエッジとトレーディングエッジに相当する箇所には、当該箇所に合わせ込んで切込20を形成することが好ましい。
具体的には、セラミックス繊維が編み込まれた板状織物を図5に示すように板状に成型し、さらに翼体2の形状の貫通孔40を形成する。これによって、貫通孔40が形成されると共にセラミックス繊維からなる板状の板状織物30が、バンド部3に含まれる織物として形成される。そして、本実施形態においては、4枚の板状織物30を形成する。
なお、貫通孔40は、カッター等の切断装置を用いた加工やパンチ加工によって容易に形成することができる。
組立て工程(ステップS3)は、中空織物10と板状織物30とを組み立てる工程である。
そして、本実施形態においては、周方向における切込20の形成密度が、中空織物10が翼体2の形状に矯正された場合における曲率が大きい領域で相対的に高く、曲率が小さい領域で相対的に低い。このため、リーディングエッジに相当する箇所10Aの近傍(曲率の大きい領域)において幅が狭い突出部50が形成され、背側中央及び腹側中央近傍(曲率の小さい領域)において幅が広い突出部50が形成される。
なお、例えば中空織物10の柔軟性を求めるために切込20同士の間隔を中央糸同士の間隔の2倍より小さくした場合には、単一層において中央糸を1本しか含まない突出部50が形成される場合がある。このため、単一層において中央糸を1本しか含まない突出部50が形成された場合には、当該突出部50を切除しても良い。これによって、比較的繊維の脱落や偏りが発生しやすい突出部50を除去できると共にタービン翼1の軽量化を図ることが可能となる。
これによって、組立て工程(ステップS3)においてより確実に中空織物10を翼体2の形状に矯正することができる。
ステッチ工程(ステップS4)は、中空織物10の突出部50と板状織物30とを、図8に示すようにセラミックス繊維60によって縫い合わせる工程である。
これによって、中空織物10の突出部50を除く部分にセラミックスマトリックスが付着形成されて翼体2が形成され、中空織物10の突出部50と板状織物30とにセラミックスマトリックスが付着形成されてバンド部3が形成される。
つまり、本実施形態のタービン翼の製造方法においては、筒形状の中空織物10の端部を切り開くことなくセラミックス基複合材料からなるバンド部3が形成される。したがって、中空織物10の端部近傍における繊維の結合力を低下させることない。
このため、本実施形態のタービン翼の製造方法によれば、中空織物10の端部における繊維の脱落や繊維の偏りが生じることを抑制することができ、タービン翼1における強度バラツキを抑止し、また成形性が向上することによってバンド部3が一体化されたタービン翼1を容易に製造することが可能となる。
そして、このような本実施形態のタービン翼1は、強度バラツキがなく、製造が容易なものとなる。
また、このような本実施形態のタービン翼の製造方法によって製造されたタービン翼1は、バンド部3が、セラミックスマトリックスが付着形成された突出部50と、突出部50に突き合わされてセラミックスマトリックスが付着形成された板状織物30とを含んで形成されるものとなる。そして、このタービン翼1によれば、タービンに取り付けた際に、作動流体の流路を容易に平らなものにすることができる。
また、このような本実施形態のタービン翼の製造方法によって製造されたタービン翼1によれば、バンド部3に縫い合わせのセラミックス繊維60が含まれたものとなり、バンド部3の強度が向上されたものとなる。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、フランジ部を備える中空構造物が、タービン翼(動翼)、ロケットノズル、燃焼器あるいは配管等であっても良い。つまり、本発明は、タービン翼(動翼)の製造方法、ロケットノズルの製造方法、燃焼器の製造方法あるいは配管の製造方法等に適用することができる。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、繊維として炭素繊維等の他の繊維を用いたり、マトリックスとして炭素マトリックス等の他のマトリックスを用いたりすることも可能である。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、中空織物をフィラメントワインディング等の他の方法で形成しても良い。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、細かい板状織物を中空織物10の周りに複数配置することによって突出部50に板状織物を突き合わせても良い。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、突出部50のいずれか一方に板状織物30を突き合わせても良い。
また、突出部50に板状織物30を突き合せないことも可能である。この場合には、フランジ部(バンド部)は、マトリックスが付着形成された突出部50のみによって形成されることとなる。
また、突出部50は、見かけ上、2枚の板状織物が重なった形状を有している。そして、板状織物を、突出部50を構成する2枚の板状織物の間に配置させることもできる。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、切込を軸Lに対して斜めに延在するように形成しても良い。
また、切込を幅広に形成しても良く、さらには切込のエッジを「く」の字状に折り曲げても良い。このような構成を採用することによって突出部50の形状を変化させ、例えば、中空織物10を翼体2の形状に矯正した場合に、突出部50同士が重なることを抑制することも可能となる。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、切込の長さが異なっても良く、また全ての切込が水平方向から見て同じ高さに配置される必要はない。
例えば、切込を水平方向から見て斜めに配置した場合には、突出部50が水平方向から見て斜めに配置されてバンド部3が傾斜されることとなり、傾斜した作動流体の流路を容易に形成することが可能となる。
また、上記実施形態の組立て工程(ステップS3)等において、中空織物10及び板状織物30に対して、液状の接着剤を噴き付けることによって、中空織物10及び板状織物30の形状を固定化するようにしても良い。これによって、繊維の脱落をより確実に防止することが可能となる。
Claims (14)
- フランジ部を備える中空構造物の製造方法であって、
繊維から形成される筒形状の中空織物に対して、該中空織物の端部に到達せずかつ外周面から内周面に抜ける切込を周方向に複数形成し、
前記切込が形成された前記中空織物を周面によって囲われる軸の延在方向に圧縮することによって前記周面から外側に突出する突出部を複数形成し、
前記突出部が形成された中空織物を前記中空構造物の形状に矯正してマトリックスを付着形成することによって前記突出部を前記フランジ部とする
ことを特徴とするフランジ部を備える中空構造物の製造方法。 - 繊維から形成される板状の板状織物を前記突出部に突き合わせて前記マトリックスを付着形成することによって、前記板状織物を前記フランジ部の一部とすることを特徴とする請求項1記載のフランジ部を備える中空構造物の製造方法。
- 前記板状織物と前記突出部とを縫い合わせた後に前記マトリックスを付着形成することを特徴とする請求項2記載のフランジ部を備える中空構造物の製造方法。
- 前記中空織物が前記軸の延在方向に延在する複数の中央糸と前記軸を中心とする螺旋状に巻回される組糸とを用いたブレーディング織りによって形成されている場合に、前記中央糸の離間間隔の2倍以上の離間間隔で前記切込を周方向に複数形成することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のフランジ部を備える中空構造物の製造方法。
- 前記マトリックスを付着形成する前に、いずれかの前記突出部を切除することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のフランジ部を備える中空構造物の製造方法。
- 前記周方向における前記切込の形成密度が、前記中空構造物の形状に矯正された場合における曲率が大きい領域で相対的に高く、前記中空構造物の形状に矯正された場合における曲率が小さい領域で相対的に低いことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のフランジ部を備える中空構造物の製造方法。
- 前記フランジ部を備える中空構造物が、前記フランジ部としてバンド部と一体化されたタービン翼であることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載のフランジ部を備える中空構造物の製造方法。
- フランジ部を備える中空構造物であって、
繊維から形成される筒形状であると共に端部に到達せずかつ外周面から内周面に抜ける切込が周方向に複数形成された中空織物が、周面によって囲われる軸の延在方向に圧縮されることによって前記周面から外側に突出して形成される突出部に対してマトリックスを付着形成することによって少なくとも一部が形成される前記フランジ部を備えることを特徴とするフランジ部を備える中空構造物。 - 前記フランジ部は、前記マトリックスが付着形成された突出部と、繊維から形成される板状であると共に前記突出部に突き合わされて前記マトリックスが付着形成された板状織物とを含んで形成されていることを特徴とする請求項8記載のフランジ部を備える中空構造物。
- 前記突出部と前記板状織物とが縫い合わされていることを特徴とする請求項9記載のフランジ部を備える中空構造物。
- 前記中空織物が前記軸の延在方向に延在する複数の中央糸と前記軸を中心とする螺旋状に巻回される組糸とを用いたブレーディング織りによって形成されている場合に、前記中央糸の離間間隔の2倍以上の離間間隔で前記切込が周方向に複数形成されていることを特徴とする請求項8〜10いずれかに記載のフランジ部を備える中空構造物。
- いずれかの前記突出部が切除されていることを特徴とする請求項8〜11いずれかに記載のフランジ部を備える中空構造物。
- 前記周方向における前記切込の形成密度が、曲率が大きい領域で相対的に高く、曲率が小さい領域で相対的に低いことを特徴とする請求項8〜12いずれかに記載のフランジ部を備える中空構造物。
- 中空の翼体に対して一体形成されたバンド部を備えるタービン翼であって、
請求項8〜13いずれかに記載のフランジ部を備える中空構造物から形成され、前記バンド部が前記フランジ部によって形成されていることを特徴とするタービン翼。
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