JP2010225659A - 電子回路基板製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易かつ低コストに電子回路基板を製造する。
【解決手段】基材10上に金属コロイド溶液14をインクジェット方式により塗布して、電子回路基板の導電性金属部16のパターンを形成する。金属コロイド溶液14により形成された導電性金属部16のパターン上に、金属コロイド溶液14の溶媒と相溶性を有する導電性発現促進溶媒18をデポジション方式により塗布する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子回路基板の製造方法に関し、とくに電子回路基板の配線を形成する電子回路基板の製造方法に関するものである。
従来、電子回路基板(プリント配線板)の配線部分(導体部分)のパターンの形成方法として、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、およびアディティブ法が知られている。
サブトラクティブ法は、基材上に形成された金属層の不要な部分を除去して必要な部分を残すことにより、導体部分のパターン(配線パターン)とする方法である。他方、セミアディティブ法およびアディティブ法は、基材上に導体部分のパターンを形成していく方法である。上記いずれの方法においても、フォトリソグラフィ技術を用いて、導体部分のパターンを形成している。
ここで、図6〜図8を用いて、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、およびアディティブ法について説明する。なお、図6〜図8には、プリント配線板の断面図を模式的に図示する。
図6(a)〜(f)は、サブトラクティブ法を適用した導体部分のパターンの形成方法を示す図である。サブトラクティブ法では、まず、図6(a)に示すように、絶縁性基材(絶縁層)200の両面に、銅箔の導体層202を形成して銅貼積層板204とし、次いで、図6(b)に示すように、銅貼積層板204にスルーホール(ビアホール、貫通孔)206を形成した後、図6(c)に示すように、無電解メッキ法または電解メッキ法により、導体層202の表面およびスルーホール206の内壁に、導電性金属層208を形成して、スルーホール206を形成する。
スルーホール206を形成した後は、導体層202上の導電性金属層208表面に、ドライフィルムレジスト(DFR)または液状レジスト等によりレジスト層210を形成し、次いで、このレジスト層210に、フォトツール(図示せず)を介して輻射線を照射して現像することにより、レジスト層210のパターニングを行う。
レジスト層210のパターニングを行った後は、図6(e)に示すように、レジスト層210に被覆されていない導体層202および導電性金属層208をエッチングにより除去し、次いで、図6(f)に示すように、レジスト層210を除去して、プリント配線板を形成する。
図7(a)〜(g)は、セミアディティブ法を適用した配線パターンの形成方法を示す図である。セミアディティブ法では、まず、図7(a)に示すような絶縁性基材200に、図7(b)に示すようにスルーホール206を形成し、次いで、図7(c)に示すように、無電解メッキ法によって絶縁性基材200の両側表面およびスルーホール206の内壁に導電性金属層208を形成する。
導電性金属層208を形成した後に、ドライフィルムレジスト(DFR)または液状レジストによりレジスト層210を形成し、次いで、このレジスト層210にフォトツール(図示せず)を介して輻射線を照射して現像し、レジスト層210のパターニングを行う。
レジスト層210をパターニングした後、レジスト層210に被覆されていない導電性金属層208をシード層として、図7(e)に示すように、電解メッキ法により導電性金属212を形成し、次いで、図7(f)に示すようにレジスト層210を除去し、さらに、図7(g)に示すように、導電性金属212で被覆されていない導電性金属層208を除去して、プリント配線板を形成する。
図8(a)〜(e)は、アディティブ法を適用した配線パターンの形成方法を示す図である。アディティブ法では、まず、図8(a)に示すような絶縁性基材(絶縁層)200に、図8(b)に示すようにスルーホール206を形成し、次いで、ドライフィルムレジスト(DFR)または液状レジスト等によりレジスト層210を形成し、さらに、図8(c)に示すように、このレジスト層210にフォトツール(図示せず)を介して輻射線を照射して現像し、パターニングされたレジスト層210を形成する。
レジスト層210を形成した後、図8(d)に示すように、レジスト層210に被覆されていない絶縁性基材200上に無電解メッキ法により導電性金属層208を形成するとともに、スルーホール206の内壁にも導電性金属層208を形成した後、最終的に図8(e)に示すように、レジスト層210を除去してプリント配線板を形成する。
しかしながら、上記のようなフォトリソグラフィ技術によってレジストパターンを形成して所望の配線パターンを形成する方法は、フォトマスクの作成に時間が必要であり、さらに、配線用金属の不要部除去のためのエッチング処理とは別に、レジストパターンを形成するためのレジストの露光現像処理も必要である。このため、配線パターンを形成するために、時間やコストがかかる。また、露光現像処理に伴う大量の廃液の処理も問題となる。さらに、使用する溶媒の種類、使用量および浸漬時間を適切に選択しないと、形成されたパターンにひび割れや剥離を生じたり、基材自体を損傷するおそれがある。
このため、近年、導電微粒子分散インク方式を用いることにより、電子回路基板の配線部分のパターンを形成する方法が提案されている。導電微粒子分散インク描画方式は、インクジェット印刷方式を用いて、導電性の微粒子材料(金属コロイド粒子)を含有する液状体(金属コロイド溶液)を、所望の配線パターンに応じて、直接基材上にパターニングすることにより、配線パターンを形成する。
この導電微粒子分散インク描画方式は、マスクを作成する必要がないため、フォトリソグラフィ技術によってレジストパターンを形成して、所望の配線パターンを形成する方法と比較すると製造工程数が少ない。また、現像露光工程が不要なため、廃液処理が不要となる。
このような、導電微粒子分散インク方式として、基材に受容層を形成し、受容層に金属コロイド溶液を塗布した後、熱処理を行うことにより、金属コロイド溶液に含まれる導電性微粒子同士を接触させて導電性を発現させる手法が提案されている(特許文献1参照)。
特開2004−6578号公報
しかしながら、特許文献1に記載された手法において、微粒子材料の導電性を発現させるためには、高温下で長時間の焼成処理が必要である。このため、配線パターンを形成可能な基材が耐熱性を有する材料に限定される上に、ランニングコストおよび製造コストが高く、さらに、高温処理のための装置の大型化も避けられない。また、耐熱性が低い基材を使用しようとした場合、加熱温度が低くなるため、形成された配線パターンの導電性が低下するおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、簡易かつ低コストに電子回路基板を製造することを目的とする。
本発明による第1の電子回路基板製造方法は、基材上に金属コロイド溶液をインクジェット方式により塗布して、電子回路基板の導電性パターンを形成するパターン形成工程と、
少なくとも前記導電性パターン上に、前記金属コロイド溶液の溶媒と相溶性を有する導電性発現促進溶媒をデポジション方式により塗布する溶媒塗布工程とを備えたことを特徴とするものである。
「デポジション方式」としては、導電性発現促進溶媒を吐出させて基材に導電性発現促進溶媒を塗布する手法であればどのような手法であってもよく、例えばインクジェット方式およびディスペンサ方式を用いることができる。
少なくとも導電性パターン上に導電性発現促進溶媒を塗布するとは、導電性パターンの全面の領域に導電性発現促進溶媒を塗布することのみならず、導電性パターンおよび導電性パターンの間の領域に導電性発現促進溶媒を塗布すること、および導電性パターン内の一部の領域に導電性発現促進溶媒を塗布することを含む。
なお、本発明による第1の電子回路基板製造方法においては、前記導電性発現促進溶媒の塗布量を、前記金属コロイド溶液の塗布量より多くしてもよい。
また、本発明による第1の電子回路基板製造方法においては、前記導電性発現促進溶媒の塗布面積を、前記金属コロイド溶液の塗布面積以下としてもよい。
本発明による第2の電子回路基板製造方法は、基材上に金属コロイド溶液をインクジェット方式により塗布して、電子回路基板の導電性パターンを形成するに際し、
前記基材の全面に、前記金属コロイド溶液の溶媒と相溶性を有する導電性発現促進溶媒を塗布する溶媒塗布工程と、
前記導電性発現促進溶媒が乾燥する前に、前記導電性発現促進溶媒上に前記金属コロイド溶液により前記導電性パターンを形成するパターン形成工程とを備えたことを特徴とするものである。
なお、本発明による第2の電子回路基板製造方法においては、前記導電性発現促進溶媒を高沸点溶媒としてもよい。
また、本発明による第1および第2の電子回路基板製造方法においては、前記金属コロイド溶液の溶媒と前記導電性発現促進溶媒とのSP値(溶解パラメータ[Solubility Parameter])の差を、1以上15以下としてもよい。
また、本発明による第1および第2の電子回路基板製造方法においては、前記金属コロイド溶液の溶媒と前記導電性発現促進溶媒との極性を異なるものとしてもよい。
この場合、前記金属コロイド溶液の溶媒の比誘電率が5以下であり、前記導電性発現促進溶媒の比誘電率が15を超えることが好ましい。
またこの場合、前記金属コロイド溶液の溶媒の比誘電率が15を超え、前記導電性発現促進溶媒の比誘電率が5以下であることが好ましい。
また、本発明による第1および第2の電子回路基板製造方法においては、前記基材を、その表面に多孔質型受容層が形成された受容層付基材としてもよい。
本発明の第1の電子回路基板製造方法によれば、少なくとも金属コロイド溶液により形成された導電性パターン上に、金属コロイド溶液の溶媒と相溶性を有する導電性発現促進溶媒をデポジション方式により塗布するようにしたものである。
また、本発明の第2の電子回路基板製造方法によれば、基材全面に金属コロイド溶液の溶媒と異なる導電性発現促進溶媒を塗布し、導電性発現促進溶媒が乾燥する前に、導電性発現促進溶媒上に金属コロイド溶液により導電性パターンを形成するようにしたものである。
このため、加熱処理を行わなくても常温で放置すれば、導電性発現促進溶媒の存在により金属コロイド溶液に含まれる金属コロイド粒子の凝集性を促進できる。また、金属コロイド粒子の凝集性を促進できるため、常温での放置時間を短縮でき、その結果、製造時間を短縮できる。また、金属コロイド粒子の凝集性を促進できるため、導電性を損なうことなく、導電性パターンを形成することができる。また、加熱処理が不要となるため、加熱処理のための設備が不要となり、製造コストを低減できる。また、耐熱性を有する基材を用いる必要がなくなるため、基材の選択の自由度が増し、汎用の基材を使用できることとなる。したがって、本発明によれば、電子回路基板製造のための設備を大型化することなく、低コストにて効率よく電子回路基板を製造することができる。
とくに本発明の第2の電子回路基板製造方法においては、導電性発現促進溶媒を基材全面に塗布しているため、導電性発現促進溶媒の塗布方式として、バーコート法等の基材全面塗布方式を選択することができる。このため、導電性発現促進溶媒の塗布工程を簡素化することができ、その結果、製造コストを低減することができる。また、金属コロイド溶液が基材に塗布されると、即座に凝集作用が開始されるため、金属コロイド溶液の塗布時における、隣接して塗布される金属コロイド溶液間の干渉を抑制できる。
また、本発明の第1の電子回路基板製造方法において、導電性発現促進溶媒の塗布量を、金属コロイド溶液の塗布量より多くすることにより、金属コロイド粒子の凝集性がさらに促進されるため、常温での放置時間をさらに短縮することができる。
また、本発明の第1の電子回路基板製造方法において、導電性発現促進溶媒の塗布面積を、金属コロイド溶液の塗布面積以下とすることにより、導電性発現促進溶媒の使用量を少なくすることができる。また、必要な箇所にのみ集中して導電性発現促進溶媒を塗布することとなるため、金属コロイド粒子の凝集を効率よく促進させることが可能となり、その結果、常温での放置時間をより短縮できる。また、必要箇所のみ導電性発現促進溶媒を塗布することとなるため、金属コロイド溶液により形成された導電性パターンを濡れ広がらせてしまうことを防止できる。
また、本発明の第2の電子回路基板製造方法において、導電性発現促進溶媒を高沸点溶媒とすることにより、金属コロイド溶液を塗布するまでの時間を稼ぐことができ、その結果、導電性発現促進溶媒が乾燥する前に確実に金属コロイド溶液を塗布することが可能となる。また、金属コロイド粒子の凝集に要する時間を増加させることもできる。したがって、凝集作用を確実に起こさせることが可能となる。また、金属コロイド溶液の塗布手順の自由度が増すため、効率よく導電性パターンを形成できる。
ここで、金属コロイド溶液の溶媒は、金属コロイド粒子に付与されている分散剤の分散性を阻害しないが、金属コロイド溶液の溶媒とは異なる極性を有する導電性発現促進溶媒を金属コロイド溶液に塗布すると、分散剤の分散性が阻害されるとともに、金属コロイド粒子から分散剤が離脱し、金属コロイド粒子の凝集を促進する。したがって、本発明の第1および第2の電子回路基板製造方法において、金属コロイド溶液の溶媒と導電性発現促進溶媒との極性を異なるものとすることにより、常温での放置時間を短縮することができる。
また、本発明の第1および第2の電子回路基板製造方法において、基材をその表面に多孔質型受容層が形成された受容層付基材とすることにより、受容層に金属コロイド溶液を塗布することとなるため、基材と金属コロイド溶液により形成した導電性パターンとの密着性を高めることができる。このため、金属コロイド溶液の溶媒と導電性発現促進溶媒とを重ねて塗布しても、金属コロイド溶液により形成した導電性パターンの形状を崩すおそれがなくなる。したがって、導電性発現促進溶媒の塗布量を多くすることができ、その結果、金属コロイド粒子の凝集性をより促進させることができる。また、形成された導電性パターンに、短絡および開放等の配線としての不良を発生させることを防止できる。
本発明の第1の実施形態による電子回路基板の製造方法の実施形態を概念的に示す図 導電性発現促進溶媒の塗布面積を説明するための図 本発明の第2の実施形態による電子回路基板の製造方法の実施形態を概念的に示す図 各種溶媒のSP値を示す表 各種溶媒の沸点および比誘電率を示す表 サブトラクティブ法を適用した配線パターンの形成方法を模式的に示す図 セミアディティブ法を適用した配線パターンの形成方法を模式的に示す図 アディティブ法を適用した配線パターンの形成方法を模式的に示す図
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態による電子回路基板の製造方法の実施形態を概念的に示す図である。
まず、図1(a)に示すように、基材10の片面に受容層12を形成する。なお、基材10の両面に受容層12を形成してもよい。また、予め受容層12が形成された基材10を用いてもよい。基材10および受容層12、並びに受容層12の形成方法については後述する。
次いで、図1(b)に示すように、受容層12の表面に、インクジェット方式により、金属コロイド溶液14を導電性パターン状に吐出して塗布する。具体的には、導電性パターンの画像データに基づいて、金属コロイド溶液14をインクジェット方式により吐出して、金属コロイド溶液14を受容層12の表面に塗布する。金属コロイド溶液14については後述する。
なお、インクジェット方式は、サーマル方式、ピエゾ方式、および静電方式のいずれも使用可能であるが、その中でもピエゾ方式が好ましい。なお、サーマル式の場合、金属コロイド溶液14は水性媒体を含むものを用いることが好ましい。また、静電方式の場合は、金属コロイド溶液14の金属コロイド粒子を樹脂によりコーティングして荷電付加する必要がある。
このように金属コロイド溶液14を受容層12の表面にインクジェット方式により吐出すると、吐出直後は図1(b)に示すように、金属コロイド溶液14の液滴が並んだ状態となるが、直ちに受容層12に浸透して、図1(c)に示すように断面が台形状の導電性金属部16となる。
ここで、インクジェット方式により金属コロイド溶液14を塗布すれば、後工程における金属コロイド溶液14の導電性発現促進溶媒についてもインクジェット方式により塗布するため、2つの工程を同一装置内で行うことができる。したがって、装置を小型化することができ、フォトリソグラフィ法による電子回路基板の製造よりも、設備および工程数を削減することができる。また、工程を削減することができることから、全体の処理時間を短縮することができるため、生産性の観点からも好ましい。
なお、金属コロイド溶液14の溶媒が受容層12に浸透すると、これと同時に金属コロイド溶液14に分散されている分散剤も溶媒とともに受容層12に吸収されるため、金属コロイド溶液14の分散破壊が開始される。しかしながら、金属コロイド溶液14中の金属コロイド粒子による導電性を十分に発現させる、すなわち導電性パターンとして十分に低い抵抗に到達させるためには、加熱処理または室温放置において数日間の日数を必要とする。このため、第1の実施形態においては、これらの処理に代えて、導電性発現促進溶媒18を金属コロイド溶液14で形成した導電性パターン部分に塗布する。具体的には、図1(d)に示すように、塗布された金属コロイド溶液14の導電性パターン(導電性金属部16)上に、インクジェット方式により導電性発現促進溶媒18を塗布する。導電性発現促進溶媒18については後述する。
ここで、導電性発現促進溶媒18の塗布量としては、金属コロイド溶液14により形成された導電性金属部16が、パターン崩れを起こさない範囲で、図1(e)に示すようにその全体が導電性発現促進溶媒18と浸漬するように、できるだけ多い方が好ましい。このため、このため、導電性パターン領域に対して、少なくとも1回、好ましくは複数回、導電性発現促進溶媒18を打滴塗布する。なお、金属コロイド溶液14を吐出するインクジェットヘッドの打滴量より大きい打滴量を吐出可能なインクジェットヘッドを、導電性発現促進溶媒18の吐出に用いることが好ましい。また、インクジェット方式に代えて、ディスペンサ方式により導電性発現促進溶媒18を塗布してもよい。これにより、導電性発現促進溶媒18の塗布量を多くすることができる。
なお、導電性発現促進溶媒18の塗布量は多い方が好ましいが、金属コロイド溶液14により形成された導電性パターン領域全面に導電性発現促進溶媒18を塗布した時点において、導電性発現促進溶媒18の表面張力により、導電性パターン領域全面からはみ出すことなく導電性発現促進溶媒18を保持できる量が最適である。ここで、導電性パターン領域全面とは、導電性パターンが形成された領域および導電性パターンの間隔に相当する領域(すなわち受容層12の領域)を意味する。具体的には、例えば図2(a)に示すように導電性金属部16が3列所定間隔にて並んで形成された導電性パターンに導電性発現促進溶媒18を塗布する場合、3つの導電性金属部16の間に存在する受容層12の領域を含む矩形領域が、導電性パターン領域全面となる。この場合、図2(b)に示すように、導電性金属部16の間の受容層12の領域を含む矩形領域内に、導電性発現促進溶媒18を塗布する。なお、図2においては、導電性発現促進溶媒18をグレーで示すものとする。
なお、導電性発現促進溶媒18は、図2(c)に示すように、導電性金属部16の部分にのみ塗布するようにしてもよい。また、図2(d)に示すように、導電性金属部16の領域の内側にのみ導電性発現促進溶媒18を塗布するようにしてもよい。これにより、不要な領域に導電性発現促進溶媒18を塗布することがなくなるため、導電性発現促進溶媒18の使用量を低減することができる。
第1の実施形態においては、インクジェット方式を用いることにより、図2(b)〜図2(d)に示すように、導電性パターン領域(上記の導電性パターン領域全面を含む)にのみ、導電性発現促進溶媒18を塗布することができるため、不要な領域まで導電性発現促進溶媒18を塗布する必要がなくなる。したがって、導電性パターンのひび割れ、剥離、および膨れが誘発されることがなくなり、受容層12の損傷のおそれもなくなる。
以上のように、導電性発現促進溶媒18を塗布した後、必要に応じて乾燥処理を行う。これにより、図1(f)に示すように導電性金属部16による導電性パターンの形成が完了する。乾燥方法としては、常温放置乾燥を行えばよい。導電性発現促進溶媒18を塗布した後は、常温で少なくとも数時間放置すれば導電性が発現するため、導電性発現促進溶媒18を塗布しない場合と比較して、放置時間を短縮できる。
以上の方法により、電子回路基板を製造することができる。
次いで、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は本発明の第2の実施形態による電子回路基板の製造方法の実施形態を概念的に示す図である。
第2の実施形態においては、まず、図3(a)に示すように、基材10の全面に導電性発現促進溶媒18を塗布する。なお、第2の実施形態においては、導電性発現促進溶媒18の塗布は、インクジェット方式またはディスペンサ方式を用いてもよいが、バーコート法等の全面塗布方式を用いることが好ましい。これにより、導電性発現促進溶媒18の塗布工程を簡素化することができるため、電子回路基板の製造コストを低減することができる。
次いで、図3(b)に示すように、導電性発現促進溶媒18が乾燥する前に、基材10の表面にインクジェット方式により、金属コロイド溶液14を導電性パターン状に吐出して塗布する。具体的には、導電性パターンの画像データに基づいて、金属コロイド溶液14をインクジェット方式により吐出して、金属コロイド溶液14を導電性発現促進溶媒18が塗布された基材10の表面に塗布する。
このように金属コロイド溶液14を受容層12の表面にインクジェット方式により吐出すると、吐出直後は図3(b)に示すように、金属コロイド溶液14の液滴が並んだ状態となるが、直ちに図3(c)に示すように、断面が台形状の導電性金属部16となる。
この後、必要に応じて乾燥処理を行う。これにより、図3(d)に示すように導電性金属部16による導電性パターンの形成が完了する。乾燥方法としては、常温放置乾燥を行えばよい。金属コロイド溶液14を塗布した後は、常温で少なくとも数時間放置すれば導電性が発現するため、導電性発現促進溶媒18を塗布しない場合と比較して、放置時間を短縮できる。
なお、上記第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様に基材10に受容層12を形成した後に、導電性発現促進溶媒18を基材10の全面に塗布するようにしてもよい。
また、上記第1および第2の実施形態においては、必要に応じて、導電性金属部16に酸化防止および電子部品実装等を目的にメッキ処理を施して、メッキ被覆部を形成してもよい。
また、上記第1および第2の実施形態においては、必要に応じて、導電性金属部16に導電性パターンの保護、酸化防止および他金属部材との接触による短絡防止等を目的にソルダーレジストによる処理を施してもよい。
また、上記第1の実施形態では、基材10に受容層12を形成しているが、受容層12を形成することなく、基材10に直接金属コロイド溶液14を塗布するようにしてもよい。
また、上記第1および第2の実施形態では、電子回路基板を作製したが、これに限定されず、透明性および電磁波シールド機能(導電性効果)が要求されるPDP用電磁波シールドフィルムを本発明の方法により作製することもできる。
なお、本発明により形成されるPDP用電磁波シールドフィルム(導電性金属部)の表面抵抗値は、10Ω/□以下であることが好ましく、さらにPDP用の透光性電磁波シールド材料に利用する場合は、2.5Ω/□以下、PDPを用いた民生用プラズマテレビに利用する場合は、1.5Ω/□以下であることが好ましく、さらには、0.5Ω/□以下であることが好ましい。
また、PDP用電磁波シールドフィルムに使用される場合、導電性金属部の線幅は20μm以下であることが好ましく、線間隔は50μm以上であることが好ましい。また、導電性金属部は、アース接続等の目的においては、その線幅が20μmより広い部分を有していてもよい。また画像を目立たせなくする観点からは、導電性金属部の線幅は15μm未満であることが好ましく、10μm未満であることがさらに好ましく、7μm未満であることが最も好ましい。
また、PDP用電磁波シールドフィルムに使用される場合、導電性金属部は、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。また、「開口率」とは、メッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅10μm、ピッチ200μmの正方形の格子状メッシュの開口率は90%である。なお、本発明における導電性金属部の開口率についてとくに上限の限定はないが、表面抵抗値および線幅値との関係から、開口率としては、98%以下であることが好ましい。
また、PDP用電磁波シールドフィルムに使用される場合、導電性金属部の厚さは、ディスプレイの電磁波シールド材の用途としては、薄いほどディスプレイの視野角が広がるため好ましい。このような観点から、導電性金属部に担持された導電性金属からなる層の厚さは、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい。
以下、本発明に用いる基材10、受容層12、導電性金属部16および導電性発現促進溶媒18を形成する材料について詳述する。
本発明に用いる基材10については、とくに限定はないが、紙、樹脂フィルム、樹脂基板、シリコン基板、セラミックス基板、およびガラス基板等を用いることができる。また、アルミニウム等の金属基材の表面を絶縁処理したものを用いることもできる。
樹脂フィルムおよび樹脂基板の材質としては、例えば、ポリエステル系(ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系、セルロースエステル系、ポリアリレート系、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン系,ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオネア(以上、日本ゼオン社製))、ポリエーテルスルフォン、ポリスルホン系、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート系、ポリアリレート系、トリアセチルセルロース等を用いることができる。なお、樹脂フィルムおよび樹脂基板は、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
また、電磁波シールドフィルムを製造するための基材10としては、例えば特開2008−66568号公報に例示された、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、ガラス−エポキシ基板、シリコン基板、セラミックス基板、およびガラス基板等を用いることができるが、取り扱い性の観点からシート状の樹脂フィルムを用いることが好ましい。また、電磁波シールドフィルムは高い透明性が要求されることため、電磁波シールドフィルムを製造するための基材としては、透明樹脂フィルムあるいはガラス基板が好ましい。なお、要求される透明性を妨げない程度に着色したものを用いることができる。
この場合、樹脂フィルムの材質としては、とくに限定はないが、上述した各種樹脂を用いることができる。なお、上述した各種樹脂は単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。電磁波シールドフィルムを製造するための基材10としては、透明性、耐熱性、取り扱いやすさおよび経済性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、セルロースエステルフィルムであることが好ましいが、透明性、等方性、接着性等の観点から、セルロースエステルフィルムを用いることがとくに好ましい。
本発明に用いる受容層12は、カチオン変性された自己乳化性高分子、無機微粒子、鹸化度92−98mol%のポリビニルアルコール、水溶性アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、および架橋剤を含む多孔質受容層である。
<カチオン変性された自己乳化性高分子>
本発明の受容層12は、「カチオン変性された自己乳化性高分子」を含む。この「カチオン変性された自己乳化性高分子」とは、乳化剤もしくは界面活性剤を用いることなく、あるいは用いるとしてもごく少量の添加で、水系分散媒体中に自然に安定した乳化分散物となり得る高分子化合物を意味する。定量的には、「カチオン変性された自己乳化性高分子」とは、室温25℃で水系分散媒体に対して0.5質量%以上の濃度で安定して乳化分散性を有する高分子物質を表し、濃度としては1質量%以上であることが好ましく、とくに3質量%以上であることがより好ましい。
「カチオン変性された自己乳化性高分子」は、より具体的には、例えば、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基等のカチオン性の基を有する重付加系もしくは重縮合系高分子化合物が挙げられる。
高分子として有効なビニル重合系ポリマーは、例えば、以下のビニルモノマーを重合して得られるポリマーが挙げられる。すなわち、アクリル酸エステル類やメタクリル酸エステル類(エステル基は置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、2−クロロエチル基、シアノエチル基、2−アセトキシエチル基、テトラヒドロフルフリル基、5−ヒドロキシペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ヒドロキシエチル基、3−メトキシブチル基、2−(2−メトキシエトキシ)エチル基、2,2,2−テトラフルオロエチル基、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル基、フェニル基、2,4,5−テトラメチルフェニル基、4−クロロフェニル基等);
ビニルエステル類、具体的には、置換基を有していてもよい脂肪族カルボン酸ビニルエステル(例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート等)、置換基を有していてもよい芳香族カルボン酸ビニルエステル(例えば、安息香酸ビニル、4−メチル安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル等);
アクリルアミド類、具体的には、アクリルアミド、N−モノ置換アクリルアミド、N−ジ置換アクリルアミド(置換基は置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、シリル基であり、例えば、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、フェニル基、2,4,5−テトラメチルフェニル基、4−クロロフェニル基、トリメチルシリル等);
メタクリルアミド類、具体的には、メタクリルアミド、N−モノ置換メタクリルアミド、N−ジ置換メタクリルアミド(置換基は置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、シリル基であり、例えば、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、フェニル基、2,4,5−テトラメチルフェニル基、4−クロロフェニル基、トリメチルシリル等);
オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン等)、スチレン類(例えば、スチレン、メチルスチレン、イソプロピルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン等)、ビニルエーテル類(例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル等);等が挙げられる。
その他のビニルモノマーとして、クロトン酸エステル、イタコン酸エステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、メチレンマロンニトリル、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
カチオン性基を有するモノマーとしては、例えば、ジアルキルアミノエチルメタクリレート、ジアルキルアミノエチルアクリレート等の3級アミノ基を有するモノマー等が挙げられる。
カチオン変性された自己乳化性高分子に適用可能なポリウレタンとしては、例えば、以下に挙げるジオール化合物とジイソシアネート化合物とを種々組み合わせて、重付加反応により合成されたポリウレタンが挙げられる。
ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子量=200,300,400,600,1000,1500,4000)、ポリプロピレングリコール(平均分子量=200,400,1000)、ポリエステルポリオール、4,4'―ジヒドロキシ−ジフ
ェニル−2,2−プロパン、4,4'―ジヒドロキシフェニルスルホン等が挙げられる。
ジイソシアネート化合物としては、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート,1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート,m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチルビフェ
ニレンジイソシアネート、4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシル
メタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等が挙げられる。
カチオン性基を有すポリウレタンが含有するカチオン性基としては、1級〜3級アミン、4級アンモニウム塩のようなカチオン性基が挙げられる。本発明に用いられるカチオン変性された自己乳化性高分子としては、3級アミンおよび4級アンモニウム塩のようなカチオン性基を有するウレタン樹脂が好ましい。
カチオン性基含有ポリウレタンは、例えば、ポリウレタンの合成の際、上述したようにジオールにカチオン性基を導入したものを使用することによって得られる。また4級アンモニウム塩の場合は、3級アミノ基を含有するポリウレタンを4級化剤で4級化してもよい。
ポリウレタンの合成に使用可能なジオール化合物、ジイソシアネート化合物は、各々1種を単独で使用してもよいし、種々の目的(例えば、ポリマーのガラス転移温度(Tg)の調整や溶解性の向上、金属コロイド溶液14との相溶性付与、分散物の安定性改善等)に応じて、各々2種以上を任意の割合で使用することもできる。
さらに、カチオン変性された自己乳化性高分子に適用可能なポリエステルとしては、例えば、以下に挙げるジオール化合物と、ジカルボン酸化合物とを種々組み合わせて、重縮合反応により合成されたポリエステルが挙げられる。
ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ジメチルマロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、α,α−ジメチルコハク酸、アセトンジカルボン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2−ブチルテレフタル酸、テトラクロロテレフタル酸、アセチレンジカルボン酸、ポリ(エチレンテレフタレート)ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ω−ポリ(エチレンオキシド)ジカルボン酸、p−キシリレンジカルボン酸等が挙げられる。
ジカルボン酸化合物は、ジオール化合物と重縮合反応を行う際には、ジカルボン酸のアルキルエステル(例えば、ジメチルエステル)およびジカルボン酸の酸塩化物の形態で用いてもよいし、無水マレイン酸、無水コハク酸および無水フタル酸のように酸無水物の形態で用いてもよい。
ジオール化合物としては、ポリウレタンにおいて例示したジオール類と同様の化合物を用いることができる。
カチオン性基を有するポリエステルは、1級、2級、3級アミン、4級アンモニウム塩のようなカチオン性基を有するジカルボン酸化合物を用いて合成することにより得られる。
ポリエステルの合成に使用されるジオール化合物、ジカルボン酸類、およびヒドロキシカルボン酸エステル化合物は、各々1種を単独で用いてもよいし、種々の目的(例えば、ポリマーのガラス転移温度(Tg)の調整や溶解性の向上、金属コロイド溶液14との相溶性、分散物の安定性)に応じて、各々2種以上を任意の割合で混合して用いることもできる。
カチオン変性された自己乳化性高分子におけるカチオン性基の含有量は、0.1〜5mmol/gが好ましく、0.2〜3mmol/gがより好ましい。なお、カチオン性基の含量が少なすぎるとポリマーの分散安定性が小さくなり、多すぎるとバインダーとの相溶性が低下してくる。
カチオン変性された自己乳化性高分子としては、3級アミノ基あるいは4級アンモニウム塩基の様なカチオン性基を有するポリマーが好ましく、とくに上述したようにカチオン性基を有するウレタン樹脂(ポリウレタン)が最も好ましい。
自己乳化性高分子を受容層12に用いる場合、とくに重要なのはそのガラス転移温度である。インクジェット方式により導電性パターンを形成した後の、導電性パターンの経時にじみを長期に亘り抑制するためには、自己乳化性高分子のガラス転移温度が50℃未満のものが好ましい。さらに、自己乳化性高分子のガラス転移温度が30℃以下のものがより好ましく、とくにガラス転移温度が15℃以下のものが最も好ましい。ガラス転移温度が50℃以上であると、寸度安定性(カール)が悪化することがある。なお、ガラス転移温度の下限にはとくに制限はないが、通常の用途では−30℃程度であり、これより低いと水分散物を調製する際の製造適性が低下する場合がある。
自己乳化性高分子の質量平均分子量(Mw)としては、通常1000〜200000が好ましく、2000〜50000がより好ましい。分子量が1000未満であると、安定な水分散物となり得るのが難しくなる傾向があり、また分子量が200000を超えると、溶解性が悪くなり液粘度が増加し、水分散物の平均粒子径を小さくする、とくに0.05μm以下に制御することが難しくなる傾向がある。
本発明の受容層12において、自己乳化性高分子の含有量としては、受容層12を構成する全固形分の0.1〜30質量%が好ましく、0.3〜20質量%がより好ましく、とくに0.5〜15質量%が最も好ましくい。含有量が0.1質量%未満であると、経時にじみの改善効果が不十分となる傾向があり、一方、含有量が30質量%を超えると、無機微粒子およびポリビニルアルコール等のバインダー成分の割合が少なくなり、受容層12への金属コロイド溶液14の溶媒吸収性が低下する傾向がある。
次に、自己乳化性高分子の水分散物の調整方法について説明する。
自己乳化性高分子を水系溶媒と混合して、必要に応じて添加剤を混合し、混合液を分散機を用いて細粒化することにより、平均粒子径0.05μm以下の水分散液を得ることができる。水分散液を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルおよびビーズミル等)、超音波分散機、コロイドミル分散機および高圧分散機等、従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行うという観点から、媒体撹拌型分散機、コロイドミル分散機または高圧分散機が好ましい。
高圧分散機(ホモジナイザー)は、米国特許第4533254号明細書、特開平6−47264号公報等に詳細な機構が記載されているが、市販の装置としては、ゴーリンホモジナイザー(A.P.V GAULIN INC.)、マイクロフルイダイザー(MICROFLUIDEX INC.)、アルティマイザー(株式会社スギノマシン)等が使用できる。また、近年になって、米国特許第5720551号明細書に記載されているような、超高圧ジェット流内で微粒子化する機構を備えた高圧ホモジナイザーは、本発明の乳化分散にとくに有効である。この超高圧ジェット流を用いた乳化装置の例として、DeBEE2000(BEE INTERNATIONAL LTD.)が挙げられる。
分散工程における水系溶媒として水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。この分散に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
本発明の自己乳化性高分子は、それ自身で自然に安定した乳化分散物となり得るが、乳化分散をより速やかにもしくはより安定化するために、少量の分散化剤(界面活性剤)を用いてもよい。このような目的に用いる界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。さらに、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使用することができる。
乳化直後の安定化を図る目的で、界面活性剤と併用して水溶性ポリマーを添加することもできる。水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドやこれらの共重合体が好ましく用いられる。また多糖類、カゼイン、ゼラチン等の天然水溶性ポリマーを用いることも好ましい。
乳化分散法により、自己乳化性高分子を水系媒体に分散させる場合、とくに重要なのはその粒子サイズのコントロールである。インクジェット方式により、導電性パターンを形成した際の、金属コロイド純度や金属コロイド濃度を高めるためには、水分散物における自己乳化性高分子の平均粒子径を小さくすることを要する。具体的には、本発明の受容層12には、自己乳化性高分子の体積平均粒子径は、0.05μm以下であることが好ましく、平均粒子径は0.04μm以下がさらに好ましく、0.03μm以下がより好ましい。
<無機微粒子>
本発明の受容層12は、無機微粒子を含有する。無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベーマイト、擬ベーマイト等を挙げることができる。中でも、シリカ微粒子が好ましい。
シリカ微粒子は、比表面積がとくに大きいので、金属コロイド溶液14の溶媒吸収性および保持の効率が高く、また屈折率が低いので、適切な微小粒子径まで分散を行えば受容層12に透明性を付与できるという利点がある。このように受容層12が透明であるということは、PDP用電磁波シールドフィルム等、透明性が必要とされる場合、重要である。
無機微粒子の平均一次粒子径としては、20nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましく、とくに10nm以下が好ましい。平均一次粒子径が20nm以下であると、金属コロイド溶液14の溶媒吸収特性を効果的に向上させることができ、また同時に受容層12表面の平滑性をも高めることができる。
また、無機微粒子のBET法による比表面積は200m2/g以上が好ましく、250m2/g以上がさらに好ましく、380m2/g以上がとくに好ましい。無機微粒子の比表面積が200以上m2/gであると、受容層12の透明性を高く保つことが可能である。
本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の1つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、すなわち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧力、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
とくにシリカ微粒子は、その表面にシラノール基を有し、シラノール基の水素結合により粒子同士が付着し易いため、またシラノール基と水溶性樹脂を介した粒子同士の付着効果のため、上記の様に平均一次粒子径が20nm以下の場合には受容層12の空隙率が大きく、透明性の高い構造を形成することができ、金属コロイド溶液14の溶媒吸収特性を効果的に向上させることができる。
一般にシリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは、当該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を指す。
気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い3次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2と多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2と少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
本発明においては、乾式法で得られる気相法シリカ微粒子(無水シリカ)が好ましく、さらに微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であるシリカ微粒子が好ましい。
本発明に最も好ましく用いられる無機微粒子は、BET法による比表面積が200m2/g以上の気相法シリカである。
<ポリビニルアルコール>
本発明に用いられるポリビニルアルコールは、鹸化度が92〜98mol%のものである(以下「本発明のポリビニルアルコール」と称することがある。)。ポリビニルアルコールの鹸化度が92mol%より低いと、塗布液(受容層材料を含む機能液)の粘度が高く塗布の安定性が低下する。一方、98mol%を超えると、金属コロイド溶液14の溶媒吸収性が低下し好ましくない。より好ましくは、93〜97mol%である。
本発明のポリビニルアルコールの重合度は、1500〜3600が好ましく、より好ましくは、2000〜3500である。重合度が1500より小さいと受容層12のひび割れが起こる。4000より大きいと塗布液(受容層材料を含む機能液)の粘度が高く好ましくない。
本発明においては、本発明のポリビニルアルコール以外の水溶性樹脂をポリビニルアルコールと併用することもできる。併用可能な水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシル基を有する樹脂である、鹸化度が上記範囲以外のポリビニルアルコール(PVA)、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等〕、キチン類、キトサン類、デンプン;親水性のエーテル結合を有する樹脂である、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE);親水性のアミド基またはアミド結合を有する樹脂である、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)等が挙げられる。また、解離性基としてカルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等を挙げることもできる。
本発明のポリビニルアルコールと上述した水溶性樹脂とを併用する場合の本発明のポリビニルアルコールと水溶性樹脂との合計量に対する本発明のポリビニルアルコールの割合は1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がさらに好ましく、6〜12質量%がとくに好ましい。
本発明のポリビニルアルコールの含有量としては、含有量の過少による膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、かつ含有量の過多によって、空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することにより金属コロイド溶液14の溶媒吸収性が低下するのを防止する観点から、受容層12の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
ポリビニルアルコールは、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基とシリカ微粒子表面のシラノール基とが水素結合を形成して、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする3次元網目構造を形成し易くする。このような3次元網目構造の形成によって、空隙率の高い多孔質構造の受容層12を形成し得ると考えられる。
基材10において、上述のようにして形成された多孔質の受容層12は、毛細管現象によって急速に金属コロイド溶液14の溶媒を吸収し、金属コロイド溶液14のにじみのない真円性の良好なドットを形成することができる。
<無機微粒子と本発明のポリビニルアルコールとの含有比>
無機微粒子(好ましくはシリカ微粒子;x)と本発明のポリビニルアルコール(水溶性樹脂を併用する場合には本発明のポリビニルアルコールと水溶性樹脂との合計量)(y)との含有比〔PB比(x/y)、本発明のポリビニルアルコール1質量部に対する無機微粒子の質量〕は、受容層12の膜構造にも大きな影響を与える。すなわち、PB比が大きくなると、空隙率や細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなる。具体的には、PB比(x/y)としては、PB比が大きすぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、かつPB比が小さすぎることによって、空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することにより金属コロイド溶液14の溶媒吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5/1〜10/1が好ましい。
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、受容層12が形成された基材10に応力が加わることがあるため、受容層12は十分な膜強度を有していることが必要である。さらにシート状に裁断加工する場合、受容層12の割れおよび剥がれ等を防止する上でも、受容層12には十分な膜強度が必要である。このような観点より、PB比(x/y)としては5/1以下が好ましく、インクジェットプリンターで金属コロイド溶液14の高速溶媒吸収性をも確保する観点からは、2/1以上であることが好ましい。
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の無水シリカ微粒子と本発明のポリビニルアルコールとをPB比(x/y)が2/1〜5/1で水溶液中に完全に分散した塗布液(受容層材料を含む機能液)を基材10上に塗布し、受容層12を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする3次元網目構造が形成され、平均細孔径が30nm以下、空隙率が50%〜80%、細孔比容積0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上
の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
<架橋剤>
本発明の受容層12は架橋剤を含む。本発明の受容層12は、架橋剤による本発明のポリビニルアルコールおよび必要に応じて用いられる水溶性樹脂の架橋反応によって硬化された多孔質層である態様が好ましい。
架橋剤としては、受容層12に含まれる本発明のポリビニルアルコールおよび必要に応じて用いられる水溶性樹脂との関係で好適なものを適宜選択すればよいが、中でも、架橋反応が迅速である点でホウ素化合物が好ましく、例えば、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩(例えば、オルトホウ酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二ホウ酸塩(例えば、Mg225、Co225)、メタホウ酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四ホウ酸塩(例えば、Na247・10H2O)、五ホウ酸塩(例えば、KB58・4H2O、Ca2611・7H2O、CsB55)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩が好ましく、とくにホウ酸またはホウ酸塩が好ましく、これを水溶性樹脂であるポリビニルアルコールと組み合わせて使用することが最も好ましい。
本発明においては、架橋剤は、本発明のポリビニルアルコール1.0質量部に対して、0.05〜0.50質量部含有されることが好ましく、0.08〜0.30質量部含有されることがより好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲であると、本発明のポリビニルアルコールを効果的に架橋してひび割れ等を防止することができる。
水溶性樹脂としてゼラチンを用いる場合等には、ホウ素化合物以外の下記化合物も架橋剤として用いることができる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N'−エチレンビス(ビニルスル
ホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N'−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミニウム、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子またはポリマー等である。上記の架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<水溶性アルミニウム化合物>
本発明の受容層12は水溶性アルミニウム化合物を含む。水溶性アルミニウム化合物を用いることにより形成された導電性パターンの耐水性および耐経時にじみの向上を図ることができる。また、水酸化アルミニウム化合物を用いることにより、導電性パターンの焼結温度を下げることができる。このメカニズムは定かではないが、水溶性アルミニウム酸化物が、金属コロイド粒子分散剤と相互作用し、分散材の金属コロイド粒子への吸着平衡が崩れ、分散剤が粒子から離脱するためと考えられる。
水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物がある。これらの中でも、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が好ましい。
塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の式1、2または3で示され、例えば〔Al6(OH)153+ 、〔Al8(OH)204+ 、〔Al13(OH)345+ 、〔Al21(OH)603+ 、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
〔Al2(OH)n Cl6-nm 5<m<80 、 1<n<5 式1
〔Al(OH)3nAlCl3 1<n<2 式2
Aln(OH)m Cl(3n-m) 0<m<3n、 5<m<8 式3
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、大明化学(株)よりアルファイン83の名でまた他のメーカーからも同様の目的を持って販売されており、各種グレードのものが容易に入手できる。本発明ではこれらの市販品をそのままでも使用できるが、pHが不適当に低いものもあり、その場合は適宜pHを調節して用いることも可能である。
本発明の受容層12において、水溶性アルミニウム化合物の含有量としては、受容層12を構成する全固形分の0.1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、とくに2〜15質量%が最も好ましい。水溶性アルミニウム化合物の含有量が2〜15質量%の範囲にあると平滑性が向上し、また焼結温度低減の効果が得られる。
<ジルコニウム化合物>
本発明の受容層12はジルコニウム化合物を含む。ジルコニウム化合物を用いることにより耐水性向上効果が得られる。
本発明に用いられるジルコニウム化合物としては、とくに限定されず、種々の化合物が使用できるが、例えば、酢酸ジルコニル、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。とくに酢酸ジルコニルが好ましい。
本発明の受容層12において、ジルコニウム化合物の含有量としては、受容層12を構成する全固形分の0.05〜5.0質量%が好ましく、0.1〜3.0質量%がより好ましく、とくに0.5〜2.0質量%が最も好ましくい。ジルコニウム化合物の含有量が0.5〜2.0質量%の範囲にあると金属コロイド溶液14の溶媒吸収性を低下させることなく耐水性を向上させることが可能である。
本発明においては、上述した水溶性アルミニウム化合物およびジルコニウム化合物以外のその他の水溶性多価金属化合物を併用することもできる。その他の水溶性多価金属化合物としては、例えば、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。
具体的には、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、リンタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリン酸n水和物、12タングストケイ酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリン酸n水和物等が挙げられる。
<他の成分>
本発明の受容層12は、必要に応じて下記成分を含有させて構成される。
紫外線吸収剤としては、桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾリルフェノール誘導体等が挙げられる。例えば、α−シアノ−フェニル桂皮酸ブチル、o−ベンゾトリアゾールフェノール、o−ベンゾトリアゾール−p−クロロフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−ブチルフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−オクチルフェノール等が挙げられる。ヒンダートフェノール化合物も紫外
線吸収剤として使用でき、具体的には少なくとも2位または6位のうち、1ヵ所以上が分岐アルキル基で置換されたフェノール誘導体が好ましい。
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤等も使用できる。例えば、特開昭47−10537号公報、同58−111942号公報、同58−212844号公報、同59−19945号公報、同59−46646号公報、同59−109055号公報、同63−53544号公報、特公昭36−10466号公報、同42−26187号公報、同48−30492号公報、同48−31255号公報、同48−41572号公報、同48−54965号公報、同50−10726号公報、米国特許第2,719,086号明細書、同3,707,375号明細書、同3,754,919号明細書、同4,220,711号明細書等に記載されている。
蛍光増白剤も紫外線吸収剤として使用でき、例えば、クマリン系蛍光増白剤等が挙げられる。具体的には、特公昭45−4699号公報、同54−5324号公報等に記載されている。
酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同309402号公報、同310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同62−262047号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同66−88381号公報、同63−113536号公報;
同63−163351号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、特開平2−262654号公報、同2−71262号公報、同3−121449号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−61166号公報、同5−119449号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−1108437号公報、同5−170361号公報、特公昭48−43295号公報、同48−33212号公報、米国特許第4814262号、同第4980275号公報等に記載のものが挙げられる。
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4,−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
これら酸化防止剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。酸化防止剤は、水溶性化、分散、エマルション化してもよく、マイクロカプセル中に含ませることもできる。酸化防止剤の添加量としては、受容層形成液の0.01〜10質量%が好ましい。
本発明において、受容層12はカール防止用に高沸点有機溶剤を含有するのが好ましい。高沸点有機溶剤としては、水溶性のものが好ましく、水溶性の高沸点有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール(重量平均分子量が400以下)等のアルコール類が挙げられる。好ましくは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)である。
高沸点有機溶剤の受容層形成液中における含有量としては、0.05〜1質量%が好ましく、とくに好ましくは0.1〜0.6質量%である。
また、無機微粒子の分散性を高める目的で、各種無機塩類、pH調整剤として酸やアルカリ等を含んでいてもよい。
さらに、表面の摩擦帯電や剥離帯電を抑制する目的で、電子導電性を持つ金属酸化物微粒子を、表面の摩擦特性を低減する目的で各種のマット剤を、プリント配線板としての電気特性を損なわない範囲で含んでいてもよい。
ここで、受容層材料を用いた受容層12の形成方法を、さらに詳細に説明する。
本発明における受容層12の形成方法としては、無機微粒子とジルコニウム化合物とを高圧分散機を用いて対向衝突させて、またはオリフィスを通過させて分散することにより分散液を準備する工程と、分散液にカチオン変性された自己乳化性高分子と鹸化度が92〜98mol%のポリビニルアルコールと架橋剤とを添加して受容層形成液を準備する工程と、受容層形成液に水溶性アルミニウム化合物をインライン混合して得られた塗布液(受容層材料を含む機能液)を基材10上に塗布して受容層12を形成する工程とを少なくとも有する方法が例示される。
また、別の形成方法として、無機微粒子とジルコニウム化合物と架橋剤とを高圧分散機を用いて、対向衝突させて、または、オリフィスを通過させて分散することにより分散液を準備する工程と、分散液にカチオン変性された自己乳化性高分子と鹸化度が92〜98mol%のポリビニルアルコールとを添加して受容層形成液を準備する工程と、受容層形成液に水溶性アルミニウム化合物をインライン混合して得られた塗布液(受容層材料を含む機能液)を基材10上に塗布して受容層12を形成する工程とを少なくとも有する方法も例示される。
上記形成方法であれば、無機微粒子およびジルコニウム化合物または無機微粒子、ジルコニウム化合物および架橋剤を、高圧分散機を用いて対向衝突させて、または、オリフィスを通過させて分散することにより得られる分散液は、無機微粒子の粒子径が細かい点で優れる。
無機微粒子およびジルコニウム化合物または無機微粒子、ジルコニウム化合物および架橋剤はこれらを含む分散液(予分散液)の状態で高圧分散機に供せられる。予備混合(予分散)は、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で行うことができる。
分散液の準備に用いられる高圧分散機としては、一般に、高圧ホモジナイザーと呼ばれている市販の装置が好適に使用できる。
高圧ホモジナイザーの代表例としては、ナノマイザー製の商品名;ナノマイザー、マイクロフルイディクス製の商品名;マイクロフルイダイザー、およびスギノマシン製のアルティマイザー等を挙げることができる。
なお、オリフィスとは、円形等の微細な孔を持つ薄板(オリフィス板)を直管内に挿入し、直管の流路を急激に絞る機構をいう。
高圧ホモジナイザーは、基本的には、原料スラリー等を加圧する高圧発生部と、対向衝突部あるいはオリフィス部とからなる装置である。高圧発生部としては、一般にプランジャーポンプと呼ばれている高圧ポンプが好適に採用される。高圧ポンプには、一連式、二連式、三連式等の各種の形式があるが、いずれの形式もとくに制限なく本発明において採用できる。
高圧で対向衝突させる場合における処理圧力は50MPa以上、100MPa以上が好ましく、さらに130MPa以上が好ましい。
また、オリフィスを通過させる場合におけるオリフィスの入口側と出口側の差圧も、処理圧力と同様に、50MPa以上、好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは130MPa以上が望ましい。
対向衝突させる場合の予分散液の衝突速度は、相対速度として50m/秒以上が好ましく、100m/秒以上がより好ましく、150m/秒以上が好ましい。
オリフィスを通過する際の溶媒の線速度は、用いるオリフィスの孔径にも依存するため一概には決められないが、対向衝突の際の衝突速度と同様に50m/秒以上が好ましく、100m/秒以上がより好ましく、150m/秒以上が好ましい。
いずれの方法においても、分散効率は処理圧力に依存するため、処理圧力が高いほど分散効率も高くなる。ただし、処理圧力が350MPaを越えると高圧ポンプの配管等の耐圧性や装置の耐久性に問題が発生し易い。
上述したいずれの方法においても、処理回数はとくに制限されず、通常は、1〜数十回の範囲から適宜選択される。これにより分散液を得ることができる。
この分散液を調製する際には、各種の添加剤を添加することができる。
添加剤としては、例えば、ノニオン性またはカチオン性の各種の界面活性剤(アニオン性界面活性剤は凝集物を形成するために好ましくない)、消泡剤、ノニオン性の親水性ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、各種の糖類、ゼラチン、プルラン等)、ノニオン性またはカチオン性のラテックス分散液、水混和性有機溶媒(酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、アセトン等)、無機塩類、pH調整剤等が挙げられ、これらは必要に応じて適宜使用することができる。
とくに、水混和性有機溶媒は、無機微粒子(シリカ)等を予備分散した際の微小なダマの形成が抑制される点で好ましい。水混和性有機溶媒は、分散液中に0.1〜20質量%、とくに好ましくは0.5〜10質量%使用される。
無機微粒子(気相法シリカ)分散液を調製する際のpHは、無機微粒子(気相法シリカ)の種類や各種の添加剤等により広範に変化し得るが、一般的にはpHが1〜8であり、とくに2〜7が好ましい。また、上記の分散には2種以上の添加剤を併用することも可能である。
本発明における受容層12の形成方法においては、上述の方法により得られた分散液にカチオン変性された自己乳化性高分子、本発明のポリビニルアルコール等が添加されて受容層形成液が得られる。上述の分散液とカチオン変性された自己乳化性高分子、本発明のポリビニルアルコール等との混合は通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で行うことができる。
本発明における受容層12の形成方法において、受容層形成液に水溶性アルミニウム化合物をインライン混合させる際に用いられる好ましいインライン混合機は、特開2002−85948号公報等に記載されているがこれに限定されるものではない。
本発明における受容層12の形成方法は、受容層形成液に水溶性アルミニウム化合物をインライン混合して得られた塗布液(受容層材料を含む機能液)を基材上に塗布して形成された受容層12に、(1)塗布液(受容層材料を含む機能液)を塗布すると同時、(2)受容層12の乾燥途中であって受容層12が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pHが7.1以上の塩基性溶液を付与し、受容層12の架橋硬化を行う工程をさらに有してもよい。
このようにして架橋硬化させた受容層12を設けることは、金属コロイド溶液14の溶媒吸収性や膜のひび割れ防止等の観点から好ましい。
本発明における受容層12の形成方法において、各工程における溶媒として水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
受容層形成液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター、インクジェット等の公知の塗布方法によって行うことができる。
受容層形成液の塗布と同時、または受容層形成液を塗布して形成された受容層12の乾燥途中であって受容層12が減率乾燥を示す前に、受容層12にpHが7.1以上の塩基性溶液が付与される。すなわち、受容層形成液の塗布後、この受容層12が恒率乾燥速度を示す間にpHが7.1以上の塩基性溶液を導入することにより好適に製造される。
pHが7.1以上の塩基性溶液は、必要に応じて架橋剤等を含有することができる。pHが7.1以上の塩基性溶液は、アルカリ溶液として用いることにより硬膜を促進でき、好ましくはpH7.5以上であり、とくに好ましくはpH7.9以上である。pHが酸性側に近すぎると、架橋剤によって受容層形成液に含まれるポリビニルアルコールの架橋反応が十分に行われず、ブロンジングの発生や、受容層12にひび割れ等の欠陥を来すことがある。
pHが7.1以上の塩基性溶液は、例えば、イオン交換水に、金属化合物(例えば1〜5%)および塩基性化合物(例えば1〜5%)と、必要に応じてパラトルエンスルホン酸(例えば0.5〜3%)とを添加し、十分に撹拌することにより調製することができる。なお、各組成物の「%」はいずれも固形分質量%を意味する。
ここで、「受容層12が減率乾燥速度を示すようになる前」とは、通常、塗布液(受容層材料を含む機能液)の塗布直後から数分間の過程を指し、この間においては、塗布された受容層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥速度」の現象を示す。この「恒率乾燥速度」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
上述した通り、受容層形成液の塗布後、受容層12が減率乾燥速度を示すようになるまで乾燥されるが、この乾燥は一般に40〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行われる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが、通常は上述したが適当である。
上述した通り、受容層形成液の塗布後、受容層12が減率乾燥速度を示すようになるまで乾燥されるが、この乾燥は一般に40〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行われる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが、通常は上述した範囲が適当である。
次に、導電性金属部16を形成する金属コロイド溶液14について以下に詳述する。
本発明の金属コロイド溶液14は、金属コロイド粒子が分散剤の存在により安定化してコロイド溶液となっているものであれば、とくに限定されない。
金属コロイド溶液14に含まれる金属コロイド粒子は、高分子分散剤の存在下で金属化合物を還元して得られたものであることが好ましい。金属コロイド粒子は、高分子分散剤により、高濃度でも安定に金属コロイド粒子溶液の状態を保つことができる。この金属コロイド粒子中の金属濃度は、高いほど好ましく、93質量%以上、さらには95質量%以上が好ましい。
金属コロイド粒子中の金属濃度とは、金属コロイド粒子溶液の固形分中に占める金属の質量%を意味する。固形分量については140℃で加熱した加熱残分量を、また、金属量については500℃で加熱した加熱残分量をそれぞれ測定して求めることができる。具体的には、TG−DTAを用いて、140℃まで10℃/分で昇温した後、30分間、140℃を維持して、まず固形分量を求める。その後、500℃まで再び10℃/分で昇温した後、30分間、500℃を維持して金属量を求める。本明細書における金属濃度の測定は、とくに断りのない限り、この方法を用いて行ったものである。
金属コロイド粒子の原料となる金属化合物は、溶媒に溶解することにより金属イオンを生じるものであり、このイオンが還元されて金属コロイド粒子が析出する。金属コロイド粒子を形成する金属としてとくに限定はないが、導電性を得る目的から貴金属または銅が好ましい。貴金属としてはとくに限定されず、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができる。中でも、金、銀、白金、パラジウムが好ましく、優れた導電性の点からとくに銀が好ましい。
金属化合物としては上述の貴金属や銅を含むものであればとくに限定されず、例えば、テトラクロロ金(III)酸四水和物(塩化金酸)、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(塩化白金酸)、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)二水和物、酢酸銅(II)一水和物、硫酸銅(II)、塩化パラジウム(II)二水和物、三塩化ロジウム(III)三水和物等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
金属化合物は、溶媒中の金属モル濃度が0.01mol/l以上となるように用いられることが好ましい。0.01mol/l未満であると、得られる金属コロイド粒子溶液の金属モル濃度が低すぎて、効率的でない。好ましくは0.05mol/l以上、より好ましくは0.1mol/l以上である。
溶媒としては金属化合物を溶解することができるものであればとくに限定されず、例えば、水、有機溶媒等を挙げることができる。有機溶媒等としてはとくに限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼン等の炭化水素系化合物;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン等のエーテル系化合物;プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン等の極性化合物;テルピネオール、ミネラルスピリット、キシレン、トルエン、テトラデカン、ドデカン等、炭素数十以上の第1級アルコール類である1−デカノール等の無極性あるいは低極性化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。溶媒が水と有機溶媒との混合物である場合には、有機溶媒としては水可溶性のものが好ましく、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコール等が挙げられる。後の濃縮工程で行う限外濾過処理に適する点から、水、アルコール並びに水およびアルコールの混合溶液が好ましい。また、溶媒は、室温付近では容易に蒸散することのない、比較的高沸点を示すものを用いることが好ましい。
なお、金属コロイド溶液14の溶媒としては、導電性発現促進溶媒18とのSP値(溶解パラメータ[Solubility Parameter])の差、または極性の相違を考慮して決定すればよい。金属コロイド溶液14の溶媒および導電性発現促進溶媒18の決定については後述する。
一方、高分子分散剤としては、高分子量の重合体に金属コロイド粒子表面に対する親和性の高い官能基が導入されているとともに、溶媒和部分を含む構造を有する両親媒性の共重合体を用いることが好ましい。
このような高分子分散剤は、通常、ペーストの製造時に分散剤として使用されているものであり、一般的な数平均分子量は1000〜100万である。数平均分子量が1000未満であると、分散安定性が十分でないことがあり、100万を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となる場合がある。数平均分子量のより好ましい値は2000〜50万であり、さらに好ましくは、4000〜50万である。
高分子分散剤としては上述の性質を有するものであればとくに限定されず、例えば、特開平11−80647号公報に例示したものを挙げることができる。高分子分散剤としては、種々のものが利用できるが、市販されているものを使用することもできる。市販品としては、例えば、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース41090(以上、アビシア社製)、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック181、ディスパービック182、ディスパービック−183、ディスパービック184、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192、ディスパービック−2000、ディスパービック−2001(以上、ビックケミー社製)、ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453、EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49、EFKA−1501、EFKA−1502、EFKA−4540、EFKA−4550(以上、EFKAケミカル社製)、フローレンDOPA−158、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンG−700、フローレンTG−720W、フローレン−730W、フローレン−740W、フローレン−745W、(以上、共栄社化学社製)、アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB811、アジスパーPB821、アジスパーPW911(以上、味の素社製)、ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル62(以上、ジョンソンポリマー社製)等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
高分子分散剤の使用量は、金属化合物中の金属と高分子分散剤との合計量に対して10質量%以下であることが好ましい。10質量%を超えると、後に限外濾過処理を行う場合、溶液における固形分中の金属濃度を所望の濃度に高めることができないおそれがある。より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下である。
金属化合物の還元は、還元性化合物を用いて行うことができる。還元性化合物としては、アミンが好ましく、例えば、金属化合物および高分子分散剤の溶液にアミンを添加して撹拌、混合することによって、金属イオンが常温付近で金属に還元される。アミンを使用すれば、危険性や有害性の高い還元剤を使用する必要がなく、加熱や特別な光照射装置を使用することなしに、5〜100℃程度、好ましくは20〜80℃程度の反応温度で、金属化合物を還元することができる。
アミンとしてはとくに限定されず、例えば、特開平11−80647号公報に例示されているものを使用することができ、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N′−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等の脂環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン;ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルキシリレンジアミン等のアラルキルアミン等を挙げることができる。また、アミンとして、例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミンも挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、アルカノールアミンが好ましく、ジメチルアミノエタノールがより好ましい。
アミンの他に、還元剤として知られる水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩、ヒドラジン化合物、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、ギ酸、ホルムアルデヒド、亜ニチオン酸塩、スルホキシル酸塩誘導体等を使用することができる。入手容易なことから、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸が好ましい。これらは、単独またはアミンと組み合わせて使用することが可能であるが、アミンとクエン酸、酒石酸、アスコルビン酸を組み合わせる場合、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸はそれぞれ塩の形のものを用いることが好ましい。また、クエン酸やスルホキシル酸塩誘導体は、鉄(II)イオンと併用することによって、還元性の向上を図ることができる。
還元性化合物の添加量は、金属化合物中の金属を還元するのに必要な量以上であることが好ましい。この量未満であると、還元が不十分となるおそれがある。また、上限はとくに規定されないが、金属化合物中の金属を還元するのに必要な量の30倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましい。また、これらの還元性化合物の添加により化学的に還元する方法以外に、高圧水銀灯を用いて光照射する方法も使用することも可能である。
還元性化合物を添加する方法としてはとくに限定されず、例えば、高分子分散剤の添加後に行うことができ、この場合は、例えば、まず溶媒に高分子分散剤を溶解させ、さらに、還元性化合物または金属化合物のいずれかを溶解させて得られる溶液に、還元性化合物または金属化合物の残った方を加えることにより、還元を進行させることができる。還元性化合物を添加する別の方法として、先に高分子分散剤と還元性化合物とを混合しておき、この混合物を金属化合物の溶液に加える形態をとってもよい。
還元により、平均粒子径が約5nm〜100nmである金属コロイド粒子を含む溶液が得られる。この溶液は、金属コロイド粒子および上述の高分子分散剤を含むものである。本発明において金属コロイド粒子溶液とは、金属の微粒子が溶媒中に分散しており、溶液として視認できるような状態にあるものと定義する。製造工程で得られる金属コロイド粒子溶液の金属濃度は、上述したようにTG−DTA等で測定して決定することができるが、測定を行わない場合には、仕込みに用いた配合量から計算される値を用いることもできる。
次に、還元後の溶液に対して限外濾過処理を行うことができる。還元後の金属コロイド粒子溶液中には、金属コロイド粒子および高分子分散剤の他に、原料に由来する塩化物イオン等の雑イオン、還元で生じた塩やアミン等の不純物が含まれる。これら不純物は、金属コロイド溶液14の安定性に悪影響を及ぼすおそれがあるので除去しておくことが望ましい。この除去手段としては電気透析、遠心分離、限外濾過等があるが、とくに限外濾過は、不純物の除去と同時に、高分子分散剤の一部を除去することによる濃縮も実施でき、金属濃度を高めることができる。
限外濾過処理前の、金属コロイド溶液14に含まれる金属コロイド粒子および高分子分散剤からなる固形分は、質量基準で0.05〜50%であることが好ましい。この固形分量が0.05%未満であると、金属モル濃度が低すぎて効率的な限外濾過ができず、50%を超えると不純物の除去が困難となる場合がある。
限外濾過は、通常、分離対象となる物質の径が1nm〜5μmである。上記径を対象とすることにより、不純物とともに、高分子分散剤の一部を除去し、得られる金属コロイド粒子の金属濃度を高めることができる。上記径が1nm未満であると、不純物等の不要な成分が濾過膜を通過せず排除できないことがあり、5μmを超えると、金属コロイド粒子の多くが濾過膜を通過し、高濃度の金属コロイド粒子が得られない場合がある。
限外濾過の濾過膜としてはとくに限定されないが、通常、例えば、ポリアクリロニトリル、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂製のものが用いられる。これらのうち、ポリアクリロニトリル、ポリサルフォンが好ましく、ポリアクリロニトリルがより好ましい。限外濾過の濾過膜は、また、限外濾過終了後に通常行われる濾過膜の洗浄を効率よく行う点から、逆洗浄が可能な濾過膜を用いることが好ましい。
限外濾過の濾過膜としては、分画分子量が3000〜80000のものが好ましい。分画分子量が3000未満であると、不要な高分子分散剤等が十分に除去されにくく、80000を超えると、濾過膜を通過し易くなるため、目的とする金属コロイド粒子が得られない場合がある。分画分子量のより好ましい値は、10000〜60000である。分画分子量とは、一般的に、高分子溶液を限外濾過膜に通す場合に限外濾過膜の孔内を通過して外に排除される高分子の分子量を意味し、濾過膜の孔径を評価するために用いられる。分画分子量が大きな値を示す程、濾過膜の孔径は大きい。
限外濾過の濾過モジュールの形態としてはとくに限定されず、例えば、濾過膜の形態によって中空糸型モジュール(キャピラリーモジュールとも呼ばれる)、スパイラルモジュール、チューブラーモジュール、プレート型モジュール等が挙げられ、いずれも本発明に好適に用いられる。これらのうち、効率の点から、濾過面積は大きく形態はコンパクトな点から中空糸型モジュールが好ましい。なお、処理を行う金属コロイド粒子溶液の量が多い場合には、使用する限界濾過膜本数が多いものを使うことが好ましい。
限外濾過の方法としてはとくに限定されず、従来公知の方法により、金属化合物を還元して得られた金属コロイド粒子溶液を限外濾過膜に通す。これにより上述の不純物や高分子分散剤を含む濾液が排除される。なお限外濾過は、通常、濾液の雑イオンが所望の濃度以下に除去されるまで繰り返し行う。その際、処理する金属コロイド粒子溶液の濃度を一定にするために排除された濾液の量と同じ量の溶剤を加えることが好ましい。このときに加える溶剤として、還元時に用いていたものと異なる種類のものを用いることにより、金属コロイド粒子溶液の溶剤を置換することが可能である。
限外濾過は、通常の操作、例えば、いわゆるバッチ方式で行うことができる。このバッチ方式は、限外濾過が進んだ分、処理対象である金属コロイド粒子溶液を加えていく方法である。なお、限外濾過は、雑イオンが所望の濃以下に除去された後で、固形分濃度を高めるためにさらに行うことも可能である。
このようにして得られた金属コロイド粒子溶液は、インクジェット方式に適した形態に調整されて金属コロイド溶液14となる。通常、粘度調整、分散性の向上、受容層12への浸透性向上あるいはノズルの乾燥防止を目的として、グリセリン、マルチトール、カルボキシメチルセルロース等の水溶性樹脂、エチレングリコール、界面活性剤、pH調整剤、キレート剤、結合剤、表面張力調整剤、可塑剤等を加えられる。さらに、必要に応じて、防カビ剤、防腐剤、保湿剤、蒸発促進剤、消泡剤、酸化防止剤、光安定剤、劣化防止剤、酸素吸収剤、防錆剤等を加えることもできる。
金属コロイド溶液14における金属含有量は2〜50重量%、調整に用いられた成分の含有量は0.3〜30重量%、粘度は3〜30センチポイズに設定することができる。
金属コロイド溶液14は、液相還元法の実施例を示したが、本発明はこれに限定されず、いわゆる気相法により製造される金属コロイド溶液14を用いてもよい。例えば、ハリマ化成(株)より、NPS−Jの名で市販されているものを好適に用いることができる。
次に、導電性発現促進溶媒18について以下に詳述する。導電性発現促進溶媒18としては、金属コロイド溶液14の溶媒と異なり、かつ相溶性を有するものであればとくに限定されない。例えば、金属コロイド溶液14の溶媒と同様に、水、有機溶媒等を挙げることができる。有機溶媒等として上述した金属コロイド溶液14の溶媒と同様の各種化合物を用いることができる。
なお、本発明においては、金属コロイド溶液14の溶媒のSP値(溶解パラメータ[Solubility Parameter])と導電性発現促進溶媒18のSP値との差が、常温25℃において、1以上15以下であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましい。常温25℃における各種溶媒のSP値の例を図4に示す。図4に示す各種溶媒のSP値を参照し、SP値の差が、常温25℃において1以上15以下、より好ましくは2以上10以下となるように、金属コロイド溶液14の溶媒および導電性発現促進溶媒18を適宜選択すればよい。例えば、金属コロイド溶液14としてハリマ化成(株)製NPS−Jを用いた場合、溶媒はテトラデカン(SP値6〜9)であるため、導電性発現促進溶媒18としてエタノール(SP値12.7)を用いればよい。
また、本発明においては、金属コロイド溶液14の溶媒と導電性発現促進溶媒18との極性を異なるものとしてもよい。例えば、金属コロイド溶液14の溶媒として、常温25℃での比誘電率が5以下の無極性溶媒に分類される溶媒を用いた場合には、導電性発現促進溶媒18として、常温25℃での比誘電率が15を越える極性溶媒に分類される溶媒を用いることが好ましい。さらに、金属コロイド溶液14の溶媒として、常温25℃での比誘電率が3以下の無極性溶媒に分類される溶媒を用いた場合には、導電性発現促進溶媒18として、常温25℃での比誘電率が20を越える極性溶媒に分類される溶媒を用いることがより好ましい。
逆に金属コロイド溶液14の溶媒として、常温25℃での比誘電率が15を超える極性溶媒に分類される溶媒を用いた場合には、導電性発現促進溶媒18として、常温25℃での比誘電率が5以下の無極性溶媒に分類される溶媒を用いることが好ましい。さらに、金属コロイド溶液14の溶媒として、常温25℃での比誘電率が20を超える極性溶媒に分類される溶媒を用いた場合には、導電性発現促進溶媒18として、常温25℃での比誘電率が3以下の無極性溶媒に分類される溶媒を用いることがより好ましい。
常温25℃における各種溶媒の沸点および比誘電率の例を図5に示す。図5に示す各種溶媒の比誘電率を参照し、金属コロイド溶液14の溶媒と導電性発現促進溶媒18との極性が異なるように、金属コロイド溶液14の溶媒および導電性発現促進溶媒18を選択すればよい。例えば、金属コロイド溶液14としてハリマ化成(株)製NPS−Jを用いた場合、溶媒はテトラデカン(比誘電率6〜9)であるため、導電性発現促進溶媒18としてエタノール(SP値12.7)を用いればよい。
このように、金属コロイド溶液14の溶媒および導電性発現促進溶媒18を、極性が異なるものとなるように適宜選択することにより、金属コロイド粒子の凝集を促進することができる。
なお、導電性発現促進溶媒18としては、図5を参照して高沸点の溶媒を用いたり、高沸点の溶媒を他の溶媒と混合することにより、第2の実施形態において、基材10の全面に導電性発現促進溶媒18を塗布した場合に、導電性発現促進溶媒18の乾燥を抑制し、金属コロイド粒子の凝集に要する時間を増加させることができる。したがって、形成された導電性パターンの抵抗をより小さくすることができる。
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明の電子回路基板製造方法について詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
以下、本発明の実施例として電子回路基板を製造し、その評価を行った結果を示す。本評価においては、富士フイルム(株)製のインクジェット専用紙「画彩」に受容層12を形成し、溶媒としてハリマ化成(株)製NPS−J(溶媒はテトラデカン)を用いた金属コロイド溶液14により導電性パターンを形成し、その後形成した導電性パターンに導電性発現促進溶媒18としてエタノールをディスペンサ方式により塗布した。そして、導電性発現促進溶媒18を塗布してから6時間後および7日後の表面抵抗値を、三菱化学(株)製Loresta-GPにより測定した。なお、比較例は、金属コロイド溶液14により導電性パターンを形成した後、導電性発現促進溶媒18の塗布を行わなかったものである。
本発明の実施例においては、導電性発現促進溶媒18の塗布後、6数時間に表面抵抗値が7.1E+6Ω/□であったのに対し、比較例では表面抵抗値は無限大であった。また、7日後においては、本発明の実施例においては4.2E−1Ω/□であったのに対し、比較例では1.2E+1Ω/□であった。
このように、本発明により、導電性発現促進溶媒18を塗布した後は、常温で少なくとも数時間放置すれば導電性が発現するため、導電性発現促進溶媒18を塗布しない場合と比較して、放置時間を短縮できることが分かった。
10 基材
12 受容層
14 金属コロイド溶液
16 導電性金属
18 導電性発現促進溶媒

Claims (10)

  1. 基材上に金属コロイド溶液をインクジェット方式により塗布して、電子回路基板の導電性パターンを形成するパターン形成工程と、
    少なくとも前記導電性パターン上に、前記金属コロイド溶液の溶媒と相溶性を有する導電性発現促進溶媒をデポジション方式により塗布する溶媒塗布工程とを備えたことを特徴とする電子回路基板製造方法。
  2. 前記導電性発現促進溶媒の塗布量が、前記金属コロイド溶液の塗布量より多いことを特徴とする請求項1記載の電子回路基板製造方法。
  3. 前記導電性発現促進溶媒の塗布面積が、前記金属コロイド溶液の塗布面積以下であることを特徴とする請求項1または2記載の電子回路基板製造方法。
  4. 基材上に金属コロイド溶液をインクジェット方式により塗布して、電子回路基板の導電性パターンを形成するに際し、
    前記基材の全面に、前記金属コロイド溶液の溶媒と相溶性を有する導電性発現促進溶媒を塗布する溶媒塗布工程と、
    前記導電性発現促進溶媒が乾燥する前に、前記導電性発現促進溶媒上に前記金属コロイド溶液により前記導電性パターンを形成するパターン形成工程とを備えたことを特徴とする電子回路基板製造方法。
  5. 前記導電性発現促進溶媒が高沸点溶媒であることを特徴とする請求項4記載の電子回路基板製造方法。
  6. 前記金属コロイド溶液の溶媒と前記導電性発現促進溶媒とのSP値の差が、1以上15以下であること特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の電子回路基板製造方法。
  7. 前記金属コロイド溶液の溶媒と前記導電性発現促進溶媒との極性が異なることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の電子回路基板製造方法。
  8. 前記金属コロイド溶液の溶媒の比誘電率が5以下であり、前記導電性発現促進溶媒の比誘電率が15を超えることを特徴とする請求項7記載の電子回路基板製造方法。
  9. 前記金属コロイド溶液の溶媒の比誘電率が15を超え、前記導電性発現促進溶媒の比誘電率が5以下であることを特徴とする請求項7記載の電子回路基板製造方法。
  10. 前記基材が、その表面に多孔質型受容層が形成された受容層付基材であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の電子回路基板製造方法。
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