JP2010225551A - Hモード型ドリフトチューブ線形加速器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Hモード型ドリフトチューブ線形加速器において、ドリフトチューブ電極2a〜2eは、外径側と内径側の角部にR面取りを施し、外径側のR面取りを内径側のR面取りよりも大きな曲率半径とし、ギャップにおける電界分布が中央部より両側にピークを有する2山形状になることに起因するドリフトチューブ電極の表面電界強度の増加を低減するために、2山形状の電界分布が発生するギャップを形成するドリフトチューブ電極2d,2eには、内径側のR面取りの終端部と前記外径側のR面取りの終端部とが滑らかにつながったドリフトチューブ肉厚部を形成した。
【選択図】図1
Description
運転周波数は共振器の共振周波数であり、全ての加速電界を完全に同位相で変化させるためには、セル長Lは、一般的には共振周波数に対応した波長の半整数倍に比例した値であることが必要である。セル長Lと共振周波数の関係を式(1)に示す。但し、ギャップでの粒子速度の変化分は無視し、その平均値をβsとする。λは共振周波数での波長であ
る。
但し、式(2)で、Lはセル長,qは価数,gはギャップ長,Egはギャップに発生する平均電界強度,φSは同期位相,Tはトランジットタイムファクターと呼ばれる荷電粒子がギャップを通過する間に、高周波電圧の位相が変化する効果を表す因子である。
容すると最大電界が放電防止の観点から制限されるので、他の箇所の平均電界強度が低くなってしまい、その結果加速エネルギーが全体として低下し、加速効率が悪化する。これを防止するためには平均電界強度をできるだけ均一にするのがよい。
平均電界強度が均一でもギャップ長が変化すれば両者の積で決まる電圧も変化するので、加速エネルギーに応じてギャップ長を増加させる傾斜型電圧分布を採用すれば、出射側でも加速エネルギー増加を高く維持でき、効率よく粒子を加速することができる。この場合、セル長とギャップ長は比例の関係となる。
しかしながら、実際に問題となるドリフトチューブ電極での放電は、Egだけではなくドリフトチューブ電極での表面電界強度に依存するため、放電を防止するためにはドリフトチューブ電極形状と発生電圧とを2次元静電界解析等により検証する必要がある。
また、ドリフトチューブ間に発生する加速電界に寄与しない電界を削減するため、ドリフトチューブ端部での肉厚を縮小させ、断面形状を等脚台形に近い形状として、加速電界が発生するドリフトチューブ面を小さくしたドリフトチューブ型ライナックが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
を上記のようにすることで、入射部の最初の数個のギャップ電圧を上げるようにしたものであり、また、特許文献2に示すドリフトチューブ型ライナックは、上記のような形状を採用して、加速電界の形成に寄与しない電界を減らして、電力効率の向上を図ったものである。いずれも、電極端部での放電を防止するために電極端部にはR面取り加工が施されているものの、積極的に表面電界強度を下げるような配慮はなされていない。
このようなHモード型ドリフトチューブ線形加速器にあっては、セル長、及びギャップ長が荷電粒子のエネルギーに応じて増加すると、本来はギャップ中央にて最大となる電界分布が、ギャップ内で粗密が発生することで、ギャップ中央よりもドリフトチューブ電極端部近傍において最大となる電界分布となり、その結果、ギャップで得られる加速エネルギー利得は同じでも、ドリフトチューブ電極端部での表面電界強度が増加し、放電限界の基準値を超えてしまい、放電に至る場合があるという問題点があった。
以下、図に基づいて説明する。先ず、図1により実施の形態1によるHモード型ドリフトチューブ線形加速器の構成から説明する。図は、Hモード型ドリフトチューブ線形加速器のひとつであるIH(Interdigital-H)型線形加速器を示す断面図である。
ギャップ7の間隔は、入射側3から出射側4へ向けて、順次広くなっており、また、各ドリフトチューブ電極2a〜2eの電極長も順次長くなっている。すなわち、セル長が出射側4に向けて順次増加させた傾斜型電圧分布を採用した場合を示している。
ビームが通過する口径であるドリフトチューブ電極の内径dと、ギャップに発生するキャパシタンスを決定する肉厚Tとから、ドリフトチューブ電極の外径Dが決められている。
端面の外径側と内径側の角部には、放電を抑えるためR面取りが施されている。以下の説明では、ドリフトチューブ電極の内径側のR面取りの曲率半径を内径側R面取り寸法と呼び、外径側のR面取りの曲率半径を外径側R面取り寸法と呼ぶことにする。
また、「端面」とはドリフトチューブ側面に対する呼称とし、端面の角部にR面取りが施された部分を総称して「端部」と呼ぶことにする。
一方、外径側R面取り寸法R1は、内径側R面取り寸法rより大きな値とし、内径側の
R面取り終端から連続してなめらかにドリフトチューブ電極外径まで繋がった形状となっている。更に、具体的に説明すれば、内径dの面から連続して、内径側R面取りを曲率半径rで90度の範囲に形成し、それに連続して外径側R面取りを曲率半径R1で90度の範囲に形成し、その終端部を外径Dの面となめらかに連続させた「ドリフトチューブ肉厚部」とする。両曲率半径の中心点は、加速軸5に平行な軸線9上にある。
但し、図2はベストモードを示すものであり、内径側R面取りと外径側R面取りの接続部は、加工性等を考慮して、加速軸5に垂直な直線部(平面部)を多少設けてもよいが、可能な限り直線部を少なくして、なめらかな連続面とするのが望ましい。
内径d,肉厚T,及び外径Dは、図2と同様である。すべての角には放電を抑えるためR面取りが施されており、先に説明したように、内径側のR面取り寸法rは、図2のドリフトチューブ電極2d,2eと同じであって、可能な限り小さくし形成されている。
一方、外径側R面取り寸法R2は、内径側R面取り寸法rより大きいが、R面取り部での表面電界強度が放電限界基準以下であればよいため、図2のドリフトチューブ電極の外径側R面取り寸法R1より小さくし、内径側R面取り終端部と外径側R面取り終端部との間には、加速軸5に垂直な直線肉厚部10が存在する。具体的な寸法は後述する。
そこで、表面電界強度が放電基準値を超えないようにするために、ドリフトチューブ電極の肉厚寸法を、少なくとも内径側R面取り寸法rの2倍より大きくし、更に、表面電界強度が高くなるギャップ部においては、電極端部形状を図2に示すような形状にするものである。
ここで、図1の構成において、図2及び図3のドリフトチューブ電極の各部の寸法は、一例として次の通りとする。
セル数6、ドリフトチューブ電極の内径d=14mm,外径D=36mm,内径側R面取り寸法r=2mmとし、外径側R面取り寸法は、図2に示すドリフトチューブ電極2d,2eについてはR1=9mm,図3に示すドリフトチューブ電極2a〜2c,8a,8bについてはR2=5mmとする。
また、同期位相は−30度で一定とし、電界強度はキルパトリック放電限界の1.6倍で各セル一定とし、電圧は荷電粒子エネルギーに応じて増加する傾斜型電圧分布とする。
ここで、縦軸の加速電界強度は、加速軸方向をZ軸、ステム方向をY軸、これらと直交する方向をX軸としたとき、各電界成分Ex,Ey,Ezから求められるEmod=√(Ex2+Ey2+Ez2)のことである。また、横軸は共振器の加速軸方向Zを示している。各ギャップに対応する部分に山形の波形が現れている。
なお、入射側3の最初のギャップに発生する電界強度E1と、出射側の最後のギャップに発生する電界強度E6は、共振器1に発生する磁界が共振器端では加速軸5方向だけではなく共振器1を回りこむ方向にも発生するため、この影響により他のセルに比べ減少している。
出射側4に設置した2体のドリフトチューブ電極2d、2e(電極番号5,6)の外径側R面取り寸法R1が、他のドリフトチューブ電極(2a〜2c,8a、8b)に比べ大きくなったことにより、ドリフトチューブ電極肉厚部の実効断面積が減少し、Hモード型ドリフトチューブ線形加速器全体で見ると、高エネルギー側である出射側4でのキャパシタンスが減少する。そのため、(4)式に従い高エネルギー側での共振器径をCの減少分だけ増加させて適切に変更することにより、各ギャップに発生する電界強度を均一化した結果、高エネルギー側2体以外のドリフトチューブ電極(電極番号1〜4)での表面電界強度は多少増加するものの、高エネルギー側に設置されたドリフトチューブ電極(電極番号5〜7)での表面電界強度は低下し、いずれも放電基準値以下になっている。
れた2体のドリフトチューブ電極2d、2e(電極番号5,6)による影響は小さく問題は無い。
図6において、表面電界強度の高い側(通常は高エネルギー側)に面する電極端部形状は、図2の場合と同様に、内径側R面取り終端部とそれより曲率半径の大きい外径側R面取り終端部とが連続的につながった曲面状のドリフトチューブ肉厚部をもつ形状とし、表面電界強度の低い側(通常は低エネルギー側)に面する電極端部形状は図3と同様としたものである。これにより、表面電界強度を削減する効果に加え、ドリフトチューブ間に発生するキャパシタンスを実質的に不必要に減少する事が無く、キャパシタンスを調整するための共振器径の変更も少なくてすむという効果が得られる。
トチューブ線形加速器の場合に、電界分布が2山形状になることに起因する表面電界強度の増加を効果的に抑制でき、安定した状態で運転することができる。
図7は、実施の形態2によるIH型線形加速器を示す断面図である。図1と同等部分は同一符号で示し説明は省略して、相違点を中心に説明する。
本実施の形態の共振器は、ビーム軸成分の収束方式としてAPF法を採用した共振器の場合を示している。実施の形態1の場合のセル長は、出射側に向けて順次増加させた傾斜型電圧分布となっていたが、APF法では、同期位相の符号を数セル周期で振動的に変化させているので、数セル周期でセル長は増加するものの、隣り合うセル長は必ずしも荷電粒子のエネルギーに応じて増加しない。
図2の形状を適用するドリフトチューブ電極2c,2dは、内径d=14mm,外径D=36mm,内径側R面取り寸法r=2mm、外径側R面取り寸法R1=9mmとし、図3の形状を適用するその他のドリフトチューブ電極は、内径,外径,内径側R面取り寸法は同じであるが、外径側R面取り寸法R2=5mmとする。また、全ての電極を図2の端部形状(r=2mm,R2=5mm)としたものを比較例とする。
同期位相はAPF法を適応するため一定とせず、電界強度はキルパトリック放電限界の1.6倍で各セル一定とし、電圧は荷電粒子エネルギーに応じて増加する傾斜型電圧分布とする。
図から分かるように、電界分布が2山となる箇所は、必ずしも高エネルギー側ではなく、ギャップ長が一番長い箇所で電界分布が2山になっている。そこで、2山の電界分布となるギャップを形成する一対のドリフトチューブ電極2c,2dの電極端部形状を図2のようにしたことで、当該ギャップ箇所での表面電界強度が、破線で示す比較例に比べて、実線で示すようにギャップ中央部の谷部と両側のピーク値との差が縮まると共にピーク値が低くなっていることがわかる。両側のピーク値が低くなることで、電極端部近傍での電界強度を放電基準値以下に押さえることができる。
部)が多少形成されていてもよい。
更に、電界分布が2山になり、一方のドリフトチューブ電極面のみが放電限界を超すような場合は、実施の形態1と同様に、図6に示すような複合型のドリフトチューブ電極を採用してもよい。外径側R面取り寸法を大きくした方の端部を表面電界強度の高い側に向けて配置する。
3 入射側(低エネルギー側) 4 出射側(高エネルギー側)
5 加速軸 6 ステム
7 ギャップ 8a 入射側エンドドリフトチューブ
8b 出射側エンドドリフトチューブ電極
9 加速軸に平行な軸線 10 直線肉厚部
d 内径 D 外径
T 肉厚 r 内径側R面取り寸法
R1,R2 外径側R面取り寸法
E1 最初のギャップに発生する電界強度
E6 最後のギャップに発生する電界強度。
Claims (6)
- TEモードを励起する共振器内の加速軸上に、ステムに支持された複数個の円筒形状のドリフトチューブ電極が所定のギャップを空けて配列され、前記ドリフトチューブ電極間に電界を発生させることにより荷電粒子ビームを加速するHモード型ドリフトチューブ線形加速器において、
前記ドリフトチューブ電極は、端面の外径側と内径側の角部にR面取りが施され、
電界分布が、前記ギャップ部の中央部の両側にピークを有する2山形状の電界分布を有するギャップ部の両端に位置する前記ドリフトチューブ電極端部の前記外径側のR面取りは、前記内径側のR面取りよりも大きな曲率半径を有し、前記内径側のR面取りの終端部と前記外径側のR面取りの終端部とが滑らかにつながったドリフトチューブ肉厚部が形成されていることを特徴とするHモード型ドリフトチューブ線形加速器。 - 請求項1に記載のHモード型ドリフトチューブ線形加速器において、
前記電界分布が、前記ギャップ部の中央部の両側にピークを有する2山形状の電界分布を有するギャップ部の両端に位置する前記ドリフトチューブ電極端部は、互いに同じ形状の前記ドリフトチューブ肉厚部を有するものであることを特徴とするHモード型ドリフトチューブ線形加速器。 - 請求項1又は請求項2に記載のHモード型ドリフトチューブ線形加速器において、
前記ドリフトチューブ肉厚部の前記内径側のR面取りの終端部と前記外径側のR面取りの終端部との接続面は、平面部を持たずに連続してつながった曲面であることを特徴とするHモード型ドリフトチューブ線形加速器。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のHモード型ドリフトチューブ線形加速器において、
前記ドリフトチューブ肉厚部が形成された前記ドリフトチューブ電極は、前記加速軸の軸方向に見て、最初の前記ギャップを除いた一番長いギャップ長を形成する1対のドリフトチューブ電極であることを特徴とするHモード型ドリフトチューブ線形加速器。 - 請求項4に記載のHモード型ドリフトチューブ線形加速器において、
前記ドリフトチューブ肉厚部が形成された前記ドリフトチューブ電極は、出射側のエンドドリフトチューブ電極に隣接するドリフトチューブ電極、及びそのドリフトチューブ電極と対をなすドリフトチューブ電極であることを特徴とするHモード型ドリフトチューブ線形加速器。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のHモード型ドリフトチューブ線形加速器において、
前記ドリフトチューブ肉厚部が形成された前記ドリフトチューブ電極は、前記加速軸の軸方向に見て、最初の前記ギャップを除いた一番長いギャップ長を形成する1対のドリフトチューブ電極と、続いて長いギャップ長を形成する一対のドリフトチューブ電極であることを特徴とするHモード型ドリフトチューブ線形加速器。
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