JP4038883B2 - 高周波型加速管 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン注入装置、イオンビーム照射装置およびPIXE(Proton Induced X-Ray Emission )やSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry )等のイオンビームを使った表面分析装置などで好適に実施され、高周波でイオンを加速する直線型の加速管に関し、特に3ギャップの加速管に関する。
【0002】
【従来の技術】
イオンを高周波で加速する技術は、古くから研究が行われており、半導体の製造工程や医療等で広く利用されている。これまでイオン加速用に開発されてきた高周波型加速器の例として、ヴィデレー型、アルバレ型およびRFQ(高周波四重極加速器)などがあり、比較的短い加速器長さで、高いエネルギが得られるように研究が進められてきた。
【0003】
しかしながら、これらの加速器はエネルギ可変性に乏しく、特に、半導体の製造工程に適用するためには、エネルギを連続的に可変できることが必要不可欠である。これを解決する手法として、たとえば特公平6−28146号、特公平8−23067号、特開平10−125273号および特開平10−125272号公報で示されるように、ギャップ数の少ない加速管を多段に接続することが提案されている。
【0004】
たとえば2ギャップの加速管と、3ギャップの加速管とにおける、1価のイオンに対するエネルギゲインE2,E3は、それぞれ下式で表される。
【0005】
E2=2V※T※cosφ …(1)
E3=4V※T※cosφ …(2)
ただし、Vはドリフトチューブに高周波が導入されることによって発生する励振電圧であり、φは同期位相であり、Tはイオンが加速管を通過する時間および電極配置によって決定される定数であり、TTF(Transit Time Factor )と称され、入射速度に対する加減速度効率を表す。
【0006】
ここで、各ギャップ数毎の加速管へのイオンの入射速度の変化に対する、前記TTFの変化を図8に示す。この図8において、β0 は、光束cに対するイオンの入射速度vの比βの最適値であり、前記イオンの入射速度vがギャップ間距離によって決定される加速のタイミングに同期している状態である。
【0007】
この図8から明らかなように、ギャップ数が増加する程、入射速度の異なるイオンを効率的に加速することができなくなってゆく。一方、前記励振電圧Vが同じ場合、ギャップ数が多くなる程、エネルギゲインが高くなり、たとえば前記式1と式2とから明らかなように、3ギャップ型では2ギャップ型に比べて、2倍のエネルギゲインとなる。
【0008】
したがって、様々なイオンを様々なエネルギで加速する前記イオン注入装置やイオンビーム照射装置の場合には、比較的大きなエネルギゲインを得ることができ、かつ緩やかなTTFの変化を有する3ギャップ型が最適であると考えられる。たとえば5ギャップ型になると、エネルギゲインE5は、10V※T※cosφとなるけれども、TTFの変化が大きく、イオン種や入射エネルギーが異なると、全く加速できない場合が生じてしまい、前記イオン注入装置などでは致命的である。
【0009】
図9は、上述のような3ギャップの典型的な従来技術の加速管1の構造を示す縦断面図である。加速室2に形成された孔3から入射されたイオン4は、大地電位である該加速室2の壁面に接続されたグランド電極5と、高周波電圧で励振されているドリフトチューブ6との間の第1の加速ギャップ7で加速され、ドリフトチューブ6中を通過する間に位相が180°変わり、前記ドリフトチューブ6と該ドリフトチューブ6とは逆極性の高周波電圧で励振されているドリフトチューブ8との間の第2の加速ギャップ9で加速され、さらに前記ドリフトチューブ8と加速室2の壁面に接続されたグランド電極10との間の第3の加速ギャップ11で加速されて、孔12から出射される。
【0010】
ドリフトチューブ6,8には、タンク13の底面から立設された共振用のインダクタポール14,15が接続されている。一方のインダクタポール14には、参照符16で示す同軸管またはケーブル(図9の例では同軸ケーブル)から結合器17を介してタンク13内に導入された高周波電力が、前記結合器17とインダクタポール14との電磁結合または容量結合(図9の例では容量結合)よって、該インダクタポール14に与えられる。他方のインダクタポール15には、前記結合器17と同様に構成されるチューナ18が臨んでおり、該チューナ18とインダクタポール15との間の静電容量を調整することによって、反射電力が最小な条件で前記高周波電力が導入される。
【0011】
図10は、3ギャップの他の従来技術の加速管21の構造を説明するためのタンク22の一部を切欠いて示す斜視図である。この加速管21は、Nuclear Instruments and Methods in Physies Research 224(1984)の第17項〜第26項に記載されているものである。なお、この加速管21において前述の加速管1に対応する部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。この加速管21では、ドリフトチューブ6,8に対するインダクタ23,24は、渦巻状に形成されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように構成される加速管1,21において、前記インダクタポール14,15およびインダクタ23,24は、1/4波長共振器と称され、加速管の共振波長λの1/4付近の長さに形成される。したがって、たとえば共振周波数が100(MHz)の場合で、長さが75cmとなる。一方、前記イオン注入装置で用いるような、B,P,Asなどの、比較的重いイオンを加速する場合には、普通、加速管の共振周波数を10〜50(MHz)にとる。
【0013】
したがって、共振周波数を、たとえば10(MHz)とすると、前記インダクタポール14,15およびインダクタ23,24の長さは、7.5(m)にも及んでしまう。この場合、前記加速管1のような構造では、タンク13の高さが10(m)近くにもなり、現実的ではない。
【0014】
この点、前記加速管21では、インダクタ23,24の巻数を多く取ることによって、タンク22の容量を小さくすることができる。しかしながら、前記巻数を多く取ると、インダクタ23,24の剛性が不足してしまう。一方、該インダクタ23,24は、注入される高周波電力の多くを消費するので、二重筒構造とされて、該筒内には数〜数十(リットル/分)の大流量の冷媒が流れている。したがって、前記巻数を多く取ると、ドリフトチューブ6,8を支持する該インダクタ23,24の機械的強度が不足し、前記ドリフトチューブ6,8をビーム進行軸上に正確に位置決めすることができず、場合によっては振動が発生し、共振周波数を一定に保持することができなくなり、加速管21の安定稼動に支障をきたしてしまう。
【0015】
また、インダクタ23,24の巻数を多くすると、該インダクタ23,24にドリフトチューブ6,8を固着するにあたって、その取付部付近に充分な作業スペースを確保することができず、作業性が悪いという問題もある。以上のことから、加速管21では、インダクタ23,24に機械的な精度および強度が要求され、該インダクタ23,24の巻数をあまり多くすることができず、タンク22の容量を小さくすることができない。
【0016】
さらにまた、加速管には、シャントインピーダンスR0 と呼ばれる励振電圧を評価するパラメータが定義されており、該パラメータを用いて、3ギャップの加速管のトータルの励振電圧は、下式で表される。
【0017】
4V={2※P※R0 1/2 …(3)
ただし、Pは投入パワーを表す。
【0018】
したがって、シャントインピーダンスR0 は、加速管のエネルギゲインを決定するパラメータであり、該シャントインピーダンスR0 が高くなる程、加速管当りのエネルギゲイン、したがって投入パワー当りのエネルギゲインである電力効率を大きくすることができる。このシャントインピーダンスR0 は、インダクタの形状およびタンク内での位置等によって決定され、電力効率の向上のために、高くすることが望まれる。
【0019】
本発明の目的は、インダクタのタンク容量を縮小することができるとともに、安定動作および電力効率の向上を図ることができる高周波型加速管を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る高周波型加速管は、加速室内に3つの加速ギャップを有し、その加速ギャップを構成する2つのドリフトチューブにそれぞれ関連する共振用のインダクタがタンク内に設けられる高周波型加速管において、前記各インダクタは、冷却水を通過させることができる管体から成り、タンク底面から立設される第1の直線部と、前記第1の直線部に連なるコイル部と、前記コイル部と前記ドリフトチューブとの間を接続する第2の直線部とを有し、前記第2の直線部が絶縁部材によってタンク内壁に保持固定され、前記コイル部は、その巻径と管体の外径との比が9〜13に形成されることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、比較的大きなエネルギゲインを得ることができ、かつ比較的緩やかなTTF変化で種々のイオン種および入射エネルギに対応することができる3ギャップの高周波型加速管において、比較的重いイオンを加速するにあったって、共振周波数が低いために長くなってしまう共振用のインダクタにコイル部を形成し、タンク容量の縮小を図るとともに、ドリフトチューブとインダクタとの接続にあたって、組立作業性を向上するために、ドリフトチューブの周囲に広い作業スペースを確保する。
【0022】
このとき、前記インダクタでは、前記コイル部に連なる第1の直線部がタンク底面に保持固定され、前記コイル部と前記ドリフトチューブとの間を接続する第2の直線部が絶縁部材によってタンク内壁に保持固定され、かつコイル部の巻径と管体の外径との比が9〜13に形成され、必要な機械的強度と冷却能力とが確保される。これによって、共振周波数にずれを生じることがなく、安定動作および電力効率の向上を図ることができる。
【0023】
また、インダクタのコイル部の巻径と管体の外径との比が前記9〜13に形成されることによって、シャントインピーダンスR0 を比較的高く設定することができ、これによってもまた、電力効率の向上を図ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について、図1〜図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0025】
図1は本発明の実施の一形態の加速管31の構造を示す縦断面図であり、図2は図1の切断面線A−Aから見た断面図である。この加速管31は、3つの加速ギャップ32,33,34を備える直線型の加速管であり、大略的に、前記加速ギャップ32,33,34を形成するグランド電極35、ドリフトチューブ36、ドリフトチューブ37およびグランド電極38を備える加速室41と、共振用のインダクタ39,40を備えるタンク45とから構成されている。
【0026】
この加速管31では、高周波電圧が印加される2つのドリフトチューブ36,37にそれぞれ接続されるインダクタ39,40がLとなり、前記加速ギャップ32,33,34と各部の分布容量がCとなり、立体的な共振回路を形成している。
【0027】
前記加速室41およびタンク45は、銅、アルミ、銀、またはそれらがメッキ処理された非磁性材料などの導電性の高い材料によって形成されている。ただし、前記メッキ処理された材料の場合には、メッキ厚さを、材質と周波数とによって決定される表皮厚さよりも充分厚くすることは言うまでもない。後述するインダクタ39,40以外の比較的パワー損失の小さい残余の部分も、このような材料によって形成されている。
【0028】
加速室41の孔42から入射されたイオン43は、大地電位である該加速室41の壁面に接続されたグランド電極35とドリフトチューブ36との間の第1の加速ギャップ32と、ドリフトチューブ36,37間の第2の加速ギャップ33と、ドリフトチューブ37と加速室41の壁面に接続されたグランド電極38との間の第3の加速ギャップ34とで順次加速された後、孔44から出射される。加速室41内は、イオン43のビーム損失の低減および放電防止のために、高真空に保たれている。
【0029】
前記ドリフトチューブ36,37には、それぞれ共振用のインダクタ39,40の一端側の直線部39a,40aが接続されており、このインダクタ39,40の他端側の直線部39b,40bは、タンク45の底面に接続されている。このインダクタ39,40のタンク45の底面側での間隔L1は、前記シャントインピーダンスR0 が低下しないような距離に選ばれ、ドリフトチューブ36,37側での間隔L2は、加速ギャップ32,33,34間の間隔L3に等しく、最も効率良く加速すべきイオンの速度に合わせて設定され、したがってこれらの間隔L1,L2は、必ずしも等しくなる必要はない。
【0030】
前記インダクタ39,40における前記両端の直線部39a,39b;40a,40b以外の部分は、コイル状に巻回されてコイル部39c,40cを形成しており、前記λ/4共振器に必要となるインダクタ長さに対して、該コイル部39c,40cの長さは大幅に短く、したがってタンク45の高さHが充分小さくなっている。前記2つのコイル部39c,40cの巻回方向は、相互に同一方向と、相互に異なる方向とのいずれであってもよい。このインダクタ39,40は、後に詳述するように二重筒構造とされており、該筒内には、純水やフレオンなどの外部から供給される冷媒が循環されている。
【0031】
前記インダクタ39,40の遊端側となる前記直線部39a,40aは、絶縁板46,47によって、それぞれタンク45の内壁に保持固定されており、これによって前記ドリフトチューブ36,37の中心は、ビーム軸上に正確に位置決めされて、安定して保持される。前記絶縁板46,47は、高周波電界の高い箇所に配置されるので、発熱、すなわちパワー損失が発生する。したがって、これを抑えるために、誘電正接が充分低い材料、たとえば高純度アルミナや高周波用セラミック等から形成される。
【0032】
高周波電力の導入は、電磁結合または容量結合の何れであってもよく、図1は、容量結合の例を示している。前記高周波電力は、高周波電源から、特性インピーダンスがたとえば50Ωで、参照符48で示す同軸管またはケーブル(図1の例では同軸ケーブル)によってタンク45内に導入され、ループ型またはプレート型(図1の例ではプレート型)の結合器49に与えられている。結合器49はインダクタ39の直線部39aに臨み、該結合器49とインダクタ39との間の静電容量を調整することによって、同軸ケーブル48とインダクタ39とはインピーダンス結合され、反射電力が最小な条件で前記高周波電力が導入される。
【0033】
高周波電力が導入されると、図2で示すように、インダクタ39,40が相互に逆極性、すなわち位相が180°ずれた高周波の励振電圧Vで励振し、加速電界Eが発生する。加速の原理は、たとえば前記特開平10−125272号公報の第0009〜0018段落に記載されている。加速管31が励振すると、内部が発熱し、共振周波数がシフトしてしまうので、これを補償するために、前記ループ型またはプレート型(図1の例ではプレート型)のチューナ50が、インダクタ40の直線部40aに臨んで設けられている。
【0034】
上述のように構成される加速管31において、本発明では、前記インダクタ39,40は、以下に詳述するように形成される。
【0035】
まず、シャントインピーダンスR0 について検討する。加速管のエネルギゲインをできるだけ大きくするためには、前述のようにシャントインピーダンスR0 をできるだけ高くする必要がある。このシャントインピーダンスR0 は、
0 =Q0 ※(R0 /Q0 ) …(4)
で表すことができる。
【0036】
ここで、Q0 は、無負荷Q値と称され、加速管内のパワー損失が少い程、高くなる。また、(R0 /Q0 )は、加速管の特性インピーダンスであり、該加速管の構造によって決定される。前記Q値は、上述のような導電性の良好な材料や、誘電正接の小さい絶縁部材を使用することで改善することができる。また、一般に、加速管内で発生する磁界成分を導電物が遮ると、その部分で電流が流れ、前記Q値が低下するので、この点に関しても注意を要する。一方、前記(R0 /Q0 )は、ほぼインダクタの形状によって決定される。そこで、本件発明者は3次元動電磁場解析を行い、その解析結果に基づいて、インダクタ39,40の最適形状を求めている。
【0037】
前記3次元動電磁場解析によるインダクタ周りの磁場分布を図3に示す。なおこの例では、インダクタ39,40のコイル部39c,40cの巻回方向は、相互に同一方向としており、また結合器49およびチューナ50ならびに絶縁板46,47は省略している。
【0038】
この図3から明らかなように、インダクタ39,40が相互に逆極性の励振電圧Vで励振しているので、磁場の流れは、参照符60で示すように、コイル部39c,40c内を貫く大きなループ状となっている。インダクタ39,40の巻回方向が相互に逆方向であれば、磁場の流れは、コイル部39c,40cの内周から外周をそれぞれ周る小さなループ状となる。
【0039】
前記コイル部39c,40cがタンク45の底面側に近付くと、前記磁場ループが該タンク45の底面に接触するようになり、また加速室41側に近付くと、前記加速室41がタンク45に比べて比較的小さい場合には、前記磁場ループがタンク45の上面に接触するようになる。これによって、磁場が遮断されると、前述のようにQ値の低下を招き、シャントインピーダンスR0 が低下してしまう。たとえば、前記シャントインピーダンスR0 は、図1〜図3の構造では、11.35(MΩ)であったのが、インダクタ39,40間に導電板を挿入して前記磁場ループ60を遮断すると、10.77(MΩ)となり、約5(%)低下してしまう。
【0040】
したがって、タンク高さHを極力低くすることができる範囲内で、前記コイル部39c,40cを前記直線部39a,39b;40a,40bでそれぞれ支持して、タンク45の中央部付近に配置し、磁場ループ60の乱れを極力小さくなるようにしている。
【0041】
一方、インダクタ39,40のチューブ径dと、該インダクタ39,40の巻径Dとを変化させた場合のシャントインピーダンスR0 の変化を、それぞれ図4(a)および図5(a)で示す。これら図4および図5の例は、共振周波数を33(MHz)とした場合の例である。ただし、前記巻径Dは、コイル部39c,40cの平均の径であり、チューブ中心での径となる。
【0042】
図4の例では、タンク45の内径L10を350(mm)とし、インダクタ間距離L1を150(mm)とし、前記巻径Dを80(mm)としている。図4(b)には、チューブ径dを変化させることで、巻径Dと該チューブ径dとの比率を変化させた場合におけるシャントインピーダンスR0 のピーク値に対する比率の変化を示している。この図4からは、チューブ径dが8(mm)であるときにシャントインピーダンスR0 が最も高く、そのピーク値に対して、許容値をたとえば90(%)とすると、D/d=9〜13の範囲に設定すれば良いことが理解される。
【0043】
また図5の例では、前記タンク内径L10を500(mm)とし、インダクタ間距離L1を250(mm)とし、チューブ径dを10(mm)としている。図5(b)には、前記D/dを変化させた場合のシャントインピーダンスR0 の前記ピーク値に対する比率の変化を示している。この図5から、前記巻径Dが100(mm)であるときが、最もシャントインピーダンスR0 が高いことを表しており、そのピーク値に対して、許容値を前記90(%)とすると、D/dが8以上であれば良いことが理解される。
【0044】
前記図4および図5から明らかなように、タンク内径L10およびインダクタ間距離L1を変化させても、シャントインピーダンスR0 が最大になるときのD/dは、ほぼ同じになり、たとえば許容値をピーク値の90(%)とすると、9〜13の範囲であれば、その許容値内でのシャントインピーダンスを得ることができる。
【0045】
次に、前記インダクタ39,40の加工性について検討する。これらのインダクタ39,40は、金、銀、銅等の導電性の良好な金属チューブ、または表面にこれらの金属のメッキ処理を施したチューブを、螺旋状に巻回して作成される。これらのインダクタ39,40の全長は、共振周波数(1/λ)から決定され、したがって巻数は必ずしも整数とはならない。しかしながら、該インダクタ39,40の取付位置は機械的に決定されており、作成誤差を考えると、コイル部39c,40cの始端または終端の少くともいずれか一方(図1および図3では両方)は、巻き中心、すなわちコイル部39c,40cの軸線上に戻っている必要がある。したがって、この中心に戻る始端部分または終端部分の曲げ半径が最も小さくなる。
【0046】
通常、金属管の曲げ半径は、管の直径をRとすると、最小でRである。しかしながら、インダクタ39,40は、素材を焼き鈍して作成されるので、このような小さい曲げ半径で作成すると、曲げ部がつぶれてしまう。したがって、実際の作成には、前記曲げ半径は、少くとも1.5R以上必要となる。
【0047】
たとえば、前記図4および図5から示されるように、D=100(mm)、d=12(mm)、すなわちD/d≒8.3とした場合のコイル部39c,40cの形状を、図6に示す。前記始端または終端以外の部分は、曲げ半径R=44(mm)で、所定ピッチで巻回されている。これに対して、前記始端または終端部分は、R=19(mm)となってしまい、チューブ径d=12(mm)のほぼ1.5倍で、曲げ半径の限界に近くなってしまう。
【0048】
このような場合、インダクタ39,40の軸線方向(コイル部39c,40cの軸線方向および直線部39a,39b;40a,40bの長手方向)を加えた3次元的な曲げ加工を行うことによって、前記曲げ半径Rを大きく取ることができる。しかしながら、製作が複雑になり、製造コストが上昇してしまう。このため、加工性の観点からは、D/d=9以上が望ましい。
【0049】
続いて、冷却効率について検討する。加速管に投入された電力は、ビームを加速する以外の殆どがこれらのインダクタ39,40で消費され、発熱を生じる。半導体の製作などに用いられる通常のイオン注入装置では、前記投入電力は数(kW)にも及び、したがって冷却が無いと、該インダクタ39,40は瞬時に溶損してしまう。また、冷却が不十分であると、このインダクタ39,40の発熱によって共振周波数のシフトが発生し、前記チューナ50による補償範囲を超えてしまうと、加速管31を安定稼動することができなくなってしまう。
【0050】
このため、インダクタ39,40の温度変化は、最大電力の投入時で、10(℃)程度以下となることが望ましい。このためには、高周波パワー1(kW)当り、冷却水流量が1(リットル/分)以上必要となる。
【0051】
一方、インダクタ39,40は、上述のように二重筒構造となっており、前記チューブ径dの管体内に、往復の冷却水路を作成する必要がある。したがって、たとえば共振周波数を33(MHz)、投入パワーを5(kW)、したがって2本のインダクタ39,40の1本当りの電力消費を2.5(kW)とし、D=100(mm)、d=8(mm)、すなわちD/d=12.5とするとき、外筒の外径は前記8(mm)となり、たとえば肉厚を0.5(mm)とし、内筒の外径を5(mm)とし、肉厚を0.5(mm)とすると、2.5(リットル/分)の冷却水流量が必要となり、この場合の水圧は5(kg/cm2 )となる。
【0052】
この流量は、加速管の安定稼動および水圧に対する外筒の耐圧の限界値であり、さらにインダクタ39,40のチューブ径dを小さくすると、冷却水量の減少による投入可能なパワーの低下によって、加速電圧の低下を招くことになる。したがって、冷却効率の観点からは、D/d=13以下であることが望ましい。
【0053】
最後に、ドリフトチューブ36,37の中心を、ビーム軸上に、正確に、かつ安定して位置決めするためには、前記冷却水の流れなどによる振動を抑制することが必要であり、前記D/dは、小さい方が良い。
【0054】
以上のような検討結果をまとめると、表1のようになり、D/dを9〜13とすることによって、必要な冷却効率および機械的強度を確保しつつ、シャントインピーダンスR0 を高くし、電力効率を高めることができるとともに、良好な加工性を得ることもできる。
【0055】
【表1】
Figure 0004038883
【0056】
なお、その他のパラメータである、たとえばタンク内径L10は、3次元動電磁場解析の結果によれば、該内径L10の1/2乗に比例してシャントインピーダンスR0 の改善が可能であることが確認されており、加速管に要求されるシャントインピーダンスR0 と設置スペースおよび真空ポンプの排気容量などとに対応して決定される。
【0057】
また、インダクタ間距離L1は、ドリフトチューブ36,37、グランド電極35,38、結合器49およびチューナ50などの加速器31内の残余の構造物や、放電限界距離との関係によって決定される。前記導電磁場解析の結果によれば、該インダクタ間距離L1を変化しても、シャントインピーダンスR0 を大幅に改善することはできない。しかしながら、あまり小さくしすぎると、インダクタ39,40間での静電容量が増加し、シャントインピーダンスR0 の低下を招く。したがって、該距離L1は、前記巻径Dの1.5倍以上あればよい。
【0058】
さらにまた、一般に加速管の特性インピーダンス(R0 /Q0)は、Cが小さく、Lが大きい程高くなる。したがって、同じインダクタンス長であっても、コイル部39c,40cの巻きピッチを小さくする程、すなわち該コイル部39c,40cの高さを小さくする程、シャントインピーダンスR0 が向上するのは明らかである。
【0059】
タンク45の形状は、円筒形と四角筒形とのいずれであってもよく、またインダクタ39,40の配列方向は、図7の加速管71で示すように、ビーム進行軸方向と交差する方向であってもよい。
【0060】
【発明の効果】
本発明に係る高周波型加速管は、以上のように、比較的大きなエネルギゲインを得ることができ、かつ比較的緩やかなTTF変化で種々のイオン種および入射エネルギに対応することができる3ギャップの高周波型加速管において、比較的重いイオンに対応して長くなる共振用のインダクタに、コイル部を形成する。
【0061】
それゆえ、タンク容量の縮小を図ることができるとともに、ドリフトチューブとインダクタとの接続にあたって、ドリフトチューブの周囲に広い作業スペースを確保することができ、組立作業性を向上することができる。
【0062】
またこのとき、前記インダクタを、そのコイル部に連なる第1の直線部をタンク底面に保持固定し、前記コイル部と前記ドリフトチューブとの間を接続する第2の直線部を絶縁部材によってタンク内壁に保持固定し、かつコイル部の巻径と管体の外径との比を9〜13に形成し、必要な機械的強度と冷却能力とを確保する。
【0063】
それゆえ、共振周波数にずれを生じることがなく、安定動作および電力効率の向上を図ることができる。
【0064】
さらにまた、インダクタのコイル部の巻径と管体の外径との比を前記9〜13に形成することによって、シャントインピーダンスR0 を比較的高く設定することができ、これによってもまた、電力効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の加速管の構造を示す縦断面図である。
【図2】図1の切断面線A−Aから見た断面図である。
【図3】図1および図2で示す加速管における動電磁場解析結果を示す縦断面図である。
【図4】図1で示す加速管におけるインダクタのチューブ径を変化させた場合のシャントインピーダンスの変化を示すグラフである。
【図5】図1で示す加速管におけるインダクタの巻き径を変化させた場合のシャントインピーダンスの変化を示すグラフである。
【図6】前記インダクタの加工性を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の他の形態の加速管の構造を示す透視斜視面図である。
【図8】各種のギャップ数での加速管へのイオンの入射速度の変化に対する加減速効率の変化を示すグラフである。
【図9】典型的な従来技術の加速管の構造を示す縦断面図である。
【図10】他の従来技術の加速管の構造を説明するための一部を切欠いて示す斜視図である。
【符号の説明】
31,71 加速管
32,33,34 加速ギャップ
35,38 グランド電極
36,37 ドリフトチューブ
39,40 インダクタ
39a,40a 直線部(第2の直線部)
39b,40b 直線部(第1の直線部)
39c,40c コイル部
41 加速部
43 イオン
45 タンク
46,47 絶縁板
48 同軸ケーブル
49 結合器
50 チューナ
D 巻径
d チューブ径(管体外径)

Claims (1)

  1. 加速室内に3つの加速ギャップを有し、その加速ギャップを構成する2つのドリフトチューブにそれぞれ関連する共振用のインダクタがタンク内に設けられる高周波型加速管において、
    前記各インダクタは、冷却水を通過させることができる管体から成り、タンク底面から立設される第1の直線部と、前記第1の直線部に連なるコイル部と、前記コイル部と前記ドリフトチューブとの間を接続する第2の直線部とを有し、
    前記第2の直線部が絶縁部材によってタンク内壁に保持固定され、
    前記コイル部は、その巻径と管体の外径との比が9〜13に形成されることを特徴とする高周波型加速管。
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