JP2010214703A - フィンガージョイントによる木材の接合方法とこれにより接合された木材 - Google Patents
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Abstract
【課題】フィンガージョイントされた接合部において接着層が目立つことがなく、一定の強度も確保できる木材の接合方法を提供する。
【解決手段】複数の木片10のフィンガー部11同士を勘合させて接合した状態で、木材20の全体に熱硬化性樹脂30を含浸させた後、接合方向と直交する方向に熱プレスにより圧縮する。熱硬化性樹脂30は、固形分濃度5〜20重量%の熱硬化性樹脂溶液の状態で木材20に含浸され、熱プレスによる圧縮率は、30%以上とする。
【選択図】図1
【解決手段】複数の木片10のフィンガー部11同士を勘合させて接合した状態で、木材20の全体に熱硬化性樹脂30を含浸させた後、接合方向と直交する方向に熱プレスにより圧縮する。熱硬化性樹脂30は、固形分濃度5〜20重量%の熱硬化性樹脂溶液の状態で木材20に含浸され、熱プレスによる圧縮率は、30%以上とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、フィンガージョイントによって木材を接合する方法と、当該方法により接合された木材とに関する。
木材同士を接合する手段の一つとして、フィンガージョイントがある。木材に節や割れなどがあると低質材ないし欠陥材とされるので、当該部分を除去する必要がある。その場合、木材を部分的に切断除去し、残余の部分をフィンガージョイントによって接合することで、低質材ないし欠陥材を有効利用できる。また、例えば短尺材を任意の長さを有する長尺材として使用する場合等にも、フィンガージョイントが使用される。このように、集成材の製造において、フィンガージョイントは一般的に使用される加工方法である。
フィンガージョイントによって木材同士を接合する場合、木材同士の摩擦のみでは接合力が低いので、一般的には特許文献1や特許文献2のように、フィンガージョイントの接合面同士を接着剤によって接着している。具体的には、特許文献1では、フィンガー部全体に接着剤を確実に塗布するために、フィンガー部が形成された複数の木片を水平方向に並ぶように纏めた木片群の各フィンガー部を、接着剤を含浸させたスポンジ材質の塗布部材に対向密接させている。塗布部材をフィンガー部に押し付けることによって、塗布部材がフィンガー部の各切り込みに沿って弾性変形して入り込む。これにより、塗布部材に含浸している接着剤が各切り込みに隈なく転移することで、フィンガー部表面に接着剤を確実に塗布できる。特許文献2では、フィンガー部同士を突き合わせて接合した後、当該接合部の外面(裏面)に、不織布に接着性樹脂を含浸・塗布してなる接着テープを添え、当該接合部を加圧・加熱融着することで継ぎ目が目立たないようにしている。
一方、接着剤を使用せずにフィンガージョイントしたものとして、特許文献3がある。特許文献3では、木材のフィンガー部同士を接合した後、接合方向に直交する方向から圧縮率44%で圧縮(圧密)している。これにより、フィンガー部同士がめり込むことで、接着剤を使用せずに接合強度の向上を図っている。
特許文献1や特許文献2では、接合部(フィンガージョイント部)を接着剤で接着しているので、強固に接合することができる。しかし、接着剤を使用したのでは当該接着層が目立ってしまい、外観(意匠性)が悪くなる。したがって、意匠性等を考慮すると、接合部には接着剤を使用しないことが望ましい。しかし、その反面、接合強度が低下してしまい、比較的容易にフィンガージョイントが外れてしまう可能性が高くなる。これでは、木材全体の強度も低下する。しかも特許文献2では、接着テープを裏打ちしているだけなので、木片の厚み方向中央部に接着剤を付与できなかったり、複雑な形状のフィンガー部の全体へ的確に接着剤を付与させることは難しい。
これに対し特許文献3では、接着剤を使用していないので意匠性低下の問題は少ない。そのうえで、フィンガージョイントした後に圧密して、ある程度の強度向上も図っている。しかし、特許文献3では樹脂成分が付与されていないので、単に圧密しただけでは木材の厚みがある程度復元されるので強度向上に限界があり、実用面においては課題が残る。
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、フィンガージョイントされた接合部において樹脂成分が目立つことがなく、一定の強度も確保できる木材の接合方法とその木材を提供することを目的とする。
本発明の木材の接合方法では、複数の木片のフィンガー部同士を勘合させて接合した状態で、木材全体に熱硬化性樹脂を含浸させた後、接合方向と直交する方向に熱プレスにより圧縮する。複数の木片とは、少なくとも2以上の木片を接合していればよい。複数の木片がフィンガージョイントされた木材は、いわゆる集成材となる。熱硬化性樹脂を含浸させる前においては、フィンガー部同士は木片の摩擦のみによって接合されている。熱プレスによって圧縮すると木材の密度が上昇するので、圧縮処理は圧密処理と言うこともできる。
前記熱硬化性樹脂の濃度は、一般的な接着剤と同様に高濃度の状態で含浸させることもできるが、固形分濃度5〜20重量%の熱硬化性樹脂溶液の状態で前記木材に含浸することが好ましい。熱硬化性樹脂(固形分)の濃度が5〜20重量%では、従来のような接着剤としての機能は殆ど発現しない。つまり、固形分濃度5〜20重量%の熱硬化性樹脂溶液の状態で木材に含浸させる場合は、接着剤として含浸させるものではない。この場合、前記熱プレスによる圧縮率((圧縮前の厚み−圧縮後の厚み)/圧縮前の厚み)は30%以上とする。
また、本発明によれば、複数の木片がフィンガージョイントによって接合された木材(集成材)であって、固形分濃度5〜20重量%の熱硬化性樹脂溶液の状態で前記木材全体に熱硬化性樹脂が含浸されており、圧縮率30%以上で熱プレスによって圧密化されている木材も提案される。
本発明によれば、フィンガージョイントされた木材の全体に熱硬化性樹脂が含浸されているので、接合部のみに接着剤を塗布する場合のように木材の一部のみが部分的に変色するなどの問題がない。また、木材全体に樹脂を含浸させておけば、複雑な形状のフィンガー部を有する場合でも、容易且つ確実に熱硬化性樹脂を付与できる。すなわち、特許文献1のように、複雑な形状のフィンガー部へ的確に接着剤を塗布するために、特殊な部材を使用するような煩雑さは無い。また、特許文献2のように、接着剤を含浸させた不織布からなる接着テープを裏打ちする必要もない。
そのうえで、熱硬化性樹脂を含浸させた木材を圧密化しているので、熱硬化性樹脂によって圧密状態が的確に保持され、特許文献3のように接着剤を使用しない場合よりも接合部を強固に接合することができる。しかも、熱硬化性樹脂は木材の全体に含浸されているので、木材全体の強度や耐水性等も向上できる。
本発明では、圧密化することが前提となっているので、含浸させる熱硬化性樹脂の濃度は5〜20重量%で足りる。すなわち、熱硬化性樹脂は接着剤としてではなく、圧密化した状態を保形するために含浸されている。この場合、熱プレスによる圧縮率が30%以上であれば、含浸させる熱硬化性樹脂溶液が低濃度でも、圧縮せずに接着剤によって接合した場合や、接着剤を使用せず圧縮しただけの場合よりも、少なくとも木材の曲げヤング係数、すなわち初期剛性が高くなる。
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明するが、これに限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明で得られる木材は、図1に示すように、複数の木片10のフィンガー部11同士を勘合させて接合した状態で、木材20全体に熱硬化性樹脂30を含浸させた後、接合方向と直交する方向に熱プレスにより圧縮される。木材20は、複数の木片10が接合された集成材となる。接合する木片10の数としては、少なくとも2以上あればよく、求められる長さに応じて適宜増やせばよい。
木片10の形状・形態は特に限定されず、一本の原木から角材や板材として切り出した無垢材のほか、間伐材、短尺木、LVL(単板積層材)、及び合板などを使用できる。これらは、同種の木片同士を接合することが好ましいが、2種以上を組み合わせ接合してもよい。木材としては、針葉樹と広葉樹とを問わないが、圧縮時の変形性に富む針葉樹が好ましい。スギ材であれば、圧縮時の変形性に富み、且つ粘り強い点で好ましい。各木片10は、熱硬化性樹脂30を含浸させる前に、水分率が10%以下となる程度にまで乾燥させておくことが好ましい。
フィンガー部10は、互いに勘合可能な凹凸を有する形状であれば特に限定されず、公知の一般的な形状とすればよい。凹凸が多い方が接合強度も高くなる傾向にある。フィンガージョイントは、木片10同士を繊維方向に接合する(縦継ぎ)ものである。したがって、フィンガー部10の形成面としては、繊維方向の一端面若しくは両端面に形成する。フィンガー部10の方向としては、木端面にファインガー形状が現れる水平フィンガーとすることが好ましい。圧縮時にフィンガー部11が押し潰されて摩擦力が増大し、垂直フィンガーよりも接合強度が高くなるからである。
含浸させる熱硬化性樹脂30としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アミノ樹脂、グリオキザール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルウレタン樹脂、及びレゾルシノール系樹脂などを例示できる。また、植物由来のリグリンを使用することもできる。中でも、良好な寸法安定性を得られるフェノール樹脂、アミノ樹脂、グリオキザール樹脂が好ましい。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。なお、必要に応じて適宜硬化剤も含浸させておく。さらには、低分子水溶性フェノール樹脂が好ましい。低分子のフェノール樹脂であれば浸透性が良く、細胞壁内へも浸透し易い。その分子量としては、150〜300程度、好ましくは180〜250程度である。フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類の反応により得られる樹脂であり、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール等のアルキルフェノール、石炭系および石油系フェノール類、カシューナット殻液、レゾルシン、ビスフェノール類等を挙げることができる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、環状ホルマール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、高級アルデヒド等を例示できる。フェノール樹脂として、上記の組合せの中でも、フェノールとホルムアルデヒドとの反応で得られる樹脂が好ましく用いられる。
熱硬化性樹脂30は、熱硬化性樹脂を水又は有機溶媒に溶解させた熱硬化性樹脂溶液の状態で含浸することが好ましい。熱硬化性樹脂を水等の溶媒に分散させた分散液でもよい。熱硬化性樹脂溶液の含浸は、熱硬化性樹脂溶液に木片10を浸漬(ディッピング)すればよい。耐圧容器内にて一旦減圧してから大気圧ないし加圧状態で含浸させれば、含浸率が向上する。熱硬化性樹脂溶液中の熱硬化性樹脂濃度(固形分濃度)は、一般的な接着剤と同等にしても構わないが、5〜20重量%程度で足りる。圧密化することを前提としているからである。熱硬化性樹脂濃度が5重量%未満では、後の圧縮時に木材を圧密状態で的確に保形できず、木材20の強度低下に繋がる。木材20の圧密状態を保形するには、熱硬化性樹脂濃度が20重量%あれば十分であり、それ以上濃度を高くしてもコストの無駄となるだけである。熱硬化性樹脂溶液中の熱硬化性樹脂濃度は、好ましくは8〜15重量%とする。なお、熱硬化性樹脂による接着機能も利用したい場合は、一般的な接着剤と同程度に少なくとも熱硬化性樹脂濃度を45重量%以上とする。
濃度5〜20重量%の熱硬化性樹脂溶液を含浸させた場合、熱プレスによる圧縮率((圧縮前の厚み−圧縮後の厚み)/圧縮前の厚み)は少なくとも30%以上とし、好ましくは圧縮率50%以上とする。圧縮率が30%未満では、最終的な木材20の強度が、圧縮せずに接着剤によって接合した場合や、接着剤を使用せず圧縮しただけの場合よりも低くなる。圧縮率を少なくとも30%とすれば、圧縮せずに接着剤によって接合した場合や、接着剤を使用せず圧縮しただけの場合よりも曲げヤング係数が高く、初期剛性が高くなる。圧縮率を50%以上とすれば、曲げヤング係数のみならず木材20全体の曲げ強度も高くなる。圧縮率は高ければ高い程好ましいので、圧縮率の上限は特に限定されず、可能な限り高くすれば良い。木種によっても異なるが、実際には概ね75%程度が圧縮率の限界である。
なお、熱硬化性樹脂を含浸させるに当たって、各木片10に複数の浸透孔を穿設しておくことが好ましい。浸透孔を形成しておけば、木片10の内部にまで熱硬化性樹脂が浸透し易くなる。また、浸透孔は、木片10の全体に亘って均等に穿設することが好ましい。樹脂含浸量の偏在を避けるためである。浸透孔の穿設方向は、木材20の圧縮方向と同じ厚み方向(接合方向と直交する方向)とすることが好ましい。浸透孔は、ドリル加工により穿設してもよいし、例えば炭酸ガスレーザーなどのレーザー加工によって穿設してもよい。
また、熱硬化性樹脂を含浸させるとき、その他の添加剤も含浸させておくことで、付加価値を付与して高品質な木材を得ることもできる。具体的には、樹脂含浸と共に又は樹脂含浸に前後して防腐材、防蟻剤、又は着色剤(染料や顔料)を含浸させることができる。これらの添加剤も、水溶性のものが好ましい。水溶性の防腐剤や防蟻剤としては、フェノール類・無機フッ化物系、アルキルアンモニウム化合物系、銅・アゾール化合物系等の有機系や、ポリデン塩、グリン塩等の無機定着型、硼砂等の硼素系が例示できる。また、例えばトリアゾール系、ピレスロイド系等の油性の防腐剤や防蟻剤でもエマルション化することで水系として使用可能である。
次に、木材の接合方法の一連の手順について説明する。図1に示されるように、所定寸法(代表的には短尺)の木片10に対し、繊維方向の一端面又は両端面にフィンガー部11を形成する。そして、各木片10のフィンガー部11同士を対向させて勘合する。この時点では、各木片10同士は互いの摩擦力によって接合状態が保持されている。次いで、複数の木片10がフィンガージョイントされた木材20を、熱硬化性樹脂溶液に浸漬して、木材20の全体に熱硬化性樹脂30を含浸させる。次いで、木材20を接合方向と直交する方向(厚み方向)に所定の圧縮率にて熱プレスし、木材20を圧縮(圧密化)する。圧密は、高温高圧で木材20の全体を圧締する。このとき、木材20中の余分な空気や水分等は排出除去される。加圧条件としては、0.4〜2.2MPa程度、好ましくは0.5〜1.5MPa程度とすればよい。また、加熱温度は、少なくとも熱硬化性樹脂30の硬化温度以上とする。具体的には、130℃程度以上とすればよい。木材20を熱プレスすることで密度が上がり、熱硬化性樹脂30によって圧密状態が良好に保持される。これにより、フィンガージョイントされた木材20の強度が効果的に向上する。
なお、熱プレスする前に、必要に応じて木材20から余分な液体を除去しておくことが好ましい。余分な液体には、水や有機溶媒のほか、液状の樹脂も含まれる。熱プレス時にガスの発生量を低減するためである。余分な液体の除去は乾燥することで行えるが、乾燥する前に木材20を圧縮することが好ましい。木材20を圧縮することで、余分な液体を強制的に搾り出すことができる。ここでの圧縮はあくまで余分な液体の除去が目的なので、熱プレス(圧密化)時よりも圧縮率は小さくしておく。圧縮率が大き過ぎると、せっかく良好に含浸させた熱硬化性樹脂30が必要以上に搾り出されるからである。圧縮によってある程度余分な液体を強制除去できたところで、確実に水分や有機溶媒等を除去するために、乾燥すればよい。乾燥は、常温乾燥でも加熱乾燥でもよい。乾燥時間を短縮化できる点で、加熱乾燥が好ましい。その際の加熱温度は、常温(室温)以上熱硬化性樹脂30の硬化温度未満とする。例えば、30〜70℃程度が好ましい。
(試験)
表1に示す種々の条件によってフィンガージョイントした複数の試験木材を作成し、接合方法の相違に基づくこれら各試験木材の曲げ強度等の傾向について検討した。なお、表1中の凡例とは、図2及び図3に示すグラフ中の凡例である。
表1に示す種々の条件によってフィンガージョイントした複数の試験木材を作成し、接合方法の相違に基づくこれら各試験木材の曲げ強度等の傾向について検討した。なお、表1中の凡例とは、図2及び図3に示すグラフ中の凡例である。
<製造条件>
各木材におけるフィンガーの加工条件は一般的な加工・接合条件と同様に行い、繊維方向に向けて水平フィンガー部を形成して勘合させた。接着剤には、レゾルシノール系接着剤(オーシカ社製 ディアノールD−40)を使用し、フィンガー部表面へ塗布した。含浸させる熱硬化性樹脂は、木材含浸用水溶性フェノール樹脂(昭和高分子製 BRL−120Z)を蒸発残分(固形分)10重量%まで水で希釈して用いた。
各木材の圧縮前の厚みは45mmである。熱硬化性樹脂を含浸させた木材3〜5には、深さ42mm、直径18mmの浸透孔を、縦横方向に12mm間隔で穿設した。熱硬化性樹脂溶液は減圧加圧法で含浸させた。具体的には、耐圧容器中にて30mmHg以下に30分間減圧後、十分量の樹脂溶液を注入して浸漬し、1MPaの加圧条件に1時間保持した。木材2,4,5は、145℃で90分熱、フィンガー部の接合方向と直行する厚み方向に熱プレスした。圧縮しない木材1,3は、145℃で90分間乾燥機中で熱処理した。
各木材の寸法は、幅100mm、長さ700である。圧縮率30%の木材4の厚みは30mmであり、圧縮率50%の木材5の厚みは22mmであった。なお、木材4,5は、樹脂含浸後に厚さ調整してから熱プレスしたので、厳密に圧縮前の厚み45mmの70%、50%にはなっていない。
各木材におけるフィンガーの加工条件は一般的な加工・接合条件と同様に行い、繊維方向に向けて水平フィンガー部を形成して勘合させた。接着剤には、レゾルシノール系接着剤(オーシカ社製 ディアノールD−40)を使用し、フィンガー部表面へ塗布した。含浸させる熱硬化性樹脂は、木材含浸用水溶性フェノール樹脂(昭和高分子製 BRL−120Z)を蒸発残分(固形分)10重量%まで水で希釈して用いた。
各木材の圧縮前の厚みは45mmである。熱硬化性樹脂を含浸させた木材3〜5には、深さ42mm、直径18mmの浸透孔を、縦横方向に12mm間隔で穿設した。熱硬化性樹脂溶液は減圧加圧法で含浸させた。具体的には、耐圧容器中にて30mmHg以下に30分間減圧後、十分量の樹脂溶液を注入して浸漬し、1MPaの加圧条件に1時間保持した。木材2,4,5は、145℃で90分熱、フィンガー部の接合方向と直行する厚み方向に熱プレスした。圧縮しない木材1,3は、145℃で90分間乾燥機中で熱処理した。
各木材の寸法は、幅100mm、長さ700である。圧縮率30%の木材4の厚みは30mmであり、圧縮率50%の木材5の厚みは22mmであった。なお、木材4,5は、樹脂含浸後に厚さ調整してから熱プレスしたので、厳密に圧縮前の厚み45mmの70%、50%にはなっていない。
<試験条件>
「集成材の日本農林規格・曲げC試験」に準じた集成材ラミナの曲げ試験方法に基づいて4点曲げ試験を行い、各木材の曲げヤング係数(MOE)と曲げ強度(曲げ応力、MOR)を測定した。4点曲げ試験のスパンは、30h(厚さの30倍)とした。例えば、木材4のスパンは900mm、木材5のスパンは660mmである。上部支点はスパンの3等分点である。荷重速度は10mm/mmとした。各木材の曲げヤング係数(MOE)を図2に、各木材の曲げ強度(MOR)を図3に示す。
「集成材の日本農林規格・曲げC試験」に準じた集成材ラミナの曲げ試験方法に基づいて4点曲げ試験を行い、各木材の曲げヤング係数(MOE)と曲げ強度(曲げ応力、MOR)を測定した。4点曲げ試験のスパンは、30h(厚さの30倍)とした。例えば、木材4のスパンは900mm、木材5のスパンは660mmである。上部支点はスパンの3等分点である。荷重速度は10mm/mmとした。各木材の曲げヤング係数(MOE)を図2に、各木材の曲げ強度(MOR)を図3に示す。
得られた各木材の外観を目視にて観察したところ、フィンガー部に接着剤を塗布した木材1では、接着層の色が目立ち接合部において部分的に変色していた。これに対し、木材全体に樹脂を含浸させた木材3〜5では、全体的に同系色となっており部分的に変色している部位は確認されなかった。
図2及び図3の結果から、樹脂を含浸させただけで圧縮していない木材3は、圧縮せずに接着剤によって接合した木材1や、接着剤を使用せず圧縮しただけの木材2よりも曲げヤング係数及び曲げ強度が大きく劣り、低濃度の樹脂溶液を含浸した場合は接着剤としてほとんど機能していないことが確認された。
一方、図2の結果から、圧縮率30%の木材4は、圧縮せずに接着剤によって接合した木材1や、接着剤を使用せず圧縮しただけの木材2よりも曲げヤング係数が高かった。当然、木材4よりも圧縮率の高い木材5も、木材1や木材2よりも曲げヤング係数が高かった。しかし、図3の結果から、曲げ強度(曲げ応力)に関しては、木材4は木材1や木材2よりも低かった。これに対し圧縮率50%の木材5は、曲げヤング係数のみならず曲げ強度も、木材1や木材2よりも高かった。
以上の結果から、熱硬化性樹脂を木材全体に含浸させることで、意匠性の悪化を避けることができることがわかった。固形分濃度5〜20重量%程度の低濃度熱硬化性樹脂溶液を木材へ含浸させた場合、熱プレスによる圧縮率((圧縮前の厚み−圧縮後の厚み)/圧縮前の厚み)は、少なくとも30%以上とすることが必要であり、圧縮率50%以上が好ましいことがわかった。圧縮率が少なくとも30%あれば、圧縮せずに接着剤によって接合した場合や、接着剤を使用せず圧縮しただけの場合よりも曲げヤング係数が高く、初期剛性が高くなる。さらに、圧縮率を50%以上とすれば、曲げヤング係数のみならず曲げ強度も、圧縮せずに接着剤によって接合した場合や、接着剤を使用せず圧縮しただけの場合よりも高くなる。また、圧縮率を高くすればする程、曲げヤング係数や曲げ強度も向上する傾向にあり、当該観点においては圧縮率の上限は制限されないこともわかった。
10 木片
11 フィンガー部
20 木材
30 熱硬化性樹脂
11 フィンガー部
20 木材
30 熱硬化性樹脂
Claims (3)
- 複数の木片のフィンガー部同士を勘合させて接合した状態で、木材全体に熱硬化性樹脂を含浸させた後、接合方向と直交する方向に熱プレスにより圧縮する、木材の接合方法。
- 前記熱硬化性樹脂は、固形分濃度5〜20重量%の熱硬化性樹脂溶液の状態で前記木材に含浸され、
前記熱プレスによる圧縮率が30%以上である、請求項1に記載の木材の接合方法。 - 複数の木片がフィンガージョイントによって接合された木材であって、
固形分濃度5〜20重量%の熱硬化性樹脂溶液の状態で前記木材全体に熱硬化性樹脂が含浸されており、
圧縮率30%以上で熱プレスによって圧密化されている、木材。
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