JP2010213688A - 植物育成培地および土壌改良資材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含む、植物育成培地または土壌改良資材。
【選択図】図1
Description
高度浄水処理は、凝集沈殿ろ過等の従来の浄水処理に、オゾン処理および粒状活性炭吸着処理工程等を加えた処理である。オゾン処理では、かび臭原因物質やトリハロメタンのもととなる物質などが、オゾンの強力な酸化力で分解される。また、生物活性炭吸着処理においては、活性炭の吸着作用と活性炭に繁殖した微生物の分解作用とを併用して汚濁物質が処理される。
さらに、本発明は、粒径が4mm以下である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含む、前記植物育成培地または土壌改良資材に関する。
さらにまた、本発明は、粒径が2mm以下である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭が、前記活性炭全体の80%容量以上である、前記植物育成培地または土壌改良資材に関する。
またさらに、本発明は、高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を植物育成培地または土壌改良資材の全体に対して5〜50%容量含む、前記植物育成培地または土壌改良資材に関する。
また、本発明は、陽イオン交換容量が110me/100g以上である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含む、前記植物育成培地または土壌改良資材に関する。
さらに、本発明は、交換性石灰含有量(CaO)が700mg/100g以上である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含む、前記植物育成培地または土壌改良資材に関する。
また、本発明は、植物の生育に有用な微生物を含む、前記植物育成培地または土壌改良資材に関する。
さらに、本発明は、シバ類の生育に用いられる、前記植物育成培地または土壌改良資材に関する。
さらにまた、本発明は、植物の生育に有用な微生物を含む微生物資材であって、該微生物の担持体として高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を用いる、微生物資材に関する。
そして、本発明は、高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含む植物育成培地または土壌改良資材を添加した土壌で植物を生育せしめる工程を含む、植物を育成する方法に関する。
さらに、本発明は、高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を植物育成培地または土壌に添加する工程を含む、土壌の肥料保持力を高める方法に関する。
・粒径バランス、
・吸着された肥料成分(とくにN、Ca)、
・増大した肥料保持力、
・好適なpH等
により、植物の育成に適したものとなっている可能性がある。しかしながら、本発明にかかる植物育成培地または土壌改良資材、活性炭についての上記特性から予測される効果をはるかに上回る格別な効果を奏するのである。
・浄水処理過程で吸着したミネラルが植物に効果的に吸収され生育を促進する。
・混合割合を5〜50%容量にすることにより培地の保水、透水性のバランスを良好にし、植物の安定的な生育を確保する。
・肥料保持力が高く、肥料の流ぼうを抑え、長期の育苗でも肥料不足の問題を解消する。
・高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭の多くは埋立て処分あるいは化石燃料として再利用されており、植物育成培地、土壌改良資材の成分として利用することにより炭酸ガス固定を増大せしめ、温暖化の解消にも貢献できる。
また、本発明の植物育成培地または土壌改良資材のうち、粒径が2mm以下である高度浄水処理に用いられた活性炭が、高度浄水処理に用いられた活性炭全体の80%容量以上であるものによれば、培地の透水性・保水性がさらにより良好であるといった効果が奏される。
さらに、本発明の植物育成培地または土壌改良資材のうち、陽イオン交換容量が110me/100g以上である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含むものまたは交換性石灰含有量(CaO)が700mg/100g以上である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含むものによれば、植物の育成をより一層高い効率で行えるといった効果が奏される。
また、本発明の植物育成培地または土壌改良資材のうち、植物の生育に有用な微生物を含むものによれば、植物の生育に有用な微生物を従来の担持体より高い効率で繁殖・維持せしめることができるため、植物の育成を高い効率で行うことを可能ならしめるといった効果が奏される。
さらに、本発明の植物育成培地または土壌改良資材は、シバ類の生育に良好に用いることがといった効果を奏する。
また、本発明の植物育成培地のうち、さらに育苗培養土を含むものによれば、植物の育成をさらにより高い効率で行えるといった効果が奏される。
また、本発明の高度浄水処理に用いられた活性炭を含む植物育成培地または土壌改良資材を添加した土壌で植物を生育せしめる工程を含む、植物を育成する方法によれば、植物の生育を従来の資材より高めることができるといった効果が奏される。
そして、本発明の土壌の肥料保持力を高める方法によれば、当該土壌の肥料保持力をより効率的に高めることができる。
本明細書において「高度浄水処理」とは、粒状活性炭とオゾンとを利用する浄水処理を意味する。
本明細書において「高度浄水処理に用いられた活性炭」または「高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭」とは、高度浄水処理を目的とする処理に用いられ、廃棄される段階にある活性炭を意味し、用いられた時間、程度等は限定されない。なお、「高度浄水処理に用いられた活性炭」または「高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭」は、以下において「使用済み活性炭」または「使用済炭」と表記することもある。
また、本明細書において「未使用炭」とは、高度浄水処理に使用される活性炭で、高度浄水処理に使用される前のものを意味する。
なお、本明細書において示される地名は(「三郷」、「金町」)、本発明の使用済み活性炭が採取された浄水場の名称を示すものである。
本明細書中において、他に記載がない限り、「%」は「%容量」を表す。
本発明の植物育成培地または土壌改良資材は、高度浄水処理に用いられた活性炭を含む植物育成培地または土壌改良資材であれば、他の成分、組成等に制限はない。
本発明において用いられる活性炭の陽イオン交換容量はとくに限定されないが、本発明の植物育成培地または土壌改良資材のうち、陽イオン交換容量が110me/100g以上である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含むものは好ましく、同容量が140me/100g以上である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含むものはより好ましい。
また、本発明において用いられる活性炭の交換性石灰含有量(CaO)はとくに限定されないが、同含有量が700mg/100g以上である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含むものは好ましく、同含有量が740mg/100g以上である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含むものはより好ましい。
植物の生育に対する影響を考慮すると、本発明の植物育成培地または土壌改良資材におけるpHは5.0〜7.5が好ましく、5.5〜7.0がより好ましい。
水分保持機能を考慮すると、本発明の植物育成培地または土壌改良資材における粒径としては4mm以下のものを含むものが好ましく、2mm以下のものを含むものはより好ましい。
また、粒径が2mm以下である高度浄水処理に用いられた活性炭が、高度浄水処理に用いられた活性炭全体の80%容量以上であるものは好ましい。
また、本発明の植物育成培地には、適宜他の成分、たとえば肥料、腐葉土、土壌改良資材等を添加することができる。かかる他の成分として、さらに育苗培養土を含むものは、植物の生育をより効率的に行うことができるため好ましい。
かかる培養土に含まれる原料資材も限定されないが、たとえばピートモス、バーミキュライト、パーライト、土壌、肥料、ヤシ殻、その他の素材(砂、粘土、ゼオライト、堆肥、ロックウール、発泡スチロール粒、軽石、赤玉土等)を例示することができる。
これらの土壌改良資材のうち、植物の生育に有用な微生物を本発明の植物育成培地または土壌改良資材に含まれる高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭に担持して処理することは好ましい。かかる担持処理によって、該微生物の増殖が促進されるからである。
かかる微生物としては、細菌類、放線菌類、糸状菌類等が挙げられるところ、細菌類および糸状菌類が好ましく、とくに植物の病原菌に対する拮抗作用を有する、糸状菌であるトリコデルマ属菌、アスペルギルス属菌およびペニシリウム属菌ならびに細菌であるバチルス属菌からなる菌群がとくに好ましい。
また、植物の生育に有用な微生物を本発明の植物育成培地または土壌改良資材に含有せしめる場合、該微生物は高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭に担持させてもよく、この場合、該担持体(使用済み活性炭)に栄養成分を添加して得られる培地に微生物を培養処理して含有せしめてもよい。したがって、高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭は、適宜通常の微生物担持体に含まれる栄養成分を配合することによって、微生物資材の成分、すなわち微生物担持体として良好に用いることができる。前記栄養成分としては、米ぬかが例示される。
微生物担持体に用いられる使用済み活性炭にとくに制限はないところ、本発明の植物育成培地または土壌改良資材に用いられるものと同様なものを好適に用いることができる。
また、本発明の微生物資材において、微生物を微生物担持体に担持させる方法や各成分の量等はとくに制限されず、通常の方法および量を用いて行うことができる。たとえば上記他の成分として米ぬかを用いる場合、米ぬかの添加量として、使用済み活性炭:米ぬかとして2:1〜5:1の容積の割合は好ましく、3:1〜4:1はより好ましい。また、微生物の培養条件を好適にするために水を用いることができるところ、水としては蒸留水を用いてよい。水の添加割合は使用済み活性炭:水として10:1〜5:1の容積の割合が好ましく、8:1〜6:1の割合はより好ましい。
さらに、本発明の植物育成培地または土壌改良資材は、その使用目的に応じて、セル成型苗用またはポット育苗用等の制限されない用途に用いることができる。
また、本発明の植物育成培地または土壌改良資材の成分のうち、高度浄水処理に用いられた活性炭が土壌に添加される量はとくに制限されない。かかる量は、3〜50%容量が好ましく、10〜40%容量がより好ましく、20〜35%容量がさらにより好ましい。
なお、本発明の使用済み活性炭として、浄水場から排出・回収後にフレコン等の包装資材に収納し、運搬・保存したものを用いることができる。
園芸作物(例えば、野菜、花卉、果樹等)、食用作物(例えば、禾穀類、豆類、芋類等)、飼料作物(例えば、牧草類、青刈飼料作物類、根菜類、緑肥類等)、工芸作物(例えば、繊維料、油料、糖料、デンプン、嗜好料、ゴム・樹脂料、香料、香辛料、染料、薬料等)などが挙げられる。
また、本発明植物育成培地または土壌改良資材はシバ類にも好ましく用いられ、とくにコウライシバ(オアシスフィールド等)およびイワダレソウまたはそれらの改良種(クラピア等)等にとくに好ましく用いられる。
本発明の植物育成培地または土壌改良資材は、少雨高温条件下においても、その優れた保水性等の特性により好ましく用いられる。したがって、本発明の植物育成培地または土壌改良資材は、かかる条件下にさらされやすい屋上緑化用植物等の栽培にとくに好ましく用いられる。かかる屋上緑化用植物として、シバ類を挙げることができる。
さらに、節水効果および灌水の手間を軽減する効果がある、いわゆる薄層緑化システム(たとえば草かんむり(登録商標。以下同様。))との併用においても、本発明の植物育成培地または土壌改良資材は好ましく用いられる。
本発明の土壌の肥料保持力を高める方法において当該土壌改良資材を土壌に添加する方法はとくに限定されず、従来の土壌改良資材を方法に従い、十分に土壌に混合するなどすればよい。
・資材の調製
高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭(三郷浄水場および金町浄水場から排出されたもの。表中では、それぞれ「使用済炭(三郷)」および「使用済炭(金町)」と表記)、未使用活性炭(表中では「未使用炭」と表記)、籾殻薫炭、木炭、パーライト、ゼオライトを調製した。
「(三郷)」および「(金町)」の各使用済炭は、それぞれ10年間および8年間高度浄水処理に供されたものであり、排出・回収が2008年に複数回にわたり行われたものを区別せずに用いた。また、当該使用済炭は、排出・回収後、フレコン(1m3)で包装された状態で天日在庫にて保存した。
各資材の化学性、物理性および粒度分布は、それぞれ表1〜3に示すとおりであった。
表中、「EC」は電気伝導率を表し、「CEC」は陽イオン交換容量を表す。
コマツナを用いた。
・試験・調査方法
各対象資材にコマツナを直接播種し、発芽・初期生育への影響、生育障害の有無を調査した。
・試験結果・考察
図1に示すとおり、高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含む本発明の植物育成培地を用いると、未使用炭および他の鉱物系資材を用いた場合に比較して、コマツナの生育が著しく促進された。
とくに未使用炭処理区に比べて生育が良好であったことから、高度浄水処理を経ることにより、活性炭に生育促進効果が付加されたといえる。また、生育障害は生じなかった。
なお、高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭は、化学性において、CECが高く、また、無機態窒素およびCaOの量が多い傾向にあった(表1)。また、物理性については、同使用済み活性炭と未使用炭の間に顕著な差異はなかった(表2)。
上記使用済み活性炭の粒径は、2−1mmの範囲のものが極めて多かった(表3)。
・資材の調製
通常の育苗培養土に高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭(三郷浄水場から排出されたもの)を10%添加または添加しないものを調製した。
当該使用済炭は、10年間高度浄水処理に供されたものであり、排出・回収が2004年に複数回にわたり行われたものを区別せずに用いた。また、当該使用済炭は、排出・回収後、フレコン(1m3)で包装された状態で天日在庫にて保存した。
・供試植物
トマトおよびキュウリを用いた。
・試験・調査方法
各対象資材にトマトおよびキュウリをそれぞれ直接播種し、その後の生育を葉数、胚軸長、地上部重、地下部重、草丈について調査した。
・試験結果・考察
上記使用済み活性炭の添加により、トマト、キュウリ共に生育が高まり、特に根張りが良好になった(表4および5、図2〜4)。
・資材の調製
セル用培養土の原料としての利用可能性の調査を目的とした。
基本組成(ピートモス+バーミキュライト50%容量ずつ。以下「PV」と略記)をベースに供試資材を規定量混合し(表6)、さらに添加する肥料はすべての処理区で同量(N:P2O5:K2O=120:1,200:150mg/L)として調製した。
「(三郷)」および「(金町)」の各使用済炭は、それぞれ10年間および8年間高度浄水処理に供されたものであり、排出・回収が2004年に複数回にわたり行われたものを区別せずに用いた。また、当該使用済炭は、排出・回収後、フレコン(1m3)で包装された状態で天日在庫にて保存した。
キャベツ(品種:彩里)およびレタス(品種:しずか)を用いた。
・試験・調査方法
播種日:2008年7月29日に128穴トレイに播種し、同年8月6日、8月12日および8月20日に、植物の生育(地上部の生体重および乾物重ならびに地下部の乾物重)、培養土の物理・化学性の調査を行った。
・試験結果・考察
上記使用済み活性炭の添加により、キャベツおよびレタス共に生育が高まった(表7、図4および5)。
各培養土の物理・化学性は表8に示すとおりであった。
・資材の調製
育苗培土(土太郎、登録商標)に使用済み活性炭(「使用済炭」。金町浄水場にて高度浄水処理に用いられた活性炭)を下記表9に示す割合で添加して資材(培土)を調製した。
当該使用済炭は、8年間高度浄水処理に用いられたものであり、排出・回収が2004年に複数回にわたり行われたものを区別せずに用いた。また、当該使用済炭は、排出・回収後、フレコン(1m3)で包装された状態で天日在庫にて保存した。
トマトを用いた。
・試験・調査方法
8月24日にトマト苗を各処理区に移植し(9cmポリポット)、9月16日に、植物の生育(葉数、草丈、地上部重および地下部重)の調査を行った。また、用いた資材の化学性の調査も行った。
・試験結果・考察
土太郎(登録商標)への使用済炭の添加により、カルシウムが増加し、カリウムとマグネシウムは減少した(表10)。
栽培試験では、使用済炭5%以上の添加で地上部、地下部共に若干生育がよくなった。特に地下部の生長がよくなった(表11)。
また、本発明の植物育成培地においては、無機態窒素およびCaOの量が多い傾向にあり、またpHが弱塩基性で植物にとって適正である。しかしながら、本発明の植物育成培地による植物の生育を促進する効果は、これらの因子が組み合わさった場合に一般に予測される効果をはるかに上回る驚くべきものである。
(1)実験方法
高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭が添加された土壌における当該土壌についての改良効果を調査するために、以下の各試料を用い、栽培・調査を行った。
・供試土壌:マサ土
・供試資材:バーク堆肥に次の資材を20%容量混合したものを供試資材とした(表12):
高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭(金町)、未使用炭、木炭、籾殻薫炭、比較対照として無添加
・供試植物:ホウレンソウ、コマツナ
・栽培方法:供試資材はバーク堆肥2t(4m3)/10aを基準に供試土壌と混合しプランターで試験を行った。また化成肥料を全ての区に慣行に従い施用した(施肥量:N:P2O5:K2O=10:10:10kg/10a相当)。
・調査項目:生育調査、土壌の化学性
(2)実験結果
土壌の化学性については、EC、無機態窒素は、使用済炭区(高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を用いた区)が他区に比べて高く、交換性無機成分は使用済炭区のカルシウムが他区に比べて顕著に高く、CECは使用済炭区が他区に比べて顕著に高かった(表13)。
植物の生育については、ホウレンソウ、コマツナともに使用済炭区が他区に比べて生育が良好であった(表14および15)。
これらの結果から、本発明の土壌改良資材は、従来の土壌改良資材であるバーク堆肥を上回る土壌改良効果があることが明らかになった。とくに、CEC(肥料保持力の指標)の改善が顕著であった。
(1)試験方法
各種土壌に対する本発明の土壌改良資材の効果を明らかにすることを目的として、下記試験を行った。
・供試土壌:黒ボク土(千葉大学柏農場内畑土)およびマサ土(愛知県内のマサ土)
・供試資材:高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭(金町浄水場で8年間使用され、平成20年度に発生したもの)、未使用炭、木炭、籾殻薫炭、ゼオライト
・供試植物:コマツナ
・栽培方法:上記供試土壌に各供試資材を表16に記載の割合で添加した。また、化成肥料8-8-8を全ての処理区に施用し(施肥量:N:P2O5:K2O=20:20:20kg/10a相当)、その後通常の管理を行った(播種日:平成21年3月28日、調査日:平成21年4月15日)。
・調査項目:播種17日後におけるコマツナの生育調査、および各処理区において用いられた培養土の物理化学性
高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を処理した区においては、いずれにおいてもコマツナの生育は良好であり、とくにマサ土を用いた場合の生育は他の処理区より顕著に良好であった(図6)。
すなわち、本発明の土壌改良資材は、植物の生育を促進する効果があり、肥料分の乏しい土壌においてその効果がとくに顕著であることが明らかになった。
(1)試験方法
使用済み活性炭の混合割合の違いが土壌改良効果に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、下記試験を行った。
・供試土壌:マサ土(愛知県内のマサ土)
・供試資材(改良資材):高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭(金町浄水場で8年間使用され、平成20年度に発生したもの)、木炭、籾殻薫炭
・供試植物:コマツナ
・栽培方法:上記供試土壌に各供試資材を1、3、5、10、20または40%v/vの割合で添加・混合した。また、化成肥料8-8-8を全ての処理区に施用し(施肥量:N:P2O5:K2O=20:20:20kg/10a相当)、通常の栽培管理を行った(播種日:平成21年10月15日、調査日:平成21年10月30日)。
・調査項目:播種15日後におけるコマツナの生育調査、および各培養土の物理化学性
高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を処理した区においては、いずれの混合割合においてもコマツナの生育は良好であり、3%v/v以上の割合で混合した場合には、とくに明りょうな生育促進効果が認められた(図7および8)。
1、3、5、10、20または40%v/vの割合の中では、20%v/vの場合に最も顕著な生育促進効果が認められた(図8)。したがって、本試験においては、本発明の土壌改良資材の最も適した混合割合は、土壌に対して20%v/v〜40%v/vであると考えられた。
(1)試験方法
屋上緑化用培地の原料としての使用済み活性炭の利用可能性を検討することを目的として、下記試験を行った。とくに、今後需要の増大が期待されるグランドカバー植物を対象とした薄層緑化システムを用いて検討を行った。
1)屋外試験:薄層緑化システム「草かんむり」(住友林業緑化株式会社製)を用いた試験
・供試培地:造粒ケーキ(浄水ケーキを造粒・乾燥したもの)、剪定枝堆肥(剪定枝葉を堆肥化したもの)およびココピート(ヤシ殻の解砕物)からなる従来の培地に、高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭(金町浄水場で平成20年度に発生したもの)を0または20%v/v混合したもの(表17)
・供試植物:コウライ、オアシスフィールド(品種名)およびクラピア(品種名)
・栽培方法:各処理区に上記供試植物を栽植した後、屋外にて通常の栽培管理を行った(栽植日:平成21年4月23日)。
・調査項目:各培地の物理・化学性を調査するとともに、供試植物の生育調査を、平成21年10月下旬まで目視にて行った。
生育調査は、供試植物の状態を、下記の指標を含む0〜10の11段階にて評価して行った。6〜9および1〜4の段階については、5および10ならびに0および5に相当する状態を考慮して判断した。
10 :正常
5 :緑色であるが、葉が細く乾燥している
0 :枯死
2)屋内試験:屋上に生じやすい少雨高温条件における、培地性能試験
・供試培地:造粒ケーキ、剪定枝堆肥およびココピートからなる従来の培地に、高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭(金町浄水場で平成20年度に発生したもの)を0、10、20または40%v/v混合したもの(表17)
・供試植物:コウライ
・栽培方法:各処理区にコウライを小規模の容器(大きさ:0.3m×0.3m×0.1m)に栽植した後、灌水制御ができる屋内にて栽培および灌水の管理を行った(栽植日:平成21年4月23日)。なお、5月25日〜6月18日まで、および8月31日〜試験終了まで、それぞれ第1回および第2回の灌水停止を行い、乾燥条件を創出した。
・調査項目:コウライの生育調査を平成21年10月中旬まで、目視にて上記指標に基づき行った。
(2)試験結果
(2−1)各培地の物理・化学性
各培地の化学性は、表18〜19に示すとおりであった。
すなわち、pH、ECについては各処理区間に有意な差はなく、無機態窒素については使用済み活性炭の添加量が増加するに従って、アンモニア態のものは減少し、硝酸態のものは増加した(表18)。また、全窒素量は、各処理区間に差はなかった(表18)。
また、飽和透水係数は、使用済み活性炭の添加量が増加するに従って顕著に高まった。
1)屋外試験における生育
いずれのシバ類においても、本発明の植物育成培地において管理した区ではシバ類の生育が促進された(図9〜図12)。とくに、クラピアおよびオアシスフィールドでは、全試験期間にわたり、生育が顕著に促進された(図12)。
いずれの処理区においても、本発明の植物育成培地において管理した区ではシバ類の生育が促進された(図13〜図14)。とくに、栽培中期(9月前半)までは20%混合区および40%混合区における生育がより良好であり、それ以降は20%混合区において、シバ類の生育は最も良好に促進されていた(図14)。
(1)試験方法
使用済み活性炭の有用微生物(トリコデルマ属菌、アスペルギルス属菌、ペニシリウム属菌およびバチルス属菌)の担持体としての有効性を明らかにすることを目的として、下記試験を行った。
(a)表21に示した各担持体と米ぬかとを約8:2の割合で混合し、調製された混合物に蒸留水を添加した。蒸留水の添加量は、表21に示すとおりであった。使用済み活性炭(金町浄水場で8年間使用され、平成20年度に発生したもの)は水分含量が大きいため、水分添加量を他の処理区の1/2とし、水分条件を調整した。
(b)(a)で得られた混合物を121℃、1時間で高圧滅菌して供試培地を得た。
(c)放冷後、上記供試培地に各供試菌を植え付けた。
(d)(c)で得られた、各供試菌を植え付けた供試培地を28℃で2週間培養した。
(e)希釈平板法により、各培地における菌密度を測定した。
表22に示すとおり、使用済み活性炭を用いた微生物担持体は、いずれの細菌についても他の担持体を上回る菌密度を示した。とくに、現在微生物担持体として汎用されているバーミキュライトと比較しても、有用微生物(トリコデルマ属菌、アスペルギルス属菌、ペニシリウム属菌およびバチルス属菌)に対する使用済み活性炭を用いた微生物担持体の増殖促進活性は優れていた。
Claims (11)
- 高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含む、植物育成培地または土壌改良資材。
- 粒径が4mm以下である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含む、請求項1に記載の植物育成培地または土壌改良資材。
- 粒径が2mm以下である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭が、前記活性炭全体の80%容量以上である、請求項2に記載の植物育成培地または土壌改良資材。
- 高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を植物育成培地または土壌改良資材の全体に対して5〜50%容量含む、請求項1〜3のいずれかに記載の植物育成培地または土壌改良資材。
- 陽イオン交換容量が110me/100g以上である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の植物育成培地または土壌改良資材。
- 交換性石灰含有量(CaO)が700mg/100g以上である高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の植物育成培地または土壌改良資材。
- 植物の生育に有用な微生物を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の植物育成培地または土壌改良資材。
- シバ類の生育に用いられる、請求項1〜7のいずれかに記載の植物育成培地または土壌改良資材。
- 植物の生育に有用な微生物を含む微生物資材であって、該微生物の担持体として高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を用いる、微生物資材。
- 高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を含む植物育成培地または土壌改良資材を含む土壌で植物を生育せしめる工程を含む、植物を育成する方法。
- 高度浄水処理に用いられた使用済み活性炭を植物育成培地または土壌に添加する工程を含む、土壌の肥料保持力を高める方法。
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