JP2010207892A - 定形目地材 - Google Patents

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幸司 瓦田
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Abstract

【課題】冷間セットや熱間セットが行われる定形目地材において、良好なシール性及び気密性を両立させることが可能な定形目地材を提供する。
【解決手段】定形目地材10は、第一のシート材12の両面にそれぞれ第二のシート材13が配置された3層構造とされており、接合される下ノズル23及び浸漬ノズル24の接合面の形状に合わせて、第一のシート材12及び第二のシート材13は平面視して環状に形成されている。第一のシート材12と第二のシート材13は、異なるちょう度を有している。第二のシート材13のほうが第一のシート材12に比べてちょう度が高く、第一のシート材12のちょう度は10以下、第二のシート材13のちょう度は40以上であることが好ましい。
【選択図】図2

Description

本発明は、溶鋼の連続鋳造に使用するノズル等の耐火物の接合に用いられる定形目地材に関し、詳細には、浸漬ノズルとスライディングノズル装置を構成する下プレートとの間又は浸漬ノズルと下ノズルとの間に介装される定形目地材に関する。
溶鋼の連続鋳造では、浸漬ノズルとスライディングノズル装置を構成する下プレートとを接合、あるいは浸漬ノズルと下プレートとの間に下ノズルを介装して接合することにより、モールド内に連続的に溶鋼を供給している。これら耐火物の接合面には、鋳造時における接合面からの空気巻き込みや接合面間の隙間への溶鋼の浸入による漏れ等を防止するため、耐火モルタル、セラミックファイバー、定形目地材などの目地材(シール材)が使用されている(特許文献1の[従来の技術]参照)。中でも、定形目地材は、予め接合部位の形状に近い形に加工された薄板状の耐火物であり、離形性及び作業性に優れている。
しかし、上記目地材と耐火物の接合面とは固体接触であるため、固体間の微細な隙間を通した空気の巻き込みを完全に防止することはできない。そのため、溶鋼中に窒素が混入し、鋳片品質に影響を及ぼしている。
そこで、特許文献2では、軟化温度1400℃以上の耐食性耐火材質からなる第一の環状領域と、軟化温度600〜1100℃の耐火材質からなり、第一の環状領域を平面的に囲繞する第二の環状領域とから構成された複合シール部材の発明が提案されている。特許文献2によれば、接触する溶融金属に対して優れた耐食性などを呈する一方、外周縁領域の軟化・充填性によって、非接続部の外周縁領域の緻密な充填・封止が確保されるため、耐久性の高いシールド機能を呈するとしている。
特開平11−199339号公報 特開2003−25060号公報
溶鋼の連続鋳造に使用されるノズルは、溶鋼の流路となるノズル孔に近接した部分が周縁部に比べて高温になるが、ノズル孔に近接した部分の温度と周縁部の温度がそれぞれ想定した温度になる保証はない。即ち、特許文献2に記載されている複合シール部材の場合、第一の環状領域と第二の環状領域においてそれぞれ想定した軟化温度になるとは限らず、第一の環状領域及び第二の環状領域の軟化状態をコントロールすることは現実的に難しい。また、軟化したシール部材の一部が耐火物の接合面に残留しやすいため、新たに装着したシール部材の密着が妨げられ、シール性が低下するという問題もある。
目地材を評価する指標としては、作業性や離形性、シール性などがある。そして、耐火物接合部のシール性は、目地材自体の気密性、ならびに耐火物と目地材との密着性によって評価される。ここで「シール性」とは、二つの物体間における流体の漏れに関する指標であり、「気密性」は単一の物体における流体の漏れに関する指標である。
一般に、目地材の気密性を高めると、低気孔率且つ高硬度となり、耐火物との密着性が低下する。一方、目地材と耐火物との密着性を高めるためには可塑性を付与することが必要となるが、気密性が低下する。このため、単層で形成された従来の目地材では、気密性とシール性を両立することが困難であった。
また、目地材の使用に当たっては、冷間(常温)で加圧されて接合する場合と、熱間で加圧されて接合する場合とがあり、冷間セット時と熱間セット時とは、目地材の温度が大きく異なり、求められる性状も大きく異なる。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、冷間セットや熱間セットが行われる定形目地材において、良好なシール性及び気密性を両立させることが可能な定形目地材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る定形目地材は、第一のシート材の片面又は両面に第二のシート材が配置され、前記第一のシート材は、前記第二のシート材に比べて、ちょう度が低いことを特徴としている。
ここで、「ちょう度」とは、材料の硬さを表す指標であり、ちょう度が大きい材料ほど軟らかいことを示している。
耐火物接合部のシール性は、目地材自体の気密性、ならびに耐火物と目地材との密着性によって評価される。そして、一般に目地材は、気密性を高めると、耐火物との密着性が低下し、耐火物との密着性を高めるために可塑性を付与すると、気密性が低下する。
そこで、本発明では、ちょう度の異なる第一のシート材と第二のシート材とを併用することとし、第一のシート材により目地材自体の気密性を確保すると共に、第二のシート材により接合する耐火物との密着性を確保することとした。このように第一のシート材と第二のシート材に異なる機能を付与することで、冷間(常温)セット時と熱間セット時それぞれに最適な定形目地材を提供することが可能となる。
また、本発明に係る定形目地材では、前記第一のシート材のちょう度が10以下、前記第二のシート材のちょう度が40以上であることを好適とする。
ここで、ちょう度の値は、JIS R2506「耐火モルタルのちょう度試験方法」によって得られた値とする。
気密性を確保するためには、第一のシート材のちょう度を10以下とすることが好ましく、ゼロでもよい。一方、密着性を確保するためには、第二のシート材のちょう度を40以上とすることが好ましいが、ちょう度が高くなりすぎると固形性が保てなくなるので、ちょう度の上限値は100以下であることが好ましい。
本発明に係る定形目地材では、ちょう度の異なる第一のシート材と第二のシート材とを隣接して配置して、第一のシート材と第二のシート材に異なる機能を付与することで、冷間セット時と熱間セット時それぞれに最適な定形目地材を提供することが可能となる。
タンディッシュ内の溶融金属をモールド内に吐出する耐火ノズルの概略構成を示した模式図である。 (A)は本発明の第一の実施の形態に係る定形目地材の平面図、(B)はA−A矢視断面図である。 (A)は本発明の第二の実施の形態に係る定形目地材の平面図、(B)はB−B矢視断面図である。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
[第一の実施の形態]
図1は、タンディッシュ(図示省略)内の溶融金属をモールド(図示省略)内に吐出する耐火ノズルの概略構成を示したものであり、上から下へ向かって上ノズル20、上プレート21、下プレート22、下ノズル23、浸漬ノズル24の順に配置されている。
上プレート21は、スライディングノズル装置を構成する固定金枠(図示省略)を介してタンディッシュの底面に固定されている。下プレート22は、スライディングノズル装置を構成するスライド金枠(図示省略)に保持され、上プレート21の下面に沿って摺動する。上プレート21の上面には、目地材25を介して上ノズル20が接合されている。下プレート22の下面には、目地材26を介して下ノズル23が接合されている。そして、下ノズル23の下面には、本発明の第一の実施の形態に係る定形目地材10を介して浸漬ノズル24が接合されている。
本実施の形態における定形目地材10の平面図及び断面図を図2に示す。図2(B)に示すように、定形目地材10は、第一のシート材12の両面にそれぞれ第二のシート材13が配置された3層構造とされており、接合される下ノズル23及び浸漬ノズル24の接合面の形状に合わせて、第一のシート材12及び第二のシート材13は平面視して環状に形成されている(図2(A)参照)。
第一のシート材12と第二のシート材13は、異なるちょう度を有している。第二のシート材13のほうが第一のシート材12に比べてちょう度が高く、第一のシート材12のちょう度は10以下、第二のシート材13のちょう度は40以上であることが好ましい。
そして、定形目地材10は、加圧接合されると、第一のシート材12の両面に配置した第二のシート材13が軟化変形して下ノズル23と浸漬ノズル24にそれぞれ密着して密着性が向上する。この時、定形目地材10自体の気密性は第一のシート材12によって確保される。また、第一のシート材12は気密性と耐食性の機能を有し、第二のシート材13は密着性と焼付防止性の機能を有している。このように本実施の形態にかかる定形目地材10は、ちょう度の高い(軟らかい)第二のシート材13で、ちょう度の低い(硬い)第一のシート材12を挟み込んでおり、常温で良好なシール性を具備していることから、冷間(常温)セットでの使用に適している。
本実施の形態では、第一のシート材12の厚さが2〜3mm、第二のシート材13の厚さが各2〜4mmとされ、定形目地材10の総厚は6〜10mmとなっている。シール性を確保するため、定形目地材10の総厚は無負荷状態で10mm以下が好ましい。一方、気密性を確保するためには、軟化変形後の定形目地材10の総厚を1mm以上とする必要があることから、無負荷状態における定形目地材10の総厚は2mm以上であることが好ましい。
また、第一のシート材12と第二のシート材13とは接着剤等を用いて一体化する必要はない。下ノズル23と浸漬ノズル24との間に定形目地材10を介装する際は、2枚の第二のシート材13の間に第一のシート材12を挟むだけでよく、加圧接合されることで第二のシート材13が軟化変形して第一のシート材12と第二のシート材13は一体化される。
なお、上記実施の形態では、下プレート22と浸漬ノズル24との間に下ノズル23が介装されている場合を例に採り説明したが、下プレート22と浸漬ノズル24とが直接接合される場合も同様である。
[第二の実施の形態]
本実施の形態にかかる定形目地材11の平面図及び断面図を図3に示す。図3(B)に示すように、定形目地材11は、第一のシート材12の一方の面に金属箔としてアルミ箔14が配置され、他方の面に第二のシート材13が配置された3層構造とされている。第一のシート材12、第二のシート材13、及びアルミ箔14は、接合される下ノズル23及び浸漬ノズル24の接合面の形状に合わせて、平面視して環状に形成されている(図3(A)参照)。
第一のシート材12と第二のシート材13のちょう度や厚さなどは第一の実施の形態と同様である。下ノズル23と浸漬ノズル24との間に定形目地材11を介装する際は、予熱された浸漬ノズル24の接合面にアルミ箔14が接するように配置する。
後述する実施例で示すように、アルミ箔14などの金属箔を設置しなくとも、従来に比べて良好なシール性を備えた定形目地材を得ることができる。しかし、アルミ箔14などの金属箔を設置することによって、浸漬ノズル24から第一のシート材12及び第二のシート材13への熱伝導速度を遅らせることができる。これにより、第一のシート材12及び第二のシート材13の硬化時間が遅くなり、第一のシート材12及び第二のシート材13の可塑性を維持することができる。従って、金属箔を備えることが望ましい。
このように本実施の形態にかかる定形目地材は、ちょう度の高い(柔らかい)第二のシート材13が下ノズル23と接し、熱間で軟化するちょう度の低い(硬い)第一のシート材12がアルミ箔14を介して浸漬ノズル24と接するため、浸漬ノズル24を予熱する熱間セット(600℃以上、好ましくは800℃以上)に適している。
第一のシート材12及び第二のシート材13の構成材料の一例及び好ましいちょう度を表1に示す。第一のシート材12の主構成原料は、アルミナ粉、粘土、及びバルクファイバーである。一方、第二のシート材13の主構成原料は、アルミナ粉、粘土、バルクファイバー、及びカーボン粉末であり、カーボン粉末が含まれている。また、第一のシート材12と第二のシート材13のバインダーとしては、フェノール樹脂などを用いることができる。
Figure 2010207892
第一のシート材12及び第二のシート材13に使用する構成原料の化学成分と、当該化学成分を有する第一のシート材12及び第二のシート材13のちょう度の一例を表2に示す。なお、バインダーとして使用したフェノール樹脂の量は、第一のシート材12の場合、構成原料100質量部に対して5質量部、第二のシート材13の場合、構成原料100質量部に対して20質量部とした。構成原料にバインダーを添加してミキサーで混練した後、加圧成形することで第一のシート材12及び第二のシート材13が得られる。
Figure 2010207892
ちょう度の測定は、JIS R2506「耐火モルタルのちょう度試験方法」に従い、ちょう度計を用いて行う。ちょう度計は、所定量の試料を載せる試料台と、試料に対して垂直に落下する円錐と、円錐の先端部が試料中に貫入した深さを測定するダイヤルゲージなどを備えている。ちょう度を測定する際は、試料入り容器を試料台に載せ、円錐の先端が試料の表面に接した状態から5秒間落下させたときの貫入深さをダイヤルゲージで読み、3回の測定結果の平均値をちょう度として整数で求める。
定形目地材の性能について実施した試験結果の一覧を表3に示す。ここで、実施例1は第一のシート材12の両面に第二のシート材13を配置した冷間セット用の定形目地材、実施例2は第一のシート材12の一方の面にアルミ箔14を、他方の面に第二のシート材13を配置した熱間セット用の定形目地材である。一方、比較例1は第二のシート材13のみの単層の定形目地材、比較例2は第一のシート材12のみの単層の定形目地材である。
Figure 2010207892
シール性の評価は以下の方法で実施した。
常温において、中空部を有する筒状の押付ロッドの一方の端面に定形目地材を貼り付けた後、当該端面を金物に密着させて所定の面圧まで加圧した。そして、中空部のエアーを抜いて0.5atmまで減圧し、中空部の気圧が1atmに復帰するまでの復帰時間を計測した。表3のシール性の数値は、比較例1の復帰時間を100として各定形目地材の復帰時間を表したものである。従って、この数値が大きいほど、エアーリークが少なくシール性が高いことを示しており、実施例1及び実施例2は、比較例1及び比較例2に比べてシール性が高いことがわかる。
また、表3の実炉評価では、◎が良好、○が普通、△が要改善を表している。比較例1はアルミナ閉塞が有ったため要改善とし、比較例2は部分的に亀裂からのエアー吸引があったため要改善とした。一方、実施例1は、エアー吸引が少なかったため普通とし、実施例2はエアー吸引及びノズル閉塞が認められずシール性は良好であった。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、定形目地材の平面形状を環状としているが、方形など他の形状でもよいことは言うまでもない。
10、11:定形目地材、12:第一のシート材、13:第二のシート材、14:アルミ箔(金属箔)、20:上ノズル、21:上プレート、22:下プレート、23:下ノズル、24:浸漬ノズル、25、26:目地材

Claims (2)

  1. 第一のシート材の片面又は両面に第二のシート材が配置され、前記第一のシート材は、前記第二のシート材に比べて、ちょう度が低いことを特徴とする定形目地材。
  2. 請求項1記載の定形目地材において、前記第一のシート材のちょう度が10以下、前記第二のシート材のちょう度が40以上である定形目地材。
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