JP2010205419A - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、高効率化および長寿命化を実現することが可能であり、色変化の少ない有機EL素子を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、陽極と正孔注入輸送層と陽極側発光層と陰極側発光層と電子注入輸送層と陰極とが順に積層され、上記正孔注入輸送層および上記電子注入輸送層が同一のバイポーラ材料を含有し、上記陽極側発光層の構成材料と上記陰極側発光層の構成材料と上記正孔注入輸送層および上記電子注入輸送層の構成材料とが互いに異なり、正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力Ea1≧陽極側発光層の構成材料の電子親和力Ea2であり、陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルIp3≧電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルIp4であることを特徴とする有機EL素子を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数層の発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
有機エレクトロルミネッセンス(以下、エレクトロルミネッセンスをELと略す場合がある。)素子は、自発光型のディスプレイとしての使用が注目されており、特に、白色光源としての利用が期待されている。
白色光は、通常、2種類または3種類の発光材料の発光により得ることができる。しかしながら、発光層に複数種類の発光材料が含まれる場合には、発光材料間でエネルギー移動が起こり、色度が変化してしまうという問題がある。そこで、互いに異なる発光材料を含有する複数層の発光層を積層することが提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。
有機EL素子は、長寿命および高効率化の達成のため、正孔もしくは電子の注入機能、輸送機能を有する材料を用いて複数の層を積層した多層構造をとることが一般的である。しかしながら、多層構造を有する有機EL素子では、駆動中に各層の界面にて劣化が生じることによって、発光効率が低下することが懸念される。
また、多層構造を有する有機EL素子では、発光層内に正孔および電子を効率的に閉じ込めるために、電極および発光層の間に対極側への正孔もしくは電子の突き抜けを防止するブロッキング層を設けることが知られている。このブロッキング層が設けられた有機EL素子では、特に、発光層とブロッキング層との界面に電荷が蓄積しやすく、そのため界面にて劣化が生じやすい。
このような各層の界面での劣化は、特に、複数層の発光層が積層されている場合には、色変化を引き起こしやすい。
特開2000−68057号公報 特開2003−282266号公報 国際公開第2005/91684号パンフレット 特開2006−269232号公報 国際公開第2008−102644号パンフレット
本発明者らは、駆動中に各層の界面にて劣化が生じるのを抑制する手法として、各層のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力の大小関係を規定し、ブロッキング層を有さない有機EL素子を提案している(特許文献5参照)。しかしながら、特許文献5では、複数層の発光層が積層されている有機EL素子についての検討はなされていない。
また、複数層の発光層が積層されている場合に色変化を少なくするためには、さらなる改善の余地がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高効率化および長寿命化を実現することが可能であり、色変化の少ない有機EL素子を提供することを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、陽極と、上記陽極上に形成された正孔注入輸送層と、上記正孔注入輸送層上に形成された陽極側発光層と、上記陽極側発光層上に形成された陰極側発光層と、上記陰極側発光層上に形成された電子注入輸送層と、上記電子注入輸送層上に形成された陰極とを有する有機EL素子であって、上記正孔注入輸送層および上記電子注入輸送層が正孔および電子を輸送しうるバイポーラ材料を含有し、上記正孔注入輸送層および上記電子注入輸送層に含有されるバイポーラ材料が同一であり、上記陽極側発光層の構成材料と上記陰極側発光層の構成材料と上記正孔注入輸送層および上記電子注入輸送層の構成材料とが互いに異なり、上記正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1、上記陽極側発光層の構成材料の電子親和力をEa2としたとき、Ea1≧Ea2であり、上記陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、上記電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp4としたとき、Ip3≧Ip4であることを特徴とする有機EL素子を提供する。
本発明によれば、正孔注入輸送層および陽極側発光層の構成材料の電子親和力がEa1≧Ea2であるので、駆動中における正孔注入輸送層および発光層の界面での電荷の蓄積がなく、劣化を抑制することができる。また、陰極側発光層および電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルがIp3≧Ip4であるので、駆動中における発光層および電子注入輸送層の界面での電荷の蓄積がなく、劣化を抑制することができる。さらに、正孔注入輸送層および電子注入輸送層が同一のバイポーラ材料を含有することにより、正孔が電子注入輸送層に突き抜けたり、電子が正孔注入輸送層に突き抜けたりしても、駆動中における各層の界面での劣化を効果的に抑制することができる。したがって、高効率および長寿命で色変化の少ない有機EL素子とすることが可能である。
上記発明においては、上記陽極側発光層および上記陰極側発光層の間に中央発光層が形成されていてもよく、この場合、上記中央発光層の構成材料が、上記陽極側発光層の構成材料または上記陰極側発光層の構成材料と同一であってもよい。また、上記陽極側発光層および上記陰極側発光層の間に中央発光層が形成されていてもよく、この場合、上記陽極側発光層の構成材料と上記陰極側発光層の構成材料と上記中央発光層の構成材料とが互いに異なっていてもよい。例えば、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用いる場合には、陽極側発光層、陰極側発光層および中央発光層にそれぞれ1種類の発光ドーパントを含有させ、3種類の発光ドーパントをそれぞれ光らせることで、白色光を得ることができる。
また本発明においては、上記陽極側発光層および上記陰極側発光層がホスト材料および発光ドーパントを含有し、上記陽極側発光層および上記陰極側発光層の少なくともいずれか一方が上記発光ドーパントを含有する1箇所以上のドープ領域と上記発光ドーパントを含有しない1箇所以上のノンドープ領域とを有することが好ましい。陽極側発光層および陰極側発光層の少なくともいずれか一方がノンドープ領域を有することにより、ドープ領域中の発光ドーパントから他の物質へエネルギー移動が起こるのを抑制し、発光効率を高めることができるからである。
上記の場合、上記陽極側発光層が、上記陰極側発光層側に上記ノンドープ領域を有していてもよい。陽極側発光層中の発光ドーパントと、陰極側発光層中の発光ドーパントまたは中央発光層中の発光ドーパントとの間でのエネルギー移動を抑制することができるからである。
また上記の場合、上記陰極側発光層が、上記陽極側発光層側に上記ノンドープ領域を有していてもよい。陽極側発光層中の発光ドーパントまたは中央発光層中の発光ドーパントと、陰極側発光層中の発光ドーパントとの間でのエネルギー移動を抑制することができるからである。
さらに上記の場合、上記陽極側発光層が、上記正孔注入輸送側に上記ノンドープ領域を有していてもよい。例えば、陽極側発光層に含まれる発光ドーパントから正孔注入輸送層の構成材料へエネルギー移動が起こり得る場合には、陽極側発光層が正孔注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。また、陽極側発光層が正孔注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより、正孔注入輸送層から陽極側発光層への正孔注入を良好なものとすることができる。さらに、正孔注入輸送層および陽極側発光層の構成材料の電子親和力がEa1≧Ea2であるものの、陽極側発光層が正孔注入輸送層側にノンドープ領域を有するので、発光ドーパントによる電荷のトラップによって、陽極側発光層へ注入される電荷のバランスをとることができる。
また上記の場合、上記陰極側発光層が、上記電子注入輸送側に上記ノンドープ領域を有していてもよい。例えば、陰極側発光層に含まれる発光ドーパントから電子注入輸送層の構成材料へエネルギー移動が起こり得る場合には、陰極側発光層が電子注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。また、陰極側発光層が電子注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより電子注入輸送層から陰極側発光層への電子注入を良好なものとすることができる。さらに、電子注入輸送層および陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルがIp3≧Ip4であるものの、陰極側発光層が電子注入輸送層側にノンドープ領域を有するので、発光ドーパントによる電荷のトラップによって、陰極側発光層へ注入される電荷のバランスをとることができる。
さらに上記の場合、上記陽極側発光層および上記陰極側発光層の少なくともいずれか一方が2箇所の上記ドープ領域を有し、上記2箇所のドープ領域の間に上記ノンドープ領域が配置されており、上記2箇所のドープ領域がそれぞれ異なる種類の発光ドーパントを含有していてもよい。例えば、一方のドープ領域に含まれる発光ドーパントから他方のドープ領域に含まれる発光ドーパントへエネルギー移動が起こり得る場合には、これらの2つのドープ領域の間にノンドープ領域が配置されていることにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができるからである。
また本発明においては、上記陽極および上記正孔注入輸送層の間に第2正孔注入輸送層が形成されていてもよく、この場合、上記第2正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa5としたときEa5<Ea1であり、かつ、上記第2正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp5としたときIp5≦Ip1であってもよい。Ea5<Ea1であるので、エネルギー障壁が存在することにより正孔注入輸送層から陽極側への電子の突き抜けを防ぎ、第2正孔注入輸送層および陽極の界面での劣化を抑制することができるからである。また、Ip5≦Ip1であるので、陽極から正孔を注入しやすくすることができるからである。
さらに本発明においては、上記電子注入輸送層および上記陰極の間に第2電子注入輸送層が形成されていてもよく、この場合、上記第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp6としたときIp4<Ip6であり、かつ、上記第2電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa6としたときEa4≦Ea6であってもよい。Ip4<Ip6であるので、エネルギー障壁が存在することにより電子注入輸送層から陰極側への正孔の突き抜けを防ぎ、第2電子注入輸送層および陰極の界面での劣化を抑制することができるからである。また、Ea4≦Ea6であるので、陰極から電子を注入しやすくすることができるからである。
また本発明においては、上記陽極側発光層および上記陰極側発光層の少なくともいずれか一方が2種類以上の発光ドーパントを含有することが好ましい。例えば、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用いる場合には、陽極側発光層および陰極側発光層のうち、一方に1種類の発光ドーパントを含有させ、他方に2種類の発光ドーパントを含有させて、3種類の発光ドーパントをそれぞれ光らせることで、白色光を得ることができるからである。
さらに本発明においては、上記陽極側発光層および上記陰極側発光層のうち、一方が蛍光発光ドーパントを含有し、他方が燐光発光ドーパントを含有することが好ましい。蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントの間でエネルギー移動を抑制し、発光効率を高めるとともに、所望の発光色を得ることができるからである。
さらに本発明においては、上記正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp1、上記陽極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp2としたとき、Ip1<Ip2であり、上記陰極側発光層の構成材料の電子親和力をEa3、上記電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa4としたとき、Ea3<Ea4であることが好ましい。正孔注入輸送層から陽極側発光層への正孔輸送において多少のエネルギー障壁が存在することにより、陽極側発光層への正孔の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。また、電子注入輸送層から陰極側発光層への電子輸送において多少のエネルギー障壁が存在することにより、陰極側発光層への電子の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。
本発明においては、正孔注入輸送層および陽極側発光層の構成材料の電子親和力ならびに陰極側発光層および電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルが所定の関係を満たし、正孔注入輸送層および電子注入輸送層が同一のバイポーラ材料を含有することにより、高効率化および長寿命化を図り、色変化を少なくすることができるという効果を奏する。
本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子のバンドダイヤグラムの一例を示す模式図である。 本発明の有機EL素子のバンドダイヤグラムの他の例を示す模式図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子のバンドダイヤグラムの他の例を示す模式図である。 本発明の有機EL素子のバンドダイヤグラムの他の例を示す模式図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子のバンドダイヤグラムの他の例を示す模式図である。 本発明の有機EL素子のバンドダイヤグラムの他の例を示す模式図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。
以下、本発明の有機EL素子について詳細に説明する。
本発明の有機EL素子は、陽極と、上記陽極上に形成された正孔注入輸送層と、上記正孔注入輸送層上に形成された陽極側発光層と、上記陽極側発光層上に形成された陰極側発光層と、上記陰極側発光層上に形成された電子注入輸送層と、上記電子注入輸送層上に形成された陰極とを有する有機EL素子であって、上記正孔注入輸送層および上記電子注入輸送層が正孔および電子を輸送しうるバイポーラ材料を含有し、上記正孔注入輸送層および上記電子注入輸送層に含有されるバイポーラ材料が同一であり、上記陽極側発光層の構成材料と上記陰極側発光層の構成材料と上記正孔注入輸送層および上記電子注入輸送層の構成材料とが互いに異なり、上記正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1、上記陽極側発光層の構成材料の電子親和力をEa2としたとき、Ea1≧Ea2であり、上記陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、上記電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp4としたとき、Ip3≧Ip4であることを特徴とするものである。
なお、本発明において、「各層の構成材料が互いに異なる」とは、各層が単一の材料で構成されている場合には、その材料が異なることをいい、また各層がホスト材料とドーパントとから構成されている場合には、ホスト材料が異なることをいう。
また、本発明において、「各層の構成材料のイオン化ポテンシャル」とは、各層が単一の材料で構成されている場合には、その材料のイオン化ポテンシャルをいい、また各層がホスト材料とドーパントとから構成されている場合には、ホスト材料のイオン化ポテンシャルをいう。同様に、「各層の構成材料の電子親和力」とは、各層が単一の材料で構成されている場合には、その材料の電子親和力をいい、また各層がホスト材料とドーパントとから構成されている場合には、ホスト材料の電子親和力をいう。
イオン化ポテンシャルは、UPS(紫外光電子分光法)(例えば測定機名「AC−2」理研計器製)により求めた値とする。また、電子親和力の測定方法としては、まずHOMOエネルギーをUPS(紫外光電子分光法)(例えば測定機名「AC−2」理研計器製)により求め、次いで光吸収によるエネルギーギャップ測定値と上記HOMOエネルギーから算出する方法を採用する。
さらに、本発明において、「バイポーラ材料」とは、正孔および電子のいずれをも安定に輸送することができる材料であって、材料に還元性ドーパントをドープしたものを用いて電子のユニポーラデバイスを作製した場合に電子を安定に輸送することができ、かつ、材料に酸化性ドーパントをドープしたものを用いて正孔のユニポーラデバイスを作製した場合に正孔を安定に輸送することができる材料をいう。ユニポーラデバイスを作製する際には、具体的には、還元性ドーパントとして、Csもしくは8−ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)を材料にドープしたものを用いて電子のユニポーラデバイスを作製し、酸化性ドーパントとしてVもしくはMoOを材料にドープしたものを用いて正孔のユニポーラデバイスを作製することができる。
本発明の有機EL素子について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、有機EL素子1は、基板2上に、陽極3と正孔注入輸送層4と陽極側発光層5と陰極側発光層6と電子注入輸送層7と陰極8とが順次積層されたものである。正孔注入輸送層4および電子注入輸送層7はバイポーラ材料を含有しており、正孔注入輸送層4および電子注入輸送層7に含有されるバイポーラ材料は同一となっている。また、陽極側発光層5の構成材料と陰極側発光層6の構成材料と正孔注入輸送層4および電子注入輸送層7の構成材料とは互いに異なっている。
図2(a)〜(e)および図3(a)〜(c)はそれぞれ、本発明の有機EL素子のバンドダイヤグラムの一例を示す模式図である。図1に例示する有機EL素子において、正孔注入輸送層4のイオン化ポテンシャルをIp1、陽極側発光層5の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp2、陰極側発光層6の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、電子注入輸送層7の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp4とし、正孔注入輸送層4の構成材料の電子親和力をEa1、陽極側発光層5の構成材料の電子親和力をEa2、陰極側発光層6の構成材料の電子親和力をEa3、電子注入輸送層7の構成材料の電子親和力をEa4とする。
正孔注入輸送層および陽極側発光層の構成材料の電子親和力の関係はEa1≧Ea2であり、陰極側発光層および電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係はIp3≧Ip4である。
また、正孔注入輸送層および電子注入輸送層は同一のバイポーラ材料を含有することから、正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係はIp1=Ip4であり、正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料の電子親和力の関係はEa1=Ea4である。
さらに、正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料と陽極側発光層の構成材料とは異なることから、Ip1=Ip2=Ip4のときEa1≠Ea2かつEa2≠Ea4、および、Ea1=Ea2=Ea4のときIp1≠Ip2かつIp2≠Ip4である。同様に、正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料と陰極側発光層の構成材料とは異なることから、Ip1=Ip3=Ip4のときEa1≠Ea3かつEa3≠Ea4、および、Ea1=Ea3=Ea4のときIp1≠Ip3かつIp3≠Ip4である。また、陽極側発光層の構成材料と陰極側発光層の構成材料とは異なることから、Ip2=Ip3のときEa2≠Ea3、および、Ea2=Ea3のときIp2≠Ip3である。
通常、正孔注入輸送層および陽極側発光層の電子親和力がEa1≧Ea2であり、陰極側発光層および電子注入輸送層のイオン化ポテンシャルがIp3≧Ip4である場合には、発光層内で効率良く電荷再結合を起こし励起状態を生成させ放射失活させることが困難であり発光効率が低下したり、また対極への正孔および電子の突き抜けが起こり正孔注入輸送層へ電子が注入されたり電子注入輸送層へ正孔が注入されたりすることによって寿命特性が悪くなったりすることが想定される。しかしながら、本発明においては、Ea1≧Ea2かつIp3≧Ip4であることにより、対極への正孔および電子の突き抜けは起こるものの、陽極および陰極間を正孔および電子が円滑に輸送されるので、駆動中における正孔注入輸送層と陽極側発光層との界面および陰極側発光層と電子注入輸送層との界面での電荷の蓄積がなく、各層の界面での劣化を抑制することができる。また、正孔および電子が円滑に輸送されることによって、発光層内全体で正孔および電子が再結合するため、正孔および電子の再結合効率が著しく低下することもない。
また本発明によれば、バイポーラ材料を正孔注入輸送層および電子注入輸送層に用いることにより、駆動中における正孔注入輸送層と陽極側発光層との界面および陰極側発光層と電子注入輸送層との界面での劣化を効果的に抑制することができる。
したがって、高効率化を図り、顕著に安定な寿命特性を得ることできるとともに、色変化を小さくすることが可能である。
さらに本発明によれば、正孔注入輸送層および電子注入輸送層が同一のバイポーラ材料を含有するので、正孔が電子注入輸送層に突き抜けたり、電子が正孔注入輸送層に突き抜けたりしても、正孔注入輸送層および電子注入輸送層が劣化するのを抑制することができる。また、真空蒸着法等により正孔注入輸送層および電子注入輸送層を成膜する場合には、共通の蒸着源を用いることができ、製造工程上有利である。
また本発明においては、陽極側発光層の構成材料と陰極側発光層の構成材料と正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料とが互いに異なることにより、発光層に可視光領域の発光を呈する少なくとも2色の燐光もしくは蛍光発光ドーパントを用いた素子において、連続駆動中の色変化および駆動電圧による色変化を抑制することが可能となる。
以下、本発明の有機EL素子における各構成について説明する。
1.イオン化ポテンシャルおよび電子親和力
本発明においては、正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1、陽極側発光層の構成材料の電子親和力をEa2としたとき、Ea1≧Ea2であり、陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp4としたとき、Ip3≧Ip4である。
正孔注入輸送層および陽極側発光層の構成材料の電子親和力の関係としては、正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1、陽極側発光層の構成材料の電子親和力をEa2としたとき、Ea1≧Ea2であればよいが、中でも、Ea1>Ea2であることが好ましい。Ea1>Ea2かつIp1<Ip2であれば、陽極側発光層の構成材料のバンドギャップエネルギーを比較的大きくすることができるからである。例えば陽極側発光層がホスト材料および発光ドーパントを含有する場合には、発光効率の向上のために、陽極側発光層のホスト材料および発光ドーパントのイオン化ポテンシャルおよび電子親和力が所定の関係を満たすように、ホスト材料および発光ドーパントを選択することが容易となる。
Ea1>Ea2の場合、Ea1およびEa2の差としては、正孔注入輸送層および陽極側発光層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、0.2eV以上とすることがより好ましい。
正孔注入輸送層および陽極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp1、陽極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp2としたとき、通常はIp1≦Ip2とされる。この場合、正孔注入輸送層の構成材料と陽極側発光層の構成材料とは異なることから、Ea1=Ea2のときIp1≠Ip2であり、Ip1=Ip2のときEa1≠Ea2である。中でも、Ip1<Ip2であることが好ましい。正孔注入輸送層から陽極側発光層への正孔輸送において多少のエネルギー障壁が存在することにより、正孔の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。
Ip1<Ip2の場合、Ip1およびIp2の差としては、正孔注入輸送層および陽極側発光層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、0.2eV以上とすることがより好ましい。なお、Ip1およびIp2の差が比較的大きい場合であっても、駆動電圧を比較的高くすれば、正孔注入輸送層から陽極側発光層へ正孔を輸送させることができる。
陰極側発光層および電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp4としたとき、Ip3≧Ip4であればよいが、中でも、Ip3>Ip4であることが好ましい。Ip3>Ip4かつEa3<Ea4であれば、陰極側発光層の構成材料のバンドギャップエネルギーを比較的大きくすることができるからである。例えば陰極側発光層がホスト材料および発光ドーパントを含有する場合には、発光効率の向上のために、陰極側発光層のホスト材料および発光ドーパントのイオン化ポテンシャルおよび電子親和力が所定の関係を満たすように、ホスト材料および発光ドーパントを選択することが容易となる。
Ip3>Ip4の場合、Ip3およびIp4の差としては、陰極側発光層および電子注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、0.2eV以上とすることがより好ましい。
陰極側発光層および電子注入輸送層の構成材料の電子親和力の関係としては、陰極側発光層の構成材料の電子親和力をEa3、電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa4としたとき、通常はEa3≦Ea4とされる。この場合、陰極側発光層の構成材料と電子注入輸送層の構成材料とは異なることから、Ip3=Ip4のときEa3≠Ea4であり、Ea3=Ea4のときIp3≠Ip4である。中でも、Ea3<Ea4であることが好ましい。電子注入輸送層から陰極側発光層への電子輸送において多少のエネルギー障壁が存在することにより、電子の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。
Ea3<Ea4の場合、Ea3およびEa4の差としては、陰極側発光層および電子注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、0.2eV以上0.5eV以下とすることがより好ましい。なお、Ea3およびEa4の差が比較的大きい場合であっても、駆動電圧を比較的高くすれば、電子注入輸送層から陰極側発光層へ電子を輸送させることができる。
陽極側発光層および陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、陽極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp2、陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3としたとき、Ip2<Ip3、Ip2=Ip3、Ip2>Ip3のいずれであってもよい。この場合、陽極側発光層の構成材料と陰極側発光層の構成材料とは異なることから、Ip2=Ip3のときEa2≠Ea3であり、Ea2=Ea3のときIp2≠Ip3である。
陽極側発光層および陰極側発光層の構成材料の電子親和力の関係としては、陽極側発光層の構成材料の電子親和力Ea2、陰極側発光層の構成材料の電子親和力をEa3としたとき、Ea2<Ea3、Ea2=Ea3、Ea2>Ea3のいずれであってもよい。この場合、陽極側発光層の構成材料と陰極側発光層の構成材料とは異なることから、上述したように、Ea2=Ea3のときIp2≠Ip3であり、Ip2=Ip3のときEa2≠Ea3である。
正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp1、電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp4としたとき、正孔注入輸送層および電子注入輸送層は同一のバイポーラ材料を含有することから、Ip1=Ip4である。また、正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料の電子親和力の関係としては、正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1、電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa4としたとき、正孔注入輸送層および電子注入輸送層は同一のバイポーラ材料を含有することから、Ea1=Ea4である。
本発明においては、図4に例示するように、陽極3および正孔注入輸送層4の間に第2正孔注入輸送層9が形成されていてもよい。
この場合、第2正孔注入輸送層9の構成材料の電子親和力をEa5、正孔注入輸送層4の構成材料の電子親和力をEa1とすると、図5に例示するようにEa5<Ea1であることが好ましい。陽極側への電子の突き抜けが起こり正孔注入輸送層へ電子が注入されたとしても、第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層間にエネルギー障壁が存在することにより第2正孔注入輸送層から陽極側への電子の突き抜けを防ぐことができる。そのため、第2正孔注入輸送層および陽極の界面での劣化を抑制することができる。また、第2正孔注入輸送層の構成材料は、正孔注入輸送層の構成材料と比較して、材料選択の幅が広く、第2正孔注入輸送層に好適な材料を用いることができる。これにより、陽極から第2正孔注入輸送層への正孔注入において有利な構成とすることができる。
Ea5<Ea1の場合、Ea5およびEa1の差としては、第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜2.0eVの範囲内である。
一方、第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力の関係としては、図6(a)、(b)に例示するようにEa5≧Ea1であることも好ましい。これにより、駆動中における第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の界面での電荷の蓄積がなく、劣化を抑制することができるからである。
上記の場合、第2正孔注入輸送層9の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp5、正孔注入輸送層4の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp1とすると、通常はIp5≦Ip1とされる。中でも、図5に例示するようにIp5<Ip1であることが好ましい。陽極側発光層のエネルギーギャップが比較的大きい場合には、陽極側発光層へ正孔が輸送され難くなるが、Ip5<Ip1となるように陽極および正孔注入輸送層の間に第2正孔注入輸送層が形成されていることにより、陽極側発光層へ正孔を円滑に輸送することができるからである。また、第2正孔注入輸送層から正孔注入輸送層への正孔輸送において多少のエネルギー障壁が存在することにより、正孔の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。
Ip5<Ip1の場合、Ip5およびIp1の差の差としては、第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜0.5eVの範囲内である。
本発明においては、図4に例示するように、電子注入輸送層7および陰極8の間に第2電子注入輸送層10が形成されていてもよい。
この場合、電子注入輸送層7の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp4、第2電子注入輸送層10の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp6とすると、図5に例示するようにIp4<Ip6であることが好ましい。陰極側への正孔の突き抜けが起こり電子注入輸送層へ正孔が注入されたとしても、電子注入輸送層および第2電子注入輸送層間にエネルギー障壁が存在することにより第2電子注入輸送層から陰極側への正孔の突き抜けを防ぐことができる。そのため、第2電子注入輸送層および陰極の界面での劣化を抑制することができる。また、第2電子注入輸送層の構成材料は、電子注入輸送層の構成材料と比較して、材料選択の幅が広く、第2電子注入輸送層に好適な材料を用いることができる。これにより、陰極から第2電子注入輸送層への電子注入において有利な構成とすることができる。
Ip4<Ip6の場合、Ip4およびIp6の差としては、電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜2.0eVの範囲内である。
一方、電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、図6(a)、(b)に例示するようにIp4≧Ip6であることも好ましい。これにより、駆動中における第2電子注入輸送層および電子注入輸送層の界面での電荷の蓄積がなく、劣化を抑制することができるからである。
上記の場合、電子注入輸送層7の構成材料の電子親和力をEa4、第2電子注入輸送層10の構成材料の電子親和力をEa6とすると、通常はEa4≦Ea6とされる。中でも、図5に例示するようにEa4<Ea6であることが好ましい。陰極側発光層のエネルギーギャップが比較的大きい場合には、陰極側発光層へ電子が輸送され難くなるが、Ea4<Ea6となるように陰極および電子注入輸送層の間に第2電子注入輸送層が形成されていることにより、陰極側発光層へ電子を円滑に輸送することができるからである。また、第2電子注入輸送層から電子注入輸送層への電子輸送において多少のエネルギー障壁が存在することにより、電子の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。
Ea4<Ea6の場合、Ea4およびEa6の差としては、電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜0.5eVの範囲内である。
本発明においては、図7に例示するように、第2正孔注入輸送層9および正孔注入輸送層4の間に第3正孔注入輸送層11が形成されていてもよい。
この場合、第2正孔注入輸送層、第3正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力の関係としては、第2正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa5、第3正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa7、正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1としたとき、図8(a)、(b)に例示するようにEa5<Ea7、Ea7≧Ea1であることが好ましい。これにより、陽極および第2正孔注入輸送層の界面、ならびに、第3正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の界面での劣化を抑制することができるからである。また、Ea5<Ea7であるので、第2正孔注入輸送層の構成材料の選択肢の幅が広くなるからである。
Ea5<Ea7の場合、Ea5およびEa7の差としては、第2正孔注入輸送層および第3正孔注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜2.0eVの範囲内である。
一方、第2正孔注入輸送層、第3正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力の関係としては、図9(a)、(b)に例示するようにEa5≧Ea7≧Ea1であることも好ましい。これにより、駆動中における各層の界面での劣化を抑制することができるからである。
上記の場合、第2正孔注入輸送層、第3正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、第2正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp5、第3正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp7、正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp1としたとき、通常はIp5≦Ip7≦Ip1とされる。中でも、Ip5<Ip7<Ip1であることが好ましい。Ip5およびIp1の差が比較的大きい場合には正孔が輸送され難くなるが、Ip5<Ip7<Ip1となるように第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の間に第3正孔注入輸送層が形成されていることにより、正孔を円滑に輸送することができるからである。また、多少のエネルギー障壁が存在することにより、正孔の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。
Ip5<Ip7<Ip1の場合、Ip5およびIp7の差、ならびに、Ip7およびIp1の差としては、正孔注入輸送層、第2正孔注入輸送層および第3正孔注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的にはそれぞれ0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜0.5eVの範囲内である。
本発明においては、図7に例示するように、電子注入輸送層7および第2電子注入輸送層10の間に第3電子注入輸送層12が形成されていてもよい。
この場合、電子注入輸送層、第3電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp4、第3電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp8、第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp6としたとき、図8(a)、(b)に例示するようにIp4≧Ip8、Ip8<Ip6であることが好ましい。これにより、電子注入輸送層および第3電子注入輸送層の界面、ならびに、第2正孔注入輸送層および陰極の界面での劣化を抑制することができるからである。また、Ip8<Ip6であるので、第2電子注入輸送層の構成材料の選択肢の幅が広くなるからである。
Ip8<Ip6の場合、Ip8およびIp6の差としては、第2電子注入輸送層および第3電子注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜2.0eVの範囲内である。
一方、電子注入輸送層、第3電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、図9(a)、(b)に例示するようにIp4≧Ip8≧Ip6であることが好ましい。これにより、駆動中における各層の界面での劣化を抑制することができるからである。
上記の場合、電子注入輸送層、第3電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料の電子親和力の関係としては、電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa4、第3電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa8、第2電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa6としたとき、通常はEa4≦Ea8≦Ea6とされる。中でも、Ea4<Ea8<Ea6であることが好ましい。Ea4およびEa6の差が比較的大きい場合には電子が輸送され難くなるが、Ea4<Ea8<Ea6となるように電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の間に第3電子注入輸送層が形成されていることにより、電子を円滑に輸送することができるからである。また、多少のエネルギー障壁が存在することにより、電子の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。
Ea4<Ea8<Ea6の場合、Ea4およびEa8の差、ならびに、Ea8およびEa6の差としては、電子注入輸送層、第2電子注入輸送層および第3電子注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的にはそれぞれ0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜0.5eVの範囲内である。
本発明においては、図10に例示するように、陽極側発光層5および陰極側発光層6の間に中央発光層13が形成されていてもよい。
この場合、中央発光層の構成材料が、陽極側発光層の構成材料または陰極側発光層の構成材料と同一であってもよい。よって、陽極側発光層、中央発光層および陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力の関係としては、陽極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp2、中央発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp9、陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3とし、陽極側発光層の構成材料の電子親和力をEa2、中央発光層の構成材料の電子親和力をEa9、陰極側発光層の構成材料の電子親和力をEa3としたとき、Ip2=Ip9かつEa2=Ea9、あるいは、Ip9=Ip3かつEa9=Ea3である。
またこの場合、陽極側発光層の構成材料と陰極側発光層の構成材料と中央発光層の構成材料とは互いに異なっていてもよい。よって、陽極側発光層、中央発光層および陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力の関係としては、陽極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp2、中央発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp9、陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3とし、陽極側発光層の構成材料の電子親和力をEa2、中央発光層の構成材料の電子親和力をEa9、陰極側発光層の構成材料の電子親和力をEa3としたとき、Ip2=Ip9のときEa2≠Ea9、かつ、Ea2=Ea9のときIp2≠Ip9であり、Ip9=Ip3のときEa9≠Ea3、かつ、Ea9=Ea3のときIp9≠Ip3であればよい。
なお、各層の構成材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力の測定方法は、上述したとおりである。
2.陽極側発光層および陰極側発光層
本発明において、陽極側発光層は正孔注入輸送層および陰極側発光層の間に形成され、陰極側発光層は電子注入輸送層および陽極側発光層の間に形成され、陽極側発光層の構成材料と陰極側発光層の構成材料とは異なるものである。陽極側発光層および陰極側発光層は、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を有する。
陽極側発光層および陰極側発光層の構成材料としては、色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料を挙げることができる。
色素系材料としては、例えば、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマーなどを挙げることができる。
金属錯体系材料としては、例えば、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、イリジウム金属錯体、プラチナ金属錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be、Ir、Pt等、またはTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子に、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム(Alq3)を用いることができる。
高分子系材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。また、上記の色素系材料および金属錯体系材料を高分子化したものも挙げられる。
また、陽極側発光層および陰極側発光層の構成材料はバイポーラ材料であってもよい。バイポーラ材料を陽極側発光層および陰極側発光層に用いることにより、駆動中における各層の界面での劣化を効果的に抑制することができるからである。
なお、バイポーラ材料については、後述の正孔注入輸送層の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。
陽極側発光層および陰極側発光層中には、発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的で、蛍光発光または燐光発光する発光ドーパントを添加してもよい。すなわち、陽極側発光層および陰極側発光層は、上記の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、バイポーラ材料等のホスト材料と、発光ドーパントとを含有するものであってもよい。
発光ドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体、イリジウム(Ir)化合物、白金化合物、金化合物、オスミウム化合物、ルテニウム(Ru)化合物、レニウム(Re)化合物等を挙げることができる。より具体的には、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(2,5,8,11-Tetra-tert-butylperylene)(ペリレン誘導体)、2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7,-テトラメチル-1H,5H,11H-10-(2-ベンゾチアゾリル)キノリジノ-[9,9a,1gh]クマリン(C545t)(2,3,6,7-Tetrahydro-1,1,7,7,-tetramethyl-1H,5H,11H-10-(2-benzothiazolyl)quinolizino-[9,9a,1gh]coumarin(C545t))(クマリン誘導体)、(5,6,11,12)-テトラフェニルナフタセン((5,6,11,12)-Tetraphenylnaphthacene)(ルブレン誘導体)、および、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(Tris(2-phenylpyridine)iridium(III);Ir(ppy)3)、トリス(1-フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(Tris(1-phenylisoquinoline)iridium(III);Ir(piq)3)、ビス(3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル-(2-カルボキシピリジル)イリジウム(III)(Bis(3,5-difluoro-2-(2-pyridyl)phenyl-(2-carboxypyridyl)iridium(III);FIrpic)(イリジウム化合物)が挙げられる。
陽極側発光層および陰極側発光層がホスト材料と発光ドーパントとを含有する場合、陽極側発光層および陰極側発光層は異なる種類の発光ドーパントを含有することが好ましい。陽極側発光層および陰極側発光層を積層することで、陽極側発光層中の発光ドーパントおよび陰極側発光層中の発光ドーパントの間でのエネルギー移動を抑制し、陽極側発光層中の発光ドーパントおよび陰極側発光層中の発光ドーパントの両方を光らせることができ、発光効率を高めるとともに、所望の発光色を得ることができるからである。
中でも、陽極側発光層および陰極側発光層のうち、一方が蛍光発光ドーパントを含有し、他方が燐光発光ドーパントを含有することが好ましい。単一の発光層内に蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントが含まれる場合には、蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントの間でエネルギー移動が起こるおそれがあるが、陽極側発光層および陰極側発光層のうち、一方に蛍光発光ドーパントを含有させ、他方に燐光発光ドーパントを含有させることで、蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントの間でエネルギー移動を抑制し、蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントの両方を光らせることができ、発光効率を高めるとともに、所望の発光色を得ることができるからである。
陽極側発光層および陰極側発光層が異なる種類の発光ドーパントを含有する場合、異なる種類の発光ドーパントの発光色は同じであってもよく異なっていてもよい。中でも、異なる種類の発光ドーパントの発光色は異なることが好ましい。陽極側発光層中の発光ドーパントおよび陰極側発光層中の発光ドーパントの両方を光らせることにより、所望の発光色を得ることができるからである。
陽極側発光層および陰極側発光層がホスト材料と発光ドーパントとを含有する場合、ホスト材料および発光ドーパントの電子親和力およびイオン化ポテンシャルの関係としては、ホスト材料の電子親和力をEah、発光ドーパントの電子親和力をEadとしたとき、Eah<Eadであり、かつ、ホスト材料のイオン化ポテンシャルをIph、発光ドーパントのイオン化ポテンシャルをIpdとしたとき、Iph>Ipdであることが好ましい。ホスト材料および発光ドーパントの電子親和力およびイオン化ポテンシャルが上記の関係を満たす場合には、正孔および電子が発光ドーパントにトラップされるので、発光効率を向上させることができるからである。
ここで、陽極側発光層および陰極側発光層を構成するホスト材料および発光ドーパントのイオン化ポテンシャルおよび電子親和力は、次のようにして得られる。イオン化ポテンシャルは、UPS(紫外光電子分光法)(例えば測定機名「AC−2」理研計器製)により求める。一方、電子親和力の測定方法としては、まずUPS(紫外光電子分光法)(例えば測定機名「AC−2」理研計器製)によりHOMOエネルギーを求め、次いで光吸収によるエネルギーギャップ測定値と上記HOMOエネルギーから算出する方法を採用する。
陽極側発光層および陰極側発光層がホスト材料および発光ドーパントを含有する場合、陽極側発光層および陰極側発光層では、発光ドーパント濃度が層の厚み方向に一定であってもよく、発光ドーパント濃度が層の厚み方向に分布を有していてもよい。
陽極側発光層および陰極側発光層の少なくともいずれか一方は、ホスト材料と、2種類以上の発光ドーパントとを含有していてもよい。例えば、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用いる場合、陽極側発光層および陰極側発光層のうち、一方に1種類の発光ドーパントを含有させ、他方に2種類の発光ドーパントを含有させて、3種類の発光ドーパントをそれぞれ発光させることにより、白色光を得ることができる。また例えば、ホスト材料と発光ドーパントとの励起エネルギーの差が比較的大きい場合には、ホスト材料および発光ドーパントの励起エネルギーの中間に励起エネルギーをもつ発光ドーパントをさらに含有させることにより、エネルギー移動を円滑に起こさせることができ、発光効率を向上させることができる。さらに例えば、電子よりも正孔を輸送しやすい発光ドーパントと、正孔よりも電子を輸送しやすい発光ドーパントとを含有させることにより、陽極側発光層および陰極側発光層へ注入される正孔および電子のバランスをとることができ、発光効率を向上させることができる。
陽極側発光層および陰極側発光層の少なくともいずれか一方が2種類以上の発光ドーパントを含有する場合、各発光ドーパントがそれぞれ発光してもよく、1種類のみが発光してもよい。発光ドーパントの励起エネルギーの大小、分布状態、および濃度により、1種類もしくはそれぞれの発光ドーパントの発光が得られる。
中でも、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用いて白色光を得る場合には、陽極側発光層および陰極側発光層のうち、一方に1種類の発光ドーパントを含有させ、他方に2種類の発光ドーパントを含有させて、3種類の発光ドーパントをそれぞれ発光させることが好ましい。
陽極側発光層および陰極側発光層の少なくともいずれか一方が、第1発光ドーパントと、ホスト材料の励起エネルギーよりも小さく、第1発光ドーパントの励起エネルギーよりも大きい励起エネルギーをもつ第2発光ドーパントとを含有する場合、第1発光ドーパントおよび第2発光ドーパントとしては、上述の発光ドーパントの中から適宜選択して用いることができる。例えば、ホスト材料として緑色発光するAlq3を用い、第1発光ドーパントとして赤色発光するDCMを用いる場合、第2発光ドーパントとして黄色発光するルブレンを用いることにより、Alq3(ホスト材料)→ルブレン(第2発光ドーパント)→DCM(第1発光ドーパント)の順に円滑にエネルギー移動を起こさせることができる。
陽極側発光層および陰極側発光層の少なくともいずれか一方が、電子よりも正孔を輸送しやすい第3発光ドーパントと、正孔よりも電子を輸送しやすい第4発光ドーパントとを含有する場合、第3発光ドーパントおよび第4発光ドーパントとしては、正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料、ならびに陽極側発光層および陰極側発光層のホスト材料の組み合わせに応じて、上述の発光ドーパントの中から適宜選択して用いることができる。例えば、正孔注入輸送層および電子注入輸送層にTBADNを用い、陽極側発光層のホスト材料にCBP、発光ドーパントにルブレンを用いた場合、ルブレンは電子よりも正孔を輸送しやすい発光ドーパントとなる。また例えば、正孔注入輸送層および電子注入輸送層にTBADNを用い、陽極側発光層のホスト材料にCBP、発光ドーパントにアントラセンジアミンを用いた場合、アントラセンジアミンは正孔よりも電子を輸送しやすい発光ドーパントとなる。
なお、ホスト材料および発光ドーパントを含有する陽極側発光層および陰極側発光層が、電子よりも正孔を輸送しやすいものであるか、正孔よりも電子を輸送しやすいものであるかは、ホスト材料と単一の発光ドーパントとを含有する陽極側発光層および陰極側発光層を有する有機EL素子の発光スペクトルの放射パターンの角度依存性を評価することにより確認することができる。すなわち、発光スペクトルの波長、材料の屈折率、有機EL素子にて陽極側発光層および陰極側発光層から光が取り出されるまでの光路長、および放射パターンの角度依存性から確認することができる。
陽極側発光層および陰極側発光層の少なくともいずれか一方が、電子よりも正孔を輸送しやすい第3発光ドーパントと、正孔よりも電子を輸送しやすい第4発光ドーパントとを含有する場合、ドープ領域内での第3発光ドーパントおよび第4発光ドーパントの濃度はそれぞれ、層の厚み方向に一定であってもよく、層の厚み方向に分布を有していてもよい。通常は、陽極側発光層および陰極側発光層内での第3発光ドーパントおよび第4発光ドーパントの濃度はそれぞれ、層の厚み方向に一定とされる。
陽極側発光層および陰極側発光層がホスト材料および発光ドーパントを含有する場合、陽極側発光層および陰極側発光層の少なくともいずれか一方は、発光ドーパントを含有する1箇所以上のドープ領域と発光ドーパントを含有しない1箇所以上のノンドープ領域とを有することが好ましい。
図11(a)に示す例においては、陽極側発光層5がドープ領域21とノンドープ領域22とを有し、ノンドープ領域22が陰極側発光層6側に配置されている。また、図11(b)に示す例においては、陰極側発光層6がドープ領域21とノンドープ領域22とを有し、ノンドープ領域22が陽極側発光層5側に配置されている。例えば陽極側発光層中の発光ドーパントおよび陰極側発光層中の発光ドーパントの間でエネルギー移動が起こり得る場合には、陽極側発光層および陰極側発光層の界面にノンドープ領域が設けられていることにより、上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。具体的には、陽極側発光層および陰極側発光層が互いに異なる色を発する発光ドーパントを含有しており、各発光ドーパントがそれぞれ発光することで白色光を得る場合には、陽極側発光層および陰極側発光層の界面にノンドープ領域が設けられていることが好ましい。また、陽極側発光層および陰極側発光層のうち、一方が蛍光発光ドーパントを含有し、他方が燐光発光ドーパントを含有しており、各発光ドーパントをそれぞれ発光させる場合にも、陽極側発光層および陰極側発光層の界面にノンドープ領域が設けられていることが好ましい。
図12に示す例においては、陽極側発光層5がドープ領域21aとノンドープ領域22aとを有し、ノンドープ領域22aが正孔注入輸送層4側に配置されており、また陰極側発光層6がドープ領域21bとノンドープ領域22bとを有し、ノンドープ領域22bが電子注入輸送層7側に配置されている。例えば陽極側発光層5中の発光ドーパントから正孔注入輸送層4の構成材料へエネルギー移動が起こり得る場合には、陽極側発光層5が正孔注入輸送層4側にノンドープ領域22aを有することにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。また、例えば陰極側発光層6中の発光ドーパントから電子注入輸送層7の構成材料へエネルギー移動が起こり得る場合には、陰極側発光層6が電子注入輸送層7側にノンドープ領域22bを有することにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。
図13(a)に示す例においては、陽極側発光層5が2箇所のドープ領域21a、21bと1箇所のノンドープ領域22とを有し、2箇所のドープ領域21a、21bの間にノンドープ領域22が配置されている。また、図13(b)に示す例においては、陰極側発光層6が2箇所のドープ領域21a、21bと1箇所のノンドープ領域22とを有し、2箇所のドープ領域21a、21bの間にノンドープ領域22が配置されている。例えばドープ領域21a中の発光ドーパントおよびドープ領域21b中の発光ドーパントの間でエネルギー移動が起こり得る場合には、2つのドープ領域21a,21bの間にノンドープ領域22が配置されていることにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。具体的には、2つのドープ領域が互いに異なる色を発する発光ドーパントを含有しており、各発光ドーパントがそれぞれ発光することで白色光を得る場合には、2箇所のドープ領域の間にノンドープ領域が配置されていることが好ましい。また、2つのドープ領域のうち、一方が蛍光発光ドーパントを含有し、他方が燐光発光ドーパントを含有しており、各発光ドーパントをそれぞれ発光させる場合にも、2箇所のドープ領域の間にノンドープ領域が配置されていることが好ましい。
このように、陽極側発光層および陰極側発光層の少なくともいずれか一方がノンドープ領域を有することにより、発光効率を向上させることができる。
なお、発光ドーパントを含有しないノンドープ領域とは、実質的に発光ドーパントを含有しない領域をいう。具体的には、ノンドープ領域とは、ホスト材料および発光ドーパントを共蒸着させて発光層を成膜する際に、発光ドーパントの蒸着源のシャッターを閉じることにより形成される領域をいう。また、ノンドープ領域の厚みが10nm以上である場合、ノンドープ領域とは、隣接するドープ領域中の発光ドーパントの含有量を100%としたときに、発光ドーパントの含有量が10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下である領域を有する領域をいう。
ドープ領域およびノンドープ領域の配置としては、陽極側発光層および陰極側発光層の少なくともいずれか一方が1箇所以上のドープ領域と1箇所以上のノンドープ領域とを有するような配置であれば特に限定されるものではない。例えば、図11(a)に示すように陽極側発光層5が陰極側発光層6側にノンドープ領域22を有していてもよく、図11(b)に示すように陰極側発光層6が陽極側発光層5側にノンドープ領域22を有していてもよく、図12に示すように陽極側発光層5が正孔注入輸送層4側にノンドープ領域22aを有していてもよく、同じく図12に示すように陰極側発光層6が電子注入輸送層7側にノンドープ領域22bを有していてもよく、図13(a)に示すように陽極側発光層5が2箇所のドープ領域21a,21bに挟まれたノンドープ領域22を有していてもよく、図13(b)に示すように陰極側発光層6が2箇所のドープ領域21a,21bに挟まれたノンドープ領域22を有していてもよい。また、図示しないが、陽極側発光層および陰極側発光層の少なくともいずれか一方が2箇所のドープ領域と3箇所のノンドープ領域とを有し、ドープ領域とノンドープ領域とが交互に配置されていてもよい。
ドープ領域およびノンドープ領域の配置は、発光ドーパントのエネルギー遷移を考慮して適宜選択される。中でも、正孔および電子の注入バランスがとれるように、ドープ領域およびノンドープ領域の配置を適宜選択することが好ましい。
図12に例示する有機EL素子においては、陽極側発光層5が正孔注入輸送層4側にノンドープ領域22aを有するので、正孔注入輸送層および陽極側発光層の界面で発光ドーパントが正孔注入を阻害することがなく、正孔注入輸送層から陽極側発光層への正孔注入を良好なものとすることができる。
ここで、本発明においては、正孔注入輸送層および陽極側発光層の構成材料の電子親和力の関係がEa1≧Ea2であり、陽極側発光層に注入された電子が対極へ突き抜けるのを防止するブロッキング層が設けられていないため、従来のブロッキング層を有する有機EL素子と同じようにして、陽極側発光層へ注入される正孔および電子のバランスをとることは困難である。
これに対して、図12に例示する有機EL素子においては、陽極側発光層が正孔注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより、発光ドーパントによる電荷のトラップを制御することができ、高効率な素子を得ることができる。例えば、発光ドーパントが正孔よりも電子を輸送しやすいものである場合には、電子の注入が過剰になる傾向がある。この場合には、陽極側発光層が正孔注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより、発光効率を向上させることができる。これは、陽極側発光層の正孔注入輸送層側(陽極側)にノンドープ領域を設け、陽極側発光層の陰極側発光層側(陰極側)にドープ領域を設けることにより、陰極から陽極側発光層に注入された電子が、陽極側発光層中でより多く発光ドーパントにトラップされ、特に陰極側でより多く発光ドーパントにトラップされて、陽極へ突き抜けるのを防止しているためであると思料される。すなわち、陽極側発光層が正孔注入輸送層側にノンドープ領域を有する場合には、電子の注入が過剰である場合に有用である。
また、図12に例示する有機EL素子においては、陰極側発光層6が電子注入輸送層7側にノンドープ領域22bを有するので、電子注入輸送層および陰極側発光層の界面で発光ドーパントが電子注入を阻害することがなく、電子注入輸送層から陰極側発光層への電子注入を良好なものとすることができる。
ここで、本発明においては、陰極側発光層および電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係がIp2≧Ip3であり、陰極側発光層に注入された正孔が対極へ突き抜けるのを防止するブロッキング層が設けられていないため、従来のブロッキング層を有する有機EL素子と同じようにして、発光層へ注入される正孔および電子のバランスをとることは困難である。
これに対して、図12に例示する有機EL素子においては、陰極側発光層が電子注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより、発光ドーパントによる電荷のトラップを制御することができ、高効率な素子を得ることができる。例えば、発光ドーパントが電子よりも正孔を輸送しやすいものである場合には、正孔の注入が過剰になる傾向がある。この場合には、陰極側発光層が電子注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより、発光効率を向上させることができる。これは、陰極側発光層の電子注入輸送層側(陰極側)にノンドープ領域を設け、陰極側発光層の陽極側発光層側(陽極側)にドープ領域を設けることにより、陽極から陰極側発光層に注入された正孔が、陰極側発光層中でより多く発光ドーパントにトラップされ、特に陽極側でより多く発光ドーパントにトラップされて、陰極へ突き抜けるのを防止しているためであると思料される。すなわち、陰極側発光層が電子注入輸送層側にノンドープ領域を有する場合には、正孔の注入が過剰である場合に有用である。
ノンドープ領域の数としては、1箇所以上であればよいが、通常、1〜3箇所程度とされる。一方、ドープ領域の数としては、1箇所以上であればよいが、通常、1〜2箇所程度とされる。
ドープ領域は、ホスト材料および発光ドーパントを含有する領域であればよく、ドープ領域では、発光ドーパント濃度が層の厚み方向に一定であってもよく、発光ドーパント濃度が層の厚み方向に分布を有していてもよい。通常は、ドープ領域では、発光ドーパント濃度が層の厚み方向に一定とされる。
ドープ領域は、ホスト材料と、2種類以上の発光ドーパントとを含有していてもよい。この場合、例えば、1箇所のドープ領域が2種類以上の発光ドーパントを含有していてもよく、2箇所のドープ領域が互いに異なる種類の発光ドーパントを含有していてもよい。
1箇所のドープ領域が2種類以上の発光ドーパントを含有する場合であって、例えば、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用いる場合には、陽極側発光層および陰極側発光層のうち、一方を1種類の発光ドーパントを含有するものとし、他方をドープ領域およびノンドープ領域を有し、このドープ領域が2種類の発光ドーパントを含有するものとして、3種類の発光ドーパントをそれぞれ発光させることにより、白色光を得ることができる。また、1箇所のドープ領域が2種類以上の発光ドーパントを含有する場合、例えば、ホスト材料と発光ドーパントとの励起エネルギーの差が比較的大きい場合には、ホスト材料および発光ドーパントの励起エネルギーの中間に励起エネルギーをもつ発光ドーパントをさらに含有させることにより、エネルギー移動を円滑に起こさせることができ、発光効率を向上させることができる。さらに例えば、電子よりも正孔を輸送しやすい発光ドーパントと、正孔よりも電子を輸送しやすい発光ドーパントとを含有させることにより、ドープ領域へ注入される正孔および電子のバランスをとることができ、発光効率を向上させることができる。
1箇所のドープ領域が2種類以上の発光ドーパントを含有する場合、各発光ドーパントがそれぞれ発光してもよく、1種類のみが発光してもよい。発光ドーパントの励起エネルギーの大小、分布状態、および濃度により、1種類もしくはそれぞれの発光ドーパントの発光が得られる。
中でも、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用いて白色光を得る場合であって、陽極側発光層および陰極側発光層のうち、一方を1種類の発光ドーパントを含有するものとし、他方をドープ領域およびノンドープ領域を有し、このドープ領域が2種類の発光ドーパントを含有するものとする場合には、ドープ領域中の2種類の発光ドーパントをそれぞれ発光させることが好ましい。
1箇所のドープ領域が、第1発光ドーパントと、ホスト材料の励起エネルギーよりも小さく、第1発光ドーパントの励起エネルギーよりも大きい励起エネルギーをもつ第2発光ドーパントとを含有する場合、第1発光ドーパントおよび第2発光ドーパントとしては、上述の発光ドーパントの中から適宜選択して用いることができる。
また、1箇所のドープ領域が、電子よりも正孔を輸送しやすい第3発光ドーパントと、正孔よりも電子を輸送しやすい第4発光ドーパントとを含有する場合、第3発光ドーパントおよび第4発光ドーパントとしては、正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料、ならびに陽極側発光層および陰極側発光層のホスト材料の組み合わせに応じて、上述の発光ドーパントの中から適宜選択して用いることができる。
1箇所のドープ領域が、電子よりも正孔を輸送しやすい第3発光ドーパントと、正孔よりも電子を輸送しやすい第4発光ドーパントとを含有する場合、ドープ領域内での第3発光ドーパントおよび第4発光ドーパントの濃度はそれぞれ、層の厚み方向に一定であってもよく、層の厚み方向に分布を有していてもよい。通常は、ドープ領域内での第3発光ドーパントおよび第4発光ドーパントの濃度はそれぞれ、層の厚み方向に一定とされる。
一方、2箇所のドープ領域が互いに異なる種類の発光ドーパントを含有する場合であって、例えば、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用い、陽極側発光層および陰極側発光層のうち、一方を1種類の発光ドーパントを含有するものとし、他方を2箇所のドープ領域およびノンドープ領域を有し、この2箇所のドープ領域をそれぞれ1種類の発光ドーパントを含有するものとする場合には、2箇所のドープ領域の間にノンドープ領域が配置されていることにより、発光ドーパント間のエネルギー移動を抑制して、発光ドーパントをそれぞれ発光させることができ、発光効率を向上させるともに、白色光を得ることができる。
本発明において、白色光を得る場合には、陽極側発光層および陰極側発光層に異なる種類の発光ドーパントを含有させることが好ましい。例えば、赤色・青色・緑色の3種類の発光ドーパント、青色・黄色の2種類の発光ドーパント、水色・橙色の2種類の発光ドーパント、緑色・紫色の2種類の発光ドーパントの組み合わせを挙げることができる。中でも、赤色・青色・緑色の3種類の発光ドーパントを用いることが好ましい。
赤色・青色・緑色の3種類の発光ドーパントを用いる場合、上述したように、陽極側発光層および陰極側発光層のうち、一方が蛍光発光ドーパントを含有し、他方が燐光発光ドーパントを含有することが好ましいことから、例えば、一方に青色蛍光発光ドーパントを含有させ、他方に赤色燐光発光ドーパントおよび緑色蛍光発光ドーパントを含有させる、あるいは、一方に赤色蛍光発光ドーパントを含有させ、他方に青色燐光発光ドーパントおよび緑色蛍光発光ドーパントを含有させることが好ましい。
陽極側発光層および陰極側発光層の厚みとしてはそれぞれ、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば5nm〜200nm程度で設定することができる。中でも、陽極側発光層および陰極側発光層の厚みを厚くすることによって、正孔および電子の注入バランスを向上させることで発光効率を高めるには、陽極側発光層および陰極側発光層の厚みがそれぞれ10nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは20nm〜80nmの範囲内である。
陽極側発光層および陰極側発光層の少なくともいずれか一方がドープ領域とノンドープ領域とを有する場合、ノンドープ領域の厚みは、均一な膜が成膜可能であり、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現するドープ領域を確保することが可能な厚みであれば特に限定されるものではない。具体的には、ノンドープ領域の厚みは、0.1nm〜30nm程度であることが好ましく、より好ましくは0.5nm〜20nmの範囲内、さらに好ましくは0.8nm〜15nmの範囲内である。
陽極側発光層および陰極側発光層の成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等の乾式法、あるいは、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の湿式法などを挙げることができる。
ホスト材料および発光ドーパントを含有する陽極側発光層および陰極側発光層の成膜方法としては、ホスト材料および発光ドーパントを共蒸着させる方法が好ましく用いられる。
この際、発光ドーパントの蒸着源のシャッターを開閉したり、発光ドーパントの蒸着速度を制御したりすることにより、ドープ領域およびノンドープ領域を有する陽極側発光層および陰極側発光層を形成することができる。
また、溶液からの塗布で薄膜形成が可能な場合には、ホスト材料および発光ドーパントを含有する陽極側発光層および陰極側発光層の成膜方法として、スピンコート法やディップコート法等を用いることができる。この場合、ホスト材料および発光ドーパントを不活性なポリマー中に分散して用いてもよい。
また、陽極側発光層および陰極側発光層中の発光ドーパント濃度に分布をつける場合には、例えば、ホスト材料および発光ドーパントの蒸着速度を連続的または周期的に変化させる方法を用いることができる。
3.正孔注入輸送層
本発明に用いられる正孔注入輸送層は、陽極および陽極側発光層の間に形成され、正孔および電子を輸送しうるバイポーラ材料を含有するものであり、正孔注入輸送層および電子注入輸送層に含有されるバイポーラ材料は同一である。この正孔注入輸送層は、陽極から陽極側発光層に正孔を安定に注入または輸送する機能を有する。
正孔注入輸送層としては、正孔注入機能を有する正孔注入層、および正孔輸送機能を有する正孔輸送層のいずれか一方であってもよく、あるいは、正孔注入機能および正孔輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
バイポーラ材料としては、例えば、ジスチリルアレーン誘導体、多芳香族化合物、芳香族縮合環化合物類、カルバゾール誘導体、複素環化合物等を挙げることができる。具体的には、下記式で示される4,4'-ビス(2,2-ジフェニル-エテン-1-イル)ジフェニル(4,4'-bis(2,2-diphenyl-ethen-1-yl)diphenyl;DPVBi)、4,4'-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル(4,4'-bis(carbazol-9-yl)biphenyl;CBP)、2,2',7,7'-テトラキス(カルバゾール-9-イル)-9,9'-スピロ-ビフルオレン(2,2',7,7'-tetrakis(carbazol-9-yl)-9,9'-spiro-bifluorene;spiro-CBP)、4,4''-ジ(N-カルバゾリル)-2',3',5',6'-テトラフェニル-p-テルフェニル(4,4''-di(N-carbazolyl)-2',3',5',6'-tetraphenyl-p-terphenyl;CzTT)、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)-ベンゼン(1,3-bis(carbazole-9-yl)-benzene;m-CP)、3-tert−ブチル-9,10-ジ(ナフサ-2-イル)アントラセン(3-tert−butyl-9,10-di(naphtha-2-yl)anthracene;TBADN)、およびこれらの誘導体等が挙げられる。
Figure 2010205419
Figure 2010205419
なお、上述の手法により正孔および電子の両キャリアの輸送が可能であると確認される材料は、すべて本発明におけるバイポーラ材料として用いることができる。
また、正孔注入輸送層は、少なくとも陽極との界面に、上記バイポーラ材料に酸化性ドーパントが混合された領域を有していてもよい。正孔注入輸送層が、少なくとも陽極との界面にて、バイポーラ材料に酸化性ドーパントが混合された領域を有することにより、陽極から正孔注入輸送層への正孔注入障壁が小さくなり、駆動電圧を低下させることができるからである。
有機EL素子において、陽極から基本的に絶縁物である有機層への正孔注入過程は、陽極表面での有機化合物の酸化、すなわちラジカルカチオン状態の形成である(Phys. Rev.Lett., 14, 229 (1965))。あらかじめ有機化合物を酸化する酸化性ドーパントを陽極に接触する正孔注入輸送層中にドープすることにより、陽極からの正孔注入に際するエネルギー障壁を低下させることができる。酸化性ドーパントがドープされた正孔注入輸送層中には、酸化性ドーパントにより酸化された状態(すなわち電子を供与した状態)の有機化合物が存在するので、正孔注入エネルギー障壁が小さく、従来の有機EL素子と比べて駆動電圧を低下させることができるのである。
酸化性ドーパントとしては、バイポーラ材料を酸化する性質を有するものであれば特に限定されるものではないが、通常は電子受容性化合物が用いられる。
電子受容性化合物としては、無機物および有機物のいずれも用いることができる。電子受容性化合物が無機物である場合、例えば、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモン、三酸化モリブデン(MoO)、五酸化バナジウム(V)等のルイス酸が挙げられる。また、電子受容性化合物が有機物である場合、例えば、トリニトロフルオレノン等が挙げられる。
中でも、電子受容性化合物としては、金属酸化物が好ましく、MoO、Vが好適に用いられる。
正孔注入輸送層が、バイポーラ材料に酸化性ドーパントが混合された領域を有する場合、正孔注入輸送層は、少なくとも陽極との界面に上記の領域を有していればよく、例えば、正孔注入輸送層中に、酸化性ドーパントが均一にドープされていてもよく、酸化性ドーパントの含有量が陽極側発光層側から陽極側に向けて連続的に多くなるように酸化性ドーパントがドープされていてもよく、正孔注入輸送層の陽極との界面のみに局所的に酸化性ドーパントがドープされていてもよい。
正孔注入輸送層中の酸化性ドーパント濃度は、特に限定されるものではないが、バイポーラ材料と酸化性ドーパントとのモル比率が、バイポーラ材料:酸化性ドーパント=1:0.1〜1:10の範囲内であることが好ましい。酸化性ドーパントの比率が上記範囲未満であると、酸化性ドーパントにより酸化されたバイポーラ材料の濃度が低すぎてドーピングの効果が十分に得られない場合があるからである。また、酸化性ドーパントの比率が上記範囲を超えると、正孔注入輸送層中の酸化性ドーパント濃度がバイポーラ材料濃度をはるかに超えて、酸化性ドーパントにより酸化されたバイポーラ材料の濃度が極端に低下するので、同様にドーピングの効果が十分に得られない場合があるからである。
正孔注入輸送層の成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等の乾式法、あるいは、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の湿式法などを挙げることができる。
中でも、酸化性ドーパントがドープされた正孔注入輸送層の成膜方法としては、バイポーラ材料と酸化性ドーパントとを共蒸着させる方法が好ましく用いられる。この共蒸着の手法において、塩化第二鉄、塩化インジウム等の比較的飽和蒸気圧の低い酸化性ドーパントはるつぼに入れて一般的な抵抗加熱法によって蒸着可能である。一方、常温でも蒸気圧が高く真空装置内の気圧を所定の真空度以下に保てない場合は、ニードルバルブやマスフローコントローラーのようにオリフィス(開口径)を制御して蒸気圧を制御したり、試料保持部分を独立に温度制御可能な構造にして冷却によって蒸気圧を制御したりしてもよい。
また、陽極側発光層側から陽極側に向けて酸化性ドーパントの含有量が連続的に多くなるように、バイポーラ材料に酸化性ドーパントを混合させる方法としては、例えば、上記のバイポーラ材料と酸化性ドーパントとの蒸着速度を連続的に変化させる方法を用いることができる。
正孔注入輸送層の厚みとしては、陽極から正孔を注入し、発光層へ正孔を輸送する機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には0.5nm〜1000nm程度で設定することができ、中でも5nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
また、酸化性ドーパントがドープされた正孔注入輸送層の厚みとしては、特に限定されるものではないが、0.5nm以上とすることが好ましい。酸化性ドーパントがドープされた正孔注入輸送層は、無電場の状態でもバイポーラ材料がラジカルカチオンの状態で存在し、内部電荷として振る舞えるので、膜厚は特に限定されないのである。また、酸化性ドーパントがドープされた正孔注入輸送層を厚膜にしても、素子の電圧上昇をもたらすことがないので、陽極および陰極間の距離を通常の有機EL素子の場合よりも長く設定することにより、短絡の危険性を大幅に軽減させることもできる。
4.電子注入輸送層
本発明に用いられる電子注入輸送層は、陰極および陰極側発光層の間に形成され、バイポーラ材料を含有するものであり、正孔注入輸送層および電子注入輸送層に含有されるバイポーラ材料は同一である。この電子注入輸送層は、陰極から陰極側発光層に電子を安定に注入または輸送する機能を有するものである。
電子注入輸送層としては、電子注入機能を有する電子注入層、および電子輸送機能を有する電子輸送層のいずれか一方であってもよく、あるいは、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
なお、バイポーラ材料については、上記正孔注入輸送層の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
また、電子注入輸送層は、少なくとも陰極との界面に、上記バイポーラ材料に還元性ドーパントが混合された領域を有していてもよい。電子注入輸送層が、少なくとも陰極との界面にて、バイポーラ材料に還元性ドーパントが混合された領域を有することにより、陰極から電子注入輸送層への電子注入障壁が小さくなり、駆動電圧を低下させることができるからである。
有機EL素子において、陰極から基本的に絶縁物である有機層への電子注入過程は、陰極表面での有機化合物の還元、すなわちラジカルアニオン状態の形成である(Phys. Rev. Lett., 14, 229 (1965))。あらかじめ有機化合物を還元する還元性ドーパントを陰極に接触する電子注入輸送層中にドープすることにより、陰極からの電子注入に際するエネルギー障壁を低下させることができる。電子注入輸送層中には、還元性ドーパントにより還元された状態(すなわち電子を受容し、電子が注入された状態)の有機化合物が存在するので、電子注入エネルギー障壁が小さく、従来の有機EL素子と比べて駆動電圧を低下させることができるのである。さらには、陰極に、一般に配線材として用いられている安定なAlのような金属を使用することができる。
還元性ドーパントしては、バイポーラ材料を還元する性質を有するものであれば特に限定されるものではないが、通常は電子供与性化合物が用いられる。
電子供与性化合物としては、金属(金属単体)、金属化合物、または有機金属錯体が好ましく用いられる。金属(金属単体)、金属化合物、または有機金属錯体としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属を含む遷移金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むものを挙げることができる。中でも、仕事関数が4.2eV以下である、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属を含む遷移金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むものであることが好ましい。このような金属(金属単体)としては、例えば、Li、Na、K、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Mg、Sm、Gd、Yb、Wなどが挙げられる。また、金属化合物としては、例えば、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O、MgO、CaO等の金属酸化物、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2等の金属塩などが挙げられる。有機金属錯体としては、例えば、Wを含む有機金属化合物、8−ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)などが挙げられる。中でも、Cs、Li、Liqが好ましく用いられる。これらをバイポーラ材料にドープすることにより、良好な電子注入特性が得られるからである。
電子注入輸送層が、バイポーラ材料に還元性ドーパントが混合された領域を有する場合、電子注入輸送層は、少なくとも陰極との界面に上記の領域を有していればよく、例えば、電子注入輸送層中に、還元性ドーパントが均一にドープされていてもよく、還元性ドーパントの含有量が陰極側発光層側から陰極側に向けて連続的に多くなるように還元性ドーパントがドープされていてもよく、電子注入輸送層の陰極との界面のみに局所的に還元性ドーパントがドープされていてもよい。
電子注入輸送層中の還元性ドーパント濃度は、特に限定されるものではないが、0.1〜99質量%程度とすることが好ましい。還元性ドーパント濃度が上記範囲未満であると、還元性ドーパントにより還元されたバイポーラ材料の濃度が低すぎてドーピングの効果が十分に得られない場合があるからである。また、還元性ドーパント濃度が上記範囲を超えると、電子注入輸送層中の還元性ドーパント濃度がバイポーラ材料濃度をはるかに超え、還元性ドーパントにより還元されたバイポーラ材料の濃度が極端に低下するので、同様にドーピングの効果が十分に得られない場合があるからである。
電子注入輸送層の成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等の乾式法、あるいは、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の湿式法などを挙げることができる。
中でも、還元性ドーパントがドープされた電子注入輸送層の成膜方法としては、上記のバイポーラ材料と還元性ドーパントとを共蒸着させる方法が好ましく用いられる。
なお、溶液からの塗布で薄膜形成が可能な場合には、還元性ドーパントがドープされた電子注入輸送層の成膜方法として、スピンコート法やディップコート法等を用いることができる。この場合、バイポーラ材料と還元性ドーパントとを不活性なポリマー中に分散して用いてもよい。
また、陰極側発光層側から陰極側に向けて還元性ドーパントの含有量が連続的に多くなるように、バイポーラ材料に還元性ドーパントを混合させる方法としては、例えば、上記のバイポーラ材料と還元性ドーパントとの蒸着速度を連続的に変化させる方法を用いることができる。
電子注入輸送層の厚みとしては、その機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されるものではない。
また、還元性ドーパントがドープされた電子注入輸送層の厚みとしては、特に限定されるものでないが、0.1nm〜300nmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは0.5nm〜200nmの範囲内である。厚みが上記範囲未満であると、陰極界面近傍に存在する、還元性ドーパントにより還元されたバイポーラ材料の量が少ないためにドーピングの効果が十分に得られない場合があるからである。また、厚みが上記範囲を超えると、電子注入輸送層全体の膜厚が厚すぎて、駆動電圧の上昇を招くおそれがあるからである。
5.第2正孔注入輸送層
本発明においては、陽極および正孔注入輸送層の間に第2正孔注入輸送層が形成されていてもよい。この場合、第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力は、上述した関係を満たすことが好ましい。
陽極および正孔注入輸送層の間に第2正孔注入輸送層が形成されている場合、通常は、第2正孔注入輸送層が正孔注入層として機能し、正孔注入輸送層が正孔輸送層として機能する。
第2正孔注入輸送層の構成材料としては、陽極からの正孔の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記陽極側発光層および陰極側発光層の発光材料に例示した化合物の他、アリールアミン類、スターバースト型アミン類、フタロシアニン類、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン等の導電性高分子およびそれらの誘導体を用いることができる。ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン等の導電性高分子およびそれらの誘導体は、酸がドープされていてもよい。具体的には、N,N´−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N´−ビス(フェニル)−ベンジジン(α−NPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
中でも、第2正孔注入輸送層の構成材料は、バイポーラ材料であることが好ましい。バイポーラ材料を第2正孔注入輸送層に用いることにより、駆動中における層界面での劣化を効果的に抑制することができるからである。
なお、バイポーラ材料については、上記正孔注入輸送層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
第2正孔注入輸送層および後述の第2電子注入輸送層がバイポーラ材料を含有する場合、これらの層に含有されるバイポーラ材料は、同一であってもよく異なっていてもよい。
第2正孔注入輸送層の構成材料が有機材料(正孔注入輸送層用有機化合物)である場合、第2正孔注入輸送層は、少なくとも陽極との界面に、上記正孔注入輸送層用有機化合物に酸化性ドーパントが混合された領域を有することが好ましい。第2正孔注入輸送層が、少なくとも陽極との界面にて、正孔注入輸送層用有機化合物に酸化性ドーパントが混合された領域を有することにより、陽極から第2正孔注入輸送層への正孔注入障壁が小さくなり、駆動電圧を低下させることができるからである。
なお、第2正孔注入輸送層が正孔注入輸送層用有機化合物に酸化性ドーパントが混合された領域を有する場合については、上記正孔注入輸送層がバイポーラ材料に酸化性ドーパントが混合された領域を有する場合と同様であるので、ここの説明は省略する。
また、第2正孔注入輸送層の成膜方法および厚みについては、上述の正孔注入輸送層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
6.第2電子注入輸送層
本発明においては、電子注入輸送層および陰極の間に第2電子注入輸送層が形成されていてもよい。この場合、電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力は、上述した関係を満たすことが好ましい。
電子注入輸送層および陰極の間に第2電子注入輸送層が形成されている場合、通常は、第2電子注入輸送層が電子注入層として機能し、電子注入輸送層が電子輸送層として機能する。
第2電子注入輸送層の構成材料としては、上記電子注入輸送層の構成材料と同様のものを用いることができる。
第2電子注入輸送層の構成材料としては、陰極からの電子の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記陽極側発光層および陰極側発光層の発光材料に例示した化合物の他、Ba、Ca、Li、Cs、Mg、Sr等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の単体、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のフッ化物、アルミリチウム合金等のアルカリ金属の合金、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物、ポリメチルメタクリレートポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のアルカリ金属の有機錯体などを挙げることができる。また、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(Bpehn)等のフェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム(Alq3)等のアルミキノリノール錯体などを挙げることができる。
中でも、第2電子注入輸送層の構成材料は、バイポーラ材料であることが好ましい。バイポーラ材料を第2電子注入輸送層に用いることにより、駆動中における層界面での劣化を効果的に抑制することができる。
なお、バイポーラ材料については、上記正孔注入輸送層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
第2電子注入輸送層の構成材料が有機化合物(電子注入輸送層用有機化合物)である場合、第2電子注入輸送層は、少なくとも陰極との界面に、上記電子注入輸送層用有機化合物に還元性ドーパントが混合された領域を有することが好ましい。第2電子注入輸送層が、少なくとも陰極との界面にて、電子注入輸送層用有機化合物に還元性ドーパントが混合された領域を有することにより、陰極から第2電子注入輸送層への電子注入障壁が小さくなり、駆動電圧を低下させることができるからである。
なお、第2電子注入輸送層が電子注入輸送層用有機化合物に還元性ドーパントが混合された領域を有する場合については、上記電子注入輸送層がバイポーラ材料に還元性ドーパントが混合された領域を有する場合と同様であるので、ここの説明は省略する。
また、第2電子注入輸送層の成膜方法および厚みについては、上述の電子注入輸送層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
7.第3正孔注入輸送層
本発明においては、第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の間に第3正孔注入輸送層が形成されていてもよい。この場合、第2正孔注入輸送層、第3正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力は、上述した関係を満たすことが好ましい。
第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の間に第3正孔注入輸送層が形成されている場合、通常は、第2正孔注入輸送層が正孔注入層として機能し、第3正孔注入輸送層および正孔注入輸送層が正孔輸送層として機能する。
第3正孔注入輸送層の構成材料としては、上記第2正孔注入輸送層の構成材料と同様のものを用いることができる。
中でも、第3正孔注入輸送層の構成材料はバイポーラ材料であることが好ましい。バイポーラ材料を第3正孔注入輸送層に用いることにより、駆動中における層界面での劣化を効果的に抑制することができる。
なお、バイポーラ材料については、上記正孔注入輸送層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
第3正孔注入輸送層および後述の第3電子注入輸送層がバイポーラ材料を含有する場合、これらの層に含有されるバイポーラ材料は、同一であってもよく異なっていてもよい。
なお、第3正孔注入輸送層の成膜方法および厚みについては、上述の正孔注入輸送層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
8.第3電子注入輸送層
本発明においては、電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の間に第3電子注入輸送層が形成されていてもよい。この場合、電子注入輸送層、第3電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力は、上述した関係を満たすことが好ましい。
電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の間に第3電子注入輸送層が形成されている場合、通常は、第2電子注入輸送層が電子注入層として機能し、第3電子注入輸送層および電子注入輸送層が電子輸送層として機能する。
第3電子注入輸送層の構成材料としては、上記第2電子注入輸送層の構成材料と同様のものを用いることができる。
中でも、第3電子注入輸送層の構成材料はバイポーラ材料であることが好ましい。バイポーラ材料を第3電子注入輸送層に用いることにより、駆動中における層界面での劣化を効果的に抑制することができる。
なお、バイポーラ材料については、上記正孔注入輸送層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
なお、第3電子注入輸送層の成膜方法および厚みについては、上述の電子注入輸送層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
9.中央発光層
本発明においては、陽極側発光層および陰極側発光層の間に中央発光層が形成されていてもよい。この中央発光層は、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を有する。
中央発光層の構成材料は、陽極側発光層の構成材料または陰極側発光層の構成材料と同一であってもよく、また陽極側発光層の構成材料および陰極側発光層の構成材料と異なっていてもよい。
中央発光層の構成材料としては、上述の陽極側発光層および陰極側発光層の構成材料と同様のものを用いることができる。
陽極側発光層、陰極側発光層および中央発光層がホスト材料と発光ドーパントとを含有する場合、陽極側発光層、陰極側発光層および中央発光層は互いに異なる種類の発光ドーパントを含有することが好ましい。陽極側発光層、中央発光層および陰極側発光層を順に積層することで、陽極側発光層中の発光ドーパントおよび中央発光層中の発光ドーパントの間でのエネルギー移動、ならびに、中央発光層中の発光ドーパントおよび陰極側発光層中の発光ドーパントの間でのエネルギー移動を抑制し、各発光ドーパントをそれぞれ光らせることができ、発光効率を高めるとともに、所望の発光色を得ることができるからである。
中でも、陽極側発光層、陰極側発光層および中央発光層のうち、1層または2層が蛍光発光ドーパントを含有し、それ以外の2層または1層が燐光発光ドーパントを含有することが好ましい。単一の発光層内に蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントが含まれる場合には、蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントの間でエネルギー移動が起こるおそれがあるが、陽極側発光層、陰極側発光層および中央発光層のうち、1層または2層に蛍光発光ドーパントを含有させ、それ以外の2層または1層に燐光発光ドーパントを含有させることで、蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントの間でエネルギー移動を抑制し、蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントの両方を光らせることができ、発光効率を高めるとともに、所望の発光色を得ることができるからである。
陽極側発光層、陰極側発光層および中央発光層のうち、1層が蛍光発光ドーパントを含有し、それ以外の2層が燐光発光ドーパントを含有する場合、陽極側発光層、陰極側発光層および中央発光層のいずれが蛍光発光ドーパントを含有するものであってもよい。
また、陽極側発光層、陰極側発光層および中央発光層のうち、2層が蛍光発光ドーパントを含有し、それ以外の1層が燐光発光ドーパントを含有する場合、陽極側発光層、陰極側発光層および中央発光層のいずれが燐光発光ドーパントを含有するものであってもよい。
陽極側発光層、陰極側発光層および中央発光層が互いに異なる種類の発光ドーパントを含有する場合、異なる種類の発光ドーパントの発光色は同じであってもよく異なっていてもよい。中でも、異なる種類の発光ドーパントの発光色は異なることが好ましい。陽極側発光層中の発光ドーパント、陰極側発光層中の発光ドーパントおよび中央発光層中の発光ドーパントをそれぞれ光らせることにより、所望の発光色を得ることができるからである。
中央発光層がホスト材料および発光ドーパントを含有する場合、中央発光層は、発光ドーパントを含有する1箇所以上のドープ領域と発光ドーパントを含有しない1箇所以上のノンドープ領域とを有することが好ましい。中央発光層がノンドープ領域を有することにより、発光効率を向上させることができるからである。
ドープ領域およびノンドープ領域の配置としては、例えば、中央発光層が陽極側発光層側にノンドープ領域を有していてもよく、中央発光層が陰極側発光層側にノンドープ領域を有していてもよい。
中央発光層が陽極側発光層側にノンドープ領域を有する場合において、例えば陽極側発光層中の発光ドーパントおよび中央発光層中の発光ドーパントの間でエネルギー移動が起こり得る場合には、陽極側発光層および中央発光層の界面にノンドープ領域が設けられていることにより、上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。
同様に、中央発光層が陰極側発光層側にノンドープ領域を有する場合において、例えば陰極側発光層中の発光ドーパントおよび中央発光層中の発光ドーパントの間でエネルギー移動が起こり得る場合には、陰極側発光層および中央発光層の界面にノンドープ領域が設けられていることにより、上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。
ドープ領域およびノンドープ領域の配置は、発光ドーパントのエネルギー遷移を考慮して適宜選択される。中でも、正孔および電子の注入バランスがとれるように、ドープ領域およびノンドープ領域の配置を適宜選択することが好ましい。
ノンドープ領域の数としては、1箇所以上であればよいが、通常、1〜2箇所とされる。一方、ドープ領域の数としては、1箇所以上であればよいが、通常、1箇所とされる。
本発明において、白色光を得る場合には、陽極側発光層、陰極側発光層および中央発光層に異なる種類の発光ドーパントを含有させることが好ましい。中でも、赤色・青色・緑色の3種類の発光ドーパントを用いることが好ましい。
赤色・青色・緑色の3種類の発光ドーパントを用いる場合、上述したように、陽極側発光層、陰極側発光層および中央発光層のうち、1層または2層が蛍光発光ドーパントを含有し、それ以外の2層または1層が燐光発光ドーパントを含有することが好ましいことから、例えば、1層に青色蛍光発光ドーパントを含有させ、それ以外の2層の一方に赤色燐光発光ドーパント、他方に緑色蛍光発光ドーパントを含有させる、あるいは、1層に赤色蛍光発光ドーパントを含有させ、それ以外の2層の一方に青色燐光発光ドーパント、他方に緑色蛍光発光ドーパントを含有させることが好ましい。
陽極側発光層、中央発光層および陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力は、上述した関係を満たすことが好ましい。
なお、中央発光層の厚みおよび成膜方法については、上述の陽極側発光層および陰極側発光層の厚みおよび成膜方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
10.陽極
本発明に用いられる陽極は、透明であっても不透明であってもよいが、陽極側から光を取り出す場合には透明電極である必要がある。
陽極には、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料を用いることが好ましい。また、陽極は抵抗ができるだけ小さいことが好ましく、一般には、金属材料が用いられるが、有機物あるいは無機化合物を用いてもよい。具体的には、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等が挙げられる。
陽極は、一般的な電極の形成方法を用いて形成することができ、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
また、陽極の厚みとしては、目的とする抵抗値や可視光線透過率、および導電性材料の種類により適宜選択される。
11.陰極
本発明に用いられる陰極は、透明であっても不透明であってもよいが、陰極側から光を取り出す場合には透明電極である必要がある。
陰極には、電子が注入しやすいように仕事関数の小さな導電性材料を用いることが好ましい。また、陰極は抵抗ができるだけ小さいことが好ましく、一般には、金属材料が用いられるが、有機物あるいは無機化合物を用いてもよい。具体的には、単体としてAl、Cs、Er等、合金としてMgAg、AlLi、AlLi、AlMg、CsTe等、積層体としてCa/Al、Mg/Al、Li/Al、Cs/Al、CsO/Al、LiF/Al、ErF/Al等が挙げられる。
陰極は、一般的な電極の形成方法を用いて形成することができ、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
また、陰極の厚みとしては、目的とする抵抗値や可視光線透過率、および導電性材料の種類により適宜選択される。
12.基板
本発明における基板は、上記の陽極、正孔注入輸送層、陽極側発光層、陰極側発光層、電子注入輸送層、および陰極等を支持するものである。陽極もしくは陰極が所定の強度を有する場合には、陽極もしくは陰極が基板を兼ねていてもよいが、通常は所定の強度を有する基板上に陽極もしくは陰極形成される。また、一般的に有機EL素子を製造する際には、陽極側から積層する方が安定して有機EL素子を作製することができることから、通常は、基板上には、陽極、正孔注入輸送層、陽極側発光層、陰極側発光層、電子注入輸送層、および陰極の順に積層される。
基板は、透明であっても不透明であってもよいが、基板側から光を取り出す場合には透明基板である必要がある。透明基板としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、アルカリガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガラス等のガラス基板や、フィルム状に成形が可能な樹脂基板などを用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
まず、実施例で用いた材料の構造式、ならびにイオン化ポテンシャルおよび電子親和力を下記に示す。
Figure 2010205419
Figure 2010205419
Figure 2010205419
Figure 2010205419
[実施例1]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、上記構造式で表されるDBzAとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層(1層目の正孔注入輸送層)を形成した。次に、DBzAとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にDBzAを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層(2層目の正孔注入輸送層)を形成した。
次に、ホスト材料として上記構造式で表されるTCTAを用い、青色発光ドーパントとして上記構造式で表されるTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、緑色発光ドーパントとして上記構造式で表されるC545Tを用いて、上記青色発光層上に、TCTAおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(2層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料として上記構造式で表されるCBPを用い、赤色発光ドーパントとして上記構造式で表されるIr(piq)3を用いて、上記緑色発光層上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光層(3層目の発光層)を形成した。
次に、上記発光層上に、DBzAを、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層(1層目の電子注入輸送層)を形成した。次に、上記電子輸送層上に、DBzAと、上記構造式で表されるLiqとを重量比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層(2層目の電子注入輸送層)を形成した。
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
[比較例1]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、上記構造式で表されるα-NPDとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層を形成した。次に、α-NPDとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にα-NPDを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層を形成した。
次に、ホスト材料としてCBPを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、CBPおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料としてCBPを用い、緑色発光ドーパントとしてC545Tを用いて、上記青色発光層上に、CBPおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(2層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記緑色発光層上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光層(3層目の発光層)を形成した。
次に、上記発光層上に、上記構造式で表されるAlq3を、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層を形成した。次に、上記電子輸送層上に、Alq3とLiqとを重量比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層を形成した。
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
(評価)
表2に実施例1および比較例1の有機EL素子の10mA/cm2下での発光特性を示す。
Figure 2010205419
実施例1および比較例1の有機EL素子からは、TBPe、C545T、Ir(piq)3由来の発光ピークがそれぞれ観測された。実施例1の有機EL素子では、正面輝度の発光効率が7.3cd/Aであり、全角度へ放射される発光を観測して得られたフォトン数と、投入した電子数とから外部量子効率を算出したところ3.7%であった。一方、比較例1の有機EL素子では、正面輝度の発光効率は1.8cd/Aであり、外部量子効率は0.9%であった。また、寿命特性については、初期輝度1000cd/m2からの輝度半減寿命を定電流密度下で観察したところ、実施例1の有機EL素子では、輝度が半減する時間は100時間を達成した。一方、比較例1の有機EL素子では、50時間にて輝度が半減した。
[実施例2]
(有機EL素子の作製)
赤色発光層の膜厚を30nmに変更した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
(評価)
表3に実施例2の有機EL素子の10mA/cm2下での発光特性を示す。
Figure 2010205419
実施例2の有機EL素子では、正面輝度の発光効率は10.1cd/Aであり、外部量子効率は4.5%であった。実施例1および実施例2の有機EL素子を比較すると、輝度−電圧特性については、赤色発光層の膜厚が10nmである実施例1の有機EL素子が良好な結果を示したが、発光効率については、発光層の膜厚が30nmである実施例2の有機EL素子で最も良い特性が得られた。
[実施例3]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、DBzAとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層(1層目の正孔注入輸送層)を形成した。次に、DBzAとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にDBzAを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層(2層目の正孔注入輸送層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(ドープ領域)を形成した。次に、上記青色発光層上に、TCTAを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、ノンドープ領域を形成した。次に、ホスト材料としてTCTAを用い、緑色発光ドーパントとしてC545Tを用いて、上記ノンドープ領域上に、TCTAおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(ドープ領域)を形成した。
次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記緑色発光層上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光層を形成した。
次に、上記発光層上に、DBzAを、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層(1層目の電子注入輸送層)を形成した。次に、上記電子輸送層上に、DBzAと、Liqとを重量比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層(2層目の電子注入輸送層)を形成した。
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
[実施例4]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、DBzAとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層(1層目の正孔注入輸送層)を形成した。次に、DBzAとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にDBzAを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層(2層目の正孔注入輸送層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、緑色発光ドーパントとしてC545Tを用いて、上記青色発光層上に、TCTAおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(2層目の発光層)を形成した。
次に、上記緑色発光層上に、CBPを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、ノンドープ領域を形成した。次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記ノンドープ領域上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光領域(ドープ領域)を形成した。これにより、ノンドープ領域とドープ領域とを有する赤色発光層(3層目の発光層)を得た。
次に、上記発光層上に、DBzAを、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層(1層目の電子注入輸送層)を形成した。次に、上記電子輸送層上に、DBzAと、Liqとを重量比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層(2層目の電子注入輸送層)を形成した。
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
[実施例5]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、DBzAとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層(1層目の正孔注入輸送層)を形成した。次に、DBzAとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にDBzAを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層(2層目の正孔注入輸送層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(ドープ領域)を形成した。次に、上記青色発光層上に、TCTAを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、ノンドープ領域を形成した。次に、ホスト材料としてTCTAを用い、緑色発光ドーパントとしてC545Tを用いて、上記ノンドープ領域上に、TCTAおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(ドープ領域)を形成した。
次に、上記緑色発光層上に、CBPを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、ノンドープ領域を形成した。次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記ノンドープ領域上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光領域(ドープ領域)を形成した。これにより、ノンドープ領域とドープ領域とを有する赤色発光層を得た。
次に、上記発光層上に、DBzAを、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層(1層目の電子注入輸送層)を形成した。次に、上記電子輸送層上に、DBzAと、Liqとを重量比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層(2層目の電子注入輸送層)を形成した。
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
[実施例6]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、DBzAとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層(1層目の正孔注入輸送層)を形成した。次に、DBzAとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にDBzAを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層(2層目の正孔注入輸送層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、緑色発光ドーパントとしてC545Tを用いて、上記青色発光層上に、TCTAおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(2層目の発光層)を形成した。
次に、上記緑色発光層上に、CBPを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、ノンドープ領域を形成した。次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記ノンドープ領域上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光領域(ドープ領域)を形成した。次に、上記赤色発光領域上に、CBPを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、ノンドープ領域を形成した。これにより、ノンドープ領域とドープ領域とノンドープ領域とを有する赤色発光層(3層目の発光層)を得た。
次に、上記発光層上に、DBzAを、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層(1層目の電子注入輸送層)を形成した。次に、上記電子輸送層上に、DBzAと、Liqとを重量比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層(2層目の電子注入輸送層)を形成した。
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
(評価)
表4に実施例3〜6の有機EL素子の10mA/cm2下での発光特性を示す。
Figure 2010205419
実施例3〜6の有機EL素子からは、TBPe、C545T、Ir(piq)3由来の発光ピークがそれぞれ観測された。実施例1〜2および実施例3〜6の有機EL素子を比較すると、実施例3〜6では、各発光層間または各発光領域(ドープ領域)間にノンドープ領域を設けることで外部量子効率が向上することを確認した。また、寿命特性については、初期輝度1000cd/m2からの輝度半減寿命を定電流密度下で観察したところ、すべての素子で100時間を達成した。
[実施例7]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、DBzAとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層(1層目の正孔注入輸送層)を形成した。次に、DBzAとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にDBzAを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層(2層目の正孔注入輸送層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、緑色発光ドーパントとしてC545Tを用いて、上記青色発光層上に、TCTAおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光領域(ドープ領域)を形成した。次に、上記緑色発光領域上に、TCTAを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、ノンドープ領域を形成した。これにより、ドープ領域とノンドープ領域とを有する緑色発光層(2層目の発光層)を得た。
次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記緑色発光層上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光領域(ドープ領域)を形成した。次に、上記赤色発光領域上に、CBPを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、ノンドープ領域を形成した。これにより、ドープ領域とノンドープ領域とを有する赤色発光層(3層目の発光層)を得た。
次に、上記発光層上に、DBzAを、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層(1層目の電子注入輸送層)を形成した。次に、上記電子輸送層上に、DBzAと、Liqとを重量比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層(2層目の電子注入輸送層)を形成した。
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
(評価)
表5に実施例7の有機EL素子の10mA/cm2下での発光特性を示す。
Figure 2010205419
実施例7の有機EL素子からは、TBPe、C545T、Ir(piq)3由来の発光ピークがそれぞれ観測された。実施例7では、実施例6と同程度の特性を示し、また、寿命特性については、初期輝度1000cd/m2からの輝度半減寿命を定電流密度下で観察したところ、100時間を達成した。
[実施例8]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、上記構造式で表されるDBzAとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層(1層目の正孔注入輸送層)を形成した。次に、DBzAとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にDBzAを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層(2層目の正孔注入輸送層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料として上記構造式で表されるTBADNを用い、緑色発光ドーパントとしてC545Tを用いて、上記青色発光層上に、TBADNおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(2層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記緑色発光層上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光層(3層目の発光層)を形成した。
次に、上記発光層上に、DBzAを、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層(1層目の電子注入輸送層)を形成した。次に、上記電子輸送層上に、DBzAと、Liqとを重量比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層(2層目の電子注入輸送層)を形成した。
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
(評価)
表6に実施例8の有機EL素子の10mA/cm2下での発光特性を示す。
Figure 2010205419
実施例8の有機EL素子からは、TBPe、C545T、Ir(piq)3由来の発光ピークがそれぞれ観測された。実施例8では、実施例1と同程度の特性を示し、また、寿命特性については、初期輝度1000cd/m2からの輝度半減寿命を定電流密度下で観察したところ、100時間を達成した。
1 … 有機EL素子
2 … 基板
3 … 陽極
4 … 正孔注入輸送層
5 … 陽極側発光層
6 … 陰極側発光層
7 … 電子注入輸送層
8 … 陰極
9 … 第2正孔注入輸送層
10 … 第2電子注入輸送層
11 … 第3正孔注入輸送層
12 … 第3電子注入輸送層
13 … 中央発光層
21,21a,21b … ドープ領域
22,22a、22b … ノンドープ領域

Claims (14)

  1. 陽極と、前記陽極上に形成された正孔注入輸送層と、前記正孔注入輸送層上に形成された陽極側発光層と、前記陽極側発光層上に形成された陰極側発光層と、前記陰極側発光層上に形成された電子注入輸送層と、前記電子注入輸送層上に形成された陰極とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記正孔注入輸送層および前記電子注入輸送層が正孔および電子を輸送しうるバイポーラ材料を含有し、前記正孔注入輸送層および前記電子注入輸送層に含有されるバイポーラ材料が同一であり、
    前記陽極側発光層の構成材料と前記陰極側発光層の構成材料と前記正孔注入輸送層および前記電子注入輸送層の構成材料とが互いに異なり、
    前記正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1、前記陽極側発光層の構成材料の電子親和力をEa2としたとき、Ea1≧Ea2であり、前記陰極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、前記電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp4としたとき、Ip3≧Ip4であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記陽極側発光層および前記陰極側発光層の間に中央発光層が形成され、前記中央発光層の構成材料が、前記陽極側発光層の構成材料または前記陰極側発光層の構成材料と同一であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記陽極側発光層および前記陰極側発光層の間に中央発光層が形成され、前記陽極側発光層の構成材料と前記陰極側発光層の構成材料と前記中央発光層の構成材料とが互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記陽極側発光層および前記陰極側発光層がホスト材料および発光ドーパントを含有し、前記陽極側発光層および前記陰極側発光層の少なくともいずれか一方が前記発光ドーパントを含有する1箇所以上のドープ領域と前記発光ドーパントを含有しない1箇所以上のノンドープ領域とを有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記陽極側発光層が、前記陰極側発光層側に前記ノンドープ領域を有することを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記陰極側発光層が、前記陽極側発光層側に前記ノンドープ領域を有することを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 前記陽極側発光層が、前記正孔注入輸送側に前記ノンドープ領域を有することを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 前記陰極側発光層が、前記電子注入輸送側に前記ノンドープ領域を有することを特徴とする請求項4から請求項7までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  9. 前記陽極側発光層および前記陰極側発光層の少なくともいずれか一方が2箇所の前記ドープ領域を有し、前記2箇所のドープ領域の間に前記ノンドープ領域が配置されており、前記2箇所のドープ領域がそれぞれ異なる種類の発光ドーパントを含有することを特徴とする請求項4から請求項8までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 前記陽極および前記正孔注入輸送層の間に第2正孔注入輸送層が形成され、前記第2正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa5としたときEa5<Ea1であり、かつ、前記第2正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp5としたときIp5≦Ip1であることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  11. 前記電子注入輸送層および前記陰極の間に第2電子注入輸送層が形成され、前記第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp6としたときIp4<Ip6であり、かつ、前記第2電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa6としたときEa4≦Ea6であることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  12. 前記陽極側発光層および前記陰極側発光層の少なくともいずれか一方が2種類以上の発光ドーパントを含有することを特徴とする請求項4から請求項11までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  13. 前記陽極側発光層および前記陰極側発光層のうち、一方が蛍光発光ドーパントを含有し、他方が燐光発光ドーパントを含有することを特徴とする請求項4から請求項12までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  14. 前記正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp1、前記陽極側発光層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp2としたとき、Ip1<Ip2であり、
    前記陰極側発光層の構成材料の電子親和力をEa3、前記電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa4としたとき、Ea3<Ea4であることを特徴とする請求項1から請求項13までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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