以下、本発明の近視野光発生素子の製造方法について、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1に実施の形態による近視野光発生素子の製造方法の概略図を示す。また、その製造方法により作製した実施の形態1による近視野光発生素子の構成図を図3に、実施の形態1による近視野光発生素子の製造方法を図4及び図5に示す。
本実施の形態1による近視野光発生素子の製造方法は、図1における導光構造作製工程101、集光構造作製工程102と凸形状マスク作製工程103と凸形状作製工程104と微小開口作製工程105とからなる。
導光構造作製工程101により図3の光導波路を有する光導波路基板301を作製する。その後、集光構造作製工程102、凸形状マスク作製工程103、凸形状作製工程104、微小開口作製工程105を経て、微小開口基板304を作製する。光導波路基板301の光導波路から出射された光速を平板マイクロレンズ303で微小開口近傍に集光するように光導波路基板301と平板マイクロレンズ303と微小開口基板304を配置することで、図3に示す近視野光発生素子を作製する。
まず、導光構造作製工程101について説明する。図4は、導光構造作製工程である光導波路基板301の製造方法を示している。まずステップS401では、基板には、面方位(100)の単結晶のシリコン基板403を使用する。この基板上にマスクとなる熱酸化膜401、402あるいは酸化珪素膜をCVD法あるいはスパッタ法により積層させる。マスク材としては、この他に窒化珪素あるいは非アルカリ溶解系金属を用いても良い。
次にステップS402では、リソグラフィの手法を用いてこのマスク材に所望の大きさの窓を開け、エッチングを行う所のシリコンを露出させる。
この後ステップS403で、水酸化カリウム(KOH)、あるいはテトラメチルアンモミウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて、シリコン基板403にウェットエッチングを施すことにより段差を設け、(100)面に対し54.7°の角度を有する(111)面である斜面404を形成し、マスク401、402を除去する。
続けてステップS404では、この斜面404の上面に横方向から伝搬してきた光を開口方向に供給できるようアルミニウム、銀、金等の金属膜や誘電体多層膜からなる光反射層(図示略)を積層形成する。さらに、この後段差の底部に光を伝搬させる材料となる酸化シリコンや窒化シリコン等の石英系材料、ポリイミドやポリメタクリル酸といった高分子等の誘電体材料を堆積させ、光導波路405となる材料を作製する。誘電体材料である酸化シリコンの場合、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法によって容易に形成できる。この光導波路を屈折率の異なるコア、クラッドにより形成してもよい。コアの屈折率をクラッドの屈折率より大きくするには、コア成膜時にゲルマニウムをドープすればよく、またクラッドの屈折率をコアの屈折率より小さくするには、クラッド成膜時にフッ素をドープすればよい。このような場合、光はコアを全反射して伝搬していくため、伝搬ロスを減少させることができる。その後フォトリソグラフィ技術とエッチングを用いて、光導波路405の形状を調整する。通常の半導体製造工程で用いられるフォトリソグラフィ技術を使用して、光導波路上にエッチングを保護するマスク材を積層してパターニングを行なう。その後、光導波路材料をエッチングし、マスク材を除去することにより、光導波路405をパターニングできる。
このようにして光導波路基板301に光導波路405が作製されるが、段差の底部に光導波路を形成せず、光ファイバを挿入してもよい。この場合、ステップS401からステップS403と同様の工程を用いて基板を作製し、(100)と54.7°の角度をもつ2つの(111)で形成されたV字型の溝にこのファイバを挿入する。V溝斜面の角度が一定であるため、エッチングのマスク形状を形成するときに任意のサイズを設定することにより所望の大きさのV溝が形成でき、その結果、V溝上に配置される円形をした光ファイバの位置は決定される。この結果、光反射層に照射する光の位置精度向上が図れる。ファイバの固定は、ファイバを適切な位置に合わせた後、接着剤による接合あるいは陽極接合を用いることにより行う。また、図4に示した基板では、基板上に積層した金属または酸化珪素や窒化珪素といった誘電体材料をテーパ状にエッチングすることにより形成される斜面で光の反射を行う。
次に、図5を用いて、集光構造作製工程102について説明する。ステップS501では、基板に面方位(100)単結晶のシリコン基板502を用いる。面方位(110)、(111)の単結晶シリコンや、ガラス、石英などの誘電体結晶、あるいは、GaAs等の半導体結晶を用いてもよい。次に、酸化珪素の一種であるTEOS膜503をCVD法にて積層形成させる。その他の材料として光透過率の高い酸化シリコンや窒化シリコン等の石英系材料、ポリイミドやポリメタクリル酸といった高分子等の誘電体材料を用いても良い。その後、マスクとなる熱酸化膜501あるいは酸化珪素膜をCVD法あるいはスパッタ法により積層させる。マスク材としては、この他に窒化珪素あるいは非アルカリ溶解系金属を用いても良い。
次にステップS502では、フォトマスクを用いリソグラフィの手法を用いてこのマスク材に所望の大きさの窓を開け、エッチングを行う所のシリコンを露出させる。
この後ステップS503は、水酸化カリウム(KOH)、あるいはテトラメチルアンモミウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて、シリコン基板502にウェットエッチングを施すことで、大きな穴であるテーパー部504を形成する。(111)面のエッチングレートが遅いため、54.7°の4つの斜面で囲まれた逆錐状の穴となる。このテーパー部504はシリコンを貫通し、TEOS膜503にまで達している。
次に、図5を用いて凸形状マスク作製工程103について説明する。
ステップS503で作製した基板に対して、まずステップS504では、TEOS膜503の表面にレジスト膜505を成膜する。
ステップS504で作製した基板に対して、テーパー部504よりレジスト膜505を露光するための光束を照射する。この光束は、TEOS膜503に対して透過率が高く、シリコン基板502に対しては透過率が低く、かつレジスト膜505を露光可能な波長を含んでいる。テーパー部504はシリコンを貫通してTEOS膜503まで達しているので、テーパー部504に照射された光束は、透明であるTEOS膜503を透過し、レジスト膜505に到達する。このレジスト膜505に到達した光束により、レジスト膜505が露光される。その後ステップS505で、フォトリソグラフィーの技術により、マスク506を作製する。このマスク506はエッチングの特性に適合した形状のマスクとする必要が有る。詳しくは次工程で説明する。また、HDD等で一般的に利用されているフライングヘッドとしてこの近視野光発生素子を用いる場合には、フライングヘッドに必要な構造をフォトリソグラフィー技術を用いて再度露光することによりTEOS膜503表面に必要な構造のマスクを作製することで可能である。
次に、図5を用いて凸形状作製工程104について説明する。
ステップS505で作製したマスク506をもとに、ステップS506で化学エッチング法を用いてTEOS膜503の一部を凸形状として錐形状に加工する。この部分が図5における凸形状部507となる。
ウェットエッチングを用いる場合は、マスク形状とマスク下のアンダーエッチングの速度を調整することによりTEOS膜の凸形状部507を作製できる。これは、ウェットエッチングの等方性を利用したものである。アンダーエッチングの速度を調節することにより任意のテーパ角度をもつ錐状の凸形状部507を形成することが可能となる。フォトレジストをマスクとして使用する場合は、TEOS膜表面粗さ、レジストの種類、コート方法あるいはベーキング温度の調整を行いTEOS膜とレジストの密着性を最適化することにより任意のテーパ角を作製する。ウェ
ットエッチャントとして、弗化水素酸と弗化アンモニウムの混合液を使用する。
また、ドライエッチングを用いる場合は、マスクの形状が転写されながらTEOS膜503のエッチングが進行するため、マスク自体にあらかじめ凸形状をもたせておく必要がある。このようなマスク形状を形成するときには、フォトレジストの露光の際に、テーパー部504の中心部付近の光量を強くし、中心部が凸形状となるマスクを作製する。このように作製されたマスクによりTEOS膜503を錐状の凸形状に加工することが可能となる。また、ドライエッチングでもスパッタ系のエッチング法を用いる場合の作製方法はまた異なる。あらかじめTEOS膜503を柱型あるいは台形に加工する。その後、スパッタ系エッチングを施すことにより、柱あるいは台形の角だけが削れていき、先端の尖った突起形状が作製される。TEOS膜503を加工後ステップS507で、不要なマスクを除去する。
最後に、微小開口作製工程105について説明する。
ステップS507で作製された凸形状部507を持つTEOS膜503の表面に金属膜を積層形成する。光反射率の高い金、銀、アルミ等の金属膜を真空蒸着法にて成膜する。デポレートの高い蒸着条件により、グレインサイズの小さい成膜が可能となる。被覆方法として、スパッタリング法やイオンプレーティング法を用いて成膜しても良い。金属膜を設けることにより、上方より照射された光が凸形状部507の斜面にあたった場合でもその光を反射させることにより先端により多くの光を導くことが可能となる。その後、凸形状部507の先端部の金属膜を加工し、微小開口を形成する。金属膜の成膜で、方向依存性の高い成膜条件にて基板の斜め方向からデポすることにより、凸形状部507斜面の厚みに対し、先端部での厚みが薄くなる傾向がある。このような厚み分布をもった金属膜をエッチングすることにより先端部に微小開口を形成することが可能となる。
また、別の方法として、先端部に微小開口の大きさに相当する穴をもつマスク材を金属膜上面に形成し、先端部の金属膜だけを選択的にエッチングすることにより微小開口を作製することも可能である。この場合エッチングのマスクとして、スピンコートすることにより先端部だけ塗布されないで金属膜が露出された状態のフォトレジストを使用したり、あるいはCVD法により先端部のみ薄く形成された誘電体をエッチングすることにより微小開口に相当する大きさの穴が形成されたものを使用することができる。
また、別の微小開口作製方法として、金属膜より硬い材料から成る表面が滑らかな平板を、凸形状部先端部の上方より金属膜に押し当て、一定の負荷荷重を加えることにより、金属膜先端部の形状を平板の型にあうよう平らに変化させ、下層のTEOS膜を露出させることにより微小開口を作製しても良い。この場合、平板で押し当てず、先端の尖った形状のもの、あるいは球状のものを先端部に押し当てて、金属膜をその型にはめ込んだ形状に加工することにより微小開口を作製することも可能である。最後に金属膜の上面に保護膜となる誘電体膜を形成する。保護膜は30nm以下の厚みに形成する。誘電体膜の形成により、金属膜の計時的な酸化による反射率の低下あるいは光の漏れ、あるいは媒体との接触に起因する光反射膜の剥離による光漏れを抑制することが可能となる。なお、このステップは省略できる場合もある。
このようにして作製された2つの基板を図3に示すように平板マイクロレンズ303をはさむ形で固定する。すると、光導波路基板301の光導波路に入射された光束は、光導波路の出射端より拡散されながら光導波路基板301での斜面で反射する。その後、その光束は、平板マイクロレンズ303を透過することで微小開口部に集光される。そして微小開口近傍に近視野光が形成され、記録媒体やサンプルをこの微小開口に近接させることにより、微小開口と記録媒体やサンプルとの相互作用により、近視野光は伝搬光に変換される。その伝搬光を受光素子で受光することで、記録媒体に記録された情報を再生したりサンプル表面の光学特性を観察することができる。また、記録媒体への書き込みは、記録媒体と微小開口を近接させながら記録媒体の所望の位置に微小開口を有する近視野光発生素子を移動させ、微小開口から近視野光を記録媒体に照射し書き込み動作を行うことで実現される。
また、本実施の形態は、微小開口を作製した凸形状部が1つの場合の実施の形態であるが、同様な方法により、微小開口を作製した凸形状部を複数個同時に作製することができる。
従って、以上説明したように、本実施の形態による近視野光発生素子の製造方法によれば、凸形状部を作製する際に、凸形状部と、近視野光発生素子基板上方からの光束を凸形状部に導入するためのテーパー部とを作製するためのフォトマスクを2枚用意する必要がなくなる。その上、本発明の凸部作製方法を用いることにより、凸形状部の頂点と導光構造からの光束中心とが常に一致しているので、凸形状部の頂点に作製された微小開口と導光構造からの光束中心との両者が一致し、位置合わせする必要がなくなる。そのために、超精密な位置合わせを行う必要が無く、位置ずれによる光利用効率の低下など近視野光発生素子の性能低下を防ぐことができる。さらに、近視野光発生素子製造のシリコンプロセスにおけるマスクが少なくてすむことから、量産性に優れた低コストな近視野光発生素子を提供することできる。また、複数の凸形状部に微小開口を作製することができるので、この近視野光発生素子をもちいることで、より高速な再生・記録、観察装置が可能となる。
(実施の形態2)
本実施の形態2による近視野光発生素子の製造方法は、図1の導光構造作製工程101、集光構造作製工程102、凸形状マスク作製工程103、凸形状作製工程104、微小開口作製工程105とからなる。本実施の形態は、図3の微小開口基板304部分以外の部分については実施の形態1とまったく同じであるので、説明を一部省略あるいは簡単にする。
図6に実施の形態2による近視野光発生素子の製造方法を説明する図を示す。
導光構造作製工程101については、実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
次に、図6において集光構造作製工程102について説明する。ステップS601では、基板には、面方位(100)単結晶のシリコン基板602を用いる。次に、酸化珪素に不純物としてアルカリイオン(たとえばNa,K等)をドーピングしながらCVD法やスパッタ法等により誘電体膜603を積層形成させる。あるいは、シリコン基板とガラス基板を接合させ、ガラス基板を適当な厚さまで研磨しシリコン基板602上に誘電体膜603として形成させてもよい。
その後、マスクとなる熱酸化膜601あるいは酸化珪素膜をCVD法あるいはスパッタ法により積層させる。マスク材としては、この他に窒化珪素あるいは非アルカリ溶解系金属を用いても良い。また、必要に応じて誘電体膜603の表面にマスク材を積層させ、シリコン基板602にウエットエッチングを施す際の誘電体膜603の保護膜とする。次にステップS602では、リソグラフィの手法を用いてこのマスク材に所望の大きさの窓を開け、エッチングを行う所のシリコンを露出させる。この後ステップS603は、水酸化カリウム(KOH)、あるいはテトラメチルアンモミウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて、シリコン基板602にウェットエッチングを施すことで、大きな穴であるテーパー部604を形成する。(111)面のエッチングレートが遅いため、54.7°の4つの斜面で囲まれた逆錐状の穴となる。このテーパー部604はシリコンを貫通し、誘電体膜603にまで達している。
次に、凸形状マスク作製工程103について説明する。
まず、ステップS604では、誘電体膜603の表面にレジスト膜605を成膜する。その後、ステップS605では、テーパー部604よりレジスト膜605を露光するための光束を照射する。この光束は、誘電体膜603に対して透過率が高く、シリコン基板602に対しては透過率が低く、かつレジスト膜605を露光可能な波長を含んでいる。テーパー部604はシリコンを貫通して誘電体膜603まで達しているので、テーパー部604に照射された光束は、透明である誘電体膜603を透過し、レジスト膜605に到達する。このレジスト膜605に到達した光束により、レジスト膜605が露光される。露光された部分だけレジスト膜を残し、他のレジスト膜を除去する。その後、金属膜(たとえばTi)をスパッタあるいは真空蒸着等により成膜する。そして、不要なレジスト膜を除去することで、レジスト膜上に残っている金属膜を除去し、開口を設けた金属のマスク606を作製する。HDD等で一般的に利用されているフライングヘッドとして、この近視野光発生素子を用いる場合には、フライングヘッドに必要な構造を金属膜を成膜する前に、フォトリソグラフィー技術を用いて、誘電体膜603表面に必要な構造を作製することにより、可能である。
次に、凸形状作製工程104について説明する。
ステップS605で作製したマスク606を有する基板をステップS606で溶融塩に浸すことにより、マスク606の開口部を通じて溶融塩中に含まれている高屈折率に寄与するイオン(Tl等)とガラスの中のアルカリイオンが、イオン交換され、レンズ領域が形成される。ガラス基板内に拡散されるイオンは、マスクの開口部より同心円状に侵入し、3次元的な濃度分布をもつようになる。その際、交換されたイオン半径の違いにより中央付近に膨らみが生じ、凸形状部607となる。つまり、屈折率分布型のレンズと凸レンズを組み合わせた構成の凸形状部607が作製される。そして、ステップS607で、不要な金属のマスク606を除去する。
微小開口作製工程105については、ステップS607で作製された基板に遮光膜として金属膜を成膜し、微小開口を作製するがその作製方法は実施の形態1とまったく同じであるのでここでは説明を省略する。
このようにして作製された2つの基板は、実施の形態1の図3と同様にして、組み立て・固定される。微小開口への光の導入や記録媒体への情報の記録や記録された情報の再生方法、サンプル表面の光学特性の観察方法は、実施の形態1とまったく同じである。
また、本実施の形態は、微小開口を作製した凸形状部が1つの場合の実施の形態であるが、同様な方法により、微小開口を作製した凸形状部を複数個同時に作製することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態3による近視野光発生素子の製造方法は、図1の導光構造作製工程101、集光構造作製工程102、凸形状マスク作製工程103、凸形状作製工程104、微小開口作製工程105とからなる。本実施の形態は、実施の形態1や実施の形態2における平板マイクロレンズと微小開口基板を一体化し、1つの基板上に作製した場合の実施の形態であるので説明を一部省略あるいは簡単にする。
実施の形態3による近視野光発生素子の構成図を図7に、実施の形態3による近視野光発生素子の製造方法を図8に示す。
導光構造作製工程101により作製される光導波路基板301については、実施の形態1で説明した図4とまったく同じであるので説明を省略する。次に、図8を用いて集光構造作製工程102について説明する。この工程では、凸形状部に露光光束を照射するためにガラス基板802に平板マイクロレンズを作製する工程である。ステップS801では、ガラス基板802上に酸化珪素の一種であるTEOS膜803をCVD法にて積層形成させる。その他の材料として光透過率の高い酸化シリコンや窒化シリコン等の石英系材料、ポリイミドやポリメタクリル酸といった高分子等の誘電体材料を用いても良い。次にTEOS膜803を成膜した面とは反対のガラス基板802面上にマスク材801となる金属膜を積層させる。このマスク材801は、真空蒸着あるいはスパッタリングにて形成する。ここで、ガラス基板802に屈折率分布レンズを作製する際に、必要に応じて、TEOS膜803上に保護膜を形成することもできる。
次に、ステップS802では、フォトリソグラフィ技術を用い、金属膜801に円形状の穴をあけマスク804として、ガラス基板802を露出させる。次に、ステップS803では、ガラス基板802を溶解塩に浸すことにより、選択イオン交換を行う。ガラス基板内に拡散されるイオンは、マスクの開口部より同心円状に侵入し、3次元的な濃度分布をもつようになる。この結果、この分布に比例した屈折率勾配をもつ基板となる。この屈折率勾配がレンズ効果を持ち、平板マイクロレンズがガラス基板802に形成される。
次に、凸形状マスク作製工程103について説明する。ステップS803で作製された平板マイクロレンズが形成されたガラス基板802にステップS804では、TEOS膜803の表面にレジスト膜805を成膜する。次に、ガラス基板802に対して、平板マイクロレンズ上方よりレジスト膜805を露光するための光束を照射する。この光束は、TEOS膜803に対して透過率が高く、マスク804に対しては透過率が低く、かつレジスト膜805を露光可能な波長を含んでいる。ガラス基板802に入射された露光光束は平板マイクロレンズにより集光されながら透明であるTEOS膜803を透過し、レジスト膜805に到達する。このレジスト膜805に到達した光束により、レジスト膜805が露光される。
その後ステップS805で、フォトリソグラフィーの技術により、マスク806を作製する。ここでは図示していないが、HDD等で一般的に利用されているフライングヘッドとして、この近視野光発生素子を用いる場合には、フライングヘッドに必要な構造をフォトリソグラフィー技術を用いて再度露光することによりTEOS膜803表面に必要な構造のマスクを作製することで可能である。
次に、凸形状作製工程104について説明する。
ステップS805で作製したマスク806をもとに、ステップS806で化学エッチング法を用いてTEOS膜803の一部を凸形状として錐形状に加工する。この部分が凸形状部807となる。エッチング方法については、実施の形態1と同様であるので、ここでは説明を省略する。TEOS膜803を加工し凸形状部を作製後ステップS807で、不要なマスクを除去する。
最後に、微小開口作製工程105について説明する。
ステップS807で作製された凸形状部807を持つTEOS膜803の表面に金属膜を積層形成する。その後、実施の形態1や実施の形態2で説明した方法と同様な方法により、凸形状部807上の金属膜に微小開口を作製する。また、金属膜の上面に保護膜となる誘電体膜を形成することも、実施の形態1や実施の形態2と同様である。
このようにして作製された平板マイクロレンズ付微小開口基板701は、光導波路基板301と図7のように固定される。すると、光導波路基板301の光導波路に入射された光束は、光導波路の出射端より拡散されながら光導波路基板301での斜面で反射する。その後、その光束は、平板マイクロレンズ付微小開口基板701の屈折率分布型平板マイクロレンズを透過することで微小開口部に集光される。そして微小開口近傍に近視野光が形成され、記録媒体やサンプルをこの微小開口に近接させることにより、微小開口と記録媒体やサンプルとの相互作用により、近視野光は伝搬光に変換される。
記録媒体への情報の記録や記録された情報の再生方法、サンプル表面の光学特性の観察方法は、実施の形態1とまったく同じである。
また、本実施の形態は、微小開口を作製した凸形状部が1つの場合の実施の形態であるが、同様な方法により、微小開口を作製した凸形状部を複数個同時に作製することができる。
従って、以上説明したように、本実施の形態による近視野光発生素子の製造方法によれば、凸形状部を作製する際に、凸形状部と、近視野光発生素子基板に作製する平板マイクロレンズとを作製するためのマスクを2枚用意する必要がなくなる。その上、本発明の凸部作製方法を用いることにより、凸形状部の頂点と導光構造からの光束中心とが常に一致しているので、凸形状化した光伝搬体の頂点に作製された微小開口と導光構造からの光束中心との両者が一致し、位置合わせする必要がなくなる。そのために、平板マイクロレンズにより集光された光束中心と微小開口との超精密な位置合わせを行う必要が無く、位置ずれによる光利用効率の低下など近視野光発生素子の性能低下を防ぐことができる。さらに、近視野光発生素子製造プロセスにおけるマスクが少なくてすむことから、量産性に優れた低コストな近視野光発生素子を提供することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態4による近視野光発生素子の製造方法は、図1の導光構造作製工程101、集光構造作製工程102、凸形状マスク作製工程103、凸形状作製工程104、微小開口作製工程105とからなる。本実施の形態は、実施の形態3における平板マイクロレンズ基板の代わりに凸レンズ基板を用いた場合の実施の形態であるので説明を一部省略あるいは簡単にする。
図9に実施の形態4による近視野光発生素子の製造方法を説明する図を示す。
導光構造作製工程101については、実施の形態3での説明とまったく同じであるので説明を省略する。
次に、集光構造作製工程102について説明する。この工程では、凸形状部に露光光束を照射するために凸レンズ基板901を作製する。ステップS901の凸レンズ基板901は、ガラス基板上にレジストを塗布し、階調を有するグレイスケールマスクあるいはイマージョンマスクを用いたリソグラフィによりレンズ形状をしたレジストを露光と現像により作製した後、ガラスとレジストとの選択比を一定にしたエッチング条件にてガラス基板をエッチングすることにより、レジストの形状がガラス基板上に転写され、レジストがガラス基板上で完全にエッチングされ作製される。
次に、凸形状マスク作製工程103について説明する。
凸レンズ基板901にステップS902では、まず、凸レンズ基板901の凸レンズ以外の部分を遮光するためにマスク902を作製する。その後、凸レンズ基板901の凸レンズが形成されている面とは逆の面にTEOS膜903を成膜する。その後、TEOS膜903の表面にレジスト膜904を成膜する。次に、凸レンズ部以外を透過する露光光束を遮光するためにマスク902を設ける。その後、凸レンズ基板901に対して、凸レンズ上方よりレジスト膜904を露光するための光束を照射する。このような露光光束は、TEOS膜903に対して透過率が高く、マスク902に対しては透過率が低く、かつレジスト膜904を露光可能な波長を含んでいる。実施の形態3の場合と同様に、凸レンズ基板901に入射された露光光束は凸レンズにより集光されながら透明であるTEOS膜903を透過し、レジスト膜904に到達しレジスト膜904は露光される。
その後ステップS903で、フォトリソグラフィーの技術により、マスク905を作製する。ここでは図示していないが、HDD等で一般的に利用されているフライングヘッドとして、この近視野光発生素子を用いる場合には、フライングヘッドに必要な構造をフォトリソグラフィー技術を用いて再度露光することによりTEOS膜904の表面に必要な構造のマスクを作製することで可能である。
次に、凸形状作製工程104について説明する。
ステップS903で作製したマスク905をもとに、実施の形態1などとまったく同様にして、化学エッチング法を用いて凸形状部906を作製する。TEOS膜903を加工後ステップS905で、不要なマスクを除去する。
最後に、微小開口作製工程105について説明する。
ステップS905で作製された凸形状部906を持つTEOS膜903の表面に金属膜を積層形成する。その後、実施の形態1などで説明した方法と同様な方法により、凸形状部905上の金属膜に微小開口を作製する。また、金属膜の上面に保護膜となる誘電体膜を形成することも、実施の形態1などと同様である。
このようにして作製された微小開口付きの凸レンズ基板は、図7の平板マイクロレンズ付微小開口基板光701の代わりとして、光導波路基板301と固定する。よって、実施の形態3と同様に、この近視野光発生素子を用いることで、記録媒体に記録された情報を再生や記録媒体への書き込みを実現することができる。
また、本実施の形態は、微小開口を作製した凸形状部が1つの場合の実施の形態であるが、同様な方法により、微小開口を作製した凸形状部を複数個同時に作製することができる。
従って、以上説明したように、本実施の形態による近視野光発生素子の製造方法によれば、凸形状化した光伝搬体を作製する際に、凸形状部を作製するためのフォトマスクが必要なくなる。その上、本発明の凸部作製方法を用いることにより、凸形状化した光伝搬体の頂点と導光構造からの光束中心とが常に一致しているので、凸形状化した光伝搬体の頂点に作製された微小開口と導光構造からの光束中心との両者が一致し、位置合わせする必要がなくなる。そのために、凸レンズにより集光された光束中心と微小開口との超精密な位置合わせを行う必要が無く、位置ずれによる光利用効率の低下など近視野光発生素子の性能低下を防ぐことができる。さらに、近視野光発生素子製造プロセスにおけるフォトマスクが少なく、フォトマスクの超精密なアライメントをしなくてすむことから、量産性に優れた低コストな近視野光発生素子を提供することができる。
(実施の形態5)
図2に実施の形態による他の近視野光発生素子の製造方法の概略図を示す。また、その製造方法により作製した実施の形態5による近視野光発生素子の構成は、実施の形態3と同様で、図7の近視野光発生素子の平板マイクロレンズ付微小開口基板701の代わりに図10に示す微小開口を有する基板を用いていたものであるので、説明を一部省略あるいは簡単にする。
本実施の形態5による近視野光発生素子の製造方法は、図2における導光構造作製工程101、集光構造作製工程102、凸形状作製工程201、微小開口作製工程105とからなる。
導光構造作製工程101については、実施の形態3や実施の形態4での説明とまったく同じであるので説明を省略する。
図10において集光構造作製工程102は、凸形状部に露光光束を照射するために凸レンズ基板1001を作製する工程であり、実施の形態4で説明した凸レンズ基板の作製方法とまったく同じであるので説明を省略する。
次に、図10をもちいて凸形状作製工程201について説明する。
凸レンズ基板1001にステップS1002では、まず、凸レンズ基板1001の凸レンズ以外の部分を遮光するためにマスク1002を作製する。そしてステップS1003において、光硬化樹脂1004を満たしたケース1003に凸レンズが形成されている面とは逆の面がこの光硬化樹脂1004内に漬かるように凸レンズ基板1001を配置する。その後、凸レンズ基板1001に対して、凸レンズ上方より光硬化樹脂1004を硬化させるための光束を照射する。マスク1002は、凸レンズ部以外を透過する光束を遮光するために設けてある。このような光束は、凸レンズにより集光され、その集光された光束により光硬化樹脂1004が硬化を始める。十分硬化するとステップS1003の凸形状部1005が光硬化樹脂の中に作製される。その後、照射光束を止め、光硬化樹脂1004から凸レンズ基板1001を取り出し、不要なマスク1002を除去すると、ステップS1004のような凸形状部1005を有する凸レンズ基板1001が作製できる。
最後に、微小開口作製工程105について説明する。
ステップS1004で作製された凸レンズ基板1001の凸形状部1005側の表面に金属膜を積層形成する。その後、実施の形態1などで説明した方法と同様な方法により、凸形状部1001上の金属膜に微小開口を作製する。また、金属膜の上面に保護膜となる誘電体膜を形成することも、実施の形態1などと同様である。
また、本実施の形態は、微小開口を作製した凸形状部が1つの場合の実施の形態であるが、同様な方法により、微小開口を作製した凸形状部を複数個同時に作製することができる。
このようにして作製された微小開口付きの凸レンズ基板は、実施の形態4の微小開口を有する凸レンズ基板901とまったく同じように光導波路基板301と固定する。よって、実施の形態4と同様に、この近視野光発生素子を用いることで、記録媒体に記録された情報を再生や記録媒体への書き込み、サンプル表面の観察などを実現することができる。
従って、以上説明したように、本実施の形態よる近視野光発生素子の製造方法によれば、実施の形態3や実施の形態4の効果に加え、凸形状部を化学的エッチング法を用いずに、直接作製できるので、製造工程数を減らすこと出き、位置ずれによる光利用効率の低下など近視野光発生素子の性能低下を防ぎながら量産性に優れた低コストな近視野光発生素子を提供することができる。
(実施の形態6)
本実施の形態6による近視野光発生素子の製造方法は、図1の導光構造作製工程101、集光構造作製工程102、凸形状マスク作製工程103、凸形状作製工程104、微小開口作製工程105とからなる。本実施の形態は、実施の形態4において作製された光導波路基板と凸レンズ基板とをスペーサーを介して固定した後に凸形状部を作製している。よって、実施の形態4と同じ部分については一部説明を省略あるいは簡単にする。
図11に実施の形態6による近視野光発生素子の製造方法を説明する図を示す。
まず、導光構造作製工程101については、実施の形態1で説明した光導波路基板を用いているので説明を省略する。
次に、図11における集光構造作製工程102では、凸形状を作製するための照射光を作製するために必要となる凸レンズ基板901と光導波路基板301を一体化させる工程について説明する。ステップS1101の凸レンズ基板901には、凸レンズ面とは反対側にTEOS膜903、レジスト膜904を順次成膜する。その後、ステップS1102において、実施の形態1で説明した光導波路基板301から出射される光束が凸レンズ部に入射されるように光導波路基板301と凸レンズ基板901とをスペーサー1101を介して接合する。
次に、図11において凸形状マスク作製工程103について説明する。
ステップS1102で作製した光導波路基板301と凸レンズ基板901とを接合した基板に対して、光導波路405の入射端から光を入力する。ステップS1103で、光導波路405から出射された光束は、光導波路基板301の斜面で反射した後、凸レンズにより集光されながらレジスト膜904に照射され、レジスト膜904は露光される。その後、フォトリソグラフィーの技術により、マスク1102を作製する。ここでは図示していないが、HDD等で一般的に利用されているフライングヘッドとして、この近視野光発生素子を用いる場合には、フライングヘッドに必要な構造をフォトリソグラフィー技術を用いて再度露光することによりTEOS膜903の表面に必要な構造のマスクを作製することで可能である。
次に、図11において凸形状作製工程104について説明する。
ステップS1103で作製したマスク1102をもとに、ステップS1104において実施の形態1などと同様にして、化学エッチング法を用いて凸形状部1103を作製し、ステップS1105で不要なマスクを除去する。
最後に、微小開口作製工程105について説明する。
ステップS1105で作製された凸形状部1103を持つTEOS膜903の表面に金属膜を積層形成する。その後、実施の形態1などで説明した方法と同様な方法により、凸形状部905上の金属膜に微小開口を作製する。また、金属膜の上面に保護膜となる誘電体膜を形成することも、実施の形態1などと同様である。
また、本実施の形態は、微小開口を作製した凸形状部が1つの場合の実施の形態であるが、同様な方法により、微小開口を作製した凸形状部を複数個同時に作製することができる。
このようにして作製された近視野光発生素子は、記録媒体に記録された情報を再生や記録媒体への書き込み、サンプル表面の観察などを実現することができる。
従って、以上説明したように、本実施の形態よる近視野光発生素子の製造方法によれば、実施の形態4の効果に加え、光導波路から出射される光束を用いて微小開口を有する凸形状部を作製しているので光導波路と凸レンズ基板との位置の微調整を行う必要がなく、調整にかかる時間や手間を激減することができ、位置ずれによる光利用効率の低下など近視野光発生素子の性能低下を防ぎながら量産性に優れた低コストな近視野光発生素子を提供することできる。
(実施の形態7)
本実施の形態7による近視野光発生素子の製造方法は、図1の導光構造作製工程101、集光構造作製工程102、凸形状マスク作製工程103、凸形状作製工程104、微小開口作製工程105とからなる。本実施の形態は、実施の形態1で説明した光導波路基板301上を平坦化し、凸形状部を作製する場合の実施の形態であるので実施の形態1と同じ部分については一部説明を省略あるいは簡単にする。
図12に実施の形態7による近視野光発生素子の製造方法を説明する図を示す。
導光構造作製工程101については、図4の実施の形態1での説明した光導波路基板を用いているので説明を省略する。
次に、図12において集光構造作製工程102について説明する。はじめにステップS1201では、実施の形態1で説明した光導波路基板301を用いる。そして、ステップ1202で、斜面の光反射層および光導波路405の上面にTEOS膜1201をCVD法にて積層形成する。他の誘電体材料を用いても問題ない。そして、ステップS1203では、段差のあるTEOS膜の表面を研磨加工し、平坦化する。
次に、図12において凸形状マスク作製工程103について説明する。
ステップS1203で作製した基板の平坦化したTEOS膜1201の上にレジスト膜1202を成膜する。ステップS1204で、光導波路405の入射端から光を入力する。そして光導波路405から出射された光束は、光導波路基板301の斜面で反射した後、レジスト膜1202に照射され、レジスト膜1202は露光される。その後、フォトリソグラフィーの技術により、マスク1203を作製する。ここでは図示していないが、HDD等で一般的に利用されているフライングヘッドとして、この近視野光発生素子を用いる場合には、フライングヘッドに必要な構造をフォトリソグラフィー技術を用いて再度露光することによりTEOS膜1201の表面に必要な構造のマスクを作製することで可能である。
次に、図12において凸形状作製工程104について説明する。
ステップS1204で作製したマスク1203をもとに、他の実施の形態と同様にして、化学エッチング法を用いてステップS1205で凸形状部1204を作製し、ステップS1206で不要なマスクを除去する。
最後に、微小開口作製工程105について説明する。
ステップS1206で作製された凸形状部1204を持つTEOS膜の表面に金属膜を積層形成する。その後、実施の形態1などで説明した方法と同様な方法により、凸形状部1204上の金属膜に微小開口を作製する。また、金属膜の上面に保護膜となる誘電体膜を形成することも、実施の形態1などと同様である。
このようにして作製された近視野光発生素子は、記録媒体に記録された情報を再生や記録媒体への書き込み、サンプル表面の観察などを実現することができる。
このような構成の近視野光発生素子は光導波路405の出射端と凸形状部1204の微小開口との光路距離を短くできる。例えば積層する酸化珪素膜の厚みを10μm程度にすることにより、その距離を10μm以下に設定できる。この結果、出射端が離れるほど大きくなる伝搬光のビームスポット径を小さいまま微小開口に照射でき、多くの近視野光の生成が可能となる。またこの近視野光発生素子の作製は、同一面への成膜とフォトリソグラフィを用いた薄膜の加工により形成され、接合などの工程を含まない。よって、実施の形態6における貼り合わせを行う必要が無い。
また、本実施の形態では、平板マイクロレンズや凸レンズ、屈折率分布型レンズ等のレンズ効果を有する部分を有していないが、TEOS膜の膜厚をもっと厚くし、イオン交換法や化学エッチング法などにより、レンズ機能を有する部分を微小開口と光導波路405の出射端の間に作製することも可能である。
従って、以上説明したように、本実施の形態による近視野光発生素子の製造方法によれば、上記の効果に加え、2つ以上の基板を接合により調整固定する必要が無く、接合による位置ずれの問題を完全に回避でき、調整にかかる時間や手間を激減することができ、位置ずれによる光利用効率の低下など近視野光発生素子の性能低下を防ぎながら量産性に優れた低コストな近視野光発生素子を提供することができる。