JP2010203409A - 流体機械用翼体 - Google Patents

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Abstract

【課題】負圧面における流れの剥離抑制効果が大きく、また、小さな流動抵抗で上流側における剥離を良好に抑制することができる流体機械用翼体を提供する。
【解決手段】翼表面が翼前縁10aと翼後縁10bとを基準として圧力面11と負圧面12とに区分された流体機械用翼体10であって、負圧面12には、翼前縁10aに沿った位置において圧力面11側に窪む切欠段差部20が少なくとも一つ設けられ、切欠段差部20は、翼幅方向の幅寸法が、翼前縁10a側の始端から翼後縁10b側の終端に進むに従って漸次小さくなっていることを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えば、ガスタービン圧縮機や車両用冷却ファンに用いて好適な流体機械用翼体に関するものである。
一般に、流体機械用翼体は、翼表面が翼前縁と翼後縁とを基準として圧力面と負圧面とに区分されている。例えば、ガスタービン圧縮機や車両用冷却ファンに用いられる翼体は、翼型(翼前縁と翼後縁を結んだ翼弦に沿って縦に切った断面)が弓型状に形成されており、圧力面に沿って流れる流体の圧力を上昇させると共に、負圧面に沿って流れる流体の圧力を相対的に負圧としている。
このような翼体は、所定の風量、静圧、回転数等の設計動作点が定められて、翼形状が最適なものとなるようにされている。ところが、実際の使用においては、上記の設計動作点よりも高負荷で使用される場合があり、負圧面に沿って流れる流体が剥離して、騒音や翼性能の低下を招いてしまう。
下記特許文献1に記載の翼体は、翼前縁付近の平均表面粗さを、圧力面側及び負圧面側の平均表面粗さより粗く形成すると共に、その粗さを、流動流体に乱流遷移を起こさせる粗さに形成している。すなわち、この翼体は、負圧面に沿って流れる作動流体を強制的に乱流遷移させて、負圧面に生じる剥離を抑止しようとしている。
また、下記特許文献2の翼体101は、図15及び図16に示すように、背高が最も高くされた頂角が気流の上流端に設置され、後流側に向けて背面高さを直線的に減少させると共に、横幅を直線的に増大させた平面視が三角形にされたプラウ材110を負圧面112に設けている。すなわち、この翼体101は、気流がプラウ材110を乗り越える際に生じる縦渦によって、負圧面112に生じる流れの剥離を抑止するものである。
特開2000−104501号公報 特開2003−108144号公報
しかしながら、上記特許文献1の翼体は、翼前縁付近の平均表面粗さを調整して乱流遷移を起こさせるものであるが、単に乱流遷移を起こさせるだけでは、剥離抑制効果が小さいという問題がある。特に、流体に粉塵が含まれる場合には、翼前縁表面の凹部に粉塵が堆積するために乱流遷移の効果が低下して、剥離抑制効果がさらに小さくなってしまうという問題がある。
また、上記特許文献2の翼体は、負圧面112にプラウ材110を設けて縦渦を発生させるものであるが、図15に示すように、剥離が生じ難い状態においては流動抵抗として機能してしまうという問題がある。また、図16に示すように、剥離が生じ易い流れの状態においては、プラウ材よりも上流側で生じる剥離を抑制することができないという問題がある。
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、負圧面における流れの剥離抑制効果が大きく、また、小さな流動抵抗で上流側における剥離を良好に抑制することができる流体機械用翼体を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る流体機械用翼体は、翼表面が翼前縁と翼後縁とを基準として圧力面と負圧面とに区分された流体機械用翼体であって、前記負圧面には、前記翼前縁に沿った位置において前記圧力面側に窪む切欠段差部が少なくとも一つ設けられ、前記切欠段差部は、翼幅方向の幅寸法が、前記翼前縁側の始端から前記翼後縁側の終端に進むに従って漸次小さくなっていることを特徴とする。
この構成によれば、切欠段差部が設けられているので、負圧面側に流れた流体の一部が切欠段差部に流入して、この切欠段差部から負圧面に乗り上げる。この負圧面に乗り上げた流体は、乗り上げる際に巻き込むようにして縦渦を形成し、この縦渦が負圧面に沿って下流側へと流れていく。すなわち、この縦渦が負圧面近傍に高エネルギ流体を誘引して負圧面近傍の境界層の発達を抑制するので、剥離抑制効果を大きくすることができる。
また、負圧面の翼前縁に沿って切欠段差部を設けているので、負圧面の上流側で生じる剥離を抑止することができる。
さらに、切欠段差部が圧力面側に窪んでいるので、負圧面に突起物を設けた場合と比較して、流動抵抗を小さくすることができる。
よって、負圧面における剥離抑制効果が大きく、また、小さな流動抵抗で上流側における剥離を良好に抑制することができる。
また、前記切欠段差部の前記翼幅方向に交差する法面は、前記負圧面と共に稜辺を形成する絶壁面とされていることを特徴とする。
この構成によれば、切欠段差部に流入した流体が絶壁面に衝突又は絶壁面に沿って流れて、負圧面に乗り上げる際に稜辺を巻き込むようにして強い縦渦を形成するので、境界層の発達をさらに抑制し、剥離抑制効果をより大きくすることができる。
また、前記切欠段差部の底面は、前記始端から前記終端に進むに従って漸次浅くなり、前記周端が曲率をもって前記負圧面と滑らかに接続されていることを特徴とする。
この構成によれば、切欠段差部に流入した流体のうち終端まで流れたものが滑らかに負圧面へと導かれるので、圧力損失の増大を抑制することができる。
また、前記切欠段差部は、前記負圧面の法線方向から見て三角形状であることを特徴とする。
また、前記切欠段差部は、前記翼前縁に沿って複数連続的に設けられ、隣接する二つの前記切欠段差部の間には、前記負圧面の法線方向から見て前記負圧面が三角形状に残存したデルタ部が形成されていることを特徴とする。
また、前記切欠段差部は、前記負圧面の法線方向から見て台形状であることを特徴とする。
また、前記切欠段差部は、前記翼前縁に沿って複数連続的に設けられ、隣接する二つの前記切欠段差部の間には、前記負圧面の法線方向から見て前記負圧面が三角形状に残存したデルタ部が形成されていることを特徴とする。
これらの構成によれば、切欠段差部が翼前縁に沿って複数連続的に設けられているので、翼幅方向の広い範囲において縦渦を形成することができる。これにより、翼幅方向の広い範囲において、剥離を抑制することができる。
また、前記切欠段差部は、前記終端の翼幅方向の幅寸法が、該切欠段差部の終端と該切欠段差部に隣接する前記切欠段差部の終端との間隔以上となる大きさに設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、相互に隣接する切欠段差部において、それぞれに形成された縦渦同士が干渉し難くなる。これにより、縦渦が負圧面の最下流側まで強く持続することになるために、より効率的に剥離を防止することができる。
本発明に係る流体機械用翼体によれば、負圧面における流れの剥離抑制効果が大きく、また、小さな流動抵抗で上流側における剥離を良好に抑制することができる。
本発明の第一実施形態に係るプロペラファン1を示す正面図である。 本発明の第一実施形態に係る翼体10の背面側から見た外観構成斜視図である。 本発明の第一実施形態に係る翼体10の翼型を示した図であって、図2におけるI−I線断面図である。 本発明の第一実施形態に係る切欠段差部20の拡大斜視図である。 本発明の第一実施形態に係る切欠段差部20の拡大断面図であって、図4におけるII−II線断面図である。 本発明の第一実施形態に係る切欠段差部20の拡大図であって、図4におけるIII矢視図である。 本発明の第一実施形態に係る翼体10の作用説明図であって、プロペラファン1の低負荷運転時の翼体10を示している。 本発明の第一実施形態に係る翼体10の作用説明図であって、切欠段差部20の拡大斜視図である。 本発明の第一実施形態に係る翼体10の作用説明図であって、プロペラファン1の高負荷運転時の翼体10を示している。 本発明の第二実施形態に係る翼体50の要部拡大斜視図である。 本発明の第二実施形態に係る翼体50の要部拡大図であって、図10におけるIV矢視図である。 本発明の第二実施形態に係る翼体50の要部拡大断面図であって、図10におけるV−V線断面図である。 本発明の第二実施形態に係る切欠段差部60の作用対比図であって、終端60bを角張った構成としたものの作用説明図である。なお、図中において、切欠段差部60に対応する構成要素については、符号に括弧を付して図示している。 本発明の実施形態に係る動翼90の外観構成斜視図である。 従来の翼体101を示す翼型を示した図であって、低負荷運転時の状態を示している。 従来の翼体101を示す翼型を示した図であって、高負荷運転時の状態を示している。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一の実施の形態に係るプロペラファン1を示す正面図である。
このプロペラファン1は、軸流形式の車両用冷却ファンとして用いられるものであり、回転翼車2と、この回転翼車2の外周を囲うと共に空気の流路を形成するシュラウド3とで概略構成されている。
回転翼車2は、ハブ4に放射状に取り付けた9枚の翼体(流体機械用翼体)10が、軸心5を中心に時計回りに回転し(図中、矢印R方向)、空気を紙面手前から後方に押し出すようになっている。
シュラウド3の上流(紙面手前)には、車両用ラジエータや車載空気調和装置のコンデンサ等の熱交換器が設けられており、シュラウド3が形成する空気通路は、入り口(紙面手前)が矩形で、出口が円形となっている。そして、矩形空気通路から円形空気通路への移行には、ベルマウス形状(ラッパ口形状)が利用されている。
図2は、本発明の第一実施形態に係る翼体10の背面側から見た外観構成斜視図であり、図3は、翼体10の翼型を示した図である。
図2及び図3に示すように、翼体10は、翼表面が翼前縁10aと翼後縁10bとを基準として、凹湾曲状の圧力面11と、凸湾曲状の負圧面12とに区分されている。
この翼体10は、図3に示すように、翼前縁10aが丸みを帯びており、翼後縁10bが鋭利な細長形状となっている。
このような翼体10は、所定の風量、静圧、回転数等の設計動作点が定められて、翼形状が最適なものとなるように設計されている。
図2に示すように、負圧面12には、翼前縁10aに沿って複数の切欠段差部20が連続的に形成されており、隣接する切欠段差部20の間には、デルタ部25が形成されている。
図4は、切欠段差部20の拡大斜視図であり、図5は、図4におけるII−II線断面図であり、図6は、図4におけるIII矢視図である。
切欠段差部20は、図6に示すように、負圧面12の法線方向から見て二等辺三角形状となっており、頂角に相当する終端20bを翼後縁10b側に向け、底辺に相当する始端20aを翼前縁10aに重ねている。すなわち、この切欠段差部20は、翼幅方向の幅寸法Pが、翼前縁10a側の始端20aから翼後縁10b側の終端20bに進むに従って漸次小さくなっている。
この切欠段差部20は、図3に示すように、翼弦長をL(翼前縁10aと翼後縁10bとを結んだ直線の長さ)、切欠長をD(始端と終端とを結んだ直線の長さ)とすると、本実施形態ではD/L=0.05となるように形成されている。
この切欠段差部20は、図5に示すように、底面21と、この底面21に対して略垂直になった絶壁面22とを備えている。
絶壁面22は、負圧面12と共に稜辺(角張った辺)23を形成しており、また、底面21と共にθ=90°となる角隅部24を形成している。
デルタ部25は、図6に示すように、負圧面12の法線方向から見て、負圧面12が二等辺三角形状に残存した部位であり、頂角に相当する部位を翼前縁10aに重ね、底辺に相当する部位を翼後縁10bに向けている。
図6に示すように、デルタ部25は、本実施形態では頂角αが60°となるように設定されている。
また、図5に示すように、底面21からデルタ部25の負圧面12までの高さ(より厳密には、翼型において底面21と負圧面12とに接する内接円の直径)をHとし、隣接する切欠段差部20の終端20b間の寸法をWとすると、本実施形態ではHmax/Wを0.3としている。
次に、上記の構成からなる翼体10の動作について説明する。
まず、図1に示すように、回転翼車2が矢印R方向に回転すると、紙面手前側の空気が翼体10の表面に沿って流れて、紙面後方に押し出される。各翼体10においては、図7に示すように、紙面手前側の空気を翼前縁10a側から導入し、圧力面11に沿った気流と負圧面12に沿った気流とに分け、翼後縁10bから排出する。
圧力面11に沿った気流は、圧力面11に沿って流れる過程で、徐々に圧力が高められて翼後縁10bから排出される。
一方、負圧面12に沿った気流は、その一部が切欠段差部20によって縦渦Tとなって、負圧面12に沿って後方に流れていく。
切欠段差部20は、以下のようにして、縦渦Tを形成する。
まず、図8に示すように、翼前縁10aから負圧面12に沿って流れた気流の大部分が複数に分かれて各切欠段差部20に流入する。そして、この切欠段差部20に流入した気流が絶壁面22に衝突又は絶壁面22に沿って流れ、このうちの一部が近接する負圧面12に乗り上げる。この際、負圧面12に乗り上げた気流は、図8に示すように、稜辺23を巻き込むようにして強い縦渦Tを形成する。そして、図11に示すように、各稜辺23において、始端20a側から終端20b側に進むに従って徐々に縦渦Tが大きく、強いものとなっていく。換言すれば、縦渦Tの中心が稜辺23に沿って翼幅方向に移動しながら縦渦Tが大きくなり、終端20bに達すると縦渦Tが下流に向けて流れていく(図11参照)。このようにして形成された縦渦Tは、負圧面12の下流側まで良好に維持される。
プロペラファン1の所定の設計動作点を下回る運転時(低負荷運転時)においては、図7に示すように、翼前縁10aに対する気流の流入角度は想定内のものとなり、負圧面12においても流れの剥離が生じ難い。
このような状態であっても、切欠段差部20は、縦渦Tを形成するが、圧力面11側に窪んでいるために、気流に対する流動抵抗としては小さなものとなる。
プロペラファン1の所定の設計動作点を上回る運転時(高負荷運転時)においては、図9に示すように、翼前縁10aに対する気流の流入角度が想定外のものとなって、負圧面12の上流側で流れの剥離が生じ易くなる。
このような状態であっても、切欠段差部20によって形成された縦渦Tが、負圧面12の上流側において高エネルギ流体を誘引する。すなわち、この高エネルギ流体が負圧面12近傍に誘引されることにより、低エネルギとなる境界層の発達が抑制され、剥離の発生を阻害する。
このような翼体10が複数設けられた回転翼車2によって、空気が紙面手前から後方に連続的に押し出されて、安定した送風が継続的になされる。
以上説明したように、本実施形態によれば、切欠段差部20が設けられているので、負圧面12側に流れた気流の一部が切欠段差部20に流入して、この切欠段差部20から負圧面12に乗り上げる。この負圧面12に乗り上げた気流は、乗り上げる際に巻き込むようにして縦渦Tを形成して、この縦渦Tが下流側へと流れていく。すなわち、縦渦Tが負圧面12近傍に高エネルギ流体を誘引して境界層の発達を抑制するので、流体の剥離抑制効果を大きくすることができる。
また、負圧面12の翼前縁10aに沿って切欠段差部20を設けているので、負圧面12の上流側で生じる剥離を抑止することができる。
さらに、切欠段差部20が圧力面11側に窪んでいるので、負圧面12に突起物を設けた場合に比べて、流動抵抗を小さくすることができる。
よって、負圧面12における流れの剥離抑制効果が大きく、また、小さな流動抵抗で上流側における剥離を良好に抑制することができる。
また、絶壁面22が負圧面12と稜辺23を形成しているので、気流が絶壁面22に衝突又は絶壁面22に沿って流れて負圧面12に乗り上げる際に、稜辺23を巻き込むようにして強い縦渦Tを形成する。これにより、境界層の発達をさらに抑制し、剥離抑制効果をより大きくすることができる。
また、切欠段差部20は、負圧面12の法線方向から見て三角形状であるので、デルタ部25の頂角αを一定の範囲に確保しつつ、多数の切欠段差部20を形成することができる。
また、切欠段差部20が翼前縁10aに沿って複数連続的に設けられているので、翼幅方向の広い範囲において縦渦Tを形成することができる。これにより、翼幅方向の広い範囲において、気流の剥離を抑制することができる。
なお、上述した構成では、D/Lの値を0.05としたが、この値に限られることはなく、他の値を設定することができる。但し、D/L<0.1の条件で設定するのが望ましい。
同様に、Hmax/Wの値を0.3としたが、この値に限られることなく、他の値に設定することができる。但し、0.2≦Hmax/W≦0.5の範囲で設定するのが望ましい。
また、上述した構成では、角隅部24の角度を底面21に対して垂直(θ=90°)としたが、他の角度となるように形成してもよい。この際、θ=90〜120°となるように形成すると縦渦Tが良好に形成される。
また、上述した構成では、稜辺23を形成したが、稜辺23を設けずに面取りをしてもよい。
また、上述した構成では、デルタ部25の頂角αを60°としたが、他の角度としてもよい。この際、50°≦α≦70°となるようにすると縦渦Tが良好に形成される。
(第二実施形態)
続いて、本発明の第二実施形態について説明する。
図10は、本発明の第二実施形態に係る翼体50の要部拡大斜視図であり、図11は、図10におけるIV−IV線断面図であり、図12は、図10におけるV矢視図である。なお、図10〜図12において、図1〜図9と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
図10に示すように、翼体50の負圧面12には、翼前縁10aに沿って複数の切欠段差部60が連続的に設けられている。
切欠段差部60は、負圧面12の法線方向から見て等脚台形状となっており、上辺に相当する終端60bを翼後縁10b側に向け、下辺に相当する始端60aを翼前縁10aに重ねている。
この切欠段差部60は、図11に示すように、底面21と、この底面21に対して略垂直になった絶壁面22とを備えており、この絶壁面22と負圧面12とが稜辺23を形成している。このような切欠段差部60は、隣接する他の切欠段差部60との間にデルタ部25を形成している。
切欠段差部60は、図12に示すように、終端60bにおいて、底面21と負圧面12とが曲率をもって滑らかに接続されている。
これら複数の切欠段差部60は、図10に示すように、ある一の切欠段差部60における終端60bの幅寸法Pが、この一の切欠段差部60(図10において符号60Aで例示する。)の終端60bと、この一の切欠段差部60(60A)に隣接する他の切欠段差部60(図10における符号60B)の終端60bとの間隔W以上となるようにされている。
次に、上記の構成からなる翼体50の動作について説明する。
まず、図10に示すように、翼前縁10aから負圧面12に沿って流れた気流の大部分が複数に分かれて各切欠段差部60に流入する。そして、この切欠段差部60に流入した気流が絶壁面22に衝突又は絶壁面22に沿って流れ、このうちの一部が近接する負圧面12に乗り上げる。この際、負圧面12に乗り上げた気流は、図10に示すように、稜辺23を巻き込むようにして強い縦渦Tを形成する。このようにして、各稜辺23において、始端60a側から終端60b側に進むに従って徐々に縦渦Tが大きく、強いものとなっていく。
このようにして形成された縦渦Tは、終端60bの幅寸法Pが、隣接する切欠段差部60における終端60bとの間隔W以上にされているために、図11に示すように、相互に隣接するデルタ部25で形成される縦渦Tが干渉し合うことがなく、それぞれ終端60bから下流に向けて流れていく。このように形成された縦渦Tは、負圧面12の下流側まで良好に維持される。
一方、図12に示すように、負圧面12に乗り上げずに終端60bまで到達した気流は、滑らかに負圧面12へと導かれる。
本実施形態によっても、上述した第一実施形態と同様の効果を得ることができる他、終端60bの幅寸法Pが、隣接する切欠段差部60における終端60bとの間隔W以上にされているので、相互に隣接するデルタ部25で形成される縦渦Tが干渉し合うことがない。すなわち、高密度の縦渦Tが翼幅方向の広い範囲に亘って形成されて、負圧面12近傍に高エネルギ流体を誘引し、境界層の発達をさらに抑制する。これにより、流体の剥離抑制効果をより大きくすることができる。
また、翼体50によれば、終端60bまで到達した気流が滑らかに負圧面12へと導かれるので、流動抵抗を低下させることができ、圧力損失の増大を抑制することができる。 すなわち、図13に示すように、終端60bを角張った構成とすると、終端60bまで達した気流が負圧面12に大きく乗り上げる恐れがあり、流動抵抗として作用することが考えられる。これに対して、図12に示すように、底面21と負圧面12とが曲率をもって滑らかに接続されているので、終端60bまで到達した気流が滑らかに負圧面12へと導かれ、流動抵抗を低下させることができ、圧力損失の増大を抑制することができる。
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上述した第一実施形態では、終端20bと負圧面12とを滑らかに接続させる構成としなかったが、第二実施形態のように滑らかに接続させてもよい。
また、上述した第一,第二実施形態では、プロペラファン1の翼体に本発明を適用したが、例えば、図14に示すように、ガスタービンの圧縮機における動翼(流体機械用翼体)90に本発明を適用することも可能である(図14の例では、切欠段差部20を適用している)。
また、軸流式の流体機械のみならず、遠心式や斜流式の各種流体機械に本発明を適用することが可能である。
1…プロペラファン(流体機械)
10,50…翼体(流体機械用翼体)
10a…翼前縁
10b…翼後縁
11…圧力面
12…負圧面
20,60…切欠段差部
20a,60a…始端
20b,60b…終端
21…底面
22…絶壁面
23…稜辺
25…デルタ部
90…動翼(流体機械用翼体)
P…幅寸法(翼幅方向の幅寸法)
W…隣接する切欠段差部20の終端20bの間隔

Claims (8)

  1. 翼表面が翼前縁と翼後縁とを基準として圧力面と負圧面とに区分された流体機械用翼体であって、
    前記負圧面には、前記翼前縁に沿った位置において前記圧力面側に窪む切欠段差部が少なくとも一つ設けられ、
    前記切欠段差部は、翼幅方向の幅寸法が、前記翼前縁側の始端から前記翼後縁側の終端に進むに従って漸次小さくなっていることを特徴とする流体機械用翼体。
  2. 前記切欠段差部の前記翼幅方向に交差する法面は、前記負圧面と共に稜辺を形成する絶壁面とされていることを特徴とする請求項1に記載の流体機械用翼体。
  3. 前記切欠段差部の底面は、前記始端から前記終端に進むに従って漸次浅くなり、前記周端が曲率をもって前記負圧面と滑らかに接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体機械用翼体。
  4. 前記切欠段差部は、前記負圧面の法線方向から見て三角形状であることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の流体機械用翼体。
  5. 前記切欠段差部は、前記翼前縁に沿って複数連続的に設けられ、
    隣接する二つの前記切欠段差部の間には、前記負圧面の法線方向から見て前記負圧面が三角形状に残存したデルタ部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の流体機械用翼体。
  6. 前記切欠段差部は、前記負圧面の法線方向から見て台形状であることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の流体機械用翼体。
  7. 前記切欠段差部は、前記翼前縁に沿って複数連続的に設けられ、
    隣接する二つの前記切欠段差部の間には、前記負圧面の法線方向から見て前記負圧面が三角形状に残存したデルタ部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の流体機械用翼体。
  8. 前記切欠段差部は、前記終端の翼幅方向の幅寸法が、該切欠段差部の終端と該切欠段差部に隣接する前記切欠段差部の終端との間隔以上となる大きさに設定されていることを特徴とする請求項7に記載の流体機械用翼体。
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