JP2010202996A - 加工紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】クッション性、防滑性及び表面強度に優れ、また、段ボールシート、段ボール包装容器、内装包装容器などへの加工、貼合及び製函適性に優れた加工紙を提供する。
【解決手段】本発明は、基紙と、この基紙の少なくとも片面に設けられる塗工層とを備える加工紙において、上記塗工層が、水性樹脂エマルジョン、熱発泡性粒子、パルプ及びバインダを含有する塗工液の塗布により形成されており、上記水性樹脂エマルジョンが、分子内にカルボキシル基を有する高分子乳化剤を含み、塗工層表面のJIS−P8147(1994)に準じて測定した静摩擦係数が、0.10以上0.25以下であり、塗工層表面のJIS−P8147(1994)に準じて測定した滑り角度が、12度以上20度以下であることを特徴とする加工紙である。
【選択図】なし

Description

本発明は、加工紙に関し、詳細にはクッション性、防滑性及び表面強度に優れ、段ボールシート、段ボール包装容器、内装包装容器などへの加工、貼合及び製函適性に優れた加工紙に関する。
従来、例えば電化製品やガラス瓶などの梱包には、内部の製品に作用する擦れや衝撃などを緩和させるため、成形性が良く安価で軽量な発泡スチロールを用いることによって製品が固定され、不織布等により製品が包装されるのが一般的である。
しかしながら、このような発泡スチロールは、廃棄に際し環境への負荷が大きいといった不都合がある。周知のように、発泡スチロールを焼却処理によって廃棄するとなると、燃焼カロリーが高いことから焼却炉を損傷させることになり、また黒煙や汚染物質となって大気汚染を引き起こすことにもなる。一方、発泡スチロールを埋立て処理によって廃棄するとなると、この発泡スチロールは難分解性で嵩高であることから、そのまま土壌中に残留し、埋立て処分場の寿命を短縮させることになる。そこで、最近では、このような発泡スチロールの分別回収やリサイクル等が検討されているが、回収やリサイクルには多額のコストを要する等の理由により、根本的な対策を構築するまでに至っていないのが実情である。
これに対し、紙は燃焼カロリーが低く、燃焼による煤煙や有害物質の発生が少なく、易分解性を有することから、発泡スチロールに代えて、断熱性や保温性を有する紙を開発する試みがなされてきている。
特に、クッション性及び防滑性の優れた紙として、熱により発泡する発泡性マイクロカプセルを使用した発泡紙が各種提案されている。この発泡性マイクロカプセルとしては、例えば、メタクリル酸とスチレンの共重合体、アクリロニトリルとスチレンの共重合体、塩化ビニリデン等の熱可塑性合成樹脂などからなる微細粒子外殻内にブタンガス等の低沸点剤を封入したものであり、加熱により外殻が軟化し、低沸点溶剤が気化して膨張することで、中空の独立気泡であるマイクロバルーンを形成するものが開発されている(特公昭44−7344号公報参照)。
従来、このような発泡性マイクロカプセルを使用して、紙にクッション性及び防滑性をもたせる方法としては、熱発泡性粒子をパルプ原料に混合して紙を抄造する内添抄紙方法や、紙製造工程途中で多くの水分を保有する湿潤状態の湿紙に熱発泡性粒子をスプレー又は含浸する方法等が知られている。
しかし、このような方法で製造された発泡紙は、いずれも発泡性マイクロカプセルが発泡して紙層全体がポーラスとなっており、マイクロカプセルが発泡したマイクロバルーンによりパルプ繊維間結合が妨げられるため、紙力や紙層間の剥離強度が大きく低下し、これにより紙が破れたり裂けたりし易いという不都合がある。
すなわち、上記により得られた発泡紙を加工してクッション・防滑用の包装容器として用いた場合、
(a)発泡したマイクロバルーンが繊維間の結合を阻害する結果、包装容器としての圧縮強度や破裂強度が低下し、包装容器として必要な強度を確保できないため、包装容器が潰れてしまう、
(b)紙層間の剥離強度が低く、紙の層間剥離により包装容器のジョイント部分やフラップ部分で剥れが発生する、
(c)表面強度が弱く、輸送及び移動時の擦れにより、包装容器の表面に紙剥け、破れが発生する、
(d)熱発泡性粒子が紙層全体に分布してポーラスな性状となっているため、貼合及び製函時に接着剤を多く吸収してしまい、その結果、接着剤が必要以上に消費され、コスト高に繁がる、
(e)紙層内に多量に吸収された接着剤によって、発泡紙本来の断熱性が低下する、
などの不都合が生じるため、クッション・防滑用の包装容器に用いる紙としての適性がない。
そこで、熱発泡性粒子を含有した塗工液を紙表面にオフマシン又はオンマシン上で塗工することで、発泡紙を得る技術も発明されている(特開2008−266799号公報、特開平10−204797号公報、特開平10−21962号公報参照)。このような熱発泡性粒子の紙への塗工による発泡紙の製造は、熱発泡性粒子単体では紙に定着しないため、熱発泡性粒子とバインダとからなる塗工液を塗工機により紙へ塗工した後、加熱発泡させることにより行わなければならない。
しかしながら、この方法は、上記バインダにより熱発泡性粒子の発泡倍率が抑制され、熱発泡性粒子が適切に発泡することによって発現するクッション性及び防滑性が低下することになる。
また、熱発泡性粒子の添加率を多くした場合には、発泡紙のコストが高くなることに加え、熱発泡性粒子によって紙の表面強度及び印刷適性が低下することになる。
さらに、紙表面に熱発泡性粒子を含有した塗工液を塗工する方法は、塗工という手段に起因して塗工量が一定量以下に制限されることから、塗工層の厚みも薄く、かつ熱発泡性粒子自体の塗工量も制限される結果、クッション性及び防滑性という点では前述の内添法や含浸法よりも劣り、実用化には至っていない。
特公昭44−7344号公報 特開2008−266799号公報 特開平10−204797号公報 特開平10−21962号公報
本発明は、これらの不都合に鑑みてなされたものであり、クッション性及び表面強度に優れ、段ボールシート、段ボール包装容器、内装包装容器などへの加工、貼合及び製函適性に優れた加工紙の提供を目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、
基紙と、この基紙の少なくとも片面に設けられる塗工層を備える加工紙において、
上記塗工層が、水性樹脂エマルジョン、熱発泡性粒子、パルプ及びバインダを含有する塗工液の塗布により形成されており、
上記水性樹脂エマルジョンが、分子内にカルボキシル基を有する高分子乳化剤を含み、
塗工層表面のJIS−P8147(1994)に準じて測定した静摩擦係数が、0.10以上0.25以下であり、
塗工層表面のJIS−P8147(1994)に準じて測定した滑り角度が、12度以上20度以下であることを特徴とする。
当該加工紙は、塗工層の形成のための塗工液にパルプが含有されていることから、このパルプがバインダによる熱発泡性粒子の発泡抑制作用を減少し、適切かつ効果的な熱発泡性粒子の発泡によってクッション性を高めることができる。また、当該加工紙は、塗工液に水性樹脂エマルジョンを含有し、この水性樹脂エマルジョンが分子内にカルボキシル基を備える高分子乳化剤を有することから、表面の強度を高めることができると共に、防滑性を向上することができる。さらに、当該加工紙は、塗工層表面の静摩擦係数及び滑り角度を上記範囲とすることで、梱包等の加工紙を扱う作業性が向上する、擦れによる梱包物の傷つき・汚れの付着が防止される、印刷適正が向上される、加工紙自体の耐摩耗性が向上する等の作用を奏することができる。
上記塗工層は、基紙の表面に設けられる下塗り層及びこの下塗り層の表面に設けられる少なくとも1層の上塗り層を備えており、
この下塗り層が、熱発泡性粒子、パルプ及びバインダを含有する下塗り層用塗工液を塗布することにより形成され、
この上塗り層が、水性樹脂エマルジョンを含有する上塗り層用塗工液を塗布することにより形成されているとよい。
このように塗工層をこのような下塗り層及び上塗り層と成分を分けて少なくとも2層設けることにより、上述の作用をさらに効果的に発現させることができる。すなわち下塗り層において、熱発泡性粒子及びバインダによりクッション性を高め、上塗り層により表面の強度を高めかつ適切な滑り適正を発現させることができる。
上記下塗り層用塗工液に含有されるパルプの熱発泡性粒子に対する配合比(乾燥質量比)としては0.1/99.9以上5.0/95.0以下が好ましく、上記熱発泡性粒子の平均粒子径としては15μm以上20μm以下が好ましい。このように、パルプの熱発泡性粒子に対する配合比及び熱発泡性粒子の平均粒子径を上記範囲とすることで、各熱発泡性粒子を均一でムラのない好適な発泡を発現させることができるため、下塗り層におけるクッション性を更に高めることができる。
上記下塗り層用塗工液に含有されるバインダは、主成分としてスチレン・ブタジエン共重合(SBR)ラテックスを含むとよい。このように、下塗り層用塗工液にバインダの主成分としてSBRラテックスを用いることで、バインダとして必要な強度及び接着性を確保しつつ、バインダによる熱発泡性粒子の発泡を妨げを抑えることができクッション性を向上させることができる。
上記下塗り層用塗工液に含有されるバインダの熱発泡性粒子及びパルプの混合物に対する配合比(乾燥質量比)としては、20/100以上60/100以下が好ましい。このように、下塗り層用塗工液中のバインダが上記配合比率を有することで、適当な接着力を確保しつつ、熱発泡性粒子の発泡を可能にするため、クッション性を向上させることができる。
上記下塗り層用塗工液の塗工量としては、上記基紙片面当りの固形分で0.4g/m以上10g/m以下が好ましい。このように、下塗り層用塗工液の塗工量を上記範囲とすることで、下塗り層において必要なクッション性を更に効果的に発現させることができる。
なお、本発明において「下塗り層の表面」とは、基紙の表面に設けられる下塗り層の界面であって、基紙と接する界面(裏面)と反対側の界面をいう。
以上説明したとおり、本発明によれば、優れたクッション性、防滑性及び表面強度を有する加工紙を得ることができ、これにより、段ボールシート、段ボール包装容器、内装包装容器などへの加工、貼合及び製函適性に優れた加工紙を得ることができる。
また、本発明に係る加工紙は、例えば板紙及び発泡紙の貼り合わせ等の手段を講じることなく、クッション性及び防滑性に優れるため、工程の簡略化が図れる。さらに、当該加工紙は、表面強度も優れているので、従来の発泡紙では表面強度が弱いために用いることができなかった輸送、保管、保護のために用いられるクッション性及び防滑性に優れた段ボール包装容器、内装包装容器等の包装容器に用いることができ、このような包装容器に用いても罫線割れ等の不都合を発生することがない。
特に、当該加工紙によれば、上述した段ボールの容器にビンや缶類等を収納する際に、ビンや缶類の表面のラベルなどが容器表面との擦れにより汚れることを防止でき、優れたクッション性を備えている。
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。なお、本発明に係る加工紙は、以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内において、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。
当該加工紙は、基紙と、この基紙の片面に設けられる塗工層を有している。この塗工層は、基紙の表面に設けられる下塗り層と、この下塗り層の表面に設けられる上塗り層との2層を備えている。以下、基紙、下塗り層及び上塗り層の順に説明する。
(基紙)
当該基紙は、表層と、裏層と、これらの表層及び裏層間に配置される中層からなる3層の紙層により構成されている。
当該加工紙は、輸送、保管、保護等のために用いられる断熱性、保護性及び保温性に優れた段ボール包装容器、内装包装容器等の包装容器に加工され使用されるため、抜き加工適性や貼合・製函適性に優れ、かつ包装容器として適切な強い強度を有することが要求される。
そのため、表層は、(1)段ボール包装容器、内装包装容器等への加工時の罫線割れを防止する、(2)高い表面強度を有し、内容物を輸送、保管及び保護する、(3)中空無機粒子と熱発泡性粒子とバインダを含有する塗工液に対する塗工適性を有する、(4)印刷適性を確保する等の役目を担う層である。
表層の製造方法としては、原料パルプに硫酸バンド及びサイズ剤を適量添加し、原料スラリーを生成し、この原料スラリーを抄くことによって行うことができる。
表層の原料パルプとしては、例えば
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;
ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの機械パルプ;
茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ又は離解・脱墨・漂白古紙パルプ;
ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的又は機械的に製造されたパルプ
等の公知の種々のパルプを使用することができる。
これらの原料パルプの中でも、基紙の表層の役割、基紙としての各種品質特性等をバランスよく効率的に達成するために、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)又は上白古紙、ケント古紙、茶古紙、クラフト封筒古紙から製造された古紙パルプが好ましい。なお、原料パルプを選択する場合には、古紙パルプを可能な限り多く配合することが、エネルギー原単位や環境に与える負荷の軽減から好ましい。
また、表層の原料パルプには、針葉樹クラフトパルプ(NKP)を含有することが好ましい。このように、繊維長が長く、繊維が太い針葉樹クラフトパルプ(NKP)を含有することで、破裂強度の向上とともに罫線割れを効果的に防止することができる。
表層の原料パルプにおける針葉樹クラフトパルプ(NKP)の含有量としては、5質量%以上70質量%以下が好ましく、25質量%以上70質量%以下が特に好ましい。表層の原料パルプにおけるNKPの含有量が上記範囲より小さいと、繊維長が長く、繊維が太いNKPの含有割合が少なくなるため、破裂強度の低下や製函加工時に罫線割れが発生しやすくなる傾向がある。一方、NKPの含有量が上記範囲を超えると、地合いむらによる強度のばらつき、見栄えの低下を招き、また熱発泡性粒子とパルプとバインダとを含有する塗工液を塗工する場合に塗工液が基紙表面に非常に多く浸透してしまうため、クッション性及び防滑性を有する塗工層を効率的に形成することができないという不都合が生じてしまうおそれもある。
また、表層の付け量としては、15g/m以上45g/m以下が好ましく、25g/m以上40g/m以下が特に好ましい。表層の付け量が上記範囲より小さいと、表層の強度が低下するため製函加工時に罫線割れ、角割れ等が発生しやすくなる。一方、表層の付け量が上記範囲を超えると、中層と比較して表層には高価な原料パルプを使用しているため、コストアップを招くことになる。
なお、「付け量(g/m)」とは、以下の手順により層剥離を行い、各層の坪量をJIS−P8124に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した値である。層剥離は以下の手順で行う。まず、各試料から得た各サンプルを室温の水に約1時間浸漬する。次に、水に浸漬した各サンプルを、角を起点として10mmΦ程度の丸棒に巻き付け、この丸棒を転がして各サンプルをしごく。この操作を各サンプルにおける四隅の全ての角を起点に繰り返し、各方向からサンプルにしごきの力を加える。これにより、各サンプルの層間の一部が剥離してくるので、これを利用して各層に分離して層剥離を行う。層剥離を行った後、各サンプルの各層を熱風乾燥機などで十分に乾燥し、試験に使用する。
さらに、表層の原料パルプのフリーネスとしては、280cc以上530cc以下とすることが好ましく、320cc以上430cc以下とすることがより好ましい。表層の原料パルプのフリーネスが上記範囲より小さいと、原料パルプの繊維長が短くなるため、破裂強度の低下や、製函加工時に罫線割れ、角割れが発生しやすくなり、一方、フリーネスが上記範囲を超えると、繊維長が長く、塗工液に含有するバインダが、過剰に表層に浸透してしまい、熱発泡性粒子を表面に留めることが困難となり、熱発泡性粒子が剥れ落ちるおそれがある。
ここで、「フリーネス」とは、JIS−P8220に準拠して標準離解機にて試料を離解処理した後、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて濾水度を測定した値である。
次に、中層及び裏層について説明する。この中層及び裏層の製造方法としては、上記表層の製造方法と同様であり、具体例には、原料パルプに硫酸バンド及びサイズ剤を適量添加し、原料スラリーを生成し、この原料スラリーを抄くことによって行うことができる。
当該中層及び裏層の原料パルプとしては、表層と同様に公知の種々のパルプを使用することができる。これらの中でも、基紙の裏層の役割、各種品質特性等をバランスよくかつ効率的に達成することを考慮すると、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)又は茶古紙、クラフト古紙から製造された古紙パルプが好ましい。なお、原料パルプを選択する場合には、古紙パルプを可能な限り多く配合することが、エネルギー原単位や環境に与える負荷の軽減から好ましい。
また、中層及び裏層の原料パルプには、表層と同様に針葉樹クラフトパルプ(NKP)を含有することが好ましい。このように、繊維長が長く、繊維が太い針葉樹クラフトパルプ(NKP)を含有することで、破裂強度の向上とともに罫線割れを効果的に防止することができる。
この中層及び裏層の原料パルプにおける針葉樹クラフトパルプ(NKP)の含有量としては、10質量%以上80質量%以下が好ましく、40質量%以上60質量%以下が特に好ましい。中層及び裏層の原料パルプにおけるNKPの含有量を上記範囲とすることで、破裂強度の向上及び、当該加工紙の容器包装加工時における罫線割れ、角割れを効果的に防止できる。
さらに、中層及び裏層の原料パルプのフリーネスとしては、表層同様に容器包装加工時に破裂、罫線割れ、角割れ等を効果的に防止することを考慮すると、280cc以上480cc以下とすることが好ましく、加えて引張強度の低下防止を考慮すると、300cc以上440cc以下とすることがより好ましい。
基紙の坪量としては、特に限定されるものではないが、具体例には150g/m以上400g/m以下が好ましく、170g/m以上300g/m以下が特に好ましい。なお、この「坪量」とは、JIS−P8113に準拠して測定した値である。基紙の坪量が上記範囲より小さいと、基紙製造時の塗工適性不良の懸念がある。一方、基紙の坪量が上記範囲を超えると、包装容器加工時、厚みが大きすぎるため加工し難く、好ましくない。
なお、基紙の抄紙方法については、特に限定されるものではなく、酸性抄紙法、中性抄紙法又はアルカリ性抄紙法のいずれであってもよい。また、抄紙機も、特に限定されるものではなく、例えば長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機等の公知の種々のものを使用することができる。
(下塗り層)
下塗り層は、熱発泡性粒子、パルプ及びバインダを含有する下塗り層用塗工液を塗布することによって形成される。当該下塗り層により、当該加工紙に主にクッション性を付与することができる。
この熱発泡性粒子は、熱可塑性合成樹脂で構成されるマイクロカプセル状の外殻内に低沸点溶剤を封入したもので、一般的には平均粒子径が5μm以上30μm以下のものが用いられる。
熱発泡性粒子の外殻を構成する熱可塑性合成樹脂としては、例えば塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル等の共重合体を挙げることができる。また、かかる外殻内に封入される低沸点溶剤としては、例えばイソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサン、低沸点ハロゲン化炭化水素、メチルシラン等を挙げることができる。
このような熱発泡性粒子は、80〜200℃での加熱により、封入されている低沸点溶剤が気化し蒸気圧が上昇し、外殻が膨張して独立気泡を形成し、直径が4〜5倍、体積が50〜130倍に膨張する。
なお、抄紙工程中及び紙加工工程中の紙乾燥工程の温度が80〜200℃であることから、当該熱発泡性粒子は、発泡開始温度が75℃以上85℃以下であること、最高膨張温度が105℃以上120℃以下であることが好ましい。発泡開始温度が75℃未満、最高膨張温度が105℃未満であると、熱発泡性粒子が熱により急激に膨張し、これによりドライヤーの表面を汚すという操作上のトラブルが発生するおそれがある。一方、発泡開始温度が85℃、最高膨張温度が120℃を超えると、熱発泡性粒子が十分に膨張せず、このためクッション性が阻害されてしまうので、好ましくない。
この熱発泡性粒子の平均粒子径としては15μm以上20μm以下であることが好ましい。熱発泡性粒子の平均粒子径が上記範囲より小さいと、下塗り層(クッション層)の厚みが十分に確保できず、このため荷傷を防止できなくなり、逆に、熱発泡性粒子の平均粒子径が上記範囲を超えると、下塗り層(クッション層)の厚みにバラツキを生じ、また必要以上に下塗り層(クッション層)の厚みが増すために折り加工に適さなくなるので、好ましくない。
このような熱発泡性粒子としては、例えば、松本油脂製薬株式会社製の「マツモトマイクロスフェアF−30D」、「同F−30GS」、「同F−20D」、「同F−50D」や、日本フィライト株式会社販売の「エクスパンセルWU」、「同DU」などの公知の種々のものを用いることができるが、膨張前の熱発泡性粒子の粒径、塗工適性、乾燥工程での発泡性などの観点から特にアクリル系コポリマーからなる熱発泡性粒子が好ましい。
この熱発泡性粒子を、乾燥工程において、ドライヤーにより発泡させて膨張させ、当該加工紙を嵩高にすることでクッション性及び防滑性を付与する。なお、この熱発泡性粒子を膨張させるための加熱は、一回の加熱で当該加工紙の所望とする大きさまで発泡させて膨張させることが好ましい。
下塗り層用塗工液に含有されるパルプは、熱発泡性粒子を好適に発泡させ、当該加工紙にクッション性を付与することに寄与する。
当該パルプとしては、上述の基紙の表層に使用される原料パルプと同様の種々のパルプを使用することができる。これらのパルプの中でも、当該加工紙のクッション性に付与する役割及び当該加工紙としての各種品質特性等をバランスよくかつ効率的に達成することを考慮すると、特に広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)から製造された古紙パルプを用いることが好ましい。
下塗り層用塗工液におけるパルプの熱発泡性粒子に対する配合比(乾燥質量比)としては、0.1/99.9以上5.0/95.0以下が好ましく、0.5/99.5以上1.5/98.5以下がより好ましい。パルプの熱発泡性粒子に対する配合比が上記範囲より小さいと、発泡粒子とパルプ繊維との絡みが悪くなって接着強度が弱くなり、逆に、パルプの熱発泡性粒子に対する配合比が上記範囲を超えると、下塗り層用塗工液が増粘して塗工が困難になり、クッション性及び防滑性が低下する。
このように、熱発泡性粒子及びパルプを下塗り層用塗工液に含有させることで、下塗り層により厚みをもたせることができ、これによりクッション性を得ることができる。
下塗り層用塗工液に含有されるバインダは、当該加工紙の表面強度を向上させ、適切な防滑性を付与することができ、当該加工紙が包装容器等に加工される際の罫線割れ等の発生、及び輸送、保管時等における内容物との擦れによる紙剥け、破れ等の発生を防止することができる。
このバインダとしては、例えば酢酸ビニル、アクリル、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレン・ブタジエン共重合(SBR)ラテックス、澱粉、ポリアクリルアマイド(PAM)等の公知の種々のものを用いることができる。
しかし、当該加工紙に塗工される下塗り層用塗工液には、上述したように熱発泡性粒子及びパルプも配合されているため、バインダの種類及び性状によっては、基紙の表面強度の低下を招くおそれがある。
また、硬度の高いバインダは、表面強度の向上効果には優れるものの、熱発泡性粒子の膨張を阻害してしまう。すなわち、熱発泡性粒子は、上述したように加熱して膨張させて発泡させることによりクッション性及び防滑性を発揮するため、熱発泡性粒子の膨張が阻害されてしまうと、このクッション性及び防滑性を得ることができなくなる。さらに、当該加工紙は、包装容器に加工されることが多いが、包装容器に加工され、罫線部(折り曲げ部)に強い折り曲げの力が加わった際に、塗工層(下塗り層)が割れないことが要求される。
このため、上述した種々のバインダの中でも、特に主成分としてSBRラテックスを用いることが好ましい。すなわち、SBRは、熱発泡性粒子、パルプとの接着性が良好であり、また折り曲げ時の伸びに優れるため、熱発泡性粒子の膨張・発泡を阻害することがなく、加えて当該加工紙が包装容器に加工された場合の罫線割れの不都合が発生しにくくなる。
当該バインダのガラス転移温度としては、−50℃以上30℃以下が好ましく、−30℃以上20℃以下が特に好ましい。このようなガラス転移温度範囲のバインダであると、下塗り層用塗工液の塗工時の粘度が低く、折り曲げ適性に優れる柔らかい性状であり、しかも乾燥後は適度な表面強度向上効果を得ることができるため、熱発泡性粒子の発泡性及び当該加工紙の加工適性がさらに優れたものとなる。
当該バインダの熱発泡性粒子及びパルプの混合物に対する配合比(乾燥質量比)としては、20/100以上60/100以下であることが好ましく、40/100以上50/100以下であることがより好ましい。熱発泡性粒子及びパルプに対するバインダの配合比(乾燥質量比)が上記範囲より小さいと、熱発泡性粒子及びパルプの接着性が低下するおそれがある。一方、バインダの当該配合比(乾燥質量比)が上記範囲を超えると、熱発泡性粒子及びパルプの接着性及び熱発泡性粒子の発泡効果はほとんど向上せず、クッション性及び防滑性が低下する上に、製造コストが高くなる。
なお、熱発泡性粒子は、基紙を構成する各層の原料パルプに内添することも可能ではある。しかし、熱発泡性粒子の比重は0.9〜1.2g/cmであるため、これらを内添すると、抄紙時に厚み方向に均一に分散させることが難しく、クッション性を効果的に得ることができない。また、所望とするクッション性を得るために、熱発泡性粒子を過剰に添加することが必要となる。このような熱発泡性粒子の過剰な添加は、製造コストの増加を招き、また品質面では、表面強度の低下、圧縮強度や破裂強度、引張強度、印裂強度などの各種強度の低下、印刷適性の低下、表裏差によるカールの発生などの不都合を生じるため、少なくとも熱発泡性粒子とパルプとバインダとを含有した塗工液を塗工して塗工層を形成することが好ましい。
このような下塗り層用塗工液の塗工量としては、基紙片面当りの固形分で、0.4g/m以上10g/mが好ましく、1g/m以上6g/m以下が特に好ましい。下塗り層用塗工液の塗工量が上記範囲より小さいと、クッション性が悪くなり、防滑性も低下する。逆に、下塗り層用塗工液の塗工量が上記範囲を超えると、下塗り層(クッション層)が厚くなり、また熱発泡性粒子の膨張にバラツキが生じるので、好ましくない。なお、下塗り層用塗工液の塗工量を増やすことも可能ではあるが、過剰な塗工は生産効率が低下する上、高価な熱発泡性粒子を多く塗工することになり、いずれにしても大幅なコストアップを生じるおそれがある。
なお、下塗り層用塗工液を塗工する方法としては、バーコーター、ロッドコーター、エアナイフなどの公知の塗工手段により塗工することができる。また、グラビア印刷機、フレキソ印刷機等の公知の印刷手段により印刷することもできる。これらの中でも特に、塗工液の塗工量を任意に変更できるロッドコーター、エアナイフなどの塗工機が好ましい。
また、下塗り層用塗工液を塗工する前工程で、基紙にカレンダー処理を施すことが好ましい。これにより基紙表面が緻密になり、塗工液を基紙表面に効率よくとどめることができるようになるので、当該加工紙をよりクッション性に優れたものとすることができる。さらに、当該下塗り層用塗工液は、基紙表面に薬剤や各種紙塗被剤が塗工された後に塗工することもできる。
(上塗り層)
上塗り層は、少なくとも水性樹脂エマルジョンを含有する上塗り層用塗工液を塗布することにより形成される。
この水性樹脂エマルジョンは、分子内にカルボキシル基を有する高分子乳化剤の存在下でラジカル重合性単量体を乳化重合して得られる。分子内にカルボキシル基を有する高分子乳化剤を用いることで、上塗り層を形成した際の優れた防滑性が発現される。
この分子内にカルボキシル基を有する高分子乳化剤としては、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するカルボン酸及び/又は酸無水物と、その他の共重合可能なラジカル重合性単量体との共重合体が好適に使用できる。
このラジカル重合性不飽和二重結合を有するカルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの炭素原子数が3〜4個程度のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などの炭素原子数が4〜5個程度のジカルボン酸;それらのモノアルキルエステル、モノヒドロキシアルキルエステル、モノアミドなどが挙げられる。また、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
上記ジカルボン酸のモノエステル類、モノヒドロキシアルキルエステル類及びモノアミド類としては、当該ジカルボン酸成分と、後述する炭素原子数が1〜18個程度のモノアルコール成分又は炭素原子数が2〜8個程度のジオール成分とのモノエステル化合物、及び炭素原子数が1〜18個程度のアミン成分とのモノアミド化合物が挙げられる。
上記モノアルコール成分としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノールなどが挙げられる。ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどが挙げられる。アミン成分としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ブチルアミン、へキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、オクタデシルアミンなどが挙げられる。
これらのラジカル重合性不飽和二重結合を有するカルボン酸及び/又は酸無水物の中でも、得られる高分子乳化剤の乳化能の点から、モノカルボン酸が好ましく、特にアクリル酸又はメタクリル酸が好適である。
ラジカル重合性不飽和二重結合を有するカルボン酸及び/又は酸無水物の使用量は、全単量体成分を重合して得られる高分子乳化剤の酸価が50〜350の範囲であるとよい。高分子乳化剤の酸価が50より小さいと、得られる当該加工紙の防滑性が低下し、一方、高分子乳化剤の酸価が350を超えると、後述する水性ワックスエマルジョンとの相溶性が低下し、また得られる当該加工紙の防滑性が低下する傾向にあり、好ましくない。
上記その他の共重合可能なラジカル重合性単量体としては、例えばアクリル系単量体、スチレン系単量体及びマレイン酸系単量体が用いられる。
上記アクリル系単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸の炭素原子数1〜18のアルキルエステル、炭素原子数1〜18のアルキルアミド、炭素原子数2〜4のヒドロキシアルキルエステルなどが用いられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、ヘキシル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記スチレン系単量体としては、例えば炭素原子数8〜10個程度のスチレン及びその誘導体が用いられ、具体的には、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
上記マレイン酸系単量体としては、例えばマレイン酸の炭素原子数1〜18のジアルキルエステル、炭素原子数1〜18のジアルキルアミド、炭素原子数2〜4のジ(ヒドロキシアルキル)エステルなどが用いられ、具体的には、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジブチルマレート、ジオクチルマレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレート、マレイン酸ジメチルアミド、マレイン酸ジエチルアミド、マレイン酸ジブチルアミド、マレイン酸ジオクチルアミドなどが挙げられる。
以上のラジカル重合性不飽和二重結合を有するカルボン酸及び/又は酸無水物と、その他の共重合可能なラジカル重合性単量体から高分子乳化剤を製造する方法としては、有機溶剤中で重合開始剤の存在下、上記単量体成分(ラジカル重合性不飽和二重結合を有するカルボン酸及び/又は酸無水物と、その他の共重合可能なラジカル重合性単量体)を所定の温度及び反応時間で反応させた後、有機溶剤を留去する方法が利用できる。
ここで、使用可能な有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤;低級アルコール系有機溶剤;グリコール及びその誘導体などが挙げられる。一方、使用可能な重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;ベンゾイルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類;また必要に応じて還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。
なお、本発明の方法で得られる当該加工紙が、段ボールの糊貼り工程のように、処理温度が120℃以上となる加熱工程を含む分野に利用される場合は、当該加工紙に耐熱性を付与する点から、高分子乳化剤のガラス転移温度を60℃以上にすることが好ましい。
次に、高分子乳化剤の存在下で乳化重合に供されるラジカル重合性単量体としては、上記アクリル系単量体、スチレン系単量体、マレイン酸系単量体の他、飽和カルボン酸のビニルエステルなどが挙げられる。これらのラジカル重合性単量体の中でも、水性樹脂エマルジョンの分散性からアクリル系単量体、スチレン系単量体が好ましい。
上記飽和カルボン酸のビニルエステルとしては、例えば炭素原子数2〜18の飽和カルボン酸のビニルエステルが用いられ、具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどが挙げられる。
上記ラジカル重合性単量体は、得られる重合体のガラス転移温度が90℃以下となる範囲で単独又は混合して用いられるとよい。得られる重合体のガラス転移温度が90℃より高くなると、当該加工紙の防滑性が悪化する傾向になり、好ましくない。
上記高分子乳化剤及び乳化重合に供されるラジカル重合性単量体を用いて水性樹脂エマルジョンを製造する方法としては、高分子乳化剤をアルカリ化合物の水溶液中に溶解させた後、乳化重合に供される単量体と重合開始剤との混合物を添加し、所定の温度及び反応時間で反応させる方法が採用される。
上述の製造方法において、高分子乳化剤を水性媒体中に溶解させるために使用するアルカリ化合物としては、例えばアンモニア、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を使用することができる。また、重合開始剤としては、上記高分子乳化剤を製造するために使用する重合開始剤と同様のものを使用することができる。
上塗り層用塗工液における高分子乳化剤のラジカル重合性単量体に対する配合比(高分子乳化剤/ラジカル重合性単量体)としては、20/80以上50/50以下が好ましく、30/70以上45/55以下が特に好ましい。高分子乳化剤の配合比が上記範囲より低くなると、得られる水性樹脂エマルジョンの安定性が低下し、一方、高分子乳化剤の配合比が上記範囲をこえると、防滑性が悪化する傾向にある。
当該上塗り層用塗工液は、上記水性樹脂エマルジョンに加え、水分散性ワックスエマルジョンを含有するとよい。このように、上塗り層用塗工液に水分散性ワックスエマルジョンを含有することで、上塗り層の強度が高まると共に撥水性をも高めることができる。
当該水性ワックスエマルジョンは、融点が50〜120℃の範囲にあるワックスを、乳化剤の存在下で水中に分散させたものがよい。ここで使用できるワックスとしては、例えばパラフィンワックス、マイクロクロスタリンワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられる。
ワックスを水中に乳化するために使用する乳化剤については、特に制限はなく、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び上記高分子乳化剤のいずれも使用することができる。なお、高い撥水度を維持するためには、水性ワックスエマルジョン中の乳化剤の含有量が少ない方がよく、例えばワックスの量に対して10質量%以下が好ましい。
当該上塗り層用塗工液における水性ワックスエマルジョンの水性樹脂エマルジョンに対する配合比(水性ワックスエマルジョン/水性樹脂エマルジョン)としては、固形分質量比率で2/98以上70/30以下が好ましい。ここで、水性樹脂エマルジョンの固形分とは全固形分を意味し、水性ワックスエマルジョンの固形分とはワックスを意味する。水性ワックスエマルジョンの配合比が上記範囲より少なくなると、得られる当該加工紙の滑り適性が低下し、一方、水性ワックスエマルジョンの配合比が上記範囲より多くなると後加工適性が低下して、損紙処理することが困難になり、好ましくない。
ここで、上記水性ワックスエマルジョンの配合比が5/95より小さく2/98に近くなると、滑り適性は悪化する傾向になる。さらに、この系で滑り適性を向上させる方法として、熱プレス法があげられるが、これについては後で記載する。
さらに、当該加工紙が高い滑り適性と耐熱性を必要とする用途に用いられる場合は、本発明に使用する上塗り層用塗工液中に、カルボキシル基と反応可能な水溶性金属錯塩などを架橋剤として添加することにより良好な結果を得ることができる。
ここで使用可能な水溶性金属錯塩としては、Zn、Zr、Sn、Tiなどの多価金属を炭酸、リン酸などの無機酸、もしくはタンニン、没食子酸、フミン酸、サリチル酸、安息香酸、パラオキシ安息香酸等の有機酸と反応させて金属錯塩とし、さらにアンモニア、エチレンジアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類で中和して水溶化したものが挙げられる。
上記水溶性金属錯塩の具体例としては、炭酸亜鉛アンモン、リン酸亜鉛アンモン、没食子酸亜鉛アンモン、フミン酸亜鉛アンモン、安息香酸亜鉛アンモンや、スズ、ジルコニウム、チタンの同様の金属錯塩などが挙げられる。
これら水溶性金属錯塩の製造法としては、先ず多価金属の水酸化物、酸化物などにアンモニア、アミンなどの水溶液を加えてスラリーを調製し、これに上記の酸もしくはそのアンモニウム塩、アミン塩を添加し、金属化合物を水溶化させることによって得ることができる。
上記水溶性金属錯塩の使用量としては、上塗り塗工用塗工液組成物中に存在する全カルボキシル基に対し、0.2当量以上1.5当量以下が好ましく、0.5当量以上1.5当量以下が特に好ましい。このような金属架橋剤は、化学量論的にはその1当量がカルボキシル基の1当量と反応するが、反応率が100%ではないため、全カルボキシル基を架橋するには1.5当量程度含有させることが好ましい。1.5当量を超える金属架橋剤の添加は、特に不都合はないとしても、その効果は1.5当量の添加時とほとんど変わらなくなる。
なお、上塗り塗工用塗工液には、保存安定性、滑り適性及び離解性を低下させない範囲で、各種水溶性樹脂、水混和性溶剤、消泡剤などを適宜添加することができる。
これらの材料から上塗り層用塗工液を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば高速ミキサーなどの公知の撹拌機を使用し、各材料の所定量を撹拌混合して製造することができる。
上塗り用塗工液の塗工方法としては、紙表面に通常のロールコーター、ドクターブレードコーター、ナイフエッジコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、バーコーター等のいずれによっても塗工することができる。
さらに、当該上塗り層用塗工液は、下塗り層表面に薬剤や各種紙塗被剤が塗工された後に塗工することもできる。なお、上塗り層用塗工液の塗工量(ウエット質量)としては、1回又は複数回の塗工で、6〜20g/mが好ましく、10〜15g/mがより好ましい。上塗り層用塗工液の塗工量が6g/m未満であると、十分な耐磨耗性を持たせることが出来ない。一方、上塗り層用塗工液の塗工量が20g/mを超えると、耐磨耗性が飽和状態となり、加えて滑り適正が低下する。
上塗り層用塗工液が塗布された後の乾燥方法としては、熱風ヒーター、赤外線ヒーターなどの各種ヒーター類を使用することができる。なお、上塗り層をワックスの融点以上に加熱することにより、より高い滑り適性を得ることができる。かかる塗工面の加熱方法としては、熱風ヒーターや赤外線ヒーターを利用してもよいが、与えられる熱量が小さいため、熱板や熱ロール表面に接触させて、すなわち実質的に圧力をかけずに加熱する方法がより効果的である。
さらに、当該加工紙の上塗り層用塗工液の組成物である高分子乳化剤の酸価が250以上350以下であるとき、及び/又は、水性ワックスエマルジョンの水性樹脂エマルジョンに対する固形分質量比率が2/98以上5/95以下の範囲であるときは、表面温度がワックスの融点以上で、かつ好ましくは90〜180℃に加熱された熱ロールにて、60〜150kg/cmの線圧下でプレス加工する方法により、高い滑り適性を有する加工紙を製造することができる。
これらの方法から得られる当該加工紙は、より少ない上塗り層用塗工液の塗工量で、高い表面強度及び滑り適性、優れた後加工適性及び良好な離解性を有するものである。当該加工紙は、優れたクッション性、防滑性及び表面強度を有し、段ボールシート、段ボール包装容器、内装包装容器などへの加工、貼合及び製函適性に優れている。
当該加工紙の塗工層表面のJIS−P8147(1994)に準じて測定した静摩擦係数としては、0.10以上0.25以下とされており、0.14以上0.20以下が好ましい。また、塗工層表面のJIS−P8147(1994)に準じて測定した滑り角度としては、12度以上20度以下とされており、12度以上18度以下が好ましい。当該加工紙は、塗工層表面の静摩擦係数及び滑り角度を上記範囲とすることで、梱包等の加工紙を扱う作業性が向上する、擦れによる梱包物の傷つき・汚れの付着が防止される、印刷適正が向上される、加工紙自体の耐摩耗性が向上する等の作用を奏することができる。なお、 当該加工紙表面の静摩擦係数及び滑り角度が上記範囲より小さいとハンドリング時の取扱いが困難となり、逆に、静摩擦係数及び滑り角度が上記範囲を超えると耐磨耗性が低下する。
なお、本発明の加工紙は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、基紙が表層、2層の中層、及び裏層の4層である加工紙、さらに中層の層数を増やして5層以上の層を有する加工紙としてもよいし、基紙が単層の加工紙であってもよい。また、上塗り層用塗工液と下塗り層用塗工液を混合させ、一層の塗工層を基紙の表面に設けることによって、塗工層を形成してもよい。このように一層の塗工層とすることによっても、一定のクッション性及び防滑性を発現させることができ、かつ作業工程を簡略化することができる。さらに、基紙の両面に塗工層を設けることも可能であり、加工紙のクッション性、防滑性及び表面強度がより向上される。
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。なお、本実施例において、配合、濃度等を示す数値は、固形分又は有効成分の質量基準の数値である。
本発明に係る38種類の加工紙(実施例1〜38)と、これらの実施例1〜38と比較検討するために、6種類の加工紙(比較例1〜6)を作成した。以下に各試料の製造条件を示す。なお、特に断りのない限り、基紙の各層の原料配合、濾水度、薬品添加条件などは同一とする。
[実施例1]
〔基紙の製造〕
<1>表層
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)30質量%と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)30質量%と上質古紙パルプ40質量%とを配合した後、離解フリーネスを380ccに調整した原料パルプに硫酸バンド4質量%とサイズ剤(近代化学工業株式会社製R50)0.3質量%とを添加して表層用の原料スラリーを生成した。ここで、「離解フリーネス(cc)」とは、各試料を約3cmの大きさに裁断して約25gの重さの試験片とし、この試験片を1リットルの水に24時間浸漬した後、JIS−P8220に準拠して標準離解機で15分間離解処理し、試験片が完全に離解していることを目視で確認した後、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した濾水度の値である。
<2>中層(1)
ケント古紙パルプ(NBKP)60質量%と上質古紙パルプ40質量%を配合した後、離解フリーネスを350ccに調整した原料パルプに硫酸バンド4質量%とサイズ剤(近代化学工業株式会社製R50)0.3質量%とを添加して原料スラリーを生成した。
<3>中層(2)、(3)及び裏層
地券古紙パルプ100質量%を、離解フリーネス230ccに調整し、硫酸バンド4質量%とサイズ剤(R50)0.3質量%とを添加して原料スラリーを生成した。
これらの原料スラリーを用い、ウルトラフォーマー(小林製作所株式会社製)にて、表層、中層(1)、中層(2)、中層(3)及び裏層の5層の紙層を抄き合わせて、付け量を表層が30g/m、中層(1)が40g/m、中層(2)、中層(3)、裏層が各50g/m、全体の坪量が220g/mである基紙を得た。
〔下塗り用塗工液の調整〕
平均粒子径が20μmの熱発泡性粒子(マツモト油脂製薬株式会社製、マツモトマイクロスフェアF−46)とパルプの混合物を作成し、この混合物100質量部に対し、ガラス転移温度(Tg)が−5℃であるスチレン・ブタジエン共重合(SBR)ラテックスを50質量部配合して塗工液を調整した。
〔上塗り用塗工液の調整〕
<1>水性樹脂エマルジョンの合成
フラスコに酢酸エチル400部を仕込み、加熱した後、モノマー成分としてアクリル酸50部、メタクリル酸メチル50部、スチレン40部及び反応開始剤としてベンゾイルハイドロパーオキサイド2部を混合して4時間かけて滴下した。更に同温度に保ちながら2時間重合させた後、溶剤を蒸発させて、高分子乳化剤を得た。
フラスコに上記高分子乳化剤160部、水550部及び25%アンモニア水50部からなる高分子乳化剤成分を、メタクリル酸メチル120部、スチレン120部(乳化重合成分)及び反応開始剤としてベンゾイルハイドロパーオキサイド1部を滴下させ乳化重合を行い、固形分40%の水性樹脂エマルジョンを得た。
<2>水性ワックスエマルジョンとの調整
上記水性樹脂エマルジョンと水性ワックスエマルジョンを1:1の割合で撹拌混合し、上塗り用塗工液を得た。なお、水性ワックスエマルジョンとしては、固形分45%、ワックスとしてパラフィン系ワックスを用いた融点61℃のものを使用した。
〔加工紙の製造〕
抄紙機に設置したオンマシンロッドコーターにて基紙の片面に、上述したように調整した下塗り層用塗工液を片面当り固形分で5g/m塗工した後、ドライヤーシリンダーの表面温度が約100℃のアフタードライヤーにて熱発泡性粒子を発泡させた。その後、調整した上塗り層用塗工液を、下塗り層の表面に2回塗工(合計塗工量12g/m;ウエット質量)して実施例1の加工紙を得た。
[実施例2〜29]
下塗り層用塗工液における熱発泡性粒子の平均粒子径、発泡開始温度、最高膨張温度、配合比、バインダの配合比及び種類、塗工量を各々表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして実施例2〜29の加工紙を得た。
なお、表1中の熱発泡性粒子及びパルプの配合比とは、熱発泡性粒子とパルプの合計乾燥質量に対する熱発泡性粒子又はパルプの乾燥質量比である。また、バインダの種類におけるPVAとはポリビニルアルコールである。バインダの配合比は、熱発泡性粒子及びパルプの混合物の乾燥質量に対するバインダの乾燥質量である。塗工量は上塗り層用塗工液の固形分質量である。
[実施例30〜38]
上塗り層用の塗工液塗工量を変更した以外は実施例5と同様にして、実施例30〜34を得た。上塗り層用塗工液に含まれる水性樹脂エマルジョンの高分子乳化剤をアクリル酸以外の表2に示すモノマー成分に変更した以外は実施例5と同様にして実施例35〜38の加工紙を得た。
[比較例1〜2]
下塗り層用塗工液に含まれる熱発泡性粒子の平均粒子径を表1に示すように変更した以外は実施例5と同様にして比較例1〜2の加工紙を得た。
[比較例3]
下塗り層用塗工液にパルプを含有させないように変更した以外は実施例5と同様にして比較例3の加工紙を得た。
[比較例4〜6]
上塗り層用の塗工液塗工量を変更した以外は実施例5と同様にして、比較例4(塗工量30g/m)及び比較例5(上塗り層塗工なし)を得た。上塗り層用塗工液に含まれる水性樹脂エマルジョンの高分子乳化剤をアクリル酸からビニルスルホン酸に変更した以外は実施例5と同様にして比較例6の加工紙を得た。
これらの全実施例及び比較例について、坪量、表面強度、滑り角度の品質を評価する試験を行い、その結果を表1及び表2に示す。なお、この評価試験はJIS−P8111に準拠して温度23℃±1℃、湿度50±2%の環境条件の下で行った。
表1及び表2中の「坪量(g/m)」とは、各試料全層、すなわち加工紙の全体の坪量で、JIS−P8142に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した値である。
なお、品質評価におけるクッション性(手触り感)評価において、○印は良い場合、◎印は優れている場合、△印は普通である場合、×印は悪い場合を表している。
耐磨耗試験とは、一定条件の摩擦作用を試験片の表面に加え、その表面の摩擦に対する抵抗性を測定するもので、JIS−P8136(1994)に準じた方法により、塗工面同士で50往復実施し、試験後の表面状態を目視で観察し、以下の基準で評価した(試験機;東洋精機社製「学振式耐磨試験機」)。
◎:紙剥がれが認められない
○:接触面の1/5以下の剥がれが認められる
△:接触面の1/5〜1/2に剥がれが認められる
×:接触面の1/2以上に剥がれが認められる
滑り角度とは、一定条件で試験片を取り付けた重りが動き始めた角度を言い、JIS−P8147(1994)傾斜方法に準じた方法により塗工面同士で実施し、5回の平均値を丸めた(試験機;東洋精機社製「滑り角測定器」)。
静摩擦係数とは、一定条件で紙の最初の動きを阻止しようとする摩擦力と紙に垂直に加わる力の比を言い、JIS−P8147(1994)水平方法に準じた方法により塗工面同士で実施し、5回の平均値を小数点以下2桁に丸めた(試験機;東洋精機社製「耐摩擦測定器」)。
Figure 2010202996
表1の品質評価欄に示されるように、本発明に係る実施例1〜29の加工紙は、品質面において比較例1〜3に係る加工紙より優れていることが判明した。熱発泡粒子の平均平均粒子径に関しては15〜20μmである場合、熱発泡性粒子の発泡開始温度が75〜85℃であり、最高膨張温度が105〜120℃である場合、熱発泡粒子のパルプに対する配合比率が95.0/5.0以上99.9/0.1以下である場合、バインダの配合比が20/100以上60/100以下である場合、下塗り層用塗工液の塗工量が0.4g/m以上10g/m以下である場合、バインダがSBRである場合がそれぞれ優れたものになっている。熱発泡粒子の平均粒子径については、実施例5、29及び比較例1、2の比較から示されるように、平均粒子径が15〜20μmの範囲外であると、下塗り層表面に熱発泡粒子の不均一な発泡等により凹凸が残り、摩擦係数及び滑り角度が低下すると考えられる。
Figure 2010202996
表2の品質評価欄に示されるように、本発明に係る実施例30〜34の加工紙は、品質面において比較例4、5に係る加工紙より、滑り角度及び静摩擦係数において、優れていることが判明した。静摩擦係数が0.10以上0.25以下、滑り角度が12度以上20度以下である実施例5及び29〜33の加工紙は、内装包装容器等の包装容器に用いることができ、実際に用いて包装容器を作製してみたところ、罫線割れ等の不都合は全く発生せず、傷つき及び汚れの付着が防止されることも確認された。その中でも、静摩擦係数が0.14以上0.2以下かつ滑り角度が12度以上18度以下である実施例5及び31〜33の加工紙は、加工性及び傷つき・汚れの付着防止製に特に優れていることが確認された。滑り角度及び静摩擦係数が上記範囲外である比較例4、5の加工紙は、罫線割れが発生し加工性が低く、使用において傷つき及び汚れの付着も目立つことが確認された。
上塗り層用塗工液に含まれる水性樹脂エマルジョンの高分子乳化剤をアクリル酸以外のモノマー成分に変更した場合においても、実施例35から実施例38に示されるように優れた防滑性を有している。比較例6の加工紙においては防滑性が低下することから、高分子乳化剤中のカルボキシル基が防滑性を向上させていると考えられる。カルボキシル基を有さないモノマーを用いて高分子乳化剤を合成した場合、当該モノマーが未反応物質として残った場合の滑り成分としての寄与が高いためであると考えられる。
以上の結果から、本発明に係る加工紙は、クッション性及び防滑性に優れ、また表面強度にも優れているものであり、これにより従来の発泡紙では表面強度が弱いために用いることができなかった輸送、保管、保護のために用いられるクッション性滑り適性に優れた段ボールシート、段ボール包装容器、内装包装容器等の包装容器に用いることができ、実際に用いて包装容器を作製してみたところ、罫線割れ等の不都合は全く発生しないことが確認された。

Claims (6)

  1. 基紙と、この基紙の少なくとも片面に設けられる塗工層を備える加工紙において、
    上記塗工層が、水性樹脂エマルジョン、熱発泡性粒子、パルプ及びバインダを含有する塗工液の塗布により形成されており、
    上記水性樹脂エマルジョンが、分子内にカルボキシル基を有する高分子乳化剤を含み、
    塗工層表面のJIS−P8147(1994)に準じて測定した静摩擦係数が、0.10以上0.25以下であり、
    塗工層表面のJIS−P8147(1994)に準じて測定した滑り角度が、12度以上20度以下であることを特徴とする加工紙。
  2. 上記塗工層が、基紙の表面に設けられる下塗り層及びこの下塗り層の表面に設けられる少なくとも1層の上塗り層を備えており、
    この下塗り層が、熱発泡性粒子、パルプ及びバインダを含有する下塗り層用塗工液を塗布することにより形成され、
    この上塗り層が、水性樹脂エマルジョンを含有する上塗り層用塗工液を塗布することにより形成されている請求項1に記載の加工紙。
  3. 上記下塗り層用塗工液に含有されるパルプの熱発泡性粒子に対する配合比(乾燥質量比)が、0.1/99.9以上5.0/95.0以下であり、
    上記熱発泡性粒子の平均粒子径が、15μm以上20μm以下である請求項2に記載の加工紙。
  4. 上記下塗り層用塗工液に含有されるバインダが、主成分としてスチレン・ブタジエン共重合(SBR)ラテックスを含む請求項2又は請求項3に記載の加工紙。
  5. 上記下塗り層用塗工液に含有されるバインダの熱発泡性粒子及びパルプの混合物に対する配合比(乾燥質量比)が、20/100以上60/100以下である請求項2、請求項3又は請求項4に記載の加工紙。
  6. 上記下塗り層用塗工液の塗工量が、上記基紙片面当りの固形分で0.4g/m以上10g/m以下である請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の加工紙。
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