JP2010202808A - 熱可塑性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 寸法安定性と優れた機械的特性を兼ね備える熱可塑性樹脂組成物を実現すべく、熱可塑性樹脂の分子量を特定の水準以上に保持しつつ、熱可塑性樹脂中に良好な分散状態で均一に配合することができる表面処理酸化アルミニウム及び/又はその水和物を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 酢酸を含有する酸化アルミニウム及び/又はその水和物を、有機スルホン酸により改質して、熱可塑性樹脂と溶融して樹脂組成物にする際、樹脂組成物中に残留する酢酸の量を低減する、熱可塑性樹脂組成物中の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は酸化アルミニウム及び/又はその水和物を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
従来、樹脂の透明性を維持しつつ機械的強度・寸法安定性・耐熱性等を向上させる方法として、樹脂との屈折率差が小さく、より微細で、樹脂に対して均一に分散させることができるフィラーとの組成物が検討されている。例えば、酸化アルミニウムはポリカーボネート樹脂との屈折率差が小さいため、透明性に優れた樹脂組成物を得ることが期待されている。
特許文献1には、有機溶媒への分散を目的として、酸化アルミニウムをp−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸で改質する方法が開示されている。改質した酸化アルミニウムは、非水溶性のポリマーへの混合に適当である記載がある。しかしながら、本発明者らが検討した結果、p−トルエンスルホン酸で改質した酸化アルミニウムをポリカーボネート樹脂と混合すると、十分な改質効果が得られず、酸化アルミニウム表面によるポリカーボネート樹脂の分子量低下を避けられないことが判明した。又、得られた酸化アルミニウム−ポリカーボネート樹脂組成物は、成型時における溶融流動性が不十分であり、成型が困難であることが判明した。さらに、p−トルエンスルホン酸の金属腐食性により、二軸押出機等の製造装置からの金属成分の溶出を促進し、製造装置が劣化したり、樹脂組成物の着色やポリカーボネート樹脂の分子量低下が激しくなる等の問題もあることが判明した。
特許文献2には、アルミナ粒子表面を酸又は塩基で処理した後に、p−トルエンスルホン酸等の表面処理剤で処理し、これを熱可塑性樹脂と配合して樹脂組成物とする方法が開示されている。
又、特許文献3には、アルミナ粒子表面をp−トルエンスルホン酸等の表面処理剤で処理し、これを熱可塑性樹脂と配合して樹脂組成物とする方法が開示されている。
本発明者らの検討によれば、特許文献2、3の樹脂組成物では、p−トルエンスルホン酸によるアルミナ粒子の被覆が不十分であり、その結果アルミナ粒子によるポリカーボネート樹脂の加水分解を十分に抑制できないことが判明した。またアルミナ粒子同士の強い相互作用が残存するために溶融流動性があがらず、成型が困難である、という問題点があることがわかった。
特許文献4には、ポリカーボネート樹脂の加水分解の抑制を目的として、酸化アルミニウム粒子表面を特定量のp−トルエンスルホン酸等の表面処理剤で処理し、これを熱可塑性樹脂と配合して樹脂組成物とする方法が開示されている。しかしながら、本願発明者らが検討したところ、特許文献4では、スルホン酸等の表面処理剤による被覆が未だ不十分のためポリカーボネート樹脂の加水分解が抑制しきれないことが判明した。
また、特許文献4記載の合成方法による酸化アルミニウムは、ハロゲンやアルカリ金属イオンを合成原料に含む。そのため、精製過程を経てもこれらの不純物が酸化アルミニウムに残留しやすく、ポリカーボネート樹脂を加水分解をする触媒となってしまう、という問題がある。さらに、酸化アルミニウム粒子を合成する過程で発生する塩酸による反応装置の腐食の問題が避けらず、工業生産には適さない。
このように、従来において、酸化アルミニウムと熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物において、その特性改善のために様々な検討がなされているが、現状では、高透明性、寸法安定性、優れた機械的特性とを兼ね備えた樹脂組成物は未だ提供されていない。
特表2003−517418号公報 特開2007−2089号公報 特開2006−193400号公報 特願2008−180352号公報
本発明の主な課題は、寸法安定性と優れた機械的特性を兼ね備える熱可塑性樹脂組成物を実現すべく、熱可塑性樹脂の分子量を特定の水準以上に保持しつつ、熱可塑性樹脂中に良好な分散状態で均一に配合することができる表面処理酸化アルミニウム及び/又はその水和物を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
本発明者らが検討した結果、酢酸を含有する酸化アルミニウム及び/又はその水和物を、有機スルホン酸により改質して、熱可塑性樹脂と溶融して樹脂組成物にする際、樹脂組成物中に残留する酢酸の量を低減することにより、熱可塑性樹脂組成物中の樹脂の分子量の減少を著しく抑制することができることを見出した。
これにより、寸法安定性と優れた機械的特性を充分に兼ね備えた熱可塑性樹脂組成物を与えることができる。
すなわち本発明は、酢酸を含む酸化アルミニウム及び/又はその水和物、有機スルホン酸の混合物と、熱可塑性樹を溶融混合する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、溶融混合時における組成物中の酢酸に対する有機スルホン酸のモル比が1.4以上である熱可塑性樹脂組成物の製造方法に存する。
本発明は、有機スルホン酸と酸化アルミニウム及び/又はその水和物の混合物を、水を含む洗浄溶媒で洗浄する工程、得られた酸化アルミニウム及び/又はその水和物の混合物と熱可塑性樹脂とを溶融混合する工程を含む熱可塑性樹脂組成物製造方法に存する。
本発明により提供される酸化アルミニウム及び/又はその水和物を含む熱可塑性樹脂組成物は、造粒や成型の際に、熱可塑性樹脂が溶融状態で高温下にさらされる時の樹脂の加水分解を低減するので、樹脂の分子量を高く保持することができる。その結果、熱可塑性樹脂単体での特性を生かした状態で酸化アルミニウム及び/又はその水和物充填の効果、すなわち、機械的強度・寸法安定性・熱安定性等の向上効果を十分に得ることができる。また、目的に合った樹脂の選択と、適切な大きさの酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子を用いることにより、透明性を保持した樹脂組成物とすることも可能である。
従って、本発明によれば、機械的強度・寸法安定性・熱安定性等に優れ、しかも高透明性の樹脂組成物を提供することができる。
以下に、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
[酸化アルミニウム及び/又はその水和物]
本発明の酸化アルミニウム及び/又はその水和物は、下記の式(I)で示されるものであり、通常、1種もしくは2種以上の混合物からなる。
Al・nHO (I)
具体的には、上記式(I)において、n=0のものは酸化アルミニウムを表し、δ、γ、θ、α型等の種類がある。n=1のものはベーマイト、nが1を超えて3未満のものはベーマイトとアルミナ水和物の混合物を示し、一般には擬ベーマイトと呼ばれる。n=3のものは水酸化アルミニウム、nが3を超えるとアルミナ水和物を表す。
これらの中でも入手の容易さと、粒子の分散性保持、及び屈折率の観点から、ベーマイト、擬ベーマイトが好ましい。
本発明で使用する酸化アルミニウム及び/又はその水和物は、繊維状、紡錘状、棒状、針状、筒状、柱状のいずれでもよい。
その粒子サイズは短軸長さが1〜10nmであり、長軸長さが20〜400nmであり、アスペクト比(縦横の寸法比)が5〜400のものが好ましい。
酸化アルミニウム及び/又はその水和物を配合して高透明性の樹脂組成物を得ようとする場合には特に粒子サイズは短軸長さが10nm以下であり、長軸長さが50〜400nmであることが好ましい。
尚、本発明において、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の粒子サイズは、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察で調べることができ、短軸長さとは、棒状、繊維状等の場合はその径の長さ、板状等の場合はその厚みをさし、長軸長さとは棒状、繊維状等の場合はその長さ、板状の場合は板面における最大の長さをさし、アスペクト比とは、この長軸長さを短軸長さで除した値である。
本発明で使用する酸化アルミニウム及び/又はその水和物は、酢酸を含有している。酢酸は例えば酸化アルミニウム及び/又はその水和物の合成時に、粒子の形状選択性のために添加されたもの、もしくは、酸化アルミニウム及び/又はその水和物のゾル中での粒子の分散性を向上するためにゾルに添加されたもの、有機スルホン酸による表面被覆の際に反応液中に添加されたものなどに由来するが、これに限定されない。
酢酸の含有量は特に制限されないが、通常酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対して、0.1〜100重量%であり、好ましくは1〜60重量%、さらに好ましくは1〜40重量%である。
酢酸の含有量が少なすぎると、酸化アルミニウム及び/又はその水和物同士が、有機スルホン酸で処理する以前に凝集してしまい、熱可塑性樹脂組成物中でもその凝集がほぐれにくく、熱可塑性樹脂組成物の透明性や寸法安定性を悪化させる。また、多すぎると、後述する洗浄過程で減少しきらずに、樹脂組成物中に多くの酢酸が残留してしまい、樹脂組成物の溶融過程で樹脂組成物中の樹脂の分子量を低下させて、機械的物性を低下させてしまう。
このような酸化アルミニウム及び/又はその水和物は、例えば特開昭59−13446号公報、WO97/32817の特許文献に開示された方法により合成することができる。また、市販の酸化アルミニウム及び/又はその水和物、もしくは特開2006−62905号公報に挙げられた方法の酸化アルミニウム及び/又はその水和物に酢酸を添加して、酢酸を含有した酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散ゾルまたは有機溶媒分散ゾル、もしくは粉体として用いてもよい。
この際、使用する酸化アルミニウム及び/又はその水和物に、ハロゲンや金属元素、塩
基性物質、酢酸以外の酸性物質が含有される場合は、これらが残留していると、樹脂組成物にもこれらの物質が残留し、溶融の際に樹脂を加水分解してしまう。そのため、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の段階か、もしくは後述する有機スルホン酸処理した段階でこれら不純物をよく洗浄して除去しておくことが好ましい。
[有機スルホン酸]
本発明で用いる有機スルホン酸は、一分子中に少なくとも一つ以上のスルホン酸基をもつ。有機スルホン酸の化学構造は特に限定されるものではないが、炭素数6以上の有機スルホン酸が、熱可塑性樹脂の加水分解性の抑制効果、樹脂組成物の機械的物性、酸性基に起因する樹脂組成物の腐食性質(例えば二軸押出機使用時の金属腐食性)の改善の観点からは好ましく、熱可塑性樹脂の加水分解性の抑制効果、樹脂組成物の機械的物性、酸性基に起因する樹脂組成物の腐食性質(例えば二軸押出機使用時の金属腐食性)の改善、溶融流動性の改善の観点からは炭素数8以上であることがより好ましく、10以上であることが特に好ましい。
有機スルホン酸の炭素数の上限には特に制限はないが、樹脂組成物の線熱膨張係数を悪化させない観点から通常50以下、好ましくは30以下である。
また、樹脂組成物の線熱膨張係数の低下と弾性率向上の観点から、有機スルホン酸の化学構造中に剛直な有機基が含まれることが好ましい。かかる剛直な有機基として具体的には、各種芳香環構造(ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環など)が好ましく、そのなかでもベンゼン環とナフタレン環が特に好ましい。さらに、かかる各種芳香環構造は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、溶融流動性の観点から機械的物性が低下しない範囲で嵩高い構造が好ましく、具体的には、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15程度のアルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基などが挙げられる。
本発明で使用されるスルホン酸及びその誘導体の具体例を以下に示す。
有機スルホン酸、及びその誘導体の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、などのベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、及び炭素数10〜14の長鎖アルキル基をもつアルキルベンゼンスルホン酸の混合物、などのアルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸、フェナントラセンスルホン酸などの多環芳香族スルホン酸、及びこれらの低級アルコールとのエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の誘導体、が挙げられる。これらのうちで、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸類、長鎖アルキル基が置換したベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸が、酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対する吸着能と、得られた熱可塑性樹脂組成物中での酸化アルミニウム及び/又はその水和物の分散性、熱可塑性樹脂組成物の良好な溶融流動性、樹脂の熱分解性の抑制効果、樹脂組成物の機械的物性の観点から好ましく、その中でも炭素数4以上のアルキル基が置換したベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸が酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対する吸着能と、得られた熱可塑性樹脂組成物の良好な流動性、樹脂の熱分解性の抑制効果、樹脂組成物の機械的物性の観点から好ましく、その中でもドデシルベンゼンスルホン酸とジノニルナフタレンスルホン酸がより好ましい。
なお、本発明の目的を大きく損なわない範囲において、本発明においてはスルホン酸を複数併用しても構わない。例えば炭素数6以上のスルホン酸を2種以上併用してもよいし、炭素数6以上のスルホン酸の1種または2種以上と炭素数5以下のスルホン酸の1種ま
たは2種以上とを併用してもよい。炭素数5以下のスルホン酸を用いる場合、炭素数6以上の有機スルホン酸を用いることによる上述の効果を十分得るために、炭素数5以下のスルホン酸の使用量は、全スルホン酸に対して70モル%以下、さらに50モル%以下、特に30モル%以下であることが好ましい。
[酸化アルミニウム及び/又はその水和物、有機スルホン酸の混合物]
本発明の酸化アルミニウム及び/又はその水和物、有機スルホン酸の混合物とは、特に限定はないが、酸化アルミニウム及び/又はその水和物と有機スルホン酸を単に混合したもの、有機スルホン酸で表面処理された酸化アルミニウム及び/又はその水和物等が挙げられる。これらは1種のみからなる形態であってもよく、複数の形態の混合体であってもよい。
本発明の酸化アルミニウム及び/又はその水和物、有機スルホン酸の混合物中の、有機スルホン酸の含有量は、特に制限されないが、多すぎると、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子を凝集させながら粒子への被覆が進み、粒子表面が均一に被覆できなかったり、樹脂組成物中でも粒子の凝集がほぐれずに、透明性や熱線膨張率を悪化させる。また、粒子を被覆せずに存在する過剰のスルホン酸により、樹脂の加水分解が進行して機械的物性が悪化する。
少なすぎると、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子が充分に表面被覆されずに、粒子本来のもつ、樹脂を加水分解する触媒作用を抑制することができずに、機械的物性(特に耐衝撃性)が悪化する。
これらのことから有機スルホン酸の添加量は通常酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対し、0.1〜1000重量%、好ましくは1〜500重量%、より好ましくは10〜200重量%、さらに好ましくは10〜100重量%、特には10〜70重量%である。
[酸化アルミニウム及び/又はその水和物の表面処理]
酸化アルミニウム及び/又はその水和物、有機スルホン酸の混合物としては、有機スルホン酸で表面処理された酸化アルミニウム及び/又はその水和物であることが好ましい。
有機スルホン酸を酸化アルミニウム及び/又はその水和物表面に作用させたのちに、有機スルホン酸で表面改質した酸化アルミニウム及び/又はその水和物を洗浄することにより熱可塑性樹脂組成物の良好な熱安定性、流動性、透明性、機械的物性が得られる。好ましくは、炭素数6以上、より好ましくは炭素数8以上の有機スルホン酸を酸化アルミニウム及び/又はその水和物表面に作用させることによって、熱可塑性樹脂組成物のより一層良好な流動性、透明性、機械的物性、熱安定性が得られる。
有機スルホン酸による酸化アルミニウム及び/又はその水和物の表面処理方法としては、例えば次のような方法を採用することができる。
(1)酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液と有機スルホン酸を接触させる方法
酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液に有機スルホン酸を接触させる方法としては、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液に有機スルホン酸を滴下する、もしくは有機スルホン酸に含有する酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液を滴下する方法がある。
この際有機スルホン酸は予め、水または有機溶媒で希釈してもよい。有機溶媒としてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等の脂肪族アルコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソー
ル、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等の脂肪族エーテル、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸メチル等のカルボン酸エステル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン等の水と相溶性のある溶媒が挙げられる。
このうち、有機スルホン酸が溶解する水または有機溶媒を選択することが好ましい。さらに好ましくは、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、酢酸、プオピオン酸から選ばれる溶媒である。前記溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いても良い。特に好ましくは、水または、イソプロパノール、もしくは水とイソプロパノールとの混合液である。
このときの有機スルホン酸の濃度は特に制限はないが、大きすぎると、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子が凝集してしまい、薄すぎると酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子表面との反応が進みにくく、処理する液量が膨大になってしまい効率が悪いので、通常、有機スルホン酸の濃度として、0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%の範囲が選ばれる。
また、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液に有機スルホン酸を接触させる際、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等の脂肪族アルコール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等の有機カルボン酸、及びこれらの塩(酢酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等)、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のカルボン酸エステルを予め添加しておいてもよい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いても良い。
中でも、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液に可溶な物質が好ましく、イソプロパノール、酢酸、プロピオン酸、酢酸ナトリウムがより好ましく、イソプロパノール、酢酸、酢酸ナトリウムが特に好ましい。
これらの添加量は、特に制限されないが、多すぎると、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子と有機スルホン酸の反応が進まないことから、通常酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対し、0.1〜1000重量%、好ましくは1〜500重量%、より好ましくは10〜200重量%である。
酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液に有機スルホン酸を接触させる際、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液と有機スルホン酸が接触する反応液は、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液と有機スルホン酸が大きな凝集塊のまま保持されたり、反応器の壁や攪拌羽根等に付着したままとならないように、適度に混合・攪拌され、充分に酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子と有機スルホン酸が接触することが好ましい。
(2)酸化アルミニウム及び/又はその水和物の有機溶媒分散液と有機スルホン酸を接触させる方法
酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液を限外ろ過、蒸留などの溶媒交換、水を凍結乾燥して除去した後に、有機溶媒を添加すること等により、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の有機溶媒分散液を調製することができる。
この場合、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の有機溶媒分散液と有機スルホン酸を接触させる方法としては、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の有機溶媒分散液に有機スルホン酸を滴下する、もしくは有機スルホン酸に酸化アルミニウム及び/又はその
水和物の有機分散液を滴下する方法がある。
酸化アルミニウム及び/又はその水和物の有機溶媒分散液の調製に用いる有機溶媒としては、樹脂組成物にしていく過程で除去できるものであればよく、特に制限はないが、具体的には次のようなものがあげられる。
有機溶媒としてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等の脂肪族アルコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等の脂肪族エーテル、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン等の芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキノン、アニソール、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いても良い。水と有機溶媒の混合液であっても良い。
使用される有機スルホン酸は予め、水または有機溶媒で希釈してもよい。有機溶媒として、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の有機溶媒分散液の調製で用いることのできる有機溶媒と同様のものが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いても良い。水と有機溶媒の混合液であっても良い。有機スルホン酸の溶解能がありかつ、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の有機溶媒分散液の有機溶媒と均一に混合できる溶媒が好ましい。
このときの有機スルホン酸の濃度は特に制限はないが、大きすぎると、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子が凝集してしまい、薄すぎると酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子表面との反応が進みにくく、処理する液量が膨大になってしまい効率が悪いので、通常、有機スルホン酸の濃度として、0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%の範囲が選ばれる。
また、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の有機溶媒分散液に有機スルホン酸を接触させる際に、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の有機溶媒分散液に水、アルコールまたは有機カルボン酸、もしくはエステルを予め添加しておいてもよい。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、、エチレングリコール等の脂肪族アルコール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等のカルボン酸、及びこれらの塩(酢酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等)、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、安息香酸メチル等のカルボン酸エステルが挙げられる。
これらのうち、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の有機溶媒分散液に可溶な物質が好ましく、水、イソプロパノール、酢酸、プロピオン酸、酢酸ナトリウムがより好ましく、水、イソプロパノール、酢酸、酢酸ナトリウムがより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いても良い。水と有機溶媒の混合液であっても良い。
これらの添加量は、特に制限されないが、多すぎると、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子と有機スルホン酸の反応が進まないことから、通常酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対し、0.1〜1000重量%、好ましくは1〜500重量%、より好ましくは10〜200重量%である。
酸化アルミニウム及び/又はその水和物の有機溶媒分散液に有機スルホン酸を接触させる際、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の有機溶媒分散液と有機スルホン酸が接触
する反応液は、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液と有機スルホン酸が大きな凝集塊のまま保持されたり、反応器の壁や攪拌羽根等に付着したままとならないように、適度に混合・攪拌され、充分に酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子と有機スルホン酸が接触することが好ましい。
上記(1)(2)で用いる酸化アルミニウム及び/又はその水和物の、水分散液または有機溶媒分散液中の濃度は、特に限定されないが、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子の表面をできるだけ均一に処理する観点からは、希薄濃度であることが好ましく、80重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、30重量%以下が特に好ましい。一方、処理効率の面からは、この濃度は通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上である。
また、スルホン酸で処理された酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液または有機溶媒分散液は、限外ろ過、蒸留、凍結乾燥、スプレードライ、スラリードライ、ろ過などの公知の方法で溶媒を交換したり、水または有機溶媒を除去したのちに別の分散媒に分散させることもできる。
(3)酸化アルミニウム及び/又はその水和物の粉体と有機スルホン酸を接触させる方法
酸化アルミニウム及び/又はその水和物の粉体に有機スルホン酸を直接作用させて処理する方法としては、例えば、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の粉体に対して有機スルホンを滴下する、あるいは有機スルホン酸に酸化アルミニウム及び/又はその水和物の粉体を添加する方法がある。この際、この処理温度で液体を呈する有機スルホン酸を用いた場合には、無溶媒で処理することも可能である。
これら有機スルホン酸はあらかじめ水あるいは各種有機溶剤で希釈してもよい。希釈する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等の脂肪族アルコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等の脂肪族エーテル、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸メチル等のカルボン酸エステル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
このうち、用いる有機スルホン酸に溶解する水または有機溶媒を選択することが好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いても良い。水と有機溶媒の混合液であっても良い。
このときの有機スルホン酸の濃度は特に制限はないが、大きすぎると、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子が凝集してしまい、薄すぎると酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子表面との反応が進みにくく、処理する液量が膨大になってしまい効率が悪いので、通常、有機スルホン酸の濃度として、0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%の範囲が選ばれる。
また、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の粉体に有機スルホン酸を接触させる際に、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の粉体に水、アルコールまたは有機カルボン酸及びその塩、もしくはエステルを予め添加しておいてもよく、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等の脂肪族アルコール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等のカルボン酸、及びこれらの塩(酢酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等)等、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、安息香酸メチル等のエステルが挙げられる。これらのうち、水、イソプロパノール、酢酸、プロピオン酸、酢酸ナトリウムが好ましく、水、イソプロパノール、酢酸、酢酸ナトリウムがより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いても良い。水と有機溶媒の混合液であっても良い。
これらの添加量は、特に制限されないが、多すぎると、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子と有機スルホン酸の反応が進まないことから、通常酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対し、0.1〜1000重量%、好ましくは1〜500重量%、より好ましくは10〜200重量%である。
酸化アルミニウム及び/又はその水和物単体の表面を有効に分散剤で処理する観点から、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の粉体と有機スルホン酸は攪拌下(例えばヘンシェルミキサーミキサー類もしくはメカニカルスターラーを備えた攪拌槽などの良好な攪拌下)で処理されることが好ましく、また、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の粉体は、粒子同士が可能な限り凝集していない表面積の大きな状態(例えば、凍結乾燥やスプレードライ、スラリードライで得られた粉体)もしくは、必要に応じて処理の過程で含有された水や有機溶媒などを適度に残留させて凝集を防いだ湿った状態で用いることが好ましい。
スルホン酸で処理した酸化アルミニウム及び/又はその水和物の粉体を所望の有機溶剤へと再分散させることで、分散剤で処理した酸化アルミニウム及び/又はその水和物の有機溶剤分散液(ゾル)とすることもできる。
上記(1)〜(3)の有機スルホン酸と、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液、有機溶媒分散液、粉体のいずれか一種類とを接触させる際に、有機カルボン酸及びその塩、アルコール、水から選らばれる少なくとも1種類の成分を添加することが、酸化アルミニウム及び/又はその水和物のポリカーボネート中での分散性、熱可塑性樹脂組成物中の樹脂の加水分解の抑制、熱可塑性樹脂組成物の成型の際に発生する所謂シルバー(樹脂組成物に含有される水分が気化したものと、熱可塑性樹脂が加水分解して生じた二酸化炭素等の軽沸成分が、射出成型または射出プレスされた際に成型品表面に現れる線状の外観不良現象。以下シルバーと記す。)の抑制の観点から好ましく、低級カルボン酸、低級カルボン酸塩、アルコールから選ばれる少なくとも一種類の水溶液がより好ましく、酢酸水溶液、イソプロパノール水溶液、酢酸ナトリウム水溶液がさらに好ましく、イソプロパノールが特に好ましい。
この場合のカルボン酸及びその塩、アルコールの水への添加量は、酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対して、通常0.01〜1000重量%であり、0.05〜500重量%が好ましい。
上記(1)〜(3)の有機スルホン酸と、酸化アルミニウム及び/又はその水和物を接触させる際の処理温度は特に限定されないが、通常5〜200℃であり、10〜100℃が好ましい。
また、有機スルホン酸と、酸化アルミニウム及び/又はその水和物を接触させたのち、有機スルホン酸の酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対する吸着をより均一に安定化させるために接触終了後の反応液を静置したり、攪拌状態を継続するなどの方法で熟成させてもよい。その際の温度及び時間は特に限定されないが、通常5〜200℃、が10分〜240時間、10〜100℃が10分〜40時間が好ましい
以上の(1)〜(3)の処理をおこなったあと、有機スルホン酸で処理した酸化アルミニウム及び/又はその水和物は後述する酢酸を減少させる、洗浄工程に供されることが好ましい。
[有機スルホン酸の使用量]
上記(1)〜(3)の方法における有機スルホン酸による酸化アルミニウム及び/又はその水和物の表面処理において、酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対する有機スルホン酸分散剤の使用量は通常0.01〜200重量%であり、熱可塑性樹脂組成物の良好な流動性、透明性、熱安定性と機械的物性の確保の観点からは、0.1〜100重量%がより好ましく、1〜70重量%が更に好ましく、1〜50重量%が特に好ましい。
使用量が0.01重量%未満だと熱可塑性樹脂組成物の良好な流動性、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の分散性(透明性)、熱可塑性樹脂の熱安定性(加水分解抑制)に対し十分な効果が得られず、また200重量%以上を超えると、酸化アルミニウム及び/又はその水和物表面に作用していない過剰な有機スルホン酸の影響が大きくなり、熱可塑性樹脂組成物の機械的物性が低下し、過剰な有機スルホン酸による熱可塑性樹脂の分解や揮発成分の増大などの理由により滞留熱安定性も問題となり、樹脂組成物表面にシルバーが発生して外観不良となる。また、過剰の有機スルホン酸の金属腐食性により樹脂組成物の製造装置(例えば二軸押出機)からの金属成分の溶出が問題となる場合がある。
特に有機スルホン酸の使用量は、酸化アルミニウム及び/又はその水和物100重量部に対する有機スルホン酸の割合が5重量部以上であることが好ましい。この有機スルホン酸の使用量は更に好ましくは7重量部以上である。酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対する有機スルホン酸の使用量が少なすぎると、酸化アルミニウム及び/又はその水和物表面を均質かつ十分に覆うことができず、改質効果が不十分で酸化アルミニウム及び/又はその水和物の分散性、熱可塑性樹脂組成物の良好な流動性、透明性、熱可塑性樹脂の加水分解性抑制に対し十分な効果が得られない、という問題点がある。
本発明の酸化アルミニウム及び/又はその水和物は、酢酸を含有している状態では、酢酸が酸化アルミニウム及び/又はその水和物に吸着している。本発明では、酢酸が吸着されている酸化アルミニウム及び/又はその水和物に有機スルホン酸を添加する。
このときにおきている現象の詳細は明らかではないが、次のように推測している。すなわち、酢酸よりも酸強度の強い有機スルホン酸が添加されることで、吸着している酢酸は、酸化アルミニウム及び/又はその水和物から追い出され、替わりに有機スルホン酸が酸化アルミニウム及び/又はその水和物に吸着する。
熱可塑性樹脂組成物中に、含有される酢酸量が少ないことが好ましい理由については、以下のように推測している。
酢酸は弱酸なので、酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対する吸着力が弱く、酸化アルミニウム及び/又はその水和物が熱可塑性樹脂と配合されて熱可塑性樹脂組成物となって、高温下で溶融された際に、酸化アルミニウム及び/又はその水和物から脱着して熱可塑性樹脂を加水分解する触媒となる。つまり、高温下で安定して酸化アルミニウム及び/又はその水和物を被覆しつづけることができない。
一方、酢酸の替わりに吸着する有機スルホン酸は強酸なので、酸化アルミニウム及び/又はその水和物への吸着力がつよく、熱可塑性樹脂組成物が高温下で溶融された際にも、簡単に酸化アルミニウム及び/又はその水和物から脱着せずに、安定して酸化アルミニウム及び/又はその水和物を被覆し続けることができる。
したがって、酸化アルミニウム及び/又はその水和物を被覆する物質としては、有機スルホン酸で充分に被覆することが好ましく、有機スルホン酸とともに残留して共存する酢酸の量をできるだけ減少させることが好ましい。
[洗浄工程]
本発明の、酸化アルミニウム及び/又はその水和物、有機スルホン酸の混合物は、洗浄工程に供されることが好ましい。
洗浄工程では、酢酸等の酸、ナトリウム等の金属イオン、ハロゲン等、の酸化アルミニウム及び/又はその水和物由来の不純物、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオン、硫酸、スルホン酸以外のS成分等の有機スルホン酸由来の不純物、有機スルホン酸での処理過程で混入した反応装置由来の金属または金属イオン成分、処理過程で混入した不純物が除去される事が好ましい。中でも、酢酸が除去される事が好ましい。
洗浄により酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子及びその表面に起こる現象は明らかではないが、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子表面に吸着した有機スルホン酸の再配列、余剰な有機スルホン酸の除去、その他酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子に含まれる酢酸をはじめとする不純物の除去が起きていると推測される。
洗浄に使用される溶媒は、特に限定されず、水を含む洗浄溶媒であることが好ましく、具体的には水及び/又は各種有機溶媒が好ましい。溶媒には、有機スルホン酸及びその塩、有機カルボン酸及びその塩を添加してもよい。
より好ましくは、水単独、もしくは、水と、有機溶媒、有機スルホン酸及びその塩、有機カルボン酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種類の添加物との混合物が使用可能である。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等の脂肪族アルコールが挙げられる。好ましくは、n−プロパノール、イソプロパノールである。
有機スルホン酸及びその塩としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などのアルキルスルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、などのベンゼンスルホン酸;デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、及びその混合物、などの長鎖アルキルベンゼンスルホン酸;ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸、フェナントラセンスルホン酸などの多環芳香族スルホン酸、及びこれらの低級アルコールとのエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の誘導体、が挙げられる。好ましくは、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸長鎖アルキルベンゼンスルホン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩である。
有機カルボン酸及びその塩としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、などの脂肪族カルボン酸;オレイン酸及びその塩、リノール酸等の不飽和脂肪族カルボン酸;安息香酸、フタル酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸;乳酸、リンゴ酸、アジピン酸、各種アミノ酸、及びこれらの低級アルコールとのエステル、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の誘導体、が挙げられる。好ましくは、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アジピン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩であり、中でも酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウムがより好ましい。
これらの添加物のうち、用いる酸化アルミニウム及び/又はその水和物の分散液の中で均一に分散する添加物を選ぶことが好ましい。好ましくは、イソプロパノール、ドデシル
ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウムであり、より好ましくはイソプロパノール、酢酸、酢酸ナトリウム、特にはイソプロパノールである。
酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散液を出発原料とした場合は、その水分散液に可溶な成分からなる溶媒で洗浄することが好ましい。その場合前記のうち、水に有機スルホン酸及びその塩、有機カルボン酸及びその塩、アルコールから選らばれる少なくとも1種類の成分を添加することが、前述の不純物を除去する効果、有機スルホン酸を再配列させる効果が大きく好ましい。
その結果、熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の加水分解の抑制、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の熱可塑性樹脂中での分散の改善、熱可塑性樹脂組成物の成型の際に発生するシルバーの抑制が可能となる。
低級カルボン酸、低級カルボン酸塩、アルコールから選ばれる少なくとも一種類の水溶液がより好ましく、酢酸水溶液、イソプロパノール水溶液、酢酸ナトリウム水溶液がさらに好ましい。
水に添加する添加物の量は、酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対して、通常0.01〜1000重量%であり、0.05〜500重量%が好ましい。
洗浄の際に、水を含む洗浄溶剤を用いる場合には、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子に対する水の使用の総量は、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散中を出発原料とする場合はその水の量も含めて、酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対して通常10〜1000倍、好ましくは20〜500倍、より好ましくは20〜100倍、特には25〜70倍である。水の使用により、水に溶解しやすい酸化アルミニウム及び/又はその水和物の原料に含まれる成分や、表面処理の過程で混入する不純物(例えば、ハロゲンやアルカリ金属イオン、酢酸等)を除きやすく、熱可塑性樹脂の溶融状態における加水分解を抑制することが可能である。
洗浄方法としては、次の(1)または(2)の方法を採用できる。
(1)有機スルホン酸と酸化アルミニウム及び/又はその水和物の混合物に、洗浄溶媒を加えてよく接触させた後に、限外ろ過、蒸留などによる溶媒交換や凍結乾燥、スプレードライ、スラリードライ、などの乾燥、ろ過などの公知の方法によって共存する水や有機溶媒を、所望の溶媒に置換したり、不純物と共に除去する。
洗浄工程としては、より効率的であり、酸化アルミニウム及び/又はその水和物を凝集させないという観点からは、ろ過による水、溶媒の減少が好ましい。
ろ過の方法としては公知の遠心ろ過、減圧濾過、加圧ろ過、常圧ろ過、遠心分離等の方法で、脱水または脱溶媒することができる。
洗浄溶媒には、有機スルホン酸及びその塩、有機カルボン酸及びその塩、アルコールから選ばれる少なくとも1種類の成分を添加することが好ましい。
(2)有機スルホン酸と酸化アルミニウム及び/又はその水和物の混合物を、限外ろ過、蒸留などによる溶媒交換や凍結乾燥、スプレードライ、スラリードライ、などの乾燥、ろ過などの公知の方法によって共存する水や有機溶媒を、減少させたのち、洗浄溶剤で洗浄する。
洗浄の方法としては、ろ過されたケーキを所望の水または溶媒中へ再分散する、ろ過されたケーキに水または溶媒をふりかけて洗浄する、等、公知の方法を採用することができる。
洗浄工程としては、より効率的であり、酸化アルミニウム及び/又はその水和物を凝集させないという観点からは、ろ過による水、溶媒の減少が好ましい。
ろ過の方法としては公知の遠心ろ過、減圧濾過、加圧ろ過、常圧ろ過、遠心分離等の方
法で、脱水または脱溶媒することができる。
また洗浄における処理温度は通常室温〜150℃、好ましくは、室温〜60℃、圧力も特に制限はなく、減圧、常圧、加圧のいずれでも良いが、通常常圧である。
[濃縮工程]
洗浄された酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子は、限外ろ過、蒸留や凍結乾燥、スプレードライ、スラリードライ、ろ過などの公知の方法で水または溶媒を減少させることができる。これらは1種類の方法で実施してもよく、2種以上の方法を組み合わせて実施しても構わない。
より効率的で、簡便な手法であり、酸化アルミニウム及び/又はその水和物を凝集させないという観点からは、ろ過による溶媒、水の減少が好ましい。
ろ過の方法としては公知の遠心ろ過、減圧濾過、加圧ろ過、常圧ろ過、遠心分離等の方法で、脱水または脱溶媒することができる。
ろ過された有機スルホン酸処理酸化アルミニウム及び/又はその水和物は、蒸留や凍結乾燥、スプレードライ、スラリードライ等の粒子同士が可能な限り凝集していない粉体の状態にしてもよく、ろ過により得られた水または、溶媒が含有されたケーキ状態で次の熱可塑性樹脂との混合工程に供されても良い。
粉体の飛散などのハンドリングや、粒子の凝集の観点からは、前記の粉体またはケーキは、水または溶媒をある程度残留させる方が好ましく、その量は特に制限されないが、通常酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対して0.1〜100重量倍であるが、0.5〜50重量倍が次の熱可塑性樹脂との混合工程での脱水効率の面と酸化アルミニウム及び/又はその水和物の凝集を防ぐ観点とからは好ましい。さらに30重量倍以下が好ましく、特には10重量倍以下である。又、1重量倍以上がより好ましい。
[熱可塑性樹脂]
本発明の熱可塑性樹脂としては、特に限定はないが、加水分解性をもつ熱可塑性樹脂が、加水分解性を抑制する意味で好ましい。加水分解性を持つ熱可塑性樹脂とは、エステル結合もしくはカーボネート結合等の縮重合型のポリマー構造を有する熱可塑性樹脂であり、具体的にはポリカーボネートのほか、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリアリレート等のポリエステル類、ポリアミド類、等が挙げられる。
ポリカーボネート(PC)樹脂とは、3価以上の多価フェノール類を共重合成分として含有できる1種以上のビスフェノール類と、ビスアルキルカーボネート、ビスアリールカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル類との反応により製造される共重合体であり、必要に応じて芳香族ポリエステルカーボネート類とするために共重合成分としてテレフタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸又はその誘導体(例えば芳香族ジカルボン酸ジエステルや芳香族ジカルボン酸塩化物)を使用して製造したものであってもよい。
ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ等が例示され、中でもビスフェノールAとビスフェノールZ(中心炭素がシクロヘキサン環に参加しているもの)が好ましく、ビスフェノールAが特に好ましい。
共重合可能な3価フェノール類としては、1,1,1−(4−ヒドロキシフェニル)エタンやフロログルシノールなどが例示できる。
ポリカーボネート樹脂は、単独使用でも2種以上のポリマーブレンドとしての併用であってもよく、複数種の単量体の共重合体であってもよい。
ポリカーボネート樹脂の製造方法に特に制限は無く、例えば次の(a)〜(d)の方法など公知のいずれの方法も採用することができる。
(a)ビスフェノール類のアルカリ金属塩と求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体(例えばホスゲン)とを原料とし、生成ポリマーを溶解する有機溶剤(例えば塩化メチレンなど)とアルカリ水との界面にて重縮合反応させる界面重合法
(b)ビスフェノール類と前記求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体とを原料とし、ピリジン等の有機塩基中で重縮合反応させるピリジン法
(c)ビスフェノール類とビスアルキルカーボネートやビスアリールカーボネート等の炭酸エステル(好ましくはジフェニルカーボネート)とを原料とし、溶融重縮合させる溶融重合法
(d)ビスフェノール類と一酸化炭素や二酸化炭素を原料とする製造方法
ポリエステルとは多価カルボン酸とポリアルコールとの重縮合体である。例えば、エチレングリコールとテレフタル酸の脱水縮合により作られる、エステル結合の連なる樹脂である。このエステル結合は、テレフタル酸ジメチルとのエステル交換反応によっても生成可能である。同様に、ポリブチレンテレフタレートは、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸との脱水縮合から製造され、ポリエチレンナフタレートはエチレングリコールと、2,6−ナフタレンジカルボン酸の脱水縮合から製造され、ポリブチレンナフタレートは、1,4−ブタンジオールと2,6−ナフタレンジカルボン酸の脱水縮合から製造される。
ポリ乳酸は乳酸がエステル結合によって重合し、長くつながった高分子である。ポリアリレートとは、2価フェノールとフタル酸・カルボン酸などの2塩基酸との重縮合を基本構成とする樹脂である。
ポリアミドとは、アミド結合によって多数のモノマーが結合してできたポリマーである。例えば、ナイロン6はカプロラクタムを開環重縮合したポリアミドである。そのほかラウロラクタムを開環重縮合したナイロン12、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との共縮重合で得られるナイロン6,6などがある。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、上記構造を少なくとも樹脂の一部に含めばよく、製法に制限はない。
熱可塑性樹脂の分子量に特に制限は無く、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフィー)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが通常10,000〜500,000であることが好ましく、特に機械的物性と溶融流動性の観点から重量平均分子量Mwが好ましくは15,000〜200,000、より好ましくは20,000〜100,000である。
また、熱可塑性樹脂のガラス転移点Tgは通常120〜220℃であり、耐熱性と溶融流動性の観点から好ましくは130〜200℃、より好ましくは140〜190℃である。
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂の製造方法は、酸化アルミニウム及び/又はその水和物、有機スルホン酸の混合物と、熱可塑性樹脂を溶融混合するもので、溶融混合時における組成物中の酢酸に対する有機スルホン酸のモル比が1.4以上であることを特徴とする。
熱可塑性樹脂組成物中の酢酸に対する有機スルホン酸のモル比は、1.4以上が好ましく、さらに好ましくは1.6以上である。又、通常2000以下であり、好ましくは、200以下、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。酢酸含有量が多すぎると、溶融時に残留酢酸による熱可塑性樹脂の加水分解が起こり、熱可塑性樹脂の分子量の低下が起こり、結果として熱可塑性樹脂組成物の優れた機械的特性、特に耐衝撃性が低下する。有機スルホン酸が酸化アルミニウム及び/又はその水和物の表面を被覆できていれば、酢酸の含有量は少ないほど良い。
熱可塑性樹脂組成物中の酢酸に対する有機スルホン酸のモル比は、溶融前の熱可塑性樹脂組成物中の硫黄および酢酸量を、後述する分析方法により分析することで算出することができる。
有機スルホン酸処理酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子以外に酢酸や有機スルホン酸が含有されない場合で、かつ、有機スルホン酸処理酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子と熱可塑性樹脂を配合して熱可塑性樹脂組成物を調製する際に、洗浄工程に該当する操作を実施しない場合は、熱可塑性樹脂組成物を直接分析する代わりに、熱可塑性樹脂組成物に用いる、有機スルホン酸処理酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子を分析して、熱可塑性樹脂組成物中の量としてもよい。
有機スルホン酸処理酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子中の酢酸に対する有機スルホン酸のモル比(有機スルホン酸/酢酸)は、1.4以上が好ましく、さらに好ましくは1.6以上である。又、通常2000以下であり、好ましくは、200以下、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。
また、熱可塑性樹脂組成物中の酢酸濃度は、0.55重量%以下が好ましく、より好ましくは0.50重量%である。又、5.5ppm以上、さらに好ましくは50ppm以上、さらに好ましくは100ppm以上である。
有機スルホン酸処理酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子中の酢酸濃度は、2.6重量%以下が好ましく、2.4重量%以下がより好ましい。また、26ppm以上、さらに好ましくは、250ppm以上である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、二軸混練機やニーダーで混練してもよく、溶融したのち、造粒してペレットとしたり、所望の形態の金型に流し込んで加圧成型又は押し出し加圧成型することができる。例えば、射出成型、射出圧縮成型、押出成型、プレス成型、真空プレス成型、二色成型、多色成型法など公知の成型方法も使用できる。
これらの場合の熱可塑性樹脂組成物の溶融温度は、ポリカーボネート樹脂組成物の場合、樹脂の温度として通常、150〜350℃であり、下限値は好ましくは180℃、より好ましくは200℃、上限値は好ましくは300℃、さらに好ましくは280℃、特に好ましくは270℃である。
加熱溶融温度が150℃に満たない場合は、ポリカーボネート成分が溶融せず、また、350℃を超えるとポリカーボネート樹脂の熱分解、加水分解、酸化劣化、分散剤の脱離によるポリカーボネートの加水分解促進、ポリカーボネート樹脂組成物の着色などが顕著となり、好ましくない。
尚、加熱溶融の際に、揮発成分(水やポリカーボネートが分解して生成するビスフェノールA)などを除去してポリカーボネートの分子量を保持するために、ベント式押し出し機の使用などにより減圧下に溶融混合してもよい。
本発明の樹脂組成物を製造する具体的な方法としては、次の(1)〜(3)の方法が挙げられる。
(1)酸化アルミニウム及び/又はその水和物分散液または、水や有機物を含んでいて良い粉体と熱可塑性樹脂とを加熱混合し、溶融混練することにより、酸化アルミニウム及び/又はその水和物が均一に分散した有機スルホン酸を含む熱可塑性樹脂組成物を得る直接混練法。
(2)酸化アルミニウム及び/又はその水和物分散液を用いる場合はそのまま、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粉体を用いる場合は所望の分散媒の分散液とし、熱可塑性樹脂のモノマーと混合して反応溶液を調製し、その後モノマーを重合させることにより
、酸化アルミニウム及び熱可塑性樹脂との混合物を得て、その後溶融混練することにより、酸化アルミニウム及び/又はその水和物が均一に分散した有機スルホン酸を含む熱可塑性樹脂組成物を得る方法。
(3)酸化アルミニウム及び/又はその水和物分散液を用いる場合はそのまま、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粉体を用いる場合は所望の分散媒の分散液とするかもしくは粉体の状態で、その酸化アルミニウム及び/又はその水和物と熱可塑性樹脂を含む有機溶媒とを混合攪拌し、溶媒の留去に必要な温度と圧力下にて溶媒のみを留去し、酸化アルミニウム及び/又はその水和物が均一に分散した混合物を得て、その後溶融混練することにより、酸化アルミニウム及び/又はその水和物が均一に分散した有機スルホン酸を含む熱可塑性樹脂組成物を得る方法。
(1)の方法において、有機スルホン酸は、予め酸化アルミニウム及び/又はその水和物分散液や酸化アルミニウム及び/又はその水和物の粉体を調製する際に添加しておいてもよいし、酸化アルミニウム及び/又はその水和物と熱可塑性樹脂を溶融混練する際に添加してもよい。
この直接混練法の場合、溶融混練に用いる混練機としては、一般的な二軸混練押出機、微量混練押出機、ラボプラストミル、ロール混練機等、製造スケールに応じて選択使用することができる。また、乾式の固体状態又はガラス転移点近傍の温度で強力な剪断を印加し、次いで溶融混練させる形式の混練工程も採用可能である。
(2)の方法において、この場合、有機スルホン酸は予め酸化アルミニウム及び/又はその水和物の分散液を調製する際に添加しておいてもよいし、分散液とポリカーボネートのモノマーを混合する際に添加してもよい。
この方法において、モノマーの重合反応としては、ジヒドロキシ化合物とホスゲンの縮合反応であるホスゲン法、もしくは、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのエステル交換反応であるいわゆるエステル交換法などの方法を採用することができる。
(3)の方法において、この場合、有機スルホン酸は予め酸化アルミニウム及び/又はその水和物の分散液を調製する際に添加しておいてもよいし、分散液または粉体と熱可塑性樹脂を含む有機溶媒と混合する際に添加してもよい。
この方法において、酸化アルミニウム及び/又はその水和物と有機スルホン酸、熱可塑性樹脂を含む有機溶媒を混合攪拌し、溶媒の留去に必要な温度と圧力下にて溶媒のみを留去する際、溶媒減量とともに、溶液の粘度が上昇するが、攪拌できなくなるまで攪拌を継続することが望ましく、これにより樹脂組成物中における表面処理酸化アルミニウム及び/又はその水和物を凝集させることなく、より均一に分散させることができる。ただし、溶媒の減量には、例えば薄膜蒸発機やニーダー、スプレードライヤー又はスラリードライヤーなどの攪拌機構のない(又は攪拌効果が微弱な)装置を利用してもよい。
上記(1)〜(3)において、予め酸化アルミニウム及び/又はその水和物分散液や酸化アルミニウム及び/又はその水和物の粉体を調製する際に有機スルホン酸を添加しておくほうが、酸化アルミニウム及び/又はその水和物に効果的に作用し、得られる熱可塑性樹脂組成物中の酸化アルミニウム及び/又はその水和物の分散性が更に向上し、透明性、流動性、熱安定性、寸法安定性などの観点で好ましい。
このように有機スルホン酸で酸化アルミニウム及び/又はその水和物を処理しその後熱可塑性樹脂と混合する熱可塑性樹脂組成物の製造方法においては、上述の(1)の方法を適用することが、溶媒を使用しないため、熱可塑性樹脂組成物の生産効率の上から好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物中の酸化アルミニウム及び/又はその水和物の分散性の観点からは、上記(3)の方法が好ましい。
また、上記(1)〜(3)の方法において、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粉体を経る工程においては、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子同士が可能な限り凝集していない状態、たとえば、凍結乾燥、スプレードライ、スラリードライ、ろ過により得られた粉体であることが、得られる熱可塑性樹脂組成物における酸化アルミニウム及び/又はその水和物の分散性の観点からは好ましい。
前記酸化アルミニウム及び/又はその水和物粉体は水、有機物、有機物の塩のうち少なくとも一種類の物質を含有していてもよい。
その場合の有機物もしくは有機物の塩は、通常前記の[洗浄工程]もしくは、[濃縮工程]において添加された物質であるが特に限定されない。
含有される水または有機物の範囲は制限されないが、通常酸化アルミニウム及び/又はその水和物に対して0.1〜50重量倍であり、1〜20重量倍が次の工程での脱水効率の面と酸化アルミニウム及び/又はその水和物の凝集を防ぐ観点とからは好ましい。
尚、酸化アルミニウム及び/又はその水和物を酸化アルミニウム及び/又はその水和物分散液として熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂溶液と混合する場合、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の分散液を調製するための分散媒としては、前述の酸化アルミニウム及び/又はその水和物の表面処理の項で酸化アルミニウム及び/又はその水和物分散液の調製に用いる媒体として例示した水及び/又は有機溶媒を用いることができるが、熱可塑性樹脂を含む有機溶媒との均一な混合のために、特に有機溶媒を用いることが好ましい。酸化アルミニウム及び/又はその水和物分散液の酸化アルミニウム及び/又はその水和物濃度としては、前述の酸化アルミニウム及び/又はその水和物の表面処理の場合と同様に0.1〜80重量%、特に1〜50重量%とすることが好ましい。
一方、熱可塑性樹脂を熱可塑性樹脂溶液として、酸化アルミニウム及び/又はその水和物粉体または酸化アルミニウム及び/又はその水和物分散液と混合する場合、熱可塑性樹脂溶液の調製にもちいる有機溶媒としては、熱可塑性樹脂を均一に溶解でき、ポリカーボネートにを分解する性質がないこと、樹脂組成物の着色原因となる副反応生成物を与える等の悪影響を及ぼさないものであればよく、特に制限はないが、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル、エチレングリコールのエーテルなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、1,3−ジオキソランなどのアセタール系溶媒、N、N−ジメチルホルムアミドやN−メチルピロリドンなどを例示することができる。これらの有機溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。このうち、特に好ましい溶媒は、テトラヒドロフラン、クロロホルム、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソランである。
また、熱可塑性樹脂溶液中の熱可塑性樹脂濃度は、過度に高いと粘度が高くなり製造上ハンドリングが困難となり、また過度に低いと続く溶剤除去工程の負荷が大きくなることから、1〜20重量%、特に5〜15重量%であることが好ましい。
<熱可塑性樹脂組成物の組成>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、有機スルホン酸と酸化アルミニウム及び/又はその水和物とポリカーボネートを含み、上述の有機スルホン酸は、好ましくは酸化アルミニウム及び/又はその水和物の表面処理剤として含まれる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の含有量は、通常0.1〜70重量%であり、樹脂組成物の機械的強度や剛性(弾性率)、寸法
安定性を高める点でその下限は、好ましくは3重量%、より好ましくは5重量%であり、樹脂組成物の靭性(脆くなく、粘り強い性質)と成型可能な流動性を確保する点でその上限は好ましくは60重量%、より好ましくは50重量%である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物中に有機スルホン酸が、通常0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。
尚、上述の熱可塑性樹脂組成物中の酸化アルミニウム及び/又はその水和物含有量とはAlに換算した数値を使用した含有量であり、後述の実施例の項に示される、灰分の測定により求める。
すなわち、本発明の酸化アルミニウム及び/又はその水和物は前述のごとく、Al・nHOであらわされ、n=0以上通常3以下のものである。酸化アルミニウム及び/又はその水和物は通常吸湿性が強く、結晶水nと、物理吸着水を区別することが困難であるため、600℃までの熱処理を実施してAl(アルミナ)としての濃度として表記する。
尚、本発明の樹脂組成物は、酸化アルミニウム及び/又はその水和物と熱可塑性樹脂とを含むものであるが、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、その他の添加剤を含有することができる。
例えば安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤を含有することができる。また、各種の用途や所望の性能を得るために、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどの耐衝撃性改善剤を配合してもよい。
耐衝撃性改善剤は、通常、熱可塑性樹脂マトリクス中で相分離して存在するので、光散乱による透明性低下を抑制するためには、耐衝撃性改善剤の屈折率を熱可塑性樹脂マトリクスの屈折率に極力近づけることが望ましい。更に、ホスファイト系などの熱安定剤(例えばMARK2112の商品名で常用されているトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなど)、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、離型剤、顔料、帯電防止剤などの添加剤を添加してもよい。例えば、成形時の熱安定性を向上させるため、イルガノックス1010、同1076(チバガイギー社製)等のヒンダードフェノール系、スミライザーGS、同GM(住友化学社製)に代表される部分アクリル化多価フェノール系、イルガフォス168(チバガイギー社製)やアデカスタブLA−31等のホスファイト系に代表される燐化合物などの安定剤、長鎖脂肪族アルコールや長鎖脂肪族エステル等の添加剤を添加することができる。
<熱可塑性樹脂の分子量>
本発明の熱可塑性樹脂組成物では、有機スルホン酸が酸化アルミニウム及び/又はその水和物表面に吸着することにより、酸化アルミニウム及び/又はその水和物表面の酸・塩基性質を封止し、有機スルホン酸自身も過不足なく酸化アルミニウム及び/又はその水和物表面に吸着するので、熱可塑性樹脂を加水分解する触媒としては働かない。また、酸化アルミニウム及び/又はその水和物表面から溶融時に脱離し易い酢酸を大きく減少させていることから、酢酸を触媒とする熱可塑性樹脂の加水分解も進みにくい。その結果、熱可塑性樹脂の分子量低下を抑制でき、重量平均分子量として3.7万以上の分子量を保持することができる。好ましくは、4万以上である。
<線熱膨張係数>
本発明の熱可塑性樹脂組成物の線熱膨張係数は、低ければ低いほど好ましいが、通常その下限は10ppm/Kである。好ましくは、60ppm/K以下、より好ましくは、55ppm/K以下である。
<ヘイズ値>
本発明の熱可塑性樹脂組成物のヘイズ値は、0.9mm厚のサンプルにおいて20以下であることが好ましい。このヘイズ値は15以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。
[熱可塑性樹脂組成物の用途]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械的強度・寸法安定性・熱安定性・透明性・成型性等において、優れた特性を併せ持つことから、例えば自動車内装材として計器盤の透明カバーなどに、自動車外装材として窓ガラス(ウィンドウ)やヘッドランプ、サンルーフ及びコンビネーションランプカバー類などに、更には家電や住宅に用いられる透明部材・備品・家具などの分野において、ガラス代替材料として有効に用いることができる。
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。
なお、以下において、各種分析測定方法の詳細は次の通りである。
(1)灰分
酸化アルミニウム及び/又はその水和物/熱可塑性樹脂組成物をセイコーインスツルメンツ製「TG−DTA320」により、白金パンを使用し、空気中、室温(約23℃)から600℃に10℃/分で昇温し、30分保持した重量減から、残留成分のもとの樹脂組成物に対する重量%として算出した。
(2)重量平均量/数平均分子量
樹脂組成物の0.1重量%クロロホルム溶液を調製し、不溶分を0.45μmのフィルターで濾過し、可溶分のみをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析した。
装置 :東ソー社製HLC−8220GPC
カラム :東ソー社製TSK GEL SUPER HZM−M
カラム温度:40℃
検出器 :東ソー社製UV−8220(254nm)
移動相 :CHCl(和光純薬工業株式会社製、一級、アミレン約10ppm添加品)
較正法 :ポリスチレン換算
注入量 :0.05重量%(樹脂組成物として)を10μL注入
なお、平均分子量計算は、分子量400のポリスチレンの溶出位置を含むピークの低分子量側極小点で垂直分割したピークの高分子量成分のみを対象にして行った。
(3)線熱膨張係数
樹脂組成物を溶融混練した後、底面の直径5mm、長さ10mmの円柱状の試料を成型し、ディラトメーター(ブルカーエイエックスエス(旧マックサイエンス)社製「TD5000」を使用し、窒素雰囲気下で、荷重は20gで、昇温速度5℃/分で測定した30℃〜60℃の範囲の長さ方向の寸法変化から決定した。試料は計測前に、100℃まで昇温速度5℃/分で昇温し、室温まで降温させた後に測定した。標準試料は石英を用い、GaとInの融解温度(軟化温度)に基づき温度補正を行った。
(4)ヘーズ(曇価)
樹脂組成物を溶融混練した後、加熱プレス成型をして厚さ0.9mmの試験片フィルムを作成し、このフィルムについて、JIS K7105の方法により、へイズメーター((株)スガ試験機株式会社性「ヘーズコンピューターHZ−2」により測定した。
(5)X線回折
酢酸を含有する酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子水分散ゾルを凍結乾燥した試料を用いて酸化アルミニウム及び/又はその水和物粒子の同定を実施した。
測定条件
装置名:PANalytical社製 X’Pert Pro MPD
・分析方法:
試料を乳鉢で粉砕後、測定用ホルダー(SUS製)にガラス板を敷きその上に圧粉した。これを観察用試料としてX線解析装置にて測定を行った。
X線源:CuKα (波長 1.5418Å)
測定範囲 2θ=5−70°
・観測された回折パターンは、PDF(Powder Diffraction File)との比較によりベーマイトと同定した。
(6)酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散ゾルの光透過率
日立U−4000分光光度計を用いて、酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水分散ゾル(1重量%)の透過率を、同濃度の酢酸を含有する脱塩水溶液をリファレンスとして570nmの波長における光透過率を測定した。
(7)有機スルホン酸量の分析方法
溶融前の熱可塑性樹脂組成物もしくは、酸化アルミニウム及び/又はその水和物と有機スルホン酸の混合物10mg、及び 助燃剤(LECO社製 Lecocel II 約3g 、LECO社製 HIGH PURITY IRON CHIP 約0.5g)をはかりとり、LECO 社製 CS600装置にて全硫黄量の測定を行なった。
定量法:社団法人 日本鉄鋼連盟製 硫黄定量専用鋼を用いた検量線法。
得られた硫黄量を全て有機スルホン酸由来として、有機スルホン酸量を算出した。
(8)酢酸の分析方法
試料形態により後述する(a)、(b)の前処理を実施した後、分析用試料をIC(イオンクロマトグラフ)にて下記の条件で酢酸イオン濃度を定量し、それぞれの分子量から酢酸濃度に換算した。
装置 :DIONEX社製 イオンクロマトグラフ
カラム :DIONEX社製 Ion Pac AG10 + Ion Pac AS10
カラム温度:35℃
検出器 :電気伝導度検出器
溶離液 :20mM KOH 1.0ml/min
定量法 :検量線法
注入量 :前処理で得られた上澄みをそのままの濃度で25μl注入
(a)熱可塑性樹脂組成物の前処理
試料0.025gを採取し、ジクロルメタン 3mlおよび 20mM NaOH 15mlを加え超
音波洗浄器にて30分間抽出を行なう。
その後、遠心分離機にて(2000rpm)30分間分離後、上澄み液をIC分析用試料とする。
(b)酸化アルミニウム及び/又はその水和物と有機スルホン酸の混合物の前処理
試料0.01gを採取し、20mM NaOH 15mlを加え超音波洗浄器にて30分間抽出を行なう。その後、遠心分離機にて(2000rpm)30分間分離後、上澄み液をIC分析用試料とす
る。
(9)酢酸に対する有機スルホン酸のモル比算出方法
上記(7)、(8)で得られた有機スルホン酸量、酢酸量より算出した。
(酸化アルミニウム及び/又はその水和物)
以下の実施例における酸化アルミニウム及び/又はその水和物の水ゾルは、以下のものを使用した。
固形分として、5重量%水ゾル中に含まれる酢酸の濃度は××重量%であった。このゾルを、1重量%濃度に脱塩水にて希釈した水ゾルの透過率(570nm)は77%であった。TEM画像から観察される粒子形状は長軸長さ約100〜300nm、短軸長さ(径)5〜7nm、アスペクト比約40の針状形状であった。酸化アルミニウム及び/又はその水和物はX線回折分析の結果、ベーマイトと同定された。
[実施例1]
ベーマイト5.0重量%の水ゾルを200g、500mlの四つ口フラスコに採取し、メカニカルスターラーで回転速度300rpmで攪拌しながら、花王株式会社製ネオペレックスGS−P(ドデシルベンゼンスルホン酸)を2.9gを25.7gの水に希釈した水溶液を滴下したのち、オイルバス温度80℃で3時間加熱した。15時間静置したのち、桐山製作所製桐山ロート用ろ紙NO.5Aで減圧濾過をして(1回目の減圧濾過)、ろ液148gを得た。ろ過後、得られたケーキをフラスコ内に戻し、脱塩水を80g加えて再分散させたのち、酢酸6gを脱塩水14gに溶解した水溶液を室温で滴下してそのまま1時間攪拌し、スルホン酸表面処理ベーマイトを酢酸水溶液で洗浄した。このスラリーを前記と同じろ紙を用いて減圧ろ過をおこない(2回目の減圧濾過)、97gのろ液を得た。
取り出したケーキを凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製「DRC−1000/FDU2100」内に静置し、予め−40℃で3時間凍結させ、続いて槽内を真空状態とし、(10Pa以下)、―40℃で72時間乾燥後、30℃で2時間乾燥し、水を凍結乾燥により除去した。
このスルホン酸表面処理ベーマイト10gと、THF(テトラヒドロフラン(純正化学特級))153gを混合し、2時間室温で攪拌してスルホン酸処理ベーマイトのTHFゾルとした。ポリカーボネート(三菱化学エンジニアリングプラスチック(株)製ノバレックス(登録商標)7030A、重量平均分子量6.5×10、数平均分子量1.3×10)。の9.1重量%ジクロロメタン溶液434gと均一に混合したのち、溶媒を留去させ、ベーマイト/熱可塑性樹脂組成物(ベーマイト含有量15重量%、ドデシルベンゼンスルホン酸含有量4重量%)を得た。
この樹脂組成物を120℃、0.8KPaの真空条件で一晩乾燥したのち、東洋精機製作所製ラボプラストミルで260℃設定、100rpm、ベント引きをしながら(大気圧〜最高減圧度5KPa)で5分間で溶融混練し、取り出した。
この樹脂組成物の灰分は、13重量%、GPC分析による重量平均分子量は4.4×10、数平均分子量1.4×10であった。
[実施例2]
実施例1において、1回目の減圧濾過ののち、スルホン酸表面処理ベーマイトの水スラリーに添加する溶液を、「酢酸6gを脱塩水14gに溶解した水溶液」の代わりに「酢酸3gを脱塩水17gに溶解した水溶液」を用いた以外は実施例1と同様の方法でスルホン酸表面処理ベーマイトを得、実施例1と同様の方法でベーマイト/熱可塑性樹脂組成物(ベーマイト含有量16重量%、ドデシルベンゼンスルホン酸含有量5重量%)を得た。
この樹脂組成物の灰分は、14重量%、GPC分析による重量平均分子量は4.2×10、数平均分子量1.3×10であった。
[実施例3]
ベーマイト5.0重量%の水ゾルを200g、300mlの四つ口フラスコに採取し、メカニカルスターラーで回転速度200rpmで攪拌しながら、関東化学製特級酢酸を3
gを添加し、さらに0.5時間攪拌を継続した。花王株式会社製ネオペレックスGS−P(ドデシルベンゼンスルホン酸)2.9gを25.6gの水に希釈した水溶液を、前記のゾルに滴下したのち、オイルバス温度80℃で3時間加熱した。15時間静置したのち、実施例1で用いたと同じ桐山ロート用ろ紙NO.5Aで減圧濾過をして(1回目の減圧濾過)、ろ液148gを得た。ろ過後、得られたケーキをフラスコ内に戻し、脱塩水を100g加えて再分散させたのち、室温で1時間攪拌した。このスラリーを前記と同じろ紙を用いて減圧ろ過をおこない(2回目の減圧濾過)、100gのろ液を得た。とりだしたケーキを約−20℃の冷凍庫で3時間凍結した後、実施例1と同様の東京理化器械製の凍結乾燥機で−5℃、10Pa以下の真空状態を72時間継続して凍結乾燥させたのち、30℃で3.5時間乾燥させた。
このスルホン酸表面処理ベーマイトを用い、ジクロロメタン溶液434gを432g用いた以外は実施例1と同様の方法でベーマイト/熱可塑性樹脂組成物(ベーマイト含有量16重量%、ドデシルベンゼンスルホン酸含有量5重量%)を得た。
この樹脂組成物の灰分は、14重量%、GPC分析による重量平均分子量は4.2×10、数平均分子量1.3×10であった。
[実施例4]
ベーマイト5.0重量%の水ゾルを200g、500mlの四つ口フラスコに採取し、メカニカルスターラーで回転速度300rpmで攪拌しながら、花王株式会社製ネオペレックスGS−P(ドデシルベンゼンスルホン酸)を2.9gを25.6gの水に希釈した水溶液を滴下したのち、オイルバス温度80℃で3時間加熱した。15時間静置したのち、実施例1で用いたと同じ桐山ロート用ろ紙NO.5Aで減圧濾過して(1回目の減圧濾過)、ろ液146gを得た。ろ過後、得られたケーキをフラスコ内に戻し、脱塩水を60g加えて再分散させてスラリーにしたのち、純正化学製特級イソプロパノール39gを室温でスラリーに滴下してそのまま1時間攪拌し,スルホン酸表面処理ベーマイトをイソプロパノール水溶液で洗浄した。このスラリーを前記と同じろ紙を用いて減圧ろ過をおこない(2回目の減圧濾過)、100gのろ液を得た。とりだしたケーキを実施例1と同様の方法で凍結乾燥させた。
得られたスルホン酸表面処理ベーマイトを用い、実施例1と同様の方法でベーマイト/熱可塑性樹脂組成物(ベーマイト含有量16重量%、ドデシルベンゼンスルホン酸含有量5重量%)を得た。
この樹脂組成物の灰分は、14重量%、GPC分析による重量平均分子量は4.4×10、数平均分子量1.4×10であった。
[実施例5]
実施例1において、1回目の減圧濾過ののち、スルホン酸表面処理ベーマイトの水スラリーに添加する溶液を、「酢酸6gを脱塩水14gに溶解した水溶液」の代わりに「イソプロパノール6gを脱塩水14gに溶解した水溶液」を用いた以外は実施例1と同様の方法でスルホン酸表面処理ベーマイトを得、実施例1と同様の方法でベーマイト/熱可塑性樹脂組成物(ベーマイト含有量15重量%、ドデシルベンゼンスルホン酸含有量4重量%)を得た。
この樹脂組成物の灰分は、13重量%、GPC分析による重量平均分子量は4.4×10、数平均分子量1.4×10であった。
[実施例6]
ベーマイト5.0重量%の水ゾルを200g、300mlの四つ口フラスコに採取し、メカニカルスターラーで回転速度200rpmで攪拌しながら、花王株式会社製ネオペレックスGS−P(ドデシルベンゼンスルホン酸)を2.85g、純正化学製特級イソプロパノール2.5gを23.5gの水に溶解させた水溶液を前記のゾルに滴下したのち、オイルバス温度80℃で3時間加熱した。15時間静置したのち、実施例1で用いたと同じ桐山ロート用ろ紙NO.5Aで減圧濾過をして(1回目の減圧濾過)、ろ液138gを得た。ろ過後、得られたケーキをフラスコ内に戻し、脱塩水を70g加えて再分散させたのち、純正化学製特級イソプロパノール6gを14gの脱塩水に溶解した水溶液を室温でスラリーに滴下してそのまま1時間攪拌し,スルホン酸表面処理ベーマイトをイソプロパノール水溶液で洗浄した。このスラリーを前記と同じろ紙を用いて減圧ろ過(2回目の減圧濾過)をおこない、94gのろ液を得た。とりだしたケーキを実施例3と同様の方法で凍結乾燥させた。
得られたスルホン酸表面処理ベーマイトを用い、実施例1と同様の方法でベーマイト/熱可塑性樹脂組成物(ベーマイト含有量16重量%、ドデシルベンゼンスルホン酸含有量5重量%)を得た。
この樹脂組成物の灰分は、14重量%、GPC分析による重量平均分子量は4.5×10、数平均分子量1.4×10であった。
[実施例7]
ベーマイト5.0重量%の水ゾルを200g、300mlの四つ口フラスコに採取し、メカニカルスターラーで回転速度200rpmで攪拌しながら、花王株式会社製ネオペレックスGS−P(ドデシルベンゼンスルホン酸)を2.9gを25.7gの水に希釈した水溶液を滴下したのち、オイルバス温度80℃で3時間加熱した。15時間静置したのち、実施例1で用いたと同じ桐山ロート用ろ紙NO.5Aで減圧濾過して(1回目の減圧濾過)、ろ液141gを得た。ろ過後、得られたケーキをフラスコ内に戻し、脱塩水を73g加えて再分散させたのち、純正化学製特級酢酸ナトリウム0.22gを脱塩水20gに溶解した水溶液を室温で滴下してそのまま1時間攪拌し,スルホン酸表面処理ベーマイトを酢酸ナトリウム水溶液で洗浄した。このスラリーを前記と同じキリヤマろ紙を用いて減圧ろ過をおこない(2回目の減圧濾過)、100gのろ液を得た。
得られたケーキを脱塩水115gにてふりかけ洗浄しながら減圧濾過を継続し、ろ液120gを得た。とりだしたケーキを実施例3と同様の方法で凍結乾燥させた。
このスルホン酸表面処理ベーマイトを用い、実施例1と同様の方法でベーマイト/熱可塑性樹脂組成物(ベーマイト含有量16重量%、ドデシルベンゼンスルホン酸含有量5重量%)を得た。
この樹脂組成物の灰分は、14重量%、GPC分析による重量平均分子量は4.3×10、数平均分子量1.3×10であった。
[実施例8]
実施例1において、1回目の減圧濾過ののち、スルホン酸表面処理の水スラリーに添加する溶液を、「酢酸6gを脱塩水14gに溶解した水溶液」の代わりに「脱塩水20g」を用いた以外は実施例1と同様の方法でスルホン酸表面処理ベーマイトのケーキを得て、
実施例3と同様の方法で凍結乾燥させた。
このスルホン酸表面処理ベーマイトを用い、実施例1と同様の方法でベーマイト/熱可塑性樹脂組成物(ベーマイト含有量16重量%、ドデシルベンゼンスルホン酸含有量5重量%)を得た。
この樹脂組成物の灰分は、14重量%、GPC分析による重量平均分子量は4.2×10、数平均分子量1.4×10であった。
[比較例1]
ベーマイト5.0重量%の水ゾルを701gを、1Lの四つ口フラスコに採取し、メカ
ニカルスターラーで回転速度300rpmで攪拌しながら、ALDRICH製70重量%ドデシルベンゼンスルホン酸(イソプロパノール30重量%含有)を11.4g(内訳ドデシルベンゼンスルホン酸8g、イソプロパノール3.4g)を103gの水に希釈した水溶液を滴下したのち、オイルバス温度80℃で3時間加熱した。15時間静置したのち反応液の上澄み(無色透明)を265g分別したのち、残留スラリーの半分の量を実施例1と同様の方法で凍結乾燥させた。
このスルホン酸表面処理ベーマイトを用い、実施例1と同様の方法でベーマイト/熱可塑性樹脂組成物(ベーマイト含有量16重量%、ドデシルベンゼンスルホン酸含有量5重量%)を得た。
この樹脂組成物を120℃、0.8KPaの真空条件で一晩乾燥したのち、東洋精機製作所製ラボプラストミルで260℃設定、100rpm、ベント引きをしながら(大気圧〜最高減圧度5KPa)で5分間混練し、取り出した。
この樹脂組成物の灰分は、13重量%、GPC分析による重量平均分子量は3.6×10、数平均分子量1.0×10であった。
以上の樹脂組成物に含まれる灰分、樹脂組成物中の熱可塑性樹脂成分の重量平均分子量及び数平均分子量、ヘーズ(曇価)、線熱膨張係数、混練時に樹脂中に含有される酢酸の濃度および、スルホン酸/酢酸のモル比を表1にまとめた。
Figure 2010202808
本発明の製造方法により、熱可塑性樹脂の分子量を特定の水準以上に保持できる為、寸法安定性と優れた機械特性を兼ね備える熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
熱可塑性樹脂組成物は、機械的強度・寸法安定性・熱安定性・透明性・成型性等において、優れた特性を併せ持つことから、例えば自動車内装材として計器盤の透明カバーなどに、自動車外装材として窓ガラス(ウィンドウ)やヘッドランプ、サンルーフ及びコンビネーションランプカバー類などに、更には家電や住宅に用いられる透明部材・備品・家具などの分野において、ガラス代替材料として有効に用いることができる。

Claims (5)

  1. 酢酸を含む酸化アルミニウム及び/又はその水和物、有機スルホン酸の混合物と、熱可塑性樹脂を溶融混合する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、溶融混合時における組成物中の酢酸に対する有機スルホン酸のモル比が1.4以上である熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  2. 酢酸を含む酸化アルミニウム及び/又はその水和物、有機スルホン酸の混合物を洗浄する工程、得られた混合物と熱可塑性樹脂と溶融混合する熱可塑性樹脂組成物製造方法であって、溶融混合時における組成物中の酢酸に対する有機スルホン酸のモル比が1.4以上である熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  3. 有機スルホン酸と酸化アルミニウム及び/又はその水和物の混合物を、水を含む洗浄溶媒で洗浄する工程、得られた酸化アルミニウム及び/又はその水和物の混合物と熱可塑性樹脂を溶融混合する工程を含む熱可塑性樹脂組成物製造方法。
  4. 洗浄溶媒が、水または、アルコール及び有機カルボン酸およびその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶液である請求項2又は3に記載の樹脂組成物の製造方法。
  5. 該混合物が有機スルホン酸で表面処理された酸化アルミニウム及び/又はその水和物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物製造方法。
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JP2012193052A (ja) * 2011-03-15 2012-10-11 Nissan Chem Ind Ltd 有機溶媒分散アルミナゾル及びその製造方法

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