JP2010202423A - ガラス成形型及びその製造方法、ガラス成形装置、並びガラス成形体の製造方法 - Google Patents

ガラス成形型及びその製造方法、ガラス成形装置、並びガラス成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】気体の噴出を、漏出をより確実に抑制しつつ行うことができるガラス成形型及びその製造方法等を提供すること。
【解決手段】気体が噴出可能な受け面114の上に溶融ガラスを受けて成形するガラス成形型11は、少なくとも受け面114は多孔体111からなり、この多孔体111の外表面のうち受け面114を除く非受け面119の一部又は全部に関して、多孔体111の細孔115を塞孔材で塞いで一層以上の塞孔層117を形成し、この塞孔層117の最表面118に被覆層113を形成してなる。
【選択図】図6

Description

本発明は、ガラス成形型及びその製造方法、ガラス成形装置、並びにガラス成形体の製造方法に関する。
従来、溶融ガラスの成形を、気体を噴出する多孔体で構成された受け面の上に溶融ガラスを受けて行う技術が知られている。この技術によれば、溶融ガラス塊が受け面から浮上した状態で成形されるので、表面粗度の低いガラス成形体を製造できる。しかし、気体が受け面以外から漏出すると、受け面から溶融ガラス塊へと噴出する気体量が不充分になりやすく、また流出パイプが冷却され、溶融ガラスの流出が不安定になりやすい。
そこで、特許文献1には、多孔体のうち受け面を除く非受け面にプラズマ溶射、CVD、又は金属メッキといった処理を施し、多孔体の細孔を塞ぐことで、非受け面からの気体の漏出を抑制する技術が開示されている。
図7は、特許文献1に示されるガラス成形型910の縦断面図である。図7に示されるように、回転テーブル917に固定されたガラス成形型910は多孔体911を備えていて、この多孔体911の受け面914を除く非受け面には被覆層913が形成されている。そして、気体供給管915から空所912に供給された気体は、多孔体911を通って受け面914から噴出される。
特開2007−302526号公報
図8は、特許文献1に示される処理を施した非受け面の領域βの部分拡大図である。図8に示されるように、特許文献1に示される技術では、多孔体911の細孔915、特に径が比較的大きい細孔915bを充分に塞ぐことが困難であり、気体の漏出を充分に抑制することができない。また、塞孔が不充分な部位が存在すると、この部位の近傍に気体が集中し、被覆層913が剥離等して脆弱になりやすく、これにより、気体漏出の抑制が更に不充分になりやすい。
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、気体の噴出を、漏出をより確実に抑制しつつ行うことができるガラス成形型及びその製造方法、ガラス成形装置、並びガラス成形体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、多孔体の細孔を塞孔層で塞いだうえで、その最表面に被覆層を形成することにより、細孔が充分に被覆されることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 気体が噴出可能な受け面の上に溶融ガラスを受けて成形するガラス成形型であって、
少なくとも前記受け面は、多孔体からなり、
前記多孔体の外表面のうち前記受け面を除く非受け面の一部又は全部に関して、前記多孔体の細孔を塞孔材で塞いで一層以上の塞孔層を形成し、この塞孔層の最表面に被覆層を形成してなるガラス成形型。
(2) 前記塞孔層を形成する前に、前記非受け面の一部又は全部の最表面を表面処理してなる(1)記載のガラス成形型。
(3) 前記被覆層を形成する前に、前記塞孔層の一部又は全部の最表面を表面処理してなる(1)又は(2)記載のガラス成形型。
(4) 気体が噴出可能な受け面の上に溶融ガラスを受けて成形するガラス成形型であって、
少なくとも前記受け面は、多孔体からなり、
前記多孔体の外表面のうち前記受け面を除く非受け面の一部又は全部に、前記多孔体の細孔を塞ぐ一層以上の塞孔層と、この塞孔層上に位置する被覆層と、が形成されているガラス成形型。
(5) 前記塞孔層は、樹脂又は有機溶剤を含む非金属材料を含む(1)から(4)いずれか記載のガラス成形型。
(6) 前記塞孔層は、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ta、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、及びIrからなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含む(1)から(5)いずれか記載のガラス成形型。
(7) 前記被覆層は、Al、Ti、Cr、及びNiからなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含む(1)から(6)いずれか記載のガラス成形型。
(8) 前記多孔体の細孔の容積基準のモード径は、10μm以上である(1)から(7)いずれか記載のガラス成形型。
(9) 気体が噴出可能な受け面の上に溶融ガラスを受けて成形するガラス成形型の製造方法であって、
少なくとも前記受け面を多孔体で構成し、
前記多孔体の外表面のうち前記受け面を除く非受け面の一部又は全部に関して、前記多孔体の細孔を塞孔材で塞いで一層以上の塞孔層を形成し、この塞孔層の最表面に被覆層を形成する工程を有する製造方法。
(10) 前記塞孔層を形成する前に、前記非受け面の一部又は全部の最表面を表面処理する工程を有する(9)記載の製造方法。
(11) 被覆層を形成する前に、前記塞孔層の一部又は全部の最表面を表面処理する工程を有する(9)又は(10)記載の製造方法。
(12) 前記被覆層の形成は、金属メッキ処理によって行う(9)から(11)いずれか記載の製造方法。
(13) 前記塞孔材として、その流動温度が前記金属メッキ処理の温度よりも高いものを用いる(12)記載の製造方法。
(14) (1)から(8)いずれか記載のガラス成形型又は(9)から(13)いずれか記載の製造方法で製造されるガラス成形型と、前記多孔体の内面側に気体を供給し、前記受け面から噴出させる気体供給手段と、を備えるガラス成形装置。
(15) (14)記載のガラス成形装置と、前記受け面に溶融ガラスを供給する溶融ガラス供給装置と、を備えるガラス塊製造装置。
(16) (15)記載のガラス塊製造装置を用い、
前記気体供給手段から気体を供給して、前記受け面から噴出させ、
前記気体が噴出する受け面の上に、前記溶融ガラス供給装置から溶融ガラスを供給し、
前記溶融ガラスをガラス塊へと成形する工程を有するガラス成形体の製造方法。
(17) 前記ガラス塊を固化することで、ガラスプリフォームを製造する工程を更に有する(16)記載の製造方法。
(18) (16)又は(17)記載の製造方法で製造されるガラス成形体をプレス成形してなる光学素子。
(19) (18)記載の光学素子を用いた光学機器。
本発明によれば、受け面を除く非受け面に関して、多孔体の細孔を塞孔層で塞いだうえで、更に塞孔層の最表面を被覆層で被覆したので、径が比較的大きい細孔も確実に被覆される。これにより、気体の噴出を、漏出をより確実に抑制しつつ行うことができる。
本発明の一実施形態に係るガラス塊製造装置の概略構成図である。 図1のガラス塊製造装置を構成するガラス成形装置の全体斜視図である。 図2のガラス成形装置を構成するガラス成形型の縦断面図である。 図2のガラス成形装置を構成するガラス成形型の使用状態を示す図である。 図2のガラス成形装置を構成するガラス成形型の使用状態を示す図である。 図3のガラス成形型の製造手順を示す部分拡大図である。 従来例に係るガラス成形型の縦断面図である。 図7のガラス成形型の部分拡大図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<全体構成>
図1は本発明の一実施形態に係るガラス塊製造装置1の概略構成図であり、図2は図1のガラス塊製造装置1を構成するガラス成形装置10の全体斜視図である。図1及び2に示されるように、ガラス塊製造装置1は、ガラス成形装置10、及び溶融ガラス供給装置30を備え、溶融ガラス供給装置30から供給される溶融ガラスをガラス成形装置10で成形し、ガラス塊を製造する。各構成要素の詳細を以下に説明する。
溶融ガラス供給装置30は溶融槽31を有し、この溶融槽31はガラス原料が溶融した溶融ガラスを収容する。このような溶融槽31には誘導路32が設けられており、溶融槽31から導出された溶融ガラスは、誘導路32を経て、誘導路32の先端に位置する流下部33から流出する。誘導路32及び流下部33は、溶融ガラスに対して安定な白金等の金属で形成されていてよい。
流下部33の下方にはガラス成形型11が配置されているため、流下部33から流出した溶融ガラスがガラス成形型11の受け面114へと供給され、成形される。ガラス成形型11の設置点数は、単数でも複数でもよいが、本実施形態では複数である。そして、複数のガラス成形型11は、回転軸13を中心に回転する回転テーブル12上に、同心円状に設けられているため、回転テーブル12の回転に応じて、ガラス成形型11の各々が順次、流下部33の下方に移動して溶融ガラスを受けることになる。なお、本実施形態のガラス成形型11は、後述の空所112の気密性を向上し、気体の噴出量を確保できるよう、保持部材17を介して回転テーブル12に設けられているが、特に限定されるものではない。
受け面114で受け止められた溶融ガラスは、所定時間経過すると、粘度が高まってガラス塊になる。すると、移送装置40が受け面114上のガラス塊を回収し、搬送装置50へと移送し、この搬送装置50がガラス塊を次の工程を行う装置へと搬送する。
[ガラス成形型]
ここで、本発明は、ガラス成形装置10を構成するガラス成形型11の構成に特徴を有する。図3はガラス成形型11の縦断面図であり、図4及び5はガラス成形型11を用いた成形過程を示す図であり、図6は図3のガラス成形型11の製造手順を示す、領域αの部分拡大図である。図3に示されるように、ガラス成形型11は、少なくとも受け面114が多孔体111からなり、気体パイプ14から供給された気体を受け面114から噴出可能である。これにより、流下部33から受け面114に供給された溶融ガラス(図4)は、受け面114から浮上して成形されるため(図5)、表面粗度の低いガラス塊を製造しやすい。
なお、本実施形態では、気体パイプ14から延びる連結パイプ15が多孔体111の下方に連通されているが、多孔体111の内面側に気体を供給できる限りにおいて、これに限られない。本実施形態では、気体パイプ14の途中に不純物を除去するためのフィルタ18が設けられているが、これに限られない。また、本実施形態では、受け面114上の溶融ガラスの急冷を防止するべく、ガラス成形型11に供給する気体を加熱するバーナ16が設けられているが、これに限定されず、ガラス成形型11を通電加熱する装置も使用できる。
本発明のガラス成形型11は、図6に示されるように、多孔体111の外表面のうち受け面114を除く非受け面119の一部又は全部に関して、多孔体111の細孔115を塞孔材で塞いで一層以上の塞孔層117を形成し(図6(b))、この塞孔層117の最表面118に被覆層113を形成して(図6(c))なる。このように、細孔115を塞孔層117で塞いだうえで、更に塞孔層117の最表面118を被覆層113で被覆するので、図8のように細孔115を被覆層113のみで被覆する場合と異なり、径が比較的大きい細孔115bも確実に被覆される。これにより、気体の噴出を、漏出をより確実に抑制しつつ行うことができる。なお、図6では塞孔層117を一層のみ示しているが、必要に応じて二層以上設けてもよい。これにより、細孔115をより確実に塞ぐことができる。
ただし、上述の方法で製造されるガラス成形型11と同様の構造を備えるガラス成形型の製造方法は、すべて本発明に包含される。例えば、受け面は、多孔体の全面に塞孔層及び/又は被覆層を形成した後に、塞孔層及び/又は被覆層を除去して受け面を形成する製造方法、又は予め受け面をカバーしておき、非受け面にのみ塞孔層及び/又は被覆層を形成する製造方法は、本発明に包含される。また、ガラス成形型11に限られず、同様の構造を備える他の部材、例えば、流下部33から流出する溶融ガラスを一旦受けてガラス成形型11へと搬送する中間部材の製造方法も、本発明に包含される。
このようにして製造されたガラス成形型11は、多孔体111の外表面のうち受け面114を除く非受け面119の一部又は全部に、多孔体111の細孔115を塞ぐ一層以上の塞孔層117と、この塞孔層117上に位置する被覆層113と、が形成された構造を備える。ガラス成形型11を使用するにつれ、熱等の影響で塞孔層117の一部又は全部が消失していく場合もあるが、この場合でも被覆層113が塞孔層117を充分に被覆しているため、気体漏出の抑制作用はほぼ不変である。このため、前述の方法で製造されたガラス成形型11は、被覆層113の一部又は全部が消失したとしても、本発明の範囲に包含される。
塞孔層117及び/又は被覆層113は、非受け面119の少なくとも一部に形成されていればよいが、気体の漏出をより完全に抑制できる点で、全部に形成されることが好ましい。ただし、費用対効果の観点では、非受け面119のうち受け面114を除く上面、及び側面といった外気に直接に触れる部分にのみ、塞孔層117及び/又は被覆層113を形成することも好ましい。
図示はしていないが、ガラス成形型11は、塞孔層117を形成する前に、非受け面119の一部又は全部の最表面を表面処理(例えば、切削、研削、研磨等)してなることが好ましい。これにより、表面処理の際に発生する細かい破片(例えばバリ等)が予め細孔115に充填され、隙間が低減されるので、塞孔層117による細孔115の塞孔が更に完全になりやすい。この方法で製造されたガラス成形型11は、一般的には、多孔体111と同じ素材からなる細かい破片が、細孔115に存在する構造を備えている。
同様に、ガラス成形型11は、被覆層113を形成する前に、塞孔層117の一部又は全部の最表面118を表面処理(例えば、切削、研削、研磨等)してなることが好ましい。これにより、表面処理の際に発生する細かい破片(例えばバリ等)が、細孔115に残る隙間に充填されるので、細孔115の塞孔が更に完全になりやすい。この方法で製造されたガラス成形型11は、特に限定されないが、一般的には、塞孔層117と同じ素材からなる細かい破片が、細孔115に存在する構造を備えている。
以上の表面処理は、特に限定されず、従来公知の方法で行ってよいが、作業性及び低費用の点で、バフ研磨等の研磨によって行うことが好ましい。また、表面処理は、非受け面119又は塞孔層117の少なくとも一部に関して行えばよいが、気体の漏出をより完全に抑制できる点で、全部に関して行うことが好ましい。ただし、費用対効果の観点では、非受け面119又は塞孔層117のうち上面及び側面といった外気に直接に触れる部分にのみ、表面処理を行うことも好ましい。
(多孔体)
多孔体111は、少なくとも受け面を構成していればよいが、本実施形態では、受け面以外の上面の他、側面及び底面も構成している。これにより、多孔体111の内面側、具体的には多孔体111で囲まれた空所112に供給された気体は、多孔体111を通ってガラス成形型11の外部へと導出されようとする。ここで、前述のように、非受け面119の一部又は全部に関して、細孔115を塞孔層117で塞いだうえで、更に塞孔層117の最表面118を被覆層113で被覆したので、気体は、非受け面119からの漏出を抑制されて、受け面114から噴出する。なお、多孔体111の素材としては、ステンレス鋼、多孔質カーボン等が挙げられる。
多孔体111の細孔115の直径は、気体の噴出方向が均等になり、溶融ガラスの姿勢が安定する結果、均一な形状のガラス塊を製造できる点で、狭い分布を有することが好ましい。具体的には、細孔容積の80%以上が、細孔115の直径の容積基準のモード径の−50%〜+50%の範囲に含まれることが好ましく、より好ましくは−45%〜+45%の範囲、最も好ましくは−40%〜+40%の範囲である。なお、細孔115の直径は、水銀ポロシメータにより測定でき、細孔容積は水銀の圧入量として算出される。細孔115の直径は、水銀を圧入する際に加えられた圧力に基づいて、Washburnの式を用いて算出してよく、モード径は、細孔の容積(体積)を基準として得た値である。ただし、本発明の方法で製造されるガラス成形型11は、径が比較的大きい細孔も充分に被覆されるため、比較的直径の分布が広い多孔体111を用いても、気体の漏出を抑制できる点で有利である。
多孔体111の細孔115の容積基準のモード径は、気体の噴出量を確保できる点及び溶融ガラスの姿勢を安定化しやすい点で、10μm以上であることが好ましく、より好ましくは20μm以上、最も好ましくは40μm以上である。また、モード径の上限は、溶融ガラスを充分に浮上できるよう適宜設定されてよい。
多孔体111の気孔率は、気体の噴出量を確保できる点及び溶融ガラスの姿勢を安定化しやすい点で、20%以上であることが好ましく、より好ましくは25%以上、最も好ましくは30%以上である。また、多孔体111の気孔率の上限は、溶融ガラスを充分に浮上できるよう適宜設定されてよい。
なお、気孔率は、以下の式で表わされる。
気孔率(%)=(真密度−嵩密度)/真密度×100
(式中、真密度及び嵩密度は、水銀ポロシメータを用いて得られた値である)
(塞孔層)
塞孔層117は、特に限定されないが、樹脂又は有機溶剤を含む非金属材料を含むことが好ましい。これらの材料は、粘度や粒子径を容易に変化できるため、細孔115の径に応じて適切化することにより、細孔115をより充分に塞ぐことができる。なお、非金属材料は、金属を含む材料を除く任意の材料を指す。
樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル及びPET等のポリエステル等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂及びウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、シリコンゴム並びにゴム状の液体シール材が挙げられる。
有機溶剤としては、特に限定されないが、アルコール、アセトン、及びヘキサン等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
ただし、塞孔層117の素材は、非金属材料に限定されず、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ta、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、及びIrからなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含んでもよい。これらの金属元素を含むことにより、流動温度が高いので、後述の金属メッキ処理を好適に行うことができる。
以上の塞孔材は、被覆層113を金属メッキ処理で形成する場合には、その流動温度が前記金属メッキ処理の温度よりも高いことが好ましい。これにより、金属メッキ処理中に塞孔層117が流動して細孔115から離脱するような事態を抑制できる。そこで、金属メッキ処理の温度に応じて、適切な流動温度を有する塞孔材を適宜選択することが好ましい。
なお、塞孔層の形成手順は、特に限定されず、用いる塞孔材の種類や状態に応じて適宜設定されてよい。例えば、樹脂を含む非金属材料の場合には、ある程度軟化した状態で塞孔材を細孔115に塗りこめばよく、有機溶剤を含む非金属材料の場合には、塞孔材を非受け面119の最表面に塗布すればよく、金属材料の場合には、プラズマ溶射、CVD、ロウ付け等をすればよい。このような手順を容易化できる点で、塞孔材は、特に限定されないが、半固体又は液体であることが好ましい。
(被覆層)
被覆層113は、特に限定されないが、気体漏出の抑制を長期間に亘って維持できるよう、耐熱性やガラスへの安定性に優れるAl、Ti、Cr、及びNiからなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含むことが好ましい。具体的には、Al、Ti、Cr、及びNi等の金属単体でもよいし、これらの金属元素を含む合金であってもよい。
これら金属元素を含む材料を用いる場合、プラズマ溶射、化学的蒸着法(CVD)、物理蒸着法(PVD)、又は金属メッキ処理によって、被覆層113を形成できる。このうち、加工及び被覆層113の薄膜化が容易である点で、金属メッキ処理が好ましい。各処理の具体的な手順は常法に従ってよい。なお、前述のように、塞孔材の素材は、その流動温度が各処理の温度よりも高いことが好ましい。
<製造方法>
本発明は、以上のガラス塊製造装置1を用い、連結パイプ15から気体を供給して、受け面114から噴出させ、この気体が噴出する受け面114の上に、溶融ガラス供給装置30から溶融ガラスを供給し、この溶融ガラスをガラス塊へと成形する工程を有するガラス成形体の製造方法も包含する。この方法では、非受け面119からの漏出をより確実に抑制されるので、連結パイプ15からの気体供給量が比較的少なくても受け面114からの気体の噴出量を充分に確保できる。このため、表面粗度の低い高品質のガラス成形体を、安価且つ安定的に製造できる。従って、ガラス塊を固化することで、ガラスプリフォームを製造することも好ましい。
以上の製造方法で製造されるガラスプリフォームは、低い表面粗度を有するため、光学素子等の素材として有用である。また、ガラスプリフォームをプレス成形してなる光学素子も本発明に包含される。ただし、ガラス塊からガラスプリフォームを経ずに成形されたガラス成形体も、光学素子として同様に有用であり、本発明に包含される。そして、本発明は、これらの光学素子を用いた光学機器も包含するものである。
<実施例1>
多孔体の細孔の容積基準のモード径が20μm以上40μm以下である多孔体を、アセトンを含む液体シール材(塞孔材)に2時間に亘って浸漬した。この多孔体を25℃で24時間に亘り乾燥させることで、多孔体全体に関して、細孔を塞孔材で塞いで一層の塞孔層を形成した。次に、塞孔層を備える多孔体に、常法に従って硬質クロムでメッキ処理を施すことで、多孔体全体の塞孔層の最表面に被覆層を形成した。その後、多孔体の上面に部分球面状の凹部を設けて受け面を形成し、図3に示すように多孔体の内側をくりぬいて空所を形成することで、ガラス成形型を製造した。
<実施例2>
多孔体の表面全体にNiをロウ付けし、多孔体全体に一層の塞孔層を形成し、この塞孔層の最表面をバフ研磨した後、常法に従って硬質クロムでメッキ処理を施すことで、塞孔層の最表面に被覆層を形成した点を除き、実施例1と同様の手順でガラス成形型を製造した。
<実施例3>
塞孔層の最表面をバフ研磨する工程を行わなかった点を除き、実施例2と同様の手順でガラス成形型を製造した。
(比較例)
塞孔層の形成を行わず、多孔体に直接メッキ処理を施した点を除き、実施例1と同様の手順でガラス成形型を製造した。
[評価]
実施例1〜3及び比較例で製造したガラス成形型の空所に、元圧0.1MPaの空気を1.0L/分の量で供給し、このときの受け面からの噴出量を計測した。その結果、実施例1のガラス成形型での噴出量は0.95L/分、実施例2のガラス成形型での噴出量は0.90L/分、実施例3のガラス成形型での噴出量は0.8Lである一方、比較例のガラス成形型での噴出量は0.5L/分であった。これにより、多孔体の表面に塞孔層を形成しないと、供給量の約半分が非受け面から漏出するのに対して、多孔体の表面に塞孔層を形成することで、非受け面からの漏出が高度に抑制されることが分かった。また、受け面からの噴出量が、実施例3よりも実施例2の方が高かったことから、塞孔層の最表面を表面処理することで、非受け面からの漏出を抑制する効果がより向上することも分かった。
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
1 ガラス塊製造装置
10 ガラス成形装置
11 ガラス成形型
14 気体パイプ(気体供給手段)
15 連結パイプ(気体供給手段)
30 溶融ガラス供給装置
111 多孔体
112 空所
113 被覆層
114 受け面
115 細孔
117 塞孔層
118 最表面
119 非受け面

Claims (19)

  1. 気体が噴出可能な受け面の上に溶融ガラスを受けて成形するガラス成形型であって、
    少なくとも前記受け面は、多孔体からなり、
    前記多孔体の外表面のうち前記受け面を除く非受け面の一部又は全部に関して、前記多孔体の細孔を塞孔材で塞いで一層以上の塞孔層を形成し、この塞孔層の最表面に被覆層を形成してなるガラス成形型。
  2. 前記塞孔層を形成する前に、前記非受け面の一部又は全部の最表面を表面処理してなる請求項1記載のガラス成形型。
  3. 前記被覆層を形成する前に、前記塞孔層の一部又は全部の最表面を表面処理してなる請求項1又は2記載のガラス成形型。
  4. 気体が噴出可能な受け面の上に溶融ガラスを受けて成形するガラス成形型であって、
    少なくとも前記受け面は、多孔体からなり、
    前記多孔体の外表面のうち前記受け面を除く非受け面の一部又は全部に、前記多孔体の細孔を塞ぐ一層以上の塞孔層と、この塞孔層上に位置する被覆層と、が形成されているガラス成形型。
  5. 前記塞孔層は、樹脂又は有機溶剤を含む非金属材料を含む請求項1から4いずれか記載のガラス成形型。
  6. 前記塞孔層は、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ta、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、及びIrからなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含む請求項1から5いずれか記載のガラス成形型。
  7. 前記被覆層は、Al、Ti、Cr、及びNiからなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含む請求項1から6いずれか記載のガラス成形型。
  8. 前記多孔体の細孔の容積基準のモード径は、10μm以上である請求項1から7いずれか記載のガラス成形型。
  9. 気体が噴出可能な受け面の上に溶融ガラスを受けて成形するガラス成形型の製造方法であって、
    少なくとも前記受け面を多孔体で構成し、
    前記多孔体の外表面のうち前記受け面を除く非受け面の一部又は全部に関して、前記多孔体の細孔を塞孔材で塞いで一層以上の塞孔層を形成し、この塞孔層の最表面に被覆層を形成する工程を有する製造方法。
  10. 前記塞孔層を形成する前に、前記非受け面の一部又は全部の最表面を表面処理する工程を有する請求項9記載の製造方法。
  11. 被覆層を形成する前に、前記塞孔層の一部又は全部の最表面を表面処理する工程を有する請求項9又は10記載の製造方法。
  12. 前記被覆層の形成は、金属メッキ処理によって行う請求項9から11いずれか記載の製造方法。
  13. 前記塞孔材として、その流動温度が前記金属メッキ処理の温度よりも高いものを用いる請求項12記載の製造方法。
  14. 請求項1から8いずれか記載のガラス成形型又は請求項9から13いずれか記載の製造方法で製造されるガラス成形型と、前記多孔体の内面側に気体を供給し、前記受け面から噴出させる気体供給手段と、を備えるガラス成形装置。
  15. 請求項14記載のガラス成形装置と、前記受け面に溶融ガラスを供給する溶融ガラス供給装置と、を備えるガラス塊製造装置。
  16. 請求項15記載のガラス塊製造装置を用い、
    前記気体供給手段から気体を供給して、前記受け面から噴出させ、
    前記気体が噴出する受け面の上に、前記溶融ガラス供給装置から溶融ガラスを供給し、
    前記溶融ガラスをガラス塊へと成形する工程を有するガラス成形体の製造方法。
  17. 前記ガラス塊を固化することで、ガラスプリフォームを製造する工程を更に有する請求項16記載の製造方法。
  18. 請求項16又は17記載の製造方法で製造されるガラス成形体をプレス成形してなる光学素子。
  19. 請求項18記載の光学素子を用いた光学機器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN103203447A (zh) * 2013-04-19 2013-07-17 常熟市精工模具制造有限公司 一种玻璃模具模底的铸造方法
WO2024075593A1 (ja) * 2022-10-06 2024-04-11 株式会社ニコン ガラスの製造装置、ガラス、光学系、光学装置、及びガラスの製造方法

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