以下に、本発明にかかる導電性接触子ホルダおよび導電性接触子ユニットを実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」と称する)を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面は模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、それぞれの部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットについて説明する。本実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットは、半導体集積回路等の所定の回路構造に対して電気信号の入出力、電力供給およびアース電位供給を行うためのものであり、特に安定したアース電位供給を行うため、アース電位供給を行うアース用導電性接触子と、導電性材料で形成された導電性接触子ホルダとを電気的に接続させた構成を有する。
図1は、本実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットの構造を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットは、半導体集積回路1に供給する信号の生成等を行う回路を備えた回路基板2と、回路基板2上に配置され、所定の開口部(図1では図示省略)を備えた導電性接触子ホルダ3と、導電性接触子ホルダ3の開口部内に収容される導電性接触子4とを備える。また、使用の際に半導体集積回路1の位置ずれが生じるのを抑制するためのホルダ部材5が回路基板2上かつ導電性接触子ホルダ3の外周に配置されている。
回路基板2は、検査対象の半導体集積回路1の電気的特性を検査するための検査回路を備える。また、回路基板2は、内蔵する回路を導電性接触子4に対して電気的に接続するための電極(図1では図示省略)を導電性接触子ホルダ3との接触面上に配置した構成を有する。
導電性接触子ホルダ3は、導電性接触子4を収容するためのものである。具体的には、導電性接触子ホルダ3は、金属等の導電性材料によって形成されたホルダ基板およびホルダ基板表面の必要な領域を被覆する絶縁部材とを備える。そして、ホルダ基板は、導電性接触子4の配設場所に対応した領域に開口部が形成され、かかる開口部に導電性接触子4を収容する構造を有する。
導電性接触子4は、回路基板2内に備わる回路と、半導体集積回路1との間を電気的に接続するためのものである。導電性接触子4は、半導体集積回路に対して供給する信号の種類等に応じて3パターンに大別され、具体的には、半導体集積回路1に対して電気信号を入出力するための信号用導電性接触子と、半導体集積回路1に対してアース電位を供給するアース用導電性接触子と、半導体集積回路1に対して電力を供給する給電用導電性接触子とを有する。なお、以下においては信号用導電性接触子、アース用導電性接触子および給電用導電性接触子を総称する際に導電性接触子と称し、個々について言及する際にはそれぞれの名称を用いることとする。
図2は、導電性接触子ホルダ3と導電性接触子4の詳細な構成について示す模式図である。図2に示すように、導電性接触子ホルダ3は、導電性材料によって形成される第1基板6および第2基板7をネジ部材を用いて接合した構成を有すると共に第1基板6および第2基板7を貫通する第1開口部8、第2開口部9および第3開口部10が形成されたホルダ基板11と、第1開口部8および第3開口部10の内面およびホルダ基板11の表面を被覆する絶縁部材13および絶縁部材14とを備える。
ホルダ基板11(第1基板6、第2基板7)は、導電性を有する材料によって形成され、導電性接触子ホルダ3の母材として機能する。具体的には、ホルダ基板11は、導電性金属または導電性樹脂によって形成されており、後述するアース機能および電界遮蔽機能に関して効果を奏する観点からは、体積固有抵抗が1010Ω・m以下の導電性材料を用いることが好ましい。
第1開口部8、第2開口部9および第3開口部10は、それぞれ半導体集積回路1に対して信号の入出力を行う信号用導電性接触子15、アース電位供給を行うアース用導電性接触子16および電力供給を行う給電用導電性接触子17を収容するためのものである。これらの開口部は、それぞれ円柱状かつホルダ基板11を貫通するよう形成されており、かかる形状に形成されることによって収容する導電性接触子の位置決め手段およびガイド手段としての機能を果たしている。第1開口部8等は、それぞれ第1基板6および第2基板7に対してエッチング、打抜き成形を行うことや、レーザ、電子ビーム、イオンビーム、ワイヤ放電等を用いた加工を行うことによって形成される。
第1開口部8および第3開口部10は、その内径が内面に形成される絶縁部材13、14の分だけ第2開口部9の内径よりも大きくなるよう形成されている。これは、第2開口部9はガイド機能およびアース機能を発揮するためにアース用導電性接触子16の外径とほぼ等しくなるよう形成される。一方で、第1開口部8および第3開口部10は、絶縁部材13、14を介して信号用導電性接触子15および給電用導電性接触子17を収容する機能を有するためである。
また、第1開口部8、第2開口部9および第3開口部10は、導電性接触子の抜け止めのためにそれぞれホルダ基板11の上下の外表面近傍において内径が狭まるよう形成されている。後述するように導電性接触子は抜け止めのための突起部を有していることから、上下の表面近傍においてかかる突起部と開口部とを当接させるよう内径を狭める構成としている。なお、上下両方の表面近傍で内径を狭める構成を採用していることから、作製時に導電性接触子を第1開口部8等に収容可能にするため、ホルダ基板11は、第1基板6と第2基板7とを貼り合わせて形成する構造を採用している。
絶縁部材13、14は、第1開口部8および第3開口部10の内面に形成されることによって、信号用導電性接触子15および給電用導電性接触子17と、ホルダ基板11とを電気的に絶縁する機能を有する。また、絶縁部材13、14は、ホルダ基板11の外表面上にも形成されることによって、半導体集積回路1および回路基板2と、ホルダ基板11とを電気的に絶縁する機能を有する。本実施の形態1において、絶縁部材13、14を構成する材料および絶縁部材13、14の厚み等については特に制限はなく、絶縁機能を十分果たし得るものであれば任意の材料および厚みを有するものを用いて絶縁部材13、14を構成することが可能である。なお、絶縁部材13、14は、例えばコーティング等により皮膜状に形成され、コーティングの具体例としては、カレンダー加工、押出し、浸漬、スプレー、スプレッド、電着などを用いることが可能である。また、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等を用いて絶縁部材13、14を形成することとしても良い。さらには、絶縁部材13、14をアルマイト等の酸化膜によって形成することとしても良い。
次に、導電性接触子の構造について説明する。信号用導電性接触子15、アース用導電性接触子16および給電用導電性接触子17は、果たす機能は異なるものの具体的構造に関しては同様とみなすことが可能なため、以下では代表して信号用導電性接触子15の構造について説明を行う。
信号用導電性接触子15は、回路基板2に備わる電極と電気的に接続するための針状部材19と、使用時に半導体集積回路1に備わる接続用電極と電気的に接続するための針状部材20と、針状部材19と針状部材20との間に設けられ、針状部材19、20間を電気的に接続すると共に、信号用導電性接触子15を長軸方向に伸縮させるためのバネ部材21とを備える。針状部材19、針状部材20およびバネ部材21は、それぞれの軸線が第1開口部8の軸線と一致するよう第1開口部8に収容され、かかる軸線方向に移動可能な構成を有する。
針状部材19は、回路基板2の表面上に配置される電極と電気的に接続するためのものである。具体的には、針状部材19は、回路基板2側に先鋭端を有し、かかる先鋭端が回路基板2に備わる電極と接触する構成を有する。針状部材19はバネ部材21の伸縮作用によって軸線方向に移動が可能であることから、回路基板2に備わる電極の凹凸に対応して最適な状態で接触すると共にバネ部材21による伸張方向の押圧力によって、接触抵抗を低減した状態で電極と接触することが可能である。
また、針状部材19は、図2にも示すように軸線と垂直な方向に突起した突起部を有する。上述したように、ホルダ基板11の下側表面近傍において第1開口部8の内径は狭まるよう形成されることから、針状部材19が下側に移動するに従って上記突起部と第1開口部8の内面に設けられた絶縁部材13とが当接し、針状部材19が抜け止めされるようになっている。
針状部材20は、本実施の形態1にかかる導電性接触子ユニット使用時に半導体集積回路1に備わる接続用電極に対して電気的に接続するためのものである。具体的には、針状部材20は、半導体集積回路1側の端部において接続用電極と接触する構成を有する。また、針状部材20は、針状部材19と同様にバネ部材21の伸縮作用によって軸線方向に移動可能であると共に、軸線と垂直な方向に突起した突起部を有することによって抜け止めされた構造を有する。以上の構成を有することで、導電性接触子は、回路基板2に備わる電極と半導体集積回路1に備わる接続用電極との間を電気的に接続する。
次に、本実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットの利点について説明する。図3は、本実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットの使用時において、導電性接触子と導電性接触子ホルダとの間における電気的相互作用について示す模式図である。なお、図3では、導電性接触子ユニットの利点の説明を容易にするため、信号用導電性接触子15aおよび信号用導電性接触子15bが隣接した構成について示している。
まず、アース用導電性接触子16における電気的作用について説明する。本実施の形態1におけるアース用導電性接触子16は、電極22cを介して回路基板2からの電位を半導体集積回路1に供給するのみならず、ホルダ基板11からの電位をも受けて半導体集積回路1に対してアース電位を供給するように構成されている。すなわち、図2にも示すように、ホルダ基板11は、アース用導電性接触子16を収容する第2開口部9の内面には絶縁部材が形成されておらず、第2開口部9の内面は、アース用導電性接触子16の外周面、具体的には図3に示すように、収縮動作に伴ってたわんだバネ部材21と直接接触する構成を有する。そして、上述のようにホルダ基板11は導電性材料によって形成されることから、アース用導電性接触子16とホルダ基板11とは電気的に接続されることとなる。従って、アース用導電性接触子16とホルダ基板11との間では内部電荷が自由に行き来することが可能となることから、アース用導電性接触子16が供給する電位と、ホルダ基板11の電位とは等しい値となる。
アース用導電性接触子16は、半導体集積回路1の小型化に伴いきわめて微小な構造を有する一方、ホルダ基板11は導電性接触子を数百本〜数千本の単位で収容することが可能な程度の容積を有する。従って、ホルダ基板11にとって個々の導電性接触子は無視しうる程度の大きさしか有さず、かかる微小な導電性接触子から与えられる電荷によって生じるホルダ基板11の電位変動値はほぼ0とみなすことが可能である。このため、アース用導電性接触子16に対して半導体集積回路1から所定の電荷が流入した場合には、かかる電荷は速やかにホルダ基板11に放出・拡散され、アース用導電性接触子16およびホルダ基板11の電位はアース電位に維持されることとなる。以上のことから、アース用導電性接触子16が導電材料によって形成されるホルダ基板11と電気的に接触することによってアース用導電性接触子16の電位は安定的にアース電位に維持されることとなる。
また、アース用導電性接触子16の外周面全体がホルダ基板11に形成される第2開口部9に接触する構成を有することによる利点も存在する。すなわち、アース用導電性接触子16は、図2等でも示すように全体として円柱状に形成されており、軸線に垂直な断面の面積と比較して外周面の面積が著しく大きくなる構造を有する。従って、アース用導電性接触子16が外周面を介してアース電位の供給を受ける構成とすることで、アース電位供給源(すなわち、ホルダ基板11)との接触面積を増大させることが可能となる。この結果、本実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットでは、アース電位供給源とアース用導電性接触子16との間の電気的な接触抵抗が低減され、アース用導電性接触子16に対して効率良くアース電位供給を行えるという利点を有することとなる。
次に、信号用導電性接触子15a、15bおよびこれらの近傍における電気的作用について説明する。信号用導電性接触子15a、15bは、それぞれ回路基板2内で生成された電気信号を電極22a、22bから受け取り、受け取った電気信号を半導体集積回路1に対して入出力するためのものである。ここで、信号用導電性接触子15aを電気信号が通過する際に、通過する電気信号に対応した電磁波が信号用導電性接触子15a内部で発生し、外部に放射される。かかる電磁波が信号用導電性接触子15bに入力された場合には、信号用導電性接触子15bが入出力する電気信号の波形に乱れが生じる等の弊害が存在することから、特に導電性接触子間の間隔が狭くなる構造の場合には、かかる電磁波を遮蔽する機構が必要となる。
これに対して、本実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットでは、信号用導電性接触子15a、15bに対して、それぞれ絶縁部材13および絶縁部材14を介して導電性を有するホルダ基板11が配置された構成を有しており、かかるホルダ基板11に電磁波を遮蔽する機能を果たさせることが可能である。上述したようにホルダ基板11の電位はほぼアース電位に、すなわち定電位に維持されているものとみなすことが可能である。従って、信号用導電性接触子15a、15bで生じた電磁波は、いずれもホルダ基板11によって吸収されることとなり、信号用導電性接触子15a、15bのいずれか一方で生じた電磁波が他方に伝わることを抑制することが可能である。従って、本実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットは、信号用導電性接触子間の間隔が狭まった構造となる場合であっても、一方で生じる電磁波によって他方の動作が受ける影響を許容しうるレベルにまで抑制することが可能である。
また、導電性接触子以外の原因によって電磁波が生じた場合も同様である。例えば、本実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットの近傍に携帯電話等の電磁波発生源が存在した場合であっても、導電性接触子の周囲に位置するホルダ基板11によって導電性接触子に対して電磁波が流入することを抑制することが可能である。
なお、かかる電磁波の遮蔽機能に関しては、信号用導電性接触子15のみならず、給電用導電性接触子17に関しても同様に機能する。すなわち、給電用導電性接触子17内を通過する電力に起因して電磁波が生じた場合であってもホルダ基板11の遮蔽機能によって他の導電性接触子に悪影響を及ぼすことが抑制される一方、給電用導電性接触子17以外で生じた電磁波についても、ホルダ基板11の遮蔽機能によって給電用導電性接触子17に悪影響を及ぼすことが抑制されている。
さらに、ホルダ基板11を金属材料によって形成することによる利点も存在する。まず、従来のように、ホルダ基板を絶縁性樹脂材料によって形成した場合には、半導体集積回路1の熱膨張係数とホルダ基板11の熱膨張係数とが必ずしも一致せず、温度変化に応じて半導体集積回路1に備わる接続用電極と、ホルダ基板11に収容される導電性接触子との位置関係にずれが生じるという問題が存在した。
しかしながら、ホルダ基板11を金属材料、例えばインバー材、コバール材(R)等の材料を用いて形成することとした場合、ホルダ基板11の熱膨張係数を半導体集積回路1の母材であるシリコンの熱膨張係数と近似させることが可能である。すなわち、適切な金属材料を用いて半導体集積回路1等の所定回路構造の熱膨張係数に適合したホルダ基板11を形成することで、温度変化にかかわらず安定して使用可能な導電性接触子ホルダおよび導電性接触子ユニットを実現することが可能という利点を有する。
また、金属材料を用いてホルダ基板11を形成した場合には、外気の影響による形状変化を抑制できるという利点を有する。すなわち、金属材料を用いた場合には、外気中に存在する水分の吸収によってホルダ基板11が伸縮することを抑制できる他、外気中の所定成分との間に生じる化学反応による永久的な寸法変化の発生を抑制することが可能である。従って、本実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットは、外気の影響による形状変化が抑制され、接続用電極と導電性接触子との位置関係にずれが生じることを防止できるという利点を有する。
さらには、金属材料を用いることによって、ホルダ基板11の強度を向上させることが可能である。かかる強度向上により、本実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットは、ホルダ基板11に多数の開口部を設けて導電性接触子を収容した場合であっても、導電性接触子の反力によってホルダ基板11に反りが生じることを防止できるという利点を有する。
以上のように、本実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットでは、導電性接触子を収容する導電性接触子ホルダ3の母材を導電材料によって形成されたホルダ基板11とすることで、アース用導電性接触子16によるアース電位供給機能の効率化および信号用導電性接触子15および給電用導電性接触子17に関する電磁波の遮蔽機能を果たすことが可能である。これらの機能はホルダ基板11の電位安定性に大きく依存することから、ホルダ基板11の電位安定性を高めることで、アース電位供給機能および電磁波の遮蔽機能をより高めることが可能となる。
図4は、ホルダ基板11の電位安定性をさらに向上させることを目的とした導電性接触子ユニットの変形例について示す模式図である。図4に示す変形例では、ホルダ基板11は、ネジ部材25によって接続ケーブル26の一端と電気的に接続された構成を有し、接続ケーブル26の他端は、アース電位供給装置27に接続されている。
アース電位供給装置27は、定電位源等を内部に備え、接続ケーブル26を介してホルダ基板11に対してアース電位を供給する構成を有する。従って、ホルダ基板11の電位は、アース電位供給装置27によって外部から強制的にアース電位に維持されることとなり、電位をさらに安定させることが可能となる。従って、図4に示す変形例は、上述のアース用導電性接触子16のアース電位供給機能および電磁波の遮蔽機能をさらに向上させることができるという利点を有する。
また、アース用導電性接触子16のアース電位供給機能を向上させるため、アース用導電性接触子16の外周面上に、アース用導電性接触子16との接触面が平滑な導電部材を配置する構成を採用することも有効である。図5は、実施の形態1にかかる導電性接触子に対してかかる変更を施した変形例の部分的構成を示す模式図である。図5に示す変形例では、ホルダ基板28を構成する第1基板29および第2基板30に形成される第2開口部は、実施の形態1における第2開口部9よりも内径が大きくなるよう形成されている。そして、かかる第2開口部の内面とアース用導電性接触子16の外周面との間に導電性パイプ部材31、32を挿入した構成を有する。
導電性パイプ部材31、32は、それぞれ円筒形状を有したものが同軸的に配置され、かかる円筒形状の内面がアース用導電性接触子16の外周面と接触し、外面が第2開口部の内面に接触するよう配置されている。すなわち、導電性パイプ部材31、32は、第2開口部の内面に接触することでホルダ基板28の電位、すなわちアース電位を供給されると共に、アース用導電性接触子16の外周面と接触することで、アース用導電性接触子16に対してアース電位を供給する機能を有する。
導電性パイプ部材31、32は、例えば、白銅、りん青銅、黄銅、ステンレス等によって形成されたパイプ構造を母材とし、かかるパイプ構造の内面に金の薄板を貼り合わせた構造を有する。かかる構造は、例えば、あらかじめ白銅等の板状体に対して金の薄板を貼り合わせた後、金の薄板が内面になるよう丸めた上で細径パイプへと引いていくことによって形成される。なお、上記の構成以外であっても、パイプ構造の内面に金メッキ等を施すことによって導電性パイプ部材31、32を形成することとしても良い。
図5に示す変形例で導電性パイプ部材31、32を用いた理由について説明する。既に述べたように、実施の形態1にかかる導電性接触子ユニットでは、アース用導電性接触子16がホルダ基板に形成された第2開口部の内面と電気的に接続することによってアース電位供給を受ける構成を採用している。従って、実施の形態1では、図2にも示すように、アース用導電性接触子16が第2開口部9の内面に物理的に接触した状態で収容され、第2開口部9の内面との接触部分を介してアース電位の供給を受けると共に、アース用導電性接触子16は、第2開口部9の内面に接触した状態を維持しつつ伸縮動作を行うこととなる。
しかしながら、近年の半導体集積回路1の小型化に伴う導電性接触子の微小化によって、開口部の径はきわめて小さな値となることから、開口部の形成は容易ではない。また、かかる小径の開口部を形成した場合であっても、開口部の内面に微細な凹凸が生じることを防止することは困難である。従って、開口部の内面に直接導電性接触子を接触させる構成とした場合、導電性接触子の伸縮動作に対する抵抗および導電性接触子の外周面と開口部の内面との間における電気的な接触抵抗が増加するおそれが存在する。
このため、図5に示す変形例では、平滑な内面を有する導電性パイプ部材31、32を第2開口部とアース用導電性接触子16との間に挿入することとしている。かかる構成を有することで、本変形例では、アース用導電性接触子16の伸縮動作における動作抵抗が低減されると共に、アース用導電性接触子16の外周面上における電気的な接触抵抗が低減されるという利点を有する。
さらに別の変形例として、導電性接触子およびホルダ基板の構造を簡素化することも有効である。図6は、かかる変形例の構成を示す模式図である。図6に示す変形例では、信号用導電性接触子34、アース用導電性接触子35および給電用導電性接触子36のそれぞれがバネ部材33と、針状部材20とによって形成された構造を有する。具体的には、本変形例における導電性接触子は、回路基板2と接触する側に存在した針状部材を省略した構造を有し、回路基板2に備わる電極22との間の電気的接触はバネ部材33によって行われることとしている。
本変形例において、導電性接触子を図2の針状部材19に相当する部材を省略した構成としたのは次の理由に基づく。すなわち、図2の構成において針状部材19は、回路基板2に備わる電極構造と電気的に接触するための機能のみならず、軸線方向と垂直な方向に突起部を備えることで、下方向に関する導電性接触子の抜け止めを行う機能を果たすためのものであった。これに対して、導電性接触子ホルダと回路基板2とを密着させることで導電性接触子の抜け止めを行うことが可能であることから、図6に示す変形例では、図2に示す針状部材19に相当する部材を省略した構成を有する。従って、本変形例は、導電性接触子の構成部品の数を低減できると共に、構造を単純化することが可能という利点を有する。
また、本変形例にかかる導電性接触子ユニットは、針状部材19を省略した構成とすることで、ホルダ基板38を単一の板状体によって形成することが可能という利点も有する。すなわち、ホルダ基板38に形成される各開口部は、下側表面近傍において、抜け止めのために内径を狭める必要がなくなる。従って、図2の構成のように、導電性接触子を開口部内に収容する際に困難性が生じるといった問題はなく、ホルダ基板38の下面側から容易に導電性接触子を収容することが可能であり、2枚の基板によってホルダ基板を形成する必要がない。従って、本変形例ではホルダ基板38を単一の板状体によって構成することとしており、製造上の負担を低減することが可能である。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる導電性接触子ユニットについて説明する。本実施の形態2にかかる導電性接触子ユニットは、少なくとも信号用導電性接触子を備えた構成を有する。そして、本実施の形態2では、ホルダ基板に形成され、信号用導電性接触子を収容するための第1開口部の内面と、信号用導電性接触子の外周面との間に信号用導電性接触子における特性インピーダンスの値を補正するためのインピーダンス補正部材を配置した構成を有する。
図7は、本実施の形態2にかかる導電性接触子ユニットのうち、信号用導電性接触子15の近傍部分の部分的な構成を示す模式図である。なお、本実施の形態2にかかる導電性接触子ユニットにおいて、導電性接触子ホルダを除く各構成要素、例えば回路基板2、ホルダ部材5等は、以下で特に言及しない限り実施の形態1におけるものと同様の構造を有し、同様に動作するものとする。
図7に示すように、本実施の形態2にかかる導電性接触子ユニットは、信号用導電性接触子15を収容するための第1開口部52が形成された第1基板47および第2基板48によって構成されるホルダ基板49を備える。そして、本実施の形態2にかかる導電性接触子ユニットは、ホルダ基板49の上下の外表面上に絶縁部材50、51を備えると共に、第1開口部52の内面と信号用導電性接触子15との間にインピーダンス補正部材44、45を備えた構成を有する。
インピーダンス補正部材44、45は、所定の誘電率を有する誘電材料を円筒形状に形成したものであって、信号用導電性接触子15における特性インピーダンスの値を補正するためのものである。具体的には、インピーダンス補正部材44、45は、誘電材料が有する誘電率と、円筒形状の外径とを調整することによって、信号用導電性接触子15における特性インピーダンスを、例えば半導体集積回路1の特性インピーダンスと一致するよう補正している。
インピーダンス補正部材44、45の構造と、信号用導電性接触子15における特性インピーダンスとの具体的関係について説明する。信号用導電性接触子15における特性インピーダンスZ
0の値は、インピーダンス補正部材44、45を構成する誘電材料の比誘電率ε
rと、円筒形状の外径d
2と、信号用導電性接触子15の外径d
1とを用いて、
と与えられる。
例えば、インピーダンス補正部材44、45の誘電材料としてポリエチレンを使用し、信号用導電性接触子15の外径を0.4mm、使用する半導体集積回路1の特性インピーダンスを50Ωとした構成に関して、信号用導電性接触子15における特性インピーダンスの値を半導体集積回路1と一致させる場合を考える。ポリエチレンの比誘電率は0.23であることから、これらの値を(1)式に代入することによって、インピーダンス補正部材44、45の外径を1.4mmとすれば良いことが導かれる。従って、以上の構成を実現することによって、信号用導電性接触子15における特性インピーダンスの値を50Ωに補正することが可能となる。
次に、本実施の形態2において、インピーダンス補正部材44、45を用いて信号用導電性接触子15における特性インピーダンスの補正を行うことによる利点について説明する。一般に、交流信号を扱う電子回路においては、インピーダンスの異なる配線同士が接続する箇所において、異なるインピーダンス間の比に応じた量だけ信号が反射し、信号の伝搬が妨げられることが知られている。このことは使用する半導体集積回路1と信号用導電性接触子15との関係においても同様であって、半導体集積回路1の特性インピーダンスと、信号用導電性接触子15における特性インピーダンスとが大きく異なる値を有する場合には、互いに電気的に接続されているにもかかわらず、電気信号の入出力が困難になるという問題を生じることとなる。
また、特性インピーダンスの相違に起因して接続箇所において生じる信号反射の程度は、信号用導電性接触子15の電気的な長さ(電気信号の周期に対する伝搬経路の長さ)が大きくなるにつれて顕在化することが知られている。すなわち、本実施の形態2にかかる導電性接触子ユニットの場合は、半導体集積回路1の高速化、すなわち高周波数化に伴って電気信号の反射の程度が顕在化することとなる。従って、高周波数で駆動する半導体集積回路1に対応した導電性接触子ユニットを作製する際には、信号用導電性接触子15の特性インピーダンスの値を半導体集積回路1のものと一致させる、いわゆるインピーダンス整合を精度良く行うことが重要となる。
しかしながら、インピーダンス整合を行う観点から信号用導電性接触子15の形状等を変化させることは容易ではない。信号用導電性接触子15は、その外径が1mm以下に抑制されると共に針状部材19、20およびバネ部材21によって構成される複雑な形状を有する等の制限が本来的に与えられることから、インピーダンス整合に適した形状に変更することは設計上および製造上の観点から困難となるためである。
従って、本実施の形態2では、信号用導電性接触子15の構造を変更するのではなく、信号用導電性接触子15の周囲に誘電材料によって形成したインピーダンス補正部材44、45を配置することによって特性インピーダンスの値を補正する構成を採用している。かかる構成を採用することで、信号用導電性接触子15の構造については従来のものを流用することが可能となり、設計上および製造上の増加を防止することが可能である。
また、インピーダンス補正部材44、45を新たに設けることによって設計上および製造上の負担が増大することはない。インピーダンス補正部材44、45は、円筒形状の部材が第1開口部52の内面上に形成された構造を有し、例えば第1開口部52を形成した後にCVD法等を用いて誘電材料を堆積させることによって形成される。CVD法等による誘電膜の堆積は既に微細加工の分野で広く利用されており、正確な膜厚制御等の技術は既に確立されていることから、インピーダンス補正部材44、45を容易に作製することが可能である。
以上のことから、本実施の形態2にかかる導電性接触子ユニットは、インピーダンス補正部材44、45を備えることによって、使用する半導体集積回路1との間で精度良くインピーダンス整合を行うことが可能であり、今後予想される半導体集積回路1のさらなる高速化にも対応した導電性接触子ユニットを実現することが可能である。また、インピーダンス補正部材44、45は、簡易な構成によって実現されることから、本実施の形態2にかかる導電性接触子ユニットは、製造コストを上昇させることなく、優れた特性を実現することが可能である。
図8は、本実施の形態2にかかる導電性接触子ユニットの全体構成の一例について示す模式図である。簡易な構成としては、図8に示すように、信号用導電性接触子15、アース用導電性接触子16および給電用導電性接触子17が収容されるそれぞれの開口部近傍の構成を同一のものとすることが好ましい。すなわち、それぞれの開口部において導電性接触子の機能に応じて異ならせることなく一律に形成することによって、製造上の負担を低減することが可能である。かかる構成とした場合であっても信号用導電性接触子15における特性インピーダンスの補正を行うことが可能である。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる導電性接触子ユニットについて説明する。本実施の形態3にかかる導電性接触子ユニットは、実施の形態1、2で説明した利点を享受しつつ、さらに量産性および製造誤りに基づく弊害の防止等の点で利点を有する構造を採用している。
図9は、実施の形態3にかかる導電性接触子ユニットの構成を示す模式図である。本実施の形態3にかかる導電性接触子ユニットは、図9に示すように、導電性接触子ホルダ54と、導電性接触子ホルダ54に収容された信号用導電性接触子55、アース用導電性接触子56および給電用導電性接触子57とを備える。なお、図9において回路基板2およびホルダ部材5の図示を省略しているが、本実施の形態3にかかる導電性接触子ユニットは、実施の形態1、2と同様にこれらの構成要素を備えることはもちろんである。
導電性接触子ホルダ54は、アース用導電性接触子56等を収容するためのものである。具体的には、導電性接触子ホルダ54は、第1開口部58、第2開口部59および第3開口部60が形成されたホルダ基板61と、第1開口部58および第3開口部60の双方にそれぞれ挿入された第1絶縁性パイプ部材63および第2絶縁性パイプ部材64と、第2開口部59に挿入された第1導電性パイプ部材65および第2導電性パイプ部材66とを備える。
ホルダ基板61は、導電性材料によって形成されると共に、形成された開口部内に導電性接触子を収容するためのものである。具体的には、ホルダ基板61は、第1開口部58に信号用導電性接触子55を収容し、第2開口部59にアース用導電性接触子56を収容し、第3開口部60によって給電用導電性接触子57を収容する。
ホルダ基板61は、実施の形態1、2と同様に導電性材料によって形成された複数の基板を重ね合わせた構造を有する。具体的には、ホルダ基板61は、それぞれ導電性材料によって形成された第1基板67および第2基板68によって形成される。第1基板67は、第1開口部58、第3開口部60の形成領域に対応した領域に第4開口部70a、70bが形成され、第2開口部59の形成領域に対応した領域に第5開口部72が形成される。また、第2基板68は、第1開口部58、第3開口部60の形成領域に対応した領域に第6開口部73a、73bが形成され、第2開口部59の形成領域に対応した領域に第7開口部74が形成される。そして、第1基板67と第2基板68とは、第4開口部70aと第6開口部73a、第4開口部70bと第6開口部73bおよび第5開口部72と第7開口部74とがそれぞれ同軸状に連通するよう互いに接触した状態で固定されることによってホルダ基板61を形成している。
なお、第1基板67および第2基板68によって構成されるホルダ基板61は、実施の形態1、2と同様にアース電位を供給する機能も有することから、第1基板67と第2基板68との間の電気的な接触抵抗はなるべく低いことが好ましい。このため、第1基板67および第2基板68が互いに接触する接触面に関して、表面を平滑に加工したり、ニッケルメッキ+金メッキ等の表面処理を行うことが好ましい。
第1絶縁性パイプ部材63および第2絶縁性パイプ部材64は、テフロン(R)等の絶縁性材料によって形成されたパイプ部材であり、信号用導電性接触子55および給電用導電性接触子57とホルダ基板61との間の電気的な絶縁性を確保するためのものである。具体的には、第1絶縁性パイプ部材63は、第4開口部70a、70bに挿入され、第2絶縁性パイプ部材64は、第6開口部73a、73bに挿入される。そして、それぞれの中空部分に信号用導電性接触子55および給電用導電性接触子57を収容することによって、信号用導電性接触子55および給電用導電性接触子57とホルダ基板61との間の電気的な絶縁性を確保している。
なお、第1絶縁性パイプ部材63および第2絶縁性パイプ部材64について、テフロン(R)を材料として形成することとした場合には、様々な利点を享受することが可能である。すなわち、テフロン(R)は加工が容易であると共に、比誘電率εrが2.1という低い値を有する。従って、他の材料を使用した場合と比較して、同一の特性インピーダンスを実現する構成において、(1)式にも示したように、信号用導電性接触子55の外径d1の値を大きくすることが可能である。すなわち、一般的に高周波電気信号を伝送する際には特性インピーダンスを50Ωに近づけることが要請されるが、かかる要請下であっても、テフロン(R)を材料として第1絶縁性パイプ部材63等を形成した場合、信号用導電性接触子55の外径を大きくすることが可能となる。そして、信号用導電性接触子55の外径を大きくすることによって、信号用導電性接触子55の電気抵抗を低減することが可能であるため、テフロン(R)を材料として第1絶縁性パイプ部材63等を形成することによって、伝送信号の減衰を抑制できるという利点を享受することとなる。
また、テフロン(R)によって形成した第1絶縁性パイプ部材63等は、内面を平滑な面によって構成することが可能であることから、信号用導電性接触子55および給電用導電性接触子57の伸縮動作時における摺動抵抗をさらに低下させることが可能である。また、給電用導電性接触子57に関しては、(1)式の制約がないことから、ホルダ基板61との間の絶縁性を確保しうる範囲においてその内径を大きくすることが可能であり、外形を大きくすることによって大容量の駆動電力を供給することが可能である。
また、第1絶縁性パイプ部材63は、他の部分よりも大きな外径を有する抜け止めフランジ75が一端に形成されており、抜け止めフランジ75が第1基板67と第2基板68の境界側に位置する状態で第1基板67に挿入されている。同様に、第2絶縁性パイプ部材64も一端に抜け止めフランジ76が形成され、抜け止めフランジ76が第1基板67と第2基板68の境界側に位置する状態で第2基板68に挿入されている。
なお、第1絶縁性パイプ部材63および第2絶縁性パイプ部材64は、抜け止めフランジ75、76が形成された端部と反対側の端部において、内径が狭められた形状を有する。これは、実施の形態1、2と同様に、収容された信号用導電性接触子55および給電用導電性接触子57の抜け止めのためである。
第1導電性パイプ部材65および第2導電性パイプ部材66は、アース用導電性接触子56とホルダ基板61との電気的な接触を良好に保持するためのものである。具体的には、第1導電性パイプ部材65および第2導電性パイプ部材66は、導電性材料によって形成され、外面がホルダ基板61と接触し、内面がアース用導電性接触子56の少なくとも一部と接触するようホルダ基板61に挿入されている。
また、第1導電性パイプ部材65および第2導電性パイプ部材66は、第1絶縁性パイプ部材63等と同様に、一方の端部において他の部分よりも大きな外径を有する抜け止めフランジ77、78が形成されている。そして、第1導電性パイプ部材65は、抜け止めフランジ77が第1基板67と第2基板68の境界側に位置する状態で第1基板67に挿入され、第2導電性パイプ部材66は、抜け止めフランジ78が第1基板67と第2基板68の境界側に位置する状態で第2基板68に挿入されている。また、第1導電性パイプ部材65および第2導電性パイプ部材66は、アース用導電性接触子56の抜け止めのために、抜け止めフランジ77、78が形成された端部と反対側の端部において内径が狭められた形状を有する。
なお、本実施の形態3において、第1絶縁性パイプ部材63と第1導電性パイプ部材65、および第2絶縁性パイプ部材64と第2導電性パイプ部材66は、互いに異なる外形を有することとする。すなわち、第1絶縁性パイプ部材63等と第1導電性パイプ部材65等は、図9にも示すように抜け止めフランジ75、76の外径d3、d4は(d4>d3)となるよう形成され、パイプ部分の外径d5、d6は(d6>d5)となるよう形成されている。かかる構造を採用することにより、第1導電性パイプ部材65、第2導電性パイプ部材66は、それぞれ第5開口部72、第7開口部74に対して挿入が可能である一方で、第4開口部70a、第6開口部73aに対しては挿入することが困難となる。
次に、信号用導電性接触子55、アース用導電性接触子56および給電用導電性接触子57について簡単に説明する。これらの導電性接触子は、実施の形態1、2と同様の構造を有することとしても良いが、本実施の形態3では、特にアース用導電性接触子56に関して、アース特性を向上させた構造を有する。
具体的には、図9にも示すように針状部材79a、79bは、それぞれ第1導電性パイプ部材65、第2導電性パイプ部材66と接触するよう定められた外径のフランジ部80、81が形成された構成を有する。すなわち、本実施の形態3では、第1導電性パイプ部材65、第2導電性パイプ部材66との間の電気的接触のためにフランジ部80、81を新たに設けることとし、フランジ部80、81を介してホルダ基板61の電位を半導体集積回路1に対してアース電位として供給する構成を採用している。
なお、アース用導電性接触子56と第1導電性パイプ部材65、第2導電性パイプ部材66との間の電気的な接触抵抗を低減する観点からは、両者の接触面積が大きくなることが好ましい。このため、本実施の形態3では、フランジ部80、81の外径を可能な限り大きくすると共に、アース用導電性接触子56の伸縮動作に悪影響を及ぼさない程度にフランジ部80、81の収縮方向長さ(図9における縦方向)を大きくすることとしている。かかる工夫を施すことによって、本実施の形態3におけるアース用導電性接触子56は、ホルダ基板61からのアース電位を半導体集積回路1に対して高い効率で供給することが可能となり、半導体集積回路1のアース電位を安定化できる。また、アース用導電性接触子56の外表面上、例えばフランジ部80、81の外周上に接点復活剤等の電気的な接触抵抗を低減する材料を塗布した状態で組み込むことも有効である。これらの構成を採用することによって、半導体集積回路1に対して供給される信号が高周波化した場合であっても、信号伝送ロスが増大することのない導電性接触子ユニットを実現することが可能である。
次に、本実施の形態3にかかる導電性接触子ユニットの利点について説明する。まず、本実施の形態3では、第1基板67に挿入する第1絶縁性パイプ部材63、第1導電性パイプ部材65と、第2基板68に挿入する第2絶縁性パイプ部材64、第2導電性パイプ部材66とを備えた構成を有する。これらのパイプ部材を備え、導電性接触子をパイプ部材の中空部に挿入する構成を採用することによって、信号用導電性接触子55、給電用導電性接触子57は、ホルダ基板61(第1基板67、第2基板68)と良好な電気的絶縁性を実現し、アース用導電性接触子56は、ホルダ基板61と良好な電気的接触を実現することができる。
また、これらのパイプ部材は、内面を平滑面によって形成することが可能であるため、導電性接触子の伸縮動作に伴う摺動抵抗を低減できるという利点も有する。すなわち、例えば信号用導電性接触子55に関して、絶縁皮膜を介して第1開口部58(第4開口部70a、第6開口部73a)内に挿入された構造と比較すると、パイプ部材を用いることによって信号用導電性接触子55との間の物理的な接触抵抗が低減され、伸縮動作に伴う摺動抵抗の低減が可能である。
さらに、本実施の形態3では、ホルダ基板61を構成する第1基板67および第2基板68のそれぞれに第1絶縁性パイプ部材63等のパイプ部材が挿入された構成を有するため、導電性接触子ユニットに関して量産性が向上するという利点を有する。すなわち、図9に示す構造の場合には、導電性接触子ユニットの組み立ては、以下のように行われる。
まず、第1基板67、第2基板68に形成された第4開口部70a等の開口部に対して、それぞれ対応するパイプ部材が挿入される。そして、例えばパイプ部材が挿入された第1基板67を、半導体集積回路1側が鉛直下側(すなわち、第2基板68との接触面が鉛直上側)となるよう配置した状態でパイプ部材の中空部分に信号用導電性接触子55等の導電性接触子を収容する。さらに、導電性接触子を収容した状態の第1基板67に対して、導電性接触子がパイプ部材の中空部分に挿入されるよう、鉛直上側から覆い被さる状態で第2基板68を重ねあわせ、第1基板67と第2基板68とを互いに固定する。その後、回路基板2、ホルダ部材5等の必要な部材を組み合わせることによって導電性接触子ユニットが完成する。
このように、本実施の形態3にかかる導電性接触子ユニットは、量産組み付け性が向上した構成を有する。また、パイプ部材の抜け止めを抜け止めフランジによって行うこととしているため、第1基板67と第2基板68とを固定した状態を解除することによってパイプ部材を開口部より取り外すことが容易である。さらに、第1基板67と第2基板68とを固定した状態を解除することによって導電性接触子を取り外すことも容易であることから、メインテナンス等が容易に行えるといった利点も有することとなる。
また、本実施の形態3にかかる導電性接触子ユニットは、第1導電性パイプ部材65および第2導電性パイプ部材66の挿入位置の誤り発生を防止できるという利点を有する。すなわち、本実施の形態3では、第1絶縁性パイプ部材63、第2絶縁性パイプ部材64に形成される抜け止めフランジ75、76の外径d3は、第1導電性パイプ部材65、第2導電性パイプ部材66に形成される抜け止めフランジ77、78の外径d4よりも小さな値となるよう形成される。また、第1絶縁性パイプ部材63等のパイプ部分の外径d5は、第1導電性パイプ部材65等のパイプ部分の外径d6よりも小さな値となるよう形成されている。
かかる構造を採用することによって、本来第1絶縁性パイプ部材63、第2絶縁性パイプ部材64が挿入されるべき第4開口部70a、第6開口部73aに対して、第1導電性パイプ部材65、第2導電性パイプ部材66が挿入されることが防止される。すなわち、何らかの誤りによって第1導電性パイプ部材65等が第4開口部70aに挿入されそうになった場合には、第1絶縁性パイプ部材63等との構造上の違いにより、第4開口部70aに対して挿入することは物理上困難となり、第1導電性パイプ部材65等が誤った開口部に挿入されることが未然に防止される。
第1導電性パイプ部材65および第2導電性パイプ部材66の挿入箇所の誤りの防止は、信号用導電性接触子55または給電用導電性接触子57、特に給電用導電性接触子57と電気的に接続する回路基板2および検査対象たる半導体集積回路1の損傷を防止するという観点から非常に重要である。すなわち、仮に第1導電性パイプ部材65等が、信号用導電性接触子55または給電用導電性接触子57が収容される開口部に挿入された場合、給電用導電性接触子57等は、第1導電性パイプ部材65等を介してホルダ基板61と電気的に接続することとなる。ホルダ基板61の電位はアース電位に保持されていることから、給電用導電性接触子57等がホルダ基板61と電気的に接続することによって、半導体集積回路1または回路基板2の給電用の出力端子等が直接アースされることとなり、導電性接触子を介して大電流が流れ、回路基板2に搭載された回路が使用不能な程度にまで破壊されるおそれがある。このため、本実施の形態3では、誤った開口部に配置された場合、物理的に挿入が不可能となるような形状の第1導電性パイプ部材65および第2導電性パイプ部材66を備えることとし、かかる誤りが発生することを防止ししている。
なお、第1導電性パイプ部材65等の挿入位置の誤りの発生を抑制する観点からは、図10に示す構造も効果的である。図10は、本実施の形態3の変形例の一態様を示すものであるが、図10に示すように、変形例においては、第1絶縁性パイプ部材63および第2絶縁性パイプ部材64に形成される抜け止めフランジ75、76のパイプ挿入方向長(図10における縦方向の長さ)d7と、第1導電性パイプ部材65および第2導電性パイプ部材66に形成される抜け止めフランジ77、78のパイプ挿入方向長d8は、(d8>d7)となるよう形成されている。
図10に示す変形例の利点について、第1導電性パイプ部材65が、誤った開口部である第4開口部70aに挿入された場合を例に説明する。第1絶縁性パイプ部材63等と抜け止めフランジ75の外径が同一かつパイプ部分の外径が同一であるような場合には、誤った開口部に対しても第1導電性パイプ部材65を挿入することが可能である。しかし、抜け止めフランジ75の挿入方向長についてd8>d7の関係を有することから、第4開口部70aに挿入された第1導電性パイプ部材65は、抜け止めフランジ75の少なくとも一部が第1基板67の第2基板68に対する接触面に対して突出した状態となる。このため、かかる場合にはパイプ部材の挿入後に第1基板67に第2基板68を固定する際に、接触面の一部に突起が残存することとなり、互いの接触面を接触させた状態で固定することが困難となる。従って、図10に示す構造によれば、第1導電性パイプ部材65が第4開口部70aに誤って挿入された導電性接触子ユニットが製造されることを防止することが可能であり、半導体集積回路1および回路基板2に対して深刻な損傷を与えることを回避することが可能である。
なお、パイプ部材の挿入位置の誤り発生を防止する観点からは、パイプ部材の構造としては図9または図10に示したものに限定して解釈する必要はなく、第1絶縁性パイプ部材63等と第1導電性パイプ部材65等とが互いに異なる外形を有すれば足りる。従って、例えば図10の構造においてはd4>d3またはd6>d5のいずれか一方のみを満たすこととしても良いし、また、外径等によって差異を設けるのではなく、例えば異なる断面形状を備えることとしても良い。
さらに、本実施の形態3では、アース用導電性接触子56とホルダ基板61との間に第1導電性パイプ部材65および第2導電性パイプ部材66が介在する構造を採用している。従って、上記の通りアース用導電性接触子56とホルダ基板61との間の電気的な抵抗値を低減することが可能であると共に、パイプ部材の内面を平滑面によって形成することが可能であることから、アース用導電性接触子56の伸縮動作の際における摺動抵抗を低減することが可能である。
また、本実施の形態3では、アース用導電性接触子56に関して上記したようにフランジ部80、81を介してホルダ基板61との電気的接触を実現することから、バネ部材82には、第1導電性パイプ部材65等との間の電気的接触を維持する機能を持たせなくとも良い。このため、バネ部材82は、接触面積を増加させる等の観点から設けられる密巻き部分を備える必要がなく、疎巻き部分のみによって形成することが可能である。かかる構造を採用した場合、バネ部材82から針状部材79a、79bに対して供給される弾発力が増加すると共にバネ部材82の伸縮範囲を拡大させることができる。
また、フランジ部80、81の外径が第1導電性パイプ部材65および第2導電性パイプ部材66と物理的に接触するよう定められることから、アース用導電性接触子の位置決め精度が向上するという利点を有する。すなわち、実施の形態3においては第2開口部59に挿入されたアース用導電性接触子56は、常にフランジ部80、81の外面が第1導電性パイプ部材65等の内面に接触した状態となる。従って、本実施の形態3においてアース用導電性接触子56の位置は一意に定まることとなり、位置ずれが生じることを防止することが可能である。
次に、本実施の形態3の他の変形例について説明する。図11ないし図13は、他の変形例にかかる導電性接触子ユニットの構成について示す模式図であり、本変形例は、具体的には導電性接触子の少なくとも一部に、バネ部材等を内包するいわゆるバレルタイプのものを使用している。
具体的には、例えば図11に示したように、信号用導電性接触子83は、実施の形態1等と同様の形状を有する針状部材86、87と、針状部材86、87の基端側の一部および図示を省略したバネ部材とを覆うように形成され、外面形状が円筒状に形成されているパイプ体88とを備えた構造を有する。同様に、アース用導電性接触子84は、針状部材89、90と、パイプ体91を備え、給電用導電性接触子85は、針状部材92、93と、パイプ体94を備える。以下、導電性接触子を代表してアース用導電性接触子84を例に、バレルタイプの導電性接触子について説明する。
パイプ体91は、空洞状に形成された内部に針状部材89、90の基端側の少なくとも一部と、針状部材89、90の間に配置され、両者に対して弾発付勢するためのバネ部材とを含むよう形成される。また、パイプ体91は、例えば針状部材89、90の外径とほぼ等しい内径を有することによって、針状部材89、90と電気的に接触した状態を維持している。すなわち、パイプ体91は、針状部材89、90の摺動動作にかかわらず常に針状部材89、90との電気的な接触を維持する構造を有する。
かかるパイプ体を備えたバレルタイプの導電性接触子を用いることは、特にアース用導電性接触子84に関して有効である。すなわち、図11にも示すように、パイプ体91は、挿入方向長の大きい円筒状の形状を有することから、パイプ体91と第1基板98に形成された第5開口部100および第2基板99に形成された第7開口部101との間の接触面積が大きく、電気的な接触抵抗が低減される構造を有する。従って、図11に示す変形例では、アース用導電性接触子84は、導電性パイプ部材を介することなく第1基板98および第2基板99と物理的に直接接触させる構成を採用することが可能である。
また、信号用導電性接触子83および給電用導電性接触子85がバレルタイプの導電性接触子によって構成されることによる利点も存在する。すなわち、パイプ体88、94は、針状部材86等が摺動動作を行う際にも位置、形状等が変化することはないため、第1絶縁性パイプ部材95、第2絶縁性パイプ部材96は、内面が平滑性を有する必要はない。このため、本変形例では、第1絶縁性パイプ部材95の形状および材料の選択の自由度が向上するという利点も有する。
なお、図11に示すようにすべての導電性接触子をバレルタイプにする必要はなく、少なくとも一部についてバレルタイプを採用することによって上記の利点を享受することが可能である。すなわち、図12に示すようにバレルタイプのアース用導電性接触子84と、実施の形態3と同様の構造を有する信号用導電性接触子55および給電用導電性接触子57を備えることとしても良いし、図13に示すように、バレルタイプの信号用導電性接触子83、給電用導電性接触子85と、実施の形態3と同様の構造のアース用導電性接触子56とを備えることとしても良い。
以上、実施の形態1〜3およびこれらの変形例によって本発明を説明したが、本発明は上記のものに限定して解釈するべきではなく、当業者であれば様々な変形例、実施例等に想到することが可能である。例えば、実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせた導電性接触子ホルダおよび導電性接触子ユニットを構成することが可能である。すなわち、信号用導電性接触子15に関しては実施の形態2の構造を採用する一方、アース用導電性接触子16に関しては実施の形態1の構造を採用することとしても良い。他にも、実施の形態1〜3および各変形例に示された構造を適宜組み合わせた構成の導電性接触子ホルダおよび導電性接触子ユニットを実現することが可能である。
また、実施の形態1等では、ホルダ部材5の形状からも明らかなように、半導体チップ等の集積回路に対して用いる形態を想定しているが、かかる形態に限定して解釈する必要はなく、例えば、液晶パネルの特性を検出する装置に本発明を適用することとしても良い。さらには、導電性接触子の構成についても実施の形態1等に示されたものに限定されず、本発明においては任意の構成のものを用いることが可能である。
さらに、実施の形態1等にかかる導電性接触子ユニットに関して、入出力信号の伝送方式については特に明示しなかったが、シングルエンド伝送および差動伝送のいずれについても用いることが可能である。すなわち、実施の形態1等にかかる導電性接触子ユニットは、伝送方式の種類にかかわらず高周波電気信号の伝送特性を向上させることが可能であるという利点を有する。
また、実施の形態3において、実施の形態1、2と同様に、第1絶縁性パイプ部材63等と第1導電性パイプ部材65等とを同一の外形のものによって構成することも有効である。かかる構造とした場合、それぞれのパイプ部材を容易に入れ替えることが可能となることから、ピンアサインの変更を容易に行うことが可能であるという利点を有する。すなわち、既にピンアサインが決定されて量産されている導電性接触子ユニットに関してはパイプ部材の外形が異なることとすることが好ましいが、その前段階、例えばピンアサインの決定を行う際等には、第1絶縁性パイプ部材63等と、第1導電性パイプ部材65等とを同一の外形のものを用いて構成することが好ましい。また、回路構造の異なる複数種類の半導体集積回路1に対して検査を行うような場合においても、容易にピンアサインの変更が可能となるため、好ましい。