JP2010195132A - 車両のシートベルト装置 - Google Patents

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豊 脇坂
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Abstract

【課題】車両に入力される衝撃の度合い等に応じてクランプ装置とエネルギー吸収部材の特性を有効に使い分けることのできる車両のシートベルト装置を提供する。
【解決手段】ベルトリール12の引き出し方向の回転をロックする緊急ロック機構22を設け、緊急ロック機構22の作動時にはリールシャフト12Bの塑性変形によって衝撃を吸収する。ウェビング5の引き出しを阻止するクランプ装置60を設ける。車両に作用する衝撃度合いを判定する衝撃判定手段67を設ける。衝撃が入力されたときには衝撃判定手段67で判定された衝撃度合いに応じてクランプ装置60を選択的に駆動する。
【選択図】図2

Description

この発明は、シートに着座した乗員をウェビングによって拘束するシートベルト装置に関するものである。
車両のシートベルト装置として、ウェビングの急激な引き出し時や車両に急激な減速度が作用したときに、ベルトリールのウェビング引き出し方向の回転を機械的にロックする緊急ロック機構を備えたものが知られている。
このシートベルト装置においては、緊急ロック機構の作動時にウェビングから乗員に作用する衝撃を緩和するために、ベルトリールの軸と本体部の間にエネルギー吸収手段(エネルギー吸収部材)を介装する等の工夫が為されている(例えば、特許文献1参照)。
ところが、このシートベルト装置の場合、車両に大きな衝撃が入力されるときには、エネルギー吸収手段の機能によって乗員拘束力が緩和されてしまうことがあり、エネルギー吸収手段のチューニングが難しいというのが実情である。
また、このシートベルト装置においては、低速衝突等で車両に弱いレベルの衝撃が入力されたときにも、エネルギー吸収手段に直接荷重が作用し、僅かではあるがエネルギー吸収手段に塑性変形を生じる可能性がある。
このため、これに対処するシートベルト装置として、車両に所定以上の衝撃が入力されたときに、ウェビングを機械的に挟持するクランプ装置をベルトリールの外側に別に設け、エネルギー吸収手段が変形を開始する前にウェビングの引き出し方向の荷重をクランプ装置で受けとめるようにしたものが案出されている(例えば、特許文献2参考)。
特開平09−002203号公報 特許第3518699号公報
しかし、この従来のシートベルト装置においては、クランプ装置による挟持限界荷重(ウェビングとの間で滑りを生じる限界荷重)がエネルギー吸収手段の変形開始荷重よりも大きくなるように設定されるため、ウェビングに作用する引き出し方向の荷重がクランプ装置の挟持限界荷重を超えなければ、エネルギー吸収手段による吸収機能が有効に作用しない。すなわち、このシートベルト装置の場合、エネルギー吸収手段は、ウェビングの引き出し方向の荷重がクランプ装置の挟持限界荷重を超えたときに付加的に作用するため、ウェビングの引き出し方向の荷重が比較的小さいときにはエネルギー吸収効果が得られにくくなる。
そこでこの発明は、車両に入力される衝撃の度合いに応じてクランプ装置とエネルギー吸収手段の特性を有効に使い分けることのできる車両のシートベルト装置を提供しようとするものである。
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、ウェビング(例えば、後述の実施形態におけるウェビング5)が巻回されるベルトリール(例えば、後述の実施形態におけるベルトリール12)と、前記ウェビングの急激な引き出し時、若しくは、車両に急激な物理量変化が生じたときに、前記ベルトリールのウェビング引き出し方向の回転を機械的にロックする緊急ロック機構(例えば、後述の実施形態における緊急ロック機構22)と、前記緊急ロック機構が作動した状態で前記ウェビングに所定量以上の引き出し方向の荷重が作用したときに塑性変形可能なエネルギー吸収手段(例えば、後述の実施形態におけるリールシャフト12B)と、前記ウェビングを挟持することにより前記ベルトリールからの前記ウェビングの引き出しを阻止するクランプ装置(例えば、後述の実施形態におけるクランプ装置60)と、車両に作用する衝撃を検知する衝撃検知手段(例えば、後述の実施形態における衝撃検知手段66)と、この衝撃検知手段の検知信号を受けて前記クランプ装置の作動を制御する制御手段(例えば、後述の実施形態におけるコントローラ21)と、を備えた車両のシートベルト装置であって、前記衝撃検知手段で検知された検知信号を基にして車両に作用する衝撃度合いを判定する衝撃判定手段(例えば、後述の実施形態における衝撃判定手段67)を備え、前記制御手段は、前記衝撃検知手段が衝撃を検知したときに前記衝撃判定手段によって判定された衝撃度合いに応じて前記クランプ装置を選択的に駆動することにより、前記エネルギー吸収手段の作動・非作動を選択的に切り換えることを特徴とする。
これにより、例えば、衝撃判定手段によって衝撃が小さいものと判定されたときには、クランプ装置を非作動状態としてエネルギー吸収手段を低い負荷領域から機能させることが可能になるとともに、衝撃判定手段によって衝撃が大きいものと判定されたときには、クランプ装置を作動状態として大きな衝撃を主にクランプ装置の滑りや撓みによって吸収することが可能になる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両のシートベルト装置において、シートに着座した乗員の体格を判定する乗員判定手段を備え、前記制御手段は、前記衝撃検知手段が衝撃を検知したときに前記衝撃判定手段によって判定された衝撃度合いおよび、前記乗員判定手段によって判定された乗員の体格に応じて前記クランプ装置を選択的に駆動することを特徴とする。
これにより、衝撃の度合いと乗員の体格が加味されて、エネルギー吸収手段による衝撃吸収とクランプ装置による衝撃吸収が夫々使い分けられるようになる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両のシートベルト装置において、シートに着座した乗員の体格を判定する乗員判定手段と、前記ベルトリールを火薬の推力により巻取り駆動するプリテンショナ(例えば、後述の実施形態におけるプリテンショナ51)を備え、前記制御手段は、前記衝撃判定手段で判定した衝撃度合いが所定以上のときに前記クランプ装置を作動状態とした後に前記プリテンショナを作動させるとともに、前記プリテンショナの作動後期に、前記衝撃判定手段によって判定された衝撃度合いと、前記乗員判定手段によって判定された乗員の体格とのいずれかに基づいて前記クランプ装置を選択的に解除することにより、前記エネルギー吸収手段の作動・非作動を選択的に切り換えることを特徴とする。
これにより、例えば、衝撃判定手段によって衝撃が所定以上と判定されたときには、クランプ装置を作動させた後にプリテンショナが駆動される。これにより、ウェビングは瞬時に巻き取られる。また、プリテンショナの作動後期には、衝撃の度合いまたは乗員の体格に基づいてクランプ装置が選択的に解除される。このとき、制御手段では、例えば、衝撃の度合いが比較的小さい場合や乗員の体格が小さい場合には、クランプ装置を解除作動することによってエネルギー吸収手段を機能させ、逆に衝撃の度合いが比較的大きい場合や乗員の体格が大きい場合には、クランプ装置の作動を継続することによって大きな衝撃を主にクランプ装置の滑りや撓みによって吸収させる。
請求項1に記載の発明によれば、車両に作用する衝撃の度合いに応じてクランプ装置を選択的に駆動するため、衝撃の度合いが小さい場合には、エネルギー吸収手段によってウェビングに作用する比較的小さな衝撃を柔軟に吸収し、衝撃の度合いが大きい場合には、主にクランプ装置によってウェビングに作用する大きな衝撃を確実に吸収することができる。
また、エネルギー吸収手段が衝突初期の低い負荷領域から長時間にわたって衝撃吸収効果を発揮できるように強度を設定しても、クランプ装置によりエネルギー吸収手段の塑性変形を防止できるため、確実にエネルギー吸収手段の機能保全が図られるとともに、必要に応じてクランプ装置を非作動としてエネルギー吸収手段を作動させることにより効率的な乗員拘束が可能になる。
請求項2に記載の発明によれば、衝撃の度合いと乗員の体格を加味してエネルギー吸収手段による衝撃吸収とクランプ装置による衝撃吸収が使い分けられるため、乗員に加わる衝撃を良好に吸収することができる。
請求項3に記載の発明によれば、所定以上の衝撃が入力されたときに、一旦クランプ装置を作動させた状態でプリテンショナを作動させてウェビングの巻取りを行い、その後に衝撃の度合いや乗員の体格に応じてクランプ装置の解除作動を選択的に行うため、プリテンショナによる早急なウェビングの巻取りと、エネルギー吸収手段とクランプ装置のいずれかによる良好なエネルギー吸収を実現することができる。
この発明の一実施形態のシートベルト装置の概略構成図である。 この発明の一実施形態のシートベルト装置のリトラクタとコントローラの概略構成図である。 この発明の一実施形態の緊急ロック機構の分解斜視図である。 この発明の一実施形態のリトラクタの斜視図である。 この発明の一実施形態のシートベルト装置の制御の流れを示すフローチャートである。
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明にかかるシートベルト装置1の全体概略構成を示すものであり、同図中2は、乗員3の着座するシートである。この実施形態のシートベルト装置1は、所謂三点式のシートベルト装置であり、図示しないセンタピラーに取付けられたリトラクタ4からウェビング5が上方に引き出され、そのウェビング5がセンタピラーの上部側に支持されたスルーアンカ6に挿通されるとともに、ウェビング5の先端がシート2の車室外側寄りのアウタアンカ7を介して車体フロアに固定されている。そして、ウェビング5のスルーアンカ6とアウタアンカ7の間にはタングプレート8が挿通されており、そのタングプレート8は、シート2の車体内側寄りの車体フロアに固定されたバックル9に対して脱着可能となっている。
ウェビング5は、初期状態ではリトラクタ4に収納されており、乗員3が手で引き出してタングプレート8をバックル9に固定することにより、乗員3の主に胸部と腹部をシート2に対して拘束する。
リトラクタ4は、図2に示すように略コ字状のリトラクタフレーム50に回転可能に支持されたベルトリール12にウェビング5が巻回されている。リトラクタフレーム50の一方の側壁には、緊急時にベルトリール12をウェビング巻取り方向に回転駆動させる火薬発火式のプリテンショナ51が設置されている。
なお、リトラクタ4には、ベルトリール12をウェビング巻取り方向に付勢する図示しない巻取りばねが設けられ、巻取りばねによる張力がウェビング5に作用するようになっている。
プリテンショナ51は、例えば、ベルトリール12に同軸に結合されたインナロータ52と、インナロータ52の外周側に隙間をもって配置されたアウタロータ53と、火薬の発火によって瞬時にガスを発生するガス発生器54と、ガス発生器54からアウタロータ53の外周領域に向かう湾曲したガイド通路を形成する誘導パイプ55と、誘導パイプ55に充填された図示しないスチールボールとを備えた構成とされている。インナロータ52の外周面とアウタロータ53の内周面には相互に係合可能に噛合部(図示省略)が形成され、アウタロータ53の外周面にはスチールボールを受容可能な羽根部56が設けられている。アウターロータ53は、通常時は、インナロータ52と非接触となるようにハウジング57内に保持されているが、ガス発生器54のガス圧によってスチールボールが羽根部56に打ち込まれると、保持位置がずれてインナロータ52と噛合されるとともに、スチールボールによる回転力がインナロータ52に伝達される。ベルトリール12はこれによってウェビング巻取り方向に瞬時に回転駆動される。
なお、ガス発生器54は、車両に大きな衝撃が入力されたとき等にコントローラ21(制御手段)からの指令を受けてガスを発生する。
また、リトラクタフレーム50の他方の側壁には、車両に所定値以上の加速度が作用したり車両が大きく傾斜した場合(車両が不安定になった場合)や、ウェビング5が急激に引き出されようとした場合(ベルトリール12がウェビング引き出し方向に急激に回転しようとした場合)等に、ベルトリール12のウェビング引き出し方向の回転を機械的にロックする緊急ロック機構22が設けられている。
図3は、リトラクタ4に設けられた緊急ロック機構22の詳細を示すものである。
リトラクタフレーム50の側壁50B(図3においては、他方の側壁のみ図示する)には、略円形の孔25が設けられ、その各孔25の内周に、ウェビング巻取り方向に傾斜したロック溝26が形成されている。そして、リトラクタフレーム50の他方の側壁50Bには、後述するロック作動ドラム23を支持するリテーナ24が取り付けられている。
ベルトリール12は、外周にウェビング5が巻回されるリール本体12Aと、リール本体12Aの軸部に取り付けられたリールシャフト12Bとを備え、リール本体12Aから突出したリールシャフト12Bの軸方向の両側には支持フランジ27A,27Bが一体に結合されている。リールシャフト12Bは軸方向の中央領域が板状に形成され、その中央領域の幅方向の端部がリール本体12Aの内周面に結合されている。このリールシャフト12Bの中央領域は、リールシャフト12Bとリール本体12Aの間に所定以上のトルクが作用したときに捩り方向に塑性変形し、それによってベルトリール12の回転方向の衝撃エネルギーを吸収する。この実施形態においては、ベルトリール12のリールシャフト12Bがエネルギー吸収手段を構成している。
また、各支持フランジ27A,27Bの外周縁部にはロック爪28が揺動可能に取り付けられている。ロック爪28は、先端側が径方向外側に回動して突出したときに、リトラクタフレーム50側のロック溝26と噛合する。ロック爪28は、ウェビング巻取り方向に傾斜したロック溝26と噛合することによってベルトリール12の引き出し方向の回転をロックするとともに、ベルトリール12の巻取り方向の回転を許容する。また、各支持フランジ27A,27Bに支持されるロック爪28は連結ピン29によって一体回転可能に連結されている。
支持フランジ27Bの軸心位置にはリールシャフト12Bの一端が突出し、そのリールシャフト12Bの端部にはロック作動ドラム23が嵌合されている。ロック作動ドラム23は、リールシャフト12Bの端部に微小な摩擦抵抗を持って嵌合され、ベルトリール12(リールシャフト12B)の通常回転時にはベルトリール12と一体に回転し、両者に相反方向の力が加わったとき等には、ベルトリール12に対して設定角度の範囲で相対回動する。
ロック作動ドラム23の外周縁部には、連結ピン29の端部が貫通する図示しない長孔が設けられている。そして、ロック作動ドラム23を貫通する連結ピン29の端部には、ロック作動ドラム23のガイド面30に当接するカム片31が設けられている。このカム片31は、ベルトリール12がロック作動ドラム23に対してウェビング引き出し方向に相対回動したときに、ガイド面30による案内作用によって連結ピン29を一方に回転させる。こうして連結ピン29が回転すると、支持フランジ27A,27Bの各ロック爪28を外側に突出させるように回動させる。
また、ロック作動ドラム23は、外周面に複数のクラッチ歯32が形成されるとともに、軸方向外側の端面にロックアーム33が揺動可能に取り付けられている。ロックアーム33は、遠心力の影響を受ける質量体から成り、ロック作動ドラム23の回転中心から離間した位置に揺動可能に取り付けられている。そして、ロックアーム33は、アーム先端側にロック爪34が設けられ、ロック作動ドラム23の回転に応じた遠心力を受け、ロック爪34側を径方向外側に振り出すようになっている。また、ロック作動ドラム23とロックアーム33の間には、ロックアーム33のロック爪34側を常時ロック作動ドラム23の径方向内側方向に付勢する付勢スプリング35が設けられている。
リテーナ24は、ロック作動ドラム23とロックアーム33の前面側と周囲を覆った状態でリトラクタフレーム50に固定されている。リテーナ24には、ベルトトリール12とロック作動ドラム23の軸部を回転自在に支持する図示しない軸受構造が設けられるとともに、ロックアーム33のロック爪34の外周側に臨むように内歯構造の図示しないクラッチ歯が設けられている。このリテーナ24のクラッチ歯は、ロックアーム33が遠心力を受けて径方向外側に揺動したときに、ロックアーム33のロック爪34が噛合する。ロック作動ドラム23はこれによって回転をロックされ、その結果、ベルトリール12との間に相対回転を生じ、前述のようにベルトリール12の両側のロック爪28がリトラクタフレーム50のロック溝26と噛合されることとなる。したがって、ウェビング5が急激に引き出されようとしたときには、このロックアーム33とリテーナ24のクラッチ歯を通したロック機構系によってベルトリール12(リールシャフト12B)のウェビング引き出し方向の回転がロックされる。以下、このロック系を引き出し感応ロック系と呼ぶ。
また、リテーナ24内の下部には、車両の加速度を感知して係止爪36を動作させるビークルセンサ37が設けられている。このビークルセンサ37は、センサケース38とセンサキャップ39によって囲われた収容部内にセンサウェイト40が配置され、センサウェイト40に係止爪36が一体に取り付けられている。センサウェイト40は、車両の加速度に応じて揺動し、規定量以上揺動したときに係止爪36をロック作動ドラム23のクラッチ歯32に噛合させる。
こうして、係止爪36がクラッチ歯32に噛合されると、ロック作動ドラム23の回転がロックする。したがって、この状態でウェビング5が引き出されようとすると、ベルトリール12とロック作動ドラム23が相対回転し、その結果、ベルトリール12のロック爪28がリトラクタフレーム50のロック溝26に噛合し、ベルトリール12(リールシャフト12B)のウェビング引き出し方向の回転をロックする。以下、このロック系を車体感応ロック系と呼ぶ。
ここで、前述の引き出し感応ロック系と車体感応ロック系のいずれの場合にも、ベルトリール12のウェビング引き出し方向の回転がロックされた後には、ベルトリール12がウェビング巻取り方向に所定量以上回転操作されたときにロック状態が解除される。すなわち、ロック作動ドラム23の回転が停止した状態で、ベルトリール12がウェビング巻取り方向に回転すると、ベルトリール12とロック作動ドラム23の相対位置関係が初期位置に戻され、その結果、連結ピン29を通してロック爪28が他方に回転することにより、ロック爪28とロック溝26の噛合が解除される。なお、ロック解除のためのベルトリール12のウェビング巻取り方向の操作は基本的には戻しばねの力によって自動的に行われる。
また、図2に示すようにリトラクタフレーム50の上部には、車両に所定以上の衝撃が入力されたときに、ウェビング5を機械的に挟持してウェビング5の引き出しを抑制するクランプ装置60が設置されている。このクランプ装置60は、ベルトリール12から引き出されたウェビング5の引き出し軌道上に配置されている。
図4は、クランプ装置60の詳細を示すものである。
クランプ装置60は、リトラクタフレーム50の背部壁に固定設置された固定アーム61と、リトラクタフレーム50の両側壁に回動可能に軸支された可動アーム62と、可動アーム62の回動軸62aの一端に連結されたウォームホイール63と、ウォームホイール63に噛合するウォーム64と、ウォーム64を回転駆動するモータ65を備え、モータ65の駆動によって可動アーム62を回動操作するようになっている。固定アーム61と可動アーム62の先端部にはウェビング5を表裏から挟持するための複数の爪61a…,62a…が設けられており、可動アーム62は、固定アーム61と可動アーム62が最も近接する最近接位置と、最近接位置からウェビング5の巻取り方向に所定角度回動した離反位置との間で回動変位する。このクランプ装置60においては、可動アーム62を最近接位置側に操作したとき(クランプ操作したとき)には、ウェビング5の引き出し方向の変位は規制するが、巻取り方向の変位は許容する。
また、モータ65は、プリテンショナ51と同様にコントローラ21によって制御される。
ところで、コントローラ21には、図2に示すように、車両に作用する衝撃を検知する加速度センサ等の衝撃検知手段66が接続されている。コントローラ21は、衝撃検知手段66の検知信号を受けて、その検知信号を基にして車両に作用する衝撃度合いを判定する衝撃判定手段67を備えている。そして、このコントローラ21は、衝撃検知手段66が所定以上の衝撃を検知したときにプリテンショナ51を駆動するとともに、プリテンショナ51の作動の終了の直後に衝撃判定手段67の判定結果に応じてクランプ装置60を選択的に駆動する。
以下、車両に所定以上の衝撃が入力されたときにおけるこのシートベルト装置1の制御を図5のフローチャートを基にして説明する。なお、この場合、車両には所定以上の衝撃が入力されるため、緊急ロック機構22は車体感応ロック系によってベルトリール12のリールシャフト12Bをロックする。
最初に、ステップS101において、衝撃検知手段66の信号を読み込み、つづくステップS102において、その信号を基にして車両に作用する衝撃が小さいか否か(予め設定した基準値よりも小さいか否か)を判定し、YESの場合には、プリテンショナ51を作動させる必要の無い小規模衝突程度のものとしてステップS109以下の処理を行い、NOの場合には、プリテンショナ51を作動させる必要の有る中規模衝突以上のものであるとしてステップS103以下の処理を行う。
車両に作用する衝撃が中規模衝突以上のものでステップS103に進んだ場合には、車両に作用する衝撃が大きくない否か(衝撃が中程度であるか否か)を判定する。
YESの場合には、中規模衝突によるものとしてステップS104に進み、ステップS104において、クランプ装置60のモータ65をウェビング挟持方向に作動させるとともに、ステップS105に進んでプリテンショナ51を駆動させる。この間、ウェビング5の引き出し方向の変位がクランプ装置60によって規制されつつ、プリテンショナ51によってウェビング5が瞬時にベルトリール12に巻き取られる。
次のステップS106においては、プリテンショナ51の作動が終了するまでにクランプ装置60を解除作動する。こうしてクランプ装置60によるウェビング5の挟持が解除されると、ウェビング5の引き込み荷重はベルトリール12に入力され、このとき、緊急ロック機構22によってロックされているリールシャフト12Bを捩り方向に塑性変形させる。
したがって、衝撃入力の後期にウェビング5から乗員に作用する荷重はリールシャフト12の塑性変形によって柔軟に吸収される。
ステップS103でNOの場合には、大規模衝突によるものとしてステップS107に進み、ステップS107において、クランプ装置60のモータ65をウェビング挟持方向に作動させるとともに、ステップS108に進んでプリテンショナ51を駆動させ、プリテンショナ51の作動が終了した後にも所定時間クランプ装置60によるウェビング5の挟持を継続する。
この場合、クランプ装置60によってウェビング5の引き出し方向の変位が規制されつつ、プリテンショナ51によってウェビング5が瞬時にベルトリール12に巻き取られ、プリテンショナ51の作動が終了した後にもウェビング5の荷重がクランプ装置60によって支持される。このとき、クランプ装置60では、ウェビング5の引き出し方向の荷重を受けて若干の滑りまたは塑性変形を生じる。
したがって、衝撃入力の後期にウェビング5から乗員に作用する荷重は、主にクランプ装置60の滑りや塑性変形によって確実に吸収される。
一方、車両に作用する衝撃が小規模衝突程度のものとしてステップS109に進んだ場合には、さらに衝撃が低速での衝突のように極く小さなものであるか否かを判定し、ここでYESの場合には、ステップS110に進み、NOの場合には、ステップS112に進む。
ステップS110に進んだ場合には、クランプ装置60のモータ65をウェビング挟持方向に作動させた後に、ステップS111に進んで即時にクランプ装置60を強制解除する。この結果、ウェビング5の引き込み荷重がベルトリール12に入力され、緊急ロック機構22によってロックされているリールシャフト12Bが捩り方向に塑性変形し、その間に衝撃が柔軟に吸収される。
また、衝撃がやや大きくステップS112に進んだ場合には、ステップS112において、クランプ装置60のモータ65をウェビング挟持方向に作動させ、ウェビング5の引き出し方向の変位をクランプ装置60によって規制する。このクランプ装置60によるウェビング5の引き出し規制は所定時間の間継続し、それによってリールシャフト12Bの塑性変形を抑制する。
以上のように、このシートベルト装置1においては、車両に作用する衝撃の度合いに応じて、クランプ装置60を選択的に駆動するため、衝撃の度合いが小さい場合と大きい場合でリールシャフト12Bによる衝撃吸収とクランプ装置60による衝撃吸収を使い分け、リールシャフト12Bの不要な変形を防止する一方でいずれの場合にも衝撃を充分に吸収することができる。さらに、プリテンショナ51を備える場合においても、クランプ装置60を選択的に駆動することにより乗員の拘束力を最適化することができる。
つづいて、この発明の他の実施形態について説明する。ただし、ここで説明する他の実施形態では、基本的な構成の大部分が上記の実施形態と同様であるため、図1〜図5をそのまま援用し、これらの図面には、上記の実施形態と異なる部分に異なる符合や文字を括弧に入れて記すものとする。
この実施形態のシートベルト装置は、シート2に着座した乗員の体格を検知する乗員検知手段147が設けられ、この乗員検知手段147がコントローラ21に接続されている。乗員検知手段147としては、例えば、乗員の体重を検知するセンサや、装着時のウェビング5の引き出し長さを基にして演算によって求めるもの等が採用可能である。
また、コントローラ21には、乗員検知手段147の検知信号を基にして、乗員の体格が小であるか否かを判定する乗員判定手段148が設けられている。コントローラ21は、衝撃検知手段66が所定以上の衝撃を検知したときにプリテンショナ51を駆動するとともに、プリテンショナ51の作動が終了するまでの間に乗員判定手段67の判定結果に応じてクランプ装置60を選択的に解除作動する。
このシートベルト装置の緊急時における制御は、図6のフローチャートのステップS101,S103が僅かに異なるだけで、基本的な制御の流れは上記の実施形態と同様となっている。
すなわち、ステップS101においては、衝撃検知手段66の信号とともに、乗員検知手段147の信号を読み込み、ステップS103においては、衝撃が中程度であるか否かを判定するのに代えて乗員の体格が小であるか否かを判定している。
そして、乗員の体格が小で、衝撃入力の後期にウェビング5から乗員に作用する荷重が小さい場合には、プリテンショナ51の作動が終了するまでの間にクランプ装置60を解除作動してリールシャフト12Bの塑性変形によって衝撃を柔軟に吸収する。また、乗員の体格が大で、衝撃入力の後期にウェビング5から乗員に作用する荷重が大きい場合には、プリテンショナ51の作動の終了の後にもクランプ装置60の作動を継続し、クランプ装置60の滑りまたは塑性変形によって衝撃を確実に吸収する。
以上のように、このシートベルト装置1においては、シートに着座する乗員の体格に応じて、プリテンショナ51の作動の終了の後にもクランプ装置60を選択的に作動(選択的に解除作動)するため、乗員の体格が小の場合と大の場合でリールシャフト12Bによる衝撃吸収とクランプ装置60による衝撃吸収を使い分け、リールシャフト12Bの不要な塑性変形を防止しつつ衝撃を充分に吸収することができる。
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、クランプ装置の作動を強制解除するために、解除専用のアクチュエータを別途設けるようにしても良い。
1…シートベルト装置
5…ウェビング
12…ベルトリール
12B…リールシャフト(エネルギー吸収手段)
21…コントローラ(制御手段)
22…緊急ロック機構
51…プリテンショナ
60…クランプ装置
66…衝撃検知手段
67…衝撃判定手段
148…乗員判定手段

Claims (3)

  1. ウェビングが巻回されるベルトリールと、
    前記ウェビングの急激な引き出し時、若しくは、車両に急激な物理量変化が生じたときに、前記ベルトリールのウェビング引き出し方向の回転を機械的にロックする緊急ロック機構と、
    前記緊急ロック機構が作動した状態で前記ウェビングに所定量以上の引き出し方向の荷重が作用したときに塑性変形可能なエネルギー吸収手段と、
    前記ウェビングを挟持することにより前記ベルトリールからの前記ウェビングの引き出しを阻止するクランプ装置と、
    車両に作用する衝撃を検知する衝撃検知手段と、
    この衝撃検知手段の検知信号を受けて前記クランプ装置の作動を制御する制御手段と、
    を備えた車両のシートベルト装置であって、
    前記衝撃検知手段で検知された検知信号を基にして車両に作用する衝撃度合いを判定する衝撃判定手段を備え、
    前記制御手段は、前記衝撃検知手段が衝撃を検知したときに前記衝撃判定手段によって判定された衝撃度合いに応じて前記クランプ装置を選択的に駆動することにより、前記エネルギー吸収手段の作動・非作動を選択的に切り換えることを特徴とする車両のシートベルト装置。
  2. シートに着座した乗員の体格を判定する乗員判定手段を備え、
    前記制御手段は、前記衝撃検知手段が衝撃を検知したときに前記衝撃判定手段によって判定された衝撃度合いおよび、前記乗員判定手段によって判定された乗員の体格に応じて前記クランプ装置を選択的に駆動することを特徴とする請求項1に記載の車両のシートベルト装置。
  3. シートに着座した乗員の体格を判定する乗員判定手段と、
    前記ベルトリールを火薬の推力により巻取り駆動するプリテンショナを備え、
    前記制御手段は、前記衝撃判定手段で判定した衝撃度合いが所定以上のときに前記クランプ装置を作動状態とした後に前記プリテンショナを作動させるとともに、
    前記プリテンショナの作動後期に、前記衝撃判定手段によって判定された衝撃度合いと、前記乗員判定手段によって判定された乗員の体格とのいずれかに基づいて前記クランプ装置を選択的に解除することにより、前記エネルギー吸収手段の作動・非作動を選択的に切り換えることを特徴とする請求項1または2記載の車両のシートベルト装置。
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