JP2010191171A - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】残留電位の上昇が抑制される電子写真感光体を提供すること。
【解決手段】導電性基体と、前記導電性基体表面に設けた感光層と、を有し、前記感光層の最表面層が、前記グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成され、
前記最表面層中に、下記一般式(I)で表されるシラン化合物を0.2質量%以上1質量%以下、前記電荷輸送性材料を94質量%以上99.7質量%以下、含有する電子写真感光体。下記一般式(I)中、Rは、炭素数1以上9以下のパーフルオロアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、nは0,1又は2を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。



【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
近年、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、定着手段を有する、いわゆるゼログラフィー方式の画像形成装置は、各部材、システムの技術進展により一層の高速化、長寿命化が図られている。これに伴い、各サブシステムの高速対応性、高信頼性に対する要求が従来にまして高くなっている。特に、画像書き込みに使用される電子写真感光体は、帯電器、現像器、転写装置、及びクリーニング器などにより、電気的、機械的外力を多く受けるため、傷、磨耗、欠けなどによる画像欠陥を生じやすく、高速対応性、高信頼性に対する要求が一層強い。
傷や磨耗を抑制するため電子写真感光体では、特に最表面層に機械強度の高い樹脂が使用されており、さらに長寿命化も図られている。即ち、接触帯電方式による感光体の劣化・磨耗を抑制することや、直接帯電方式や中間転写体使用による感光体の傷などの発生を抑制して感光体リーク(感光体に局所過大電流が流れる現象)の発生を抑制する目的で、電子写真感光体表面に保護層を設けて強度を向上させることが図られている。
保護層を形成する材料系としては、例えば、特許文献1には導電粉をフェノール樹脂に分散したものが、特許文献2には有機―無機ハイブリッド材料によるものが、特許文献3には連鎖重合性材料によるものが、特許文献4にはアクリル系材料によるものが、また、特許文献5にはアルコール可溶性電荷輸送材料とフェノール樹脂によるものがそれぞれ提案されている。
また、特許文献6にはアルキルエーテル化ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂と、電子受容性カルボン酸あるいは、電子受容性ポリカルボン酸無水物の硬化膜が提案されている。特許文献7にはベンゾグアナミン樹脂にヨウ素、有機スルホン酸化合物、あるいは、塩化第二鉄などをドーピングした硬化膜が、特許文献8には特定の添加剤とフェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シロキサン樹脂、あるいは、ウレタン樹脂との硬化膜が提案されている。
特許第3287678号公報 特開平12−019749号公報 特開2005−234546号公報 特開2000−66424号公報 特開2002−82469号公報 特開昭62−251757号公報 特開平7−146564号公報 特開2006−84711公報
本発明は、感光層の最表面層に含まれる化合物の種類及び含有量を考慮しない場合に比べ、残留電位の変動が抑制される電子写真感光体を提供することを目的とする。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
導電性基体と、
前記導電性基体表面に設けた感光層と、を有し、
前記感光層の最表面層が、前記グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成され、
前記最表面層中に、下記一般式(I)で表されるシラン化合物を0.2質量%以上1質量%以下、前記電荷輸送性材料を94質量%以上99.7質量%以下、含有する電子写真感光体である。
前記一般式(I)中、Rは、炭素数1以上9以下のパーフルオロアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、nは0,1又は2を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。
請求項2に係る発明は、
導電性基体と、
前記導電性基体表面に設けた感光層と、を有し、
前記感光層の最表面層が、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料の少なくとも1種とを含む塗布液を用いた架橋物を含んで構成され、
前記最表面層中に、下記一般式(I)で表されるシラン化合物を0.2質量%以上1質量%以下、前記電荷輸送性材料を94質量%以上99.7質量%以下、含有する電子写真感光体である。
前記一般式(I)中、Rは、炭素数1以上9以下のパーフルオロアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、nは0,1又は2を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。
請求項3に係る発明は、
前記電荷輸送性材料が、下記一般式(II)で示される化合物である請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
−((−R−X)n1(Rn2−Y)n3 (II)
(一般式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を示し、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1を示し、n2は0又は1を示し、n3は1以上4以下の整数を示す。Xは酸素原子、NH、又は硫黄原子を示し、Yは−OH、−OCH、−NH、−SH、又は−COOHを示す。)
請求項4に係る発明は、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えるプロセスカートリッジである。
請求項5に係る発明は、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記電子写真感光体に形成された前記静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、
前記現像手段により形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、
前記トナー像の転写後に前記電子写真感光体上に残留する残留トナーを除去する残留トナー除去手段と、を備える画像形成装置である。
請求項1に係る発明によれば、感光層の最表面層に含まれる化合物の種類及び含有量を考慮しない場合に比較して、電子写真感光体を使用する際の残留電位の上昇が抑制される。
請求項2に係る発明によれば、塗布液に含まれる化合物の種類及び含有量を考慮しない場合に比較して、電子写真感光体を使用する際の残留電位の上昇が抑制される。
請求項3に係る発明によれば、感光層の最表面層に含まれる化合物の種類を考慮しない場合に比較して、電子写真感光体を使用する際の残留電位の上昇が抑制される。
請求項4に係る発明によれば、感光体における感光層の最表面層に含まれる化合物の種類及び含有量を考慮しない場合に比較して、電子写真感光体を使用する際の残留電位の上昇が抑制される。
請求項5に係る発明によれば、感光体における感光層の最表面層に含まれる化合物の種類及び含有量を考慮しない場合に比較して、電子写真感光体を使用する際のおける残留電位の上昇が抑制される。
実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。 実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。 実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。 実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。 他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
[電子写真感光体]
本実施形態に係る電子写真感光体(以下、「感光体」と称する場合がある)は、導電性基体と、前記導電性基体表面に設けた感光層と、を有し、前記感光層の最表面層が、前記グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成され、前記最表面層中に、下記一般式(I)で表されるシラン化合物を0.2質量%以上1質量%以下、前記電荷輸送性材料を94質量%以上99.7質量%以下、含有することを特徴とする。
前記一般式(I)中、Rは、炭素数1以上8以下のパーフルオロアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、nは0,1又は2を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。
また本実施形態に係る感光体は、導電性基体と、前記導電性基体表面に設けた感光層と、を有し、前記感光層の最表面層が、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料の少なくとも1種とを含む塗布液を用いた架橋物を含んで構成され、前記塗布液中に、下記一般式(I)で表されるシラン化合物を0.2質量%以上1質量%以下、前記電荷輸送性材料を94質量%以上99.7質量%以下、含有することを特徴とする。
前記一般式(I)中、Rは、炭素数1以上9以下のパーフルオロアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、nは0,1又は2を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。
本実施形態の感光体は、上記構成であることにより、電子写真感光体を使用する際の残留電位の上昇が抑制され、従って、残留電位の上昇に起因して生じる黒点やカブリといった画像欠陥の発生が抑制される。
感光体の機械的強度を向上させる目的で、本実施形態では、感光層の最表面層、あるいは、最表面層を形成する塗布液に、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料の少なくとも1種とを含む架橋物を含んを用いており、これにより、電荷移動数も向上するという利点を有するところ、さらに、シラン化合物を特定量含有させることで、シラン化合物中の正に分極したケイ素原子によって電荷輸送層中の負に分極したトラップサイトが中和され、電荷の移動が効率よく行われるため、繰り返し使用した場合でも残留電位の上昇が抑制され、残留電位の上昇により生じる画像欠陥、例えば、黒点やカブリの発生が抑制され、長期に亘り高画質が維持され、信頼性が高く、長寿命であるという利点を有する。
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
以下に本発明で使用される電子写真感光体について説明する。
図1は、実施形態に係る電子写真用感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図2乃至図3はそれぞれ他の実施形態に係る電子写真感光体を示す模式断面図である。
図1に示す電子写真感光体7は、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、電荷輸送層3、保護層5が順次形成された感光層が設けられている。
図2に示す電子写真感光体7は、図1に示す電子写真感光体7と同様に電荷発生層2と電荷輸送層3とに機能が分離された感光層を備えるものである。また、図3に示す電子写真感光体7は、電荷発生材料と電荷輸送性材料とを同一の層(単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層))に含有するものである。
図2に示す電子写真感光体7においては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷輸送層3、電荷発生層2、保護層5が順次形成された感光層が設けられている。また、図3に示す電子写真感光体7においては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に単層型感光層6、保護層5が順次形成された感光層が設けられている。
そして、上記図1乃至図3に示す保護層5が、上記最表面層に相当する。なお、図1乃至図3に示す電子写真感光体7において、下引層は設けても設けなくてもよい。
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体7に基づいて、各要素について説明する。
<導電性基体>
導電性基体4としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、及び金属ベルト、又は、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が挙げられる。なお、本明細書において、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
電子写真感光体7がレーザープリンターに使用される場合、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、導電性基体4の表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが望ましい。Raが0.04μm未満であると、鏡面に近くなるので干渉防止効果が不十分となる傾向があり、Raが0.5μmを越えると、被膜を形成しても画質が粗くなる傾向がある。なお、非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、導電性基体4表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、又は回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が望ましい。
また、他の粗面化の方法としては、導電性基体4表面を上記方法で粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も望ましく用いられる。
ここで、陽極酸化による粗面化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが望ましい。
陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が望ましい。この膜厚が0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向にある。
また、導電性基体4には、酸性水溶液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調整する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が望ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が望ましいが、処理温度を高く保つことにより、当該処理温度の範囲よりも低い場合に比べ一層速く、かつ厚い被膜が形成される。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が望ましい。0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分間以上60分間以下浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分間以上60分間以下接触させることにより行われる。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が望ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の他種に比べ被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
<下引層>
下引層1は、例えば、結着樹脂に無機粒子を含有して構成される。
無機粒子としては、粉体抵抗(体積抵抗率)102Ω・cm以上1011Ω・cm以下のものが望ましく用いられる。これは下引層1はリーク耐性、キャリアブロック性獲得のために適切な抵抗を得ることが必要でるためである。なお、上記範囲の下限よりも無機粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られず、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こしてしまう懸念がある。
中でも上記抵抗値を有する無機粒子としては、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の無機粒子(導電性金属酸化物)を用いるのが望ましく、特に酸化亜鉛は望ましく用いられる。
また、無機粒子は表面処理を行ったものでもよく、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものなど2種以上混合して用いてもよい。無機粒子の体積平均粒径は50nm以上2000nm以下(望ましくは60以上1000以下)の範囲であることが望ましい。
また、無機粒子としては、BET法による比表面積が10m2/g以上のものが望ましく用いられる。比表面積値が10m2/g未満のものは帯電性低下を招きやすく、良好な電子写真特性を得にくい傾向がある。
さらに無機粒子とアクセプター性化合物を含有させることで電気特性の長期安定性、キャリアブロック性に優れたものが得られる。アクセプター性化合物としては所望の特性が得られるものならばいかなるものでも使用されるが、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが望ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が望ましい。さらに、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等、アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が望ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。
これらのアクセプター性化合物の含有量は所望の特性が得られる範囲であれば任意に設定してもよいが、望ましくは無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下含有される。さらに電荷蓄積防止と無機粒子の凝集を防止する観点から0.05質量%以上10質量%以下が望ましい。無機粒子の凝集は、導電路形成にバラツキが生じやすくなり、繰り返し使用した際の残留電位の上昇など維持性の悪化を招きやすくなるだけでなく、黒点などの画質欠陥も引き起こしやすくなる。
アクセプター化合物は、下引層の塗布する際に添加するだけでもよいし、無機粒子表面にあらかじめ付着させておいてもよい。無機粒子表面にアクセプター化合物を付与させる方法としては、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
乾式法にて表面処理を施す場合には無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させたアクセプター化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによってバラツキが生じることなく処理される。添加又は噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが望ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、バラツキが生じることなく攪拌される前に溶剤が蒸発し、アクセプター化合物が局部的にかたまってしまいバラツキのない処理がされにくい欠点があり、望ましくない。添加又は噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。
湿式法としては、無機粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、アクセプター化合物を添加し攪拌又は分散したのち、溶剤除去することでバラツキが生じることなく処理される。溶剤除去方法はろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。湿式法においては表面処理剤を添加する前に無機粒子含有水分を除去してもよく、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いてもよい。
また、無機粒子はアクセプター化合物を付与する前に表面処理を施してもよい。表面処理剤としては所望の特性が得られるものであればよく、公知の材料から選択される。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤は良好な電子写真特性を与えるため望ましく用いられる。さらにアミノ基を有するシランカップリング剤は下引層1に良好なブロッキング性を与えるため望ましく用いられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては所望の電子写真感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いてもよいが、具体的例としてはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用してもよい。前記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いてもよいシランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用されるが、乾式法又は湿式法を用いることがよい。また、アクセプター付与とカップリング剤等による表面処理を同時に行ってもよい。
下引層1中の無機粒子に対するシランカップリング剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であれば任意に設定されるが分散性向上の観点から、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が望ましい。
下引層1に含有される結着樹脂としては、良好な膜が形成されるもので、かつ所望の特性が得られるものであれば公知のいかなるものでも使用されるが、例えばポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が望ましく用いられる。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
下引層形成用塗布液中のアクセプター性を付与した金属酸化物とバインダー樹脂、又は無機粒子とバインダー樹脂との比率は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定される。
下引層1中には電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いてもよい。添加物としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤などの有機ジルコニウム化合物、チタニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤などの有機チタニウム化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤などの有機アルミニウム化合物、シランカップリング剤等のほか、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物、などの有機金属化合物等が挙げられ、特に有機ジルコニウム化合物、有機チタニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物は、残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため、好ましく使用される。シランカップリング剤は金属酸化物の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに塗布液に添加して用いてもよい。
ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等である。
ジルコニウムキレート化合物の例として、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物の例としてはテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物の例としてはアルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
電子輸送性顔料としては、特開昭47−30330号公報に記載のペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料が上げられる。これらの顔料の中ではペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料と多環キノン顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが、電子移動性が高い点で好ましく使用される。また、これらの顔料の表面は、分散性、電荷輸送性を制御する目的で上記カップリング剤や、バインダーなどで表面処理しても良い。電子輸送性顔料は多すぎると下引き層の強度が低下し、塗膜欠陥を生じるため、95重量%以下、好ましくは90重量%以下で使用される。
これらの化合物は単独に若しくは複数の化合物の混合物又は重縮合物として用いてもよい。
下引層形成用塗布液を調整するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択される。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いられる。
また、これらの分散に用いる溶剤は単独又は2種以上混合して用いてもよい。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かし得る溶剤であれば、いかなるものでも使用される。
分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法を用いられる。さらにこの下引層1を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いられる。
このようにして得られた下引層形成用塗布液を用い、導電性基体上に下引層1が成膜される。
また、下引層1は、ビッカース硬度が35以上とされていることが望ましい。
さらに、下引層1は、所望の特性が得られるのであれば、いかなる厚さに設定されるが、厚さが15μm以上が望ましく、さらに望ましくは15μm以上50μm以下とされていることが望ましい。
下引層1の厚さが15μm未満であるときには、充分な耐リーク性能が得られず、また50μm以上であるときには長期使用した場合に残留電位が残りやすくなるため画像濃度異常を招きやすい欠点がある。
また、下引層1の表面粗さ(十点平均粗さ)はモアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整される。表面粗さ調整のために下引層中に樹脂などの粒子を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等を用いられる。
ここで、下引き層(下引層1)は、結着樹脂及び導電性金属酸化物を含み、且つ厚み20μmにおける波長950nmの光に対する光透過率が40%以下(望ましくは10%以上35%以下、より望ましくは15%以上30%以下)であることがよい。長寿命化を目標とした電子写真感光体において、安定した高画質を維持することが必要である。架橋型最表面層(保護層)を用いる場合にも同様の特性が求められる。架橋型最表面層(保護層)を使用した場合、多くの場合硬化のために酸触媒が用いられ、最表面層(保護層)中の固形分に対して量が多いほど膜強度が得られ、耐刷性を高められるため長寿命化される。一方でバルク中の残留触媒が電荷のトラップサイトとなるため、光疲労耐性が低くなりメンテナンス時などの光曝露等によって画像濃度ムラが生じる原因となる。この耐光性(光疲労耐性)は、材料(特に電荷輸送性材料、酸触媒)の量を最適化することで実使用上問題ないレベルまでは改善されるが、通常のオフィスなどより明るい環境、例えばショウルームなどの場所での照射や、電子写真感光体表面に付着した異物を観察するときなどの高輝度かつ長時間の曝露に対しては十分とはいえるものではなく、さらなる長寿命化を図るために硬化触媒を増やし、膜強度を高める必要があるが、その場合、光耐性が十分ではなくなることある。そこで、上記光透過率(即ち、光透過率が40%以下という低い値に抑えられている)を有する下引き層を用いることによって、電子写真感光体への入射光を下引き層が吸収することによって、強度の強い光に対する耐光性に優れ、長期に渡り安定して画像が得られる。即ち、導電性基体表面からの反射光が減るため、高輝度かつ長時間の光曝露に対して耐光性(光疲労耐性)が獲得されると共に、例えば硬化触媒量を増やし、最表面層(保護層)強度を高め耐刷性を向上させても、長寿命化が実現される。
なお、上記下引き層の光透過率は次のようにして測定される。下引き層形成用塗布液を、ガラスプレート上に乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布し、乾燥後、分光光度計を用いて波長950nmでの膜の光透過率を測定する。光度計による光透過率は、分光光度計として装置名「Spectrophotometer(U−2000)」、日立社製を用いる。
この下引き層の光透過率は、前記、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等を用いた分散時の分散時間を調整することで、制御される。分散時間は、特に限定しないが、5分から1000時間の任意の時間が好ましく、さらには30分から10時間がより好ましい。分散時間を長くすると、光透過率は低下する傾向にある。
また、表面粗さ調整のために下引層1を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等を用いられる。
塗布したものを乾燥させて下引層を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、製膜される温度で行われる。
<電荷発生層>
電荷発生層2は電荷発生材料及び結着樹脂を含有する層である。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域のレーザー露光に対しては、金属及又は無金属フタロシアニン顔料が望ましく、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、特開平5−43823号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより望ましい。また、近紫外域のレーザー露光に対してはジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン等がより望ましい。電荷発生材料としては、380nm以上500nm以下の露光波長の光源を用いる場合には無機顔料が望ましく、700nm以上800nm以下の露光波長の光源を用いる場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料が望ましい。
電荷発生材料としては、600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることが望ましい。このヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、従来のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とは異なるものであり、より優れた分散性が得られるため望ましい。このように、分光吸収スペクトルの最大ピーク波長を従来のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料よりも短波長側にシフトさせることにより、顔料粒子の結晶配列が好適に制御された微細なヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料となり、電子写真感光体の材料として用いた場合に、優れた分散性と、十分な感度、帯電性及び暗減衰特性とが得られる。
また、上記の810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが望ましい。具体的には、平均粒径が0.20μm以下であることが望ましく、0.01μm以上0.15μm以下であることがより望ましく、一方、BET比表面積が45m/g以上であることが望ましく、50m/g以上であることがより望ましく、55m/g以上120m/g以下であることが特に望ましい。平均粒径は、体積平均粒径(d50平均粒径)でレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)にて測定した値である。また、BET式比表面積測定器(島津製作所製:フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
平均粒径が0.20μmより大きい場合、又は比表面積値が45m/g未満である場合は、顔料粒子が粗大化しているか、又は顔料粒子の凝集体が形成されており、電子写真感光体の材料として用いた場合の分散性や、感度、帯電性及び暗減衰特性といった特性に欠陥が生じやすい傾向にあり、それにより画質欠陥を生じやすい傾向にある。
また、上記ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の最大粒径(一次粒子径の最大値)は、1.2μm以下であることが望ましく、1.0μm以下であることがより望ましく、より望ましくは0.3μm以下である。かかる最大粒径が上記範囲を超えると、微小黒点が発生しやすい傾向にある。
更に、感光体が蛍光灯などに暴露されたことに起因する濃度ムラをより確実に抑制する観点から、上記ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径が0.2μm以下、最大粒径が1.2μm以下であり、且つ、比表面積値が45m/g以上であることが望ましい。
また、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有するものであることが望ましい。
また、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、25℃から400℃まで昇温したときの熱重量減少率が2.0%以上4.0%以下であることが望ましく、2.5%以上3.8%以下であることがより望ましい。なお、熱重量減少率は熱天秤等により測定される。上記熱重量減少率が4.0%を超えると、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料に含有される不純物が電子写真感光体に影響を及ぼし、感度特性、繰り返し使用した際の電位の安定性や画像品質の低下を生じる傾向にある。また、2.0%未満であると、感度の低下が生じる傾向にある。これは、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が結晶中に微量含有する溶剤分子との相互作用によって増感作用を示すことに起因すると考えられる。
上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を電子写真感光体の電荷発生材料として用いた場合には、感光体の最適な感度や優れた光電特性が得られる点、及び感光層に含まれる結着樹脂中への分散性に優れているので画質特性に優れる点で特に有効である。
ここで、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の平均粒径及びBET比表面積を規定することによって,初期のかぶりや黒点の発生を抑えられることが知られてきたが,長期使用によりかぶりや黒点が発生するという問題があった.これに対し,後述する所定の最表面層(グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と特定の電荷輸送性材料とを用いた架橋物とシラン化合物とを含有する保護層)を組み合わせることによって,従来の最表面層及び電荷発生層の組み合わせで問題となっていた長期間の使用によるかぶりや黒点の発生が抑えられる。これは,長期使用によって発生する膜磨耗や帯電能力の低下が前記保護層を使用することによって抑制されるためであると考えられる。また,電気特性改善(残留電位低減)に効果がある電荷輸送層の薄膜化に対しても、従来感光体では発生してしまうかぶりや黒点などの画像欠陥の発生が、感光体表面の残留電位の上昇を抑制することで同時に抑制される。
電荷発生層2に使用される結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。望ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが望ましい。ここで、「絶縁性」とは、ここで、「絶縁性」とは体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
電荷発生層2は、上記電荷発生材料及び結着樹脂をこれら成分が溶解或いは分散する溶剤中に分散した塗布液を用いて形成される。
分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
また、電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いられる。これらの分散方法により、分散による電荷発生材料の結晶型の変化が防止される。さらにこの分散の際、電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、望ましくは0.3μm以下、さらに望ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
また、電荷発生層2を形成する際には、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いられる。
このようにして得られる電荷発生層2の膜厚は、望ましくは0.1μm以上5.0μm以下、さらに望ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
<電荷輸送層>
電荷輸送層3は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して、又は高分子電荷輸送材を含有して形成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物があげられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられるが、これらに限定されるものではない。
電荷輸送材料としては電荷移動度の観点から、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体が望ましい。
(構造式(a−1)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。nは1又は2を示す。Ar及びArは各々独立に置換若しくは未置換のアリール基、−C−C(R)=C(R10)(R11)、又は−C−CH=CH−CH=C(R12)(R13)を示し、R乃至R13はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。置換基としてはハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。)
(構造式(a−2)中、R14及びR14’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、を示す。R15、R15’、R16、及びR16’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R17)=C(R18)(R19)、又は−CH=CH−CH=C(R20)(R21)を示し、R17乃至R21は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。m及びnは各々独立に0以上2以下の整数を示す。)
ここで、上記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び上記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C−CH=CH−CH=C(R12)(R13)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「−CH=CH−CH=C(R20)(R21)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度、保護層との接着性、前画像の履歴が残ることで生じる残像(以下「ゴースト」と言う場合がある)などの観点で優れ望ましい。
電荷輸送層3に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。また、上述のように、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材等高分子電荷輸送材を用いてもよい。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は質量比で10:1から1:5までが望ましい。
特に、結着樹脂としては、特に限定しないが、粘度平均分子量50000以上80000以下のポリカーボネート樹脂、及び粘度平均分子量50000以上80000以下のポリアリレート樹脂の少なくとも1種が良好な成膜が得やすいことから望ましい。
また、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材を用いてもよい。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いられる。特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、他種に比べ高い電荷輸送性を有しており、特に望ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも成膜されるが、後述する結着樹脂と混合して成膜してもよい。
電荷輸送層3は、上記構成材料を含有する電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独又は2種以上混合して用いられる。また、上記各構成材料の分散方法としては、公知の方法が使用される。
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層2の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
電荷輸送層3の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上30μm以下である。
<保護層>
保護層5は、電子写真感光体7における最表面層であり、最表面の磨耗、傷などに対する耐性を持たせ、且つ、トナーの転写効率を上げるために設けられる層である。
保護層5は、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料の少なくとも1種とを含む塗布液を用いた架橋物を含んで構成され、さらに以下に詳述する該保護層には、上記化合物に加え、さらに、シラン化合物を含有する。
(グアナミン化合物)
まず、グアナミン化合物について説明する。
グアナミン化合物は、グアナミン骨格(構造)を有する化合物であり、例えば、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ホルモグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、シクロヘキシルグアナミンなどが挙げられる。
グアナミン化合物としては、特に下記一般式(A)で示される化合物及びその多量体の少なくとも1種であることが望ましい。ここで、多量体は、一般式(A)で示される化合物を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。なお、一般式(A)で示される化合物は、一種単独で用いもよいが、2種以上を併用してもよい。特に、一般式(A)で示される化合物は、2種以上混合して用いたり、それを構造単位とする多量体(オリゴマー)として用いたりすると、溶剤に対する溶解性が向上される。
一般式(A)中、Rは、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基、又は炭素数4以上10以下の置換若しくは未置換の脂環式炭化水素基を示す。R乃至Rは、それぞれ独立に水素、−CH−OH、又は−CH−O−Rを示す。Rは、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。
一般式(A)において、Rを示すアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、望ましくは炭素数が1以上8以下であり、より望ましくは炭素数が1以上5以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分鎖状であってもよい。
一般式(A)中、Rを示すフェニル基は、炭素数6以上10以下であるが、より望ましくは6以上8以下である。当該フェニル基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
一般式(A)中、Rを示す脂環式炭化水素基は、炭素数4以上10以下であるが、より望ましくは5以上8以下である。当該脂環式炭化水素基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
一般式(A)中、R乃至Rを示す「−CH−O−R」において、Rを示すアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、望ましくは炭素数が1以上8以下であり、より望ましくは炭素数が1以上6以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分鎖状であってもよい。望ましくは、メチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
一般式(A)で示される化合物としては、特に望ましくは、Rが炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示し、R乃至Rがそれぞれ独立に−CH−O−Rを示される化合物である。また、Rは、メチル基又はn-ブチル基から選ばれることが望ましい。
一般式(A)で示される化合物は、例えば、グアナミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法(例えば、実験化学講座第4版、28巻、430ページ)で合成される。
以下、一般式(A)で示される化合物の具体例を示すが、これらに限られるわけではない。また、以下の具体例は、単量体のものを示すが、これらを構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。
一般式(A)で示される化合物の市販品としては、例えば、”スーパーベッカミン(R)L−148−55、スーパーベッカミン(R)13−535、スーパーベッカミン(R)L−145−60、スーパーベッカミン(R)TD−126”以上大日本インキ社製、”ニカラックBL−60、ニカラックBX−4000”以上日本カーバイド社製、などが挙げられる。
また、一般式(A)で示される化合物(多量体を含む)は、合成後又は市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
(メラミン化合物)
次に、メラミン化合物について説明する。
メラミン化合物としては、メラミン骨格(構造)であり、特に下記一般式(B)で示される化合物及びその多量体の少なくとも1種であることが望ましい。ここで、多量体は、一般式(A)と同様に、一般式(B)で示される化合物を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。なお、一般式(B)で示される化合物又はその多量体は、一種単独で用いもよいが、2種以上を併用してもよい。また、前記一般式(A)で示される化合物又はその多量体と併用してもよい。特に、一般式(B)で示される化合物は、2種以上混合して用いたり、それを構造単位とする多量体(オリゴマー)として用いたりすると、溶剤に対する溶解性が向上される。
一般式(B)中、R乃至R11はそれぞれ独立に、水素原子、−CH−OH、−CH−O−R12を示し、R12は炭素数1以上5以下の分岐してもよいアルキル基を示す。当該アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
一般式(B)で示される化合物は、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法(例えば、実験化学講座第4版、28巻、430ページのメラミン樹脂と同様に合成される)で合成される。
以下、一般式(B)で示される化合物の具体例を示すが、これらに限られるわけではない。また、以下の具体例は、単量体のものを示すが、これらを構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。
一般式(B)で示される化合物の市販品としては、例えば、スーパーメラミNo.90(日本油脂社製)、スーパーベッカミン(R)TD−139−60(大日本インキ社製)、ユーバン2020(三井化学)、スミテックスレジンM−3(住友化学工業)、ニカラックMW−30(日本カーバイド社製)、などが挙げられる。
また、一般式(B)で示される化合物(多量体を含む)は、合成後又は市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
本実施形態の保護層における前記グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種の塗布液における固形分濃度は、後述する電荷輸送性材料及びシラン化合物の含有量から決定されるが、好ましくは、0.1質量%以上5.8質量%以下であり、より好ましくは、0.5質量%以上3.6質量%以下である。この固形分濃度が上記範囲内にある場合は、範囲外である場合に比べ、緻密な膜が形成され、膜の十分な強度が得られるとともに、電気特性や耐ゴースト性が良好となる。
(電荷輸送性材料)
次に、特定の電荷輸送性材料について説明する。特定の電荷輸送性材料としては、例えば、−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つものが好適に挙げられる。特に、特定の電荷輸送性材料としては、−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基を少なくとも2つ(さらには3つ)持つものが好適に挙げられる。この如く、特定の電荷輸送性材料に反応性官能基(当該置換基)が増えることで、架橋密度が上がり、より強度の高い架橋膜が得られ、特にブレードクリーナーを用いた際の電子写真感光体の回転トルクが低減され、ブレードへのダメージの抑制や、電子写真感光体の磨耗が抑制される。この詳細は不明であるが、反応性官能基の数が増すことで、架橋密度の高い硬化膜が得られることから、電子写真感光体の極表面の分子運動が抑制されてブレード部材表面分子との相互作用が弱まるためと推測される。
特定の電荷輸送性材料としては、下記一般式(II)で示される化合物であることが望ましい。
−((−R−X)n1(Rn2−Y)n3 (II)
一般式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1を示し、n2は0又は1を示し、n3は1以上4以下の整数を示す。Xは酸素、NH、又は硫黄原子を示し、Yは−OH、−OCH、−NH、−SH、又は−COOHを示す。
一般式(II)中、Fを示す正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基における正孔輸送能を有する化合物としては、アリールアミン誘導体が好適に挙げられる。アリールアミン誘導体としては、トリフェニルアミン誘導体、テトラフェニルベンジジン誘導体が好適に挙げられる。
そして、一般式(II)で示される化合物は、下記一般式(III)で示される化合物であることが望ましい。一般式(III)で示される化合物は、特に、電荷移動度、酸化などに対する安定性等に優れる。
一般式(III)中、Ar乃至Arは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは−(−R−X)n1(Rn2−Yを示し、cはそれぞれ独立に0又は1を示し、kは0又は1を示し、Dの総数は1以上4以下である。また、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1を示し、n2は0又は1を示し、Xは酸素、NH、又は硫黄原子を示し、Yは−OH、−OCH、−NH、−SH、又は−COOHを示す。
一般式(III)中、Dを示す「−(−R−X)n1(Rn2−Y」は、一般式(II)におけるのと同様であり、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基である。また、n1として望ましくは、1である。また、n2として望ましくは、1である。また、Xとして望ましくは、酸素である。また、Yとして望ましくは水酸基である。
なお、一般式(III)におけるDの総数は、一般式(II)におけるn3に相当し、望ましくは、2以上4以下であり、さらに望ましくは3以上4以下である。つまり、一般式(II)や一般式(III)において、Dの総数を、望ましくは一分子中に2以上4以下、さらに望ましくは3以上4以下とすると、架橋密度が上がり、より強度の高い架橋膜が得られ、特にブレードクリーナーを用いた際の電子写真感光体の回転トルクが低減され、ブレードへのダメージの抑制や、電子写真感光体の磨耗が抑制される。この詳細は不明であるが、反応性官能基の数が増すことで、架橋密度の高い硬化膜が得られ、電子写真感光体の極表面の分子運動が抑制されてブレード部材表面分子との相互作用が弱まるためと推測される。
一般式(III)中、Ar乃至Arとしては、下記式(1)乃至(7)のうちのいずれかであることが望ましい。なお、下記式(1)乃至(7)は、各Ar乃至Arに連結され得る「−(D)」と共に示す。
式(1)乃至(7)中、Rは水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R10乃至R12はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、D及びcは一般式(II)における「D」、「c」と同様であり、sはそれぞれ0又は1を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
ここで、式(7)中のArとしては、下記式(8)又は(9)で表されるものが望ましい。
[式(8)、(9)中、R13及びR14はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
また、式(7)中のZ’としては、下記式(10)乃至(17)のうちのいずれかで表されるものが望ましい。
[式(10)乃至(17)中、R15及びR16はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ1以上10以下の整数を表し、tはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。]
上記式(16)乃至(17)中のWとしては、下記(18)乃至(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが望ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
また、一般式(III)中、Arは、kが0の場合はAr乃至Arの説明で例示された上記(1)乃至(7)で示されるアリール基であり、kが1の場合は上記(1)乃至(7)で示されるアリール基から所定の水素原子を除いたアリーレン基である。
一般式(II)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(II−1)乃至(II−34)が挙げられる。なお、上記一般式(II)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
上記特定の電荷輸送性材料の少なくとも1種の前記塗布液における固形分濃度は、94質量%以上99.7質量%以下であることを要する。望ましくは96質量%以上であり、より望ましくは96.5質量%以上である。この固形分濃度は、上記範囲内にある場合に比べ、上記範囲未満であると電気特性が悪化する場合がある。なお、この固形分濃度の上限は、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種、後述するシラン化合物(一般式(I)で表される化合物)、及び、他の添加剤が有効に機能する限り限定されるものではなく、多いほうが望ましい。
さらに、感光層の最表面層である保護層中における、上記特定の電荷輸送性材料の少なくとも1種の含有量は、94質量%以上99.7質量%以下であることを要する。望ましくは96質量%以上であり、より望ましくは96.5質量%以上である。
なお、感光層の最表面層である保護層中における、上記特定の電荷輸送性材料の少なくとも1種、又は、上記グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種の含有量は、上記塗布液中における固形分濃度を調整することによって制御される。
(シラン化合物)
次に、シラン化合物について説明する。本実施形態に用いられるシラン化合物は下記一般式(I)で表される化合物である。
前記一般式(I)中、Rは、炭素数1以上8以下のパーフルオロアルキル基を表す。パーフルオロアルキル基としては、直鎖状であっても分岐鎖を有するものであってもよいが、直鎖状のものが好ましい。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、好ましくは水素原子である。nは0,1又は2を表す。
、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキル基を表し、好ましくはメチル基である。
前記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、CFCHCHSi(OCH(トリフルオロプリピルトリメトキシシラン)、nCFCH17CHSi(OCH(ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシラン)、などが挙げられる。
本実施形態に使用しうるシラン化合物は、信越化学(株)製、KBM 7103、KBM 7803などの市販品としても入手可能である。
本実施形態において、シラン化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記シラン化合物の前記塗布液における固形分濃度は、0.2質量%以上1質量%以下であることを要する。望ましくは0.4質量%以上0.6質量%以下であり、より望ましくは0.5質量%以上0.6質量%以下である。この固形分濃度は、上記範囲内にある場合に比べ、上記範囲未満であると残留電位の変動抑制効果が悪化する場合がある。
さらに、感光層の最表面層である保護層中における、上記シラン化合物の含有量は0.2質量%以上1質量%以下であることを要する。望ましくは0.4質量%以上0.6質量%以下であり、より望ましくは0.5質量%以上0.6質量%以下である。
以下、保護層5についてさらに詳細に説明する。
保護層5には、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種と特定の電荷輸送性材料(一般式(II)で示される化合物)との架橋物及び前記シラン化合物(一般式(I)で示される化合物)と共に、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂などを混合して用いてもよい。また、強度を向上させるために、スピロアセタール系グアナミン樹脂(例えば「CTU−グアナミン」(味の素ファインテクノ(株)))など、一分子中の官能基のより多い化合物を当該架橋物中の材料に共重合させることも効果的である。
また、保護層5には、放電生成ガスを吸着しすぎないように、添加することで放電生成ガスによる酸化を効果的に抑制する目的から、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などの他の熱硬化性樹脂を混合して用いてもよい。
また、保護層5には界面活性剤を添加することが好ましく、用いる界面活性剤としては、フッ素原子、アルキレンオキサイド構造、シリコーン構造のうち少なくとも一種類以上の構造を含む界面活性剤であれば特に制限はないが、上記構造を複数有するものが電荷輸送性有機化合物との親和性・相溶性が高く保護層用塗布液の成膜性が向上し、保護層5のシワ・ムラが抑制されるため、好適に挙げられる。
フッ素原子を有する界面活性剤としては、様々なものが挙げられる。フッ素原子およびアクリル構造を有する界面活性剤として具体的は、ポリフローKL600(共栄社化学社製)、エフトップEF−351、EF−352、EF−801、EF−802、EF−601(以上、JEMCO社製)などが挙げられる。アクリル構造を有する界面活性剤とは、アクリルもしくはメタクリル化合物などのモノマーを重合もしくは共重合したものが主に挙げられる。
また、フッ素原子を有する界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキル基を持つ界面活性剤が挙げられ、さらに具体的には、パーフルオロアルキルスルホン酸類(例えば、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸など)、パーフルオロアルキルカルボン酸類(例えば、パーフルオロブタンカルボン酸、パーフルオロオクタンカルボン酸など)、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステルが好適に挙げられる。パーフルオロアルキルスルホン酸類、及びパーフルオロアルキルカルボン酸類は、その塩及びそのアミド変性体であってもよい。
パーフルオロアルキルスルホン酸類の市販品としては、例えばメガファックF−114(大日本インキ化学工業株式会社製)、エフトップEF−101、EF102、EF−103、EF−104、EF−105、EF−112、EF−121、EF−122A、EF−122B、EF−122C、EF−123A(以上、JEMCO社製)、A−K、501(以上、ネオス社製)などが挙げられる。
パーフルオロアルキルカルボン酸類の市販品としては、例えばメガファックF−410(大日本インキ化学工業株式会社製)、エフトップ EF−201、EF−204(以上、JEMCO社製)などが挙げられる。
パーフルオロアルキル基含有リン酸エステルの市販品としては、メガファックF−493、F−494(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)エフトップ EF−123A、EF−123B、EF−125M、EF−132、(以上、JEMCO社製)などが挙げられる。
アルキレンオキサイド構造を持つ界面活性剤としてはポリエチレングリコール、ポリエーテル消泡剤、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが挙げられる。ポリエチレングリコールとしては数平均分子量が2000以下のものが好ましく、数平均分子量が2000以下のポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール2000(数平均分子量2000)、ポリエチレングリコール600(数平均分子量600)、ポリエチレングリコール400(数平均分子量400)、ポリエチレングリコール200(数平均分子量200)等が挙げられる。
また、ポリエーテル消泡剤としては、PE−M、PE−L(以上、和光純薬工業社製)、消泡剤No.1、消泡剤No.5(以上、花王社製)等が挙げられる。
シリコーン構造を有する界面活性剤としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーンやそれらの誘導体の如き一般的なシリコーンオイルが挙げられる。
さらに、フッ素原子、アルキレンオキサイド構造の両方を有する界面活性剤としてはアルキレンオキサイド構造、もしくはポリアルキレン構造を側鎖に有するものや、アルキレンオキサイドもしくはポリアルキレンオキサイド構造の末端がフッ素を含む置換基で置換されたものなどが挙げられる。アルキレンオキサイド構造を有する界面活性剤として、具体的には、例えば、メガファックF−443、F−444、F−445、F−446(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、POLY FOX PF636、PF6320、PF6520、PF656(以上、北村化学社製)などが挙げられる。
また、アルキレンオキサイド構造、シリコーン構造の両方を有する界面活性剤としてはKF351(A)、KF352(A)、KF353(A)、KF354(A)、KF355(A)、KF615(A)、KF618、KF945(A)、KF6004(以上、信越化学工業社製)、TSF4440、TSF4445、TSF4450、TSF4446、TSF4452、TSF4453、TSF4460(以上、GE東芝シリコン社製)、BYK−300、302、306、307、310、315、320、322、323、325、330、331、333、337、341、344、345、346、347、348、370、375、377,378、UV3500、UV3510、UV3570等(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社社製)が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、保護層5の固形分全量に対して、望ましくは0.01質量%以上1質量%以下、より望ましくは0.02質量%以上0.5質量%以下である。フッ素原子を有する界面活性剤の含有量が0.01質量%以上とすることでシワ・ムラが抑制などの塗膜欠陥防止効果がより大きくなる傾向にある。また、フッ素原子を有する界面活性剤の含有量が1質量%以下とすることで、当該フッ素原子を有する界面活性剤と硬化樹脂の分離しにくくなり、得られる硬化物の強度が維持される傾向にある。
また、保護層5には、さらに、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、他のカップリング剤、フッ素化合物と混合して用いても良い。この化合物として、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、等が用いられる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越シリコーン社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等が用いられる。
また、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、等の含フッ素化合物を加えても良い。シランカップリング剤は任意の量で使用されるが、含フッ素化合物の量は、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが望ましい。この使用量を超えると、架橋膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
また、保護層5の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的でアルコールに溶解する樹脂を加えてもよい。
ここで、アルコールに可溶な樹脂とは、炭素数5以下のアルコールに1質量%以上溶解する樹脂を意味する。アルコール系溶剤に可溶な樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂(たとえば積水化学社製エスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂、ポリビニルフェノール樹脂などがあげられる。特に、電気特性の点でポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が望ましい。当該樹脂の重量平均分子量は2,000以上100,000以下が望ましく、5,000以上50,000以下がより望ましい。樹脂の分子量が2,000未満であると樹脂の添加による効果が不十分となる傾向にあり、また、100,000を超えると溶解度が低下して添加量が制限され、さらには塗布時に製膜不良を招く傾向にある。
保護層5には、帯電装置で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、酸化防止剤を添加することが望ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来より強い酸化耐性が要求される。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系又はヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
更に、保護層5には、残留電位を下げる目的、又は強度を向上させる目的で、各種粒子を添加してもよい。粒子の一例として、ケイ素含有粒子が挙げられる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒径1nm以上100nm以下、望ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性もしくはアルカリ性の水分散液、アルコール、ケトン、又はエステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用してもよい。
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものが使用される。これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は望ましくは1nm以上500nm以下、より望ましくは10nm以上100nm以下である。シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状が改善される。すなわち、強固な架橋構造中にバラツキが生じることなくに取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性が維持される。
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示される如く、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al23、SnO2−Sb23、In23−SnO2、ZnO2−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al23、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In23、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
また、保護層5には、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等を添加してもよい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層の透明性の点で0.3μm以下、特に0.1μm以下が望ましい。
保護層5には、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)や電荷輸送性材料の硬化を促進するために硬化触媒を使用してもよい。硬化触媒として酸系の触媒が望ましく用いられる。即ち、本実施形態において保護層が含有する硬化物は、グアナミン化合物及びメラミン化合物の少なくとも1種と特定電荷輸送性材料とが酸触媒の存在下で、反応して得られたものであることが好ましい。
酸系の触媒としては、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸などの脂肪族カルボン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの芳香族カルボン酸、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、などの脂肪族、及び芳香族スルホン酸類などが用いられるが、含硫黄系材料を用いることが望ましい。
硬化触媒として含硫黄系材料を用いることにより、この含硫黄系材料がグアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)や電荷輸送性材料の硬化触媒として優れた機能を発揮し、硬化反応を促進して得られる保護層5の機械的強度がより向上される。更に、電荷輸送性材料として上記一般式(I)(一般式(II)含む)で表される化合物を用いる場合、含硫黄系材料は、これら電荷輸送性材料に対するドーパントとしても優れた機能を発揮し、得られる機能層の電気特性がより向上される。その結果、電子写真感光体を形成した場合に、機械強度、成膜性及び電気特性の全てが高水準で達成される。
硬化触媒としての含硫黄系材料は、常温(例えば25℃)、又は、加熱後に酸性を示すものが望ましく、接着性、ゴースト、電気特性の観点で有機スルホン酸及びその誘導体の少なくとも1種が最も望ましい。保護層5中にこれら触媒の存在は、XPS等により容易に確認される。
有機スルホン酸及び/又はその誘導体としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、触媒能、成膜性の観点から、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が望ましい。また、硬化性樹脂組成物中で、ある程度解離されれば、有機スルホン酸塩を用いてもよい。
また、一定以上の温度をかけたときに触媒能力が高くなる、所謂、熱潜在性触媒を用いることで、液保管温度では触媒能が低く、硬化時に触媒能が高くなるため、硬化温度の低下と、保存安定性が両立される。
熱潜在性触媒として、たとえば有機スルホン化合物等をポリマーで粒子状に包んだマイクロカプセル、ゼオライトの如く空孔化合物に酸等を吸着させたもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックした熱潜在性プロトン酸触媒や、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を一級もしくは二級のアルコールでエステル化したもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体をビニルエーテル類及び/又はビニルチオエーテル類でブロックしたもの、三フッ化ホウ素のモノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素のピリジン錯体などがあげられる。
中でも、触媒能、保管安定性、入手性、コストの面でプロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックしたものが望ましい。
熱潜在性プロトン酸触媒のプロトン酸として、硫酸、塩酸、酢酸、ギ酸、硝酸、リン酸、スルホン酸、モノカルボン酸、ポリカルボン酸類、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、o、m、p−トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。また、プロトン酸誘導体として、スルホン酸、リン酸等のプロトン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属円などの中和物、プロトン酸骨格が高分子鎖中に導入された高分子化合物(ポリビニルスルホン酸等)等が挙げられる。プロトン酸をブロックする塩基として、アミン類が挙げられる。
アミン類として、1級、2級又は3級アミンに分類される。特に制限はなく、いずれも使用してもよい。
1級アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、セカンダリーブチルアミン、アリルアミン、メチルヘキシルアミン等が挙げられる。
2級アミンとして、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジt−ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、N−イソプロピルN−イソブチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジセカンダリーブチルアミン、ジアリルアミン、N−メチルヘキシルアミン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、モルホリン、N−メチルベンジルアミン等が挙げられる。
3級アミンとして、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリt−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N,N’,N’ーテトラメチルー1,2ージアミノエタン、N,N,N’,N’ーテトラメチルー1,3ージアミノプロパン、N,N,N’,N’ーテトラアリルー1,4ージアミノブタン、Nーメチルピペリジン、ピリジン、4ーエチルピリジン、Nープロピルジアリルアミン、3−ジメチルアミノプロパノ−ル、2−エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−コリジン、2−メチル−4−エチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、N,N,N’,N’ −テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−エチル−3−ヒドロキシピペリジン、3−メチル−4−エチルピリジン、3−エチル−4−メチルピリジン、4−(5−ノニル)ピリジン、イミダゾ−ル、N−メチルピペラジン等が挙げられる。
市販品としては、キングインダストリーズ社製の「NACURE2501」(トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.0以上pH7.2以下、解離温度80℃)、「NACURE2107」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH8.0以上pH9.0以下、解離温度90℃)、「NACURE2500」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0以上pH7.0以下、解離温度65℃)、「NACURE2530」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH5.7以上pH6.5以下、解離温度65℃)、「NACURE2547」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH8.0以上pH9.0以下、解離温度107℃)、「NACURE2558」(p−トルエンスルホン酸解離、エチレングリコール溶媒、pH3.5以上pH4.5以下、解離温度80℃)、「NACUREXP−357」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール溶媒、pH2.0以上pH4.0以下、解離温度65℃)、「NACUREXP−386」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH6.1以上pH6.4以下、解離温度80℃)、「NACUREXC―2211」(p−トルエンスルホン酸解離、pH7.2以上pH8.5以下、解離温度80℃)、「NACURE5225」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0以上pH7.0以下、解離温度120℃)、「NACURE5414」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE5528」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH7.0以上pH8.0以下、解離温度120℃)、「NACURE5925」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、pH7.0以上pH7.5以下、解離温度130℃)、「NACURE1323」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン溶媒、pH6.8以上pH7.5以下、解離温度150℃)、「NACURE1419」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン/メチルイソブチルケトン溶媒、解離温度150℃)、「NACURE1557」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、ブタノール/2−ブトキシエタノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度150℃)、「NACUREX49−110」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度90℃)、「NACURE3525」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH7.0以上pH8.5以下、解離温度120℃)、「NACUREXP−383」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE3327」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度150℃)、「NACURE4167」(リン酸解離、イソプロパノール/イソブタノール溶媒、pH6.8以上pH7.3以下、解離温度80℃)、「NACUREXP−297」(リン酸解離、水/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度90℃、「NACURE4575」(リン酸解離、pH7.0以上pH8.0以下、解離温度110℃)等が挙げられる。
これらの熱潜在性触媒は単独又は二種類以上組み合わせても使用される。
ここで、触媒の配合量は、上記グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種の量(塗布液における固形分の総含有量)100質量部に対し、0.1質量部以上100質量部以下の範囲であることが望ましく、とくに10質量部以上30質量部以下であることが望ましい。この配合量が上記範囲未満であると、触媒活性が低すぎることがあり、上記範囲を超えると耐光性が悪くなることがある。なお、耐光性とは、感光層が室内光などの外界からの光に晒されたときに、照射された部分が濃度低下を起こす現象のことを言う。原因は、明らかではないが、特開平5−099737号公報にあるように、光メモリー効果と同様の現象が起こっているためであると推定される。
以上の構成の保護層5は、上記グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種と上記特定の電荷輸送性材料の少なくとも1種と上記シラン化合物(一般式(I)で示される化合物)とを少なくとも含む皮膜形成用塗布液を用いて形成される。この皮膜形成用塗布液は、必要に応じて、上記保護層5の構成成分が添加される。
当該皮膜形成用塗布液の調整は、無溶媒で行うか、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の溶剤を用いて行ってもよい。かかる溶剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用されるが、望ましくは沸点が100℃以下のものである。溶剤としては、特に、少なくとも1種以上の水酸基を持つ溶剤(例えば、アルコール類等)を用いることがよい。
溶剤量は任意に設定されるが、少なすぎるとグアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)が析出しやすくなるため、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種の1質量部に対し0.5質量部以上30質量部以下、望ましくは、1質量部以上20質量部以下で使用される。
また、上記成分を反応させて塗布液を得るときには、単純に混合、溶解させるだけでもよいが、室温(例えば25℃)以上100℃以下、望ましくは、30℃以上80℃以下で10分以上100時間以下、望ましくは1時間以上50時間以下加温しても良い。また、この際に超音波を照射することも望ましい。これにより、恐らく部分的な反応が進行し、塗膜欠陥のなく膜厚のバラツキが少ない膜が得られやすくなる。
そして、皮膜形成用塗布液を電荷輸送層3の上に、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法により塗布し、必要に応じて例えば温度100℃以上170以下で加熱することで、硬化させることで、保護層5が得られる。
なお、皮膜形成用塗布液は、感光体用途以外にも、例えば、蛍光発色性塗料、ガラス表面、プラスチック表面などの帯電防止膜等に利用される。この皮膜形成用塗布液を用いると、下層に対する密着性に優れた皮膜が形成され、長期にわたる繰り返し使用による性能劣化が抑制される。
ここで、上記電子写真感光体は、機能分離型の例を説明したが、単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層)中の電荷発生材料の含有量は、10質量%以上85質量%以下程度、望ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、電荷輸送材料の含有量は5質量%以上50質量%以下とすることが望ましい。単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層)の形成方法は、電荷発生層2や電荷輸送層3の形成方法と同様である。単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)6の膜厚は5μm以上50μm以下程度が望ましく、10μm以上40μm以下とするのがさらに望ましい。
また、図1から図3に示した電子写真感光体7の感光層を構成する各層には、画像形成装置中で発生するオゾン、酸化性ガス、光、又は熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等があげられる。
光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体が挙げられる。
また、図1から図3に示した電子写真感光体7の感光層を構成する各層には、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、電子受容性物質を含有させてもよい。
電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等が挙げられる。これらの中でも、フルオレノン系、キノン系、又はCl−、CN−、もしくはNO−等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
さらに、図1から図3に示した電子写真感光体7の表面層を、フッ素系樹脂を含有する水性分散液で処理すると、さらなるトルク低減が図れるとともに転写効率の向上も図れるため好ましい。
なお、本実施形態では、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種と、特定の電荷輸送性材料(一般式(I)で示される化合物)との架橋物及びシラン化合物(一般式(I)で示される化合物)を保護層5に用いた形態を説明したが、保護層5がない層構成の場合、例えば、その最表面層に位置する電荷輸送層に上記架橋物及びシラン化合物を用いてもよい。その場合においても、電荷輸送層における特定の電荷輸送性材料の含有量は94質量%以上となることを要する。
[画像形成装置/プロセスカートリッジ]
図4は、実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。画像形成装置100は、図4に示すように。電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9と、転写装置40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光する位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。
図4におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8、現像装置11及びクリーニング装置13を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード131(クリーニング部材)を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。
また、潤滑材14を感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、クリーニングをアシストする繊維状部材133(平ブラシ状)を用いた例を示してあるが、これらは必要に応じて使用してもよい。
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
なお、本実施形態においては、上記保護層の機能により、上記構成を有しないものに比較して残留電位の上昇が抑制されるために、帯電力が交流型に比較的して弱い直流型の帯電部材を有する画像形成装置にも好適に使用される。
なお、図示しないが、画像の安定性を高める目的で、電子写真感光体7の周囲には、電子写真感光体7の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための感光体加熱部材を設けてもよい。
露光装置9としては、例えば、感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、所望の像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nmに発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビーム出力タイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
現像装置11としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行ってもよい。その現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、上記一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが望ましい。
現像装置11に使用されるトナーについては後述する。
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いられる。
画像形成装置100は、上述した各装置の他に、例えば、感光体7に対して光除電を行う光除電装置を備えていてもよい。
図5は、他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略断面図である。画像形成装置120は、図5に示すように、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
タンデム型の画像形成装置に本発明の電子写真感光体を用いた場合、4本の感光体の電気特性が安定することから、より長期に渡ってカラーバランスの優れた画質が得られる。
また、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)において、現像装置(現像手段)は、電子写真感光体の移動方向(回転方向)に対して逆方向に移動(回転)する現像剤保持体である現像ローラを有することが望ましい。ここで、現像ローラは表面に現像剤を保持する円筒状の現像スリーブを有しており、また、現像装置はこの現像スリーブに供給する現像剤の量を規制する規制部材を有する構成のものが挙げられる。現像装置の現像ローラを電子写真感光体の回転方向に対して逆方向に移動(回転)させることで、現像ローラと電子写真感光体との間に留まるトナーで電子写真感光体表面が摺擦される。そして、この摺擦と、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種と特定の電荷輸送性材料(特に、上記如く反応性官能基の数を増やして架橋密度の高い硬化膜が得られる材料)との架橋物及びシラン化合物(一般式(I)で示される化合物)によって高められた残留電位の上昇抑制効果により、電子写真感光体表面における残留電位の変動が極めて長期間抑制されると考えられる。その結果、残留電位の上昇により発生する黒点、カブリなどの画像欠陥の発生が抑制され、高画質化及び高寿命化が更に高水準で達成されると推察される。
また、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)において、現像装置(現像手段)は、磁性体を有する現像剤保持体を備え、磁性キャリア及びトナーを含む2成分系現像剤で静電潜像を現像するものであることが望ましい。この構成では、一成分系現像剤、特に非磁性一成分現像剤の場合に比べ、カラー画像でよりきれいな画質が得られ、更に高水準で高画質化及び高寿命化が実現される。
<トナー>
以下、現像装置11に使用されるトナーについて説明する。
トナーは、少なくともトナー粒子を含み、トナー粒子の表面に外添される外添剤を含むことが望ましく、外添剤として金属酸化物粒子を含むことがさらに望ましい。
またトナー粒子は、少なくとも結着樹脂を含み、必要に応じて離型剤、着色剤等のその他の成分を含んでもよい。
以下、トナーに含まれる各成分について説明する。
−結着樹脂−
結着樹脂としては、結晶性樹脂及び非結晶性樹脂が挙げられるが、結晶性樹脂を含むことが好ましく、結晶性樹脂及び非結晶性樹脂を併用することがより好ましい。
(結晶性樹脂)
結晶性樹脂は、トナーを構成する成分のうち、5から30%の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは8から20%の範囲である。結晶性樹脂の割合が30%以上では良好な定着特性は得られるものの、定着像中の相分離構造が偏り、定着画像の強度、特に引っかき強度が低下し、傷がつきやすくなるといった問題を呈することがある。一方、5%未満では、結晶性樹脂由来のシャープメルト性が得られず、単純に非結晶性樹脂の可塑化し、良好な低温定着性を確保しつつ、耐トナーブロッキング性、画像保存性を保つことが困難となる場合がある。
なお、「結晶性樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。具体的には、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が6℃以内であることを意味する。一方、半値幅が6℃を超える樹脂や、明確な吸熱ピークが認められない樹脂は、非結晶性樹脂を意味するが、本実施形態における非結晶性樹脂としては、明確な吸熱ピークが認められない樹脂を用いることが好ましい。
結晶性樹脂としては、結晶性を持つ樹脂であれば特に制限はなく、具体的には、結晶性ポリエステル樹脂、結晶系ビニル系樹脂が挙げられるが、定着時の紙への定着性や帯電性、及び好ましい範囲での融点調整の観点から結晶性ポリエステルが好ましい。また更に適度な融点をもつ脂肪族系の結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂や、その他すべてのポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成される。なお、本実施形態においては、前記ポリエステル樹脂として市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸、などが挙げられ、さらに、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられるがこの限りではない。
3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、多価カルボン酸成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸成分が含まれていることが好ましい。前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散が良好になる点で有効である。また、樹脂全体を水に乳化或いは懸濁して、粒子を作成する際に、スルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤を使用しなくても、乳化或いは懸濁される。
このようなスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらスルホン酸基を有する2価以上のカルボン酸成分は、ポリエステルを構成する全カルボン酸成分に対して0から20モル%、好ましくは0.5から10モル%含有する。スルホン酸基を有する2価以上のカルボン酸成分の含有量が少ないと、乳化粒子の経時安定性が悪くなる一方、10モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下するばかりではなく、凝集後、粒子が融合する工程に悪影響を与え、トナー径の調整が難しくなるという不具合が生じる場合がある。
さらに、前述の脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸成分を含有することがより好ましい。2重結合を持つジカルボン酸は、2重結合を介して、ラジカル的に架橋結合させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐ為に好適に用いられる。このようなジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級エステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でもコストの点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましく挙げられる。
多価アルコール成分としては、脂肪族ジオールが好ましく、主鎖部分の炭素数が7から20である直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。前記脂肪族ジオールが分岐型では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下してしまう為、耐トナーブロッキング性、画像保存性、及び低温定着性が悪化してしまう場合がある。また、炭素数が7未満であると、芳香族ジカルボン酸と縮重合させる場合、融点が高くなり、低温定着が困難となることがある一方、20を超えると実用上の材料の入手が困難となり易い。前記炭素数としては14以下であることがより好ましい。
脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、入手容易性を考慮すると1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
多価アルコール成分のうち、前記脂肪族ジオール成分の含有量が80モル%以上であることが好ましく、より好ましくは、90%以上である。前記脂肪族ジオール成の含有量が80モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下する為、耐トナーブロッキング性、画像保存性及び、低温定着性が悪化してしまう場合がある。
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調製等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸や、シクロヘキサノールベンジルアルコール等の1価のアルコールも使用してもよい。
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造され、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられ、モノマーの種類によって使い分けて製造する。
結晶性ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180から230℃の間で行われ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させても良い。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させると良い。
結晶性ポリエステル樹脂の製造時に使用される触媒としては、例えば、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物、リン酸化合物、及びアミン化合物等が挙げられ、具体的には、以下の化合物が挙げられる。
触媒としては、例えば、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
結晶性樹脂の融点としては、好ましくは50から100℃であり、より好ましくは60から80℃である。前記融点が50℃より低いとトナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性が問題となる場合がある一方、100℃より高いと従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない場合がある。また結晶性の樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピークをもって融点とみなす。
一方、結晶性ビニル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の長鎖アルキル、アルケニルの(メタ)アクリル酸エステルを用いたビニル系樹脂が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」なる記述は、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれをも含むことを意味するものである。
(非結晶性樹脂)
非結晶樹脂としては、公知の樹脂材料が用いられるが、非結晶性ポリエステル樹脂が特に好ましい。非結晶性ポリエステル樹脂とは、主として多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮重合により得られるものである。
非結晶性ポリエステル樹脂を用いる場合には、樹脂の酸価の調整やイオン性界面活性剤などを用いて乳化分散することにより、樹脂粒子分散液が容易に調製される点で有利である。
多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多価カルボン酸が1種又は2種以上用いられる。これら多価カルボン酸の中、芳香族カルボン酸を使用することが好ましく、また良好なる定着性を確保するために架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールが1種又は2種以上用いられる。これら多価アルコールの中、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより好ましい。また良好なる定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
なお、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、および/またはモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシル基、および/またはカルボキシル基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整しても良い。モノカルボン酸としては酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等が挙げられ、モノアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどが挙げられる。
ポリエステル樹脂は上記多価アルコールと多価カルボン酸を常法に従って縮合反応させることによって製造される。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150から250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物を取得することによって製造される。
このポリエステル樹脂の合成に使用する触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属やテトラブチルチタネート等の金属アルコキシドなどのエステル化触媒が挙げられる。このような触媒の添加量は、原材料の総量に対して0.01から1.00重量%とすることが好ましい。
本発明トナーに使用される非結晶性樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフイー(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量(Mw)が5000から1000000であることが好ましく、更に好ましくは7000から500000であり、数均分子量(Mn)は2000から10000であることが好ましく、分子量分布Mw/Mnが1.5から100であることが好ましく、更に好ましくは2から60である。
重量平均分子量及び数平均分子量が上記範囲より小さい場合には、低温定着性には効果的ではある一方で、耐ホットオフセット性が著しく悪くなるばかりでなく、トナーのガラス転移点を低下させる為、トナーのブロッキング等保存性にも悪影響を及ぼす場合がある。一方、上記範囲より分子量が大きい場合には、耐ホットオフセット性は充分付与されるものの、低温定着性は低下する他、トナー中に存在する結晶性ポリエステル相の染み出しを阻害する為、ドキュメント保存性に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、上述の条件を満たすことによって低温定着性と耐ホットオフセット性、ドキュメント保存性を両立し得ることが容易となる。
樹脂の分子量は、THF可溶物を、東ソー製GPC・HLC−8120、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で測定し、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して分子量を算出する。
ポリエステル樹脂の酸価(樹脂1gを中和するに必要なKOHのmg数)は、前記のような分子量分布を得やすいことや、乳化分散法によるトナー粒子の造粒性を確保しやすいことや、得られるトナーの環境安定性(温度・湿度が変化した時の帯電性の安定性)を良好なものに保ちやすいことなどから、1から30mg KOH/gであることが好ましい。
ポリエステル樹脂の酸価は、原料の多価カルボン酸と多価アルコールの配合比と反応率により、ポリエステルの末端のカルボキシル基を制御することによって調整される。また、多価カルボン酸成分として無水トリメリット酸を使用することによって、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を有するものが得られる。
公知の非結晶性樹脂として、スチレンアクリル系樹脂を使用してもよい。この場合使用される単量体としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類:アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類:アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類:ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類:ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類:エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのポリオレフィン類:などの単量体の重合体、これらを2種以上組み合せて得られる共重合体又はこれらの混合物が挙げられ、さらにはエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等、非ビニル縮合系樹脂、あるいはこれらと前記ビニル系樹脂との混合物やこれらの共存下でビニル系単量体を重合する際に得られるグラフト重合体等も使用される。
非結晶性樹脂のガラス転移温度は、35から100℃であることが好ましく、貯蔵安定性とトナーの定着性のバランスの点から、50から80℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が35℃未満であると、トナーが貯蔵中又は現像器中でブロッキング(トナーの粒子が凝集して塊になる現象)を起こしやすい傾向にある。一方、ガラス転移温度が100℃を超えると、トナーの定着温度が高くなってしまい好ましくない。
非結晶性樹脂の軟化点は80から130℃の範囲に存在することが好ましく、より好ましくは90から120℃の範囲である。軟化点が80℃以下の場合は、定着後及び保管時のトナー及びトナーの画像安定性が悪化する場合がある。また軟化点が130℃以上の場合は、低温定着性が悪化してしまう場合がある。
非結晶性樹脂の軟化点の測定はフローテスター(島津社製: CFT−500C)を用いて測定し、予熱:80℃/300sec、プランジャー圧力:0.980665MPa、ダイサイズ:1mmφ×1mm、昇温速度:3.0℃/minの条件下における溶融開始温度と溶融終了温度との中間温度を軟化点とする。
結晶性ポリエステルの樹脂粒子分散液の作製については、例えば、樹脂の酸価の調整やイオン性界面活性剤などを用いて乳化分散することにより、調製される。
樹脂粒子分散液の粒子径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700堀場製作所製)で測定される。
−離型剤−
離型剤としては、ASTMD3418−8に準拠して測定された主体極大ピークが50から140℃の範囲内にある物質が好ましい。主体極大ピーク50℃未満であると定着時にオフセットを生じやすくなる場合がある。また、140℃を超えると定着温度が高くなり、画像表面の平滑性が不充分なため光沢性を損なう場合がある。
主体極大ピークの測定には、例えばパーキンエルマー社製のDSC−7が用いられる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行う。
また、離型剤の160℃における粘度η1は20から600cpsの範囲内であることが好ましい。粘度η1が20cpsよりも小さいとホットオフセットを生じ易く、600cpsより大きいと定着時のコールドオフセットを生じる場合がある。
また、離型剤の160℃における粘度η1と200℃における粘度η2との比(η2/η1)は、0.5から0.7の範囲内が好ましい。η2/η1が0.5より小さいと低温度時のブリード量が少なくコールドオフセットを生じる場合がある。また、0.7より大きいと高温での定着の際のブリード量が多くなり、ワックスオフセットを生じることがあるばかりでなく、剥離の安定性に問題を生じる場合がある。
離型剤の具体的な例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類や、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウのごとき動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の如き鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用される。
これらの離型剤は、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに強い剪断をかけられるホモジナイザーや圧力吐出型分散機により粒子化し、粒子径が1μm以下の離型剤粒子を含む離型剤分散液が作製される。
−着色剤−
着色剤としては、目的の色に応じた顔料や染料等が用いられる。
黒顔料としてはカーボンブラック、磁性粉等が挙げられる。
黄色顔料としては、例えば、ハンザイエロー、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントイエローNCG等が挙げられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ等が挙げられる。
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートなどが挙げられる。
また、これらを混合し、更には固溶体の状態で使用してもよい。
これらの着色剤は、公知の方法で分散されるが、例えば、回転せん断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。
また、これらの着色剤は、極性を有するイオン性界面活性剤を用い、既述したホモジナイザーを用いて水系溶媒中に分散し、着色剤粒子分散液が作製される。
−その他の成分−
トナー粒子は、帯電制御剤、磁性材料等のその他の成分を含んでもよい。
帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤が用いられる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用することが望ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
−外添剤−
外添剤としては、例えば、無機粒子及び有機粒子が挙げられるが、本実施形態の外添剤としては、無機粒子の一種である金属酸化物粒子を含むことが望ましい。
トナーが金属酸化物粒子を含む場合、金属酸化物粒子の遊離率が15%以上60%以下であることが望ましい。前記遊離率が15%より小さい場合、画像部と非画像部との感光体磨耗差が大きくなり、感光体寿命が短くなる場合がある。また遊離率が60%より大きい場合は、感光体全体の磨耗が大きいため感光体寿命が短くなる場合があり、またクリーニングブレードを用いた場合はクリーニングブレードがダメージを受ける場合がある。
一方、上記実施形態における感光体を用いて画像形成を行う場合、上記の通り、金属酸化物粒子の遊離率が低いトナーを用いても、画像部と非画像部との磨耗差が抑制されるため、上記遊離率は15%以上45%以下がより望ましく、15以上30%以下がさらに望ましい。このように、トナーにおける金属酸化物粒子の遊離率を低くすることにより、感光体の全体的な磨耗やクリーニング部材の損傷等がさらに抑制される。
(遊離率の測定方法)
前記金属酸化物粒子の遊離率は以下のようにして測定される。
まず、パーティクルアナライザーPT−1000(横河電機株式会社製)にてトナー中の個々の粒子(トナー粒子又は遊離した金属酸化物粒子)の元素分析を実施し、1000個の粒子のデータを取る。なおパーティクルアナライザーPT−1000の測定時にはヘリウムガスを用いる。トナー粒子の結着樹脂由来の炭素の発光電圧をX、金属酸化物粒子由来の元素に起因する発光電圧をYとした場合、X=0で検出されるものが遊離した金属酸化物粒子である。このようにして得たデータより、前記1000個の粒子中における遊離した金属酸化物粒子の数から、遊離率を求める。すなわち、X=0で検出された粒子におけるYの値をY、X≠0で検出された粒子におけるYの値をYとしたとき、遊離率(%)は下記式により表される。
式:遊離率(%)={Y/(Y+Y)}×100
金属酸化物粒子の遊離率を前記範囲に制御する方法としては、トナー粒子の表面硬度の調整による制御が挙げられる。一般的に外添剤は凝集しやすく、外添剤の凝集体は、トナー表面への付着時に、トナー粒子との攪拌によって破壊されながら付着する。このときトナー表面の硬度が低ければトナーに外添剤は埋め込まれてしまう。反対に硬度が高い場合凝集は壊れにくくなる。これは外添剤の凝集粒子を破壊するためには、外添剤のトナー表面との接触面がある程度埋め込まれることで、凝集が破壊されるものと推定される。そこでトナーの表面部分の分子量を内部の分子量に比較して大きくすることで、表面の硬度を上げると共に内部の硬度をある程度柔らかいままにすることによって、トナーと外添剤凝集粒子との衝突時に、トナー表面の硬度は高いものの内部に発生する応力により、適度に表面の硬度の影響を抑え、それによって外添剤の凝集を破壊しながら、遊離率が制御される。
次いで、前記金属酸化物の具体例を挙げる。金属酸化物としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化鉄等が挙げられ、これらの中でも、シリカが特に好ましい。シリカが好ましい理由としては、シリカは帯電性が高く、遊離した状態でも感光体に付着しやすく、かつ電気抵抗が適度に高いため、中間転写体や被転写体等に転写されにくい。そのためクリーニング部へ供給しやすく、外添剤によるクリーニング性向上の効果が得られやすいことが挙げられる。
なお、シリカ粒子は、体積平均粒径が80から1000nmであることが好ましい。体積平均粒径が80nm未満であると、非静電的付着力低減に有効に働かなくなり易い。特に、現像機内のストレスにより、トナー粒子に埋没しやすくなり、外添剤がトナー粒子から遊離しにくくなる場合がある。一方、シリカ粒子の体積平均粒径が1000nmを超えると、トナー粒子からは離脱しやすいが、転写残トナーがトナーダムを形成する前に感光体上に残ったトナーに付着しにくい傾向にあるため、好ましくない。より好ましい範囲としては80から500nmであり、特に好ましい範囲としては150から300nmである。
ここで、前記シリカ粒子等の外部添加剤のように、測定する粒子直径が2μm未満の場合の粒径の測定方法としては、レーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)を用いて測定を行う。測定法としては、分散液となっている状態の試料を固形分で2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、2分待って、セル内の濃度がほぼ安定になったところで測定する。得られたチャンネルごとの体積平均粒径を小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒径とする。
前記シリカ粒子は、単分散且つ球形であることが好ましい。単分散球形シリカ粒子を用いると、トナー粒子表面に偏って付着することが抑制され、安定したスペーサー効果が得られる。ここで単分散とは、凝集体を含め平均粒径に対する標準偏差で議論され、標準偏差が体積平均粒径D50×0.22以下であることをいう。また球形とは、Wadellの球形化度で議論され、球形化度が0.6以上であることをいい、0.8以上であることが好ましい。
体積平均粒径80から1000nmの単分散球形シリカ粒子は、湿式法であるゾルゲル法により得られる。ゾルゲル法により得られたシリカ粒子の真比重は、湿式法かつ焼成することなしに作製するため、蒸気相酸化法に比べ低く制御される。また、疎水化処理工程での疎水化処理剤種、あるいは処理量を制御することによっても、シリカ粒子の真比重が調整される。シリカ粒子の粒径は、ゾルゲル法の加水分解、縮重合工程のアルコキシシラン、アンモニア、アルコール、水の重量比、反応温度、攪拌速度、供給速度により制御される。単分散、球形形状も本手法にて作製することにより達成される。
シリカ粒子の製造としては、具体的には、まず、テトラメトキシシランを水、アルコールの存在下、アンモニア水を触媒として温度をかけながら滴下、攪拌を行う。次に、反応により得られたシリカゾル懸濁液の遠心分離を行い、湿潤シリカゲルとアルコールとアンモニア水に分離する。湿潤シリカゲルに溶剤を加え再度シリカゾルの状態にし、疎水化処理剤を加え、シリカ表面の疎水化を行う。疎水化処理剤としては、一般的なシラン化合物が用いられる。次に、この疎水化処理シリカゾルから溶媒を除去、乾燥、篩い分けすることにより、目的の単分散球形シリカ粒子が得られる。また、このようにして得られたシリカ粒子に再度処理を行っても構わない。また単分散球形シリカ粒子の製造方法は、前記製造方法に限定されるものではない。
前記シラン化合物は、例えば、水溶性のものが使用される。本実施形態に用いうるシラン化合物としては、例えば、下記の化学構造式で表される化合物が挙げられる。
式:RSiX4−a
(式中、aは0から3の整数であり、Rは、水素原子、アルキル基及びアルケニル基等の有機基を表し、Xは、塩素原子、メトキシ基及びエトキシ基等の加水分解性基を表す。)
前記シラン化合物としては、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤のいずれのタイプを使用してもよい。具体的には、例えば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ −グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランが代表的なものとして例示される。疎水化処理剤としては、特に好ましくは、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、トナーの流動性及び帯電性を制御するために、トナー粒子表面に外添剤を充分に被覆することが好ましく、前記のシリカ粒子だけでは充分な被覆が得られないことがあるため、小粒径の無機化合物粒子や、有機粒子を併用することが好ましい。小粒径の無機化合物粒子としては、体積平均粒径80nm以下の無機化合物粒子が好ましく、50nm以下の無機化合物粒子がより好ましい。無機化合物粒子としては、具体的には、例えば、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、酸化セリウム等の通常トナー表面の外添剤として使用される総ての粒子があげられ、有機粒子としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等の通常トナー表面の外添剤として使用される総ての粒子が挙げられる。さらに、外添剤の粒子に滑剤を添加してもよい。滑剤としては、例えば、エチレンビスステアリル酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩があげられる。
−トナーの製造方法−
トナーに含まれるトナー粒子の製造方法は特に限定されないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等が挙げられる。
また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法が使用される。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
上記の中でも好適なトナー粒子の製造方法の一例について説明する。
前記トナー粒子の好適な製造方法としては、例えば、少なくとも樹脂粒子が分散され、必要に応じて着色剤粒子及び離型剤粒子が分散された分散液中で、凝集粒子を形成する凝集工程と、前記凝集粒子を加熱して該凝集粒子を融合する融合工程と、を含む湿式製法が挙げられる。この方法によりトナー粒子を得ることは、シャープな粒度分布を有する小粒子径トナーが製造されるとともに、高画質フルカラー画像を形成するカラートナーが得られる観点から好適である。
凝集工程では、少なくとも前記結着樹脂を含む樹脂粒子分散液を用い、必要に応じて更に着色剤分散液と離型剤分散液などのその他の成分を添加混合して調製された分散液を混合し、そこに凝集剤を加え、攪拌しながら加熱することにより樹脂粒子等を凝集させて凝集粒子を形成する。
凝集粒子の体積平均粒径は2から9μmの範囲にあることが好ましい。このようにして形成された凝集粒子に、樹脂粒子(追加粒子)を追加添加し、凝集粒子の表面に被覆層を形成してもよい(付着工程)。この付着工程において追加添加する樹脂粒子(追加粒子)は、上述の凝集工程において使用した樹脂粒子分散液と同じものでもよく、異なるものでもよい。
また、上述の凝集工程又は付着工程に使用する樹脂は、外部添加剤を遊離させやすくするために、比較的分子量の高い樹脂を混合することが好ましい。具体的にはZ平均分子量Mzが100000から500000の樹脂が好ましい。
次いで、融合工程では、例えば、樹脂のガラス転移点以上の温度、一般には70から120℃に加熱処理して凝集粒子を融合させ、トナー粒子含有液(トナー粒子分散液)を得る。次いで、得られたトナー粒子含有液は、遠心分離または吸引濾過により処理して、トナー粒子を分離し、イオン交換水によって1から3回洗浄する。その際pHを調整することで洗浄効果がより高められる。その後、トナー粒子を濾別し、イオン交換水によって1から3回洗浄し、乾燥することによって、トナー粒子が得られる。
本実施形態のトナーでは、前記トナー粒子に外添剤として金属酸化物を添加することが好ましい。トナー粒子に外添剤を添加する方法としては、例えば、トナー粒子及び外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合する方法などが挙げられる。また、トナー粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
−その他の粒子−
またトナーには滑性粒子を外添してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪族アミド類やカルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウの動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用される。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用して使用される。但し、平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が望ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの外添量は望ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
またトナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えてもよい。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも望ましく使用される。
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等が挙げられる。
粒子径としては、個数平均粒子径で望ましくは5nm以上1000nm以下、より望ましくは5nm以上800nm以下、さらに望ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。平均粒子径が、上記下限値未満であると、研磨能力に欠ける傾向があり、他方、上記上限値を超えると、電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなる傾向がある。また、上述した粒子と滑性粒子との外添量の和が0.6質量%以上であることが望ましい。
トナーに外添されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等の為、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更に付着力低減や帯電制御の為、それより大径の無機酸化物を外添することが望ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものが使用されるが、精密な帯電制御を行う為にはシリカと酸化チタンを併用することが望ましい。
また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなる。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を外添することも放電生成物を除去するために望ましい。
−トナーの特性−
本実施形態の画像形成装置に用いられるトナーは、高い現像性及び転写性並びに高画質を得る観点から、平均形状係数((ML2/A)×(π/4)×100、ここでMLは粒子の最大長を表し、Aは粒子の投影面積を表す)が100以上150以下であることが望ましく、105以上145以下であることがより望ましく、110以上135以下であることがさらに望ましい。
ここで、トナーの平均形状係数は、スライドグラス上に散布したトナー粒子、またはトナーの光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置(ニレコ社製)に取り込み、50個以上のトナーの最大長と投影面積を求め、上記式によって計算し、その平均値を求めることにより得られるものである。
さらに、トナーとしては、体積平均粒子径が2μm以上12μm以下であることが望ましく、3μm以上9μm以下であることがより望ましく、4μm以上9μm以下であることがさらに望ましい。この平均形状係数及び体積平均粒子径を満たすトナーを用いることにより、現像性及び転写性が高まり、いわゆる写真画質と呼ばれる高画質の画像が得られる。
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉又はそれ等の表面に樹脂を被覆したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、目的に応じて設定される。
以下実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下において、「部」及び「%」は特に断りのない限り「質量部」及び「質量%」を表す。
[実施例1]
<感光体1の作製>
−導電性支持体の作製−
JIS A3003合金よりなる引き抜き管(直径:84mm、長さ:357mm)を用意し、センタレス研磨装置により研磨して表面粗さRを0.6μmとした。次に、この引き抜き管の外周面に脱脂処理、2質量%水酸化ナトリウム溶液で1分間エッチング処理、中和処理、純水洗浄をこの順に実施した。
次に、陽極酸化処理工程として10質量%硫酸溶液によりシリンダー表面に陽極酸化膜(電流密度1.0A/dm)を形成した。水洗後、1質量%酢酸ニッケル溶液80℃に20分間浸漬して封孔処理を行った。さらに、純水洗浄、乾燥処理を行った。このようにして、引き抜き管の外周面に厚さ7μmの陽極酸化被膜を備えた導電性支持体を得た。
−電荷発生層の作製−
電荷発生材料としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、28.3°に強い回折ピークを持つクロロガリウムフタロシアニン結晶1質量部を、結着樹脂としてのポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−S、積水化学社製)1質量部とともに、酢酸n−ブチル80質量部と混合し、直径1mmφのガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間処理して分散させ電荷発生層用塗布液を調製した。得られた電荷発生層用塗布液を陽極酸化膜を形成した導電性支持体表面に浸漬塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して、膜厚約0.15μmの電荷発生層を形成した。
−電荷輸送層の作製−
電荷輸送材料としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4質量部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40000)6質量部、テトラヒドロフラン21質量部、トルエン9質量部に混合溶解した後、さらに、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2質量部を混合して電荷輸送層形成用塗布液を得た。
この塗布液を前記電荷発生層上に塗布して135℃で40分間乾燥し、膜厚22μmの電荷輸送層を形成した。
−保護層の作製−
特定電荷輸送性材料である前記例示化合物(II−16)98部と、下記構造のメラミン化合物1部、及び、硬化触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸(キングインダストリーズ社製:Nacure5225)0.25部、シラン化合物(KBM 7103(商品名)、信越シリコーン社製)1部をシクロペンタノール350部に十分に溶解混合し、保護層用塗布液を得た。
この保護層用塗布液を、支持体上に前記電荷発生層及び電荷輸送層を塗布により形成した積層体に浸漬塗布法により塗布し、155℃で45分間加熱処理して硬化させ、膜厚6.5μmの保護層を形成し、感光体1を得た。
ここで、保護層形成用塗布液中における電荷輸送性材料(II−16)の固形分濃度は97.8質量%であり、メラミン化合物の固形分濃度は1.0質量%であり、シラン化合物の固形分濃度は1.0質量%である。
<感光体2の作製>
感光体1の作製において、保護層に添加した上記シラン化合物の添加量を0.5部とした以外は、感光体1と同様にして、感光体2を得た。なお、保護層形成用塗布液中における電荷輸送性材料(II−16)の固形分濃度は98.2質量%であり、メラミン化合物の固形分濃度は1.0質量%であり、シラン化合物の固形分濃度は0.5質量%である。
<感光体3の作製>
感光体1の作製において、保護層に添加した上記シラン化合物の添加量を0.2部とした以外は、感光体1と同様にして、感光体3を得た。なお、保護層形成用塗布液中における電荷輸送性材料(II−16)の固形分濃度は98.5質量%であり、メラミン化合物の固形分濃度は1.0質量%であり、シラン化合物の固形分濃度は0.1質量%である。
<感光体4の作製>
感光体1の作製において、保護層に添加した上記シラン化合物の添加量を0.1部とした以外は、感光体1と同様にして、感光体4を得た。なお、保護層形成用塗布液中における電荷輸送性材料(II−16)の固形分濃度は98.6質量%であり、メラミン化合物の固形分濃度は1.0質量%であり、シラン化合物の固形分濃度は0.1質量%である。
<感光体5の作製>
感光体1の作製において、 保護層に添加した上記シラン化合物の添加量を1.2部とした以外は、感光体1と同様にして、感光体5を得た。なお、保護層形成用塗布液中における電荷輸送性材料(II−16)の固形分濃度は97.6質量%であり、メラミン化合物の固形分濃度は1.0質量%であり、シラン化合物の固形分濃度は1.2質量%である。
<感光体6の作製>
感光体1の作製において、保護層に添加した硬化触媒であるドデシルベンゼンスルホン酸の添加量をメラミン化合物の量(100質量部)に対し、50質量部(0.5部)としたこと以外は、感光体1と同様にして、感光体6を得た。なお、保護層形成用塗布液中における電荷輸送性材料(II−16)の固形分濃度は97.5質量%であり、メラミン化合物の固形分濃度は1.0質量%であり、シラン化合物の固形分濃度は1.0質量%である。
<感光体7の作製>
感光体1の作製において、保護層に添加した硬化触媒であるドデシルベンゼンスルホン酸の添加量をメラミン化合物の量(100質量部)に対し、99質量部(0.99部)としたこと以外は、感光体1と同様にして、感光体7を得た。なお、保護層形成用塗布液中における電荷輸送性材料(II−16)の固形分濃度は97.0質量%であり、メラミン化合物の固形分濃度は1.0質量%であり、シラン化合物の固形分濃度は1.0質量%である。
<感光体8の作製>
感光体1の作製において、保護層に添加したメラミン化合物の添加量を28質量部(2.8部)としたこと以外は、感光体1と同様にして、感光体8を得た。なお、保護層形成用塗布液中における電荷輸送性材料(II−16)の固形分濃度は95.8質量%であり、メラミン化合物の固形分濃度2.9質量%であり、シラン化合物の固形分濃度は1.0質量%である。
<感光体9の作製>
感光体1の作製において、保護層に添加したシラン化合物の含有量を0.9部とし、メラミン化合物の量を10部としたこと以外は、感光体1と同様にして、感光体9を得た。なお、保護層形成用塗布液中における電荷輸送性材料(II−16)の固形分濃度は89.7質量%であり、メラミン化合物の固形分濃度は0.9質量%であり、シラン化合物の固形分濃度は0.9質量%である。
<感光体10の作製>
感光体1の作製において、保護層に添加した上記シラン化合物の添加量を0.5部とし、且つ、上記メラミン化合物を下記グアナミン化合物に変更した以外は、感光体1と同様にして、感光体10を得た。なお、保護層形成用塗布液中における電荷輸送性材料(II−16)の固形分濃度は98.2質量%であり、グアナミン化合物の固形分濃度は1.0質量%であり、シラン化合物の固形分濃度は0.5質量%である。
<感光体11の作製>
感光体1の作製において、保護層に添加したシラン化合物をKBM 7803(商品名)、信越シリコーン社製に変更し、酸触媒の含有量を0.24部とした以外は、感光体2と同様にして、感光体11を得た。なお、保護層形成用塗布液中における電荷輸送性材料(II−16)の固形分濃度は98.2質量%であり、メラミン化合物の固形分濃度は1.0質量%であり、シラン化合物の固形分濃度は0.5質量%である。
<感光体の残留電位測定>
上記感光体(感光体1から感光体9)に対して、非露光部が−700Vになるように帯電器の電圧を調節した後、常温常湿下(20℃、40%RH)において、感光体を100rpmで回転させた状態で、帯電気により感光体を−700Vに帯電させ、帯電の1秒後に波長780nmの半導体レーザーを用いて10mJ/mの光を照射して放電させた。続いて、放電させてから100msec後の感光体の表面の電位Vを表面電位計(TREK社製モデル344)で測定し、これを残留電位の値とした。結果を表1に示す。残留電位の値が小さいほど良好であると評価する。
以上の結果から、実施例によれば、比較例に比べ、残留電位の上昇が抑えられることがわかる。このことから、実施例の感光体を用いることで、比較例に比べ、画像欠陥が抑制されるものと考えられる。
1 下引層
2 電荷発生層
3 電荷輸送層
4 導電性基体
5 保護層
6 単層型感光層
7 電子写真感光体
8 帯電装置
9 露光装置
11 現像装置
13 クリーニング装置
14 潤滑材
40 転写装置
50 中間転写体
100 画像形成装置
120 画像形成装置
131 クリーニングブレード
132 繊維状部材(ロール状)
133 繊維状部材(平ブラシ状)
300 プロセスカートリッジ

Claims (5)

  1. 導電性基体と、
    前記導電性基体表面に設けた感光層と、を有し、
    前記感光層の最表面層が、前記グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成され、
    前記最表面層中に、下記一般式(I)で表されるシラン化合物を0.2質量%以上1質量%以下、前記電荷輸送性材料を94質量%以上99.7質量%以下、含有する電子写真感光体。

    前記一般式(I)中、Rは、炭素数1以上9以下のパーフルオロアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、nは0,1又は2を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。
  2. 導電性基体と、
    前記導電性基体表面に設けた感光層と、を有し、
    前記感光層の最表面層が、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料の少なくとも1種とを含む塗布液を用いた架橋物を含んで構成され、
    前記最表面層中に、下記一般式(I)で表されるシラン化合物を0.2質量%以上1質量%以下、前記電荷輸送性材料を94質量%以上99.7質量%以下、含有する電子写真感光体。

    前記一般式(I)中、Rは、炭素数1以上9以下のパーフルオロアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、nは0,1又は2を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。
  3. 前記電荷輸送性材料が、下記一般式(II)で示される化合物である請求項1又は請求項2記載の電子写真感光体。
    −((−R−X)n1(Rn2−Y)n3 (II)
    (一般式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を示し、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1を示し、n2は0又は1を示し、n3は1以上4以下の整数を示す。Xは酸素、NH、又は硫黄原子を示し、Yは−OH、−OCH、−NH、−SH、又は−COOHを示す。)
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えるプロセスカートリッジ。
  5. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
    帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
    前記電子写真感光体に形成された前記静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、
    前記現像手段により形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、
    前記トナー像の転写後に前記電子写真感光体上に残留する残留トナーを除去する残留トナー除去手段と、を備える画像形成装置。
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