JP2010190174A - 内燃機関の燃焼トルク推定装置 - Google Patents

内燃機関の燃焼トルク推定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】燃焼トルクの瞬時値を精度良く、算出することができるトルク推定装置を提供する。
【解決手段】クランク軸の回転速度から、燃焼トルクを推定する内燃機関のトルク推定装置であって、前記クランク軸の回転速度を算出する回転速度算出手段101と、前記回転速度の波形をフィルタリングすることにより、前記回転速度の波形のうち所定の周波数成分の波形から燃焼トルクを算出する燃焼トルク算出手段102と、前記内燃機関の上死点及び下死点を判定する上下死点判定手段103と、前記上死点又は下死点であると判定したタイミングにおける前記燃焼トルクに基づいて、前記燃焼トルクの補正量を算出する燃焼トルク補正量算出手段107と、前記燃焼トルク補正量に基づいて、前記燃焼トルクを補正する燃焼トルク補正手段109と、を備える。
【選択図】図6

Description

内燃機関のクランク軸の回転に基づいて気筒毎の燃焼エネルギーを推定する装置に関する。
内燃機関では所定の回転速度の周期で燃焼が行われ、その燃焼に伴いクランク軸にトルクが動力として付与される。このトルクの推定は、例えば、内燃機関に筒内圧センサを配置し、筒内圧センサの検出値である筒内圧から、燃焼により発生した熱量を推定することにより、行われる場合がある。このトルクの推定値に基づいて、内燃機関の燃焼に関するフィードバック制御が行われている。
たとえば、内燃機関の燃焼トルクを推定する方法として以下の推定方法が提案されている。この推定方法は、クランク軸の回転角速度を検出し、該角速度の変化からトルク変動を推定するようにした内燃機関のトルク変動推定方法である。
具体的には、内燃機関の運転状態が、クランク軸の固有振動による角速度の変化波形に比べて爆発1次の角速度の変化波形の方がトルクの変動を再現性よく顕著に表している第1の運転状態であるか、或いは爆発1次の角速度の変化波形に比べてクランク軸の固有振動による角速度の変化波形の方がトルクの変動を再現性よく顕著に表している第2の運転状態であるかを判断し、第1の運転状態であると判断されたときには、爆発行程開始時における角速度の最小値と爆発行程中における角速度の最大値との差からトルク変動を推定するものである(特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のトルク推定方法は、各速度の最小値と最大値の差からトルク変動を推定するものであり、このトルク変動から、失火検出のような気筒で急激にトルクが落ち込んだことを、前後の気筒と比較することで検出を可能とするものである。
特開2007−32433号公報
しかしながら、各速度の最小値と最大値を利用してトルクを推定する場合には、上述したように失火のような急激なトルク変動を検出するアプリケーションに対しては有効であるが、例えば、安定した燃焼状態においては、急激なトルク変動はないので、この方法ではトルクの瞬時値を知ることは容易ではなく、精度も高くない。そして、燃焼により発生した熱量を筒内圧から推定して燃焼の制御にフィードバックするような、従来筒内圧センサが使われてきた分野では、トルクの絶対値が瞬時値で知ることが望ましいが、この方法で推定されたトルクでは、燃焼制御を行うには充分であるとは言えない。
そこで、本願の発明は、筒内圧センサなどを用いることなく、内燃機関のクランク軸の回転に基づいて、容易にかつ精度良く燃焼トルクの瞬時値を推定することができる内燃機関のトルク推定装置を提供することにある。
前記課題を解決すべく、本発明に係るトルク推定装置は、クランク軸の回転速度から、燃焼トルクを推定する内燃機関のトルク推定装置であって、前記クランク軸の回転速度を算出する回転速度算出手段と、前記回転速度の波形をフィルタリングすることにより、前記回転速度の波形のうち所定の周波数成分の波形から燃焼トルクを算出する燃焼トルク算出手段と、前記内燃機関の上死点及び下死点を判定する上下死点判定手段と、前記上死点又は下死点であると判定したタイミングにおける前記燃焼トルクに基づいて、前記燃焼トルクの補正量を算出する燃焼トルク補正量算出手段と、前記燃焼トルク補正量に基づいて、前記燃焼トルクを補正する燃焼トルク補正手段と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、クランク軸の回転速度の波形から、燃焼トルクを測定するので、燃焼トルクの瞬時値を推定することができるばかりでなく、現実上、上死点及び下死点では、クランク軸に作用する燃焼トルクは0である点に着眼して、上死点及び下死点で算出される燃焼トルクを誤差とみなすことにより、燃焼トルクを補正することにより、より精度よく燃焼トルクを推定することができる。
本発明に係る内燃機関のトルク推定装置は、燃焼トルク補正量算出手段は、前記上下死点判定手段が前記上死点又は下死点であると判定した第一のタイミングにおける燃焼トルクと、前記第一のタイミング後において、前記上下死点判定手段が前記上死点又は下死点であると判定した第二のタイミングにおける燃焼トルクと、に基づいて、第一のタイミングから第二のタイミングまでにおける前記燃焼トルクの補正量を算出することがより好ましい。
本発明によれば、第一のタイミングと第二のタイミング間における燃焼トルクを用いて、その間の燃焼トルクの補正量を補間して算出することができる。なお、この際には、第一のタイミング及び第二のタイミングは、クランク角度を時間変数として、その間の補正量を、第一のタイミングと第二のタイミング間における燃焼トルクを用いて線形補完してもよい。また、第二のタイミングは、第一のタイミング後の上死点又は下死点タイミングであればよいが、より好ましくは、次に判定される上死点又は下死点のタイミングである。これにより、より精度良く、燃焼トルクの補正を行うことができる。
なお、第一及び第二のタイミングにおける燃焼トルクは、随時、制御装置のメモリに記憶しておき、燃焼トルクの補正量の算出後に、燃焼トルクのデータを更新してもよい。
本発明に係る前記トルク推定装置は、前記クランク軸に取付けられたクランク角センサの出力信号から、前記回転速度を算出する回転速度算出手段を備えることがより好ましい。
本発明によれば、内燃機関の制御に用いるクランク角センサを利用することにより、より低コストで、燃焼トルクの推定を行うことができる。
本発明に係る前記トルク推定装置は、前記波形分解手段が、前記クランク軸に取付けられた回転速度センサで検出された回転速度の波形を、周波数分解することを特徴とすることがより好ましく、回転速度を検出することができるのであれば、回転速度センサは、特に限定されるものではないが、より好ましい回転速度センサは、直流発電機である。
本発明によれば、回転速度センサにより、直接的にクランク軸の回転速度を検出し、この回転速度を利用しているので、より精度の良いトルク推定をすることができる。
本発明に係る燃焼エネルギー推定装置は、前記燃焼トルク推定装置を備え、前記燃焼トルクから各気筒の燃焼エネルギーを推定する燃焼エネルギー推定装置であって、該燃焼エネルギー推定装置は、クランク軸の角度を算出するクランク角度算出手段と、前記クランク角度に応じて変化する前記燃焼トルクを積分する積分手段と、該積分した値に基づいて各気筒の燃焼エネルギーを算出する燃焼エネルギー算出手段と、を備える。
本発明によれば、クランク角(位置)の変化にともない、前記クランク軸の回転から燃焼トルクを推定し、その推定した燃焼トルクから燃焼エネルギーを算出(推定)することができるので、気筒内に筒内圧センサを設置する必要がなく、既存のセンサ(クランク角センサとカム角センサ)から安価に燃焼エネルギーを算出することができる。
本発明に係る燃焼エネルギー推定装置は、前記積分手段が、気筒ごとに設定された前記クランク角度の積分区間に基づいて、前記燃焼トルクを積分し、各気筒の燃焼エネルギーを算出することがより好ましい。
本発明によれば、1サイクルにおける、各気筒の筒内圧力の最高圧力は気筒ごとにそのタイミングが異なるので、この点に基づいてクランク角度により定められる積分区間に基づいて、燃焼エネルギーを算出すれば、各気筒の燃焼エネルギーを容易に推定することができる。
本発明に係る燃焼エネルギー推定装置は、前記気筒において設定されたクランク角度の積分区間は、前記気筒の筒内圧が他のすべての気筒の筒内圧に比べて高い筒内圧となる区間であることがより好ましく、別の態様として本発明に係る燃焼エネルギー推定装置は、前記クランク角度の積分区間は、圧縮行程の時点から爆発行程の時点までの区間に設定されることがより好ましい。
本発明によれば、クランク軸の回転速度から、連続して変化する燃焼トルクの瞬時値と、各爆発の燃焼エネルギーと、を精度良く、算出することができ、低いコストで燃焼エネルギーを算出することができる。
第一実施形態に係るトルク推定装置により燃焼トルクを推定する対象となる内燃機関の模式図。 図1に示す吸気・圧縮・爆発・排気の4つのサイクルにおける筒内圧Pi、燃焼トルクτ、クランク軸の回転速度ωの関係を示した図であり、(a)は、第1気筒の筒内圧を示す図であり、(b)は、第3気筒、第4気筒、第1気筒、第2気筒の順番で爆発しているときの筒内圧を波形で示した図であり、(c)は、(b)から近似される燃焼トルクの波形を示した図であり、(d)は、時間変化するクランク軸回転速度ωを波形で示した図。 燃焼トルクの推定を説明するための内燃機関の模式図。 フィルタ出力の誤差を説明する図であり、(a)は、その誤差を説明するための図であり、(b)は、誤差から、燃焼トルクの補正量を算出するための基本的な考え方を示した図。 上下死点における燃焼トルクを説明する図。 第一実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置の模式概念図。 第一実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置のクランク角センサ信号の立下がりに同期して行われる処理のフロー図。 第一実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置の上下死点を検出したときに行われる処理のフロー図。 クランク角センサ信号の出力の一例を示した図。 (a)第一実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置の回転速度の波形を示した図であり、(b)は第一実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置のフィルタ出力値の波形を示した図。 フィルタ出力値から補間結果を得るまでの過程を説明した図。 フィルタ出力値から補間結果を引いて燃焼トルクを補正する過程を説明する図。 第二実施形態に係る内燃機関のトルク推定装置に係るクランク軸の回転角速度と燃焼トルクの周波数成分の関係を説明する図であり、(a)は、演算により算出される回転速度ωと、回転速度ωの波形から算出される燃焼トルクτの波形であり、(b)は、クランク軸の回転速度ωと、燃焼トルクτを燃焼に同期した周波数成分の波形、(c)〜(e)は、燃焼周波数に対して、2、3、4倍の周波数の成分に分解したときの各成分の波形を示した図。 本発明に係る第二実施形態に係るトルク推定装置の全体構成図。 本発明に係る第三実施形態に係るトルク推定装置の全体構成図。 本発明に係る第四実施形態に係るトルク推定装置を含む燃焼エネルギー推定装置の全体構成図。
〔第一実施形態〕
以下に、図面を参照して、本発明に係る内燃機関のトルク推定装置のいくつかの実施形態に基づいて説明する。
図1は、第一実施形態に係るトルク推定装置により燃焼トルクを推定する対象となる内燃機関の模式図である。
本実施形態に係る内燃機関1では、ピストン12が2往復する間に、吸気、圧縮、爆発、排気の4つのサイクルを実行する。図1に示すように、内燃機関1は、ピストン12の上死点23から下死点22に向かってピストン12が下降するのに同期して吸気弁13が開くと、スロットル14で絞られた吸入空気と、インジェクタ15から噴射された燃料の混合気が気筒20の燃焼室内に流入する。ピストン12が下死点22に達すると、吸気弁13は閉じ、ピストン12は上昇する。気筒20内に閉じ込められた空気はピストン12によって圧縮される。
ピストン12が上死点23に達すると、点火プラグ16により気筒20内の混合気が着火され、爆発が始まる。爆発により発生したエネルギーはピストン12を押し下げ、ピストン12への圧力はクランク軸17に伝達され、クランク軸17を回転させるトルクとなる。
なお、内燃機関1のクランク軸17には、金属でできた円盤のリングギアが取り付けられており、リングギアの外周には等間隔Δθで金属製の歯が取り付けられている。クランク軸17の回転は、クランク角センサによって計測される。具体的には、クランク角センサは、リングギア51の歯の接近に同期して脈動する信号を出力する。
上述したように、気筒内の圧力は、リンク機構を介してクランク軸17を回転させる。このことを利用して、クランク軸17の回転速度の変動から気筒内で発生した燃焼エネルギーを推定することが本実施形態の趣旨である。
以下に、本実施形態において、
(1)筒内圧とクランク軸の回転速度の関係を定式化し、クランク角センサにより得られるクランク軸17の回転速度から筒内圧を推定する方法を説明し、
(2)筒内圧を推定する方法を実現するソフトウエアー構成を説明し、
(3)最後にその動作について述べる。
図2は、吸気・圧縮・爆発・排気の4つのサイクルにおける筒内圧Pi、燃焼トルクτ、クランク軸17の回転速度ωの関係を示した図である。図2の(a)は、第1気筒の筒内圧を示す図であり、(b)は、第3気筒、第4気筒、第1気筒、第2気筒の順番で爆発しているときの筒内圧を波形で示した図であり、(c)は、(b)から近似される燃焼トルクの波形を示した図であり、(d)は、時間変化するクランク軸回転速度ωを波形で示した図である。なお、4気筒エンジンでは、第3気筒、第4気筒、第1気筒、第2気筒の順に点火される。
図2(a)に示すように、第1気筒の吸気行程では筒内圧は吸気管圧(大気圧力)とほぼ同じか、若干低い。その後、ピストン12の下死点22から上死点23までの区間である圧縮行程では、ピストン12が上死点23に近づくにつれて、燃焼室内の圧力は大きくなる。
さらに、爆発行程では、行程の開始時点である上死点23付近で点火されると、圧力はさらに増大し、この筒内圧力がピストン12を押し下げ体積が膨張し、圧力は徐々に低下し、行程の終了時点である下死点22で大気圧に近づく。ピストン12が下死点22に達すると排気行程が開始され、排気弁18が開き、気筒20内の排気ガスは排出される。このときの筒内圧は、大気圧とほぼ同じか、若干高い程度である。このようにして、各気筒についての筒内圧P1,P2,P3,P4は、図2(b)に示す如き、圧力波形となる。
一方、各気筒により発生する燃焼トルクτは、図2(c)の如き波形となり、このときのクランク軸17の回転速度ωは、図2(d)の如き波形となる。
ここで、筒内圧Pと燃焼トルクτの関係は、クランク軸の回転角θに依存し、以下の式で表せる。
Figure 2010190174
一方、燃焼トルクτとクランク軸の回転速度ωの関係は以下の式で表せる。
Figure 2010190174
ただし、数1及び数2に示すパラメータは、
A:各気筒の断面積
r:クランク軸のアーム長
l:コンロッド長
θ:上死点からのクランク軸の回転角
J:クランク軸系の慣性モーメント
C:クランク軸に働く摩擦係数
とする。(図3参照)
従って、クランク軸の回転速度ωから燃焼トルクを求めるには、数2の式を計算すればよい。なお、4気筒のエンジンであれば、爆発は4つの気筒で発生しており、爆発の大きさは気筒内の圧力で評価できるため、爆発毎の燃焼エネルギーを求めるには4つの圧力センサが原理的に必要であるが、ここでは、クランク軸の回転速度という一つの物理量から4つの気筒での燃焼エネルギーを求めようとしたものである。
そして、燃焼トルクτから筒内圧P1〜P4を求めるには、数1の式を以下のように変形する。
Figure 2010190174
さらに、最も大きい筒内圧のみに着目し、他は無視することで
Figure 2010190174
と考えて筒内圧を算出する。各爆発の燃焼エネルギーを表す指標であるIMEPを近似的に求めるには、必ずしも4つの筒内圧を求める必要はなく、最も大きい筒内圧のみを求めればよい。
ところで、数2の式に基づいて燃焼トルクを求める際に、クランク軸系の慣性Jは運転条件に依存しないため、精度よく同定できるが、摩擦係数Cは運転条件やエンジンオイルの粘性によって変化するため、精度よく同定できない。このような結果、以下の図4に示すように、実際の燃焼トルクと、算出(推定)した燃焼トルクとには、誤差が生じることになる。
図4(a),(b)は、上述した方法で、実燃焼トルクT1と、上記演算により算出したエンジントルクT2とを示した図であり、(a)は、その誤差を説明するための図であり、(b)は、誤差から、燃焼トルクの補正量を算出するための基本的な考え方を示した図である。
図4(a),(b)に示すように、数2の式から、燃焼トルクτを求めた結果を示すが、これら図からも明らかなように、低い周波数の誤差が存在し、このような誤差を解消(補正)し、実燃焼トルクに近づけることが必要である。
そこで、その簡易的かつ精度の高い補正として、以下の補正を行う。まず、上死点(θ=0°)、下死点(θ=180°)のとき、sinθは0となるので、数1の式にθの値を代入すれば、
Figure 2010190174
となる。
この物理現象を、図5を用いて説明すれば、各気筒のピストンの上死点、下死点においてはコンロッドとクランクアームのなす角θが0°又は180゜になる。これにより、燃焼圧力(筒内圧)がクランク軸に燃焼トルクとして伝わらないため、上死点及び下死点でτは0になる。
したがって、数2の式に基づいて、各気筒のピストンの上死点、下死点における算出した燃焼トルクτの値が、誤差そのものである。ここで、図4(b)に示すように、この燃焼トルクの誤差は、燃焼トルクの周波数が低い誤差であるので、燃焼トルクτの上死点、下死点間の誤差は、燃焼トルクτの上死点、下死点の値を直線補間することができる。これによって、実燃焼トルクT1と、算出燃焼トルクT2の誤差の推定値TDは図4(b)の破線に示すようになり、これを算出燃焼トルクTから減算する補正を行うことで、より正確な燃焼トルクが算出される。これが、本実施形態における一連の燃焼トルクの算出である。
図6は、本実施形態に係る内燃機関1のトルク推定装置10Aの模式概念図である。トルク推定装置10Aは、内燃機関を制御するコントロールユニットに含まれるものであり、CPU、EP−ROM、RAM、及びA/D変換器を含むI/OLSI等で構成されている。そして、トルク推定装置10Aは、先に示した各種センサからの信号をI/OLSIで入力として取り込み、この取り込まれた信号に基づいて以下に示す演算処理を実行し、この演算結果として算定された演算結果を出力するように構成されている。
内燃機関1のトルク推定装置10Aは、内燃機関1のクランク軸17の回転速度に基づいて、内燃機関1の燃焼トルクを推定するものである。具体的には、図6に示すように、クランク角センサ33が、クランク軸に取付けられたリングギア51の回転に同期して脈動する出力信号し、この出力信号から以下に示すように燃焼トルクを推定している。
尚、クランク角センサ33の出力信号の一周期分は、リングギア51の一つの歯に対応する。クランク角センサ信号が、所定の閾値を上から下へ横切る時間の間隔が、Δθの回転所要時間として認識される。
本実施形態に係るトルク推定装置は、回転速度算出手段101、フィルタリング手段(燃焼トルク算出手段)102、上下死点判定手段103、第一及び第二の上下死点フィルタ出力メモリ(第一および第二上下死点燃焼トルク誤差算出手段)104、105、角度算出手段106、補間手段(補正量算出手段)107、シフトメモリ(燃焼トルク波形位相シフト手段)108、及び、減算手段(燃焼トルク補正手段)109を備えている。
回転速度算出手段101は、クランク角センサ33の信号からクランク軸の回転速度を計算するものであり、アナログ信号が所定の閾値を上から下へ横切る度に、今回の横切った時刻と前回の横切った時刻との時間間隔Δtを計測し、歯の間隔ΔθをΔtで割ることでエンジンの回転速度(角速度)ω=Δθ/Δtを算出し、時間経過に伴う波形として出力するものである。
フィルタリング手段(燃焼トルク算出手段)102は、算出された回転速度の高周波成分の波形をフィルタリングして強調することにより、強調された周波数成分の波形から燃焼トルク(補正前の燃焼トルク)を算出するものである。この燃焼トルクの算出は、強調された周波数成分の波形から、先に示した数式により算出することができる。
上下死点判定手段103は、クランク角センサ33又はカム角センサから内燃機関1の気筒における上死点と下死点(上下死点)を判定するものである。なお、この上死点と下死点を判定は、必ずしも気筒ごとに行わなくてもよく、図2及び図4からも明らかなように、少なくとも1つの気筒における上死点と下死点を判定すればよく、ピストンが、上死点、下死点のいずれかに位置することが判定できれば充分である。
第一の上下死点フィルタ出力メモリ(第一の上下死点燃焼トルク誤差算出手段)104は、上下死点判定手段103の判定結果、及び、フィルタリング手段(燃焼トルク算出手段)で算出された燃焼トルクに基づいて、上下死点(上死点又は下死点いずれか)と判定したタイミング(第一のタイミング)のフィルタの出力、すなわち、数2の式によって算出された燃焼トルク(誤差)の値を記憶する。
第二の上下死点フィルタ出力メモリ(第二の上下死点燃焼トルク誤差算出手段)105は、上下死点判定手段103の判定結果、及び、フィルタリング手段(波形分解手段)102で算出された燃焼トルクに基づいて、第一の上下死点フィルタ出力メモリで記憶してから時間が経過して、次のタイミング(第二のタイミング)すなわち、上下死点(ここで、第一の上下死点フィルタ出力メモリで記憶した値が下死点である場合には、第二の上下死点フィルタ出力メモリで記憶した値は上死点、また、第一の上下死点フィルタ出力メモリで記憶した値が上死点である場合には、第二の上下死点フィルタ出力メモリで記憶した値は下死点)と判定したタイミングのフィルタの出力、すなわち、数2の式によって算出された燃焼トルク(誤差)の値を記憶する。
角度算出手段106は、内燃機関1の吸気弁15または排気弁18のカム軸の角度を検出するカム角センサ35とクランク角センサ33の出力信号からクランク軸17の角度を算出し、さらに、上下死点判定手段103の判定結果に基づいて、第一及び第二の上下死点フィルタ出力メモリに誤差が記憶されるまでの時間(第一のタイミングから第二のタイミングまでの時間)をクランク軸の回転角度として演算する。すなわち、上死点から下死点まで(または下死点から上死点まで)のクランク角センサ33が発生したパルス数、を数えることで、クランク軸の回転角度を算出する。
補間手段(補正量算出手段)107は、角度算出手段106で算出されたクランク軸33の回転角度に応じた燃焼トルク補正量を算出する。具体的には、第一及び第二の上下死点フィルタ出力メモリで記憶された燃焼トルク(誤差)から、算出した回転角度における誤差を、回転角度の増加に伴い直線的に近似して(図4(b)参照)、第一のタイミングから第二のタイミングまでにおける、クランク軸の回転角度に応じた燃焼トルク補正量を波形として算出するものである。
シフトメモリ(燃焼トルク波形位相シフト手段)108は、フィルタリング手段(燃焼トルク算出手段)102で算出された燃焼トルクの波形の位相(回転角度)を、燃焼トルク補正量の波形の位相に一致させるべく、燃焼トルクの波形の出力を遅延させるものである。これにより、これまでに算出された第一のタイミングから第二のタイミングまでの燃焼トルクに対して、第一のタイミングから第二のタイミングまでにおける燃焼トルク補正量で、補正を行うことができる。
減算手段(燃焼トルク補正手段)109は、シフトメモリ(燃焼トルク波形位相シフト手段)108により遅延された基本燃料トルクから、補間手段(補正量算出手段)107により算出された燃焼トルク補正量の値を減ずる補正をすることで、燃焼トルクを補正し、燃トルクを算出(推定)する。
このように構成された燃焼トルク推定装置10Aの演算を図7、図8に示すフローチャートを用いて説明する。
燃焼トルク推定装置10Aの動作は、クランク角センサ信号の立下がりに同期して行われる処理と、上下死点を検出したときに行われる処理の2つに分類できる。図7はクランク角センサ信号の立下がりに同期して行われる処理フロー図であり、図8は、上下死点を検出したときに行われる処理のフロー図である。また、図9は、クランク角センサ信号の出力の一例を示した図である。図9(a)は、クランク角センサが、等間隔で歯がリングギアについていることにより、クランク角度を検出したときのクランク角センサ信号であり、図9(b)は、リングギアの所定の位置で歯欠けがある場合のクランク角度センサ信号であり、図9(c)は、波形(b)から判定される上下死点信号である。
まず、クランク角センサ33の立下がりをエッジ検出した後に、ステップ701で、回転速度算出手段101は、一定周期で発生されるクロックパルスをカウンタで数えることで回転所要時間ΔTを計測する。再びクランク角センサ信号の立下りが検出されると、カウンタは零リセットされる。その後、カウンタの値はクロックパルスが発生するたびにインクリメントする。クランク角センサの立下りが検出されると、カウンタの値は回転所要時間ΔTを示しており、回転角Δθをカウンタ値で割ることで回転速度ωが得られる。回転速度ωを計算した後、カウンタ値は零リセットされる。回転速度計算手段101ではこれを繰り返し、クランク角センサ信号の立下りのたびに回転速度ωが算出される(図7のステップ701)。
図10(a)は、図9(b)に示すクランク角センサ33が出力する回転角度θから回転速度計算手段が計算した回転速度の一例を示した図である。この図(グラフ)に示すように、クランク角センサ信号が立ち下がるたびに回転速度ωがプロットされる。横軸はクランク角センサ信号の立ち下がり(イベント)の回数である。
ここで、クランク角センサの信号が立ち下がるタイミングで、フィルタリング手段(燃焼トルク算出手段)102は、回転速度の波形の高周波を強調するようにフィルタリングし、フィルタリングにより強調された高周波数成分の波形から、燃焼トルクを算出する(図7のステップ702)。このようにして、図10(a)に示す回転速度ωをフィルタリングした結果を図10(b)に示す。このフィルタリングにより算出された値(フィルタ値)は、燃焼トルクに対応するものであり、この例では過去17イベントの回転速度ωの信号にフィルタの係数の積和をとることで、フィルタリングを行い、燃料トルク(フィルタ出力)を算出している。そのため、最初の16点は、フィルタ出力がない。
図9(a)では、クランク角センサ33は、等間隔で歯がリングギアについていることにより、クランク角度を検出するものであるが、多くのエンジンでは図9(b)に示すように、リングギアの所定の位置で歯欠けがあり、これによって、上死点からの回転角度を検知している。そこで、上下死点判定手段103は、歯欠けからのクランク角センサ信号のパルス数を数えて、例えば図9(c)に示すような上下死点信号を発生させる。
上下死点信号が立ち下がる瞬間に(すなわち、上下死点判定手段103により上死点又は下死点であると判定したタイミングにおける)フィルタ出力値(燃焼トルク(誤差)の値)は、第一の上下死点フィルタ出力メモリ(第一の上下死点燃焼トルク誤差算出手段)104により記憶され、次に上下死点信号が立ち下がるまで保持される。このとき(次の立下り時点(第二のタイミング))、第一の上下死点フィルタ出力メモリ104に記憶されていた値は、第2の上下死点フィルタ出力メモリ(第二の上下死点燃焼トルク誤差算出手段)105にシフトされる(図8のステップ801)。
このときのフィルタ出力値、及び第一の上下死点フィルタ出力メモリ104、第二の上下死点フィルタ出力メモリ105に記憶されている値の関係を、図11を用いて説明する。
クランク角が180°のときに上下死点信号が立ち下がる。このとき、フィルタ出力値(燃焼トルクに相当する誤差)f2は第一の上下死点フィルタ出力メモリ104に記憶され、出力値f2の値はクランク角360゜まで保持されている。なお、クランク角180゜のときの上下死点信号が立ち下がる直前の第1の上下死点フィルタ出力メモリ104に記憶されている値はf1であるが、この値はf2が書き込まれる(クランク角度が180°になる)直前に第2の上下死点フィルタ出力メモリ105に退避されている。このようにして、直近の上下死点とその1つ前の上下死点におけるフィルタ出力の値は保持される。
次に図7及び図11に示すように、補間手段(補正量算出手段)107は、上死点からのクランク角(回転角度)θCAに応じて、第一の上下死点フィルタ出力メモリ104と第2の上下死点フィルタ出力メモリ105に記憶されているフィルタ出力値(誤差)f1,f2を補間すなわち燃焼トルク補正量を算出する(図7のステップ704)。補間(燃焼トルク補正量算出)の式は、例えば線形補間であれば、
Figure 2010190174
である。
なお、補間は上下死点からの角度θCAに基づいて行われるため、補間に先立って、角度算出手段106で上下死点からのクランク角センサのパルス数をカウントすることで、上下死点からの角度θCAを算出する(ステップ703)。
フィルタリングの結果となる燃焼トルクの算出値から補間の結果である燃焼トルク補正量を減算することで燃焼トルクは補正されるが、補間の結果はクランク軸が180゜回転するのに要する時間だけ遅れる。すなわち、図11のフィルタ出力値(燃焼トルクの値)の波形と、一番下の補間結果の値(燃焼トルク補正量の値)の波形を比較すればわかる。
このような点から、シフトメモリ(燃焼トルク波形位相シフト手段)108は、クランク軸が180°回転する間、フィルタ出力値の波形の位相をクランク角度180°遅延させる(図7のステップ705)。このように、シフトメモリ108で遅延させたフィルタ出力値の波形の結果は、図12の上から2番目の図のようになる。
減算手段(燃焼トルク補正手段)109において、シフトメモリ108が出力するフィルタ出力値の波形を180゜クランク回転分遅延させた結果から、補間手段の結果を減算することで、燃焼トルクを算出する(図7のステップ706)。その結果が図12の一番下の図で、一番上の図に示すフィルタ出力値は必ずしも上下死点で0でなかったのに対し、一番下の図では上下死点の燃焼トルク推定値が0になっている。
以上のような燃焼トルク推定装置によって、クランク角センサの信号から燃焼トルクの瞬時値をより正確に推定することができる。この推定結果は、上下死点における燃焼トルクの誤差に基づいて補正するものであるため、摩擦係数等の変化にもロバストである。
〔第二実施形態〕
第二実施形態と第一実施形態の相違する点は、フィルタリング手段(燃焼トルク算出手段)である。具体的には、フィルタリング手段は、クランク軸の回転速度と燃焼トルクとの波形を周波数成分に分解し、それぞれの振幅と位相の関係を調べる。
具体的には、クランク軸の回転速度(回転角速度)ωを用い、燃焼トルクτは、正弦波(余弦波)の波形の重ね合わせで近似できることから、この波形に着眼し、数7、数8のようにクランク角速度ωと燃焼トルクτを周波数分解すると、以下に示すような成分に分解することができる。
Figure 2010190174
Figure 2010190174
ここで、数7に示すωsin(ft+α)は、燃焼周波数成分(基本成分)であり、燃焼周波数(燃焼に同期した周波数)とは、単位角度ごとの燃焼頻度を表した角度周波数であり、例えば4気筒の場合には燃焼周期(燃焼角度周期)が180°CAであり、内燃機関の気筒数に対応する燃焼角度周期の逆数により決定される周波数である。また、ωsin(ft+α)は、n倍成分の波形で、nは自然数であり、燃焼周波数のn倍の回転速度の周波数成分の波形である。
図13(a)は、演算により算出される回転速度ωと、回転速度ωの波形から算出される燃焼トルクτの波形であり、(b)は、クランク軸の回転速度ωと、燃焼トルクτを燃焼に同期した周波数成分の波形、(c)〜(e)は、燃焼周波数に対して、2、3、4倍の周波数の成分に分解したときの各成分の波形である。
(τの燃焼周波数成分の振幅/ωの燃焼周波数成分の振幅)をrとすると,
(τの燃焼周波数の2倍成分の振幅/ωの燃焼周波数の2倍成分の振幅)=r×2
(τの燃焼周波数の3倍成分の振幅/ωの燃焼周波数の3倍成分の振幅)=r×3
(τの燃焼周波数の4倍成分の振幅/ωの燃焼周波数の4倍成分の振)=r×4
となる。
また、
(τの燃焼周波数成分とωの燃焼周波数成分 の位相差)=45゜CA
(τの燃焼周波数の2倍成分とωの燃焼周波数の2倍成分の位相差)=45゜CA/2
(τの燃焼周波数の2倍成分とωの燃焼周波数の2倍成分の位相差)=45゜CA/3
(τの燃焼周波数の2倍成分とωの燃焼周波数の2倍成分の位相差)=45゜CA/4
となる。
したがって,クランク軸の回転速度ωから燃焼トルクτを推定するには、図14に示すように、まず燃焼周波数フィルタ1401,2倍周波数フィルタ1402,3倍周波数フィルタ1403,4倍周波数フィルタ1404,‥‥からなるフィルタリング手段(周波数分解手段)1405によりωを燃焼に同期した成分,燃焼の2倍周期成分,3倍周期成分,4倍周期成分,‥‥に周波数分割し,振幅拡大手段1406にてそれぞれの振幅をr倍,2r倍,3r倍,4r倍し,それぞれの位相を45゜CA,45゜CA/2,45゜CA/3,45゜CA/4進ませたいが、位相は遅らせることしかできないので、位相遅延手段1407にて45゜CA−45゜CA,45゜CA−45゜CA/2,45゜CA−45゜CA/3,45゜CA−45゜CA/4遅らせて、45゜CA遅れたトルクを推定する。
そして、これらの燃焼トルクτの波形(図13(b)〜(e))を重ね合わせることで図13(a)に示すように、クランク軸の回転速度から、燃焼トルクを算出することができる。
〔第三実施形態〕
図15は、本発明に係る第三実施形態に係るトルク推定装置の全体構成図である。
第一実施形態では、クランク角センサ33の信号を回転速度算出手段101にて処理してΔθの回転所要時間Δtを算出し、Δθ/Δtによりクランク軸17の回転速度を算出していた。このかわりに、第三実施形態では、直接的にクランク軸17の回転速度を計測している。第三実施形態は、第一実施形態に比べて、回転速度の算出方法が相違し、その他の構成は、第一実施形態と同じであるので、同じ機能を有する構成は、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
図15に示すように、第三実施形態に係るトルク推定装置10Bは、図6に示す第一実施形態のトルク推定装置10Aに係る内燃機関1に、回転速度センサ34を加えたものである。回転速度センサ34として、例えば直流発電機を用いれば、回転速度に比例した電圧が発生する。この場合、従来のクランク角センサ34からの信号は、フィルタ内に記憶されるデータを更新するタイミングをとるために利用される。つまり、クランク角センサが立ち下がるときに、図7に示すフローは実行される。
このような実施形態をとるのは、第一実施形態のように、Δθ/Δtを算出すると、Δtの精度をかなり良くしないとエンジンの回転速度ωは正確に求まらない場合がある。本実施形態では、直接エンジン回転速度を求めるので、回転速度ωに対して、それほどの精度はいらない。そこで、ここでは回転速度センサ34を用いることで、Δtへの要求精度を緩和することができ、トルク推定にかかる演算処理を軽減することができる。
〔第四実施形態〕
図16は、本発明に係る第四実施形態に係るトルク推定装置を含む燃焼エネルギー推定装置の全体構成図である。第一実施形態〜第三実施形態は、燃焼トルクの瞬時値を求めるものであった。気筒ごとの燃焼トルクがわかっていれば、これを1エンジンサイクル分積分することでエンジンの燃焼エネルギーが求められる。本実施形態では、図16のような構成で、エンジンの燃焼エネルギーを求める。
図16に示すように、この燃焼エネルギー推定手段10Dは、図6に示す第一実施形態のトルク推定装置10Aに、クランク角度算出手段161、積分手段162、及び、燃焼エネルギー算出手段163をさらに備えたものである。
クランク角度算出手段161は、内燃機関1の吸気弁13または排気弁18のカム軸の角度を検出するカム角センサとクランク角センサ33の出力信号からクランク軸17の角度を算出している。具体的には、クランク角度算出手段161は、内燃機関1の吸気弁13又は排気弁18に配置されたカム軸に対して、その回転角度を検出するカム角センサ35の信号を検出する。そして、各気筒20のカム軸のカム角が示す、ピストン12の上死点23の位置と、クランク角センサ33による回転角度の情報から、クランクの角度を算出している。このクランク角度を算出する目的は、各気筒を判別し、推定された燃焼トルクから、各気筒ごとにおける燃焼エネルギーを算出するための時間的なパラメータとして用いるためである。
積分手段162は、クランク角度算出手段161で算出されたクランク角度に応じて変化する前記燃焼トルクを積分している。具体的には、所与のクランク角からクランク角までの区間、燃焼トルクの瞬時値を積分している。
燃焼エネルギー算出手段163は、あらかじめ与えた積分値と燃焼エネルギーの対応関係から燃焼エネルギーを算出している。積分する積分区間の考え方を、図2に戻り説明する。前述したように、図2は、第3気筒、第4気筒、第1気筒、第2気筒の順番で爆発しているときの筒内圧(図2(b))、燃焼トルク(図2(c))、クランク軸回転速度(図2(d))を表している。
例えば、第1気筒の燃焼エネルギーを求めるには、積分手段162は、この気筒の筒内圧が、他のすべての気筒(第2気筒から第4気筒)の筒内圧に比べて高い(最も大きい)θ41からθ13まで区間を積分するように設定されており、この積分区間における燃焼トルクを積分する。筒内圧を測定できる場合にはその測定値に基づいて、この区間を前記条件により設定してもよい。この区間の燃焼トルクは,第1気筒の寄与が大きく、燃焼トルクの合計≒第1気筒の燃焼トルク、と近似できる。
別の言い方をすれば、積分区間の開始点は圧縮行程の所定の時点に設定され、終了点は爆発行程の所定の時点に設定される。この区間の燃焼トルクは、第1気筒の寄与が大きく、燃焼トルクの合計≒第1気筒の燃焼トルク、と近似できる。
燃焼エネルギーを求めるには1エンジンサイクル分の燃焼トルクを積分する必要があるが、[θ41、θ13]のみの積分値W1をもとめておいて、積分値と燃焼エネルギーの関係Wから第1気筒の燃焼エネルギーを求める。多くの場合、W1とWは、直線の関係で近似できるので、燃焼エネルギー算出手段には、直線の傾きと切片を記憶しておけばよい。
このように、第一〜第三実施形態のいずれかで算出された燃焼トルクを、筒ごとに設定された前記クランク角度の積分区間に基づいて積分し、この積分された値を、所定の対応関係を示す直線関係等の関係式で変換することで、各気筒の燃焼の燃焼エネルギーが算出できる。
1:内燃機関、12:ピストン、13:吸気弁、14:スロットル、15:インジェクタ、16:点火プラグ、17:クランク軸、18:排気弁、20:気筒、22:下死点、23:上死点、33:クランク角センサ、34:回転角センサ、10A〜10C:トルク推定装置、10D:燃焼エネルギー推定装置、101:回転速度算出手段、102:フィルタリング手段(燃焼トルク算出手段)、103:上下死点判定手段、104:第一の上下死点フィルタ出力メモリ(第一の上下死点燃焼トルク誤差算出手段)105:第二の上下死点フィルタ出力メモリ(第二の上下死点燃焼トルク誤差算出手段)、106:角度算出手段、107:補間手段(補正量算出手段)、108:シフトメモリ(燃焼トルク波形位相シフト手段)、109:減算手段(燃焼トルク補正手段)

Claims (9)

  1. クランク軸の回転速度から、燃焼トルクを推定する内燃機関のトルク推定装置であって、
    前記クランク軸の回転速度を算出する回転速度算出手段と、
    前記回転速度の波形をフィルタリングすることにより、前記回転速度の波形のうち所定の周波数成分の波形から燃焼トルクを算出する燃焼トルク算出手段と、
    前記内燃機関の上死点及び下死点を判定する上下死点判定手段と、
    前記上死点又は下死点であると判定したタイミングにおける前記燃焼トルクに基づいて、前記燃焼トルクの補正量を算出する燃焼トルク補正量算出手段と、
    前記燃焼トルク補正量に基づいて、前記燃焼トルクを補正する燃焼トルク補正手段と、を備えることを特徴とする内燃機関のトルク推定装置。
  2. 燃焼トルク補正量算出手段は、前記上下死点判定手段が前記上死点又は下死点であると判定した第一のタイミングにおける燃焼トルクと、前記第一のタイミング後において、前記上下死点判定手段が前記上死点又は下死点であると判定した第二のタイミングにおける燃焼トルクと、に基づいて、第一のタイミングから第二のタイミングまでにおける前記燃焼トルクの補正量を算出することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のトルク推定装置。
  3. 前記燃焼トルク算出手段は、
    前記回転速度の前記波形を、前記フィルタリングにより、前記内燃機関の燃焼に同期した周波数の成分の波形と、該周波数の整数倍の周波数の成分の波形と、に分解する手段と、
    各周波数成分ごとの波形に対して、該波形の位相と振幅を補正する手段と、
    各周波数成分ごとの波形を重ね合わせて、前記燃焼トルクの波形を算出する手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関のトルク推定装置。
  4. 前記トルク推定装置は、前記クランク軸に取付けられたクランク角センサの出力信号から、前記回転速度を算出する回転速度算出手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関のトルク推定装置。
  5. 前記回転速度センサは、直流発電機であることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関のトルク推定装置。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の燃焼トルク推定装置を備え、前記燃焼トルクから各気筒の燃焼エネルギーを推定する燃焼エネルギー推定装置であって、
    該燃焼エネルギー推定装置は、前記クランク軸の角度を算出するクランク角度算出手段と、
    前記クランク角度に応じて変化する前記燃焼トルクを積分する積分手段と、
    該積分した値に基づいて各気筒の燃焼エネルギーを算出する燃焼エネルギー算出手段と、を備えることを特徴とする燃焼エネルギー推定装置。
  7. 前記積分手段は、前記気筒ごとに前記クランク角度の積分区間を設定し、該積分区間に基づいて、前記燃焼トルクを積分し、前記各気筒の燃焼エネルギーを算出することを特徴とする請求項6に記載の燃焼エネルギー推定装置。
  8. 前記気筒において設定されたクランク角度の積分区間は、前記気筒の筒内圧が他のすべての気筒の筒内圧に比べて高い筒内圧となる区間であることを特徴とする請求項7に記載の燃焼エネルギー推定装置。
  9. 前記クランク角度の積分区間は、圧縮行程の時点から爆発行程の時点までの区間であることを特徴とする請求項7に記載の燃焼エネルギー推定装置。
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