JP2010189758A - 疲労強度に優れる鋼管の製造方法 - Google Patents

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Tetsuo Ishizuka
哲夫 石塚
Oji Tanaka
王治 田中
Takahiro Ichiyama
貴博 市山
Takashi Tsusue
高志 津末
Masamichi Iwamura
雅通 岩村
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Abstract

【課題】脱炭層の発生を抑制することにより疲労強度を向上させた中空部品用鋼管の製造方法を提供する。
【解決手段】長さが15〜120mの鋼管の管内に、1〜20質量%のアルカリ金属炭酸塩を含有し、残部が木炭、黒鉛、石炭、コークスの1種または2種以上と不可避不純物からなる固体浸炭処理剤を、管内面の表面積1mm2あたり0.05μg以上挿入し、両端に栓を取り付け、誘導加熱し、熱間で縮径圧延する。これにより、長さが15〜120mの長尺の鋼管の内部に、脱炭層を形成させることなく、熱間での縮径圧延が可能になり、疲労強度が高い鋼管を効率的に製造することができる。特に、中空スタビライザーなどの素材として好適な、疲労特性に優れた厚肉電縫鋼管を製造することができるなど、産業上の貢献が極めて顕著である。
【選択図】図2

Description

本発明は、特に、中空部品に好適な、疲労強度に優れる鋼管の製造方法に関する。
自動車の燃費向上対策のひとつとして、車体や自動車部品の軽量化が進められている。例えば、スタビライザーやドライブシャフトは、従来、棒鋼などの中実材を所要の形状に加工して製造されていたが、軽量化のために、電縫溶接鋼管のような中空部品用鋼管が使用されるようになってきた。これに伴い、中空スタビライザー用の電縫溶接鋼管として、加工性や疲労特性に優れた鋼管が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
一方、鋼管に、熱処理を施す際には、内面の脱炭が問題になる。これは、脱炭層は強度が低く、疲労破壊の発生する起点となり、疲労強度が低下するためである。そのため、鋼管の内面における脱炭層の形成を防止するために、管内部に黒鉛や木炭などを封入して熱処理を施す方法が提案されている(例えば、特許文献3、4)。
また、更に、耐久性や疲労特性を向上させるため、中空スタビライザーの内面に浸炭処理を施す方法が提案されている(例えば、特許文献5、6)。これらは、鋼管をスタビライザーの形状に加工した後の調質熱処理を利用するものである。即ち、鋼管の内面に浸炭処理剤を付着させて焼入れ処理する際に、浸炭処理剤をガス化させ、鋼管の内表面を浸炭させる方法である。
特許4102195号公報 特開2004−11009号公報 特開平3−2327号公報 特開平5−339639号公報 特開2000−118224号公報 特開2001−152315号公報
井上関次、「中空スタビライザの設定」、ばね論文集、28(1983)p.46、日本ばね学会編
鋼管に、熱間での縮径圧延を施す場合は、室温まで冷却される途中の、組織がフェライトとオーステナイトとの二相となる温度域(α+γ二相域)を通過する際に、内表面に脱炭層が形成されやすい。そのため、研削加工工程などの工程が必要となり、製造コストが増加する。また、あらかじめ管内面に浸炭処理剤を付着させ、縮径圧延すると、脱炭層の発生を防止するだけでなく、浸炭させることも可能である。
しかし、液体浸炭処理剤を使用する場合、長さが15m以上になると、長さが1m前後の鋼管とは異なり、内面に均一に付着させることが困難であることがわかった。また、長さが15〜120mの鋼管を熱間で縮径圧延する場合、加熱には誘導加熱炉を用いる。そのため、黒鉛や木炭などの固体浸炭処理剤をそのまま用いると、液体浸炭処理剤とは異なり、効果が不十分であることがわかった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、長さが15〜120mの鋼管を誘導加熱炉で加熱し、熱間で縮径圧延する場合に、鋼管の内面の脱炭層の形成を抑制し、疲労強度を向上させる、鋼管の製造方法を提供するものである。
本発明者らは、エアブローによって、長尺管の長手方向の中央部に塗布することが可能な、種々の粉末状の固体浸炭処理剤を鋼管の内面に付着させ、誘導加熱した後、脱炭層の形成の有無を調査した。その結果、1〜20質量%のアルカリ金属炭酸塩を含有し、残部が木炭、黒鉛、石炭、コークスの1種または2種以上と不可避不純物からなる固体浸炭処理剤を、管内面の表面積1mm2あたり0.05μg以上挿入することによって、短時間の加熱でも、鋼管の内面の脱炭を防止できるという知見を得た。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1) 長さが15〜120mの鋼管の管内に、1〜20質量%のアルカリ金属炭酸塩を含有し、残部が木炭、黒鉛、石炭、コークスの1種または2種以上と不可避不純物とからなる固体浸炭処理剤を、管内面の表面積1mm2あたり0.05μg以上挿入し、両端に栓を取り付け、誘導加熱し、熱間で縮径圧延することを特徴とする疲労強度に優れる鋼管の製造方法。
(2)アルカリ金属炭酸塩が炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸バリウムの内の1種または2種以上からなることを特徴とする上記(1)に記載の疲労強度に優れる鋼管の製造方法。
(3) 鋼管の成分が、質量%で
C:0.15〜0.5%
Si:0.1〜0.4%
Mn:0.3〜2.0%
Ti:0.005〜0.05%
Al:0.005〜0.05%
B:0.0005〜0.0050%
N:0.001〜0.006%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の疲労強度に優れる鋼管の製造方法。
(4) 鋼管の成分が、更に、質量%で
Cr:0.05〜1.0%、
を含有することを特徴とする上記(3)に記載の疲労強度に優れる鋼管の製造方法。
(5) 鋼管の成分が、更に、質量%で
Ca:0.0005〜0.0070%
を含有することを特徴とする上記(3)又は(4)に記載の疲労強度に優れる鋼管の製造方法。
本発明によれば、長さが15〜120mの長尺の鋼管の内部に、脱炭層を形成させることなく、熱間での縮径圧延が可能になり、疲労強度が高い鋼管を効率的に製造することができる。特に、中空スタビライザーなどの素材として好適な、疲労特性に優れた厚肉電縫鋼管を製造することができるなど、産業上の貢献が極めて顕著である。
疲労試験で使用する疲労試験片の形状を示す図である。 母管の長さと疲労強度との関係を示す図である。 固体浸炭処理剤の母管内部への挿入量と、疲労強度との関係を示す図である。
鋼管を熱間で縮径圧延する場合、高周波誘導加熱炉によって、約30秒で、800〜1200℃に加熱し、その後、直ちに縮径圧延を行い、数十秒間で縮径圧延を終え、500〜800℃で放冷される。鋼管の内面の脱炭が促進されるのは、縮径圧延後の冷却中である。特に、α+γ二相域を通過する際には、脱炭が生じ易い。これに対して、固体浸炭処理剤を鋼管の管内に挿入すると、数10秒の加熱中に鋼管の内部がガス浸炭雰囲気になり、脱炭が抑制される。
本発明は、長さが、15〜120mの鋼管を縮径圧延するものである。生産性の観点から、鋼管が長尺であることが好ましく、長さが15m以上になると、効率が顕著に向上する。製造コストを考慮すると、鋼管の長さは、50m以上であることが好ましい。一方、長さが120m以下であれば、管内部を清掃するために用いられているエアブローなどの装置を利用して、固体浸炭処理剤を挿入することができる。均一に固体浸炭処理剤を挿入するには、鋼管の長さを100m以下にすることが好ましい。
固体浸炭処理剤にはアルカリ金属炭酸塩を質量%で1〜20%含有し、残部が木炭、黒鉛、石炭、コークスの1種または2種以上と不可避不純物からなる固体浸炭処理剤を用いる。まず、固体浸炭処理剤を用いる理由は、液体浸炭処理剤を長尺管の内面に付着させるのは困難であるためである。粉末状の固体浸炭処理剤は、エアブローなどの装置によって、鋼管の内部に容易に挿入することができる。
また、固体浸炭処理剤は、浸炭を促進させるために、例えば炭酸ナトリウムのようなアルカリ金属炭酸塩を用いることが必要である。一般的な固体浸炭処理剤、例えば、木炭と、質量%で1%以上、好ましくは2%以上のアルカリ金属炭酸塩を混合することによって、脱炭を抑制する効果が顕著になる。一方、質量%で20%を超えるアルカリ金属炭酸塩を混合しても効果は飽和するため、上限を20%とした。固体浸炭処理剤は、木炭以外に、炭素を主成分とするもの、例えば、黒鉛、石炭、コークスなどを用いることができる。アルカリ金属炭酸塩は、炭酸ナトリウム以外に、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸カリウム等を単独または2種以上を混合して用いることができる。
また、鋼管の内部に挿入する固体浸炭処理剤は、浸炭効果を得るために、挿入量の下限を0.05μg/mm2とすることが必要である。しかし、あまり入れすぎても浸炭の効果は飽和するので1μg/mm2以下にすることが望ましい。固体浸炭剤の実際の挿入量は母管の内面の表面積から、0.05〜1μg/mm2の範囲で必要量を計算して決定する。計算によって求められた必要量をエアブローなどの装置によって吹き込むことにより、均一に固体浸炭処理剤を挿入することができる。
なお、鋼管の内部に固体浸炭処理剤を挿入した後、管内面に固体浸炭処理剤をある程度均一に付着させるため、回転しながら前進する方式で搬送することが望ましい。これにより、鋼管の搬送中に固体浸炭処理剤が一方に片寄ることを防止することができる。
鋼管の内部に挿入した固体浸炭処理剤は、誘導加熱炉での加熱によりガス化し、母管内には高炭素ポテンシャル雰囲気が形成される。そのため、高炭素ポテンシャル雰囲気が大気と混ざらないようにするために、鋼管の両端面には予め栓をしておく必要がある。栓には耐熱性の材料が必要であるが、完全に密閉する必要はなく、例えばカオウールのような綿状のセラミックファイバーを詰めれば良い。
縮径圧延は、鋼管を所定の速度で搬送し、誘導加熱炉を通過させて所定の温度まで昇温した後、ストレッチレデューサーなどにより行うことができる。ストレッチレデューサーは、圧延軸の周りに3ロール或いは4ロールを有する圧延スタンドを複数、圧延軸に直列に備えた圧延装置である。この圧延装置の各圧延スタンドのロール回転数及び圧下力を調整することにより、鋼管の管軸方向(圧延方向)の張力及び円周方向の圧縮力を制御し、これによって所定の外径および肉厚の鋼管を造り分けることができる。
以下、本発明の鋼管の製造方法について説明する。
所要の化学組成を有するように溶製した溶鋼を、鋳造して鋳片とするか、或いは一旦鋼塊とした後、熱間圧延して鋼片とし、この鋳片または鋼片を熱間圧延して熱間圧延鋼板とする。この熱間圧延鋼板を通常の電縫溶接鋼管の製造方法、すなわち冷間で管状にロール成形した鋼板の端面同士を通電加熱あるいは高周波誘導加熱方式により溶接し電縫溶接鋼管とする。電縫溶接鋼管の長さは最長でホットコイルの長さまで可能であるが、通常は使用目的に応じて所定の長さに切断される。
次に、鋼管の好ましい化学成分について説明する。なお、各成分の含有量は質量%で記載している。
Cは、基地中に固溶或いは炭化物として析出し、鋼の強度を増加させる元素である。一般的な自動車構造用部材として使用する場合、少なくとも980MPaの強度が必要であり、それに相当するHv320前後の硬さが90%マルテンサイト組織で得られるのは、C量が0.15%以上の場合である。したがって、Cは、0.15%以上含有することが好ましい。一方、C量が0.5%を超えると、加工性や溶接性が劣化することがある。したがって、Cの含有量は、0.15〜0.5%が好ましい範囲である。なお、更に好ましいC量の範囲は、0.2〜0.4%である。
Siは、固溶強化に寄与する合金元素であり、その効果を得るためには0.1%以上含有することが好ましい。一方、Siを、0.4%を超えて含有させると、電縫溶接時の溶接欠陥となるSi−Mn系の介在物を生成しやすくなり、電縫溶接部の健全性に悪影響を及ぼすことがある。このため、Si含有量を0.1〜0.4%の範囲とすることが好ましい。なお、更に好ましいSi量は、0.2〜0.3%の範囲である。
Mnは、焼入れ性を向上させる元素であり、効果を得るには、含有量を0.3%以上にすることが好ましい。一方、Mn量が2%を超えると、溶接性及び溶接部の健全性に悪影響を及ぼすことがある。そのため、Mn含有量を0.3〜2%の範囲とすることが好ましい。なお、更に好ましいMn量は、0.5〜1.5%の範囲である。
Tiは、鋼中のNを固定する元素である。特に、Bを添加した場合は、BNの析出を抑制することにより、焼入れ性を安定的かつ効果的に向上させる。鋼中のNを固定するには、Tiを0.005%以上添加することが好ましい。一方、Ti量が0.05%を超えると靭性が劣化することがある。そのため、Ti含有量は0.005〜0.05%の範囲とすることが好ましい。なお、更に好ましいTi量は、0.01〜0.03%の範囲である。
Alは、溶鋼の脱酸剤として用いられる元素であり、また、Nを固定する元素でもある。結晶粒径を微細化し、機械的性質を向上させるためには、0.005%のAlを添加することが好ましい。一方、Alの含有量が0.05%を超えると、結晶粒径が粗大化して靭性が低下したり、非金属介在物が多くなって製品に表面疵が発生することがある。そのため、Al含有量は0.005〜0.05%とすることが好ましい。なお、更に好ましいAl量の範囲は、0.01〜0.05%である。
Bは、微量の添加で鋼材の焼入れ性を大幅に向上させる元素であり、また、粒界強化の効果もある。含有量が0.0005%未満で焼入れ性を向上させる効果が期待できず、一方、0.0050%を超えると粗大なB含有相を生成する傾向があり、また脆化が起こりやすくなる。このため、B含有量は0.0005〜0.0050%とする。なお、好ましくは、0.0010〜0.0030%である。
Nは、窒化物または炭窒化物を析出させ、強度を高めるための重要な元素である。その効果は0.001%以上を含有させることにより発揮されるが、含有量が0.006%を超えるとBNの析出による焼入れ性の低下や、窒化物の粗大化および時効硬化により靭性が劣化する傾向が見られる。このため、N含有量は0.001〜0.006%の範囲とする。なお、好ましくは、0.002〜0.004%である。
更に、Crを添加してもよい。
Crは、焼入れ性を向上させる元素である。焼き戻しによる軟化を抑制するためには、Crを0.05%以上添加することが好ましい。一方、Cr含有量が1%を超えると電縫溶接時に欠陥を発生しやすくなる。そのため、Cr含有量は0.05〜1%の範囲とすることが好ましい。なお、更に好ましいCr量は、0.1〜0.5%の範囲である。
更に、Caを添加してもよい。
CaはCaSとしてSを固定して靱性を向上させる他、MnSの析出を抑制して電縫溶接部の品質を向上させる効果がある。その効果を得るためには0.0005%以上のCaの添加が好ましい。一方、0.0070%を超えるCaを添加すると、介在物が電縫溶接衝合部に集積し、電縫溶接部の健全性が損なわれることがある。このため、Ca含有量は0.0005〜0.0070%の範囲が好ましい。Ca添加量の、より好ましい範囲は0.0010〜0.0040%である。
上記のように本実施の形態では、管内面に脱炭層が発生するのを防止することにより疲労強度に優れた中空部品用鋼管を得ることができる。なお、母管に固体浸炭剤を挿入させずに熱間で縮径圧延を行い放冷された場合に形成される脱炭層深さは概ね30μmである。本発明によれば、管内面の表面から30μm以内の平均炭素濃度は、管全体の平均炭素濃度の80%以上となり、疲労強度が低下することはない。
鋼管の長さと、固体浸炭処理剤の挿入量を変化させ、熱間で縮径圧延を行った後の脱炭の有無を評価した。種々の成分からなり、長さが50〜140mの鋼管の管内に、縮径圧延を行う前に、5質量%のアルカリ金属炭酸塩を含む粉末状の木炭をエアブローを用いて挿入した。固体浸炭処理剤の挿入量を変化させて、両端に栓を取り付け、誘導加熱し、熱間で縮径圧延を行った。
各々の管から長手方向の断面を鏡面研磨した試料を10個づつ採取し、鋼管の内表面から30μm以内の位置を1000μm幅で10箇所づつEPMAにより面分析を行い、平均炭素濃度を測定した。また、図1に示す疲労試験片を採取し、片側を固定して、同一直径の中実材で第一主応力振幅が600MPaとなるような応力条件で両振りの疲労試験を実施し、破断繰り返し数を求めた。
図2は、母管の長さと疲労強度との関係を示す図である。図2によれば、本発明の範囲として母管の長さの上限を120mとしたのが適切であることがわかる。図3は固体浸炭処理剤の母管内部への挿入量と、疲労強度との関係を示す図である。図3においても、本発明の範囲として、固体浸炭処理剤の母管内部への挿入量を0.05μg/mm2以上としたのが適切であることがわかる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
表1に示す組成を有する各種鋼を溶製し、鋳造し鋳片とした。得られた鋳片を1150℃に加熱し、圧延仕上げ温度890℃、巻き取り温度630℃で熱間圧延し、板厚6mmの鋼板とした。これらの熱間圧延鋼板を所定の幅にスリットし、ロール成形した後、高周波電縫溶接により外径90mmの電縫溶接鋼管(母管)とした。母管の長さは100mを標準とし、母管長さの影響を調べるために50〜140mの範囲で変化させた。
これらの母管の内部に、エアブローを用いて、炭酸バリウム(促進剤)を混合した木炭粉(固体浸炭処理剤)を挿入し、両管端にカオウールを詰めて栓をした。また、比較のために固体浸炭処理剤を挿入しないもの、固体浸炭処理剤の量を減らしたもの、促進剤の量を減らしたもの、両管端の栓を省略したもの、を準備した。表2に母管の長さ、固体浸炭処理剤の挿入量、促進剤の含有量(質量%)、両端の栓の有無を示す。
Figure 2010189758
Figure 2010189758
引き続き、これらの鋼管を円周方向に回転させながら搬送し、高周波誘導加熱により1000℃に加熱してストレッチレデューサーにより縮径圧延を施し、外径30mm、肉厚6.5mmの厚肉鋼管を製造した。縮径圧延後の冷却は大気放冷とした。
各々の管からL断面を鏡面研磨した試料を10個づつ採取し、それぞれ試料について内表面から30μm以内の位置を1000μm幅で10箇所づつEPMAにより面分析を行い、平均炭素濃度を測定した。また、これらの鋼管から、非特許文献1を参考に、図1に示すような曲げ半径60mmで曲げた疲労試験片を採取し、片側を固定して、同一直径の中実材で第一主応力振幅が600MPaとなるような応力条件で両振りの疲労試験を実施し、破断繰り返し数を求めた。結果を表3に示す。なお、表3には、表1の炭素量(C)を鋼中平均炭素量として示した。また、表3のB/Aは、内表面から30μm以内の平均炭素濃度を鋼中平均炭素濃度で除した値を百分率で示した、脱炭量の指標である。
Figure 2010189758
表3に示した、本発明例a〜mは、固体浸炭処理剤を挿入して縮径圧延したため、内表面から30μm以内の平均炭素濃度が鋼中平均炭素濃度の85%以上を確保されており、疲労試験の破断繰り返し数が何れも10万回を越えた。
それに対して、比較例N〜Q、V〜Yは、固体浸炭処理剤を挿入しないで縮径圧延したため、内表面から30μm以内の平均炭素濃度が鋼中平均炭素濃度の半分以下であり、疲労試験の破断繰り返し数が大幅に減少した例である。
また、比較例Rは両管端の栓の省略、比較例Sは固体浸炭処理剤の量の不足、比較例Tは固体浸炭処理剤中の浸炭促進剤の濃度不足により、何れも内表面から30μm以内の平均炭素濃度が鋼中平均炭素濃度の85%に達せず、疲労試験の破断繰り返し数がやや減少した例である。
また、比較例Uは、母管の長さが140mと長すぎて、固体浸炭処理剤を母管内部全体に挿入することがうまくいかなかったために、局部的に内表面から30μm以内の平均炭素濃度が鋼中平均炭素濃度の85%に達しない場所が生じ、疲労試験の破断繰り返し数がやや減少した例である。
表1に示す組成を有する各種鋼を溶製し、上記実施例1と同様の方法で鋳造、熱間圧延、スリットを行い、電縫溶接鋼管(母管)とした。母管の長さは100mを標準とした。
これらの母管の内部に、エアブローを用いて、アルカリ炭酸塩を(促進剤)を混合した木炭粉(固体浸炭処理剤)を挿入し、両管端にカオウールを詰めて栓をした。なお、アルカリ炭酸には炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸バリウムを質量比で60:30:9:1、60:30:10:0,および60:40:0:0の割合で混合したものを用いた。また、比較のために、固体浸炭処理剤の量を減らしたもの、促進剤の量を減らしたもの、両管端の栓を省略したもの、を準備した。表4に母管の長さ、固体浸炭処理剤の挿入量、促進剤の組成、促進剤の含有量(質量%)、両端の栓の有無を示す。
Figure 2010189758
引き続き、上記実施例1と同様、これらの鋼管を円周方向に回転させながら搬送し、高周波誘導加熱により1000℃に加熱してストレッチレデューサーにより縮径圧延を施し、外径30mm、肉厚6.5mmの厚肉鋼管を製造した。縮径圧延後の冷却は大気放冷とした。
各々の管からL断面を鏡面研磨した試料を10個づつ採取し、それぞれ試料について内表面から30μm以内の位置を1000μm幅で10箇所づつEPMAにより面分析を行い、平均炭素濃度を測定した。また、これらの鋼管から、非特許文献1を参考に、図1に示すような曲げ半径60mmで曲げた疲労試験片を採取し、片側を固定して、同一直径の中実材で第一主応力振幅が600MPaとなるような応力条件で両振りの疲労試験を実施し、破断繰り返し数を求めた。結果を表5に示す。なお、表5には、表1の炭素量(C)を鋼中平均炭素量として示した。また、表5のB/Aは、内表面から30μm以内の平均炭素濃度を鋼中平均炭素濃度で除した値を百分率で示した、脱炭量の指標である。
Figure 2010189758
表5に示した、本発明例aa〜ahは、固体浸炭処理剤を挿入して縮径圧延したため、内表面から30μm以内の平均炭素濃度が鋼中平均炭素濃度の85%以上を確保されており、疲労試験の破断繰り返し数が何れも10万回を越えた。
それに対して、比較例AIは両管端の栓の省略、比較例AJは固体浸炭処理剤の量の不足、比較例AKは固体浸炭処理剤中の浸炭促進剤の濃度不足により、何れも内表面から30μm以内の平均炭素濃度が鋼中平均炭素濃度の85%に達せず、疲労試験の破断繰り返し数がやや減少した例である。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態の中空部品用鋼管は種々の部品に適用可能であり、例えばスタビライザーに適用することができる。

Claims (5)

  1. 長さが15〜120mの鋼管の管内に、1〜20質量%のアルカリ金属炭酸塩を含有し、残部が木炭、黒鉛、石炭、コークスの1種または2種以上と不可避不純物とからなる固体浸炭処理剤を、管内面の表面積1mm2あたり0.05μg以上挿入し、両端に栓を取り付け、誘導加熱し、熱間で縮径圧延することを特徴とする疲労強度に優れる鋼管の製造方法。
  2. アルカリ金属炭酸塩が、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸バリウムの内の1種または2種以上からなることを特徴とする請求項1に記載の疲労強度に優れる鋼管の製造方法。
  3. 鋼管の成分が、質量%で
    C:0.15〜0.5%
    Si:0.1〜0.4%
    Mn:0.3〜2.0%
    Ti:0.005〜0.05%
    Al:0.005〜0.05%
    B:0.0005〜0.0050%
    N:0.001〜0.006%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の疲労強度に優れる鋼管の製造方法。
  4. 鋼管の成分が、更に、質量%で
    Cr:0.05〜1.0%、
    を含有することを特徴とする請求項3に記載の疲労強度に優れる鋼管の製造方法。
  5. 鋼管の成分が、更に、質量%で
    Ca:0.0005〜0.0070%
    を含有することを特徴とする請求項3又は4に記載の疲労強度に優れる鋼管の製造方法。
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