JP2010181359A - 高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いた有機金属の定量分析方法 - Google Patents

高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いた有機金属の定量分析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】固体または液体中に含有または付着した有機金属成分の迅速な定量分析方法を提供する。
【解決手段】金属成分を、高温のプラズマ内で励起、発光させ、その発光を分光分析することで多成分同時かつ高感度に分析する高周波誘導結合プラズマ発光分光分析方法において、試料に含有または付着した有機金属成分を二酸化炭素の超臨界流体を用いて選択的に抽出した後、目的物質を含む超臨界流体を、マイクロピンホールノズルを用いてプラズマ内に連続的に導入することを特徴とする高周波誘導結合プラズマ発光分光分析方法を用いた有機金属成分の定量分析方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体、液体試料中に含有される有機金属の分析方法に関し、詳しくは、超臨界流体抽出法により試料から分離される金属を連続的に高周波誘導結合プラズマ発光分析装置に導入し定量分析することにより、試料中の有機金属元素の濃度の情報を簡易に得る有機金属の定量分析方法に関する。
有機金属とは、有機化合物と金属を化学結合させた有機金属化合物、もしくは有機金属錯体であり、材料工学分野で活用されている。また、天然にも、ヘモグロビンやクロロフィルなど、生体にとって有用な有機金属が存在する。しかし、一部には、毒性が認められるものもある。
例えば、有機スズは、スズ原子にアルキル基またはアリール基が1〜4個共有結合した化合物の総称であり、モノおよびジアルキルスズは主に塩化ビニル樹脂安定剤や産業用触媒に、トリアルキルスズやトリフェニルスズは防汚剤、農薬、防腐剤、殺菌剤、防黴剤などに用いられる。特にトリブチルスズ化合物は、船舶において船底に生物が付着するのを防止する目的で防汚剤として船底塗料に広く利用されている。
しかし、雌巻貝類の雄化現象など、外因性内分泌攪乱物質としてのトリブチルスズ化合物の有害性が広く認められるようになり、我が国をはじめとする多くの国々では使用を禁止するか、あるいは規制を設けて制限している。例えば我が国では、化学物質審査規制法の第一種特定化学物質または第二種特定化学物質環境に指定されて所要の規制が行われている。
非特許文献1に記載されている環境庁による有機スズに関する従来の分析方法を記述する。水質試料は、同位体標識した有機スズ化合物または塩化トリペンチルスズをサロゲート物質として添加後、塩酸酸性下でヘキサンを用いて溶媒抽出する。脱水・濃縮後、臭化プロピルマグネシウムでプロピル化する。次に、プロピル化体を有機溶媒で抽出し、フロリジルカラムを用いてクリーンアップ後、濃縮してGC−FPD法あるいはCG/MS−SIM法により定量する。また、固体試料は、水質試料と同様に同位体標識した有機スズ化合物または塩化トリペンチルスズを添加し、塩酸酸性メタノール−酢酸エチル混合溶媒で抽出し、更に酢酸エチル−ヘキサンで再抽出後、陰イオン及び陽イオン交換樹脂によりクリーンアップする。次に、水質試料と同様にプロピル化してGC−FPDあるいはCG/MS−SIM法により定量する。
また、有機金属化合物は、環境側面だけでなく、有機合成においては工業的にも極めて重要な触媒として用いられており、例えば石油化学製品の製造の実用に供されている。バルビエール反応に用いられる有機亜鉛化合物、グリニャール反応に用いられる有機マグネシウム化合物、また、有機銅化合物、有機リチウム化合物も触媒として重要である。他に、金属カルボニル、カルベン錯体、フェロセンをはじめとするメタロセンもある。これら有機金属化合物や有機金属錯体に関しても、化学分析を行う際には、有機スズの分析方法に準じた煩雑な手順に基づいて実施する必要がある。
このような有機金属類の分析に要する時間と労力は、そのほとんどが溶媒抽出操作にかかるものである。溶媒抽出、分析妨害物質の除去を行う前処理における労力と時間を大幅に省けるような、迅速、簡便な分析法の開発が求められている。
既存の金属元素分析法に関して説明する。従来、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法が幅広く用いられている。この方法では、ドーナツ型に形成されるArの高周波誘導結合プラズマ内に、溶液状試料、気体状試料、あるいは気体中に微粒子状で存在する試料を、ネブライザやスプレーチャンバを利用してプラズマトーチ内に導入する。プラズマトーチ内に導入された試料中の元素は、プラズマのエネルギーにより灰化分解され、引き続いて原子化、イオン化するが、これらが緩和する際に発する元素固有の発光の波長と強度を分光分析することにより、試料中の元素の種類と濃度を知る方法である。しかし、この手法は、土壌や灰などの固体試料に直接適用することは難しい。また、レーザアブレーションなどで試料を微粒子化したり、電気炉などで試料を気化したりするなどして分析に供しても、プラズマ内で試料中の有機金属は灰化分解されるため、目的成分が試料中で有機金属態であるか無機金属態であるかの区別を行うことはできず、化学状態の分析を行うことは不可能である。
有機金属と無機金属を分別する方法について説明する。有機金属のみを抽出するには、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素などの無極性溶媒中に有機金属を抽出分離する溶媒抽出法が有効であり、先に述べたトリブチルスズの分析においてもヘキサンを用いて抽出する方法が公定化されている。この溶媒抽出法においては、金属はイオンとして有機相に抽出される。しかし、通常の分析装置では有機溶媒を直接導入できない。例えば高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置の場合では、安定して分析を行うために高価で寿命の短い特殊なプラズマトーチを用いる必要がある上、分析時に独特の悪臭を放ったり、測定中および測定後にプラズマトーチ等に付着した炭化物が洗浄され難いなどの欠点がある。そのため、酸又はアルカリ水溶液を用いて目的成分を水相に逆抽出する煩雑な操作が必要である。また、この溶媒抽出操作そのものも煩雑で、人体に有害な有機溶媒を用いる必要がある。
次に、超臨界流体を用いた抽出技術について説明する。超臨界流体抽出法とは、液体や気体を臨界温度、臨界圧力(例えば、二酸化炭素であれば圧力7.4MPa、温度31.0℃)以上に昇温・加圧して超臨界状態に変化させ、化合物を溶解能力により、固体または液体に含有、あるいは付着した目的物質を抽出する方法である。
従来、この超臨界流体抽出法とクロマトグラフィーを組み合わせて、液化ガスから生成した超臨界流体と溶媒とを含む移動相に試料を注入し、この移動相をカラムに通し、所望の物質を含む移動相を溶媒とガスとに分離して、溶媒から所望の物質を分離する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法を用いれば、短時間で試料中に含有する微量の目的物質を分離カラムで分離することが可能となる。しかし、この方法では、目的物質や夾雑物に応じて適切な分離カラムを選択する必要があり、このためのコストがかかり、マトリクス効果により条件によっては目的物質のクロマトグラフィーのピーク面積や形状が変化し、分離精度が左右するなどの問題がある。
また、この超臨界流体抽出法と、超音速分子ジェット多光子共鳴イオン化質量分析装置を組み合わせ、超臨界流体で抽出した目的成分を、簡便、選択的かつ高感度に測定する方法がある(特許文献2)。この方法によると、目的の有機金属分子の励起エネルギーやイオン化エネルギーなどの情報が事前にわかっていれば、目的の有機金属のみを選択的にイオン化して分析することが可能である。しかし、有機金属分子の励起エネルギーやイオン化エネルギーは不明であることが多く、有機金属の分析に汎用的に用いることは難しい。
特開2005−195398号公報 特開2007−309793号公報
化学物質分析法開発調査報告書(平成9年度),環境庁環境保健部環境安全課(1998)
上記のような問題点に鑑み、本発明は、水や土壌、微粒子などの試料中に含まれる有機金属化合物、あるいは金属の有機錯体といった、有機金属の濃度を、直接に簡単な操作で迅速に分析するための方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、試料中に含まれる有機金属を抽出し、分析する方法について種々研究を重ねた結果、連続流れ方式の超臨界流体を用いて分離し、それを、マイクロピンホールノズルを用いて連続的に高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置のプラズマトーチ内に直接導入して分析すれば、極めて迅速、簡便に有機金属の含有量を知ることができることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の定量分析方法は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いた有機金属の定量分析方法であって、試料に付着または含有される有機金属を、超臨界流体を用いて抽出する工程と、抽出された前記有機金属を含む超臨界流体をマイクロピンホールノズルを用いて高周波誘導結合プラズマ内に導入する工程と、前記有機金属を構成する金属元素を、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法により、励起・イオン化させ、緩和する際に生じる発光の波長及び強度を分光分析する工程と、前記分光分析された金属元素の発光強度から前記有機金属を定量する工程と、からなることを特徴とする。
本発明の高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いた有機金属の定量分析方法は、前記超臨界流体を二酸化炭素とすることを特徴とする。
本発明の高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いた有機金属の定量分析方法は、前記超臨界流体の圧力を10〜30MPaとし、温度を常温〜80℃とすることを特徴とする。
本発明の高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いた有機金属の定量分析方法は、前記マイクロピンホールノズルの内径を1〜20μmとすることを特徴とする。
本発明によれば、従来の分析法では長時間を要していた有機金属の定量分析が短時間にできる、迅速・簡便な定量分析を可能とする。
本発明を実施する分析システムの構成を示すブロック図。 標準溶液添加量と超臨界流体により抽出された金属の発光スペクトル強度との関係を示すグラフ。
本発明は、試料から有機金属のみを超臨界流体で抽出し、マイクロピンホールノズルを経由して安定的に高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置に導入することを特徴とする有機金属の分析方法を提供するものである。本発明の分析方法は、特に試料が土壌や飛灰等の固体試料であり、その中に目的の有機金属と無機金属が共存している場合の、有機金属量を把握することに対して有効である。
本発明の分析方法における有機金属の抽出溶媒としては、通常用いられる有機溶媒ではなく、超臨界流体が用いられる。また、超臨界流体は、無極性の物質、たとえば二酸化炭素、一酸化二窒素、メタンなどの低級炭化水素、アルゴンなどの希ガス、などを用いる。超臨界流体は、無極性の有機溶媒と同様の溶解力を持つが、粘性は液体と比べてきわめて低い。そのため、粉体や多孔質の固体試料など複雑な形状の試料からの目的物質の抽出が可能となり、また液体試料からの目的物質の抽出も可能である。また、温度や圧力を変化させることにより動的に抽出能力を変化させることができるという特徴を有する。
しかしながら、本発明において特に好ましいのは、二酸化炭素を加温、加圧して超臨界流体として用いることである。一酸化二窒素は、温度が36.5℃、圧力が7.26MPa以上で超臨界流体となり、二酸化炭素は、臨界温度が31.1℃、臨界圧力が7.38MPaで超臨界流体となるなど、二酸化炭素や一酸化二窒素は、比較的臨界温度・圧力が低いため制御が容易である。しかも、特に、二酸化炭素は、不活性ガスであり、爆発性、化学反応性、毒性がなく、安価であることから抽出溶媒として適当である。更に、近年問題となっている地球温暖化現象の原因物質の一つとされる二酸化炭素の有効な利用用途の一つであるとも言える。
次に、本発明における超臨界抽出の条件として、圧力は通常7.4〜30MPaの範囲で選択される。圧力が7.4MPa未満では、二酸化炭素が超臨界状態を保てないため、目的の有機金属を抽出することができない。また、30MPaを超えると、加圧ポンプや超臨界抽出容器などの設備に関し、高圧に耐えうる特別の措置を施す必要があり、経済的に不利となる。したがって、抽出速度や効率、経済性などの面から、超臨界流体の圧力は10〜30MPa、さらに好ましいのは20〜30MPaの範囲である。
また、本発明における抽出温度は、通常、常温(本明細書において、常温とは25℃とする。)〜80℃の範囲で選択される。一般に有機金属の抽出効率は温度依存性があり、温度の上昇に伴って高効率化するため、常温未満では、抽出速度が遅すぎて実用的でなく、二酸化炭素の圧力が低い場合には超臨界状態を保てない。しかし、80℃超に加熱すると抽出容器の試料の入れ替えを人手で行う際に耐熱手袋などを使用する必要が生じ、操作性が悪化する。また、水溶液やスラリー状であるなど試料が多量の水分を含む場合、試料の入れ替え時に試料中の水分が沸騰し、分析者が火傷などを負う可能性がある。したがって、抽出速度及び効率などの面から、好ましい反応温度は40〜60℃の範囲である。
さらに、本発明における有機金属の抽出時間は、試料の表面積、超臨界流体の圧力、抽出温度、分析対象である有機金属の種類などにより異なり、一概に定めることはできないが、通常30分〜6時間程度である。
本発明での超臨界流体の送液に用いるポンプは、脈動を有する場合、圧力変動により高周波誘導結合プラズマが消灯してしまう可能性があるため、ダブルプランジャー、アキュムレータ、ダンパなどを装備した無脈動ポンプを用いるのが望ましい。
本発明において、抽出された有機金属を含む超臨界流体は、内径が1μm〜20μmのマイクロピンホールを経由させて連続的、自動的に高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置に導入される。内径が極めて小さく細い穴から安定的、連続的に放出させるため、プラズマを消灯させることなく有機金属を含有した超臨界流体をプラズマ内に導入することが可能となる。耐圧パルスバルブを用いてプラズマトーチに導入することは、パルスバルブの開閉に伴う超臨界流体の圧力変動が大きく、プラズマが消灯する、あるいは、バルブ付近で圧力変動により抽出物が析出することによるバルブの開閉不良や、メモリー効果による分析の妨害が生じるなどの問題があるため、適切でない。また、マイクロピンホールによりプラズマトーチに導入する際、超臨界流体流量が大き過ぎてプラズマの点灯が正常に保てない場合は、プラズマトーチ導入前にスプリッタを用いて超臨界流体を分岐し、適切な量が高真空チャンバ内に導入されるよう調節するのが望ましい。この際、スプリッタはできるだけプラズマトーチに近い位置に設け、かつマイクロピンホールを加熱するなどにより、マイクロピンホール部分での圧力が超臨界状態に保たれるように設置する必要がある。
本発明において、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置では、多元素同時型あるいは多元素逐次型の分光器により、目的の金属元素の発光を観察する。その発光波長により元素を同定し、発光強度により濃度を測定することができる。有機金属の定量は、あらかじめ目的成分濃度が判明している標準試料を用いて行うのが望ましいが、標準試料がない場合には、試料に目的成分のみを段階的に添加することにより定量する標準添加法を用いることができる。
また、本発明において、少量の試料中の水分が超臨界流体に巻き込まれてプラズマに導入され、水溶性の無機金属が分析されてしまう可能性がある。それを防止するため、マイクロピンホールの手前にシリカゲルや無水硫酸マグネシウムなどの乾燥材を少量(たとえば300mg程度)充填したカラムを設けてもよい。
本発明の分析方法は、固体や液体試料中の有機金属物質の分析を30分程度で実施できる迅速な方法であり、前処理から測定まで数日を要していた従来法と比較すると効率的である。分析者や環境に害を及ぼす可能性のある有機溶媒を使用しない、環境調和型の分析方法であるともいえる。ただし、本発明の分析方法で得られる分析値は、有機金属態で存在する目的元素全体の濃度であり、有機金属の種類ごとの化学状態を知ることはできない。本発明は、試料が有機金属をどの程度含有しているかといった簡易スクリーニングにおいて有用な分析方法である。
本発明によると、超臨界流体で抽出して得られた金属の有機錯体分子を、マイクロピンホールを経由させて連続的、自動的に高周波誘導結合プラズマ発光分光分装置に導入し、当該金属元素を分析することが可能となる。したがって、金属の有機錯体分子を溶媒抽出などの煩雑な前処理をおこなうことなく迅速に定量分析できるため、実用面での価値は大きい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
以下、本発明の実施例を、図を参照して説明する。
純水1Lに、アンモニアと塩化アンモニウム緩衝液を加え、pHを10.7程度に調整した。次に、エチレンジアミン四酢酸を0.02mol/Lとなるように添加した。続いて、硝酸鉄をFeイオンが1000μg/Lとなるように加え、有機金属鉄の標準溶液とした。
次に、土壌試料100gを、硝酸:塩酸を1:1の比で混合した混酸500mLでよく加熱分解し、Feを含む混酸可溶性の元素を除去した。残渣をよく水洗いし、常温で風乾した。この土壌試料を1gずつ分取し、ここに先に調整した標準溶液をそれぞれ10μL、20μL、50μL、100μL添加した。それぞれの添加量で、標準溶液は有機錯体状態のFe原子を、10ng、20ng、50ng、100ng含有することになる。各試料をよく混合し、常温で風乾した。以上の操作により、有機金属鉄が試料表面に付着した土壌試料を作成した。これに、標準溶液を添加しなかったものをブランクとして加えた5水準で分析を行った。
分析システムは図1に示したものを用いた。試料100mgを、内容積が10mLの筒状の超臨界抽出用抽出セル5に挿入した。試料ホルダの一端には、0.45μmのポアフィルタを設置し、試料が超臨界流体により系の下流に流されてしまうことを防止した(図示省略)。サイフォン式液体二酸化炭素ボンベ1内の液化二酸化炭素を、液体状態のままで液化炭酸ガス加圧送液ポンプ2に搬送し、加圧することで超臨界状態とした。圧力は30MPa、流量は3mL/分とした。抽出セル用恒温槽4により、抽出セル5の温度を予め60℃に保持した。
送液された超臨界流体により抽出された有機金属鉄を含む超臨界流体は、スプリッタ6で二分され、一方はプラズマ導入用ピンホール8に送られ、もう一方は背圧弁7で大気解放した。この際、背圧弁7で系内の圧力が常に30MPa前後に保たれていることを、圧力及び流量計3により確認した。プラズマ導入用ピンホール8は筒状でプラズマトーチ10内に挿入されており、端には機械加工で作成した直径20μmのマイクロピンホールを設けた。マイクロピンホールから噴射された二酸化炭素及び抽出された有機金属鉄は、プラズマ点灯用Arガス9及び高周波コイル11により生成したArプラズマ12内に導入した。レンズ13を介して分光分析装置14へ送信されたFeの発光信号は分光分析装置14により観察され、強度を制御用コンピュータ15でモニタし、抽出開始から終了までの発光強度を積分し、信号強度とした。
比較例1として、純水に、アンモニア、塩化アンモニウム緩衝液を加えてpHを10.7程度に調整したのち、エチレンジアミン四酢酸を添加せず、硝酸鉄のみを添加した溶液を作成した。この溶液を、実施例1と同様の処理を行った土壌試料1gに対し10μL、20μL、50μL、100μLと段階的に添加し、風乾した試料を実施例1と同様にして分析を行った。
比較例2として、純水に、アンモニア、塩化アンモニウム緩衝液を加えてpHを10.7程度に調整したのち、エチレンジアミン四酢酸を0.02mol/Lとなるように添加し、硝酸鉄を添加しない溶液を作成した。この溶液を、実施例1と同様の処理を行った土壌試料1gに対し10μL、20μL、50μL、100μLと段階的に添加し、風乾した試料を実施例1と同様にして分析を行った。
実施例1における1回の分析時間は約1時間であり、また、分析者は、試料を抽出セル5に挿入し、送液ポンプ2及び制御用コンピュータ15を操作するという簡便な操作のみで分析が可能である。この操作を、先に作製した試料5水準に適用したところ、図2に示す通り、得られた信号強度は有機金属鉄添加濃度に比例しており、超臨界抽出により有機金属が定量的に抽出され、簡便に分析されていることを確認できた。比較例1、比較例2については、図2に示すように、高周波誘導結合プラズマ発光分光分装置の信号はほとんど得られなかった。
実際の土壌試料の分析に本発明を適用した。土壌試料には、千葉県君津市近郊で採取した試料1〜4の四種類を採用した。土壌中のFeの一部は、土壌に含有される腐食物質のうちフルボ酸やフミン酸と呼ばれる有機酸と錯体を形成して有機金属態で存在していると考えられる。試料200mgを分取し、本発明を用いて試料に何の前処理も加えることなしにそのまま分析した。試料セルや超臨界抽出圧力条件などは実施例1と同様の条件とした。実施例1において得られた結果を検量線として定量を行なった。結果、土壌中の数μg/gレベルの有機金属鉄を1時間程度の分析時間で簡便に分析することができた。
実施例2の結果を従来分析結果と比較すべく、比較例3として、従来、有機酸の分析に広く用いられている疎水性樹脂であるオルガノ株式会社製アンバーライト(XAD−8樹脂)を用いて土壌中の有機酸を回収し、そこに含まれるFe濃度を測定することにより、有機金属態鉄を分析した。
試料は、実施例2で用いたものと同じ試料を採用した。まず、土壌試料を50gはかりとり、500mLの純水に入れた後、200回/分で6時間ほど振とうさせた。上澄み液を0.45μmのポアフィルタでろ過後、XAD−8樹脂に通水した。XAD−8樹脂に吸着させた腐食物質は、NaOH,0.3M,200mLを用いて脱離させた。溶離した溶液のpHをpH2以下に調整し、遠心分離した後、上澄み液に含有されるFe濃度を原子吸光法を用いて分析し、得られたFe濃度を有機金属鉄とした。本比較例での従来方法による分析結果と、実施例2で得られた分析結果を表1に示す。表1に示すように、両者はよく一致した。従来の方法は、6時間の溶出操作や樹脂分離などに1日から数日の時間がかかり、また様々な試薬を用いて煩雑な前処理を行なう必要があるが、本発明法は非常に簡便、迅速であり、きわめて有用であることが確認された。
Figure 2010181359
本発明は、土壌試料、底質試料、飛灰試料などの固体試料だけでなく、水質試料、さらには各種機能材料、例えば触媒、電極、センサーなどを製造する際に原料として必要な有機金属の簡易な分析方法などとしても非常に有用である。
1 サイフォン式液体二酸化炭素ボンベ
2 液化炭酸ガス加圧送液ポンプ
3 圧力及び流量計
4 抽出セル用恒温槽
5 抽出セル
6 スプリッタ
7 背圧弁
8 プラズマ導入用ピンホール
9 プラズマ点灯用Arガス
10 プラズマトーチ
11 高周波コイル
12 Arプラズマ
13 レンズ
14 分光分析装置
15 制御用コンピュータ

Claims (4)

  1. 試料に付着または含有される有機金属を、超臨界流体を用いて抽出する工程と、
    抽出された前記有機金属を含む超臨界流体をマイクロピンホールノズルを用いて高周波誘導結合プラズマ内に導入する工程と、
    前記有機金属を構成する金属元素を、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法により、励起・イオン化させ、緩和する際に生じる発光の波長及び強度を分光分析する工程と、
    前記分光分析された金属元素の発光強度から前記有機金属を定量する工程と、からなることを特徴とする高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いた有機金属の定量分析方法。
  2. 前記超臨界流体を二酸化炭素とすることを特徴とする請求項1に記載の高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いた有機金属の定量分析方法。
  3. 前記超臨界流体の圧力を10〜30MPaとし、温度を常温〜80℃とすることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いた有機金属の定量分析方法。
  4. 前記マイクロピンホールノズルの内径を1〜20μmとすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いた有機金属の定量分析方法。
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