JP2010180307A - 高分子錯体の製造方法、及び該製造方法によって得られる高分子錯体 - Google Patents
高分子錯体の製造方法、及び該製造方法によって得られる高分子錯体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2010180307A JP2010180307A JP2009024124A JP2009024124A JP2010180307A JP 2010180307 A JP2010180307 A JP 2010180307A JP 2009024124 A JP2009024124 A JP 2009024124A JP 2009024124 A JP2009024124 A JP 2009024124A JP 2010180307 A JP2010180307 A JP 2010180307A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- polymer complex
- complex
- raw material
- ligand
- producing
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
- FKNQCJSGGFJEIZ-UHFFFAOYSA-N Cc1ccncc1 Chemical compound Cc1ccncc1 FKNQCJSGGFJEIZ-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 3
- LASVAZQZFYZNPK-UHFFFAOYSA-N Cc1nc(C)nc(C)n1 Chemical compound Cc1nc(C)nc(C)n1 LASVAZQZFYZNPK-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
- LHJMPIWSRSPJBO-UHFFFAOYSA-N c1cc(-c2nc(-c(cc3)ccc3-c3ccncc3)nc(-c(cc3)ccc3-c3ccncc3)n2)ccc1-c1ccncc1 Chemical compound c1cc(-c2nc(-c(cc3)ccc3-c3ccncc3)nc(-c(cc3)ccc3-c3ccncc3)n2)ccc1-c1ccncc1 LHJMPIWSRSPJBO-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
- ZMQLKBAJUGKDDO-UHFFFAOYSA-N c1cnccc1-c1cc(-c2ccncc2)cc(-c2ccncc2)c1 Chemical compound c1cnccc1-c1cc(-c2ccncc2)cc(-c2ccncc2)c1 ZMQLKBAJUGKDDO-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
- CBMYFVSIIYILRH-UHFFFAOYSA-N c1cnccc1-c1nc(-c2ccncc2)nc(-c2ccncc2)n1 Chemical compound c1cnccc1-c1nc(-c2ccncc2)nc(-c2ccncc2)n1 CBMYFVSIIYILRH-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
Landscapes
- Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)
Abstract
【解決手段】高分子錯体の製造方法であって、配位性部位を2つ以上有する配位子及び中心金属としての金属イオンを含み、且つ、前記配位子が前記中心金属イオンに配位して形成された第1の三次元ネットワーク構造内に、三次元的に規則正しく整列した第1の細孔を有する原料錯体を準備する工程、並びに、前記原料錯体を、液状の外相を実質的に含まない固体状態のまま、加熱を行うことによって、前記配位子及び前記中心金属イオンを含み、且つ、前記配位子が前記中心金属イオンに配位して形成された第2の三次元ネットワーク構造内に、三次元的に規則正しく整列した第2の細孔を有し、且つ、前記原料錯体よりも熱的安定性の高い高分子錯体へと変換する工程を含むことを特徴とする、高分子錯体の製造方法。
【選択図】図2
Description
水熱合成とは、高温高圧水の存在下で、物質の合成及び結晶を育成する方法のことであり(化学辞典(東京化学同人、第1版)より)、常温常圧下では水に溶けにくい物質でも、高温高圧水溶液中では溶解度が増大し、反応速度も増大するため、物質を合成したり、結晶を成長させたりすることができる方法のことである。
しかし、水熱合成においては、溶媒として水が必須であるため、純度の高い結晶を得るためには、結晶合成後に水を除去する工程が必須である。また、水熱合成においては、反応容器として、高温高圧水溶液を密閉することが可能な、耐圧、耐熱且つ耐蝕性のオートクレーブ又はテストチューブ型の容器を用いることが必須となるため、合成のコストが余計に生じるという問題点があった。さらに、溶媒を必要とする細孔形成法により得られる生成物は、準安定構造を有するものがほとんどであり、したがって、これらの生成物は、熱的安定性に欠けるものが多く、加熱によって結晶構造が壊れてしまうという欠点があった。
また、上記生産性のメリット以外にも、本発明に係る高分子錯体の製造方法は、細孔を有する高分子錯体を、大量に且つ均一に製造することができ、且つ、該高分子錯体は原料錯体よりも熱安定性の高い錯体である。本発明に係る高分子錯体の詳しい性質については後述する。
本明細書においては、原料錯体を準備する工程、錯体変換工程について順を追って説明し、最後に本発明に係る製造方法によって得られた高分子錯体について説明する。
本発明において使用される原料錯体は、配位性部位を2つ以上有する配位子及び中心金属としての金属イオンを含み、且つ、前記配位子が前記中心金属イオンに配位して形成された第1の三次元ネットワーク構造内に、三次元的に規則正しく整列した第1の細孔を有する錯体である。
このような原料錯体であれば、本発明に係る製造方法に用いるにあたって、特に限定されることはない。また原料錯体は、配位子及び金属イオンの他にも、他の構成要素が含まれていてもよく、例えば、原料錯体中の第1の細孔内に、ゲスト成分が含まれていてもよい。
一分子中に含まれる複数のYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
なお、原料錯体の製造方法は、必ずしも該製造方法に限定されることはない。
原料錯体の好ましい合成方法は、液−液拡散法と異なり、原料錯体を構成する上記成分を、単一相となるように短時間で混合することで合成するものであり、該合成方法によって得られる原料錯体は、速度論的支配の生成物といえる。従って、速度論的視点で原料錯体の設計、反応条件等を設定することで、速度論的に安定した原料錯体を合成することが可能である。
しかも、得られる原料錯体は単一成分であることから、選択的に大量合成することができる。さらには、上述したように、金属化合物、配位子、及びこれらを溶解する溶媒を適宜組み合わせることで、得られる原料錯体の第1の細孔のサイズ、形状等を精密に制御することも可能である。
金属イオンを発生させる金属化合物としては、例えば、上述したヨウ化亜鉛(II)を用いることができる。
溶媒Bとしては、例えば、芳香族化合物を用いることができる。上記式(1)で表される配位子は、芳香環を有しているため、溶媒Bとして芳香族化合物を用いることで、配位子−溶媒B間の相互作用を強めることができ、確実に規則的な第1の細孔を形成することが可能となる。具体的には、ニトロベンゼン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。溶媒Bは1種のみでも、2種以上の混合物でもよい。
金属溶液と配位子溶液との混合方法、攪拌方法は、上述した特開2008−214584号公報の段落53に記載された方法を用いることができる。
金属溶液と配位子溶液の混合工程における条件は特に限定されず、例えば、反応温度も室温(約10〜30℃)のような穏やかな条件下で行うことができる。
上述した配位子の一種である2,4,6−トリス(4−ピリジル)−1,3,5−トリアジン(以下、TPTと略す)のニトロベンゼン溶液と、上述した金属化合物の一種であるZnI2のメタノール溶液とを室温で混合し、単一相となるように30秒攪拌混合することによって、第1の三次元ネットワーク構造を有する原料錯体(以下、原料錯体1という。)を合成することができる。
本発明において、錯体変換工程とは、具体的には、上述した原料錯体を、液状の外相を実質的に含まない固体状態のまま、加熱を行うことによって、配位子及び中心金属イオンを含み、且つ、配位子が中心金属イオンに配位して形成された第2の三次元ネットワーク構造内に、三次元的に規則正しく整列した第2の細孔を有し、且つ、原料錯体よりも熱的安定性の高い高分子錯体へと変換する工程のことである。すなわち、該工程においては、原料錯体中の第1の三次元ネットワーク構造を構成する配位子及び中心金属イオンの配列が、加熱によって組み替わることによって、新しい第2の三次元ネットワーク構造を有する高分子錯体が生成する。
なお上述したように、原料錯体として、配位子及び中心金属イオン以外の構成要素(例えば、ゲスト成分等)を含むものを用いることがあるが、加熱によって新しい高分子錯体へと変換された後には、これらの構成要素は除去されていることが好ましい。
加熱のため、原料錯体中の第1の三次元ネットワーク構造を構成する配位子及び/又は中心金属イオンの一部が失われたり、変質したりすることにより、加熱の前後で配位子及び中心金属イオンの組成比が変わっていてもよい。ただし、加熱の前後で配位子及び中心金属イオンの組成比が変動せずに、そのまま第2の三次元ネットワーク構造を構築する材料となることが好ましい。
「原料錯体が外見上乾燥している状態」とは、マクロスケールで観測した際、例えば肉眼で観察した際に、原料錯体が固溶体状態や、液体状態でない状態のことを意味し、セミミクロスケールや、ミクロスケールで観測した際、例えば電子顕微鏡等で観察した際に、原料錯体が固溶体状態や、液体状態でないことを必ずしも意味しない。したがって、例えば、原料錯体内に溶媒分子等のゲスト成分を含んでおり、そのために原料錯体内部がミクロ領域で固溶体状態又は液体状態になっていても、上記「原料錯体が外見上乾燥している状態」に含まれる。
乾燥の目安としては、例えば、原料錯体の粉(例えば、微結晶)を、ろ紙等に挟んで圧迫しても、粉中に含まれた液体等によってろ紙が濡れないことを基準として用いることができる。
本発明の錯体変換工程においては、原料錯体が、1気圧、室温で固体状態であるものを用いることができる。ここでいう室温とは、錯体変換工程を行う場所の温度、好ましくは錯体変換工程を行う室内の温度のことをいい、具体的には、10〜30℃(すなわち、283〜303K)の温度のことをいう。
「原料錯体が若干液体で湿った状態」とは、マクロスケールで観測した際、例えば肉眼で観察した際に、湿り気(水分による湿気に限られず、溶媒等を含んだ状態も指す)を帯び、固溶体状態や液体状態程ではないものの、若干の流動性を有した状態であることを意味する。
湿り気の度合いとしては、例えば、湿った原料錯体の粉を、例えばろ紙等に挟んで圧迫すると、液体が染み出してろ紙が濡れる程度であることを基準として用いることができる。このような湿り気を帯びた状態は、外力を原料錯体に対して与えることで、原料錯体の粉中に凝集した液体が、容易に原料錯体の粉から追い出される状態、又は気相中に分散される状態であり、すなわち、本製造方法における加熱操作によって、容易に原料錯体から除くことができるので、原料錯体が液状の外相を「実質的に」含まない固体状態であるということができる。
上述したように、原料錯体は、特に該錯体の好ましい製造方法において、速度論的支配の生成物であるということができる。これに対し、本発明の錯体変換工程において得られる高分子錯体は、原料錯体を加熱することによって得られる、熱力学的に安定な生成物であるということができる。
上記温度範囲であれば、加熱の態様は特に限定されず、また、空気下でも行うことができる。ただし、後述する実施例及び図8(b)に示されているように、加熱は空気下で行うよりも、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
具体的な加熱の態様としては、例えば、マントルヒーター内に設置したサンドバス中に、原料錯体を加えた容器を設置し加熱する方法や、炉を用いて加熱する方法や、ホットプレートを用いて加熱する方法等が挙げられる。
図1中の下から1段目、2段目及び3段目の図から分かるように、300K、323K及び423Kの回折パターンは、原料錯体1の結晶構造(以下、フェイズIということがある。)の回折パターンを示している。したがって、フェイズIは、少なくとも300Kから423Kにかけては安定であることが分かる。
しかし、図1中の上から4段目及び3段目の図から分かるように、473K及び523Kにおける回折パターンは、測定対象の構造が、結晶構造を有しないアモルファス相(以下、フェイズIIということがある。)であることを示している。したがって、フェイズIは、473〜523Kの温度範囲に至るまで加熱することによって、フェイズIIへと変化することが分かる。
さらに、図1中の上から2段目及び最上段の図から分かるように、573K及び673Kの回折パターンは、測定対象の構造が、フェイズI及びフェイズIIとは全く異なる新しい結晶構造(以下、フェイズIIIということがある。)であることを示している。したがって、原料錯体1は、少なくとも573Kまで加熱することによって、新しい結晶構造を有する高分子錯体(以下、原料錯体1を用いて本発明の製造方法により得られる錯体を、高分子錯体2という。)へと変換されることが分かる。
なお、フェイズI及びフェイズIIの構造を有する試料は、共に無色の結晶であったが、フェイズIIIは、薄黄色の結晶であり、したがって、加熱により色の変化が起こることが分かった。
高分子錯体2の具体的な構造については、後述する「3.本発明の高分子錯体」の項において詳しく述べる。
本発明の高分子錯体は、上述した製造方法から得られる高分子錯体であって、前記第2の細孔が、細長いチャンネル形状を有していることを特徴とする。
図2(a)は、原料錯体1の結晶構造(フェイズI)を示した図である。フェイズIは、上述した特開2008−214584号公報の段落15、段落57及び58、並びに該公報の図3に記載されているように、間接的或いは直接的な結合を有せず互いに独立した高分子骨格が、同一の空間を共有するように互いに入り組んだ入れ子状に相互貫通している構造である。
また、上記公報に記載されているように、これらの高分子骨格は、最も短い閉鎖環状連鎖構造として配位子10分子と亜鉛10原子とからなる閉鎖環状連鎖構造を有している。また、(010)軸にそって、これらの高分子骨格は螺旋状の六方晶系の三次元ネットワークとみなすことができる。そして、このような三次元ネットワーク構造が2つ相互貫通してなる原料錯体1は、これら2つの三次元ネットワーク構造を貫通し、規則的に整列した第1の細孔を有している。
図2(b)は、紙面(結晶001面)に対して垂直な方向を軸cとするものであり、高分子錯体2が有する第2のネットワーク構造を、該構造内の第2の細孔が伸びる方向(軸c)に対して垂直な面において切断した図である。また、図2(d)は、図2(b)の拡大図である。
図2(c)は、紙面(結晶010面)に対して垂直な方向を軸bとするものであり、高分子錯体2が有する第2のネットワーク構造を、該構造内の第2の細孔が伸びる方向(軸c)に対して水平な面において切断した図である。
該鎖状構造同士は、配位子である各TPTが有するピリジン環同士及びトリアジン環同士のπ-π相互作用によって積層し、固定されている。なお、鎖状構造同士の距離は、3.608Åである。このようなπ-π相互作用の有無が、フェイズIからフェイズIIIに変換される際の加熱中の色の変化、すなわち無色から薄黄色への変化に関与していると考えられる。
また、原料錯体1は、ゲスト成分としてニトロベンゼン分子を含んでいるが、高分子錯体2は、ニトロベンゼン分子を含んでいない。これは、加熱によって、原料錯体1が高分子錯体2へと変換される際に、ゲスト成分(ニトロベンゼン)の放出を伴うことを示している。
高分子錯体2を30分間ニトロベンゼンの液体に浸漬したところ、錯体2内に閉じ込められていた気体(おそらく空気)が、気泡となって出ていく様子が観測された。浸漬後の錯体2について、濾過及び乾燥させた後、PXRD測定を行った。測定から得られたPXRD回折パターン、及び構造解析の詳細については、実施例において述べる。
図4は、高分子錯体2が有する第2の細孔内に、ニトロベンゼン分子が包接された様子を示した空間充填モデルであり、図2(b)と同様に、第2の細孔が伸びる方向(軸c)に対して垂直な面において切断した図である。図4から、TPT4分子及び亜鉛原子4分子で形成された閉鎖環状連鎖構造の中に、ニトロベンゼン分子が1分子包接されていることが分かる。
原料錯体1の合成スキームは、上記式(5)に既に示した通りである。
2,4,6−トリス(4−ピリジル)−1,3,5−トリアジン50.2mg(0.16mmol)を、ニトロベンゼン/メタノール(32ml/4ml)の混合液に溶解させ、配位子溶液を調製した。室温において、得られた配位子溶液に、ZnI276.5mg(0.24mmol)をメタノール8mlに溶解させた金属溶液を混合し、30秒攪拌し、沈殿した白色結晶をろ過することにより、白色粉末151.7mgを得た(収率81.6%)。
<元素分析結果>
[(ZnI2)3(TPT)2(PhNO2)5.5]n
理論値 C:36.68%、H:2.30%、N:10.85%
実測値 C:36.39%、H:2.43%、N:10.57%
図5(a)及び(b)において、原料錯体1の結晶構造からシミュレーションにより導かれた理論回折パターンと、原料錯体1のPXRDパターンはよい一致を示した。
なお、原料錯体1のその他の解析結果については、上述した特開2008−214584号公報の段落60〜70に記載されたものも参考にすることができる。
原料錯体1の微粉末を、室温から673Kまで、加熱速度10℃/分で加熱したところ、薄黄色の固体が得られた。
<元素分析結果>
[(ZnI2)3(TPT)2]n
理論値 C:27.33%、H:1.53%、N:10.62%
実測値 C:27.18%、H:1.74%、N:10.52%
高分子錯体2について得られたPXRDパターンは、DICVOLプログラム(Boultif,A et al. J. Appl. Crystallogr. 1991, 24, 987.)によって解析したところ、斜方晶系(orthorhombic)の単位格子が得られた(a=30.36030, b=12.77500, c=13.58260Å, V=5268.0498Å3)。
空間群はPccnに帰属された。単位格子及び分析結果の微調整は、Pawley法を用いて行われ、格子パラメータ及び空間群に最適な一致を導いた(Rwp=20.85, χ2=31.939)。構造解析は、DASHプログラム(David,W.I.F. et al. Chem. Commun. 1998, 931.)を用いた。Rietveld解析は、RIETAN−FPプログラム(Izumi,F. et al. Solid State Phenom. 2007, 130, 15−20.)及びVESTAプログラム(Momma,K. et al. J. Appl. Crystallogr. 2008, 41, 653−658.)を用いて行った。
最終Rietveld解析結果:a=30.360(1), b=12.7750(4), c=13.5826(4)Å,Rwp=2.09%(Re=1.35%),Rp=1.59%,RB=1.89%,RF=1.90%;データ数 1085点;パラメータ数 114)
図6から分かるように、高分子錯体2のRietveld解析による理論回折パターンと、高分子錯体2の実測回折パターン間の差分に相当する残さは極めて少なく、両回折パターンはよい一致を示した。したがって、高分子錯体2は図2(b)〜(d)に図示されたような構造を有することが明らかとなった。
図7は、高分子錯体2のTG−DSCチャートである。温度が上昇するに従って下降する曲線がTG曲線であり、温度上昇と共に上昇する曲線がDSC曲線である。
300〜473Kの温度範囲における段階的なTG曲線によって示された重量損失は、原料錯体1からのゲスト成分(ニトロベンゼン分子)の放出を示している。473Kにおいて、ニトロベンゼン分子放出による重量損失は、理論上は30.0%であったのに対し、実測値は31.58%であり、よい一致を示している。
DSC曲線は、574K付近にピークを有しており、このピークは、試料が574K付近で結晶化、すなわち高分子錯体2へと変換されたことを示している。
574〜673Kの温度範囲におけるなだらかなTG曲線の変化は、該高分子錯体2が574〜673K付近まで安定であることを示している。
700K以上の温度範囲における急激な重量損失は、該高分子錯体2が700Kからさらに加熱すると、高分子錯体2は分解してしまうことを示している。
図8は、623Kの温度条件及び不活性雰囲気下(図8(a))、並びに、723Kの温度条件及び空気下(図8(b))でそれぞれ得られた高分子錯体2のPXRDパターンを並べて示した図である。
図8(b)に示された回折パターンは、図8(a)に示された回折パターンと比較して結晶性が失われており、且つ、図8(b)中にアスタリスク(*)で示したような、図8(a)にはない鋭い回折ピークが現われている。この新しい回折ピークは、例えば公知文献(Liu,B. et al. J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 5390−5391.)に示されているように、酸化亜鉛(ZnO)の形成を示唆している。これらの結果から、特に高温条件下における高分子錯体2の製造においては、空気下で行うと、金属イオンである亜鉛(II)が酸化されてしまうことが分かる。
高分子錯体2を30分間ニトロベンゼンの液体に浸漬し、濾過後、乾燥させた。
<元素分析結果>
{[(ZnI2)3(TPT)2]・(C6H5NO2)}n
理論値 C:29.58%、H:1.71%、N:10.68%
実測値 C:29.64%、H:1.77%、N:10.43%
ニトロベンゼン分子を包接した高分子錯体2について得られたPXRDパターンは、上述したDICVOLプログラムによって解析したところ、単斜晶系(monoclinic)の単位格子が得られた(a=12.83660, b=33.10850, c=6.22139Å, β=99.8183°, V=2605.3677Å3)。
空間群はP2lに帰属された。単位格子及び分析結果の微調整は、Pawley法を用いて行われ、格子パラメータ及び空間群に最適な一致を導いた(Rwp=39.75, χ2=57.689)。構造解析は、上述したDASHプログラムを用いた。Rietveld解析は、上述したRIETAN−FPプログラム及びVESTAプログラムを用いて行った。
最終Rietveld解析結果:a=12.8388(6), b=33.108(1), c=6.22139(3)Å, β=99.818(3)°, Rwp=3.64%(Re=0.96%),Rp=2.62%,RB=3.43%,RF=1.64%;データ数 2748点;パラメータ数 215)
図9から分かるように、ニトロベンゼン分子を包接した高分子錯体2のRietveld解析による理論回折パターンと、該錯体の実測回折パターン間の差分に相当する残さは極めて少なく、両回折パターンはよい一致を示した。したがって、ニトロベンゼン分子を包接した高分子錯体2は、図4に図示されたような構造を有することが明らかとなった。
図11(b)及び図11(c)を比較することで、上述したように、予めニトロベンゼン分子を含む原料錯体1は、加熱によって異なる回折パターンを示すことが分かる。さらに、図11(a)及び図11(c)を比較することで、573Kの温度で加熱された原料錯体1は、高分子錯体2と同じ回折パターンを示すことが分かる。
図12(a)及び(b)における一致したピークは、423Kで加熱されている間のニトロベンゼン分子を包接した高分子錯体2の構造(フェイズIII)を示している。図12から分かるように、高分子錯体2は、423Kで2時間加熱しても原料錯体1へと変換されない程の熱的安定性を有することが分かる。
図13は、ニトロベンゼン分子を包接した高分子錯体2のTG−DSCチャートである。温度が上昇するに従って下降する曲線がTG曲線であり、温度上昇と共に最終的に最高値へ到達する曲線がDSC曲線である。
400〜450Kの温度範囲における急激なTG曲線の減少は、一度高分子錯体2内に包接されたゲスト成分であるニトロベンゼン分子が再放出されたことを示している。473Kにおいて、ニトロベンゼン分子放出による重量損失は、理論上は7.22%であったのに対し、実測値は8.98%であり、よい一致を示している。
Claims (14)
- 高分子錯体の製造方法であって、
配位性部位を2つ以上有する配位子及び中心金属としての金属イオンを含み、且つ、前記配位子が前記中心金属イオンに配位して形成された第1の三次元ネットワーク構造内に、三次元的に規則正しく整列した第1の細孔を有する原料錯体を準備する工程、並びに、
前記原料錯体を、液状の外相を実質的に含まない固体状態のまま、加熱を行うことによって、
前記配位子及び前記中心金属イオンを含み、且つ、前記配位子が前記中心金属イオンに配位して形成された第2の三次元ネットワーク構造内に、三次元的に規則正しく整列した第2の細孔を有し、且つ、前記原料錯体よりも熱的安定性の高い高分子錯体へと変換する工程を含むことを特徴とする、高分子錯体の製造方法。 - 前記原料錯体が、1気圧、室温で固体状態である、請求項1に記載の高分子錯体の製造方法。
- 350〜800Kの範囲の温度に前記加熱を行う、請求項1又は2に記載の高分子錯体の製造方法。
- 前記原料錯体を準備する工程は、
前記金属イオンを発生させる金属化合物、及び、該金属化合物を溶解する溶媒Aとを混合した金属溶液、並びに、前記配位子、及び、該配位子を溶解する溶媒Bとを混合した配位子溶液、を単一相となるように混合することによって、前記原料錯体の微結晶を合成する工程を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高分子錯体の製造方法。 - 前記金属溶液と前記配位子溶液との混合工程を室温にて行う、請求項4に記載の高分子錯体の製造方法。
- 前記金属化合物が、ヨウ化亜鉛(II)である、請求項4又は5に記載の高分子錯体の製造方法。
- 前記配位子が有する配位結合部位が形成する配位結合の方向が、擬同一平面上に存在する、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の高分子錯体の製造方法。
- 前記配位子が有する配位結合部位が、該配位子の中心部に対して等間隔放射状に配置されている、請求項4乃至7のいずれか一項に記載の高分子錯体の製造方法。
- 前記配位子は、下記式(1)で表される芳香族化合物である、請求項4乃至8のいずれか一項に記載の高分子錯体の製造方法。
- 前記配位子が2,4,6−トリス−(4−ピリジル)−1,3,5−トリアジンである、請求項4乃至9のいずれか一項に記載の高分子錯体の製造方法。
- 前記溶媒Bが芳香族化合物である、請求項4乃至10のいずれか一項に記載の高分子錯体の製造方法。
- 請求項1乃至11のいずれか一項に記載された製造方法から得られる高分子錯体であって、
前記第2の細孔が、細長いチャンネル形状を有していることを特徴とする、高分子錯体。 - 前記第2の細孔の延在する方向に対して最も垂直に近い結晶面と平行な面における該第2の細孔の内接円の直径が、2〜70Åである、請求項12に記載の高分子錯体。
- 前記第2の細孔の延在する方向に対して最も垂直に近い結晶面と平行な面における該細孔の内接楕円の長径が、5〜70Åであり、該内接楕円の短径が、2〜50Åである、請求項12又は13に記載の高分子錯体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009024124A JP5429705B2 (ja) | 2009-02-04 | 2009-02-04 | 高分子錯体の製造方法、及び該製造方法によって得られる高分子錯体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009024124A JP5429705B2 (ja) | 2009-02-04 | 2009-02-04 | 高分子錯体の製造方法、及び該製造方法によって得られる高分子錯体 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010180307A true JP2010180307A (ja) | 2010-08-19 |
JP5429705B2 JP5429705B2 (ja) | 2014-02-26 |
Family
ID=42762077
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009024124A Expired - Fee Related JP5429705B2 (ja) | 2009-02-04 | 2009-02-04 | 高分子錯体の製造方法、及び該製造方法によって得られる高分子錯体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5429705B2 (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2014208775A1 (en) * | 2013-06-27 | 2014-12-31 | Ricoh Company, Ltd. | Electrochromic compound, electrochromic composition, display element, and dimming element |
WO2015034041A1 (ja) | 2013-09-05 | 2015-03-12 | 国立大学法人北海道大学 | 有機elデバイス用薄膜及びその製造方法 |
JP2015215488A (ja) * | 2014-05-12 | 2015-12-03 | 株式会社リコー | エレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物及び表示素子及び調光素子 |
CN110028676A (zh) * | 2018-01-12 | 2019-07-19 | 中国药科大学 | 一种简便、高效合成稳定金属有机骨架晶体的方法 |
Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2000086683A (ja) * | 1998-09-14 | 2000-03-28 | Japan Science & Technology Corp | 三次元かご状遷移金属錯体及びその製造法 |
JP2002126512A (ja) * | 2000-10-19 | 2002-05-08 | Toyota Motor Corp | 天然ガス吸蔵材及びその製造方法 |
JP2006188560A (ja) * | 2004-12-28 | 2006-07-20 | Univ Of Tokyo | 高分子錯体 |
JP2008214584A (ja) * | 2007-03-07 | 2008-09-18 | Univ Of Tokyo | 高分子錯体結晶の合成方法 |
-
2009
- 2009-02-04 JP JP2009024124A patent/JP5429705B2/ja not_active Expired - Fee Related
Patent Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2000086683A (ja) * | 1998-09-14 | 2000-03-28 | Japan Science & Technology Corp | 三次元かご状遷移金属錯体及びその製造法 |
JP2002126512A (ja) * | 2000-10-19 | 2002-05-08 | Toyota Motor Corp | 天然ガス吸蔵材及びその製造方法 |
JP2006188560A (ja) * | 2004-12-28 | 2006-07-20 | Univ Of Tokyo | 高分子錯体 |
JP2008214584A (ja) * | 2007-03-07 | 2008-09-18 | Univ Of Tokyo | 高分子錯体結晶の合成方法 |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2014208775A1 (en) * | 2013-06-27 | 2014-12-31 | Ricoh Company, Ltd. | Electrochromic compound, electrochromic composition, display element, and dimming element |
US9688706B2 (en) | 2013-06-27 | 2017-06-27 | Ricoh Company, Ltd. | Electrochromic compound, electrochromic composition, display element, and dimming element |
WO2015034041A1 (ja) | 2013-09-05 | 2015-03-12 | 国立大学法人北海道大学 | 有機elデバイス用薄膜及びその製造方法 |
JP2015215488A (ja) * | 2014-05-12 | 2015-12-03 | 株式会社リコー | エレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物及び表示素子及び調光素子 |
CN110028676A (zh) * | 2018-01-12 | 2019-07-19 | 中国药科大学 | 一种简便、高效合成稳定金属有机骨架晶体的方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP5429705B2 (ja) | 2014-02-26 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Savateev et al. | Highly crystalline poly (heptazine imides) by mechanochemical synthesis for photooxidation of various organic substrates using an intriguing electron acceptor–Elemental sulfur | |
Rostamnia et al. | Basic isoreticular nanoporous metal–organic framework for Biginelli and Hantzsch coupling: IRMOF-3 as a green and recoverable heterogeneous catalyst in solvent-free conditions | |
Aslani et al. | Sonochemical synthesis of nano-sized metal-organic lead (II) polymer: A precursor for the preparation of nano-structured lead (II) iodide and lead (II) oxide | |
JP5429705B2 (ja) | 高分子錯体の製造方法、及び該製造方法によって得られる高分子錯体 | |
Cai et al. | Tuning the porosity of lanthanide MOFs with 2, 5-pyrazinedicarboxylate and the first in situ hydrothermal carboxyl transfer | |
Dai et al. | Pd and Pd–CuO nanoparticles in hollow silicalite-1 single crystals for enhancing selectivity and activity for the Suzuki–Miyaura reaction | |
Liu | Zinc Oxide Nano‐and Microfabrication from Coordination‐Polymer Templates | |
Fard-Jahromi et al. | Sonochemical synthesis of nanoscale mixed-ligands lead (II) coordination polymers as precursors for preparation of Pb2 (SO4) O and PbO nanoparticles; thermal, structural and X-ray powder diffraction studies | |
JP5297593B2 (ja) | 高分子錯体結晶の合成方法 | |
Liu et al. | Facile synthesis of ZIF-8 nanocrystals in eutectic mixture | |
CN114262444B (zh) | 一种二氧化碳诱导的纳米孔氢键有机框架材料及其制备方法与应用 | |
Petryk et al. | Chiral, triformylphenol-derived salen-type [4+ 6] organic cages | |
Sadeghzadeh et al. | Sonochemical syntheses of strawberry-like nano-structure mixed-ligand lead (II) coordination polymer: Thermal, structural and X-ray powder diffraction studies | |
KR101927376B1 (ko) | 다양한 형태의 다공성 금속-유기 골격체 제조방법 | |
Noori et al. | Synthesis and characterization of Pd (0)-SMT-MCM-41 and its application in the amination of aryl halides and synthesis of 2, 3-dihydroquinazolin-4 (1H)-ones as efficient and recyclable nanostructural catalyst | |
Sayahi et al. | Electrochemical synthesis of three‐dimensional flower‐like Ni/Co–BTC bimetallic organic framework as heterogeneous catalyst for solvent‐free and green synthesis of substituted chromeno [4, 3–b] quinolones | |
Pal et al. | Synthesis, characterization and enhanced photoconductivity from a mesoporous titania on dye doping | |
CN110144047A (zh) | 一种基于D3h对称性砌块分子的金属有机框架材料及其制备方法 | |
CN109369691B (zh) | 一种高温相变化合物及其制备方法和应用 | |
KR101251367B1 (ko) | 열적 안정성이 우수한 신규한 알칼리토금속-유기골격구조 화합물 | |
Sobanska et al. | Synthesis, thermal analysis and crystal structure of lead (II) diaqua 3, 6-dicarboxylatopyridazine. Evaluation of performance as a synthetic precursor | |
Varga et al. | CuIBiOI is an efficient novel catalyst in Ullmann-type CN couplings with wide scope—A rare non-photocatalyic application | |
CN109206444A (zh) | 光致收缩金属有机框架化合物 | |
KR20170007621A (ko) | 유기구조유도물질이 골격에 결합되어 있는 새로운 유무기 혼합 분자체 및 그 제조방법 | |
KR101476779B1 (ko) | 신규한 혼합금속산화물 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20120119 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20120704 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20130125 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20130205 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20130404 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20131029 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20131125 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |