本発明に係るハイブリッド車両の実施例を図1から図4に基づいて説明する。
最初に、本実施例のハイブリッド車両1の構成について図1を用いて説明する。この図1の符号1は、本実施例のハイブリッド車両を示す。
このハイブリッド車両1は、動力源として原動機(エンジン10)とモータ/ジェネレータ20を備えると共に、その各々の出力を駆動輪WL,WR側に伝える手動方式の多段変速機30からなる動力伝達装置を備えている。具体的に、このハイブリッド車両1には、動力源たるエンジン10と、入力軸41に入力されたエンジン10の出力を複数の変速段(ギア段31〜35,39)の内の何れか1つで変速して出力軸42から駆動輪WL,WR側へと出力する手動方式の多段変速機30と、この多段変速機30の入力軸41又は出力軸42に連結される出力軸21を有する動力源として作動可能なモータ/ジェネレータ20と、が搭載されている。本実施例においては、モータ/ジェネレータ20の出力軸21と多段変速機30の出力軸42とが歯車対36を介して連結されたものを例示している。
そのエンジン10としては、燃焼室内で燃料を燃焼させ、これにより発生した熱エネルギを機械的エネルギに変換する熱機関たる内燃機関、機関外部の熱源で機関内部の気体に対して加熱と冷却を繰り返し、その気体を膨張及び収縮させることによって熱エネルギを機械的エネルギに変換する熱機関たる外燃機関等が考えられる。ここでは、前者の内燃機関であって、ガソリンを燃料とし、図示しないピストンの往復運動によって出力軸(クランクシャフト)11から機械的な動力を出力する往復ピストン機関について例示する。
このエンジン10には図示しない燃料噴射装置及び点火装置が設けられており、これら燃料噴射装置及び点火装置は、その動作がエンジン用の電子制御装置(以下、「エンジンECU」という。)101のエンジン制御手段によって制御される。そのエンジン制御手段は、燃料噴射装置の燃料噴射量や燃料噴射時期等を制御すると共に、点火装置の点火時期を制御して、エンジン10の出力軸11から出力される機械的な動力(つまりエンジン出力トルク)の大きさを調整する。また、その際、エンジン10が図示しない電子制御式のスロットル装置や吸気バルブ及び排気バルブの駆動装置を備えているならば、エンジン制御手段は、そのスロットル装置のスロットルバルブの開度制御、吸気バルブ及び排気バルブの開閉時期制御やリフト量制御を行って、機械的な動力の大きさの調整を行う。更に、このエンジン10には、出力軸11の回転角度(クランク角)の検出を行うクランク角センサ12が用意されている。そのクランク角センサ12は、検出信号をエンジンECU101に送信し、エンジンECU101は、その検出信号に基づいてエンジン回転数の演算を行う。
エンジンECU101は、図示しないCPU(中央演算処理装置)、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory)、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。このエンジンECU101は、スタータモータ13を制御してエンジン10を始動させる。
モータ/ジェネレータ20は、供給された電力を機械的な動力(つまりモータ出力トルク)に変換して出力軸21から出力するモータ(電動機)としての機能と、出力軸21に入力された機械的な動力を電力に変換して回収するジェネレータ(発電機)としての機能と、を兼ね備えている。このモータ/ジェネレータ20は、例えば永久磁石型交流同期電動機として構成されており、インバータ25から三相の交流電力が供給されて回転磁界を形成するステータ22と、その回転磁界に引き付けられて回転する回転子としてのロータ23と、を有している。そのロータ23は、出力軸21と一体になって回転する。また、このモータ/ジェネレータ20においては、ロータ23の回転角位置を検出する図示しない回転センサ(レゾルバ)が設けられており、その回転センサが検出信号をモータ/ジェネレータ用の電子制御装置(以下、「モータ/ジェネレータECU」という。)102に送信する。そのモータ/ジェネレータECU102は、図示しないCPU、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
本実施例のモータ/ジェネレータ20は、歯車対36を介して出力軸21を多段変速機30の出力軸42に連結し、モータとして作動するならばモータ出力トルクを多段変速機30の出力軸42に伝達する一方、ジェネレータとして作動するならば多段変速機30の出力軸42からの機械的な動力が出力軸21に入力される。その歯車対36は、互いに噛み合い状態にある第1ギア36aと第2ギア36bとで構成する。その第1ギア36aは、ロータ23と一体になって回転できるようモータ/ジェネレータ20の出力軸21に取り付ける。一方、第2ギア36bは、その第1ギア36aよりも大径に成形し、多段変速機30の出力軸42と一体になって回転できるよう当該出力軸42に取り付ける。つまり、この歯車対36は、モータ/ジェネレータ20の出力軸21の回転と多段変速機30の出力軸42の回転を連動させるべく当該出力軸21と出力軸42との係合状態を作り出すものであり、ロータ23側から回転トルクが入力されることによって減速手段として作動する一方、多段変速機30の出力軸42側から回転トルクが入力されることによって増速手段として作動する。従って、このモータ/ジェネレータ20は、モータとして作動させることによって、ロータ23から出力されたモータ出力トルクを減速手段として機能する歯車対36を介して多段変速機30に伝える。また、このモータ/ジェネレータ20は、ジェネレータとして作動させることによって、増速手段として機能する歯車対36を介して多段変速機30の出力軸42からの出力トルクがロータ23に伝達される。
ここで、二次電池26からの直流電力は、インバータ25で交流電力に変換してモータ/ジェネレータ20に供給することができる。その交流電力が供給されたモータ/ジェネレータ20は、モータとして作動して、出力軸21からモータ出力トルクを出力する。一方、このモータ/ジェネレータ20をジェネレータとして作動させた際には、このモータ/ジェネレータ20からの交流電力をインバータ25で直流電力に変換して二次電池26に回収する(つまり電力の回生を行う)又は電力の回生を行いつつ駆動輪WL,WRに制動力を加える(つまり回生制動を行う)ことができる。その際、このモータ/ジェネレータ20は、多段変速機30の出力軸42から出力された機械的な動力(出力トルク)が出力軸21を介してロータ23に入力されると、かかる入力トルクを交流電力に変換する。そのインバータ25の動作は、モータ/ジェネレータECU102のモータ/ジェネレータ制御手段によって制御される。
このハイブリッド車両1には、その二次電池26の充電状態(SOC:state of charge)を検出する電池監視ユニット29が設けられている。その電池監視ユニット29は、検出した二次電池26の充電状態に係る信号(換言するならば、充電状態量(SOC量)に関する信号)をモータ/ジェネレータECU102に送信する。そのモータ/ジェネレータECU102には、その信号に基づいて二次電池26の充電状態の判定を行い、その二次電池26の充電の要否を判定する電池制御手段が用意されている。
動力伝達装置は、エンジン10やモータ/ジェネレータ20の動力(エンジン出力トルクやモータ出力トルク)を駆動力として左右夫々の駆動輪WL,WRに伝えるものであって、その動力に係る出力トルクを多段変速機30及び最終減速装置60で変速及び減速して大きさを変化させ、左右夫々の駆動輪WL,WRに連結された駆動軸(ドライブシャフト)DL,DRに出力するものである。
ここで例示する手動方式の多段変速機30は、前進5段、後退1段の変速段を有するものであって、前進用の変速段として第1速ギア段31,第2速ギア段32,第3速ギア段33,第4速ギア段34及び第5速ギア段35を備え、且つ、後退用の変速段として後退ギア段39を備えている。前進用の変速段は、変速比が第1速ギア段31,第2速ギア段32,第3速ギア段33,第4速ギア段34,第5速ギア段35の順に小さくなるよう構成している。また、この多段変速機30には、エンジン10のエンジン出力トルクが伝達される入力軸41と、この入力軸41に対して間隔を空けて平行に配置された出力軸42と、が設けられている。尚、図1の多段変速機30はその構成を簡易的に説明したものであり、各変速段の配置については、必ずしも図1の態様になるとは限らない。
第1速ギア段31は、互いに噛み合い状態にある第1速ドライブギア31aと第1速ドリブンギア31bの歯車対で構成する。その第1速ドライブギア31aは、入力軸41上に配置される一方、第1速ドリブンギア31bは、出力軸42上に配置される。
第2速ギア段32は、互いに噛み合い状態にある第2速ドライブギア32aと第2速ドリブンギア32bの歯車対で構成する。その第2速ドライブギア32aは、入力軸41上に配置される一方、第2速ドリブンギア32bは、出力軸42上に配置される。
第3速ギア段33は、互いに噛み合い状態にある第3速ドライブギア33aと第3速ドリブンギア33bの歯車対で構成する。その第3速ドライブギア33aは、入力軸41上に配置される一方、第3速ドリブンギア33bは、出力軸42上に配置される。
第4速ギア段34は、互いに噛み合い状態にある第4速ドライブギア34aと第4速ドリブンギア34bの歯車対で構成する。その第4速ドライブギア34aは、入力軸41上に配置される一方、第4速ドリブンギア34bは、出力軸42上に配置される。
第5速ギア段35は、互いに噛み合い状態にある第5速ドライブギア35aと第5速ドリブンギア35bの歯車対で構成する。その第5速ドライブギア35aは、入力軸41上に配置される一方、第5速ドリブンギア35bは、出力軸42上に配置される。
後退ギア段39は、後退ドライブギア39aと後退ドリブンギア39bと後退中間ギア39cとで構成する。その後退ドライブギア39aは、入力軸41上に配置される一方、後退ドリブンギア39bは、出力軸42上に配置される。また、後退中間ギア39cは、後退ドライブギア39a及び後退ドリブンギア39bと噛み合い状態にあり、回転軸43上に配置される。
尚、実際の多段変速機30の構成においては、各変速段のドライブギアの内の何れかが入力軸41と一体回転するように配設される一方、残りのドライブギアが入力軸41に対して相対回転するように配設される。また、各変速段のドリブンギアは、その内の何れかが出力軸42と一体回転するように配設される一方、残りが出力軸42に対して相対回転するように配設される。
また、その入力軸41や出力軸42には、運転者の変速操作に従って軸線方向に移動するスリーブ(図示略)が配設されている。入力軸41上のスリーブは、その入力軸41と相対回転可能な2つの変速段の各ドライブギアの間に配置される。一方、出力軸42上のスリーブは、その出力軸42と相対回転可能な2つの変速段の各ドリブンギアの間に配置される。このスリーブは、変速操作手段71を運転者が操作した際に、その変速操作手段71に連結されている図示しないリンク機構やフォークを介して軸線方向への移動を行う。そして、移動後のスリーブは、移動された方向に位置する相対回転可能なドライブギアやドリブンギアを入力軸41や出力軸42と一体回転させる。この手動方式の多段変速機30においては、そのスリーブが運転者の変速操作手段71の変速操作に対応した方向に移動し、これによりその変速操作に応じた変速段への切り替え又はニュートラル状態への切り替えが実行される。
その変速操作手段71は、図2に示す如く、運転者が変速操作する際に使用するシフトレバー71a、このシフトレバー71aを夫々の変速段毎にガイドする所謂シフトゲージ71b、上記のリンク機構やフォーク等で構成されている。図2は、多段変速機30をニュートラル状態(つまり入力軸41と出力軸42との間でトルクの伝達が行えない状態)に操作するときのシフトレバー71aの位置を示している。尚、この図2のシフトゲージ71b上の「1〜5」と「R」は、夫々に第1速ギア段31〜第5速ギア段35と後退ギア段39の変速位置を示している。
このハイブリッド車両1においては、動力源の運転モードとして、エンジン10の出力のみで駆動輪WL,WRに駆動力を発生させるエンジン運転モードと、モータ/ジェネレータ20のモータとしての出力のみで駆動輪WL,WRに駆動力を発生させるEV運転モードと、エンジン10とモータ/ジェネレータ20の双方の出力で駆動輪WL,WRに駆動力を発生させるハイブリッド運転モードと、が少なくとも用意されている。
本実施例のハイブリッド車両1においては、運転者のハイブリッド車両1への駆動要求(つまりハイブリッド車両1又は駆動輪WL,WRへの要求駆動力)、二次電池26の充電状態、車両走行状態等に応じて、エンジン運転モードとハイブリッド運転モードの切り替えが行われる。
一方、EV運転モードへの切り替えについては、運転者の操作によって動力源の運転モードをEV運転モードに切り替えさせるEV運転モード切替手段を利用する。本実施例においては、そのEV運転モード切替手段としての機能を変速操作手段71にもたせる。つまり、本実施例の変速操作手段71は、運転者に変速段を切り替えさせるだけでなく、運転者がEV運転モードに切り替える際のEV運転モード切替手段としての機能も兼ね備えている。例えば、この変速操作手段71は、シフトゲージ71b上に変速位置1〜5,Rと同様のEV運転モード切替位置HVを備えており、シフトレバー71aがEV運転モード切替位置HVへと操作された際に多段変速機30をニュートラル状態にする。また、この変速操作手段71には、シフトレバー71aがEV運転モード切替位置HVに位置しているのか否かを検出するEV運転モード切替位置検出手段72が設けられている。このEV運転モード切替位置検出手段72とは、例えば、シフトレバー71aが図3に示す如くEV運転モード切替位置HVにあることを検出可能な位置情報検出センサ等である。従って、変速操作手段71においては、運転者がシフトレバー71aをEV運転モード切替位置HVに移動させることによって、EV運転モード切替位置検出手段72がEV運転モード切替位置HVにあるシフトレバー71aを検出し、その検出信号が後述するハイブリッドECU100の運転モード切替手段100aに送信される。運転モード切替手段100aは、その検出信号を受信することによって、EV運転モードへの切り替えが要求されたと判断することができる。
また、この変速操作手段71は、シフトレバー71aがシフトゲージ71b上のどの変速位置1〜5,Rにあるのかについて、つまり運転者がどの変速段を選択したのか否かを検出する変速位置検出手段73を備えている。この変速位置検出手段73は、例えば、シフトレバー71aがどの変速位置1〜5,Rにあるのかを検出可能な位置情報検出センサ等を利用すればよい。その検出信号は、ハイブリッドECU100に送られる。このハイブリッドECU100に変速段検知手段100bが設けられており、この変速段検知手段100bは、その検出信号に基づいて、運転者の選択した変速段、現状の変速段を判断する。尚、ここでは、便宜上、その変速位置検出手段73をEV運転モード切替位置検出手段72とは別のものとして例示したが、これらを1つに統合したシフトレバー位置検出手段(図示略)に置き換えてもよい。ここで、その変速段検知手段100bは、エンジン10のエンジン出力トルクや車輪速度等から現在の変速段を推定する周知の推定手段であってもよい。
本実施例の多段変速機30においては、シフトレバー71aがシフトゲージ71b上の何処に位置していても、つまり変速位置1〜5,R、EV運転モード切替位置HV又はニュートラル位置であっても、歯車対36が噛み合い状態になっているものとする。
ここで、エンジン10のエンジン出力トルクは、図1に示すクラッチ50を介して多段変速機30の入力軸41に入力される。そのクラッチ50は、エンジン10の出力軸11と多段変速機30の入力軸41とを係合させる係合状態と、その出力軸11と入力軸41とを係合状態から解放(非係合)させる解放状態(非係合状態)と、の切り替えができるように構成された摩擦クラッチ装置である。ここで言う係合状態とは、その出力軸11と入力軸41との間でトルクの伝達をし得る状態のことであり、解放状態(非係合状態)とは、その出力軸11と入力軸41との間でのトルクの伝達が行えない状態のことである。
例えば、このクラッチ50としては、乾式又は湿式の単板クラッチ又は多板クラッチを使用すればよい。ここでは、円板状の摩擦板を有し、その摩擦板の摩擦力によりエンジン10のエンジン出力トルクを多段変速機30の入力軸41に伝達する摩擦式ディスククラッチを用いる。このクラッチ50は、係合動作を行ってエンジン10の出力軸11と多段変速機30の入力軸41とを係合状態にすることで、その出力軸11から伝わってきたエンジン出力トルクを入力軸41に伝達する。これにより、多段変速機30においては、そのエンジン出力トルクが各変速段(ギア段31〜35,39)の内の何れ1つかで変速されて出力軸42に伝わる。
このクラッチ50は、その作動形態の切り替え(つまり係合状態と解放状態の切り替え)が夫々に図1に示すアクチュエータ51を介して変速機用の電子制御装置(以下、「変速機ECU」という。)103に制御される。そのアクチュエータ51は、例えば油圧の増減制御によって作動するものであり、その油圧の大きさが変速機ECU103のクラッチ制御手段によって調整される。つまり、本実施例の手動方式の多段変速機30は、変速段の切り替えが運転者の手動操作で行われる一方、その際のクラッチ50の操作が自動で行われるものである。尚、この種の手動方式の多段変速機30については、従来から周知である。例えば、その変速機ECU103は、シフトレバー71aがシフトゲージ71bにおける現状の位置(変速位置又はEV運転モード切替位置)から所定量動かされたことを変速要求検出手段(図示略)で検知して、運転者による多段変速機30の変速要求があったと判断し、クラッチ50を解放状態に制御する。そして、この変速機ECU103は、シフトレバー71aがシフトゲージ71bにおける変速段に応じた所定の変速位置へと動かされた際に、運転者による変速操作が終わり、多段変速機30の変速動作も終了したと判断し、クラッチ50を係合状態に制御する。この変速機ECU103は、図示しないCPU、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。その変速要求検出手段としては、例えばシフトゲージ71bに対するシフトレバー71aの位置関係を検出可能な位置情報検出センサ等を利用すればよい。
最終減速装置60は、多段変速機30の出力軸42から入力された入力トルクを減速して、左右夫々の駆動軸DL,DRに分配するものである。この最終減速装置60は、その出力軸42の端部に取り付けたピニオンギア61と、このピニオンギア61に噛み合い、このピニオンギア61の回転トルクを減速させつつ回転方向を直交方向へと変換するリングギア62と、このリングギア62を介して入力された回転トルクを左右夫々の駆動軸DL,DRに分配する差動機構63と、を備えている。そのピニオンギア61とリングギア62によるギア比が最終減速装置60の最終減速比γfとなる。
更に、このハイブリッド車両1には、車両全体の動作を統括的に制御する電子制御装置(以下、「ハイブリッドECU」という。)100が設けられている。このハイブリッドECU100は、図示しないCPU、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されており、エンジンECU101、モータ/ジェネレータECU102及び変速機ECU103との間で夫々に各種センサの検出信号や制御指令等の情報の授受ができる。
本実施例においては、そのハイブリッドECU100に動力源の運転モードの切り替えを実行させる運転モード切替手段100aが用意されている。その運転モード切替手段100aは、例えば、ハイブリッドECU100の駆動要求演算手段100cが算出した運転者の駆動要求、モータ/ジェネレータECU102から送られてきた二次電池26の充電状態の情報、車両走行状態の情報(図示しない車両横加速度検出手段により検出された車両横加速度、車輪スリップ検出手段により検出された駆動輪WL,WRのスリップ状態等の情報)に基づいて、エンジン運転モードとハイブリッド運転モードの切り替えを行う。
ここでは、その要求駆動力に相当するものとして、要求加速度を求めさせるものとする。これが為、その駆動要求演算手段100cには、例えば運転者によるアクセルペダル(アクセル操作手段)75の操作量(以下、「アクセル操作量」という。)と車速検出手段(例えば車速センサ)81により検出された車速に応じた要求加速度を演算させる。そのアクセル操作量とは、アクセルペダル75に入力されたペダル踏力やアクセルペダル75の踏み込み量(つまり移動量)等であり、図1に示すアクセル操作量検出手段76で検出する。
運転モード切替手段100aは、エンジン運転モードを選択した場合、エンジン10のエンジン出力トルクのみで原則として運転者の駆動要求に応じた要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101、モータ/ジェネレータECU102及び変速機ECU103に制御指令を送る。この場合には、エンジンECU101への制御指令として、例えば現状の変速段又は変速操作後の変速段でその要求駆動力を満足させるエンジン10のエンジン出力トルクの情報が送信される。これにより、そのエンジンECU101は、そのエンジン出力トルクを発生させるようにエンジン10の燃料噴射量等の制御を行う。一方、モータ/ジェネレータECU102には、モータ/ジェネレータ20をモータとしてもジェネレータとしても作動させないよう制御指令を送ってもよく、ジェネレータとして作動させて電力を回生させるべく制御指令を送ってもよい。また、この場合の変速機ECU103には、運転者の変速要求が無ければクラッチ50を現状の係合状態のままに保持させ、運転者の変速要求が有れば変速操作に応じてクラッチ50を係合又は解放させるよう制御指令を送る。
また、運転モード切替手段100aは、ハイブリッド運転モードを選択した場合、エンジン10のエンジン出力トルクとモータ/ジェネレータ20のモータ又はジェネレータとしての出力で原則として運転者の駆動要求に応じた要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101、モータ/ジェネレータECU102及び変速機ECU103に制御指令を送る。この場合、エンジン出力トルクとモータ出力トルクの双方を用いるときには、エンジンECU101とモータ/ジェネレータECU102への制御指令として、例えば現状の変速段又は変速操作後の変速段でその要求駆動力を満足させるエンジン出力トルクとモータ出力トルクの情報が夫々に送信される。これにより、そのエンジンECU101は、そのエンジン出力トルクを発生させるようにエンジン10の燃料噴射量等の制御を行い、モータ/ジェネレータECU102は、そのモータ出力トルクを発生させるようにモータ/ジェネレータ20への給電量を制御する。また、この場合にモータ/ジェネレータ20で電力の回生を行わせるときには、エンジン運転モードに切り替え、モータ/ジェネレータECU102に対してモータ/ジェネレータ20をジェネレータとして作動させるよう制御指令を送ると共に、これによる要求駆動力に対する不足分を補うことが可能なエンジン出力トルクを発生させるようエンジンECU101に制御指令を送る。
また、運転モード切替手段100aは、EV運転モードが運転者のEV運転モード切替手段(変速操作手段71)の操作により要求された場合、モータ/ジェネレータ20のモータ出力トルクのみで原則として運転者の駆動要求に応じた要求駆動力(上述した要求加速度)を発生させるように、エンジンECU101、モータ/ジェネレータECU102及び変速機ECU103に制御指令を送る。この場合には、モータ/ジェネレータECU102への制御指令として、その要求駆動力を満足させるモータ/ジェネレータ20のモータ出力トルクの情報が送信される。これにより、そのモータ/ジェネレータECU102は、そのモータ出力トルクを発生させるようにインバータ25を制御する。その際、エンジンECU101には、燃費性能を向上させるべく、エンジン10の動作を停止させる制御指令が送られる。
ここで、EV運転モードにおいては、エンジン10と駆動輪WL,WRとの間に発生する摩擦損失等によってモータ出力トルクが無駄使いされないように、その間の機械的な繋がりを無くしてトルクが伝達されないようにしている。ここでは、その間のトルクの伝達を可能にする一方、その間におけるトルクの伝達を遮断するものをトルク調整手段と云い、このトルク調整手段の動作を制御するトルク制御手段がハイブリッドECU100に設けられている。つまり、EV運転モードが要求された場合、そのトルク制御手段は、トルク制御手段を制御して、エンジン10と駆動輪WL,WRとの間をトルクの伝達可能状態から遮断状態にする。本実施例のハイブリッド車両1においては、少なくともクラッチ50を係合又は解放させることによって、エンジン10と駆動輪WL,WRとの間でトルクが伝達又は遮断されるので、少なくともクラッチ50とアクチュエータ51がその間のトルク調整手段となり、変速機ECU103のクラッチ制御手段がトルク制御手段となる。また、このハイブリッド車両1においては、多段変速機30の何れかの変速段が係合状態にあれば、クラッチ50が係合状態である限り、エンジン10と駆動輪WL,WRとの間でトルクの伝達ができ、多段変速機30がニュートラル状態にあれば、クラッチ50が係合状態であっても、エンジン10と駆動輪WL,WRとの間でトルクの伝達が遮断される。
本実施例のハイブリッド車両1においてEV運転モードが要求された場合には、シフトレバー71aのEV運転モード切替位置HVへの操作に伴い多段変速機30をニュートラル状態になるので、クラッチ50を解放状態に制御することによって、エンジン10と駆動輪WL,WRとの間の機械的な繋がりが無くなってトルクが伝達されなくなる。これが為、この場合の変速機ECU103には、そのクラッチ50を解放させる制御指令が送られる。
更に、EV運転モードにおいては、運転者が車両の減速要求を行ったときに回生制動できるようモータ/ジェネレータECU102に制御指令が送られる。その減速要求とは、運転者がアクセルペダル75から足を離し且つブレーキペダル(ブレーキ操作手段)77を踏み込まない状態(アクセルオフ状態及びブレーキオフ状態)、つまり所謂エンジンブレーキ力での減速を要求している場合と、運転者がアクセルペダル75から足を離し且つブレーキペダル77を踏み込んだ状態(アクセルオフ状態及びブレーキオン状態)、つまりブレーキ操作に応じた機械制動力(図示しない摩擦制動装置によって各車輪に発生させる摩擦制動力)とエンジンブレーキ力で減速させる制動要求の場合の双方を含んでおり、ハイブリッドECU100の減速要求判定手段100dに判定させる。前者の場合には、減速要求判定手段100dがアクセル操作量検出手段76からの信号を検出していないとき又はアクセルペダル75のオン、オフに呼応する図示しないアクセルペダルスイッチからアクセルオン信号を検出していないときに、アクセルオフ状態との判断が為される。一方、後者の場合には、減速要求判定手段100dがブレーキ操作量検出手段78からの信号を検出しているとき若しくはブレーキペダル77のオン、オフに呼応する図示しないブレーキペダルスイッチからブレーキオン信号を検出しているときに、ブレーキオン状態との判断が為される。
このように、本実施例のハイブリッド車両1においては、運転者によるEV運転モード切替手段の操作(変速操作手段71のシフトレバー71aをEV運転モード切替位置HVへと操作)を契機にしてEV運転モードに切り替わり、更にその状態でアクセルオフ等の減速要求を運転者自身で行ったときに回生制動が開始される。
ところで、EV運転モードにおいては、上述したように、クラッチ50が解放されると共に多段変速機30がニュートラル状態になっており、エンジン10と駆動輪WL,WRとの間でのトルクの伝達が遮断されている。従って、減速要求が為されたままエンジン運転モードやハイブリッド運転モードからEV運転モードへと切り替えられた場合には、たとえエンジン10が作動していたとしても、その出力軸11と駆動輪WL,WRとの間に機械的な繋がりが無くなるので、切り替え前に発生していたエンジンブレーキ力が車体に作用しなくなる。これが為、運転者は、EV運転モードへの切り替え前後において、そのエンジンブレーキ力の減少分だけ減速感に違和感を覚えてしまい、減速要求時に車両が扱い難いと感じることがある。
そこで、本実施例のハイブリッド車両1は、運転者が自ら望むときに違和感の無い減速感を感じることができるように構成する。その為に、このハイブリッド車両1においては、EV運転モードへの切り替え直前の運転状態(車速V及び変速段SG)に応じて発生していたエンジンブレーキ力に相当する制動力を切り替え直後に回生制動力で発生させる。ハイブリッドECU100には、その制動力の制御を実行させる制動力制御手段100eが用意されている。
ここで、エンジンブレーキ力は、多段変速機30の変速段SGと車速Vに応じて変化する。一般に、エンジンブレーキ力は、変速段SGが一定のままなら、その立ち上がり時点からエンジン回転数Neの上昇に従い徐々に増加して車速Vを低下させていき、或る車速Vまで低下した時点からエンジン回転数Neの低下に従い徐々に減少しながら車速Vを低下させていく。これが為、EV運転モードへの切り替え後において、エンジンブレーキ力が増加する車速Vのときには、その時々の車速Vと切り替え前の変速段SGとに応じた大きさのエンジンブレーキ力に相当する回生制動力をその都度発生させる。従って、このときのエンジンブレーキ力相当の回生制動力は、エンジンブレーキ力が発生していると仮定した際の増加勾配に合わせて徐々に増加していく。また、エンジンブレーキ力が減少する車速Vのときにも、その時々の車速Vと切り替え前の変速段SGとに応じた大きさのエンジンブレーキ力に相当する回生制動力をその都度発生させる。このときのエンジンブレーキ力相当の回生制動力は、エンジンブレーキ力が発生していると仮定した際の減少勾配に合わせて徐々に減少していく。
以下に、運転者による減速要求中にEV運転モードへと切り替えられたときのハイブリッド車両1の制御動作の説明について図4のフローチャートに基づき行う。
先ず、ハイブリッドECU100の減速要求判定手段100dは、運転者による減速要求中であるのか否かについて判定する(ステップST1)。ここでは、上述したアクセルオフ状態及びブレーキオフ状態又はアクセルオフ状態及びブレーキオン状態であるのかを判断し、その内の何れかに該当していれば減速要求中との判定を行う。
ここで、減速要求中でない場合には、本制御動作を一旦終わらせる。一方、減速要求中であれば、ハイブリッドECU100は、エンジン運転モード又はハイブリッド運転モードからEV運転モードへの切り替え要求が為されたのか否かの判断を行う(ステップST2)。このステップST2においては、上述した運転モード切替手段100aがエンジン運転モード又はハイブリッド運転モードを選択したままなら、EV運転モードへの切り替え要求が無いと判断し、運転モード切替手段100aがEV運転モード切替位置検出手段72からの検出信号を受信したならば、シフトレバー71aがシフトゲージ71b上のEV運転モード切替位置HVに移動されてEV運転モードへの切り替え要求が為されたと判断する。この判断は、運転モード切替手段100aに実行させてもよく、かかる判断を行うEV運転モード切替判定手段をハイブリッドECU100に設けて実行させてもよい。
このステップST2でEV運転モードへの切り替え要求が行われていないと判断された場合には、本制御動作を一旦終わらせる。
一方、EV運転モードへの切り替え要求があったと判断された場合、運転モード切替手段100aは、エンジン運転モード又はハイブリッド運転モードからEV運転モードに切り替えさせる。ここでは、運転モード切替手段100aがエンジンECU101と変速機ECU103に制御指令を送る。具体的に、この運転モード切替手段100aは、変速機ECU103にクラッチ50を解放させる制御指令を送信し(ステップST3)、エンジンECU101にエンジン10の動作を停止させる制御指令を送信する(ステップST4)。これにより、その変速機ECU103のクラッチ制御手段は、アクチュエータ51を制御してクラッチ50を解放させ、エンジンECU101のエンジン制御手段は、燃料噴射の停止等を行ってエンジン10の動作を停止させる。
更に、EV運転モードへの切り替え要求があったときには、変速位置検出手段73による検出結果を利用して、ハイブリッドECU100の制動力制御手段100eがEV運転モードへと切り替えられる前の変速段SGoldの情報を例えばRAM等に記憶させる(ステップST5)。
続いて、その制動力制御手段100eは、EV運転モードへの切替が行われなかった、つまりエンジン10の出力軸11と駆動輪WL,WRとの間が機械的に繋がっていると仮定して、その際にEV運転モード切り替え前の変速段SGoldに応じて発生するであろう現車速Vnowでのエンジンブレーキ力に相当する制動力FBengを求める(ステップST6)。
このステップST6においては、先ず、エンジン10の出力軸11と駆動輪WL,WRとの間に機械的な繋がりがあると仮定して、その際のEV運転モード切り替え前の変速段SGoldに応じた現車速Vnowでのエンジン10の摩擦トルクTFRICengを求める。この摩擦トルクTFRICengは、主に変速段SGと車速Vに応じたエンジン10固有の値として求めることが可能であり、これらをパラメータとするマップデータTFRICeng(SG,V)から導き出すことができる。このマップデータTFRICeng(SG,V)は、予め実験やシミュレーションを行って用意されたものである。摩擦トルクTFRICengのより詳細な情報を得たい場合には、更にエンジン10の油温や水温の情報もパラメータとして入力されるようにすればよい。
次に、このステップST6においては、ここでもエンジン10の出力軸11と駆動輪WL,WRとの間に機械的な繋がりがあると仮定して、その際のEV運転モード切り替え前の変速段SGoldに応じた現車速Vnowでのエンジン10のエンジン回転数Neを求める。このエンジン回転数Neは、現車速Vnowと、EV運転モード切り替え前の変速段SGoldにおけるギア比γtmと、最終減速装置60の最終減速比γfと、から一意に求めることができる。
制動力制御手段100eは、その摩擦トルクTFRICengとエンジン回転数Neを下記の式1に代入して、このステップST6におけるEV運転モード切り替え後のエンジンブレーキ力相当の制動力FBengを求める。
FBeng=TFRICeng*Ne … (1)
本実施例においては、そのEV運転モード切り替え後のエンジンブレーキ力相当の制動力FBengをモータ/ジェネレータ20の回生制動力によって発生させる。これが為、制動力制御手段100eは、その制動力FBengを回生制動力で発生させる為のモータ/ジェネレータ20の回生制動トルクTMGengを演算する(ステップST7)。この回生制動トルクTMGengは、エンジンブレーキ力相当の制動力FBengを回生制動力によって発生させる為のものである。
このステップST7においては、先ず、現時点における(つまり現車速Vnowでの)モータ/ジェネレータ20の回転数(以下、「MG回転数」という。)Nmgを求める。このMG回転数Nmgは、現車速Vnowと、歯車対36のギア比γhvと、最終減速装置60の最終減速比γfと、から一意に求めることができる。そして、制動力制御手段100eは、そのEV運転モード切り替え後のエンジンブレーキ力相当の制動力FBengとMG回転数Nmgを下記の式2に代入して、このステップST7における回生制動トルクTMGengを求める。
TMGeng=FBeng/Nmg … (2)
ここで、回生制動は、EV運転モードだけでなく、エンジン運転モードやハイブリッド運転モードにおいて実行されることもある。これが為、制動力制御手段100eは、EV運転モードに切り替えられる前から回生制動が行われていたのか否かを判断する(ステップST8)。この判断は、例えば、EV運転モードへと切り替えられる前にハイブリッドECU100の回生制動制御手段100fが回生制動の実行指令をモータ/ジェネレータECU102に与えていたのか否かを観ることによって行える。従って、本実施例においては、その回生制動の実行指令の有無、そして更に、回生制動の実行指令と共にモータ/ジェネレータECU102へと送られた回生制動トルクTMGtmの情報をRAM等に記憶させておくことが望ましい。
このステップST8の判断の結果、EV運転モードへの切り替え前に回生制動が実行されていなければ、制動力制御手段100eは、上記ステップST7で求めた回生制動トルクTMGengをモータ/ジェネレータ20の要求回生制動トルクTMGとして設定する(ステップST9)。
一方、この制動力制御手段100eは、ステップST8でEV運転モードへの切り替え前から回生制動が実行されていたと判断した場合、EV運転モードに切り替わる前の回生制動トルクTMGtmの情報を読み込み(ステップST10)、このEV運転モード切り替え前の回生制動トルクTMGtmに上記ステップST7で求めた回生制動トルクTMGengを加えて、これをモータ/ジェネレータ20の要求回生制動トルクTMGとして設定する(ステップST11)。
制動力制御手段100eは、そのステップST9又はステップST11で設定した要求回生制動トルクTMGをモータ/ジェネレータ20に発生させるようにして、エンジンブレーキ力の不足分を補える回生制動が実行されるように制御する(ステップST12)。ここでは、その要求回生制動トルクTMGの情報を制動力制御手段100e(回生制動制御手段100fでもよい)が回生制動実行指令と共にモータ/ジェネレータECU102へと送信する。このモータ/ジェネレータECU102は、インバータ25を制御して、モータ/ジェネレータ20がその要求回生制動トルクTMGを発生させるようにする。
ハイブリッドECU100は、上述した演算処理を繰り返す。これにより、EV運転モードへの切り替え前後においては、切り替え直前に実際に発生していたエンジンブレーキ力と同等の制動力を切り替え直後に回生制動力で発生させるので、車両減速度に大きな変化が現れず、電力の回生を行いながら運転者が違和感の無い減速感を体で感じることができる。この切り替え前後においては、車速等の走行条件が略同一である。これが為、この切り替え前後においては、その走行条件が略同一で且つ減速要求も略同一の場合、EV運転モードへの切り替え直前よりも切り替え直後に回生制動力が大きくされている。また、切り替え後は、EV運転モードに切り替わらなければ発生していたであろう大きさのエンジンブレーキ力に相当する回生制動力が現車速Vnow毎に発生するので、これによっても電力の回生を行いつつ運転者が違和感の無い減速感を体で感じることができる。
以上示した如く、本実施例のハイブリッド車両1は、運転者が自ら主体的にEV運転モード切替手段(変速操作手段71)を操作してEV運転モードへの切り替えを行うよう構成しているので、誤った判断によるEV運転モードへの切り替えを防ぐことができる。これが為、このハイブリッド車両1は、運転者が望むときに回生制動を実行させることができ、誤判断に基づいた車両減速度の発生を抑えることができるので、違和感の無い減速感を得ることができる。また、このハイブリッド車両1は、EV運転モード切替手段の機能が運転者の操作により多段変速機30の変速段の切り替えを行う変速操作手段71に設けられており、シフトレバー71aを1度操作するだけで多段変速機30のニュートラル状態への切り替えとEV運転モードへの切り替えを同時に且つ誤りなく確実に行えるので、違和感の無い減速感を得ることができるだけでなく、運転者の利便性に富む。更に、このハイブリッド車両1は、EV運転モードへと切り替わった際に発生しなくなるエンジンブレーキ力について回生制動力で補うので、EV運転モード切り替え前後の減速感に大きな変化を生じさせず、違和感の無いものにすることができる。
ところで、本実施例においてはエンジンブレーキ力相当の制動力FBengを回生制動力で発生させるように構成したが、その制動力FBengは、摩擦制動装置で発生させてもよい。この場合、その摩擦制動装置は、各車輪の制動力を調整可能なアクチュエータを備えたものである必要がある。また、EV運転モードへの切り替え前から回生制動が行われているときには、その回生制動を継続させてもよく、その回生制動に係る回生制動力についても摩擦制動装置で発生させるようにしてもよい。
更に、モータ/ジェネレータ20の出力軸21が多段変速機30の入力軸41に連結される場合には、回生制動力を発生させることができなくなるので、EV運転モードへの切り替えが要求された際に多段変速機30をニュートラル状態にさせないよう構成する。
また、本実施例においては手動方式の多段変速機30を例に挙げたが、多段変速機は、自動変速機であってもよい。この場合、その自動変速機の出力軸側にモータ/ジェネレータ20の出力軸21を連結させたならば、この自動変速機は、運転者の操作でEV運転モードが要求された際に、変速機ECU103に設けた変速制御手段によってニュートラル状態に制御する。かかる構成のハイブリッド車両においては、自動変速機の何れかの変速段が係合状態にあれば、エンジン10と駆動輪WL,WRとの間でトルクの伝達ができ、自動変速機がニュートラル状態にあれば、エンジン10と駆動輪WL,WRとの間でトルクの伝達が遮断される。従って、このハイブリッド車両においては、少なくともその多段変速機がエンジン10と駆動輪WL,WRとの間のトルク調整手段となり、変速制御手段がトルク制御手段となる。