JP2010174002A - 新規含窒素大環状化合物及びその用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】公知のアザカリックス[n]アレーンよりも気体分子を好ましく吸着できる新規アザカリックス[n]アレーンを提供すること。
【解決手段】N−シリル化後のアリールアミノ化反応を80℃で行なうことにより、5つのアニソール環を窒素原子で架橋したアザカリックス[5]アレーンの合成に成功した。このようにして得られる特定構造のアザカリックス[5]アレーンは、公知のアザカリックス[n]アレーンよりも優れた二酸化炭素の吸着特性を有し、気体分子吸着剤として有用である。
【選択図】図1
【解決手段】N−シリル化後のアリールアミノ化反応を80℃で行なうことにより、5つのアニソール環を窒素原子で架橋したアザカリックス[5]アレーンの合成に成功した。このようにして得られる特定構造のアザカリックス[5]アレーンは、公知のアザカリックス[n]アレーンよりも優れた二酸化炭素の吸着特性を有し、気体分子吸着剤として有用である。
【選択図】図1
Description
本発明は、新規な含窒素大環状化合物及びその用途に関する。
気体分子を選択的に吸着する材料や、またその製造の基盤となる新規な化合物を開拓することは重要な課題である。従来より、さまざまな手法が提案されてきたが、とりわけ物理的な吸着に基づく方法は、外部エネルギーの投入を必要としないため、気体分子の吸着において省エネルギーの観点から特に有望と言える。
このような中、芳香環を窒素原子で架橋した含窒素大環状化合物(以下、アザカリックス[n]アレーンと略記。nは分子骨核中に含まれる芳香環の数を表す)は、そのかご形の分子構造を特徴とする構造的な特性ならびに架橋窒素原子と芳香環との共役に基づく電子的な特性により、気体分子との相互作用を大いに期待できる化合物群である。
しかしながら、これまでに報告されているアザカリックス[n]アレーンについては、有機分子やイオン性の化学種を対象とした溶液中でのホスト−ゲスト化学は研究されてきたものの(非特許文献1)、固相での気体分子との相互作用については全く研究されていなかった。
また、アザカリックス[n]アレーンの製造方法は、すでに多くの報告がなされてはいるものの(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献1等)、分子骨核に組み込まれている芳香環および置換基の種類によって、製造条件の変更を要するため、より効率的な製造方法の開拓が現在も進められている。
このような状況の中、本願発明者らは、新たな製造方法のひとつとして、一時的なN−シリル化を経由する芳香族アリールアミノ化反応を開発し、これを適用することによって、8つのアニソール環を窒素原子で架橋したアザカリックス[8]アレーンを効率よく合成できることを見出している(非特許文献2)。また、一時的なN−シリル化を経由する芳香族アリールアミノ化反応(上記非特許文献2)を応用してアザカリックス[6]アレーン及びアザカリックス[7]アレーンを合成し、その微粉末結晶が気体分子を迅速に吸着することを見出している(非特許文献3、4)。
Heterocyclic Supramolecules I, Springer-Verlag, 73-96 (2008)
Org. Lett., 8, 5991-5994 (2006)
Chem. Eur. J., 14, 6125-6134 (2008)
J. Org. Chem., 73 (19), 7748-7755 (2008)
本発明の目的は、公知のアザカリックス[n]アレーンよりも気体分子を好ましく吸着できる新規アザカリックス[n]アレーンを提供することにある。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、N−シリル化後のアリールアミノ化反応を80℃で行なうことにより、5つのアニソール環を窒素原子で架橋したアザカリックス[5]アレーンを合成できること、該アザカリックス[5]アレーンの微粉末結晶が非特許文献3、4等に記載される公知のアザカリックス[n]アレーンよりも優れた二酸化炭素の吸着特性を有することを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記一般式[I]で示される、アニソール環が窒素原子で架橋された構造を有する含窒素大環状化合物を提供する。
(式中、各R1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、各R2はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基であり、各R3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
また、本発明は、上記本発明の化合物を含む気体分子吸着剤を提供する。
本発明により、5つのアニソール環を窒素原子で架橋した新規なアザカリックス[5]アレーンが提供された。本発明のアザカリックス[5]アレーンは、二酸化炭素を高選択的に吸着するとともに、吸着された二酸化炭素を温和な条件下で脱着できる。その微粉末結晶は繰り返し利用することが可能であることから、二酸化炭素の吸脱着の用途において省エネルギーの観点から極めて有効である。
本発明のアザカリックス[5]アレーンは、5つのアニソール環を窒素原子で架橋した構造を有する含窒素大環状化合物であり、以下の一般式[I]で表される。
(式中、各R1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、各R2はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基であり、各R3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
一般式[I]の中でも、下記一般式[I']で示される化合物が好ましい。
(式中、R1、R2、R3は上記一般式[I]中の定義と同じ)
一般式[I']の中でも、各R1が全て同一であり、各R2が全て同一であり、各R3が全て同一であるものがより好ましい。
一般式[I]ないしは[I']において、R1としてはtert-ブチル基が好ましい。R2としては水素又はベンジル基(フェニルメチル基)が好ましく、水素がより好ましい。R3としてはメチル基が好ましい。
一般式[I]で示されるアザカリックス[5]アレーンは、本願発明者らが開発した一時的なN−シリル化を経由する芳香族アリールアミノ化反応(上記非特許文献2)を特定の温度条件下で行なうことにより製造することができる。該アリールアミノ化反応後に接触水素化分解反応を組み合わせると、架橋窒素上に置換基を有さない(すなわち、一般式[I]中の全てのR2が水素となる)アザカリックス[5]アレーンを得ることができる。全てのR2が水素である本発明の化合物を製造するための反応スキームを下記反応式1に示す。なお、下記反応式1中のt-Buはtert-ブチル基、Meはメチル基を表す。
(式中、R1、R3の定義は上記一般式[I]中の定義と同じであり、各R2’はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基である。Xはハロゲンである。)
まず、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、トルエン等の有機溶媒中で、化合物[III]の二つのアミノ基をシリル化剤と塩基を用いて一時的にシリル保護する(一時的なN−シリル化反応)。シリル化剤としては、ケイ素原子上に水素原子を持たないケイ素化合物が好ましく、例えばジメチルフェニルシリルクロリドを好ましく用いることができるが、これに限定されない。上記反応式1ではジメチルフェニルシリルクロリドを用いた例を示しているが、これに限定することを意図するものではない。塩基としてはナトリウムtert-ブトキシド等を用いることができるが、これに限定されない。化合物[III]に対し、シリル化剤は1.5〜4当量程度、好ましくは2〜4当量程度、塩基は4〜5当量程度使用すればよい。反応系内の化合物[III]の濃度は特に限定されないが、通常1mM〜10mM程度であれば望ましい結果が得られる。反応温度は通常70℃〜110℃程度、好ましくは80℃〜110℃程度、反応時間は通常15分〜1時間程度である。
シリル化により生じたN-Si結合は加水分解により容易に切断されるため、反応液からN-シリル保護体を単離せずに、直ちにパラジウム触媒を用いて化合物[II]との「アリールアミノ化反応」を"one pot"で行なう。従って、下記実施例に記載するように、化合物[III]と、等量の化合物[II]と、シリル化剤及び塩基とを溶媒中で混合して、上記した一時的N−シリル化反応を行ない、次いで反応系内にパラジウム触媒及びリガンドを添加してアリールアミノ化反応を行なうことにより、化合物[II]と化合物[III]が環状に結合した環化体[VII]を得ることができる。アリールアミノ化反応の反応温度は通常70℃〜100℃、好ましくは75℃〜90℃程度、例えば80℃程度である。反応温度を110℃とすると、該環化体[VII]を得ることができない。反応時間は、通常12時間〜30時間程度である。パラジウム触媒としては、特に限定されないが、例えばビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム等を用いることができる。リガンドとしては、特に限定されないが、例えばトリ(tert-ブチル)ホスフィン、ビス(2-ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(DPEphos)等を用いることができる。触媒の使用量は化合物[II]に対し通常0.1〜0.5当量程度、リガンドの使用量は化合物[II]に対し通常0.06〜0.8当量程度である。
上記反応式1で得られる環化体[VII]とは、一般式[I']中のR2が水素以外の場合の本発明の化合物である。全てのR2が水素の化合物[I'](すなわち全てのR2が水素の化合物[I])は、環化体[VII]を常法により精製後、接触水素化反応に付して、架橋窒素原子上のR2’を水素に変換することにより得ることができる。接触水素化分解反応の条件の具体例は下記実施例に詳述される通りであり、例えばR2’がベンジル基(フェニルメチル基)である場合、塩化メチレン等の有機溶媒中(環化体[VII]の濃度は通常10〜20g/L程度)、パラジウム−炭素等のパラジウム触媒を用いて24〜48時間程度水素ガスと反応させることにより接触水素化分解反応を行なうことができる。触媒の使用量は、例えば10%パラジウム−炭素の場合は精製後の環化体[VII]の1gに対し通常0.5〜2g程度用いればよい。
原料となる化合物[II]は、例えば、非特許文献2に記載される以下の反応式2により得ることができる。下記反応式2では、架橋窒素上の置換基がベンジル基となる化合物[II]を例として示す。なお、反応式2中のR1、R3、Xの定義は上記反応式1中の定義と同じであり、Bnはベンジル基(フェニルメチル基)を表す。
化合物[VIII]及び[IX]をBuchwald-Hartwigアリールアミノ化反応に付し、三量体化合物[X]を得る。架橋窒素原子をベンジル化することで、R2’がベンジル基となる化合物[II]を得ることができる。
また、化合物[III]は、例えば、非特許文献4に記載される以下の反応式3により得ることができる。下記反応式3では、架橋窒素上の置換基がベンジル基となる化合物[III]を例として示す。なお、反応式3中のR1、R3、Xの定義は上記反応式1中の定義と同じである。
ニトロアニソール化合物[XI]を常法によりヒドラジンで還元し、得られたアニリン化合物[XII]を二炭酸ジtert-ブチル(Boc2O)で処理する。次いで、得られた保護化アニリン[XIII]とm-フェニレンジアミン化合物[XIV]とをBuchwald-Hartwigアリールアミノ化反応に付すと二量体化合物[XV]が得られるので、この末端アミノ基をN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)の存在下にてさらにBoc保護し、架橋窒素原子をN−ベンジル化した後に脱Bocすると、R2’がベンジル基である化合物[III]を得ることができる。
本発明はまた、上記一般式[I]で示されるアザカリックス[5]アレーンを含む気体分子吸着剤を提供する。該アザカリックス[5]アレーンを揮発性有機溶媒と接触させて、該溶媒分子を包接するアザカリックス[5]アレーンの錯体を生成させた後、該錯体中に包接される溶媒分子を除去すると、アザカリックス[5]アレーンに気体分子の吸着特性を付与することができる。この操作を経た本発明のアザカリックス[5]アレーンの結晶は、下記実施例に示されるように、同様の操作を経た公知のアザカリックス[n]アレーンよりも二酸化炭素の吸着能が高い。
気体分子吸着剤の製造方法としては、揮発性有機溶媒からの再結晶操作により溶媒分子を包接したアザカリックス[5]アレーンの錯体を生成させた後、脱溶媒を行なう方法を好ましく採用することができる。再結晶溶媒としては、塩化メチレン及びヘキサンから選択される少なくとも1種の溶媒が好ましく用いられ、特に塩化メチレンとヘキサンの混合溶媒(塩化メチレン:ヘキサン=5:95〜20:80程度)が好ましい。下記実施例に記載されるように、塩化メチレンとヘキサンの混合溶媒を用いて再結晶の操作を行なうことにより、アザカリックス[5]アレーン1分子当たり0.6分子程度の塩化メチレンを包接した単結晶又は微粉末結晶を得ることができる。
この単結晶又は微粉末結晶に包接された溶媒分子は、常圧下での加熱処理(100℃〜150℃程度)によって除去することができるが、より実用的には真空下で50℃〜70℃程度の加熱を12〜24時間程度行なうことが好ましい。
かかる脱溶媒処理により得られる結晶は、気体分子吸着剤として有用である。該結晶に吸着された気体分子の脱着方法としては、室温で真空下に置く方法を好ましく採用することができる。すなわち、この結晶による気体分子の吸着は、物理吸着に基づくものであるため、気体分子を吸着した結晶を真空条件下に置くのみで、室温という温和な条件下で気体分子の脱着を実行することが可能である。
上記方法により製造される本発明の気体分子吸着剤は、特に二酸化炭素に対する吸着特性が高いことから、上記の吸脱着特性を利用することにより、たとえば宇宙ステーション内で吸着した二酸化炭素を容易に宇宙空間に排出することが可能である。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
参考例1 化合物2(三量体化合物)の合成
アルゴン雰囲気下、化合物8(6.44 g, 20.0 mmol)、化合物9(971 mg, 5.00 mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(1.21 g, 12.5 mmol)、ビス(2-ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(202 mg, 0.375 mmol)、酢酸パラジウム(56.1 mg, 0.250 mmol)を、トルエン(10 ml)中で80 ℃、24時間反応させた。室温に戻し、セライトでろ過した後、溶媒留去し、真空乾燥させた。シリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−ヘキサン=1:4)により精製して化合物10の固体(2.66 g)を得た。得られた固体の一部(1.35 g、2.00 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(10 ml)に溶解させた後、氷冷下で60%水素化ナトリウム(371 mg、9.28 mmol)と臭化ベンジル(0.53 ml、2.0 mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。溶媒留去した後、ジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。炭酸カリウムで乾燥後、溶媒留去して得られた残査をシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−ヘキサン=1:3)により精製して固体(1.64 g)を得た。化合物8と化合物9からの二段階収率は75%であった。
参考例2 化合物3(二量体化合物)の合成
化合物11(11.5 g, 39.9 mmol)、塩化鉄六水和物(569 mg, 2.11 mmol)、活性炭(1.20 g)を、メタノール(120 ml)中で30分間還流させた。ヒドラジン一水和物(10.3 g, 206 mmol)を滴下し、1時間還流させた。室温に戻し、セライトでろ過した後、溶媒留去し、塩化メチレンで抽出した。有機層を飽和重曹水で洗浄後、炭酸カリウムで乾燥させ、溶媒留去した。シリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−ヘキサン=1:1)で精製して化合物12の固体(9.71 g)を得た。得られた固体の一部(2.58 g、10.0 mmol)と二炭酸ジtert-ブチル(2.40 g、11.0 mmol)をtert-ブタノール(5 ml)中で3時間、室温で撹拌した。溶媒留去し、酢酸エチルで抽出し、飽和重曹水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒留去して得られた残査をシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−ヘキサン=1:1)で精製して化合物13の固体(3.55 g)を得た。アルゴン雰囲気下、得られた固体の一部(2.16 g、6.03 mmol)、化合物14(1.77 g、6.00 mmol)、酢酸パラジウム(67.5 mg, 0.301 mmol)、ビス(2-ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(242.5 mg, 0.450 mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(693 mg, 7.21 mmol)を、トルエン(12 ml)中で80 ℃、23時間反応させた。室温に戻し、セライトでろ過した後、溶媒留去し、真空乾燥させた。シリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−ヘキサン=1:2)により精製して化合物15の固体(3.14 g)を得た。得られた固体の一部(2.74 g、4.80 mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(120 mg、0.985 mmol)、二炭酸ジtert-ブチル(3.14 g、14.4 mmol)をテトラヒドロフラン(50 ml)中で15時間還流させた。室温に戻し、ジエチルエーテルで抽出し、飽和重曹水で洗浄後、炭酸カリウムで乾燥させた。シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン=1:4)で精製して得られた固体を、N,N-ジメチルホルムアミド(15 ml)に溶解させ、氷冷下で60%水素化ナトリウム(301 mg、7.53 mmol)と臭化ベンジル(884 mg、5.63 mmol)を加えて、室温で5時間撹拌した。塩化メチレンで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒留去して得られた固体を塩化メチレン(10 ml)に溶解させた後、トリフルオロ酢酸(8 ml)を加えて、室温で1時間半撹拌した。反応液を氷冷後、pH 11になるまで5%水酸化ナトリウムを加えた。塩化メチレンで抽出し、炭酸カリウムで乾燥させ、溶媒留去した。シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン=1:4)で精製して化合物3の固体(922 mg)を得た。化合物11からの全収率は36%であった。
実施例1 アザカリックス[5]アレーン(化合物6、n=5)の合成
アルゴン雰囲気下、化合物2(175 mg, 0.204 mmol)、化合物3(94.6 mg, 0.204 mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(89.6 mg, 0.932 mmol)、ジメチルフェニルシリルクロリド(76.9 mg, 0.405 mmol)、トルエン(4 ml)の混合物を、80℃で30分間撹拌した。次いで、トルエン(36 ml)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2)(46.0 mg, 0.080 mmol)、およびトリ(tert-ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液(0.20 ml, 0.067 mmol)を加え、80℃で21時間撹拌した。室温に戻し、セライトでろ過した後、溶媒留去し、真空乾燥させた。シリカゲルクロマトグラフィー(0.5%のトリエチルアミンを添加した塩化メチレン−ヘキサン=2:3)により精製して固体(32.7 mg)を得た。この固体(32.7 mg)を塩化メチレン(2 ml)に溶解させた後、酢酸(2 ml)と10%パラジウム−炭素を(27.9 mg)を加えて、水素雰囲気下(3.1 kg/cm2)で27時間撹拌した。セライトでろ過し、30%水酸化カリウム水溶液で中和した後、塩化メチレンで抽出し、飽和重曹水で洗浄した。有機層を炭酸カリウムで乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(0.5%のトリエチルアミンを添加した塩化メチレン−ヘキサン=2:1)により精製して、11.6 mgの化合物6(n=5)を得た。収率は6.4%であった。
比較例1 アザカリックス[6]アレーン(化合物6、n=6)の合成
アルゴン雰囲気下、化合物4(696 mg, 0.500 mmol)、化合物5(97.2 mg, 0.500 mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(240 mg, 2.50 mmol)、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(151 mg, 1.00 mmol)、トルエン(100 ml)の混合物を、80℃で30分間撹拌した。次いで、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(57.4 mg, 0.100 mmol)とトリ(tert-ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液(0.24 ml, 0.080 mmol)を加え、110℃で22時間撹拌した。室温に戻し、セライトでろ過した後、溶媒留去し、真空乾燥させた。シリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−ヘキサン=2:1)により精製して固体(227 mg)を得た。この固体(227 mg)に、別途合成したものを追加して計427 mgとし、これをシクロヘキサン(50 ml)に溶解させた後、10%水酸化パラジウム−炭素(204 mg)を加えて、水素雰囲気下(3.9 kg/cm2)で31時間撹拌した。10%水酸化パラジウム−炭素(200 mg)を追加し、水素雰囲気下(4.0 kg/cm2)でさらに14時間撹拌した。セライトでろ過し、溶媒留去し、真空乾燥させた後、シリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−ヘキサン=1:1〜2:1)により精製して、280 mgの化合物6(n=6)を得た。収率は28%であった。化合物6(n=6)の元素分析値は、計算値がC; 74.54、H; 8.53、N; 7.90であったのに対し、実測値がC; 74.33、H; 8.58、N; 7.83であった。
比較例2 アザカリックス[7]アレーン(化合物6、n=7)の合成
アルゴン雰囲気下、化合物3(46.5 mg, 0.101 mmol)、化合物4(141 mg, 0.101 mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(48.1 mg, 0.500 mmol)、ジメチルフェニルシリルクロリド(38.1 mg, 0.223 mmol)、およびトルエン(20 ml)の混合物を、80℃で30分間撹拌した。次いで、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(12.0 mg, 0.0209 mmol)およびトリ(tert-ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液(0.050 ml, 0.017 mmol)を加え、110℃で17時間撹拌した。室温に戻し、セライトでろ過した後、溶媒留去した。真空乾燥後、シリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−ヘキサン=1:1)により精製して固体(56.9 mg)を得た。この固体(56.9 mg)に、別途合成したものを追加して計198 mgとし、これを塩化メチレン(25 ml)に溶解させた後、10%水酸化パラジウム−炭素(220 mg)を加えて、水素雰囲気下(3.9 kg/cm2)で2日間撹拌した。セライトでろ過し、溶媒留去し、真空乾燥させた後、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン=4:1)により精製して、130 mgの化合物6(n=7)を得た。収率は29%であった。化合物6(n=7)の元素分析値は、計算値がC; 75.13、H; 9.09、N; 7.39であったのに対し、実測値がC; 74.95、H; 9.04、N; 7.09であった。
下記表1に化合物6のn=5〜7のものついて、収率、質量分析(電解脱離法)、1H NMR(重クロロホルム中)の測定結果をまとめた。
実施例2、比較例3、4 微粉末結晶の調製
実施例1に従って合成した化合物6(n=5)(73.4 mg)を、塩化メチレンとヘキサンの混合溶媒から再結晶することにより、1分子の化合物6(n=5)に対して約0.6分子の塩化メチレンを包接した微粉末結晶(65.4 mg)を得た。次いで、真空下、60℃で一晩加熱することにより、包接された塩化メチレンを除去した微粉末結晶(61.2 mg)を得た。この微粉末結晶に塩化メチレンが含まれていないことは、1H NMRの測定において塩化メチレン由来のシグナルが観測されないことより確認された。
実施例1に従って合成した化合物6(n=5)(73.4 mg)を、塩化メチレンとヘキサンの混合溶媒から再結晶することにより、1分子の化合物6(n=5)に対して約0.6分子の塩化メチレンを包接した微粉末結晶(65.4 mg)を得た。次いで、真空下、60℃で一晩加熱することにより、包接された塩化メチレンを除去した微粉末結晶(61.2 mg)を得た。この微粉末結晶に塩化メチレンが含まれていないことは、1H NMRの測定において塩化メチレン由来のシグナルが観測されないことより確認された。
同様にして、n=6、7の化合物6についても、塩化メチレンとヘキサンの混合溶媒から再結晶後、真空下で加熱することで微粉末結晶を得た(比較例3、4)。
下記表2に化合物6のn=5〜7のものついて、包接された溶媒の種類、包接された溶媒分子の数、脱溶媒温度をまとめた。
実施例3、比較例5、6 化合物6の微粉末結晶の気体吸着特性評価
実施例2に従って脱溶媒を行った化合物6の微粉末結晶への気体の吸着量の見積もりは、公知の気体吸着量測定装置の図面(Chem. Commun., 51-53 (2005))に従って組み立てた装置を用いて行った。すなわち、化合物6の微粉末結晶(19.8 mg)を真空下に置いた後、293Kにおいて窒素、酸素、アルゴン、または二酸化炭素を導入して約1気圧の雰囲気下に置き、その圧力の経時変化を追跡した。図1は、検討した上記四種類の気体に対する圧力の経時変化を示した図である。結果として、二酸化炭素が化合物6の微粉末結晶に特異的に吸着された。また、吸着平衡に到達するまでの時間は、約15分であった。
実施例2に従って脱溶媒を行った化合物6の微粉末結晶への気体の吸着量の見積もりは、公知の気体吸着量測定装置の図面(Chem. Commun., 51-53 (2005))に従って組み立てた装置を用いて行った。すなわち、化合物6の微粉末結晶(19.8 mg)を真空下に置いた後、293Kにおいて窒素、酸素、アルゴン、または二酸化炭素を導入して約1気圧の雰囲気下に置き、その圧力の経時変化を追跡した。図1は、検討した上記四種類の気体に対する圧力の経時変化を示した図である。結果として、二酸化炭素が化合物6の微粉末結晶に特異的に吸着された。また、吸着平衡に到達するまでの時間は、約15分であった。
下記表3に、化合物6のn=5〜7の微粉末結晶について、各気体分子の吸着量をまとめた。室温付近での二酸化炭素の吸着量は、n=5の化合物で特に優れていた。
実施例4、比較例7、8 化合物6の微粉末結晶の気体脱着特性評価(化合物6のn=5の場合)
実施例5に従って化合物6の微粉末結晶に吸着された気体は、室温で真空下に置くことにより脱着された。図2は、297Kで化合物6の微粉末結晶(19.8 mg)に二酸化炭素を吸着させた後、真空下で脱着を同温度で行い、この操作を計3回繰り返し行った結果を示した図である。結果として、二酸化炭素を吸着させた後で、真空下での脱着操作を行い、二酸化炭素の吸着実験を再度行うと、最初と同量の二酸化炭素が化合物6の微粉末結晶に吸着された。化合物6のn=6および7の微粉末結晶についても同様の気体脱着特性を示した。
実施例5に従って化合物6の微粉末結晶に吸着された気体は、室温で真空下に置くことにより脱着された。図2は、297Kで化合物6の微粉末結晶(19.8 mg)に二酸化炭素を吸着させた後、真空下で脱着を同温度で行い、この操作を計3回繰り返し行った結果を示した図である。結果として、二酸化炭素を吸着させた後で、真空下での脱着操作を行い、二酸化炭素の吸着実験を再度行うと、最初と同量の二酸化炭素が化合物6の微粉末結晶に吸着された。化合物6のn=6および7の微粉末結晶についても同様の気体脱着特性を示した。
比較例9
比較例として、活性炭(和光純薬製、ロット番号WDP1201)およびモレキュラーシーブ5A(和光純薬製、ロット番号SAQ3823)を用いた気体の吸着実験を、実施例3と同様にして297Kにて行った。下記表4に示したとおり、活性炭への各気体の吸着量は、上記表1に示した化合物6(n=5)の微粉末結晶のものとほぼ同程度であった。なかでも二酸化炭素が、活性炭およびモレキュラーシーブ5Aに最も吸着されたものの、その窒素を基準とした相対的な吸着量は,それぞれ6.3と4.6であり、化合物6(n=5)の微粉末結晶で観測された14に比べて、半分以下の値であった。換言すれば、化合物6(n=5)の微粉末結晶は、活性炭やモレキュラーシーブ5Aよりも、二酸化炭素に対してより選択的な吸着特性を示すと言える。
比較例として、活性炭(和光純薬製、ロット番号WDP1201)およびモレキュラーシーブ5A(和光純薬製、ロット番号SAQ3823)を用いた気体の吸着実験を、実施例3と同様にして297Kにて行った。下記表4に示したとおり、活性炭への各気体の吸着量は、上記表1に示した化合物6(n=5)の微粉末結晶のものとほぼ同程度であった。なかでも二酸化炭素が、活性炭およびモレキュラーシーブ5Aに最も吸着されたものの、その窒素を基準とした相対的な吸着量は,それぞれ6.3と4.6であり、化合物6(n=5)の微粉末結晶で観測された14に比べて、半分以下の値であった。換言すれば、化合物6(n=5)の微粉末結晶は、活性炭やモレキュラーシーブ5Aよりも、二酸化炭素に対してより選択的な吸着特性を示すと言える。
二酸化炭素は、温室効果気体として環境に負荷を与えることから、これを選択的に低減するための材料や、またその製造の基盤となる新規な化合物を開拓することは重要な課題である。本発明によれば、とりわけ二酸化炭素を高選択的に吸着するとともに、吸着された二酸化炭素を温和な条件下で脱着できる新たな化合物として、上記式[I]で示されるアザカリックス[5]アレーンが提供される。また、その微粉末結晶は繰り返し利用することが可能であることから、二酸化炭素の吸脱着の用途において省エネルギーの観点から極めて有効である。省エネルギーでの除去を満足することは、大気からの二酸化炭素の削減にとどまらず、効率的なエネルギー利用を強いられる宇宙ステーションや潜水艦等の閉鎖空間においては、強力かつ必須の要求となる。したがって、本発明におけるアザカリックス[5]アレーンは、左記のような閉鎖空間における空気の浄化の用途を含めて、二酸化炭素の吸脱着を伴う多様な目的のために有効に利用することができるものと期待される。
Claims (11)
- 一般式[I']において、各R1が全て同一であり、各R2が全て同一であり、各R3が全て同一である請求項2記載の化合物。
- 一般式[I']において、R2が水素又はベンジル基である請求項3記載の化合物。
- 一般式[I']において、R2が水素である請求項4記載の化合物。
- 一般式[I']において、R1がtert-ブチル基であり、R3がメチル基である請求項3ないし5のいずれか1項に記載の化合物。
- 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の化合物を含む気体分子吸着剤。
- 前記化合物は、該化合物を揮発性有機溶媒と接触させて該溶媒分子を包接した錯体を生成後、該錯体中に包接された溶媒分子を除去することにより得られる結晶の形態である請求項7記載の気体分子吸着剤。
- 前記結晶は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の化合物を前記揮発性有機溶媒から再結晶させ、得られた結晶を加熱処理することにより得られる結晶である請求項8記載の気体分子吸着剤。
- 前記揮発性有機溶媒は塩化メチレン及びヘキサンから成る群より選択される少なくとも1種である請求項8又は9記載の気体分子吸着剤。
- 前記気体は二酸化炭素である請求項7ないし10のいずれか1項に記載の気体分子吸着剤。
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JP2009021511A JP2010174002A (ja) | 2009-02-02 | 2009-02-02 | 新規含窒素大環状化合物及びその用途 |
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2009
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