JP2010170998A - 燃料電池用電極触媒およびその選定方法 - Google Patents

燃料電池用電極触媒およびその選定方法 Download PDF

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紀子 亘
Hideji Fujii
秀治 藤井
Masazumi Taura
昌純 田浦
Ichiro Nagano
一郎 永野
Noriko Yamazaki
紀子 山▲崎▼
Satoru Watanabe
悟 渡▲辺▼
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Abstract

【課題】白金代替触媒であって、酸素還元能を白金系触媒の場合と比べて同等に発現できる燃料電池用電極触媒を提供することにある。
【解決手段】複合酸化物がAxByOz又はMtAxByOzであり、Aが遷移金属、Sr、Ba、Zn、又はBiの何れか一つであり、Bが遷移金属、In、Sb、又はPbの何れか一つであり、Mが遷移金属であり、AxByOzまたはMtAxByOzの上向きスピンのバンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下の範囲であると共に、AxByOz又はMtAxByOzの下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ、AxByOz又はMtAxByOzの上向きスピンのバンド構造におけるフェルミレベルの直上にてエネルギー順位の低い3つの電子状態について平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化した伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池用電極触媒およびその選定方法に関する。
燃料電池は、水素やエタノールなどの燃料を電気化学的に酸素と反応させることにより電気エネルギーを取り出す装置であり、理論的なエネルギー効率が高くCO2の排出が少ない装置である。そのため、燃料電池が環境負荷の小さい発電システムとして注目されている。
上述した燃料電池が電解質などの種類により分類されており、水素イオンを通す固体高分子を電解質として用いる固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)がある。
上述したPEFCの空気極(カソード、正極)では、以下の(1)式に示すように、水素イオンおよび電子と酸素とが反応して水を生成する化学反応が起こっている。
空気極:O2 + 4H+ + 4e- + → 2H2O ・・・・ (1)
上述した空気極における反応を促進するため、白金を有する白金系触媒が電極触媒として用いられている。PEFCが比較的低温で運転することができ、高出力密度を得ることができる特徴を有する。このようなことから、PEFCが自動車用駆動源や定置用電源としての開発が期待されている。
ところが、PEFC自体が高価であるため、PEFCを有するシステムの普及にあたっては、PEFCの低価格化という課題がある。特に、電極触媒で用いられる白金が高価である。したがって、PEFCの低価格化には、白金の使用量を低減させることの他に、白金に代わる低価格の材料を開発することが考えられる。
上述したPEFCの空気極にて、白金の代替材料として、金属酸化物、酸窒素化物、ペロブスカイト型複合酸化物などの白金代替触媒が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2007−5284号公報(例えば、明細書の段落[0081],[0082],[0087]など参照)
しかしながら、上述した特許文献1記載の燃料電池用電極触媒が白金代替触媒であり触媒能(酸素還元能)を発現するものの、上述した白金系触媒と同等の触媒能を発現しておらず、当該白金系触媒と同等の触媒能を発現することが望まれていた。
また、上述した複合酸化物を含む燃料電池用電極触媒の開発にあたって、目的とする触媒作用(白金系触媒の場合と比べて同等の酸素還元能)を発現する可能性があると予想される物質を選考し、選考した物質の触媒作用を実験により確認する手法が一般的に用いられている。このような手法では、上述した物質の選考が経験に依存しており、また、選考した物質であっても触媒作用を十分に発現しない場合があり、多大な労力を要していた。すなわち、白金代替触媒の開発は、経験と実験に依存しており、演繹的、網羅的に探索されたことがなかった。
そこで、本発明は、前述した問題に鑑み提案されたもので、白金代替触媒であって、酸素還元能を白金系触媒の場合と比べて同等に発現できる燃料電池用電極触媒を提供することを目的とする。
また、白金代替触媒であり、白金系触媒の場合と比べて同等の酸素還元能を発現する燃料電池用電極触媒を高精度に予測して、当該酸素還元能を発現する物質を選考する労力を軽減した燃料電池用電極触媒の選定方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決する第1の発明に係る燃料電池用電極触媒は、
水素イオンおよび電子と酸素の反応を促進する複合酸化物を有する燃料電池用電極触媒であって、
前記複合酸化物がAxByOzまたはMtAxByOzであり、
前記Aが遷移金属、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、またはビスマスのいずれか一つであり、
前記Bが遷移金属、インジウム、スズ、または鉛のいずれか一つであり、
前記Mが遷移金属であり、
前記AxByOzまたは前記MtAxByOzの上向きスピンのバンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下の範囲であると共に、前記AxByOzまたは前記MtAxByOzの下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ、
前記AxByOzまたは前記MtAxByOzの上向きスピンのバンド構造におけるフェルミレベルの直上にてエネルギー順位の低い3つの電子状態について平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化した伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である
ことを特徴とする。
上述した課題を解決する第2の発明に係る燃料電池用電極触媒は、
第1の発明に係る燃料電池用電極触媒であって、
前記複合酸化物が前記AxByOzであり、
前記Aと前記Bが、ビスマスとモリブデン、ニッケルとタングステン、イットリウムとマンガン、銅とタングステン、銅とモリブデン、銅とクロム、ビスマスとスズ、亜鉛とタングステン、テルビウムとルテニウム、ストロンチウムと鉛、ストロンチウムとイリジウム、ストロンチウムと金の組み合わせの何れかである
ことを特徴とする。
上述した課題を解決する第3の発明に係る燃料電池用電極触媒は、
第1の発明に係る燃料電池用電極触媒であって、
前記複合酸化物が前記MtAxByOzであり、
前記Aと前記Bと前記Mが、ビスマスとクロムと銀、ストロンチウムとガドリニウムとロジウム、ストロンチウムとスカンジウムとロジウム、ストロンチウムとインジウムとロジウム、ストロンチウムとニッケルとイリジウム、バリウムとタングステンとバナジウムの組み合わせの何れかである
ことを特徴とする。
上述した課題を解決する第4の発明に係る燃料電池用電極触媒は、
第1乃至第3の発明の何れか一つに係る燃料電池用電極触媒であって、
前記複合酸化物がペロブスカイト型を除く構造である
ことを特徴とする。
上述した課題を解決する第5の発明に係る燃料電池用電極触媒は、
第2の発明に係る燃料電池用電極触媒であって、
前記Aと前記Bが、イットリウムとマンガン、またはビスマスとスズの組み合わせであり、
前記AxByOzがパイロクロア構造である
ことを特徴とする。
上述した課題を解決する第6の発明に係る燃料電池用電極触媒の選定方法は、
水素イオンおよび電子と酸素の反応を促進する複合酸化物からなる燃料電池用電極触媒の候補を選定する燃料電池用電極触媒の選定方法であって、
前記複合酸化物の上向きスピンおよび下向きスピンのバンド構造を科学計算によりそれぞれ求め、
前記上向きスピンおよび下向きスピンのバンド構造に基づき、上向きスピンおよび下向きスピンのバンドギャップをそれぞれ算出すると共に、
前記上向きスピンのバンド構造におけるフェルミレベルの直上にてエネルギー順位の低い3つの電子状態について平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化した伝導帯バンドの酸素軌道含有率を算出し、
前記上向きスピンのバンドギャップ、前記下向きスピンのバンドギャップ、および前記伝導帯バンドの酸素軌道含有率に基づき、候補となる複合酸化物を選定する
ことを特徴とする。
上述した課題を解決する第7の発明に係る燃料電池用電極触媒の選定方法は、
第6の発明に係る燃料電池用電極触媒の選定方法であって、
既知である白金系触媒のバンド構造を科学計算により求め、
当該バンド構造に基づき、前記白金系触媒のバンドギャップおよび伝導帯バンドの酸素軌道含有率を算出し、
前記白金系触媒の前記バンドギャップおよび前記伝導帯バンドの酸素軌道含有率に基づき、前記候補となる複合酸化物を選定する
ことを特徴とする。
本発明に係る燃料電池用電極触媒によれば、白金代替触媒であって、酸素還元能を白金系触媒の場合と比べて同等に発現でき、燃料電池用電極触媒の製造コストを低減することができる。
本発明に係る燃料電池用電極触媒の選定方法によれば、白金代替触媒であり、酸素還元能を白金系触媒の場合と比べて同等に発現できる燃料電池用電極触媒を高精度に予測して、当該酸素還元能を発現する物質を選考する労力を軽減することができる。
本発明に係る燃料電池用電極触媒の選定方法の一実施形態で用いられた燃料電池用電極触媒における、バンドギャップと伝導帯バンドの酸素軌道含有率との関係を示すグラフである。 図1に示される各電極触媒のバンドギャップと伝導帯バンドの酸素軌道含有率の表である。 AgBi(Cr272のバンド構造を示す図であり、図3(a)に上向きスピンの場合を示し、図3(b)に下向きスピンの場合を示す。 Bi2MoO6のバンド構造を示す図であり、図4(a)に上向きスピンの場合を示し、図4(b)に下向きスピンの場合を示す。 NiWO4のバンド構造を示す図であり、図5(a)に上向きスピンの場合を示し、図5(b)に下向きスピンの場合を示す。 2Mn27のバンド構造を示す図であり、図6(a)に上向きスピンの場合を示し、図6(b)に下向きスピンの場合を示す。 CuWO4のバンド構造を示す図であり、図7(a)に上向きスピンの場合を示し、図7(b)に下向きスピンの場合を示す。 CuMoO4のバンド構造を示す図であり、図8(a)に上向きスピンの場合を示し、図8(b)に下向きスピンの場合を示す。 Cu(CrO2)のバンド構造を示す図であり、図9(a)に上向きスピンの場合を示し、図9(b)に下向きスピンの場合を示す。 Bi2(Sn27)のバンド構造を示す図であり、図10(a)に上向きスピンの場合を示し、図10(b)に下向きスピンの場合を示す。 Zn(WO4)のバンド構造を示す図であり、図11(a)に上向きスピンの場合を示し、図11(b)に下向きスピンの場合を示す。 Tb2(Ru27)のバンド構造を示す図であり、図12(a)に上向きスピンの場合を示し、図12(b)に下向きスピンの場合を示す。 Sr2PbO4のバンド構造を示す図であり、図13(a)に上向きスピンの場合を示し、図13(b)に下向きスピンの場合を示す。 Sr3Gd(RhO6)のバンド構造を示す図であり、図14(a)に上向きスピンの場合を示し、図14(b)に下向きスピンの場合を示す。 Sr3Sc(RhO6)のバンド構造を示す図であり、図15(a)に上向きスピンの場合を示し、図15(b)に下向きスピンの場合を示す。 Sr3In(RhO6)のバンド構造を示す図であり、図16(a)に上向きスピンの場合を示し、図16(b)に下向きスピンの場合を示す。 Sr4IrO6のバンド構造を示す図であり、図17(a)に上向きスピンの場合を示し、図17(b)に下向きスピンの場合を示す。 Sr3Ni(IrO6)のバンド構造を示す図であり、図18(a)に上向きスピンの場合を示し、図18(b)に下向きスピンの場合を示す。 Sr(Au24)のバンド構造を示す図であり、図19(a)に上向きスピンの場合を示し、図19(b)に下向きスピンの場合を示す。 Ba3WVO8.5のバンド構造を示す図であり、図20(a)に上向きスピンの場合を示し、図20(b)に下向きスピンの場合を示す。
[主な実施形態]
本発明に係る燃料電池用電極触媒およびその選定方法の実施形態について、図1および図2に基づいて説明する。図1は、本発明に係る燃料電池用電極触媒の選定方法の一実施形態で用いられた燃料電池用電極触媒における、バンドギャップと伝導帯バンドの酸素軌道含有率との関係を示すグラフである。
本実施形態に係る燃料電池用電極触媒は、水素イオンおよび電子と酸素の反応を促進する複合酸化物を有し、固体高分子形燃料電池の空気極の電極触媒として利用される触媒である。前記複合酸化物がAxByOzまたはMtAxByOzからなり、前記Aが遷移金属またはビスマスのいずれか一つであり、前記Bが遷移金属であり、前記Mが遷移金属であり、前記AxByOzまたは前記MtAxByOzの上向きスピンのバンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下の範囲であると共に、前記AxByOzまたは前記MtAxByOzの下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ、前記AxByOzまたは前記MtAxByOzの上向きスピンのバンド構造におけるフェルミレベルの直上にてエネルギー順位の低い3つの電子状態について平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化した伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である。なお、前記xが前記Aの指数を示し、前記yが前記Bの指数を示し、前記zが前記Oの指数を示し、前記tが前記Mの指数を示す。
具体的には、前記複合酸化物が前記AxByOzである場合には、前記Aと前記Bが、ビスマスとモリブデン、ニッケルとタングステン、イットリウムとマンガン、銅とタングステン、銅とモリブデン、銅とクロム、ビスマスとスズ、亜鉛とタングステン、テルビウムとルテニウム、ストロンチウムと鉛、ストロンチウムとイリジウム、ストロンチウムと金の組み合わせの何れかである。
そして、前記複合酸化物は、前記AxByOzがペロブスカイト型を除く構造である。前記Aと前記Bが、イットリウムとマンガン、またはビスマスとスズの組み合わせである場合、前記AxByOzがパイロクロア構造である。
前記複合酸化物が前記MtAxByOzである場合には、前記Aと前記Bと前記Mが、ビスマスとクロムと銀、ストロンチウムとガドリニウムとロジウム、ストロンチウムとスカンジウムとロジウム、ストロンチウムとインジウムとロジウム、ストロンチウムとニッケルとイリジウム、バリウムとタングステンとバナジウムの組み合わせの何れかである。
そして、前記複合酸化物は、前記MtAxByOzがペロブスカイト型を除く構造である。
このような本実施形態に係る燃料電池用電極触媒によれば、白金代替触媒であって、酸素還元能を白金系触媒の場合と比べて同等に発現することができる。その理由を以下に説明する。
前記AxByOzの上向きスピンのバンドギャップ、および前記MtAxByOzの上向きスピンのバンドギャップが、酸素還元開始電位に作用するパラメータであり、1.30eVより小さくなると、電位を取ることができないことから、1.30eV以上としている。また、前記AxByOzの上向きスピンのバンドギャップ、および前記MtAxByOzの上向きスピンのバンドギャップが、3.65eVより大きくなると、白金系触媒と比べて空気極における反応性を低下させることから、3.65eV以下としている。
前記AxByOzの下向きスピンのバンドギャップ、および前記MtAxByOzの下向きスピンのバンドギャップが電気伝導性に作用するパラメータであり、前記AxByOzの下向きスピンおよび前記MtAxByOzの下向きスピンにてバンドギャップが無いと導電体になることから、前記AxByOzの下向きスピンおよび前記MtAxByOzの下向きスピンにてバンドギャップがあるとしている。
上述したバンドギャップは、伝導帯における、電子殻がΧ(カイ)またはΓ(ガンマ)またはWにてエネルギー順位が最も低い1つの電子状態の平均値と、価電子帯における、電子殻がΧ(カイ)またはΓ(ガンマ)またはWにてエネルギー順位が最も大きい1つの電子状態の平均値の差分を演算して得られた値である。
前記AxByOzの上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率、および前記MtAxByOzの上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率が、酸素還元能に作用するパラメータであり、24%より小さくなると、白金系触媒の場合と比べて、水素イオンおよび電子と酸素の反応性が低下することから、24%以上としている。なお、複合酸化物の伝導帯バンドの酸素軌道含有率が、およそ50%を越えるもの一般的に考えられないことから50%以下である。
ここで、上述した伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、エネルギー的にフェルミレベル直上にてエネルギー順位の低い3つの電子状態について平均して、酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものである。この酸素原子の電子状態への寄与率は、酸素原子を含む球面内にどのくらいの電子数が含まれるかを計算して得られる。
続いて、上述したような組成からなり、上述したバンドギャップの範囲を示し、且つ、上述した伝導帯バンドの酸素軌道含有率の範囲を示す燃料電池用電極触媒の選定方法について、以下に説明する。
最初に、固体高分子形燃料電池の空気極の電極触媒であり、水素イオンおよび電子と酸素の反応を促進する白金系電極触媒(例えば、PtOやPtO2(α型、β型)など)について、科学計算、例えば第一原理バンド計算を行った。この計算結果に基づき、白金系電極触媒のバンド構造を求めた。
続いて、上述した白金系電極触媒について、バンドギャップおよび伝導帯バンドの酸素軌道含有率をそれぞれ算出した。白金系電極触媒a(PtO2)では、バンドギャップが1.44eVであり、伝導帯バンドの酸素軌道含有率が41.54%であった。白金系電極触媒b(PtO)では、バンドギャップが2.01eVであり、伝導帯バンドの酸素軌道含有率が29.30%であった。白金系電極触媒c(PtO2)では、バンドギャップが2.86eVであり、伝導帯バンドの酸素軌道含有率が43.67%であった。
続いて、上述した白金系電極触媒a、白金系電極触媒b、および白金系電極触媒cに関し、バンドギャップと伝導帯バンドの酸素軌道含有率の相関を示すグラフである図1を作成する。図1にて、三角形が白金系電極触媒の場合を示す。この図1に示すように、白金系電極触媒が、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であり、且つ、伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である領域Aで示す範囲内にあることが明らかとなった。
ここで、白金系電極触媒が、酸素還元開始電位が0.9Vであり高い電位を有することが知られている。このようなことから、主として、バンドギャップが酸素還元開始電位に関与するパラメータであると考えられる。また、伝導帯バンドの酸素軌道含有率が高い電位で酸素を吸着する酸素吸着能に関与するパラメータであると考えられる。
よって、触媒能が高い物質、すなわち、白金代替触媒であって、酸素還元能を白金系触媒の場合と比べて同等に発現することができる複合酸化物は、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であり、且つ、伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である領域Aに分布すると考えられる。さらに、電極触媒として利用するために電位を有する必要があり、バンドギャップを有する必要がある。ここで、下向きスピンの伝導帯バンドのエネルギーは上向きスピンの伝導帯バンドのエネルギーよりも低くなる場合があり、その場合、電極触媒の電位は、下向きスピンのバンドギャップに支配される。
続いて、無機化合物データベースから2千種の材料を抽出し、各材料について、モデル化を行い、科学計算、例えば第一原理バンド計算を行った。この計算結果に基づきバンド構造を求め、バンドギャップを算出した。これらの材料にて、上向きスピンおよび下向きスピンの両方にバンドギャップがある物質について、上述した伝導帯バンドの酸素軌道含有率を算出した。そして、これら材料について、バンドギャップと伝導帯バンドの酸素軌道含有率の相関を示すグラフである図1に、各材料に関するバンドギャップおよび伝導帯バンドの酸素軌道含有率(スクリーニングデータ)をプロットした。図1にて、四角形がスクリーニングデータの場合を示し、星印Iが燃料電池用電極触媒(AgBi(Cr272)の場合を示し、星印IIが燃料電池用電極触媒(Bi2MoO6)の場合を示し、星印IIIが燃料電池用電極触媒(NiWO4)の場合を示し、星印IVが燃料電池用電極触媒(Y2Mn27)の場合を示す。
また、図1にて、星印Vが燃料電池用触媒(CuWO4)を示し、星印VIが燃料電池用触媒(CuMoO4)を示し、星印VIIが燃料電池用触媒(Cu(CrO2))を示し、星印VIIIが燃料電池用触媒(Bi2(Sn27))を示し、星印IXが燃料電池用触媒(Zn(WO4))を示し、星印Xが燃料電池用触媒(Tb2(Ru27))を示し、星印XIが燃料電池用触媒(Sr2PbO4)を示し、星印XIIが燃料電池用触媒(Sr3Gd(RhO6))を示し、星印XIIIが燃料電池用触媒(Sr3Sc(RhO6))を示し、星印XIVが燃料電池用触媒(Sr3In(RhO6))を示し、星印XVが燃料電池用触媒(Sr4IrO6)を示し、星印XVIが燃料電池用触媒(Sr3Ni(IrO6))を示し、星印XVIIが燃料電池用触媒(Sr(Au24))を示し、星印XVIIIが燃料電池用触媒(Ba3WVO8.5)を示す。
ここで、上述したモデル化とは、例えば、La0.90.1FeO3のような非整数の組成をもつ化合物をLaFeO3のように組成を整数比化し、計算が可能な構造にすることである。
上述したことから、複合酸化物に関し、上向きスピンのバンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下の範囲であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、酸素還元開始電位が白金系電極触媒の場合と比べて同等になるという効果を発現すると考えられる。さらに、複合酸化物に関し、上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上であることにより、酸素還元能が白金系電極触媒の場合と比べて同等になると考えられる。言い換えると、上述した燃料電池用電極触媒に関し、図1に示すように、領域A(上向きスピンのバンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ、上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である領域)にある複合酸化物とすることにより、酸素還元開始電位を白金系電極触媒の場合と比べて同等にすることができると考えられる。さらに、上述した複合酸化物とすることにより、高い電位での酸素吸着能を白金系電極触媒の場合と比べて同等にすることができると考えられる。
本選定方法で用いた、バンドギャップの値の定義は、物理的に厳密なものとは異なる。選定を自動的に行うため、バンドギャップを目視によらずに数値化した。具体的には、バンド図の左端で、バンドギャップの上端、下端になっている軌道を1つずつ選び、それぞれの軌道のエネルギーをバンド図の横軸の領域で平均化する。上端として選んだ軌道と下端として選んだ軌道の平均エネルギーの差を、選定のためのバンドギャップとして定義している。
[銀とビスマスとクロムの複合酸化物]
ここで、銀とビスマスとクロムの複合酸化物(AgBi(Cr272)について、図3を用いて具体的に説明する。
図3は、AgBi(Cr272のバンド構造を示す図であり、図3(a)に上向きスピンの場合を示し、図3(b)に下向きスピンの場合を示す。図3(a)および図3(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図3(a)および図3(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図3(a)にて、Ec11が伝導帯を示し、Ev11が価電子帯を示し、Eg11が禁制帯を示し、a1(太線),a2(1点鎖線),a3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図3(b)にて、Ec12が伝導帯を示し、Ev12が価電子帯を示し、Eg12が禁制帯を示す。
銀とビスマスとクロムの複合酸化物(AgBi(Cr272)は、MtAxByOzからなり、前記Aがビスマスであり、前記Bが遷移金属に属するクロムであり、Mが遷移金属に属する銀である複合酸化物である。
銀とビスマスとクロムの複合酸化物(AgBi(Cr272)における上向きスピンのバンド構造では、図3(a)に示すように、0Vより下方の領域Ev11が価電子帯となる一方、2.16eVより上方の領域Ec11が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg11の大きさが2.16eVとなった。
また、銀とビスマスとクロムの複合酸化物(AgBi(Cr272)における下向きスピンのバンド構造では、図3(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg12があることが明らかとなった。
さらに、銀とビスマスとクロムの複合酸化物の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの電子状態(a1、a2、a3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、25.36%であった。
よって、銀とビスマスとクロムの複合酸化物(AgBi(Cr272)が、図1に示すように、上向きスピンのバンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(AgBi(Cr272)は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[ビスマスとモリブデンの複合酸化物]
ここで、ビスマスとモリブデンの複合酸化物(Bi2MoO6)について、図4を用いて具体的に説明する。
図4は、Bi2MoO6のバンド構造を示す図であり、図4(a)に上向きスピンの場合を示し、図4(b)に下向きスピンの場合を示す。図4(a)および図4(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図4(a)および図4(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図4(a)にて、Ec21が伝導帯を示し、Ev21が価電子帯を示し、Eg21が禁制帯を示し、b1(太線),b2(1点鎖線),b3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図4(b)にて、Ec22が伝導帯を示し、Ev22が価電子帯を示し、Eg22が禁制帯を示す。
ビスマスとモリブデンの複合酸化物(Bi2MoO6)は、AxByOzからなり、前記Aがビスマスであり、前記Bが遷移金属に属するモリブデンである複合酸化物である。
ビスマスとモリブデンの複合酸化物(Bi2MoO6)における上向きスピンのバンド構造では、図4(a)に示すように、0eVより下方の領域Ev21が価電子帯となる一方、1.57eVより上方の領域Ec21が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg21の大きさが1.57eVとなった。
また、ビスマスとモリブデンの複合酸化物(Bi2MoO6)における下向きスピンのバンド構造では、図4(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg22があることが明らかとなった。
さらに、ビスマスとモリブデンの複合酸化物(Bi2MoO6)の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(b1、b2、b3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、27.90%であった。
よって、ビスマスとモリブデンの複合酸化物(Bi2MoO6)が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Bi2MoO6)は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[ニッケルとタングステンの複合酸化物]
ここで、ニッケルとタングステンの複合酸化物(NiWO4)について、図5を用いて具体的に説明する。
図5は、NiWO4のバンド構造を示す図であり、図5(a)に上向きスピンの場合を示し、図5(b)に下向きスピンの場合を示す。図5(a)および図5(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図5(a)および図5(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図5(a)にて、Ec31が伝導帯を示し、Ev31が価電子帯を示し、Eg31が禁制帯を示し、c1(太線),c2(1点鎖線),c3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図5(b)にて、Ec32が伝導帯を示し、Ev32が価電子帯を示し、Eg32が禁制帯を示す。
ニッケルとタングステンの複合酸化物(NiWO4)は、AxByOzからなり、前記Aが遷移金属に属するニッケルであり、前記Bが遷移金属に属するタングステンである複合酸化物である。
ニッケルとタングステンの複合酸化物(NiWO4)における上向きスピンのバンド構造では、図5(a)に示すように、0eVより下方の領域Ev31が価電子帯となる一方、2.59eVより上方の領域Ec31が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg31の大きさが2.59eVとなった。
また、ニッケルとタングステンの複合酸化物(NiWO4)における下向きスピンのバンド構造では、図5(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg32があることが明らかとなった。
さらに、ニッケルとタングステンの複合酸化物(NiWO4)の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(c1、c2、c3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、25.51%であった。
よって、ニッケルとタングステンの複合酸化物(NiWO4)が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(NiWO4)は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[イットリウムとマンガンの複合酸化物]
ここで、イットリウムとマンガンの複合酸化物(Y2Mn27)について、図6を用いて具体的に説明する。
図6は、Y2Mn27のバンド構造を示す図であり、図6(a)に上向きスピンの場合を示し、図6(b)に下向きスピンの場合を示す。図6(a)および図6(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図6(a)および図6(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図6(a)にて、Ec41が伝導帯を示し、Ev41が価電子帯を示し、Eg41が禁制帯を示し、d1(太線),d2(1点鎖線),d3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図6(b)にて、Ec42が伝導帯を示し、Ev42が価電子帯を示し、Eg42が禁制帯を示す。
イットリウムとマンガンの複合酸化物(Y2Mn27)は、AxByOzからなり、前記Aが遷移金属に属するイットリウムであり、前記Bが遷移金属に属するマンガンである複合酸化物である。
イットリウムとマンガンの複合酸化物(Y2Mn27)における上向きスピンのバンド構造では、図6(a)に示すように、0eVより下方の領域Ev41が価電子帯となる一方、1.82eVより上方の領域Ec41が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg41の大きさが1.82eVとなった。
また、イットリウムとマンガンの複合酸化物(Y2Mn27)における下向きスピンのバンド構造では、図6(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg42があることが明らかとなった。
さらに、イットリウムとマンガンの複合酸化物(Y2Mn27)の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(d1、d2、d3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、29.19%であった。
よって、イットリウムとマンガンの複合酸化物(Y2Mn27)が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Y2Mn27)は、ペロブスカイト型を除く構造であり、パイロクロア型の構造であった。
[銅とタングステンの複合酸化物]
ここで、銅とタングステンの複合酸化物(CuWO4)について、図7を用いて具体的に説明する。
図7は、CuWO4のバンド構造を示す図であり、図7(a)に上向きスピンの場合を示し、図7(b)に下向きスピンの場合を示す。図7(a)および図7(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図7(a)および図7(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図7(a)にて、Ec51が伝導帯を示し、Ev51が価電子帯を示し、Eg51が禁制帯を示し、e1(太線),e2(1点鎖線),e3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図7(b)にて、Ec52が伝導帯を示し、Ev52が価電子帯を示し、Eg52が禁制帯を示す。
銅とタングステンの複合酸化物(CuWO4)は、AxByOzからなり、前記Aが遷移金属に属する銅であり、前記Bが遷移金属に属するタングステンである複合酸化物である。
銅とタングステンの複合酸化物(CuWO4)における上向きスピンのバンド構造では、図7(a)に示すように、−0.28eVより下方の領域Ev51が価電子帯となる一方、2.50eVより上方の領域Ec51が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg51の大きさが2.78eVとなった。
銅とタングステンの複合酸化物(CuWO4)における下向きスピンのバンド構造では、図7(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg52があることが明らかとなった。
さらに、銅とタングステンの複合酸化物(CuWO4)の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(e1、e2、e3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、26%であった。
よって、銅とタングステンの複合酸化物(CuWO4)が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(CuWO4)は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[銅とモリブデンの複合酸化物]
ここで、銅とタングステンの複合酸化物(CuMoO4)について、図8を用いて具体的に説明する。
図8は、CuMoO4のバンド構造を示す図であり、図8(a)に上向きスピンの場合を示し、図8(b)に下向きスピンの場合を示す。図8(a)および図8(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図8(a)および図8(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図8(a)にて、Ec61が伝導帯を示し、Ev61が価電子帯を示し、Eg61が禁制帯を示し、f1(太線),f2(1点鎖線),f3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図8(b)にて、Ec62が伝導帯を示し、Ev62が価電子帯を示し、Eg62が禁制帯を示す。
銅とモリブデンの複合酸化物(CuMoO4)は、AxByOzからなり、前記Aが遷移金属に属する銅であり、前記Bが遷移金属に属するモリブデンである複合酸化物である。
銅とモリブデンの複合酸化物(CuMoO4)における上向きスピンのバンド構造では、図8(a)に示すように、−0.05eVより下方の領域Ev61が価電子帯となる一方、2.40eVより上方の領域Ec61が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg61の大きさが2.45eVとなった。
銅とモリブデンの複合酸化物(CuMoO4)における下向きスピンのバンド構造では、図8(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg62があることが明らかとなった。
さらに、銅とモリブデンの複合酸化物(CuMoO4)の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(f1、f2、f3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、27%であった。
よって、銅とモリブデンの複合酸化物(CuMoO4)が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(CuMoO4)は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[銅とクロムの複合酸化物]
ここで、銅とクロムの複合酸化物(Cu(CrO2))について、図9を用いて具体的に説明する。
図9は、Cu(CrO2)のバンド構造を示す図であり、図9(a)に上向きスピンの場合を示し、図9(b)に下向きスピンの場合を示す。図9(a)および図9(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図9(a)および図9(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図9(a)にて、Ec71が伝導帯を示し、Ev71が価電子帯を示し、Eg71が禁制帯を示し、g1(太線),g2(1点鎖線),g3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図9(b)にて、Ec72が伝導帯を示し、Ev72が価電子帯を示し、Eg72が禁制帯を示す。
銅とクロムの複合酸化物(Cu(CrO2))は、AxByOzからなり、前記Aが遷移金属に属する銅であり、前記Bが遷移金属に属するクロムである複合酸化物である。
銅とクロムの複合酸化物(Cu(CrO2))における上向きスピンのバンド構造では、図9(a)に示すように、−0.50eVより下方の領域Ev71が価電子帯となる一方、2.00eVより上方の領域Ec71が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg71の大きさが2.50eVとなった。
銅とクロムの複合酸化物(Cu(CrO2))における下向きスピンのバンド構造では、図9(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg72があることが明らかとなった。
さらに、銅とクロムの複合酸化物(Cu(CrO2))の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(g1、g2、g3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、25%であった。
よって、銅とクロムの複合酸化物(Cu(CrO2))が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Cu(CrO2))は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[ビスマスとスズの複合酸化物]
ここで、ビスマスとスズの複合酸化物(Bi2(Sn27))について、図10を用いて具体的に説明する。
図10は、Bi2(Sn27)のバンド構造を示す図であり、図10(a)に上向きスピンの場合を示し、図10(b)に下向きスピンの場合を示す。図10(a)および図10(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図10(a)および図10(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図10(a)にて、Ec81が伝導帯を示し、Ev81が価電子帯を示し、Eg81が禁制帯を示し、h1(太線),h2(1点鎖線),h3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図10(b)にて、Ec82が伝導帯を示し、Ev82が価電子帯を示し、Eg82が禁制帯を示す。
ビスマスとスズの複合酸化物(Bi2(Sn27))は、AxByOzからなり、前記Aがビスマスであり、前記Bがスズである複合酸化物である。
ビスマスとスズの複合酸化物(Bi2(Sn27)における上向きスピンのバンド構造では、図10(a)に示すように、0.00eVより下方の領域Ev81が価電子帯となる一方、3.20eVより上方の領域Ec81が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg81の大きさが3.20eVとなった。
ビスマスとスズの複合酸化物(Bi2(Sn27)における下向きスピンのバンド構造では、図10(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg82があることが明らかとなった。
さらに、ビスマスとスズの複合酸化物(Bi2(Sn27)の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(h1、h2、h3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、29%であった。
よって、ビスマスとスズの複合酸化物(Bi2(Sn27)が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Bi2(Sn27)は、ペロブスカイト型を除く構造であり、パイロクロア型の構造であった。
[亜鉛とタングステンの複合酸化物]
ここで、亜鉛とタングステンの複合酸化物(Zn(WO4)について、図11を用いて具体的に説明する。
図11は、Zn(WO4)のバンド構造を示す図であり、図11(a)に上向きスピンの場合を示し、図11(b)に下向きスピンの場合を示す。図11(a)および図11(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図11(a)および図11(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図11(a)にて、Ec91が伝導帯を示し、Ev91が価電子帯を示し、Eg91が禁制帯を示し、i1(太線),i2(1点鎖線),i3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図11(b)にて、Ec92が伝導帯を示し、Ev92が価電子帯を示し、Eg92が禁制帯を示す。
亜鉛とタングステンの複合酸化物(Zn(WO4))は、AxByOzからなり、前記Aが亜鉛であり、前記Bが遷移金属に属するタングステンである複合酸化物である。
亜鉛とタングステンの複合酸化物(Zn(WO4))における上向きスピンのバンド構造では、図11(a)に示すように、−3.00eVより下方の領域Ev91が価電子帯となる一方、0.62eVより上方の領域Ec91が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg91の大きさが3.62eVとなった。
亜鉛とタングステンの複合酸化物(Zn(WO4))における下向きスピンのバンド構造では、図11(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg92があることが明らかとなった。
さらに、亜鉛とタングステンの複合酸化物(Zn(WO4))の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(i1、i2、i3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、24%であった。
よって、亜鉛とタングステンの複合酸化物(Zn(WO4))が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Zn(WO4))は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[テルビウムとルテニウムの複合酸化物]
ここで、テルビウムとルテニウムの複合酸化物(Tb2(Ru27))について、図12を用いて具体的に説明する。
図12は、Tb2(Ru27)のバンド構造を示す図であり、図12(a)に上向きスピンの場合を示し、図12(b)に下向きスピンの場合を示す。図12(a)および図12(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図12(a)および図12(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図12(a)にて、Ec101が伝導帯を示し、Ev101が価電子帯を示し、Eg101が禁制帯を示し、j1(太線),j2(1点鎖線),j3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図12(b)にて、Ec102が伝導帯を示し、Ev102が価電子帯を示し、Eg102が禁制帯を示す。
テルビウムとルテニウムの複合酸化物(Tb2(Ru27))は、AxByOzからなり、前記Aが遷移金属に属するテルビウムであり、前記Bが遷移金属に属するルテニウムである複合酸化物である。
テルビウムとルテニウムの複合酸化物(Tb2(Ru27))における上向きスピンのバンド構造では、図12(a)に示すように、0.00eVより下方の領域Ev101が価電子帯となる一方、2.27eVより上方の領域Ec101が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg101の大きさが2.27eVとなった。
テルビウムとルテニウムの複合酸化物(Tb2(Ru27))における下向きスピンのバンド構造では、図12(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg102があることが明らかとなった。
さらに、テルビウムとルテニウムの複合酸化物(Tb2(Ru27))の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(j1、j2、j3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、25%であった。
よって、テルビウムとルテニウムの複合酸化物(Tb2(Ru27))が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Tb2(Ru27))は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[ストロンチウムと鉛の複合酸化物]
ここで、ストロンチウムと鉛の複合酸化物(Sr2PbO4)について、図13を用いて具体的に説明する。
図13は、Sr2PbO4のバンド構造を示す図であり、図13(a)に上向きスピンの場合を示し、図13(b)に下向きスピンの場合を示す。図13(a)および図13(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図13(a)および図13(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図13(a)にて、Ec111が伝導帯を示し、Ev111が価電子帯を示し、Eg111が禁制帯を示し、k1(太線),k2(1点鎖線),k3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図13(b)にて、Ec112が伝導帯を示し、Ev112が価電子帯を示し、Eg112が禁制帯を示す。
ストロンチウムと鉛の複合酸化物(Sr2PbO4)は、AxByOzからなり、前記Aがストロンチウムであり、前記Bが鉛である複合酸化物である。
ストロンチウムと鉛の複合酸化物(Sr2PbO4)における上向きスピンのバンド構造では、図13(a)に示すように、0.00eVより下方の領域Ev111が価電子帯となる一方、2.63eVより上方の領域Ec111が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg111の大きさが2.63eVとなった。
ストロンチウムと鉛の複合酸化物(Sr2PbO4)における下向きスピンのバンド構造では、図13(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg112があることが明らかとなった。
さらに、ストロンチウムと鉛の複合酸化物(Sr2PbO4)の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(k1、k2、k3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、38%であった。
よって、ストロンチウムと鉛の複合酸化物(Sr2PbO4)が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Sr2PbO4)は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[ストロンチウムとガドリニウムとロジウムの複合酸化物]
ここで、ストロンチウムとガドリニウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Gd(RhO6))について、図14を用いて具体的に説明する。
図14は、Sr3Gd(RhO6)のバンド構造を示す図であり、図14(a)に上向きスピンの場合を示し、図14(b)に下向きスピンの場合を示す。図14(a)および図14(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図14(a)および図14(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図14(a)にて、Ec121が伝導帯を示し、Ev121が価電子帯を示し、Eg121が禁制帯を示し、l1(太線),l2(1点鎖線),l3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図14(b)にて、Ec122が伝導帯を示し、Ev122が価電子帯を示し、Eg122が禁制帯を示す。
ストロンチウムとガドリニウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Gd(RhO6))は、MtAxByOzからなり、前記Aがストロンチウムであり、前記Bが遷移金属に属するガドリニウムであり、前記Mが遷移金属に属するロジウムである複合酸化物である。
ストロンチウムとガドリニウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Gd(RhO6))における上向きスピンのバンド構造では、図14(a)に示すように、−0.21eVより下方の領域Ev121が価電子帯となる一方、2.00eVより上方の領域Ec121が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg121の大きさが2.21eVとなった。
ストロンチウムとガドリニウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Gd(RhO6))における下向きスピンのバンド構造では、図14(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg122があることが明らかとなった。
さらに、ストロンチウムとガドリニウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Gd(RhO6))の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(l1、l2、l3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、30%であった。
よって、ストロンチウムとガドリニウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Gd(RhO6))が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Sr3Gd(RhO6))は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[ストロンチウムとスカンジウムとロジウムの複合酸化物]
ここで、ストロンチウムとスカンジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Sc(RhO6))について、図15を用いて具体的に説明する。
図15は、Sr3Sc(RhO6)のバンド構造を示す図であり、図15(a)に上向きスピンの場合を示し、図15(b)に下向きスピンの場合を示す。図15(a)および図15(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図15(a)および図15(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図15(a)にて、Ec131が伝導帯を示し、Ev131が価電子帯を示し、Eg131が禁制帯を示し、m1(太線),m2(1点鎖線),m3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図15(b)にて、Ec132が伝導帯を示し、Ev132が価電子帯を示し、Eg132が禁制帯を示す。
ストロンチウムとスカンジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Sc(RhO6))は、MtAxByOzからなり、前記Aがストロンチウムであり、前記Bが遷移金属に属するスカンジウムであり、前記Mが遷移金属に属するロジウムである複合酸化物である。
ストロンチウムとスカンジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Sc(RhO6))における上向きスピンのバンド構造では、図15(a)に示すように、−0.20eVより下方の領域Ev131が価電子帯となる一方、2.26eVより上方の領域Ec131が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg131の大きさが2.46eVとなった。
ストロンチウムとスカンジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Sc(RhO6))における下向きスピンのバンド構造では、図15(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg132があることが明らかとなった。
さらに、ストロンチウムとスカンジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Sc(RhO6))の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(m1、m2、m3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、31%であった。
よって、ストロンチウムとスカンジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Sc(RhO6))が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Sr3Sc(RhO6))は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[ストロンチウムとインジウムとロジウムの複合酸化物]
ここで、ストロンチウムとインジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3In(RhO6))について、図16を用いて具体的に説明する。
図16は、Sr3In(RhO6)のバンド構造を示す図であり、図16(a)に上向きスピンの場合を示し、図16(b)に下向きスピンの場合を示す。図16(a)および図16(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図16(a)および図16(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図16(a)にて、Ec141が伝導帯を示し、Ev141が価電子帯を示し、Eg141が禁制帯を示し、n1(太線),n2(1点鎖線),n3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図16(b)にて、Ec142が伝導帯を示し、Ev142が価電子帯を示し、Eg142が禁制帯を示す。
ストロンチウムとインジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3In(RhO6)))は、MtAxByOzからなり、前記Aがストロンチウムであり、前記Bがインジウムであり、前記Mが遷移金属に属するロジウムである複合酸化物である。
ストロンチウムとインジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3In(RhO6))における上向きスピンのバンド構造では、図16(a)に示すように、−0.25eVより下方の領域Ev141が価電子帯となる一方、2.00eVより上方の領域Ec141が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg141の大きさが2.25eVとなった。
ストロンチウムとインジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3In(RhO6))における下向きスピンのバンド構造では、図16(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg142があることが明らかとなった。
さらに、ストロンチウムとインジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3In(RhO6))の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(n1、n2、n3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、31%であった。
よって、ストロンチウムとインジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3In(RhO6))が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Sr3In(RhO6))は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[ストロンチウムとイリジウムの複合酸化物]
ここで、ストロンチウムとイリジウムの複合酸化物(Sr4IrO6)について、図17を用いて具体的に説明する。
図17は、Sr4IrO6のバンド構造を示す図であり、図17(a)に上向きスピンの場合を示し、図17(b)に下向きスピンの場合を示す。図17(a)および図17(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図17(a)および図17(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図17(a)にて、Ec151が伝導帯を示し、Ev151が価電子帯を示し、Eg151が禁制帯を示し、p1(太線),p2(1点鎖線),p3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図17(b)にて、Ec152が伝導帯を示し、Ev152が価電子帯を示し、Eg152が禁制帯を示す。
ストロンチウムとイリジウムの複合酸化物(Sr4IrO6)は、AxByOzからなり、前記Aがストロンチウムであり、前記Bが遷移金属に属するイリジウムである複合酸化物である。
ストロンチウムとイリジウムの複合酸化物(Sr4IrO6)における上向きスピンのバンド構造では、図17(a)に示すように、−0.21eVより下方の領域Ev151が価電子帯となる一方、2.60eVより上方の領域Ec151が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg151の大きさが2.81eVとなった。
ストロンチウムとイリジウムの複合酸化物(Sr4IrO6)における下向きスピンのバンド構造では、図17(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg152があることが明らかとなった。
さらに、ストロンチウムとイリジウムの複合酸化物(Sr4IrO6)の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(p1、p2、p3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、24%であった。
よって、ストロンチウムとイリジウムの複合酸化物(Sr4IrO6)が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Sr4IrO6)は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[ストロンチウムとニッケルとイリジウムの複合酸化物]
ここで、ストロンチウムとニッケルとイリジウムの複合酸化物(Sr3Ni(IrO6))について、図18を用いて具体的に説明する。
図18は、Sr3Ni(IrO6)のバンド構造を示す図であり、図18(a)に上向きスピンの場合を示し、図18(b)に下向きスピンの場合を示す。図18(a)および図18(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図18(a)および図18(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図18(a)にて、Ec161が伝導帯を示し、Ev161が価電子帯を示し、Eg161が禁制帯を示し、q1(太線),q2(1点鎖線),q3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図18(b)にて、Ec162が伝導帯を示し、Ev162が価電子帯を示し、Eg162が禁制帯を示す。
ストロンチウムとニッケルとイリジウムの複合酸化物(Sr3Ni(IrO6))は、MtAxByOzからなり、前記Aがストロンチウムであり、前記Bが遷移金属に属するニッケルであり、前記Mが遷移金属に属するイリジウムである複合酸化物である。
ストロンチウムとニッケルとイリジウムの複合酸化物(Sr3Ni(IrO6))における上向きスピンのバンド構造では、図18(a)に示すように、−0.13eVより下方の領域Ev161が価電子帯となる一方、2.90eVより上方の領域Ec161が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg161の大きさが3.03eVとなった。
ストロンチウムとニッケルとイリジウムの複合酸化物(Sr3Ni(IrO6))における下向きスピンのバンド構造では、図18(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg162があることが明らかとなった。
さらに、ストロンチウムとニッケルとイリジウムの複合酸化物(Sr3Ni(IrO6))の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(q1、q2、q3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、29%であった。
よって、ストロンチウムとニッケルとイリジウムの複合酸化物(Sr3Ni(IrO6))が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Sr3Ni(IrO6))は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[ストロンチウムと金の複合酸化物]
ここで、ストロンチウムと金の複合酸化物(Sr(Au24))について、図19を用いて具体的に説明する。
図19は、Sr(Au24)のバンド構造を示す図であり、図19(a)に上向きスピンの場合を示し、図19(b)に下向きスピンの場合を示す。図19(a)および図19(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図19(a)および図19(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図19(a)にて、Ec171が伝導帯を示し、Ev171が価電子帯を示し、Eg171が禁制帯を示し、r1(太線),r2(1点鎖線),r3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図19(b)にて、Ec172が伝導帯を示し、Ev172が価電子帯を示し、Eg172が禁制帯を示す。
ストロンチウムと金の複合酸化物(Sr(Au24))は、AxByOzからなり、前記Aがストロンチウムであり、前記Bが遷移金属に属する金である複合酸化物である。
ストロンチウムと金の複合酸化物(Sr(Au24))における上向きスピンのバンド構造では、図19(a)に示すように、−0.13eVより下方の領域Ev171が価電子帯となる一方、2.00eVより上方の領域Ec171が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg171の大きさが2.13eVとなった。
ストロンチウムと金の複合酸化物(Sr(Au24))における下向きスピンのバンド構造では、図19(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg172があることが明らかとなった。
さらに、ストロンチウムと金の複合酸化物(Sr(Au24))の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(r1、r2、r3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、42%であった。
よって、ストロンチウムと金の複合酸化物(Sr(Au24))が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Sr(Au24))は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[バリウムとタングステンとバナジウムの複合酸化物]
ここで、バリウムとタングステンとバナジウムの複合酸化物(Ba3WVO8.5)について、図20を用いて具体的に説明する。
図20は、Ba3WVO8.5のバンド構造を示す図であり、図20(a)に上向きスピンの場合を示し、図20(b)に下向きスピンの場合を示す。図20(a)および図20(b)に示すバンド構造は、バンド計算(例えば、第一原理バンド計算)により求められたバンド構造である。図20(a)および図20(b)にて、縦軸はエネルギー状態を示し、横軸は各電子殻を示す。図20(a)にて、Ec181が伝導帯を示し、Ev181が価電子帯を示し、Eg181が禁制帯を示し、s1(太線),s2(1点鎖線),s3(点線)が、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)におけるエネルギー順位の低い3つの電子状態を示す。図20(b)にて、Ec182が伝導帯を示し、Ev182が価電子帯を示し、Eg182が禁制帯を示す。
バリウムとタングステンとバナジウムの複合酸化物(Ba3WVO8.5)は、MtAxByOzからなり、前記Aがバリウムであり、前記Bが遷移金属に属するタングステンであり、前記Mが遷移金属に属するバナジウムである複合酸化物である。
バリウムとタングステンとバナジウムの複合酸化物(Ba3WVO8.5)における上向きスピンのバンド構造では、図20(a)に示すように、0.00eVより下方の領域Ev181が価電子帯となる一方、2.25eVより上方の領域Ec181が伝導帯となった。これらの領域の間の禁制帯(バンドギャップ)Eg181の大きさが2.25eVとなった。
バリウムとタングステンとバナジウムの複合酸化物(Ba3WVO8.5)における下向きスピンのバンド構造では、図20(b)に示すように、禁制帯(バンドギャップ)Eg182があることが明らかとなった。
さらに、バリウムとタングステンとバナジウムの複合酸化物(Ba3WVO8.5)の上向きスピンのバンド構造における伝導帯バンドの酸素軌道含有率は、フェルミレベルの直上(伝導帯バンド)の3つの状態(s1、s2、s3)を平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化したものであり、28%であった。
よって、バリウムとタングステンとバナジウムの複合酸化物(Ba3WVO8.5)が、図1に示すように、バンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下であると共に、下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である範囲を示す領域Aの範囲内にあると確認された。この複合酸化物(Ba3WVO8.5)は、ペロブスカイト型を除く構造であった。
[複合酸化物の調製方法]
上述した複合酸化物(ビスマスとクロムと銀の複合酸化物、ビスマスとモリブデンの複合酸化物、ニッケルとタングステンの複合酸化物、イットリウムとマンガンの複合酸化物、銅とタングステンの複合酸化物、銅とモリブデンの複合酸化物、銅とクロムの複合酸化物、ビスマスとスズの複合酸化物、亜鉛とタングステンの複合酸化物、テルビウムとルテニウムの複合酸化物、ストロンチウムと鉛、ストロンチウムとガドリニウムとロジウムの複合酸化物、ストロンチウムとスカンジウムとロジウムの複合酸化物、ストロンチウムとインジウムとロジウムの複合酸化物、ストロンチウムとイリジウムの複合酸化物、ストロンチウムとニッケルとイリジウムの複合酸化物、ストロンチウムと金の複合酸化物、バリウムとタングステンとバナジウムの複合酸化物)は、各金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物または各種錯塩などを所定の割合で混合し、最終的に600〜1000℃、好ましくは700〜900℃で2〜10時間程度焼成して調製することができる。
上記各金属元素の塩の混合方法としては、それぞれの金属塩を固体状態で混合する方法、それぞれの金属塩の溶液(水溶液など)を混合した後に蒸発乾固する方法、それぞれの金属塩の混合溶液をアンモニア水等のアルカリ溶液で加水分解する共沈法などを用いることができる。具体的には、ボールミル混合による固相法、共沈法、熱分解法などが採用できる。
例えば、ビスマスとクロムと銀の複合酸化物(AgBi(Cr272)、ビスマスとモリブデンの複合酸化物(Bi2MoO6)、ニッケルとタングステンの複合酸化物(NiWO4)、イットリウムとマンガンの複合酸化物(Y2Mn27)、銅とタングステンの複合酸化物(CuWO4)、銅とモリブデンの複合酸化物(CuMoO4)、銅とクロムの複合酸化物(Cu(CrO2))、ビスマスとスズの複合酸化物(Bi2(Sn27))、亜鉛とタングステンの複合酸化物(Zn(WO4))、テルビウムとルテニウムの複合酸化物(Tb2(Ru27))、ストロンチウムと鉛(Sr2PbO4)、ストロンチウムとガドリニウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Gd(RhO6))、ストロンチウムとスカンジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3Sc(RhO6))、ストロンチウムとインジウムとロジウムの複合酸化物(Sr3In(RhO6))、ストロンチウムとイリジウムの複合酸化物(Sr4IrO6)、ストロンチウムとニッケルとイリジウムの複合酸化物(Sr3Ni(IrO6))、ストロンチウムと金の複合酸化物(Sr(Au24))、バリウムとタングステンとバナジウムの複合酸化物(Ba3WVO8.5)を調製するに当たり、原料物質として、塩化ビスマス、硝酸モリブデン、硝酸ニッケル、タングステン酸アンモニウム、塩化イッテルビウム、硝酸マンガン、硝酸銀、硝酸クロム、硝酸銅、硝酸スズ、硝酸亜鉛、硝酸テルビウム、塩化ルテニウム、硝酸ストロンチウム、硝酸鉛、硝酸ガドリニウム、硝酸ロジウム、塩化スカンジウム、硝酸インジウム、塩化イリジウム、塩化金、塩化バリウム、塩化バナジウムなど金属塩水溶液をそれぞれ用意する。これらの原料物質を量論で得られるような割合で仮混合する。アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン等を水に溶かすことによりアルカリ水溶液を調整し、この調整した溶液に上述した金属塩水溶液を混合する。そして、水酸化物、水和物からなる沈殿物の生成した懸濁液を一晩放置したのち、沈殿物を水洗し、250℃で焼成することにより、目的とする複合酸化物を得ることができる。
したがって、本実施形態に係る燃料電池用電極触媒の選定方法によれば、複合酸化物の上向きスピンおよび下向きスピンのバンド構造を科学計算によりそれぞれ求め、前記上向きスピンおよび下向きスピンのバンド構造に基づき、上向きスピンおよび下向きスピンのバンドギャップをそれぞれ算出すると共に、前記上向きスピンのバンド構造におけるフェルミレベルの直上にてエネルギー順位の低い3つの電子状態について平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化した伝導帯バンドの酸素軌道含有率を算出し、前記上向きスピンのバンドギャップ、前記下向きスピンのバンドギャップ、および前記伝導帯バンドの酸素軌道含有率に基づき、候補となる複合酸化物を選定することにより、白金代替触媒であり、酸素還元能を白金系触媒の場合と比べて同等に発現することができる燃料電池用電極触媒を高精度に予測して、当該酸素還元能を発現する物質を選考する労力を軽減することができる。
さらに、既知である白金系触媒のバンド構造を科学計算により求め、当該バンド構造に基づき、前記白金系触媒のバンドギャップおよび伝導帯バンドの酸素軌道含有率を算出し、前記白金系触媒の前記バンドギャップおよび前記伝導帯バンドの酸素軌道含有率に基づき、前記候補となる複合酸化物を選定することにより、白金系触媒におけるバンドギャップと伝導帯バンドの酸素軌道含有率の分布を求め、この分布に基づき候補となる複合酸化物を選定することができる。よって、白金代替触媒であり、酸素還元能を白金系触媒の場合と比べて同等に発現することができる燃料電池用電極触媒をより一層高精度に予測して、当該酸素還元能を発現する物質を選考する労力を軽減することができる。
本発明に係る燃料電池用電極触媒の効果を確認するために行った確認試験を以下に説明するが、本発明は以下に説明する確認試験のみに限定されるものではない。
[試験体の作製]
燃料電池用電極触媒(複合酸化物)の組成と酸素還元開始電位との関係を確認するために、上述した実施形態で説明した複合酸化物の調製方法に基づいて、Bi2MoO6の複合酸化物と、NiWO4の複合酸化物と、Y2Mn27の複合酸化物とを作製した。なお、参照例として、Cの基材にPtを担持したもの(参照試験体1)も作製した。
作製した複合酸化物(Bi2MoO6)を導電剤炭素と1対1の割合で混合し、混合物1gに対してパラフィン2.5マイクロリットルを加えて電極ペースト(試験体1)を得た。また、作製した複合酸化物(NiWO4)を導電剤炭素と1対1の割合で混合し、混合物1gに対してパラフィン2.5マイクロリットルを加えて電極ペースト(試験体2)を得た。作製した複合酸化物(Y2Mn27)を導電剤炭素と1対1の割合で混合し、混合物1gに対してパラフィン2.5マイクロリットルを加えて電極ペースト(試験体3)を得た。
[試験方法]
本試験では、上述した試験体1〜3および参照試験体1に関し、酸素還元開始電位により酸素還元活性の評価を行った。具体的には、回転リングディスク電極にペースト(試験体1)を塗布し、電解液には0.5M硫酸水溶液を用いた。窒素ガスを通気しながら、水素電極に対する電位を1〜0Vに変化させて還元電流を測定し、次いで酸素ガスを通気しながら同様の測定を行った。複合酸化物1g当たりの電流値の差が、窒素と酸素とで5Aを超えるところを、酸素還元開始電位とした。また、試験体2,3および参照試験体1についても、前述した試験体1の場合と同様の手法にてそれぞれ試験を行った。
[試験結果]
上述した試験結果について下記表1に示す。
Figure 2010170998
上記表1に示すように、ビスマスとモリブデンの複合酸化物(Bi2MoO6)からなる試験体1では、酸素還元開始電位が0.7Vであることが明らかとなった。ニッケルとタングステンの複合酸化物(NiWO4)からなる試験体2では、酸素還元開始電位が0.6Vであることが明らかとなった。イットリウムとマンガンの複合酸化物(Y2Mn27)からなる試験体3では、酸素還元開始電位が0.8Vであることが明らかとなった。
また、白金を炭素に担持した白金系触媒である参照試験体1(Pt/C)では、酸素還元開始電位が0.9Vであることが明らかとなった。
すなわち、試験体1(Bi2MoO6)では、酸素還元開始電位が参照試験体1(Pt/C)の場合と比べて同等になることが確認された。試験体2(NiWO4)では、酸素還元開始電位が参照試験体1(Pt/C)の場合と比べて同等になることが確認された。試験体3(Y2Mn27)では、酸素還元開始電位が参照試験体1(Pt/C)の場合と比べて同等になることが確認された。
したがって、複合酸化物の試験体1,2,3によれば、白金代替触媒であって、酸素還元開始電位を参照試験体1(Pt/C)の場合と比べて同等にすることができることが確認された。
本発明に係る燃料電池用電極触媒およびその選定方法は、白金代替触媒であって、酸素還元能を白金系触媒の場合と同等に発現でき、このような燃料電池用電極触媒を高精度に予測して酸素還元能を発現する物質を選考する労力を軽減できるため、燃料電池製造産業などにおいて、極めて有益に利用することができる。

Claims (7)

  1. 水素イオンおよび電子と酸素の反応を促進する複合酸化物を有する燃料電池用電極触媒であって、
    前記複合酸化物がAxByOzまたはMtAxByOzであり、
    前記Aが遷移金属、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、またはビスマスのいずれか一つであり、
    前記Bが遷移金属、インジウム、スズ、または鉛のいずれか一つであり、
    前記Mが遷移金属であり、
    前記AxByOzまたは前記MtAxByOzの上向きスピンのバンドギャップが1.30eV以上3.65eV以下の範囲であると共に、前記AxByOzまたは前記MtAxByOzの下向きスピンにバンドギャップがあり、且つ、
    前記AxByOzまたは前記MtAxByOzの上向きスピンのバンド構造におけるフェルミレベルの直上にてエネルギー順位の低い3つの電子状態について平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化した伝導帯バンドの酸素軌道含有率が24%以上である
    ことを特徴とする燃料電池用電極触媒。
  2. 請求項1に記載された燃料電池用電極触媒であって、
    前記複合酸化物が前記AxByOzであり、
    前記Aと前記Bが、ビスマスとモリブデン、ニッケルとタングステン、イットリウムとマンガン、銅とタングステン、銅とモリブデン、銅とクロム、ビスマスとスズ、亜鉛とタングステン、テルビウムとルテニウム、ストロンチウムと鉛、ストロンチウムとイリジウム、ストロンチウムと金の組み合わせの何れかである
    ことを特徴とする燃料電池用電極触媒。
  3. 請求項1に記載された燃料電池用電極触媒であって、
    前記複合酸化物が前記MtAxByOzであり、
    前記Aと前記Bと前記Mが、ビスマスとクロムと銀、ストロンチウムとガドリニウムとロジウム、ストロンチウムとスカンジウムとロジウム、ストロンチウムとインジウムとロジウム、ストロンチウムとニッケルとイリジウム、バリウムとタングステンとバナジウムの組み合わせの何れかである
    ことを特徴とする燃料電池用電極触媒。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載された燃料電池用電極触媒であって、
    前記複合酸化物がペロブスカイト型を除く構造である
    ことを特徴とする燃料電池用電極触媒。
  5. 請求項2に記載された燃料電池用電極触媒であって、
    前記Aと前記Bが、イットリウムとマンガン、またはビスマスとスズの組み合わせであり、
    前記AxByOzがパイロクロア構造である
    ことを特徴とする燃料電池用電極触媒。
  6. 水素イオンおよび電子と酸素の反応を促進する複合酸化物からなる燃料電池用電極触媒の候補を選定する燃料電池用電極触媒の選定方法であって、
    前記複合酸化物の上向きスピンおよび下向きスピンのバンド構造を科学計算によりそれぞれ求め、
    前記上向きスピンおよび下向きスピンのバンド構造に基づき、上向きスピンおよび下向きスピンのバンドギャップをそれぞれ算出すると共に、
    前記上向きスピンのバンド構造におけるフェルミレベルの直上にてエネルギー順位の低い3つの電子状態について平均して酸素原子の電子状態への寄与率を数値化した伝導帯バンドの酸素軌道含有率を算出し、
    前記上向きスピンのバンドギャップ、前記下向きスピンのバンドギャップ、および前記伝導帯バンドの酸素軌道含有率に基づき、候補となる複合酸化物を選定する
    ことを特徴とする燃料電池用電極触媒の選定方法。
  7. 請求項6に記載された燃料電池用電極触媒の選定方法であって、
    既知である白金系触媒のバンド構造を科学計算により求め、
    当該バンド構造に基づき、前記白金系触媒のバンドギャップおよび伝導帯バンドの酸素軌道含有率を算出し、
    前記白金系触媒の前記バンドギャップおよび前記伝導帯バンドの酸素軌道含有率に基づき、前記候補となる複合酸化物を選定する
    ことを特徴とする燃料電池用電極触媒の選定方法。
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