JP2010161212A - 半導体発光素子用ウェハの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体発光素子製造時のダイシング工程における裏面チッピングの発生を抑制することができる半導体発光素子用ウェハの製造方法を提供する。
【解決手段】貼り合わせの工程および出発基板1除去後に、ダイシング加工により研削を受ける研削領域のうち、支持基板10とは反対側から、ダブルへテロ構造を含む積層構造14、金属光反射層9、第1金属接合層11aの少なくとも一部まで、もしくは第2金属接合層11bの少なくとも一部までウェットエッチングまたはドライエッチングによって除去する方法である。
【選択図】図1
【解決手段】貼り合わせの工程および出発基板1除去後に、ダイシング加工により研削を受ける研削領域のうち、支持基板10とは反対側から、ダブルへテロ構造を含む積層構造14、金属光反射層9、第1金属接合層11aの少なくとも一部まで、もしくは第2金属接合層11bの少なくとも一部までウェットエッチングまたはドライエッチングによって除去する方法である。
【選択図】図1
Description
本発明は、高出力の半導体発光素子作製時の歩留まりを向上できる半導体発光素子用ウェハの製造方法に関するものである。
従来、半導体発光素子である発光ダイオード(LED)は、近年、GaN系やAlGaInP系の高品質結晶を有機金属成長(MOVPE:Metal−Organic Vapor Phase Epitaxy)法で成長できるようになったことから、青色、緑色、橙色、黄色、赤色の高輝度LEDが製作できるようになった。
そして、LEDの高輝度化に伴いその用途は、自動車のブレーキランプや液晶ディスプレイのバックライトなどへ広がり、その需要は年々増加している。
現在、MOVPE法によって高品質の結晶が成長可能となってから、発光素子の内部効率は理論値限界値に近づきつつある。しかし、発光素子からの光取り出し効率はまだまだ低く、光取り出し効率を向上することが重要となっている。
例えば、高輝度赤色LEDはAlGaInP系の材料で形成され、導電性のGaAs基板上に格子整合する組成のAlGaInP系の材料からなるn型AlGaInP層とp型AlGaInP層とそれらに挟まれたAlGaInPまたはGaInPからなる発光層(活性層)を有するダブルへテロ構造となっている。
しかしながら、GaAs基板のバンドギャップは発光層のバンドギャップよりも狭いために、発光層からの光の多くがGaAs基板に吸収され、光取り出し効率が著しく低下する。
発光層とGaAs基板との間に、屈折率の異なる半導体層からなる多層反射膜構造を形成することによってGaAs基板での光の吸収を低減し、光取り出し効率を向上させる方法もある。
しかし、この方法では、多層反射膜構造へ限定された入射角を持つ光しか反射することができない。
そこで、AlGaInP系の材料からなるダブルへテロ構造を反射率の高いAg、Au、Al、Cuなどの金属膜(金属反射層)を介して、GaAs基板よりも熱伝導率のよいSi支持基板に貼り付け、その後成長用に用いたGaAs基板を除去する方法が考案されている(特許文献1)。
この方法を用いた場合には、反射膜として金属膜を用いているため、反射膜への光の入射角を選ばずに高い反射が可能となる。
貼り替えに用いられるSiなどの支持基板材は、実装時のLED素子の厚みを考慮して、貼り替え工程当初から200μm前後の薄い支持基板材が利用できる。
しかし、上述した金属反射層をLED素子内に備えたLEDウェハは、ダイシング工程時にウェハの裏面に裏面チッピングと呼ばれる基板の欠けや割れが発生する。
これは主として、切削対象であるLEDウェハにAuなどの柔らかい金属材料が含まれていることにより、切削に用いられるダイヤモンドブレードのダイヤモンド砥粒が目詰まりを起こしてしまうことが大きな原因である。Auなどの難切削材を含む箇所は、化合物半導体層と支持基板とを接合している接合層、光反射層、そして裏面電極である。
その他の要因として、切削対象である支持基板材が200μm前後と薄く、ダイヤモンドブレードの自生発刃が起きにくいことも挙げられる。この裏面チッピングは金属材料を介して基板貼り替えを行ったLED素子特有の問題であり、LED素子作製の歩留まりにおいて問題となっている。
そこで、本発明の目的は、ダイシング工程における裏面チッピングの発生を抑制でき、かつ生産性のよい半導体発光素子用ウェハの製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するために創案された本発明は、ダイシング加工を施すことによって各個の素子に分割される半導体発光素子用ウェハであって、出発基板上に形成されたダブルへテロ構造を含む積層構造と、前記ダブルへテロ構造を含む積層構造の前記出発基板とは反対側に形成された金属光反射層と、前記金属光反射層の前記ダブルへテロ構造を含む積層構造とは反対側に形成された第1金属接合層と、支持基板上に形成された第2金属接合層と、前記ダブルへテロ構造を含む積層構造の前記金属光反射層とは反対側の面の一部と、前記支持基板の前記第2金属接合層とは反対側の面の一部に形成された電極とからなり、前記第1金属接合層と前記第2金属接合層を重ね合わせ、貼り合わせた後に前記出発基板を除去してなる半導体発光素子において、前記貼り合わせの工程および前記出発基板除去後に、前記ダイシング加工により研削を受ける研削領域のうち、前記支持基板とは反対側から、前記ダブルへテロ構造を含む積層構造、前記金属光反射層、前記第1金属接合層の少なくとも一部まで、もしくは第2金属接合層の少なくとも一部までウェットエッチングまたはドライエッチングによって除去される半導体発光素子用ウェハの製造方法である。
また、本発明は、出発基板上にダブルへテロ構造を含む積層構造を成長させる工程と、前記ダブルへテロ構造を含む積層構造に接し前記出発基板とは反対側に金属光反射層を形成する工程と、前記金属光反射層に接し前記ダブルへテロ構造を含む積層構造とは反対側の面に第1金属接合層を形成する工程と、支持基板上に第2金属接合層を形成する工程と、前記第1金属接合層と前記第2金属接合層を重ね合わせ、貼り合わせ半導体発光素子用ウェハを形成する工程と、前記出発基板を除去し、前記ダブルへテロ構造を含む積層構造の前記金属光反射層とは反対側の面に接する面の一部と、前記支持基板の前記金属光反射層とは反対側の面に接する面の一部に電極を形成する工程とを含む半導体発光素子用ウェハの製造方法において、前記貼り合わせの工程および前記出発基板除去後に、ダイシング加工により研削を受ける研削領域のうち、前記支持基板とは反対側の面から、前記ダブルへテロ構造を含む積層構造、前記金属光反射層、前記第1金属接合層の少なくとも一部まで、もしくは前記第2金属接合層の少なくとも一部までウェットエッチングまたはドライエッチングによって除去される半導体発光素子用ウェハの製造方法である。
前記第1金属接合層および前記第2金属接合層はAuからなり、前記支持基板はSi、もしくはGeからなるとよい。
ここで、研削領域とは、ダイシングの際の切りしろを指し、ブレードの厚さに加え、研削時のブレードのぶれ、ウェハの機械的な損傷などを考慮した研削のための領域である。
本発明によれば、半導体発光素子製造時のダイシング工程における裏面チッピングの発生を抑制することができ、半導体発光素子の生産性を向上させることができる。
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
まず、本発明の半導体発光素子の製造方法により製作される半導体発光素子を図3により説明する。
図3に示すように、本発明により製作される半導体発光素子100は、支持基板10上に、拡散防止バリア層18、第2金属接合層11b、第1金属接合層11a、合金化バリア層16、金属光反射層9、界面電極8を有する誘電体膜15、コンタクト層7、クラッド層6、活性層5、クラッド層4、コンタクト層3が形成され、支持基板10側とコンタクト層3側にそれぞれ電極(裏面電極)13、電極(表面電極)12が形成され、表面電極12の表面にボンディングパッド電極17が形成されたものである。
さて、本発明に係る半導体発光素子の製造方法を図1および図2により説明する。本実施の形態では、AlGaInP系の化合物半導体を用いた半導体発光素子の場合について説明する。
図1(a)〜(f)および図2(a)〜(f)は、本発明の好適な一実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法を説明する図である。
まず、第1のステップで、図1(a)に示すように、出発基板1上にクラッド層4,6に挟まれた発光層(活性層)5を有する、ダブルへテロ構造を含む積層構造(化合物半導体層)14を成長させる。
具体的には、n型の出発基板1上に、n型のエッチングストップ層2、n型のコンタクト層3、n型のクラッド層4、活性層5、p型のクラッド層6、p型のコンタクト層7を形成する。
エッチングストップ層2は、後述するが出発基板1をエッチングして除去する際に、コンタクト層3が出発基板1と一緒にエッチング除去されないようにするためのものである。エッチングストップ層2としては、AlGaInPを用いるとよい。
コンタクト層3,7は、半導体と電極とを接続するための層である。コンタクト層3としてはGaAsを、コンタクト層7としてはGaPを用いるとよい。
クラッド層4,6、活性層5は、発光素子を構成する要部である。n型とp型のクラッド層4,6で活性層5を挟み、ダブルへテロ構造とすることで高い発光効率が得られる。クラッド層4,6、活性層5としてはAlGaInPを用いるとよい。同じ材料であるが、ドーピングの有無、種類によりn型、p型、活性層となる。
その後、上述の化合物半導体層14の表面に、図1(b)に示すように誘電体膜15を形成し、さらに、図1(c)に示すように誘電体膜15に界面電極8を設ける。誘電体膜15に界面電極8を設けるのは、誘電体膜15を挟むように形成されるコンタクト層7と金属光反射層9を電気的に接続するためである。
さらに、第2のステップとして、図1(d)に示すように、誘電体膜15の表面に金属光反射層9、合金化バリア層16、第1金属接合層11aを順次形成し、半導体発光素子用エピタキシャルウェハ基体21を得る。金属光反射層9は、活性層5で発生した光を光り取り出し面に反射して高い光り取り出し効率を得るためのものであり、合金化バリア層16は、半導体発光素子の腐食を防止するものである。
金属光反射層9としては、Alを用いるとよく、合金化バリア層16としてはTiを用いるとよい。
一方、第3のステップとして、図1(e)に示すように、支持基板10上に、オーミックコンタクト金属を兼ねる拡散防止バリア層を介して第2金属接合層11bを形成したものを準備する。上述の第1、第2金属接合層11a、11bは、合金化バリア層16と拡散防止バリア層18とを接合するためのものである。支持基板10としてはSiやGeを用いるとよく、第1、第2金属接合層11a、11bとしてはAuを用いるとよい。
そして、第4のステップとして、図1(f)に示すように、支持基板10の第2金属接合層11bを半導体発光素子用エピタキシャルウェハ基体21の第1金属接合層11aに貼り合わせて半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22を形成し、しかる後、第5のステップとして、図2(a)に示すように、出発基板1を除去し、さらに、図2(b)に示すように、出発基板1を除去した半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22の化合物半導体層16側に表面電極12を形成する。
その後、第6のステップとして、図2(c)に示すように、半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22のダイシング予定位置に沿って化合物半導体層14をエッチングで除去し、さらに、第7のステップとして、図2(d)に示すように、金属光反射層9、第1金属接合層11a、第2金属接合層11bにエッチングを施して除去し、支持基板10上にダイシングストリート19を形成する。
しかる後、図2(e)に示すように、半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22の支持基板10側に裏面電極13を形成し、さらに、図2(f)に示すように、表面電極12の表面にボンディングパッド電極17を形成する。
その後、第8のステップとして、ダイシングストリート19に沿って半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22をダイシング加工して素子化すると、図3に示す半導体発光素子100が得られる。
本発明の半導体発光素子の製造方法によれば、ダイシングストリート19における難切削材からなる層(第1、第2金属接合層11a、11b、金属光反射層9など)を予め除去することにより、ダイヤモンドブレードによってダイシングする際の切削力を高く維持することが可能となり、ダイシング工程における裏面チッピングの発生を大きく抑制できる。また、ダイシング加工が1ステップフルカット方式となるので、従来の2ステップ方式に比べて約2倍のするプットの向上が図れ、生産性の増加が可能となる。
上述の実施の形態においては、支持基板としてSiを用いたが、これに代えてGeからなる支持基板を用いてもよい。
上述の「エッチング」は、ウェットエッチングであってもドライエッチングであってもよい。
ダイシングストリート19を形成する際には、第2金属接合層11bまでエッチングする方が好ましいが、エッチングを第1金属接合層11aまで施し、第2金属接合層11bが残るようにしても、従来の製造方法に比べれば歩留まりや生産性を向上できる。
(実施例1)
実施例では、半導体発光素子として発光波長が630nmの赤色LEDの例で説明する。
実施例では、半導体発光素子として発光波長が630nmの赤色LEDの例で説明する。
まず、図1(a)に示すように、n型GaAsからなる出発基板1上に、有機金属成長(MOVPE)法でn型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるエッチングストップ層2、n型GaAsからなるコンタクト層3、n型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるクラッド層4、アンドープ(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる活性層5、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるクラッド層6、p型GaPからなるコンタクト層7を順次積層して化合物半導体層14を得た。
その後、図1(b)に示すように、化合物半導体層14をMOCVD装置から搬送した後、コンタクト層7の表面にプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置でSiO2膜からなる膜厚約110nmの誘電体膜15を成膜した。
そして更に、図1(c)に示すように、レジストやマスクアライナなどの一般的なフォトリソグラフィ装置、技術を駆使すると共に、純水で希釈したフッ酸エッチング液を用いて誘電体膜15に開口部を形成し、更にその開口部には真空蒸着法によって界面電極8を形成した。
界面電極8は、AuZn合金(金・亜鉛合金、Au:95mass%/Zn:5mass%)からなり、その膜厚は誘電体膜15と同様に約110nmである。また、界面電極8は後に形成する表面電極12直下以外の領域に配置されるように適宜設計した。配置法則は以下の通りである。
図4は、最終的に得られる半導体発光素子の上面図であり、図4に示すように、界面電極8は、複数の個体に分かれているのではなく、単一の形状(櫛型状)をしている。この櫛型状の界面電極8は、表面電極12の細線部の側方に位置し、櫛型状の界面電極8と表面電極12の細線部との距離は概ね一定の距離間隔に保たれている。ここでは界面電極8の線幅は、5μmに設定した。
その後、図1(d)に示すように、界面電極8が形成された誘電体膜15上に真空蒸着法にてAl(アルミニウム)からなる膜厚400nmの金属光反射層9、Pt(白金)からなる膜厚50nmの合金化バリア層16、Au(金)からなる膜厚500nmの第1金属接合層11aを順次形成した。これにより、半導体発光素子用エピタキシャルウェハ基体21を得た。
そして一方では、図1(e)に示すように、導電性p型Siからなる支持基板10の表面にTi(チタン)、Auを、それぞれ50nm、500nmの膜厚で形成した。Tiがオーミックコンタクト金属を兼ねる拡散防止バリア層18、Auが第2金属接合層11bとなる。このときの支持基板10の面方位に関しては特に不問であり、後に完成する半導体発光素子の特性を左右するものではない。
しかし、この支持基板10に対する電極の良好なオーミック性を得るために、抵抗率は0.01Ω・cm以下のものを用いるとよい。ここでは、抵抗率0.005Ω・cmのSiを用いた。
その後、図1(f)に示すように、上述のようにして作製した半導体発光素子用エピタキシャルウェハ基体21の第1金属接合層11aと支持基板10表面の第2金属接合層11bとが接合するように重ね合わせ、熱圧着法によって貼り合わせた。
貼り合わせは、圧力1.33Pa(0.01Torr)雰囲気で圧力を147Pa(15kgf/cm2)負荷した状態で、温度350℃に加熱し、更にその状態で30分間加熱保持することによって行った。これにより、半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22を得た。
そして、図2(a)に示すように、半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22の出発基板1をアンモニア水と過酸化水素水との混合エッチャントを用いてウェットエッチングにより除去してエッチングストップ層2を露出させた後、そのエッチングストップ層2を塩酸を用いてウェットエッチングにより除去し、コンタクト層3を露出させた。
その後、図2(b)に示すように、露出したコンタクト層3の表面にレジスト塗布装置やマスクアライナ、現像装置などを用い上述した形状の表面電極12のパターニングを行い、更には真空蒸着装置で電極構造を蒸着することで表面電極12を形成した。表面電極12の構造は、AuGe(金・ゲルマニウム合金)、Ni(ニッケル)、Auを、それぞれ50nm、10nm、300nmの膜厚で順次形成した。
表面電極12形成後、硫酸と過酸化水素水と水との混合エッチャントを用いて、先に形成した表面電極12をマスク材とし、表面電極12直下以外のコンタクト層3をウェットエッチングにて除去し、この選択性エッチングによってクラッド層4を露出させた。
更に、図2(c)に示すように、フォトリソグラフィによって半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22の表面に280μm角サイズのレジストマスク20を形成した。このレジストマスク20は、縦横に320μm周期で規則配列し、半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22全面に形成した。また、レジストマスク20は、各レジストマスク20の中心位置が半導体発光素子の表面電極12の中心位置にほぼ一致するようにパターニング配置した。
このレジストマスク20をエッチングマスクとして利用し、ドライエッチング装置によって露出しているクラッド層4からコンタクト層7まで深さ方向にほぼ垂直にエッチングして除去した。
このエッチングにより形成される溝がダイシングストリート19となる。最終的にダイシング加工を行い素子化する際のダイシング予定位置にダイシングストリート19が形成されるようにした。本実施例では、ダイシングストリート19の幅を30μmとした。
ここまでのエッチング工程によって、エッチング面の化合物半導体層14は除去され、誘電体膜15が露出した構造となる。このエッチング工程時、例えば、ドライエッチング装置には誘導結合方式プラズマ(ICP:Inductive Coupling Plasma)装置を用いることができる。一般的なRIE装置でもエッチングは可能であるが、ICP装置の方がRIE装置よりも更に高いプラズマ密度を発生させることが可能であり、化合物半導体のエッチングには好適である。
エッチングガスにはCl(塩素)ガスを用いることができるが、その他にSiCl4なども用いることができる。Inの分解反応にはある程度の基板温度が必要であり、積極的にウェハを加熱する機構が備わっているか、もしくはプレプラズマ処理などでウェハをプラズマ中に被曝させ、加熱させる方法などを応用することができる。ウェハ温度は約200℃に達するようになすのが、平滑なエッチング面を得るためにも、高速なエッチングをするためにも好ましい。
また、ドライエッチングのみならずウェットエッチングでもエッチング可能である。ここで示した化合物半導体層14の構造の場合、AlGaInPからなるクラッド層、活性層、またはGaInPを井戸層、AlGaInPを障壁層とした多重量子井戸構造の活性層といった材料は、塩素系のエッチング液で容易にエッチングすることができる。
ここで示した構造のように、GaPからなる層は面方位が(100)面の場合には容易にエッチングすることが難しい。しかし、例えば臭化水素と過酸化水素水との混合エッチング液や、塩酸と硝酸との混合エッチング液などを用いれば、これもまた同様にエッチングすることができる。
その後、図2(d)に示すように、露出した誘電体膜15を除去した。誘電体膜15の除去には上述した化合物半導体層14のエッチングのようにCF4ガスなどを用いたドライエッチングでも可能であるが、ここでは純水で希釈したフッ酸を用いてエッチングを行った。エッチングレートは200nm/min程度なので、1分程度で十分に除去が可能である。
誘電体膜15を除去すると、金属光反射層9であるAlが露出する。このAlはリン酸、酢酸、硝酸の混酸エッチング液で除去した。また、その他にも各薬品メーカーが既製品として販売しているAl用エッチング液などを用いることができる。
次に露出した第1金属接合層11a、第2金属接合層11bであるAuは、例えば関東化学株式会社製のAuエッチング液、AURUMシリーズなどを用いることができる。一般的に知られているエッチング液として、ヨウ素、ヨウ化アンモニウム、塩酸などの混合エッチング液でもエッチングできるが、エッチングレートの安定性や、高速なエッチングレートといった優れた特性を有するので上述のAuエッチング液が好適である。
このAuエッチング処理によって、支持基板10上に形成された拡散防止バリア層18であるTiが露出する。このTiは上述したようにフッ酸と硝酸の混合エッチング液によって除去できるが、TiはAuなどの難切削材に比べて硬く、ダイシングに用いるダイシングブレードの砥粒目詰まりの原因にならないことから、除去しなくても特に問題ない。
そして、図2(e)に示すように、これまでエッチングのマスクとして用いてきたレジストマスク20を除去した。レジストマスク20の除去は、アセトンなどの有機溶剤に含浸するか、酸素プラズマにて灰化処理をするか、RIE装置などのドライエッチングにて除去するといった方法を採ることができる。
本実施例では、化合物半導体層14のドライエッチング処理によってレジストマスク20の変質が生じたために、有機溶剤での除去が困難となっているので、CF4ガスを用いたドライエッチングによって除去した。
その後、支持基板10の表面に裏面電極13を真空蒸着法によって形成した。この裏面電極13は、Ti、Auをそれぞれ400nm、300nmの膜厚で順次形成した後、電極の合金化処理であるアロイ工程を、上下独立ヒータを備えたアロイ装置で行った。アロイの条件は、窒素ガス雰囲気下にて400℃まで加熱し、その状態で5分間熱処理することとした。半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22はグラファイト製のトレー上に載せ、それを下部ヒータの組み込まれた下部プレート上に設置した。
更にその後、図2(f)に示すように、再度フォトリソグラフィ工程と真空蒸着工程を行い、表面電極12のほぼ中央に重なるように、ボンディングパッド電極17を形成した。
ボンディングパッド電極17の形状は直径Φ100μmの単純な円形状であり、先の工程で形成した表面電極12の中央部に位置する円形状の部分と合致するように形成した。ボンディングパッド電極17は、表面電極12側からTi、Auで構成された構造であり、それぞれの膜厚は30nm、1000nmとした。
このボンディングパッド電極17形成後はアロイ処理を行わず、半導体発光素子ができあがるまでノンアロイ状態となっていることがワイヤボンディング工程を行う上で肝要である。
その後、上述のようにして形成された貼り替え型の半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22を、表面電極12の円形状のボンディングパッド電極17がほぼ中央に配置されるようにダイシング装置を用いて素子化を行った。
一般に、難切削材を多く含有するウェハをダイシングする場合には、ステップカット方式という複数回に分けてダイシングする方法が採られることがあるが、本発明に係る半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22の場合、1ステップのフルカットを採用した。
ダイサーは株式会社ディスコ製のDAD340という1軸式セミオートマチックダイシングソーを用いた。こちらには同じく株式会社ディスコ製のダイヤモンドブレードZH05−SD3000−N1−110−AAを装着して用いた。
このときのダイヤモンドブレードは、砥粒径が#3000、ダイヤモンド砥粒の集中度が110、刃先出し量が0.460mm、刃厚が18μmとした。切削位置は先の工程によって第1、第2金属接合層11a、11bを除去したダイシングストリート19の部分であり、第1、第2金属接合層11a、11bが除去されている領域は縦横に亘って幅40μmで形成される。
この領域の中心を狙ってダイシングを行うことで、切削部における金属接合層が無い状態での切削加工が実現できる。切削条件は、スピンドル回転数35000rpm、送り速度5mm/sec、切削深さ230μmで行った。
半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22の厚さは約210μmなので半導体発光素子用エピタキシャルウェハ22を完全にフルカットし、ダイシングシートへの切り込みが20μm程度の深さまで達するように切断した。このとき製作した半導体発光素子のチップピッチは設計上320μmであり、ダイシング後の個別の半導体発光素子チップのサイズは約300μm角のサイズとなった。
次に、作製した半導体発光素子100について評価した。
その結果、ダイシング工程、チップの転写工程、シートの拡張工程を経たチップの裏面チッピングの様子を確認したところ、ウェハ面内における裏面チッピングの発生頻度はおよそ10%に留まっており、そのどれもがチッピング幅25μm以内の極めて小さいチッピング量であった。また、ダイシング工程時にかかるスループットは従来のおよそ2倍となった。
(実施例2)
支持基板の材料をGeとした点のみを実施例1と変えて半導体発光素子を作製し、評価を行った。
支持基板の材料をGeとした点のみを実施例1と変えて半導体発光素子を作製し、評価を行った。
その結果、実施例1と同様の結果を得ることができ、支持基板がGeであっても本発明の効果が得られることが確認された。
(比較例1)
従来の方法で作製した半導体発光素子の評価を行った。
従来の方法で作製した半導体発光素子の評価を行った。
実施例1と異なる点は、形成した金属接合層に特に加工を行っていない点である。つまり、半導体発光素子用エピタキシャルウェハはダイシング切削位置も含めてほぼ全面で接合しており、素子化における切削位置の深さ方向における金属接合層のAuの厚さは1μmである。
この半導体発光素子用エピタキシャルウェハを実施例1と同様に素子化工程を経て裏面チッピングの検査をした結果、ウェハ面内における裏面チッピングの発生頻度はおよそ80%もあり、かつチッピング幅は最大で60μm、小さくとも25μm程度と比較的大きいものであった。
このように裏面チッピングの発生頻度が高く、かつその裏面チッピングの幅が大きい場合、半導体発光素子として充分な仕様を満足しない。従って、従来の方法で作製した場合には半導体発光素子の歩留まりを低下させるという問題がある。
(比較例2)
比較例1のダイシング加工条件を変えて作製した半導体発光素子の評価を行った。
比較例1のダイシング加工条件を変えて作製した半導体発光素子の評価を行った。
比較例2では、2ステップ方式のダイシング工程を採用し、2台のダイシング装置を用いた。1つ目のダイサーは株式会社ディスコ製のDAD522という1軸式セミオートマチックダイシングソーを用いた。こちらには同じく株式会社ディスコ製のダイヤモンドブレードZH05−SD3000−N1−110−BCを装着した。
このときのダイヤモンドブレードは、砥粒径が#3000、ダイヤモンド砥粒の集中度が110、刃先出し量がおよそ0.570mm、刃厚が29μmのものである。切削条件は、スピンドル回転数35000rpm、送り速度5mm/sec、切削深さ100μmで行った。半導体発光素子用エピタキシャルウェハの厚さは約210μmなので、ウェハの半分の深さまでハーフカットしている。
1軸目のハーフカットを終えた後、ワークを1つ目のダイサーから取り外し、次いで2つ目のダイサーにセットした。2つ目のダイサーも株式会社ディスコ製のDAD522という1軸式セミオートマチックダイシングソーを用いた。こちらには同じく株式会社ディスコ製のダイヤモンドブレードZH05−SD3000−N1−110−AAを装着した。
このときのダイヤモンドブレードは、砥粒径が#3000、ダイヤモンド砥粒の集中度が110、刃先出し量がおよそ0.440mm、刃厚が18μmのものである。切削条件は、スピンドル回転数30000rpm、送り速度5mm/sec、切削深さ230μmで行った。半導体発光素子用エピタキシャルウェハの厚さは約210μmなので、ウェハを完全にフルカットし、ダイシングシートへの切り込みが20μm程度の深さまで達するように切削した。
この半導体発光素子用エピタキシャルウェハを素子化工程を経て実施例1と同様に裏面チッピングの検査を行った結果、ウェハ面内における裏面チッピングの発生頻度およそ15%であり、チッピングの幅も最大でおよそ30μmであった。この結果は実施例1よりもやや悪い。
これは、実施例1が金属接合層の無い状態であり、かつ1度のダイシング加工中において、加工性のよいSiを200μm全て切削しながら進行するのに対し、比較例2では、2軸目のフルカット加工時には加工性のよいSiが100μmしか残っておらず、ブレードの自生発刃を促すことができないことに依存している。
さらに、ダイシング工程に要する時間は、実施例1と比較して2倍程度長くかかり、また、取り付けてあるブレードが異なるダイサーが2台必要となってしまうというデメリットが生じる。
上述の実施例1、2では、化合物半導体層側に形成する金属膜群をAlの金属光反射層、Ptの合金化バリア層、拡散防止バリア層、Auの金属接合層という構成としたが、これが例えば別の難切削材料であったり、あるいはバリア層が省かれる構造であったとしても、本発明の意図する所は切削位置における金属難切削材が多く含まれているものに対し、意図的に除去する施策によって施策部における金属難切削材の量を減らす、もしくは無くす構造とすることにあるのであり、本発明に示した構造を採れば同様の効果が得られることは容易推考である。
また、実施例1、2では発光波長630nmの赤色半導体発光素子のみを作製例としたが、その他の波長帯域の半導体発光素子であっても本発明と同様の構成、形態を有する半導体発光素子であれば、本発明の意図する効果が得られることは容易推考である。
さらに、実施例1、2における表面電極形状以外の異形状、例えば四角、菱形、多角形などの形状を有した表面電極であったり、または界面電極形状が実施例1、2に記載以外の形状をしていたとしても本発明の意図する効果が得られることは容易推考である。
また、実施例1、2では特定のダイシング装置、ダイシングブレードを用いた例を記載したが、これと異なる装置、ブレードを用いた場合においても、本発明の意図する主の部分については、同様の効果が得られることは容易推考である。
上述の実施例1、2では、ウェットエッチングまたはドライエッチングによって除去する幅(ダイシングストリート19の幅)は、30μmとしたが、これに限定されるものではなく、以下の条件を考慮して決定するとよい。
エッチングによって除去する幅は、ダイシングでの素子化切断幅に対し、5〜10μm程度広いことが好ましい。これは、ダイシングの素子切断の切削加工位置狙いの精度や、切断幅の公差の関係上、間違いなくAu膜のない領域を切断するためである。また、ウェットエッチングまたはドライエッチングによって除去する幅が狭すぎるとAu膜をダイシングで巻き込む可能性があり、裏面チッピングの原因となってしまい、逆に、広すぎるとウェハ1枚あたりから取得できるLEDチップの取得枚数が減ってしまうためである。
上述の実施例1、2および比較例1、2では、本発明の半導体発光素子を用いて、一例として発光波長が630nmの赤色LEDを作製したが、LED以外、つまりレーザーダイオードなどを作製することもできる。
9 金属光反射層
11a 第1金属接合層
11b 第2金属接合層
14 ダブルへテロ構造を含む積層構造(化合物半導体層)
19 ダイシングストリート
22 半導体発光素子用エピタキシャルウェハ
11a 第1金属接合層
11b 第2金属接合層
14 ダブルへテロ構造を含む積層構造(化合物半導体層)
19 ダイシングストリート
22 半導体発光素子用エピタキシャルウェハ
Claims (3)
- ダイシング加工を施すことによって各個の素子に分割される半導体発光素子用ウェハであって、
出発基板上に形成されたダブルへテロ構造を含む積層構造と、
前記ダブルへテロ構造を含む積層構造の前記出発基板とは反対側に形成された金属光反射層と、
前記金属光反射層の前記ダブルへテロ構造を含む積層構造とは反対側に形成された第1金属接合層と、
支持基板上に形成された第2金属接合層と、
前記ダブルへテロ構造を含む積層構造の前記金属光反射層とは反対側の面の一部と、前記支持基板の前記第2金属接合層とは反対側の面の一部に形成された電極とからなり、
前記第1金属接合層と前記第2金属接合層を重ね合わせ、貼り合わせた後に前記出発基板を除去してなる半導体発光素子において、
前記貼り合わせの工程および前記出発基板除去後に、前記ダイシング加工により研削を受ける研削領域のうち、前記支持基板とは反対側から、前記ダブルへテロ構造を含む積層構造、前記金属光反射層、前記第1金属接合層の少なくとも一部まで、もしくは第2金属接合層の少なくとも一部までウェットエッチングまたはドライエッチングによって除去されることを特徴とする半導体発光素子用ウェハの製造方法。 - 出発基板上にダブルへテロ構造を含む積層構造を成長させる工程と、
前記ダブルへテロ構造を含む積層構造に接し前記出発基板とは反対側に金属光反射層を形成する工程と、
前記金属光反射層に接し前記ダブルへテロ構造を含む積層構造とは反対側の面に第1金属接合層を形成する工程と、
支持基板上に第2金属接合層を形成する工程と、
前記第1金属接合層と前記第2金属接合層を重ね合わせ、貼り合わせ半導体発光素子用ウェハを形成する工程と、
前記出発基板を除去し、前記ダブルへテロ構造を含む積層構造の前記金属光反射層とは反対側の面に接する面の一部と、前記支持基板の前記金属光反射層とは反対側の面に接する面の一部に電極を形成する工程とを含む半導体発光素子用ウェハの製造方法において、 前記貼り合わせの工程および前記出発基板除去後に、ダイシング加工により研削を受ける研削領域のうち、前記支持基板とは反対側の面から、前記ダブルへテロ構造を含む積層構造、前記金属光反射層、前記第1金属接合層の少なくとも一部まで、もしくは前記第2金属接合層の少なくとも一部までウェットエッチングまたはドライエッチングによって除去されることを特徴とする半導体発光素子用ウェハの製造方法。 - 前記第1金属接合層および前記第2金属接合層はAuからなり、前記支持基板はSi、もしくはGeからなる請求項1または2に記載の半導体発光素子用ウェハの製造方法。
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