JP2010161070A - 光学素子および光学素子を具備する表示装置の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有効画素領域における膜厚の均一性に優れた光学素子を簡便に製造することがで
きる方法を提供すること。
【解決手段】隔壁に囲まれた画素領域内に、発光材料および第1の溶媒を含む第1の溶液を塗布し;塗布された前記第1の溶液に含まれる第1の溶媒を除去し;塗布された前記第1の溶液が完全に乾燥する前に、前記第1の溶媒と表面張力の異なる第2の溶媒を、前記画素領域内に塗布し;塗布された前記第1の溶液および前記第2の溶媒を乾燥させるステップとを含む、光学素子の製造方法。
【選択図】図11

Description

本発明は、光学素子および光学素子を具備する表示装置の製造方法ならびに当該方法により製造される光学素子および表示装置に関する。特に本発明は、有機電界発光素子の製造方法であって、発光層やカラーフィルタなどを、インクジェット方式またはダイコート方式を利用して形成するステップを含む。
近年、映像機器やパーソナルコンピュータ、携帯端末などのディスプレイとして、有機電界発光素子を用いたデバイスの実用化が進みつつある。最近では、有機電界発光素子を用いた大型ディスプレイの研究開発が行われている。
ディスプレイデバイスとして使用される光学素子は、ガラス基板上に配置された隔壁で区切られた画素領域(セル)内に形成されることがある。ディスプレイに求められる重要な要素として、輝度ムラや色ムラがないこと(高画質)および長時間点灯できること(長寿命)が挙げられる。これらは画素領域内に形成される機能膜の厚さと密接な関係があり、機能膜の厚さのばらつきは品質低下の原因となる。このような機能膜の厚さのばらつきは、「面内ばらつき」と「セル内ばらつき」の2種類に大別される。
面内ばらつきとは、機能膜の平均厚さがセル間で不均一であることを意味する。ディスプレイのパネル面上には多数のセルが存在する。セル内に形成された機能膜の平均厚さは、パネル全面にわたって均一であることが好ましい。この平均厚さが均一でない場合、機能膜の厚さによって輝度や色に変化が生じるため、パネル面上において部分的に明るすぎるところ、暗いところ、色が異なるところが出るといった現象が発生する。このような不具合を防ぐためには、各セルの機能膜の平均厚さが均一であることが求められる。
セル内ばらつきとは、機能膜の厚さがセル内で不均一であることを意味する。特に有機電界発光素子のような自発光型素子の場合、機能膜の厚さの薄い部分は、電流密度が高くなり、過剰な電流集中が生じてショートを起こす可能性が高くなるため、ディスプレイの寿命に大きな影響を及ぼす。また、面内ばらつきと同様に、セル内においても機能膜の厚さにばらつきがあると局所的な輝度ムラが発生する。したがって、セル内においても機能膜の厚さは均一になることが求められる。
面内ばらつきを防止する技術として、溶媒の塗布量を変える方法がある(例えば、特許文献1参照)。図18は、特許文献1に記載された技術を説明するための模式図である。まず、第1の液滴吐出ヘッドを用いて、支持基板10の表示領域12内のすべての素子形成領域14にそれぞれ等量の正孔輸送材料液を塗布する。次に、第2の液滴吐出ヘッドを用いて、素子形成領域14に溶媒を塗布する。このとき、素子形成領域14の位置によって異なる量の溶媒を塗布する。具体的には、図18に示されるように、表示領域12を4つの領域Z1〜Z4に分ける。乾燥しやすい一番外側の領域Z1に存在する素子形成領域14に対しては、多くの溶媒を塗布し、Z2、Z3、Z4と内側へいくにしたがって溶媒の塗布量を減らしていく。これによって、各素子形成領域14における正孔輸送材料液および溶媒の乾燥時間を一様にして、各素子形成領域14間の機能膜の厚さのばらつきを解消することができる。第2の液滴吐出ヘッドを用いて塗布する溶媒は、生産性を向上させる観点から、正孔輸送材料液に含まれる溶媒と同じものが好ましいが、正孔輸送材料液の希釈液や異なる溶媒などであってもよいとされている。
一方、セル内ばらつきを防止する技術としては、乾燥させた材料膜の上に有機溶媒を塗布する方法がある(例えば、特許文献2参照)。図19は、特許文献2に記載された技術を説明するための模式図である。まず、図19(A)に示されるように、支持基板20の上に層間絶縁膜22および隔壁24が形成され、隔壁24の間に画素電極26が形成される。隔壁24間の機能膜が形成される領域に、正孔輸送層または電子輸送性発光層の材料を含む有機溶液28aを第1のノズル30aを用いて塗布し、乾燥させる。図19(B)に示されるように、有機溶液28aを完全に乾燥させると、端部がせり上がった形状の材料膜32ができる。次いで、図19(C)に示されるように、前記有機溶液に含まれる溶媒28bを第2のノズル30bを用いて材料膜32の上に塗布する。これによって、材料膜32の端部が再び溶解される。この後、溶媒を乾燥させると、図19(D)に示されるように、平坦な材料膜32が形成される。第2のノズルを用いて塗布する液体は、第1のノズルを用いて塗布した有機溶液よりも濃度が1/10以下の有機溶液や、この有機溶液の可溶液などのように、材料膜を再溶解または再分散させうる液体であってもよいとされている。
特開2006−260779号公報 特開2007−179798号公報
しかしながら、上記従来の技術では、最初に塗布する第1の溶液の溶媒と2番目に塗布する第2の溶媒との組み合わせによっては、機能膜の厚さが均一にならず、端部のぬれ上がりがより大きくなる可能性や、中央にピークが現れる山状になる可能性があった。つまり、セル内ばらつきが改善されるとは言い難い。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、有効画素領域における膜厚の均一性に優れた光学素子を簡便に製造することができる方法を提供することを目的とする。
本発明者は、発光材料に対する溶解性または分散性に優れた溶媒を含む溶液を画素領域内に塗布し、次いで、塗布した溶液が完全に乾燥する前に、前記溶媒とは異なる溶媒をさらに画素領域内に塗布することで、「セル内ばらつき」および「面内のばらつき」という課題を解決しうることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1は、以下に示す光学素子の製造方法に関する。
[1] 表示装置の光学素子を製造する方法であって、
隔壁に囲まれた画素領域内に、発光材料および第1の溶媒を含む第1の溶液を塗布するステップと;塗布された前記第1の溶液に含まれる第1の溶媒を除去するステップと;塗布された前記第1の溶液が完全に乾燥する前に、前記第1の溶媒と表面張力の異なる第2の溶媒を、前記画素領域内に塗布するステップと;塗布された前記第1の溶液および前記第2の溶媒を乾燥させるステップと;を含む、光学素子の製造方法。
[2] 前記第1の溶媒と前記第2の溶媒との表面張力(20℃)の差は、1.0〜3.0mN/mの範囲内である、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記第1の溶媒と前記第2の溶媒との沸点の差は、30〜70℃の範囲内である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 前記第1の溶液は、インクジェット方式により塗布され、かつ前記第1の溶液の、20℃における「表面張力(mN/m)/粘度(cPs)」の値が1.8m/s以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記光学素子は有機電界発光素子である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
本発明の第2は、以下に示す表示装置の製造方法に関する。
[6] 基板と、前記基板上にマトリクス状に配置された画素領域と、それぞれの前記画素領域を囲む隔壁と、前記画素領域内に配置された光学素子とを有する表示装置の製造方法であって、それぞれの前記隔壁に囲まれた前記画素領域内に、発光材料および第1の溶媒を含む第1の溶液を塗布するステップと、塗布された前記第1の溶液に含まれる第1の溶媒を除去するステップと、塗布された前記第1の溶液が完全に乾燥する前に、前記第1の溶媒と表面張力の異なる第2の溶媒を、前記画素領域内に塗布するステップであって、前記表示装置の周辺部の画素領域に塗布する前記第2の溶媒の量と、前記表示装置の中央部の画素領域に塗布する前記第2の溶媒の量と、は異なるステップと、塗布された前記第1の溶液および前記第2の溶媒を乾燥させるステップと、を含む、表示装置の製造方法。
[7] 前記表示装置の周辺部の画素領域に塗布する前記第2の溶媒の量は、前記表示装置の中央部の画素領域に塗布する前記第2の溶媒の量よりも多く、前記第2の溶媒の沸点は、前記第1の溶媒の沸点よりも高い、[6]に記載の表示装置の製造方法。
[8]前記第2の溶媒は、前記表示装置の周辺部の画素領域にのみ塗布され、前記表示装置の中央部の画素領域に塗布されない、[6]または[7]に記載の表示装置の製造方法。
本発明によれば、有効画素領域における膜厚の均一性に優れた光学素子を簡便に製造することができる。したがって、本発明によれば、例えば輝度ムラおよび色ムラが少なく、かつ高寿命の表示装置を高い歩留まりで製造することができる。
本発明の光学素子の一例を示す模式図 第1の溶液の「表面張力/粘度」の値と吐出精度との関係を示すグラフ 溶液が乾燥する過程で示す基本的な挙動を示す模式図 隔壁に囲まれた画素領域における溶液の挙動を示す模式図 隔壁に囲まれた画素領域における溶液の挙動を示す模式図 画素領域内に塗布した溶液が乾燥して形成される機能膜の形状を示す模式図 マランゴニ効果を説明するための模式図 混合溶媒の蒸発曲線を示すグラフ CCRモード時の蒸発速度を示す図 実施の形態1の製造方法の手順を示すフローチャート 図10のフローチャートの各手順を説明するための模式図 実施の形態2の製造方法で製造される表示装置の平面図 実施の形態2の製造方法で製造される表示装置の断面図 実施の形態2の製造方法で用いる多段減圧乾燥炉の模式図 実施例1で作製した機能膜の形状を示すグラフ 実施例1で作製した光学素子の構成を示す平面図 実施例2で作製した機能膜の形状を示すグラフ 特許文献1の製造方法を説明するための模式図 特許文献2の製造方法を説明するための模式図
本発明の光学素子の製造方法は、(1)隔壁に囲まれた画素領域内に、発光材料および第1の溶媒を含む第1の溶液を塗布する第1のステップと、(2)塗布された第1の溶液に含まれる第1の溶媒を除去する第2のステップと、(3)塗布された第1の溶液が完全に乾燥する前に、第1の溶媒と異なる種類の第2の溶媒を画素領域内に塗布する第3のステップと、(4)塗布された第1の溶液および第2の溶媒を乾燥させる第4のステップと、を含む。
本発明の製造方法により製造される光学素子の種類は、特に限定されないが、例えば表示装置に用いられる有機電界発光素子であることが好ましい。特に本発明の方法により、有機電界発光素子の有機発光層やカラーフィルタなどが形成されることが好ましい。
有機電界発光素子は一般的に、基板と、アノード電極と、有機発光層と、カソード電極とを積層した構造を有する。さらに、正孔注入輸送層や、電子輸送層や、カラーフィルタや、封止膜などの任意の構成部材を有する。本発明は、有機電界発光素子の有機発光層の形成に適用されるが、塗布法により形成されうる他の構成部材の形成に適用してもよい。塗布法により形成されうる他の構成部材の例には、カラーフィルタや、正孔注入輸送層(例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン層)などが含まれる。
[第1のステップ]
第1のステップでは、隔壁に囲まれた画素領域内に、発光材料および第1の溶媒を含む第1の溶液を塗布する。
画素領域を規定する隔壁は、支持基板上に形成される。支持基板の種類は、所望の透明性および機械的特性を有するものであれば特に限定されない。支持基板の例には、ガラス板、プラスチック板、セラミックス板、金属板(例えば、アルミニウム板)が含まれる。一般的には、支持基板としてガラス板が用いられることが多い。支持基板は、プラズマ処理、UV処理などの表面処理が施されていてもよい。隔壁により規定される画素領域の形状および大きさは、求める特性(例えば、ディスプレイの解像度など)に応じて自由に設定されうる。
隔壁は、画素領域のそれぞれを規定していてもよく;ライン状に配列された複数の画素領域を含む区域を規定してもよい。ライン状に配列された複数の画素は、同一色(R,GまたはB)の光を発する。
基板面に垂直方向の隔壁の断面形状は、長方形またはテーパー形であることが好ましい。隔壁の断面形状がテーパ形である場合、順テーパー形状であることが好ましい。隔壁の形状を順テーパー形状とすることで、後述する機能膜の厚さの均一性をより向上させることができる。隔壁の形状が順テーパー形状の場合、隔壁の側面(画素領域に面する面)の傾斜角は、特に限定されず、求める特性(例えば、ディスプレイの解像度など)に応じて自由に設定されうる。隔壁の材料は、特に限定されないが、絶縁性、有機溶剤耐性、プロセス耐性(プラズマ処理、エッチング処理、ベーク処理に対する耐性)を考慮すると、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などが好ましい。また、隔壁の材料はフッ素系樹脂(アクリル系フッ素樹脂やポリイミド系フッ素樹脂)であってもよい。隔壁は、プラズマ処理、UV処理などの表面処理が施されていてもよく、それにより、隔壁表面の親液性や撥液性が調整されうる。
図1は、支持基板、隔壁および画素領域の位置関係を説明するための、本発明の光学素子の一例を示す模式図である。図1(A)は、第1の溶液を塗布する前の支持基板および隔壁を示す断面図である。図1(A)において、順テーパー形状の隔壁120は、支持基板110の上に形成されている。
図1(B)は、後述する第4のステップの後の光学素子の断面図である。図1(C)は、図1(B)に示される光学素子の平面図である。図1(B)および図1(C)において、機能膜130は、隔壁120により規定された画素領域内に形成されている。後述するように、機能膜130は、第1の溶液に含まれる発光材料(溶質)が乾燥して形成された膜である。有効画素領域140は、画素領域内の領域であり、例えば隔壁120の内側側面の下端(隔壁120と支持基板110との境界線)から3.5μm内側に位置する線(図中破線で示す)により規定される領域である。この有効画素領域140は、例えば画像表示パネルにおいて発光する部分となる。有効画素領域140の形状および大きさは、求める特性(例えば、ディスプレイの解像度など)に応じて自由に設定されうる。
第1の溶液に含まれる発光材料の種類は、求める特性に応じて自由に選択されうる。発光材料の例には、低分子系有機発光材料のほか、ポリフェニレンビニレン、ポニアリレン、ポリアルキルチオフェン、ポリアルキルフルオレンなどの高分子系有機発光材料が含まれる。通常、高分子系有機発光材料は、塗布により発光層とされるので、本発明の発光材料として好ましい。
第1の溶液に含まれる第1の溶媒の種類は、溶解度パラメータ(Solubility Parameter:sp値)が8〜10の範囲内の有機溶媒が好ましい。このような有機溶媒は、前述の発光材料(特に高分子系有機発光材料)を、0.1重量%以上溶解させることができる。ここで「溶解度パラメータ」とは、ヒルデブランド(Hildebrand)により提唱された、正則溶液論により定義された値であり、2成分系溶液の溶解度の目安となる値である。溶解度パラメータは、分子間力を表す尺度として用いられており、2つの成分の値の差が小さいほど溶解度が大きくなることが経験的に知られている。第1の溶媒の例には、アルキルベンゼン(トルエン、キシレン、フェニルノナン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリンなど)、アルコキシベンゼン(メトキシトルエン、メトキシベンゼンなど)、芳香系アルコール(ベンジルアルコール、シクロプロピルベンジルアルコールなど)、これらの溶媒の混合液が含まれる。
第1の溶液を塗布する方法は、インクジェット方式が多く用いられるが、特に限定されない。第1の溶液を塗布する方法の例には、インクジェット方式、ダイコート方式が含まれる。
第1の溶媒の種類は、第1の溶液の塗布方法に応じて適宜選択されうる。例えば、第1の溶液をインクジェット方式により塗布する場合は、第1の溶液の粘度が10mPa・s以下、好ましくは5mPa・s以下となる溶媒を第1の溶媒とすることが好ましい。一方、第1の溶液をダイコート方式により塗布する場合は、第1の溶液の粘度が90mPa・s以上180mPa・s以下、好ましくは90mPa・s以上120mPa・s以下となる溶媒を第1の溶媒とすることが好ましい。ここで「溶液の粘度」とは、20℃における粘度を意味する。第1の溶液の粘度は、レオメータ(例えば、TAインスツルメンツ社のAR−G2)を用いて測定することができる。レオメータを用いて溶液の粘度を測定するには、試料(溶液)を載せたプレートにコーン(半径Rcm、角度)の頂点を接触させ、このコーンを角速度Ω(rad・s−1)で回転させる。コーンの回転トルクがM(N・m)であるとすると、みかけ粘度η(Pa・s)は式(1)により求められ、ずり応力S(Pa)は式(2)により求められ、ずり速度D(s−1)は式(3)により求められる。みかけ粘度ηを「溶液の粘度」とすればよい。
さらに、第1の溶液をインクジェット方式により塗布する場合は、第1の溶液の「表面張力(mN/m)/粘度(mPa・s)」の値が1.8m/s以上となる溶媒を第1の溶媒とすることが好ましい。ここで「溶液の表面張力」とは、20℃における表面張力を意味する。同様に「溶液の粘度」とは、20℃における粘度を意味する。第1の溶液の粘度は、前述のとおり、レオメータを用いて測定することができる。第1の溶液の表面張力は、自動接触角計(例えば、クルス社のDSA100)を用いて懸滴法(ペンダント・ドロップ法)により測定することができる。懸滴法では、鉛直方向に向けた細管の先端から試料(液体)を押し出して、細管の先端に液滴(懸滴)を形成させ、この液滴の最大径(赤道面直径)deおよび液滴の最下端からdeだけ上の位置における直径dsを測定する。表面張力γは、測定したdsおよびdeの値から以下の式(4)により求められる。
ここで、「ρ」は溶液密度であり、「g」は重力加速度であり、「1/H」はdsおよびdeから求められる補正係数である。
図2は、第1の溶液の「表面張力/粘度」の値と、吐出精度との関係を示すグラフである。ここで「吐出精度」とは、第1の溶液の着弾位置の標準偏差σ(単位:ミリラジアン(mrad))を意味する。第1の溶液の表面張力は、自動接触角計(DSA100;クルス社)を用いて懸滴法(ペンダント・ドロップ法)により測定した。第1の溶液の粘度は、レオメータ(AR−G2;TAインスツルメンツ社)を用いて測定した。このグラフに示されるように、第1の溶液の「表面張力/粘度」の値が大きくなるほど、吐出精度は低下する。一般的に、表示装置の光学素子をインクジェット方式を用いて製造する場合、発光材料を含む溶液(第1の溶液)の吐出精度は3mrad以下であることが好ましい。図2のグラフを参照すると、「表面張力/粘度」の値が1.78m/s以上のとき、吐出精度が3mrad以下となることがわかる。したがって、第1の溶液をインクジェット方式により塗布する場合は、第1の溶液の「表面張力/粘度」の値が1.8m/s以上となる溶媒を第1の溶媒とすることが好ましい。このような溶媒の例には、シクロヘキシルベンゼン、メトキシトルエン、キシレン、テトラリン、アセトフェノン、アニソール、これらの溶媒の混合液が含まれる。
[第2のステップ]
第2のステップでは、第1のステップで塗布された第1の溶液に含まれる第1の溶媒の一部を除去する。すなわち、第1のステップで塗布された第1の溶液を一部乾燥させる。本発明の製造方法は、第2のステップにおいて第1の溶液を完全には乾燥させないことを一つの特徴とする。第1の溶液を完全に乾燥させないのは、後述の第3のステップにおいて、溶質(発光材料)が固着する前に第2の溶媒を加えて、第1の溶媒と第2の溶媒とを混合させ、マランゴニ効果(後述)を生じさせるためである。
第1の溶液を乾燥させる方法および条件(温度、雰囲気、時間)は、特に限定されない。例えば、画素領域内の第1の溶液の液面の高さが隔壁の高さと同程度になるまで、室温、大気条件下で乾燥させればよい。もちろん、第1の溶媒の一部を除去すればよいので、第1の溶液の塗布の直後に、第2の溶媒を塗布しても構わない。
ここで、画素領域内に塗布された溶液が乾燥する過程で示す挙動について説明する。図3は、溶液が乾燥する過程で示す基本的な挙動を示す模式図である。
図3(A)は、通常の状態で溶液が乾燥する過程を示す模式図である。基板210上に配置された液滴220は、液滴220の表面から溶媒が一様に蒸発するため、相似形を維持しつつ体積が減少する。この乾燥様式は、基板に対する接触角が一定であることから、CCA(Constant Contact Angle)モードと称される。
図3(B)は、液滴の端部が固定された状態で溶液が乾燥する過程を示す模式図である。この場合、液滴端部230の近傍で溶媒の蒸発が進むと、その溶媒の減少を補うために、液滴220の中央部から液滴端部230に向かって溶媒の流れが発生する。この乾燥様式は、液滴の径が一定であることから、CCR(Constant Contact Radius)モードと称される。
図3(C)および図3(D)は、CCRモードのときの溶質の分布の様子を示す模式図である。図3(C)は乾燥前の溶質の分布を示す模式図であり、図3(D)は乾燥中の溶質の分布を示す模式図である。これらの図に示されるように、CCRモードでは溶媒の流れに乗って溶質240が移動する。結果として、液滴端部230の近傍において溶質240の濃度が高まる。
図3(E)は、CCRモードのときの溶媒の蒸発速度を示す模式図である。この図に示されるように、液滴220の表面における溶媒の蒸発速度250は、CCAモードのように一様とはならず、液滴端部230に近づくにつれて急激に増加する。その結果、溶媒の移動速度も、液滴端部230に近づくにつれて急激に増加する。
図4および図5は、隔壁に囲まれた画素領域における溶液の乾燥挙動を示す模式図である。
図4(A)は、発光材料を含む第1の溶液を画素領域内に塗布した直後の状態を示す模式図である。この図に示されるように、第1の溶液150は、支持基板110上に形成された隔壁120の上面まで、かつ隔壁で区切られた隣接する画素領域にあふれないように塗布される。塗布直後においては、液滴端部160における表面張力のつりあいによって、液滴端部160の接触角がθとなる。
発光材料を含む溶液150が乾燥し始めると、表面張力のつりあいが保たれている間は、図4(B)に示されるように、液滴端部160が固定された状態で、溶媒の蒸発により接触角がθからθまで減少する(CCRモード)。
液滴端部160の接触角が後退接触角θまで減少すると、液滴端部160における表面張力のつりあいが崩れ、溶液150を内部に引き込む力が発生する。その結果、図4(C)に示されるように、接触角θが固定された状態で、溶媒の蒸発により液滴端部160が内側に向かって移動し、液滴の径が減少する(CCAモード)。この液滴の径の減少は、液滴端部160が隔壁の角(隔壁の上面と内側側面との境界線)に到達するまで続く。
液滴端部160が隔壁の角に到達すると、図5(A)に示されるように、接触角の基準面が隔壁の上面から隔壁の側面に変わるため、接触角がθ’に増大する。接触角が後退接触角θよりも大きくなるため、液滴端部160における表面張力は再びつりあう。その結果、図5(B)に示されるように、液滴端部160は隔壁の角に固定された状態で、溶媒の蒸発により接触角がθ’からθまで減少する(CCRモード)。前述のとおり、CCRモードでは、液滴の中央部から液滴端部160に向けた溶媒の流れが生じ、溶質も液滴端部160に向けて移動する。
接触角が後退接触角θまで減少すると、図5(C)に示されるように、接触角θが固定された状態で、溶媒の蒸発により液滴端部160が移動して、液滴の体積が減少する(CCAモード)。CCAモードでは、溶媒の流れが生じないため、液滴端部160への溶質の移動は発生しない。しかし、溶媒の蒸発により、液滴端部160近傍における溶質の濃度は徐々に高まる。
液滴端部160近傍の溶質の濃度が臨界濃度に達すると、図5(D)に示されるように、溶質がゲル化し、液滴端部160は隔壁120の側面上に固定される(セルフピンニング)。セルフピンニングの後は、図5(E)に示されるように、液滴端部160が固定された状態で乾燥が進み、機能膜130が形成される。
以上のように、画素領域内では、溶液の乾燥は、CCRモードとCCAモードとを交互に繰り返しながら進行する。
一方、画素領域内に形成される機能膜130の形状は、発光材料を含む溶液(第1の溶液)の溶媒の蒸発速度にも依存する。
図6は、画素領域内に塗布した溶液が乾燥して形成される機能膜の形状を示す模式図である。図6(A)は、溶媒の蒸発速度が速い場合の様子を示す模式図である。図6(B)は、溶媒の蒸発速度が遅い場合の様子を示す模式図である。
液滴の中央部から端部に向けた溶媒の流れは、溶媒の蒸発速度(単位時間および単位面積あたりに蒸発する溶媒の質量)に依存する。すなわち、溶媒の蒸発速度が速いほど、大きな流れが発生する。したがって、溶媒の蒸発速度が速い場合は、図6(A)に示されるように、機能膜130の端部のせり上がりが大きくなり、有効画素領域140内においても窪んだ形状となる。一方、溶媒の蒸発速度が遅いほど、流れは小さくなり、溶質は移動しにくくなる。したがって、溶媒の蒸発速度が遅い場合は、図6(B)に示されるように、機能膜130の形状は液滴の形状に近くなり、有効画素領域140内においても中央部が膨らんだ形状となる。
一般的に、溶液の蒸発速度は溶液の粘度と関係があり、蒸発速度が遅いほど粘度は大きくなる傾向がある。また、溶液の粘度は、溶液の塗布のしやすさと関係がある。例えば、インクジェット方式により溶液を塗布する場合は、高粘度、すなわち蒸発速度の遅い溶媒を用いることが困難なことがある。逆に、ダイコート方式により溶液を塗布する場合は、低粘度、すなわち蒸発速度の速い溶媒を用いることができない。したがって、溶液の塗布方法に応じて溶媒を選択すると、機能膜の形状が不均一になってしまう。すなわち、インクジェット方式により溶液を塗布する場合は、蒸発速度の速い溶媒を用いるため、機能膜の形状は、有効画素領域内において窪んだ形状となる(図6(A)参照)。一方、ダイコート方式により溶液を塗布する場合は、蒸発速度の遅い溶媒を用いるため、機能膜の形状は、有効画素領域内において中央部が膨らんだ形状となる(図6(B)参照)。このように、溶液の塗布方法に応じて溶媒を選択すると、図6(C)に示されるような有効画素領域140内において膜厚が均一な機能膜130を形成することは困難である。
そこで、本発明の製造方法では、塗布しやすい溶媒(第1の溶媒)を用いて調製した第1の溶液を画素領域内に塗布し、ある程度乾燥させた後(第1のステップおよび第2のステップ)、画素領域内にさらに第2の溶媒を塗布し、乾燥させることとした(第3のステップおよび第4のステップ)。このようにすることで、機能膜の膜厚の均一化にとっては好ましくない溶媒(第1の溶媒)を用いた場合であっても、機能膜の膜厚の均一化を実現することができる。よって第1の溶媒を、膜厚の均一化を考慮することなく、別の要因(例えば塗布方式)に応じて選択して用いることができる。
第2の溶媒を塗布することで機能膜の膜厚を均一にすることができるメカニズムについては、次のステップで説明する。
[第3のステップ]
第3のステップでは、第1のステップで塗布された第1の溶液が完全に乾燥する前に、第1の溶媒と異なる種類の第2の溶媒を画素領域内に塗布する。
第2の溶媒を塗布する方法は特に限定されず、インクジェット方式、ダイコート方式などである。第2の溶媒を塗布する方法は、第1のステップと同じ方法であっても、異なる方法であってもよい。例えば、第1のステップにおいて第1の溶液をダイコート方式により塗布し、第3のステップにおいて第2の溶媒をインクジェット方式により塗布してもよい。
本発明の製造方法は、第3のステップにおいて第1の溶媒と異なる種類の溶媒を塗布することを一つの特徴とする。このように異なる種類の溶媒を混合させると、溶液中において溶質を分散および均一化させる作用が生じる。この作用は、「マランゴニ効果」と称される。
図7は、マランゴニ効果を説明するための模式図である。図7に示されるように、2種類の溶媒を混合させると、液滴端部230の近傍では2種類の溶媒のうち沸点の高い溶媒の割合が大きくなる(理由については後述)。一方、液滴端部230から離れるにつれて沸点の低い溶媒の割合が大きくなる。つまり、液滴220の中央部での溶液組成は、2種類の溶媒の混合比に近い組成となる。
ここで、2種類の溶媒のそれぞれの表面張力が異なると、結果として、液滴端部230の近傍における溶液の表面張力σ1と、液滴端部230から離れた領域における溶液の表面張力σ2とに差が生じる。そのため、液滴220内部で対流260が発生する。これが、マランゴニ効果である。σ1がσ2よりも大きい場合(σ1>σ2)であっても、σ2がσ1よりも大きい場合(σ2>σ1)であっても、対流は発生する。対流260の向き(図7において紙面上で時計回りか反時計回りか)は、表面張力σ1とσ2との大小関係に依存する。また、表面張力σ1とσ2との差が大きいほど、強い対流が発生する。
液滴の中央部と端部との間で、溶媒組成が異なる理由、つまり沸点の高い溶媒の割合が異なる理由について説明する。図8は、2種類の溶媒を含む混合溶媒の蒸発曲線を示すグラフである。ここでは、メトキシトルエン(沸点174℃)およびシクロヘキシルベンゼン(沸点240℃)を異なる比率で混合させた3種類の混合溶媒について、75℃での質量の減少速度を測定した結果を示す。併せて、メトキシトルエンおよびシクロヘキシルベンゼンの質量の減少速度を測定した結果も示す。
図8(A)は、メトキシトルエンを50%、シクロヘキシルベンゼンを50%含む混合溶媒の蒸発曲線を示すグラフである。図8(B)は、メトキシトルエンを75%、シクロヘキシルベンゼンを25%含む混合溶媒の蒸発曲線を示すグラフである。図8(C)は、メトキシトルエンを25%、シクロヘキシルベンゼンを75%含む混合溶媒の蒸発曲線を示すグラフである。各図において、「MIX」は混合溶媒の蒸発曲線を示し、「MT」はメトキシトルエンの蒸発曲線(メトキシトルエンの初期質量が混合溶媒の初期質量に合うようにシフトさせた曲線)を示し、「CHB」はシクロヘキシルベンゼンの蒸発曲線(シクロヘキシルベンゼンの質量が0となる時間が混合溶媒の質量が0となる時間に合うようにシフトさせた曲線)を示す。
図8(A)〜(C)のグラフより、混合溶媒の蒸発曲線(MIX)は、蒸発初期は沸点が低いメトキシトルエンの蒸発曲線(MT)に沿ってシフトし、蒸発末期は沸点が高いシクロヘキシルベンゼンの蒸発曲線(CHB)に沿ってシフトすることがわかる。また、メトキシトルエンの蒸発曲線(MT)とシクロヘキシルベンゼンの蒸発曲線(CHB)との交点の質量の初期質量に対する比は、メトキシトルエンとシクロヘキシルベンゼンとの混合比に近いこともわかる。これらの結果は、溶媒の乾燥温度や混合比を変えても同じであった。
これらのグラフからわかるように、複数種類の溶媒を含む混合溶媒では、蒸発速度の速い溶媒(沸点が低い溶媒)が先に選択的に蒸発して、蒸発速度の遅い溶媒(沸点の高い溶媒)は後に蒸発する。
CCRモードでは、液滴端部の近傍における溶媒の蒸発速度は、液滴の中央部における溶媒の蒸発速度よりも速い(図3(E)参照)。より詳細には、図9(A)に示される液端部230からの距離rの地点における蒸発速度Js(250)は、以下の式(5)に示すようにrの逆数のべき乗に反比例する。
蒸発速度の速い溶媒(沸点が低い溶媒)および遅い溶媒(沸点の高い溶媒)について考えると、いずれの溶媒も液滴端部に近づくにつれて蒸発速度が速くなる。しかし、図9(B)に示されるように、これらの溶媒の蒸発速度の差は液滴端部に近づくにつれて大きくなる(縦軸が対数表示であることに留意)。図9(B)において、「A」は蒸発速度の速い溶媒(沸点が低い溶媒)の蒸発速度を示す曲線、「B」は蒸発速度の遅い溶媒(沸点が高い溶媒)の蒸発速度を示す曲線である。したがって、液滴端部の近傍では、蒸発速度の遅い溶媒の割合が高まるのが中央部に比べて速くなる。結果として、液滴の中央部と端部との間で、溶媒組成が異なることになる。
以上のように、第3のステップにおいて第1の溶媒と異なる種類の溶媒を塗布することで、マランゴニ効果により液滴内で対流を生じさせ、溶質(発光材料)を分散させ、均一化させることができる。マランゴニ効果による対流は、第4のステップにおいて乾燥させる過程においても維持される。
第2の溶媒の種類は、第1の溶媒と異なるものであれば特に限定されないが、その表面張力に差があることが好ましい。第2の溶媒の表面張力は、第1の溶媒の表面張力と、1.0mN/m以上3.0mN/m以下の差異を有することが好ましい。ここで「溶媒の表面張力」とは、20℃における表面張力を意味する。第1の溶媒との表面張力と、第2の溶媒の表面張力とのいずれか高くても構わない。第1の溶媒および第2の溶媒の表面張力は、前述のとおり懸滴法(ペンダント・ドロップ法)により測定することができる。
前述のとおり、CCRモードでの乾燥では、溶質が液滴端部に向かって移動するが、マランゴニ効果による対流が発生する場合は、この対流によって溶質が液滴の中央部へ向かって分散する。その結果、均一な厚さの機能膜が得られやすくなる。ただし、対流が大きすぎると、溶質が液滴の中央部に移動しすぎてしまい、機能膜の形状は中央部が膨らんだ形状となる(図6(B)参照)。したがって、第1の溶媒と第2の溶媒の表面張力の差を適切に調整することが好ましく、具体的には1.0〜3.0mN/mの範囲内に調整することが好ましい。第1の溶媒と第2の溶媒の表面張力の差が1.0mN/m未満だと、対流が小さくなりすぎ、機能膜のせり上がりが大きくなってしまう(図6(A)参照)。一方、第1の溶媒と第2の溶媒の表面張力の差が3.0mN/mより大きいと、対流が大きくなりすぎ、機能膜の中央部の膨らみが大きくなってしまう(図6(B)参照)。第1の溶媒と第2の溶媒の表面張力の差が1.0〜3.0mN/mの範囲内の場合、有効画素領域内で膜厚が均一な機能膜が形成されうる。
第1の溶媒と第2の溶媒との沸点の差は、30〜70℃の範囲内が好ましい。前述の通り、液滴の中央部と端部とで、溶媒組成を相違させるためである。第1の溶媒と第2の溶媒の沸点の差が30℃未満であると、液滴の中央部と端部とで溶媒組成の違いが小さくなり、十分な大きさの対流が発生せず、機能膜のせり上がりが大きくなってしまう(図6(A)参照)。一方、第1の溶媒と第2の溶媒の沸点の差が70℃より大きいと、液滴の中央部と端部とで溶媒組成の違いが大きくなり、発生する対流が大きくなりすぎ、機能膜の中央部の膨らみが大きくなってしまう(図6(B)参照)。第1の溶媒と第2の溶媒との沸点の差を30〜70℃の範囲内に調整すると、有効画素領域内で膜厚が均一な機能膜が形成されうる。
第2の溶媒の塗布量は、マランゴニ効果を生じさせることができれば特に限定されないが、2種類の溶媒のうち蒸発速度がより速い(沸点がより低い)溶媒の量を他方の溶媒の量よりも少なくすることが好ましい。具体的には、第2の溶媒の塗布量は、画素領域内に残っている第1の溶媒の量に対して、7/3〜19倍(第1の溶媒の蒸発速度が第2の溶媒の蒸発速度よりも速い場合)であるか;または1/17〜3/7倍(第2の溶媒の蒸発速度が第1の溶媒の蒸発速度よりも速い場合)の範囲内が好ましい。すなわち、第1の溶媒と第2の溶媒の比率は、5:95〜30:70の範囲内(第1の溶媒の蒸発速度が第2の溶媒の蒸発速度よりも速い場合)、または95:5〜70:30の範囲内(第2の溶媒の蒸発速度が第1の溶媒の蒸発速度よりも速い場合)が好ましい。
2種類の溶媒を含む混合溶媒を乾燥させると、乾燥初期では2種類の溶媒がともに蒸発する。そのうち、蒸発速度がより速い(沸点がより低い)溶媒が先に無くなり、それ以降は蒸発速度がより遅い(沸点がより高い)溶媒のみが蒸発する(図8参照)。前述のとおり、マランゴニ効果は、混合溶媒で発生する現象であり、単一溶媒では発生しない。したがって、マランゴニ効果は、蒸発速度がより速い(沸点がより低い)溶媒がなくなる前までの期間でしか発生しない。この期間が短いと、対流が発生する時間が短くなりすぎ、機能膜のせり上がりが大きくなってしまう(図6(A)参照)。一方、この期間が長いと、対流が発生する時間が長くなりすぎ、機能膜の中央部の膨らみが大きくなってしまう(図6(B)参照)。第1の溶媒と第2の溶媒との量比を上記範囲内に調整すると、有効画素領域内で膜厚が均一な機能膜が形成されうる。
[第4のステップ]
第4のステップでは、第1のステップで塗布された第1の溶液および第3のステップで塗布された第2の溶媒を乾燥させる。すなわち、画素領域内の混合液を完全に乾燥させて、画素領域内に機能膜を形成する。
第1の溶液および第2の溶媒を乾燥させる方法および条件(温度、雰囲気、時間)は、特に限定されない。例えば、画素領域内の第1の溶液および第2の溶媒が完全に乾燥するまで、室温、大気条件下で乾燥させればよい。
前述のとおり、第4のステップで混合液を乾燥させている間も、マランゴニ効果により対流が生じている。その結果、発光材料(溶質)を均一に分散させた状態で乾燥を進行させることができ、均一な膜厚の機能膜を形成することができる。
以下、本発明の製造方法の実施の形態を図を参照して説明する。本発明はこれらの実施の形態により限定されない。
[実施の形態1]
実施の形態1では本発明の表示装置に含まれる個々の光学素子の製造方法について説明する。
図10は、本実施の形態の製造方法の手順を示すフローチャートである。図11は、図10のフローチャートの各手順を説明するための模式図である。ここでは、インクジェット方式により第1の溶液および第2の溶媒を塗布するものとする。
まず、ステップS1000において、隔壁に囲まれた画素領域内に第1の溶液を塗布する。例えば、吐出させやすい溶媒(第1の溶媒)に発光材料を溶解させて第1の溶液を調製し、第1の溶液をガラス基板上の隔壁に囲まれた画素領域内にインクジェット方式により塗布する。図11(A)は、隔壁に囲まれた画素領域内に第1の溶液を塗布した後の様子を示す模式図である。ここでは、第1の溶液150は、支持基板110上に形成された隔壁120の上面まで、かつ隣接する画素領域内の溶液と接触しないように塗布されている。
次いで、ステップS1100において、塗布された第1の溶液に含まれる第1の溶媒を一部除去する。例えば、画素領域内の第1の溶液の液面の高さが隔壁の高さと同程度になるまで、室温、大気条件下で乾燥させる。図11(B)は、画素領域内の第1の溶液150の液面の高さが隔壁120の高さと同程度になるまで乾燥させている様子を示す模式図である。
次いで、ステップS1200において、塗布された第1の溶液が完全に乾燥する前に、第1の溶媒と異なる種類の第2の溶媒を画素領域内に塗布する。例えば、画素領域内の第1の溶液の液面の高さが隔壁の高さと同程度になった時に、画素領域の容積の4倍量の第2の溶媒をインクジェット方式で塗布する。第2の溶媒の量は、例えば画素領域の容積の1/4倍量であってもよい。図11(C)は、画素領域内の第1の溶液150の液面の高さが隔壁120の高さと同程度になった時に、第2の溶媒170を塗布している様子を示す模式図である。
次いで、ステップS1300において、画素領域内の第1の溶液および第2の溶媒の混合液を乾燥させる。例えば、画素領域内の混合液が完全に乾燥するまで、室温、大気条件下で乾燥させる。前述のとおり、この混合液ではマランゴニ効果により対流が生じるため、発光材料が混合液中で均一に分散した状態で乾燥が進行する。図11(D)は、画素領域内の第1の溶液および第2の溶媒の混合液180を乾燥させている様子を示す模式図である。
画素領域内の混合液が完全に乾燥することにより、膜厚が均一な機能膜が形成される(ステップS1400)。図11(E)は、膜厚が均一な機能膜130が形成された様子を示す模式図である。
以上のように、本発明の製造方法は、発光材料および第1の溶媒を含む第1の溶液が乾燥する前に第1の溶媒と異なる第2の溶媒を塗布することで、画素領域内においてマランゴニ効果による対流を生じさせて膜厚が均一な機能膜を形成することができる。
[実施の形態2]
実施の形態2では、複数の光学素子を有する表示装置の製造方法について説明する。
図12は、本実施の形態の製造方法によって製造される表示装置の平面図である。図12に示されるように、本実施の形態の製造方法によって製造される表示装置は、支持基板110と、支持基板110上にマトリクス状に配置された画素領域340と、各画素領域340を囲み、支持基板110上に配置された隔壁120とを有する。
画素領域340には、赤色に発光する光学素子が配置される画素領域340Rと、緑色に発光する光学素子が配置される画素領域340Gと、青色に発光する光学素子が配置される画素領域340Bと、が含まれる。
このように支持基板110上にマトリクス状に配置された画素領域内にインクジェット方式やダイコート方式などで、機能膜の溶液を塗布すると、表示装置の周辺部324と表示装置の中央部325とで、溶液中の溶媒の乾燥速度が異なる。具体的には、周辺部324では、溶媒蒸気の濃度が低いことから、溶媒の蒸発速度が速い。一方で、表示装置の中央部では溶媒蒸気の濃度が高いことから蒸発速度が遅い。ここで「表示承知の周辺部」とは、例えば、1000画素〜2000画素からなる表示装置において、表示装置の縁から5〜20画素までの領域を意味する。また中央部とは、周辺部に囲まれた領域を意味する。
上述のように、画素領域内に形成される機能膜の形状は、溶媒の乾燥速度に依存する。このため、例えば、乾燥速度が速い(沸点が低い)溶媒を含む溶液を塗布すると、周辺部の画素領域内に形成された機能膜では、中央が窪み、膜厚が薄くなり(図6(A)参照);中央部の画素領域内に形成された機能膜は、比較的平坦になる。
また、例えば、乾燥速度が遅い(沸点が高い)溶媒を含む溶液を塗布すると、周辺部の画素領域内に形成された機能膜は、比較的平坦になり;中央部の画素領域内に形成された機能膜では、中央が膨らみ、膜厚が厚くなる(図6(B)参照)。
図13(A)は、図12の表示装置の線AAによる断面図であり、沸点が低く乾燥速度が速い溶媒を含む溶液を塗布することで各画素領域340内に形成された機能膜341の形状を示す。図13(A)では、画素領域340R内に形成された機能膜341の形状のみを示し、画素領域340Gおよび画素領域340B内に形成された機能膜を省略する。
図13(A)に示されるように、周辺部324の画素領域340では、機能膜341が中央に窪む。一方で、中央部325の画素領域340では、機能膜341は比較的平坦になる。このように、機能膜の溶液を塗布することで表示装置の機能膜を形成する場合、表示装置の周辺部と、中央部とで機能膜の膜厚がばらつき、表示装置の輝度がばらつくおそれがある。
本実施の形態の表示装置の製造方法は、基本的に上述した光学素子の製造方法と同じ手順を有するが、画素領域の位置によって塗布する第2の溶媒の量や乾燥速度などを調節することで、機能膜の膜厚の「面内のばらつき」を解消することを特徴とする。
次に、図12に示される表示装置の製造方法について説明する。本実施の形態の製造方法は、1)画素領域内に、発光材料および第1の溶媒を含む第1の溶液を塗布する第1ステップと、2)塗布された第1の溶液に含まれる第1の溶媒を除去する第2ステップと、3)塗布された第1の溶液が完全に乾燥する前に、第2の溶媒を、画素領域内に塗布する第3ステップと、4)第1の溶液および第2の溶媒を乾燥させるステップと、を有する。
1)第1ステップでは、各画素領域340内に発光材料および第1の溶媒を含む第1の溶液を塗布する。具体的には、吐出させやすい溶媒(第1の溶媒)に発光材料を溶解させて第1の溶液を調製し、第1の溶液を支持基板110上の隔壁120に囲まれた画素領域340内にインクジェット方式やダイコート方式により塗布する。
2)第2ステップでは、塗布された第1の溶液に含まれる第1の溶媒を一部除去する。例えば、画素領域340内の第1の溶液の液面の高さが隔壁120の高さと同程度になるまで、室温、大気条件下で乾燥させる。
3)第3ステップでは、塗布された第1の溶液が完全に乾燥する前に、第1の溶媒と異なる種類の第2の溶媒を画素領域340内に塗布する。上述のように第2の溶媒は、第1の溶媒と表面張力(20℃)の差が1.0〜3.0mN/である溶媒である。例えば、画素領域340内の第1の溶液の液面の高さが隔壁120の高さと同程度になった時に、第2の溶媒をインクジェット方式で塗布する。
本実施の形態では、表示装置の周辺部の画素領域340に塗布する第2の溶媒の量と、表示装置の中央部の画素領域340に塗布する第2の溶媒の量とは異なることを特徴とする。より具体的には、機能膜が平坦になりにくい画素領域340内に塗布する第2の溶媒の量を多くする。このように、機能膜が平坦になりにくい画素領域340内に塗布する第2の溶媒の量を多くすることで、機能膜の膜厚の「面内のばらつき」を低減することができる。
機能膜が平坦になりにくい画素領域340の位置は、第1ステップで用いた第1の溶媒の蒸発速度によって異なる。以下、第1ステップで用いる第1の溶媒の蒸発速度がi)速い(溶媒の沸点が低い)場合と、ii)遅い(溶媒の沸点が高い)場合とに分けて、塗布する第2の溶媒の量を多くする画素領域340の位置について説明する。
i)第1の溶媒の蒸発速度が速い(溶媒の沸点が低い)場合
上述のように、溶媒の蒸発速度が速い場合、溶媒の粘度は通常低い。このため、第1の溶媒の蒸発速度が速い(溶媒の粘度が低い)場合、第1の溶液は、低粘度の溶液の塗布に適したインクジェット方式で塗布されることが好ましい。この場合、乾燥速度の速い周辺部324の画素領域340内に形成された機能膜は、中央が窪み、平坦でなくなる(図6(A)参照)。このため、周辺部324の画素領域340に塗布する第2の溶媒の量を、中央部の画素領域340に塗布する第2の溶媒の量よりも多くする。
画素領域340に塗布する第2の溶媒の量は、表示装置の中心から、周辺部324に向かって徐々に増加させてもよいし;第2の溶媒を周辺部324の画素領域340内にのみ塗布し、中央部325の画素領域340には、第2の溶媒を塗布しなくてもよい。
機能膜の膜厚を精密に制御するという観点からは、塗布する第2の溶媒の量を表示装置の中心から、周辺部に向かって徐々に増加させることが好ましい。一方、第2の溶媒を中央部の画素領域340に塗布しない場合、第2の溶媒を塗布するヘッドを小型化できるので、製造における設備コストを低減できる。また、第2の溶媒を塗布する時間が短時間でよいので生産性を向上することができる。
また、第2の溶媒の乾燥速度は、第1の溶媒の乾燥速度よりも遅いことが好ましい。すなわち、第2の溶媒の沸点は、第1の溶媒の沸点よりも高いことが好ましい。このよう乾燥速度の遅い第2の溶媒を、乾燥速度の速い周辺部324の画素領域340内により多く塗布することで、面内の乾燥速度のばらつきを抑えることができるからである。
ii)第1の溶媒の蒸発速度が遅い(溶媒の沸点が高い)場合
上述のように、溶媒の蒸発速度が遅い場合、溶媒の粘度は通常高い。このため、第1の溶媒の蒸発速度が遅い(溶媒の粘度が高い)場合、第1の溶液は、高粘度の溶液の塗布に適したダイコート方式で塗布されることが好ましい。この場合、乾燥速度の遅い中央部325の画素領域340内に形成された機能膜は、中央が隆起し、平坦でなくなる(図6(B)参照)。このため、中央部325の画素領域340に塗布する第2の溶媒の量を、周辺部325の画素領域340に塗布する第2の溶媒の量よりも多くする。
画素領域340に塗布する第2の溶媒の量は、表示装置の縁から表示装置の中心に向かって徐々に増加させてもよいし;第2の溶媒を中心部325の画素領域340内にのみ塗布し、周辺部324の画素領域340には、第2の溶媒を塗布しなくてもよい。
また、第2の溶媒の乾燥速度は、第1の溶媒の乾燥速度よりも速いことが好ましい。すなわち、第2の溶媒の沸点は、第1の溶媒の沸点よりも低いことが好ましい。このような乾燥速度の速い第2の溶媒を、乾燥速度の遅い中央部325の画素領域340内により多く塗布することで、面内の乾燥速度のばらつきを抑えることができるからである。
4)第4ステップでは、画素領域340内の第1の溶液および第2の溶媒の混合液を乾燥させる。例えば、第4ステップでは、図14に示されるような多段減圧乾燥炉を用いればよい。多段減圧乾燥炉は、複数の表示装置を同時に乾燥させることができるので、生産性が高い。
図14に示されるように、多段減圧乾燥炉は、減圧ポンプ430と、減圧ポンプ430に接続された減圧チャンバ440と、減圧チャンバ440に接続されたパージライン450とを有する。減圧チャンバ440は、複数の載置台420を有する。
第3ステップで第2の溶媒が画素領域340に塗布された表示装置410は、図示しない搬送系によって、載置台420に載置される。その後、減圧ポンプ430によって減圧チャンバ440内が減圧する。これにより、第1の溶液および第2の溶媒の混合液が乾燥し、機能膜が形成される。その後、パージライン450からNを導入し、チャンバ内を大気圧に戻し、図示しない搬送系によって表示装置410を搬出する。
上述のように、機能膜の溶液を塗布することで表示装置の機能膜を形成する場合、面内の乾燥速度のばらつきによって、表示装置の周辺部と、中央部とで機能膜の膜厚がばらつき、表示装置の輝度がばらつくおそれがある。しかし、本実施の形態では、機能膜が平坦になりにくい画素領域340内に塗布する第2の溶媒の量を多くすることで、機能膜が平坦になりにくい画素領域340内の混合液で上述したマランゴニ効果による対流を生じさせることができる。これにより発光材料が混合液中で均一に分散した状態で乾燥が進行し、機能膜を平坦にすることができる。
さらに、第1の溶媒の乾燥速度に応じて、適切な乾燥速度を有する第2の溶媒を適宜選択することで、面内の乾燥速度のばらつきを抑えることができ、機能膜の膜厚の面内のばらつきをさらに抑えることができる。
図13(B)は、図12の表示装置の線AAによる断面図であり、本実施の形態によって製造された表示装置の機能膜341の形状を示す。図13(B)では、画素領域340R内に形成された機能膜341の形状のみを示し、画素領域340Gおよび画素領域340B内に形成された機能膜を省略する。
図13Bに示されるように、周辺部324の画素領域340および中央部325の画素領域340で、機能膜341は平坦になる。これにより機能膜の膜厚の「面内のばらつき」が抑えられ、表示装置の輝度のばらつきが抑えられる。
本実施の形態では、周辺部の画素領域に塗布する第2の溶媒の量や沸点と、中央部の画素領域に塗布する第2の溶媒の量や沸点とを違える方法について説明したが、周辺部の画素領域に塗布する第2の溶媒の表面張力と、中央部の画素領域に塗布する第2の溶媒の表面張力とを違えたり、周辺部の画素領域に塗布する第2の溶媒の組成と、中央部の画素領域に塗布する第2の溶媒の組成とを違えたりすることで、面内の膜厚ムラを低減することもできる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[実施例1]
実施例1では、第1の溶媒としてメトキシトルエン(表面張力 38.3mN/m;沸点 174℃)を、第2の溶媒としてシクロへキシルベンゼン(表面張力 36.7mN/m;沸点 240℃)を用いて発光層を形成した例を示す。
まず、ガラス基板の上にアクリル樹脂の隔壁を形成した。隔壁の高さは1μm、隔壁で囲まれた画素領域の大きさは、縦約250μm、横約70μmとした。有効画素領域の大きさは、縦約235μm、横約55μmとした。また、フルオレン系の高分子化合物(発光材料)をメトキシトルエン(第1の溶媒)に溶解させて、第1の溶液(1.4重量%)を調製した。
第1の溶液を画素領域内に塗布した。1画素領域あたりの塗布量を1×10−4μl(100pl)とした。これを室温、大気中で乾燥させた。画素領域内の第1の溶液の高さが隔壁の高さとほぼ同一となった時に、画素領域の容積の4倍量のシクロヘキシルベンゼン(第2の溶媒)を画素領域内に塗布した。1画素領域あたりの第2の溶媒の塗布量を7×10−5μl(70pl)とした。その後、大気中で溶媒が完全に無くなるまで乾燥させた。
図15は、乾燥させた後の発光層の形状を示すグラフである。本実施例では、原子間力顕微鏡(AS−7B:タカノ株式会社)を用いて、図16に示す画素領域の長手方向中央を通るA−A線における発光層の形状を測定した。探針には、OMCL−AC160TS(オリンパス株式会社)を用いた。発光層の形状を測定する手段としては、段差計、干渉計を用いる方法もある。しかし、段差計には高さ方向の分解能が低いという問題点があり、干渉計には下地に反射用の金属膜があるとうまく測定できないという問題点があるため、本実施例では原子間力顕微鏡を用いて発光層の形状を測定した。
評価指数としては、以下の式(6)に表される平坦度tfを用いた。この平坦度tfは、数値が小さいほど膜厚の均一性が高いことを示す。
ここで、「tmax」は有効画素領域における最大膜厚であり、「tmin」は、有効画素領域における最小膜厚であり、「tav」は、有効画素領域における平均膜厚である。
図15(A)は、上記手順により形成した発光層(実施例1の発光層)の形状を示すグラフである。実施例1の発光層の平坦度tfは、8.7%であった。
[比較例1]
比較例1として、実施例1と同様に第1の溶液を塗布し、乾燥させた後、第2の溶媒(シクロへキシルベンゼン)の代わりに第1の溶媒(メトキシトルエン)を塗布して発光層を形成した。図15(B)は、比較例1の発光層の形状を示すグラフである。比較例1の発光層の平坦度tfは、14.2%であった。以上の結果から、本発明の方法により、発光層の膜厚の均一性を向上させうることがわかる。
[実施例2および3]
実施例2および3では、第1の溶媒をシクロへキシルベンゼン(表面張力 36.7mN/m;沸点 240℃)とした。また、実施例2では、第2の溶媒をテトラリン(表面張力 38.7mN/m;沸点 207℃)とし;実施例3では、第2の溶媒をフェニルノナン(表面張力 29.6mN/m;沸点 282℃)として、発光層を形成した。
シクロへキシルベンゼン(第1の溶媒)とテトラリン(第2の溶媒)との表面張力の差は、2.0mN/mである。一方、シクロへキシルベンゼン(第1の溶媒)とフェニルノナン(第2の溶媒)との表面張力の差は、7.1mN/mである。
実施例1と同様の手順により、ガラス基板の上にアクリル材質の隔壁を形成した。また、フルオレン系の高分子化合物(発光材料)をシクロへキシルベンゼン(第1の溶媒)に溶解させて、第1の溶液(1.4重量%)を調製した。
第1の溶液を画素領域内に塗布し、真空炉内で乾燥させた。画素領域内の第1の溶液の高さが隔壁の高さとほぼ同一となった時に、画素領域の容積の1/4倍量のテトラリンまたはフェニルノナン(第2の溶媒)を画素領域内に塗布した。その後、溶媒が完全に無くなるまで乾燥させた。
実施例1と同様の手順により、実施例2の発光層、実施例3の発光層の形状を測定した。図17(A)は、第2の溶媒としてテトラリンを塗布して形成した発光層(実施例2の発光層)の形状を示すグラフである。実施例2の発光層の平坦度tfは、3.9%であった。図17(B)は、第2の溶媒としてフェニルノナンを塗布して形成した発光層(実施例3の発光層)の形状を示すグラフである。
[比較例2]
一方、比較例2として、実施例2および3における第1の溶液を塗布して、第2の溶媒を塗布することなく、そのまま完全に乾燥させて比較例2の発光層を形成した。比較例2の発光層の平坦度tfは、12.9%であった。
実施例2および3の発光層は、比較例2の発光層と比較して、いずれも画素領域の端部での盛り上がりが抑制されていることがわかった。この結果は、マランゴニ効果による対流によって、溶質である発光材料が分散したことを示唆する。
一方、図17(A)と図17(B)のグラフから、実施例2の発光層は、実施例3の発光層よりも、より平坦であることがわかる。つまり、実施例3の発光層は、中央部での膨らみがやや大きくなっている。この結果は、実施例3ではマランゴニ効果により発生した対流が強すぎたために、端部から中央部へ溶質である発光材料が集中しすぎたことが示唆される。したがって、第1の溶媒と第2の溶媒の表面張力の差を適宜調整する(例えば、1.0〜3.0mN/mの範囲内とする)ことによって、より膜厚の均一性を向上させうることがわかる。
以上の結果から、本発明の方法により、機能膜の膜厚の均一性を向上させうることがわかる。
本発明の光学素子は、所定の領域において良好な膜厚均一性を有するため、有機半導体などの構造の均一性を要求される電子デバイス、特に薄膜形状の電子デバイスに適用することができる。例えば、本発明の光学素子は、カラーテレビやパーソナルコンピュータ、携帯電話、カーナビゲーションなどに使用されている有機電界発光素子、カラーフィルタとして有用である。
10 支持基板
12 表示領域
14 素子形成領域
20 支持基板
22 層間絶縁膜
24 隔壁
26 画素電極
28 有機溶液
30 ノズル
32 材料膜
110 支持基板
120 隔壁
130 機能膜
140 有効画素領域
150 発光材料を含む溶液(第1の溶液)
160 液滴端部
170 第2の溶媒
180 第1の溶液および第2の溶媒の混合液
210 基板
220 液滴
230 液滴端部
240 溶質
250 溶媒の蒸発速度
324 表示装置の周辺部
325 表示装置の中央部
340 画素領域
341 機能膜
410 表示装置
420 載置台
430 減圧ポンプ
440 減圧チャンバ
450 パージライン

Claims (8)

  1. 表示装置の光学素子を製造する方法であって、
    隔壁に囲まれた画素領域内に、発光材料および第1の溶媒を含む第1の溶液を塗布する
    ステップと、
    塗布された前記第1の溶液に含まれる第1の溶媒を除去するステップと、
    塗布された前記第1の溶液が完全に乾燥する前に、前記第1の溶媒と表面張力の異なる
    第2の溶媒を、前記画素領域内に塗布するステップと、
    塗布された前記第1の溶液および前記第2の溶媒を乾燥させるステップと、
    を含む、光学素子の製造方法。
  2. 前記第1の溶媒と前記第2の溶媒との表面張力(20℃)の差は、1.0〜3.0mN/
    mの範囲内である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記第1の溶媒と前記第2の溶媒との沸点の差は、30〜70℃の範囲内である、請求
    項1に記載の製造方法。
  4. 前記第1の溶液は、インクジェット方式により塗布され、かつ
    前記第1の溶液の、20℃における「表面張力(mN/m)/粘度(mPa・s)」の
    値が1.8m/s以上である、請求項1に記載の製造方法。
  5. 前記光学素子は有機電界発光素子である、請求項1に記載の製造方法。
  6. 基板と、前記基板上にマトリクス状に配置された画素領域と、それぞれの前記画素領域を囲む隔壁と、前記画素領域内に配置された光学素子とを有する表示装置の製造方法であって、
    それぞれの前記隔壁に囲まれた前記画素領域内に、発光材料および第1の溶媒を含む第1の溶液を塗布するステップと、
    塗布された前記第1の溶液に含まれる第1の溶媒を除去するステップと、
    塗布された前記第1の溶液が完全に乾燥する前に、前記第1の溶媒と表面張力の異なる第2の溶媒を、前記画素領域内に塗布するステップであって、前記表示装置の周辺部の画素領域に塗布する前記第2の溶媒の量と、前記表示装置の中央部の画素領域に塗布する前記第2の溶媒の量と、は異なるステップと、
    塗布された前記第1の溶液および前記第2の溶媒を乾燥させるステップと、
    を含む、表示装置の製造方法。
  7. 前記表示装置の周辺部の画素領域に塗布する前記第2の溶媒の量は、前記表示装置の中央部の画素領域に塗布する前記第2の溶媒の量よりも多く、前記第2の溶媒の沸点は、前記第1の溶媒の沸点よりも高い、請求項6に記載の表示装置の製造方法。
  8. 前記第2の溶媒は、前記表示装置の周辺部の画素領域にのみ塗布され、前記表示装置の中央部の画素領域に塗布されない、請求項7に記載の表示装置の製造方法。
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