JP2010159810A - ロール材用フェルト - Google Patents
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Abstract
【課題】従来のフェルトからなるロール材では実現できなかった高いレベルの耐久性、耐クラック性、耐熱性を備え、かつ加工対象を傷つけることがない、より高硬度・高密度でしなやかな表面層を有する不織布ロールを製造することができるロール用フェルト材を提供する。
【解決手段】断面が実質的に真円である2つの異なる直径を有する耐熱性高機能繊維で、それらの直径比が1.2以上である耐熱性高機能繊維の短繊維が、3次元方向にランダムに交絡されてなることを特徴とするロール材用フェルト。
【選択図】なし
【解決手段】断面が実質的に真円である2つの異なる直径を有する耐熱性高機能繊維で、それらの直径比が1.2以上である耐熱性高機能繊維の短繊維が、3次元方向にランダムに交絡されてなることを特徴とするロール材用フェルト。
【選択図】なし
Description
本発明は、耐熱性、耐衝撃性、及び耐久性に優れた不織布ロールを構成するフェルト材、とりわけ製紙用不織布ロールを構成するフェルト材に関する。
製紙、製鉄、フィルム、繊維等の各種工業において高分子材料からなる種々のロールが使用されている。より具体的には、金属生産工程の圧延、冷延工程後の絞りロール、自動車生産工程プレス前の洗浄油絞りロール、製紙生産工程の厚み潰し、光沢出しカレンダーロール、フィルム・ゴム生産工程冷却後の水絞りロール、繊維用カレンダーロール、磁気記録媒体製造用カレンダーロール等である。
これらのロールに使用する高分子材料の形態としては、樹脂の成型品あるいは布帛を積層したものが用いられているが、加工の容易性の点で、布帛、とりわけ不織布からなるシートが用いられる例が多い。
不織布を用いる場合、例えば、特開2004−28162号公報(特許文献1)に開示されているように不織布で構成されたディスク状物を多数枚重畳させたり、特開2007−138371号公報(特許文献2)に開示されているように異種繊維を混合して使用して不織布を形成すること等が提案されている。これらのロール用不織布は、主にポリエステル系繊維を用いているが、吸水、吸液性能、あるいは、被洗浄面に付着した水分、油分等の除去性能に優れている。
また、特開2000−064014号公報(特許文献3)に開示されているように連続一体化したチューブ状不織布を芯材に通すことによりロールを形成する、あるいは、スリットしたテープ状不織布を金属などの芯材に巻き付ける方法も用いられる。このロールにおいては、耐熱性、耐久性に優れる不織布ロールとするために、耐熱性高機能繊維よりなる不織布を内層及び表面層に配置し、筒状の基布を最内層に配置している。
特許第3993687号公報(特許文献4)には、ナイロン66繊維よりなるロール用基材としての不織布が開示されており、このロール用不織布は水、油、薬品等の搾取に優れている。また、特許第3124429号公報(特許文献5)には、アラミド繊維等の耐熱繊維からなる、トナー定着装置のクリーニング用ロールに用いられるパイルフェルトが開示されている。
特開2002−219654号公報(特許文献6)には、径サイズの異なるナイロン繊維より得られる不織布をロール材として用いることが開示されている。しかしながら当該ロール材は、印刷版用金属板の予備研磨ローラーに適用するもので、使用するナイロン繊維には研磨剤が含まれている。
特許第3780888号公報(特許文献7)には、高温のアルミ形材を搬送するロール等に用いられる耐熱フェルトが開示されている。当該フェルトは、太い単繊維繊度を有するパラ系アラミド繊維(3〜10dtex)からニードルパンチ法で得られるフェルトで、より細い単繊維繊度のパラ系アラミド繊維からなるフェルトに比べて、耐摩耗性や耐切創性が向上することが示されている。
上記のロールは、その使用目的に応じて要求性能が異なるため、用途に応じて最適なロール表面硬度とロール内部の空隙率が要求されるが、それと同時に、ロール全般に共通して、種々の条件下での寸法安定性と耐久性が求められている。
より具体的には、製紙用カレンダーロール等の製紙用ロールにおいては、金属ロールでニップ圧を加えて紙を処理して紙の厚みを揃えた際に、部分的に加わる線圧が大きくなるために、紙自体の坪量のむらが密度むらになり、光沢むらが生じるという問題点があり、その解決のために、金属よりも弾性率の小さな高分子材料を用いてシート状で、あるいは不織布等に加工して被覆したロールが開発されてきた。しかし、近年、生産効率の向上等を目指して、より高温、高速度で運転されるようになってきており、その結果、熱や高速運転による摩擦等により、紙の損傷やロール材の摩耗等による損傷の問題が生じている。そのため、加工対象である紙自体を傷つけることなく、かつ、耐熱性や耐摩耗性に優れる耐久性の良いロールが求められている。かかる目的に対しては、ロールが、弾性の高い繊維状形態の高分子材料が高密度に充填されてなることが有利であると考えられる。そのようなロールは、耐熱性高機能繊維からなるフェルト等の不織布を、ロール形成時に十分に圧縮して緻密化を図ることによって得ることができる。
しかしながら、特許文献7に開示されている、太い単繊維繊度のパラ系アラミド繊維を用いたフェルトを、製紙用カレンダーロール等の製紙用ロール材に用いた場合には、ロールとしての耐熱性や耐摩耗性は向上するが、繊維の剛直性が大きすぎて、ロール形成のための圧縮時に繊維の動きが圧縮に追従せず、十分に緻密な構造にはならない。そのため、得られたロールにクラック等の傷が生じやすく、ロール傷に起因して、加工対象となる紙自体を傷つける等の問題が発生するおそれがある。また、細い単繊維繊度のパラ系アラミド繊維を用いたフェルトでは、繊維がよりしなやかであるため圧縮しやすくロールの緻密化は容易であるので前記のような問題はないが、フェルト自体の耐摩耗性が劣りロールとしての耐久性に問題がある。
特開2004−028162号公報
特開2007−138371号公報
特開2000−064014号公報
特許第3993687号公報
特許第3124429号公報
特開2002−219654号公報
特許第3780888号公報
本発明は、かかる要求に鑑み、従来の耐熱性高機能繊維を含む合成繊維あるいは天然繊維からなる不織布、とりわけ短繊維不織布であるフェルトからなるロール材では実現できなかった高いレベルの耐久性、耐クラック性、耐熱性を備え、かつ加工対象を傷つけることがない、より高硬度・高密度でしなやかな表面層を有する不織布ロールを製造することができるロール用フェルト材を提供せんとするものである。
本発明者らは、直径が異なる2つのパラ系アラミド繊維等の耐熱性高機能繊維を混合してフェルトを作製することにより、かかる課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、
(1)断面が実質的に真円である2つの異なる直径を有する耐熱性高機能繊維で、それらの直径比が1.2以上である耐熱性高機能繊維の短繊維が、3次元方向にランダムに交絡されてなることを特徴とするロール材用フェルト。
(2)耐熱性高機能繊維の質量混合比率が90/10〜10/90であることを特徴とする前記(1)記載のロール材用フェルト。
(3)耐熱性高機能繊維が、直径が8〜20μmから選ばれる2種であることを特徴とする前記(1)または(2)記載のロール材用フェルト。
(4)一方の耐熱性高機能繊維の直径が12μmであり、他方の耐熱性高機能繊維の直径が14.5〜20μmであり、かつ、これら2つの耐熱性高機能繊維の質量混合比率が45/55〜55/45であることを特徴とする前記(1)〜(3)いずれか記載のロール材用フェルト。
(5)耐熱性高機能繊維がアラミド繊維であることを特徴とする前記(1)〜(4)いずれか記載のロール材用フェルト。
(6)アラミド繊維がポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であることを特徴とする前記(5)記載のロール材用フェルト。
(7)フェルトの見掛け密度が0.05〜0.3g/cm3であることを特徴とする前記(1)〜(6)いずれか記載のロール材用フェルト。
に関する。
(1)断面が実質的に真円である2つの異なる直径を有する耐熱性高機能繊維で、それらの直径比が1.2以上である耐熱性高機能繊維の短繊維が、3次元方向にランダムに交絡されてなることを特徴とするロール材用フェルト。
(2)耐熱性高機能繊維の質量混合比率が90/10〜10/90であることを特徴とする前記(1)記載のロール材用フェルト。
(3)耐熱性高機能繊維が、直径が8〜20μmから選ばれる2種であることを特徴とする前記(1)または(2)記載のロール材用フェルト。
(4)一方の耐熱性高機能繊維の直径が12μmであり、他方の耐熱性高機能繊維の直径が14.5〜20μmであり、かつ、これら2つの耐熱性高機能繊維の質量混合比率が45/55〜55/45であることを特徴とする前記(1)〜(3)いずれか記載のロール材用フェルト。
(5)耐熱性高機能繊維がアラミド繊維であることを特徴とする前記(1)〜(4)いずれか記載のロール材用フェルト。
(6)アラミド繊維がポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であることを特徴とする前記(5)記載のロール材用フェルト。
(7)フェルトの見掛け密度が0.05〜0.3g/cm3であることを特徴とする前記(1)〜(6)いずれか記載のロール材用フェルト。
に関する。
ロール材用フェルトに用いる繊維を断面が実質的に真円である耐熱性高機能繊維とし、かつ繊維径の異なる短繊維を2種併用することによって、従来のロール材用フェルトを圧縮することでは実現できなかった高いレベルの耐久性、耐クラック性、耐熱性を備え、かつ加工対象を傷つけることのない、高硬度・高密度でしなやかな表面を有する不織布ロールを製造することができる。
以下本発明を具体的に説明する。
本発明のフェルト材に用いられる短繊維は、耐熱性高機能繊維である。耐熱性高機能繊維の短繊維をフェルト化することによって、その高強力、高弾性ゆえに、高温下でのロール使用時の耐久性、傷の付きにくさ、一時的な変形からの回復のし易さがロールに付与できるからである。
本発明のフェルト材に用いられる短繊維は、耐熱性高機能繊維である。耐熱性高機能繊維の短繊維をフェルト化することによって、その高強力、高弾性ゆえに、高温下でのロール使用時の耐久性、傷の付きにくさ、一時的な変形からの回復のし易さがロールに付与できるからである。
耐熱性高機能繊維としては、アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリケトン繊維などが挙げられる。なかでも、弾性率が高い点よりアラミド繊維が好適に用いられる。アラミド繊維には、メタ系アラミド繊維とパラ系アラミド繊維があるが、より好適にはパラ系アラミド繊維を用いるのがよい。
メタ系アラミド繊維としては、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(デュポン社製、商品名「ノーメックス」)などがある。パラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名「ケブラー」)及びコポリパラフェニレン−3,4'−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ株式会社製、商品名「テクノーラ」)などがある。特に、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維は、耐久性及び耐熱性に優れていることより好ましい。
全芳香族ポリエステル繊維としては、例えば、株式会社クラレ製、商品名「ベクトラン」などがあり、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維としては、例えば、東洋紡績株式会社製、商品名「ザイロン」などがある。ポリケトン繊維としては、繰り返し単位の95質量%以上が1−オキソトリメチレンにより構成されるポリケトン(PK)繊維、ポリエーテルケトン(PEK)繊維、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)繊維などがある。
耐熱性高機能繊維の短繊維は、好ましくは直径が8〜20μm、より好ましくは直径が8〜17μmの範囲で、それらの直径の比が1.2以上である、直径の異なる2つの短繊維が混合して用いられる。用いる2つの耐熱性高機能繊維の直径の比が1.2未満であると、実質的に均一径の繊維からなるフェルトと大差がなくなるため好ましくない。用いる耐熱性高機能繊維の直径は小さいほどフェルトのしなやかさは向上するが、直径が8μm以下の耐熱性繊維は、カード通過性のよさや原綿の入手をはじめとする生産管理の簡便さ等のフェルト加工の面より好ましくない。一方、直径が20μmを越えるとフェルトが剛直になりすぎ、しなやかさが低下するため好ましくない。
直径の異なる2つの繊維の質量混合比率は、特に限定されるものではないが、フェルト製造時における原綿の均一混合のし易さの観点、ならびに一方の比率が少なすぎると混合の効果が極めて限定的なものとなることから、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは、80/20〜20/80であり、生産管理の便宜上からは、50/50を目標値とすることが最も望ましい。
実際のフェルト加工を考慮すると、カード通過性のよさ、原綿の入手をはじめとする生産管理の簡便さの点で、一方の直径が12μmであることが最も好ましい。この場合、他方の直径は14.5〜20μm、より好ましくは15〜17μmであり、かつ、これら2つの短繊維の質量混合比率は45/55〜55/45であることが特に好ましい。他方の直径が14.5μm以上であれば直径比1.2以上を満足させることが可能となり、20μm以下であれば、フェルトのしなやかさが低下するという問題も生じないからである。
上記の短繊維における繊維長は、特に限定されないが、耐久性および生産性等を考慮すると繊維長20〜100mm、特に38〜76mmであることが好ましい。
直径の異なる2つの耐熱性高機能繊維の短繊維を混合してフェルトを作製することで、フェルトのしなやかさを低下させることなく耐摩耗性が向上する理由の詳細は不明であるが、直径の異なる繊維を混ぜることで、フェルト圧縮時に繊維の充填密度を飛躍的に向上させることができるものと考えられる。繊維断面が真円の場合、全ての繊維が一方向に揃った理想系での最密充填率は、繊維径が均一のときは、径の値にかかわらず約90%であることが容易に定量的に計算され、繊維径が異なるものが混在するときは、さらに充填率が上がることも定性的に理解される。理想系での充填率約90%とそれ以上という値は、数値の上では僅かのように思われるが、驚くべきことに、フェルトのように繊維が3次元方向にランダムに交絡している場合は、それを圧縮して高密度化してロールを形成したときに、ロールの緻密さに由来する諸性能が著しく向上することが本発明において見出されたからである。
フェルトの見掛け密度は、0.05〜0.3g/cm3が好ましく、より好ましくは0.1〜0.3g/cm3、さらに好ましくは0.15〜0.25g/cm3である。見掛け密度が0.05g/cm3未満では高硬度・高密度の不織布ロールを作製することが困難となり、絞りロールなどにおいて絞り性が不十分となる。一方、見掛け密度が0.3g/cm3を超えると、繊維の交絡が進みすぎるため、フェルトを圧縮してロールを形成する際に繊維が動きにくく十分な緻密化ができないので好ましくない。
また、耐熱性高機能繊維は断面が実質的に真円である。真円の口金を用いて紡糸することにより、通常、断面が真円の繊維を得ることができる。断面が異形、例えば楕円状、中空状、X断面状、Y断面状、T断面状、L断面状、星型断面状、葉形断面状、多角断面状などである場合は、繊維同士が絡まり合った際に生じる間隙が大きくなるため、フェルトの密度が低下し、フェルト圧縮時にも円形断面繊維に比べて繊維が動きにくいので緻密化出来ず、結果として、耐熱性や耐摩耗性が低下する。また、フェルト表面の平滑性を保持し易い点からも断面が実質的に真円であるのがよい。
また、フェルトの圧縮時に繊維充填密度を高めるために、本発明の効果を阻害しない範囲で、直径が上記の2種の耐熱性高機能繊維と異なる、他の耐熱性高機能繊維の短繊維を交絡させ、3種以上の異なる直径を有する耐熱性高機能繊維の短繊維が3次元方向にランダムに交絡されてなるフェルトを作製することもできる。他の耐熱性高機能繊維の直径は、フェルトの空隙率を低減させることが可能で、かつ、上記2種の耐熱性高機能繊維と混合した際のウエブのニードリング性が高まることより、12μm未満であることが好ましく、より好ましくは10μm未満である。
フェルトの製造方法は、公知の方法が用いられる。すなわち、繊維径の異なる2種あるいは3種以上の原綿をミキサーなどで混合してさらに開繊し、カードにかけてウェブを形成する。あるいは、原綿調製時に繊維径の異なる短繊維からなる2種あるいは3種以上のトウを引き揃えてステープル化してもよい。その場合は、フェルト製造工程での混綿は不要となり、直接ウェブを形成できる。必要に応じて、より均一な混合を図るために一旦形成したウェブをさらにカーディングしてもよい。得られたウェブをクロスラッパーなどで所望の枚数を積層して100本/cm2程度のニードルパンチを施してプレニードルフェルトを得る。必要に応じて、得られたプレニードルフェルトにさらに高密度のニードルパンチを施してシート状フェルトを形成する。あるいは、積層ウェブを直接又はプレニードルフェルトを筒状フェルトが形成できる特殊パンチングマシンに供給して連続一体構造の筒状物としてもよい。
ロール形成は、フェルトがシート状の場合は、シートをドーナツ状物に打ち抜き、ドーナツの内径と同じ径をもつ金属などの軸のまわりに多数枚重畳させて重ね合わせ、軸方向にプレスし、フェルトが筒状の場合は、筒の内径と同じ径をもつ金属などの軸に筒を通して軸方向にプレスし、両端部を金属などのリング状物で固定することによって行うことができる。また、ロール硬度は、重ね枚数やプレス圧力で随意に調整することが可能である。
さらに必要に応じて、上記によって得られたロールの表面と固定部材を含む両端部を研削して所望のロール径や端部形状に調整してもよい。
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の各評価項目は、下記の方法により測定評価した。
(1)ロールの表面硬度:ショアD硬度、ASTMD2240による。
(2)ロールの表面粗度:表面粗さ計を用いてRaを測定。
(3)ロールの表面温度:非接触式デジタル表面温度計で測定。
(4)傷回復性:強制的に皺を与えた上質塗工紙(目付56g/m2)を、フェルトロールと金属ロールからなるカレンダーに1000m/分、200kg/cmの線圧で通過させる。次いでカレンダーを空運転し、フェルトロールの紙跡の挙動を定性的に観察。
(1)ロールの表面硬度:ショアD硬度、ASTMD2240による。
(2)ロールの表面粗度:表面粗さ計を用いてRaを測定。
(3)ロールの表面温度:非接触式デジタル表面温度計で測定。
(4)傷回復性:強制的に皺を与えた上質塗工紙(目付56g/m2)を、フェルトロールと金属ロールからなるカレンダーに1000m/分、200kg/cmの線圧で通過させる。次いでカレンダーを空運転し、フェルトロールの紙跡の挙動を定性的に観察。
[実施例1]
カット長51mm、繊度1.7dtexのポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維Kevlar(R)(登録商標:東レ・デュポン(株)製、繊維直径12μm)ステープルと、同じカット長で繊度2.5dtexの同ステープル(繊維直径15μm)を50/50の比率で混綿し、ミキサーで十分均一化した後、カードにかけて18g/m2のウェブとした。このウェブをクロスラッパーに供給して重ね枚数が18枚となるように積層してプレパンチングマシンに導き、100本/cm2の密度でニードルパンチを施してプレニードルフェルトとした。これに、さらに500本/cm2の密度でニードルパンチを施して目付300g/m2、見かけ密度0.2g/cm3のフェルトを得た。
カット長51mm、繊度1.7dtexのポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維Kevlar(R)(登録商標:東レ・デュポン(株)製、繊維直径12μm)ステープルと、同じカット長で繊度2.5dtexの同ステープル(繊維直径15μm)を50/50の比率で混綿し、ミキサーで十分均一化した後、カードにかけて18g/m2のウェブとした。このウェブをクロスラッパーに供給して重ね枚数が18枚となるように積層してプレパンチングマシンに導き、100本/cm2の密度でニードルパンチを施してプレニードルフェルトとした。これに、さらに500本/cm2の密度でニードルパンチを施して目付300g/m2、見かけ密度0.2g/cm3のフェルトを得た。
[実施例2]
カット長51mm、繊度1.7dtexのポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維Kevlar(R)(登録商標:東レ・デュポン(株)製、繊維直径12μm)ステープルと、同じカット長で繊度4.7dtexの同ステープル(繊維直径20μm)を50/50の比率で混綿して用いた他は、実施例1と同様にして、見かけ密度0.2g/cm3のフェルトを作製した。
カット長51mm、繊度1.7dtexのポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維Kevlar(R)(登録商標:東レ・デュポン(株)製、繊維直径12μm)ステープルと、同じカット長で繊度4.7dtexの同ステープル(繊維直径20μm)を50/50の比率で混綿して用いた他は、実施例1と同様にして、見かけ密度0.2g/cm3のフェルトを作製した。
[比較例1]
実施例1に使用した原綿に代えて、カット長51mm、繊度2.4dtexのメタフェニレンテレフタルアミド繊維Nomex(R)(登録商標:E.I.DuPont社製)ステープル100%を用いた他は、実施例1と同様にして、見かけ密度0.2g/cm3のフェルトを作製した。
実施例1に使用した原綿に代えて、カット長51mm、繊度2.4dtexのメタフェニレンテレフタルアミド繊維Nomex(R)(登録商標:E.I.DuPont社製)ステープル100%を用いた他は、実施例1と同様にして、見かけ密度0.2g/cm3のフェルトを作製した。
[比較例2]
実施例1に使用した原綿に代えて、カット長51mm、繊度1.7dtexのポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維Kevlar(R)(登録商標:東レ・デュポン(株)製、繊維直径12μm)ステープル100%を用いた他は、実施例1と同様にして、見かけ密度0.2g/cm3のフェルトを作製した。
実施例1に使用した原綿に代えて、カット長51mm、繊度1.7dtexのポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維Kevlar(R)(登録商標:東レ・デュポン(株)製、繊維直径12μm)ステープル100%を用いた他は、実施例1と同様にして、見かけ密度0.2g/cm3のフェルトを作製した。
[比較例3]
実施例1に使用した原綿に代えて、カット長51m、繊度4.7dtexのポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維Kevlar(R)(登録商標:東レ・デュポン(株)製、繊維直径20μm)ステープル100%を用いた他は、実施例1と同様にして、見かけ密度0.35g/cm3のフェルトを作製した。
実施例1に使用した原綿に代えて、カット長51m、繊度4.7dtexのポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維Kevlar(R)(登録商標:東レ・デュポン(株)製、繊維直径20μm)ステープル100%を用いた他は、実施例1と同様にして、見かけ密度0.35g/cm3のフェルトを作製した。
[試験例1]
実施例1で作製したフェルトを、内径160mm外径320mmのドーナツ形状に多数打ち抜き、それらを直径160mmのスチール製軸に通して重畳させ、軸方向にプレスし両端を厚さ20mmのスチールリングで固定した。さらにロール表面が平滑になるように研削し、金属リング部分は、外径が240mmになるまで研削し、ロール端部をこの押さえ部分とテーパー状になるように研削して形を整えてロール製品とした。このロールのフェルト部分硬度は、ショアD硬度86であり、表面粗さRaは0.56μmであった。このロールとスチールロールからなるカレンダーロールを作製して製紙巻き取り速度1000m/分に相当する速度と200kg/cmの線圧で1時間運転した直後のロール表面の温度上昇、硬度、表面粗さを測定したところ、それぞれ+2℃、86、0.30μmであった。さらに、強制的に皺を与えた塗工紙を通過させた後の紙跡を観察したところ、空運転によりほどなく消失した。
実施例1で作製したフェルトを、内径160mm外径320mmのドーナツ形状に多数打ち抜き、それらを直径160mmのスチール製軸に通して重畳させ、軸方向にプレスし両端を厚さ20mmのスチールリングで固定した。さらにロール表面が平滑になるように研削し、金属リング部分は、外径が240mmになるまで研削し、ロール端部をこの押さえ部分とテーパー状になるように研削して形を整えてロール製品とした。このロールのフェルト部分硬度は、ショアD硬度86であり、表面粗さRaは0.56μmであった。このロールとスチールロールからなるカレンダーロールを作製して製紙巻き取り速度1000m/分に相当する速度と200kg/cmの線圧で1時間運転した直後のロール表面の温度上昇、硬度、表面粗さを測定したところ、それぞれ+2℃、86、0.30μmであった。さらに、強制的に皺を与えた塗工紙を通過させた後の紙跡を観察したところ、空運転によりほどなく消失した。
[試験例2]
実施例2で作製したフェルトを用いて、試験例1と同様にしてロールを作製した。このロールのフェルト部分硬度は、ショアD硬度86であり、表面粗さRaは0.42μmであった。このロールとスチールロールからなるカレンダーロールを作製して参考例1と同様に評価したところ、ロール表面の温度上昇、硬度、表面粗さは、それぞれ+3℃、86、0.26μmであった。皺付き塗工紙を通過させた後の紙跡を観察したところ、空運転によりほどなく消失した。
実施例2で作製したフェルトを用いて、試験例1と同様にしてロールを作製した。このロールのフェルト部分硬度は、ショアD硬度86であり、表面粗さRaは0.42μmであった。このロールとスチールロールからなるカレンダーロールを作製して参考例1と同様に評価したところ、ロール表面の温度上昇、硬度、表面粗さは、それぞれ+3℃、86、0.26μmであった。皺付き塗工紙を通過させた後の紙跡を観察したところ、空運転によりほどなく消失した。
[比較試験例1]
比較例1で作製したフェルトを用いて、試験例1と同様にしてロールを作製した。このロールのフェルト部分硬度は、ショアD硬度85であり、表面粗さRaは0.90μmであった。試験例1と同様に評価したところ、ロール表面の温度上昇、硬度、表面粗さは、それぞれ+5℃、83、0.36μmであった。皺付き塗工紙を通過させた後の紙跡を観察したところ、空運転だけでは消失せず、表面研削による修正を要した。
比較例1で作製したフェルトを用いて、試験例1と同様にしてロールを作製した。このロールのフェルト部分硬度は、ショアD硬度85であり、表面粗さRaは0.90μmであった。試験例1と同様に評価したところ、ロール表面の温度上昇、硬度、表面粗さは、それぞれ+5℃、83、0.36μmであった。皺付き塗工紙を通過させた後の紙跡を観察したところ、空運転だけでは消失せず、表面研削による修正を要した。
[比較試験例2]
比較例2で作製したフェルトを用いて、試験例1と同様にしてロールを作製した。このロールのフェルト部分硬度は、ショアD硬度85であり、表面粗さRaは0.55μmであった。試験例1と同様に評価したところ、ロール表面の温度上昇、硬度、表面粗さは、それぞれ+3℃、84、0.36μmであった。さらに、皺付き塗工紙を通過させた後の紙跡を観察したところ、空運転だけでは消失せず、若干の表面研削による修正を要した。
比較例2で作製したフェルトを用いて、試験例1と同様にしてロールを作製した。このロールのフェルト部分硬度は、ショアD硬度85であり、表面粗さRaは0.55μmであった。試験例1と同様に評価したところ、ロール表面の温度上昇、硬度、表面粗さは、それぞれ+3℃、84、0.36μmであった。さらに、皺付き塗工紙を通過させた後の紙跡を観察したところ、空運転だけでは消失せず、若干の表面研削による修正を要した。
[比較試験例3]
比較例3で作製したフェルトを用いて、試験例1と同様にしてロールを作製した。このロールのフェルト部分硬度は、ショアD硬度86であり、表面粗さRaは0.90μmであった。試験例1と同様に評価したところ、ロール表面の温度上昇、硬度、表面粗さは、それぞれ+2℃、86、0.42μmであった。皺付き塗工紙を通過させた後の紙跡を観察したところ、空運転により消失させるためには、1時間以上を要した。
比較例3で作製したフェルトを用いて、試験例1と同様にしてロールを作製した。このロールのフェルト部分硬度は、ショアD硬度86であり、表面粗さRaは0.90μmであった。試験例1と同様に評価したところ、ロール表面の温度上昇、硬度、表面粗さは、それぞれ+2℃、86、0.42μmであった。皺付き塗工紙を通過させた後の紙跡を観察したところ、空運転により消失させるためには、1時間以上を要した。
[比較試験例4]
製紙ロールでは比較的普及しているコットンフェルトを用いて試験例1と同じようにロール作製と評価を行った。このロールのフェルト部分硬度は、ショアD硬度81であり、表面粗さRaは0.80μmであった。試験例1と同様にカレンダーロールを作製して評価したところ、ロール表面の温度上昇、硬度、表面粗さは、それぞれ+15℃、79、0.33μmであった。さらに、皺付き塗工紙を通過させた後の紙跡を観察したところ、比較試験例1、比較試験例2と同様、空運転だけでは消失せず、それらの例よりもさらに多くの表面研削による修正を要した。
製紙ロールでは比較的普及しているコットンフェルトを用いて試験例1と同じようにロール作製と評価を行った。このロールのフェルト部分硬度は、ショアD硬度81であり、表面粗さRaは0.80μmであった。試験例1と同様にカレンダーロールを作製して評価したところ、ロール表面の温度上昇、硬度、表面粗さは、それぞれ+15℃、79、0.33μmであった。さらに、皺付き塗工紙を通過させた後の紙跡を観察したところ、比較試験例1、比較試験例2と同様、空運転だけでは消失せず、それらの例よりもさらに多くの表面研削による修正を要した。
以上の実験結果より、本発明によれば、ロール表面の温度上昇が少なく、耐久性及び耐摩耗性に優れ、しかも、高硬度かつ高密度でしなやかな表面層を有するため紙を傷付けずに、優れた傷回復性を発揮する不織布ロールを製造することができる。
本発明のロール材用フェルトは、各種の産業用ロールに用いることができるが、特に、製紙分野において、コットンロールや従来の合成繊維不織布ロールでは実現できなかった高レベルの耐久性、耐クラック性、耐熱性、傷回復性、メンテナンス容易性を備えた高硬度・高密度なカレンダーロールを提供することができる。
Claims (7)
- 断面が実質的に真円である2つの異なる直径を有する耐熱性高機能繊維で、それらの直径比が1.2以上である耐熱性高機能繊維の短繊維が、3次元方向にランダムに交絡されてなることを特徴とするロール材用フェルト。
- 耐熱性高機能繊維の質量混合比率が90/10〜10/90であることを特徴とする請求項1記載のロール材用フェルト。
- 耐熱性高機能繊維が、直径が8〜20μmから選ばれる2種であることを特徴とする請求項1または2記載のロール材用フェルト。
- 一方の耐熱性高機能繊維の直径が12μmであり、他方の耐熱性高機能繊維の直径が14.5〜20μmであり、かつ、これら2つの耐熱性高機能繊維の質量混合比率が45/55〜55/45であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のロール材用フェルト。
- 耐熱性高機能繊維がアラミド繊維であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のロール材用フェルト。
- アラミド繊維がポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であることを特徴とする請求項5記載のロール材用フェルト。
- フェルトの見掛け密度が0.05〜0.3g/cm3であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載のロール材用フェルト。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009001982A JP2010159810A (ja) | 2009-01-07 | 2009-01-07 | ロール材用フェルト |
Applications Claiming Priority (1)
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ID=42577113
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JP (1) | JP2010159810A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2017138449A1 (ja) * | 2016-02-08 | 2017-08-17 | 住友化学株式会社 | 積層光学フィルムの製造方法 |
-
2009
- 2009-01-07 JP JP2009001982A patent/JP2010159810A/ja active Pending
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